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・・・・・・
美寿々への陵辱はつづく。
ふたたび、床の上に手足をつかせ、四つんばいにさせる。
もちろん全裸だ。
美寿々の尻のほうに回る。
今度はおれが、あそこに入れる番だ。
美寿々は、有能な法律家である誇りも、一人の女性としての尊厳もうばわれてしまった。
逃げる気持も、抵抗する気力も、すっかり失っている。
裸で、頭をたれ、黒髪を垂らしている。
白くか細い手足がしなやかな体を支えている。
それはまるで肉食獣に逃げ場をはばまれた草食動物が、惨劇を前にうなだれているさまだ。
抜けるように白いやわらかな尻をつかみ、左右に開く。
「あぁ!」
あそこから、相棒の白濁液が流れ出た。
肌に破瓜の赤い血のあとが残っている。
おれは、美寿々の足の間に自分の黒く太い足を割りいれる。
そして怒張した黒いペニスを入口にあて、前戯なしの挿入をはじめた。
「あっ!!・・・はっ!ああっ!・・・アッ!・・・・・いやあぁあ!」
美寿々の腰は、おれの大きな黒い手が万力のように押さえつけている。
柔らかで、なめらかな白い肌がたまらない。
ぬめぬめと光る、黒く太いシャフトが、あそこでピストン運動を繰り返す。
また、ぱん、ぱん、ぱんと、肉を打つ音が、淫猥に、リズミカルに響く。
「きゃあん!あン!あん!あ!・・・・あ!・・・っ・・・・あ!」
ヒップのふくらみから、きゅっとくびれたウエスト。
薄い肩にとどく滑らかなラインが美しい。
尻の割れ目、背筋のくぼみ、肩甲骨のふくらみ。
ほっそりした白い裸の背中、すべてが淫猥だ。
うつむいた頭の髪が左右に分かれ、見える白いうなじがなまめかしい。
屈辱的な姿勢で、きゃしゃな体は欲望を受け入れる楽器になり、その音楽を奏でつづける。
「あっ!あっ!あ!あっ!アっ!あっ!あっ!あっ!・・・ン!あっ!・・・あ!あっ!」
相棒が、美寿々の頭のほうに歩み寄る。
「たまらないぜ!プライドの高い生意気な女が、後ろからひいひい犯されている姿はな」
黒人は、黒く分厚い胸板の前で巨木のような腕を組み、仁王立ちに女を見下ろした。
肉食獣のような黒い面構えに白く映える目をぎらつかせ、美寿々に好色な眼差しをそそぐ。
股間には相変わらず黒い男性器が、美寿々のやわらかな肉を貫き、味わおうと天を睨んでいる。
相棒の黒人はしゃがみこむと美寿々の髪をつかみ、顔を自分に向かせた。
「あ!・・・!」
太いくちびるで食らい付くようにキスをする。
「んっ!!!」
そのまま軟体動物のような舌で、美寿々の綺麗な顔をなめまわす。
「は・・・あぁ・・・・い・・・・や・・・あ」
相棒は上半身を起こした。
黒い筋肉の大きな山がそこに現れたようだ。
美寿々の可愛いあえぎ声がとだえた。
「ん・・・!んッ!!!」
相棒は、美寿々の頭を自分の腰にあてがっている。
美寿々の口は、こんどは相棒のものでいっぱいになった。
相棒は自分の腰を、女の頭にむけてゆっくりと前後に動かし始める。
「んんッ!・・んッ!・!んッ!!!んッ!」
おれも、同じリズムであそこへの打ち込みを再開した。
ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!
美寿々は、四つんばいになって前と後ろから、同時に太いペニスで攻められている。
かよわげな白い身体が、黒人たちの欲望の音楽を奏でつづける。
次第にリズムが早くなる。
ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん!ぱん!ぱん!ぱん!
美寿々の体が激しく揺れる。
パン、パン、パン、パン、パン!パン!パン!パン!パン!!!
いっしょに逝こうぜ、と黒人が叫ぶ。
しびれるような強烈な快感とともに、おれたちは吼えた。
強く身体を押しつけ、同時に美寿々に精を放った。
「!!!!!!」
美寿々の体が床に崩れ落ちる。
おれたちは場所を交代した。
「この生意気な女を、尻から犯りたかったぜ」
舌なめずりをしながら相棒が言う。
おれは女を見下ろした。
美寿々はうつぶせになったまま動かない。
おれは、裸体を足であおむけにころがし、平手でほおを叩く。
起きろ、お楽しみの時間は終わっちゃいない。
お嬢様のように気品があり、可愛く、かつ、クールに整った顔だ。
髪は乱れ、細く白い裸身はおれたち黒人の体液にまみれている。
ドラムの音は続いている。
おれを支配するけだものの心は激しく叫んでいる。
この女をもっと犯りたい、犯したいと。
美寿々の薄く開いた天使のようなくちびるから、欲望の白濁液が流れだす。
眉間にしわをよせ、美寿々は涙に濡れた瞳をうつろにひらいた。
「!!」
その瞬間。
おれは、雷に打たれたような衝撃を受けた。
・・・そして時が止まった。
心臓が、なめらかな、ほっそりとした手にとらえられ、おれはその瞳から目をそらすことが出来なくなった。
きれいな・・・・・どこまでも透明な瞳。
「おい・・・どうした」
相棒が、動かないおれに声をかける。
相棒の言葉も、周りの風景もすべて色を失った。
目の前の哀れな少女の思念が、怒涛のようにおれの心に流れ込んでくる。
おれは、その瞳の中に、めくるめく光彩の中に、すいこまれていった。
帆もオールもない小船が、なす術もなく大きな渦のなかに飲み込まれていくように。
・・・・・
走馬灯のように、美寿々の過去の光景が、たち現れ、消えてゆく。
「最近、ぼおっとしてると思ったら、こんな可愛い高校生のガールフレンドが出来たのね、アルバイト君」
美しい女性弁護士に声をかけられ、それまで楽しげに話をしていた二人がふり返った。
「け、検備沢先生!・・・あ、この子は、住吉美寿々君です」
優しく誠実そうな青年だ。
「彼女、すごく法律に関心があって、センスがいいんですよ」
この男が「たむら」か?
・・・いや、違うようだ。
・・・・・・
青年はパジャマ姿で車椅子に座っている。傍らにはセーラー服の美寿々がいる。
「原因不明の難病だそうだ、もう、体を動かすことも出来ない」
青年は、心の中で何度も練習した言葉をつぶやいた。
「お願いだ、美寿々、・・・・僕のことは忘れてくれ」
美寿々は彼の肩に手を置き、やさしく微笑んだ。
「私、資格を取ったの、家計の助けになると思う。」
美寿々は青年に顔を近づけ、キスをした。
「高校を卒業したら・・・私と結婚してください」
・・・・・・・
夫に先立たれ、今、息子の難病に心を病んだ青年の母親は、新興宗教に救いを求める。
母は、借金に借金を重ねた。
家族は、親類縁者からも見放される。
美寿々は法律の知識を駆使して戦った、しかし・・・
「ご主人とお義母様、お気の毒だったわね、美寿々さん」
「検備沢先生・・・」
参列者もいないさびしい葬儀。
借金のかたに明け渡すことになっているこの家に残っているのは、もう美寿々だけだ。
「ご自分で命を絶たれる前に、彼、内緒で離婚の手続きをなさっていたわ」
「あなたに、地獄のような思いをして欲しくなかったのね」
「どうしょうも無いことなんてない・・・どうしょうも無いことなんてないよ」
美寿々のほほを、とめどなく涙がこぼれおちた。
「自分の人生を簡単にあきらめるな!・・・あきらめたら・・・そこで終わりなんだから!」
・・・・・・・
「大野事務所の田村です」
たむら・・・この男がたむら・・・・
別人のはずだが・・・なぜだろう・・・どこか、さっきの青年とよく似ている。
・・・・・
事務所の扉が勢いよく開いて、美寿々が入ってきた。
先輩たちが目を丸くして見つめる中、彼女は一直線に田村にむかい、有無を言わさず鋭い平手打ちを食らわした。
「田村!あんた・・・バカ!?」
・・・・・
「あなたに・・・そんな思いをして欲しくないの」
真摯な願いをこめた、透きとおったその瞳が、夕日を受けてきらめいた。
なんて・・・綺麗な目をしているんだろう。
・・・・・
ふりかえった美寿々は、指をV字に開いて少し微笑む。ともに苦難の中を戦い、
勝利を得た仲間への笑みだ。
・・・・・
「おれ、住吉先生のこと好きですよ」
春の訪れを待つ桜並木のなかで、美寿々は不意に田村からくちびるを奪われた。
まるで高校生のような幼いキス。
「なに、これ?」
美寿々の問いには答えず、照れたように、そして誇らしげに微笑む田村。
・・・
美寿々は田村に蹴りをいれ、手にしたバッグで彼の頭をはたいた。
「田村のくせに、なまいきよ!」
そしてそんな田村を後にして、美寿々は、ひとあし早い春の陽光に照らされた公園通りへと歩みを進める。
春は、そこまで近づいている。
「ちょっと!田村のくせにって、なんですかぁ」
田村には見えないが、このとき美寿々は微笑んでいた。
この上なく幸せそうに・・・・・。
「田村・・・・、私、あなたのこと・・・」
・・・・・
「住吉先・・・生」
おれの目から涙があふれ出た。
おれの心が、魂が、ぬけがらだった場所に帰ってきた。
そして自分が誰なのか、何をしなければいけないのかを思い出した。
おれは、何より大切なこの人を、美寿々を守らなければ。
たとえ、相手が、自分の黒い分身であろうと、誰であろうと。
好き勝手にはさせない。
つづく