今日は朝から雨だ。長かった授業も終わり、俺は今にも教室を飛び出そうと構えていた。
「じゃーな、好雄。後で電話してくれよ!」
「あ、おい!待てよ!俺一人に掃除させる気か?この人でなし〜!」
好雄の声が教室に響く。俺は好雄に放課後の掃除を押し付けてさっさと昇降口に向かった。
雨はますます強く降っている。
『あれ?あそこにいるのはJ組の美樹原さんかな?
「おーい、美樹原さん・・・」
彼女は背が低くて、いつもおどおどしている。
はっきり言って、面識はほとんどない。詩織に紹介されて、2回ほどデートに付き合った程度だ。
もっとも遊園地のデートでは、ヒーローショーで悪人に泣かされてしまい、散々な目にあった。
「あ、○○さん・・・」
美樹原さんが気がついたようだ。
「どうしたの?誰か友達を待ってるの?詩織ならクラブだから時間かかると・・・」
俺はどんどん話はじめた。
美樹原さんは口をはさむことができず「あの、あの・・・」と繰り返すばかりだ。
『おっと、そろそろ話を聞いてあげないと泣いちゃうかな?w
美樹原さんを見てると、なんとなくいじめたくなっちゃうんだよね。
「あ、あの・・・、傘を忘れてしまって・・・は、早く帰らないと、ムクが心配するから・・・」
なんだ、そんなことだったのか。
「じゃあ、よかったら俺の傘に入っていかない?」
「え?そ、そんな・・・は、恥ずかしい・・・」
「いや、嫌ならいいんだよ。それじゃお先に!」
俺はわざと突き放すように言った。そして校門に向かって走りだした。
・・・俺は美樹原さんの元へもどり、何も言わずに傘を差し出した。
「返すのはいつでもいいよ!それじゃ、ムクが心配するんだろ?早く帰るんだよー!」
俺は強い雨の中、家に向かって走り始めていた。
プルルルルル・・・・・
おっと電話だ。
「はい、○○です・・・」
「あぁ好雄だけど、お・ま・えなぁ〜・・・」
好雄が放課後の掃除のことで不満たらたらだ。俺は何度もあやまった。
「・・・おっともうこんな時間か。じゃーな、○○」
好雄が時間を気にしてか、そろそろ電話を切ろうとしている。
「あ、まってくれ、実はJ組の美樹原さんについて聞きたいんだけど・・・」
・・・なんだろう?美樹原さんのことが気になってしょうがない。俺は昔から詩織一筋だったのに。
好雄は美樹原さんについて教えてくれた。
「じゃ、もういいだろ?切るぜ。」
「あぁ、最後にもうひとつ。ムクって何者なんだ?」