真琴がタイムリープできるようになって何回もムダに使ってカウントが01になったように  
千昭もカウントが01になるまで何回もムダに使っていた、という話です。  
 
 
 
『オレに残されたタイムリープの回数はあと一回。』  
 
 
 
「やだ……千昭……やだぁ……」  
「ハァハァ……ウッセー……ハァハァ……クッ!!」  
真琴の内に青臭い欲望を解き放つ。  
 
ヤっちまった。  
どうしていつもうまくいかないのだろう。  
優しくしたいと思っているのに。 大事にしたいと思っているのに。  
結果はいつも同じ。  
いや今回は最悪。  
オレが真琴を押し倒してむりやり……。  
正気に戻ると真琴が泣いていた。  
 
この後に起こる出来事もだいたい予想が付く。  
オレはオレ達の異変に気付いた功介に呼び出されて問い詰められ、事情を知った功介におもいっきりぶん殴られる。  
 
「またやり直しかよ」  
 
 
 ◆◇◆  
 
 
干上がった海。 淀んだ空。  
未来の世界は酷いところだ。  
真琴や功介には想像も付かないだろう。  
今、この美しい世界当たり前と思う彼らにとって。  
この後、全ての自然が破壊されつくすのだと、誰が想像できるだろうか。  
 
オレは『女』を見た事がなかった。  
未来の世界では『女』は貴重品だった。  
一般庶民にはまず拝めない。 特別な生き物。  
 
過去に危険を冒してやってきた理由は『観たい絵があったから』。  
それともう一つ。  
『女』とSEXしてみたかった。  
希少な『女』とヤれるやつは未来ではほんの一握り。  
「だから『女』とヤると本当にそんなにいいのか試してみたかったんだよなー」  
 
こっちの世界に来て、本当に驚いた。  
周りには人間が溢れていた。  
『女』も大勢いた。  
一つの狭い部屋に男女が半々の人数で押し込められて、「授業」ってヤツを毎日繰り返していた。  
「あっちの世界だったら、この教室の『女』は今すぐ全員突っ込まれてるよな(笑)」  
実際、こっちに来た後、直ぐに道を歩いている『女』に乱暴を働こうとして、警察に捕まりそうになったことがあった。  
あわや、というところでタイムリープして事なきを得たが。  
こっちの世界ではいきなりそういう事をしちゃダメだって事をそれで学んだわけだが。  
じゃあどうすりゃデキんだよ……。  
調べてみたら、こっちの世界では『女』とヤる前に、その『女』の彼氏にならなくてはならないらしいことが解った。  
 
「なー。『女』に彼女になってもらうにはどうすりゃいーわけ?」  
こっちの世界ではじめて仲良くなった功介に聞いてみる。  
今日はコンビニという店に連れてこられた。  
食べ物も雑誌も生活用品もなんでも置いてある、しかも24時間ぶっ通しで営業しているすげぇ店だ。  
真琴はゆ…ゆ……ゆ、ナントカって女とどっか行くって、今日は別行動だ。  
 
「ちょ…お前、直球な質問だなぁ〜。 つーか、彼女いない俺に聞くなよ」  
「なんだよー。解んないのかよ。 役にたたねぇヤツだな」  
「質問しておいてその言い草はなんだよ(笑)」  
雑誌をいろいろ物色しながら手に取ったバイクの雑誌を立ち読みしている功介に以前から聞きたかったことを聞いてみる。  
 
「……お前、真琴とヤッたことある?」  
「ぶっ!! 何だそれ?」  
功介が雑誌から目を上げ、俺を見る。  
「いつも一緒にいるから、そうなのかと思って」  
「お前、そういう事聞く前にまず、俺に『お前、真琴を好きなのか?』とか聞けよ」  
「好き?」  
「好きじゃなきゃヤんないよ。俺は」  
「好き……?……じゃなきゃヤんない?」  
俺の頭の上におもいっきり?マークが見えたらしい功介は呆れ顔だ。  
「お前の頭、ヤることばっかか? そういうお前はコレでも読んで勉強しな」  
コンビニのコミックが置いてある棚から花やピンク色が散りばめられた本を渡される。  
少女マンガというものらしい。  
「千昭クンはまず情緒というモノを身につけないと彼女を作るのはムリ」  
そう功介に言われて、その本をざっと読んでみた。  
 
「ふーん、つまりあれか。『コクって、リョウオモイになって、ヤる』ならOKなわけだ」  
少女マンガで恋愛を扱ったものはだいたいこんな流れだから間違いない。  
で、誰とヤる?  
頭の中に、いつも放課後キャッチボールに付き合ってくれる『女』の顔が浮かぶ。  
俺の周りには『女』がいっぱいいるのに何で? と思ったが深く考えないようにした。  
 
 ◆◇◆  
 
で、翌日早速真琴にコクった。  
「だからヤろーぜ?」  
そう言ったらぶん殴られた。  
その直後から口もきいてくれなくなった。  
 
やり直し。  
 
次はもっと慎重になった。  
少女マンガの男が女に言ったセリフをまねてみた。  
「オレ、お前が好きだ。 つきあってくれ」←棒読み  
「……ふーん。 で私のどこが好きなわけ?」  
「えっ!? ど、どこっ!?って……どこ……だろな?」  
そう言ったらぶん殴られた。  
その直後から口もきいてくれなくなった。  
 
やり直し。  
 
真琴のイイトコ……イイトコ……イイトコ……  
一番身近で他の『女』と違って話しやすい。 ヘンに気取ったところもない。 気を使わないでいい。  
これくらいか?  
クラスにいる他の『女』はオレが近寄るとビクビクして避ける。  
オレが最初、転入した頃よくケンカしていたせいだ。  
真琴だけは違った。 オレに平気で話しかけてきた。 変な『女』。 そう思った。  
でも、功介と一緒にいろんな事、教えてくれた。 面白い事、珍しい事、楽しい事、沢山。  
 
それから何回かやり直したが、うまく事を運べなかった。  
 
うまくいかない真琴とヤるのを諦めて、他の『女』とヤろうとも思った。  
でもダメだった。 全然タタなかった。 オレかっこ悪すぎ。  
 
真琴のイイトコ……イイトコ……イイトコ……  
一番身近で他の『女』と違って話しやすい。 ヘンに気取ったところもない。 気を使わないでいい。  
よく笑う。 すぐ怒る。 よく見たら結構かわいい。 スタイルも案外悪くねぇ……かも。  
性格もいいよな。 意外と人のこと気を使ってるっていうか。 バカだけど。  
一緒にいると楽しい。 あの笑顔をいつまでも見ていたい……気が、する。  
「あー。 オレ……『女』とヤりたかっんじゃなくて、真琴とヤりたかったんか」  
 
何で気が付かなかったんだろ。 こんな簡単な事なのに。  
 
 ◆◇◆  
 
今回は今までとちょっと流れが違っていた。  
「ごめん……。 私、その……彼氏ができたんだ………」  
はぁ?ナンダソレ。 真琴がオレ以外の誰かを好きになる?  
寂寥の夕暮れ。 赤く染まる教室で性懲りも泣く真琴にコクったら予想もしない返事が返ってきた。  
「誰だよ……」  
「……多分直ぐばれちゃうと思うから、言うよ。 功介」  
「功介? あいつは友達って言ってただろ!」  
「確かに最近まではそう思ってたんだけどさぁ……」  
「だけど……なんだよ」  
俯き加減に、言いにくそうに、真琴が話す。  
「……私、見ちゃったんだ。千昭が知らない女の人とラブホから出てくるところ」  
「えっ」  
「千昭に彼女が出来たらまたキャッチボールしかできないなーって話を功介に、あっ!ラブホの事は話してないよ!?  
千昭に彼女が出来たかも!?って話しただけ。 そうしたら功介が、『そうしたら夏休みは俺とどっか遊びに行くか』って  
……それで、なんかそんなムードになったつーか……私、ひょっとして功介の事好きなのかもなーって気が  
してきて……」  
 
オレがきっかけなのかよ。 オレがバカな事したせいで、二人が付き合うきっかけ作っちまったってことなのかよ。  
 
やり直せ。  
今すぐやり直せ。  
頭ではわかってたのに。 こんな現実は直ぐになかった事にできる。   
真琴と功介、二人の中に芽生えた感情を今すぐリセットできる。  
頭ではわかってたのに。   
 
やり直さなかった。  
 
 
オレは夕暮れの教室で、真琴を床に押し倒した。  
もう面倒な事はやめだ。 ヤっちまって、絵を見て、未来に帰りゃいいじゃん。  
こいつや功介にどう思われようがしったこっちゃねーじゃん。  
どうせ未来に帰るんだから。 どうせ二度と会わないのだから。  
 
 
「やめて千昭……私、は、はじめてで……まだ功介と、キスしかしてないんだよ」  
「……したのかよ……。功介とキス……くそっ!!」  
「やだ……やめてよ、千昭! どうしちゃったの?千昭!! ……誰か!!たす」  
キスで真琴の声を遮る。  
真琴の制服を力任せに引きちぎった。 ボタンがはじけ飛ぶ。  
後は無我夢中だった。  
 
「やだ……千昭……やだぁ……」  
「ハァハァ……ウッセー……ハァハァ……クッ!!」  
真琴の内に青臭い欲望を解き放つ。  
 
ヤっちまった。  
どうしていつもうまくいかないのだろう。  
優しくしたいと思っているのに。 大事にしたいと思っているのに。  
結果はいつも同じ。  
いや今回は最悪。  
オレが真琴を押し倒してむりやり……。  
正気に戻ると真琴が泣いていた。  
 
念願かなって真琴とヤったってーのに。  
全然よくなかった。  
いや、よかったけど。 すっげぇよかったけど。  
やっぱよくなかった。  
真琴がオレの事をキライになっちまった。 散々罵られた。  
空しいばっかで、とても喜べなかった。  
「オレってサイテー」  
 
翌日。  
功介に予想通り、学校の屋上でアゴがガクガクになるまで、おもいっきりぶん殴られたあと。  
 
オレはやり直した。  
 
 ◆◇◆  
 
とうとう俺がチャージしたタイムリープの回数はあと一回になってしまった。  
予備で持ってきたヤツでまたチャージすればいいやと思っていたのに、大切なソレをどこかに落としてしまった。  
なんとかみつけて回収したら、もう使用済みだった。  
 
もし悪用されたら。 そう考えると恐ろしかったが。  
オレが最も恐れたのは、今度はもうやり直しが出来ないという事だった。  
 
オレに残されたタイムリープの回数はあと一回。  
オレはこの一回で未来に帰らなくちゃなんねー。  
考えてみりゃあオレは本来はこの世界に居ない人間なんだ。  
オレが居なかったら前の世界の真琴と功介みたいに二人は付き合っていたかもしれない。  
功介はいいやつだ。  
居なくなる人間とくっつくよか、功介とくっつく方が真琴は幸せだよな。  
 
だからオレは今回は何もしない事に決めてた。  
 
なのに、驚いたことに今回の世界では功介に後輩の『女』がコクってきた。  
功介に彼女が出来たら……真琴はひとりになる。  
功介が真琴を選ばないのだとしたら、何を遠慮することがある?  
近いうちに居なくなるオレが真琴に告白することは真琴にとっては残酷なことかもしれない。  
また真琴は泣くかもしれない。  
前回のあの時の、大きな瞳が、泣きそうな声が、今もオレの胸を締め付ける。  
 
それでもオレは真琴にスキだって言いたい。  
 
オレに残されたタイムリープの回数はあと一回。  
もうやり直しができない。 もう絶対、失敗できない。  
今度こそ。今度こそ。今度こそ。   
 
「じゃあオレと付きあっちゃえば?功介に彼女が出来たらって話。 オレ……そんなに顔も悪くねぇだろ?」  
 
 
今度こそ 笑ってくれるだろうか  
 

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