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「おい・・・どうした」  
黒・田村が、そのまま身動きしないおれに声をかける。  
 
美寿々の体を自分の黒い胸にひきよせる。  
なんて、軽い体なんだ。  
 
おれは、体液にまみれた美寿々の裸体を抱きしめた。  
 
まるで、泣き疲れて眠ってしまった子供のように幼い顔をしている。  
 
黒・田村の黒人がいぶかしげにおれを見る。  
 
「この人に・・・・さわるな!」  
 
黒・田村は、ぼりぼりと頭をかいて言った。  
「どうした、相棒、もっとこいつの体を楽しもうぜ」  
 
「お前は、心の闇の世界に帰れ」  
 
黒人の姿のおれは、裸の美寿々を抱きかかえたまま部屋の出口へにじり寄った。  
もし第三者がその姿を見たら、裸の美少女を拉致する野獣のように見えたことだろう。  
 
黒・田村は真顔になった。  
 
「ふん、お遊びの時間は終わりってことか?兄弟」  
おれたちの方に近づいてくる。  
 
「美寿々のあそこは、気持ちよくなかったのか?え?」  
猛禽のような顔は、真顔でおれを見つめている。  
 
「おれは、美寿々の気持を大切にしたい」  
 
出口へ、早く。  
 
「無理やり自分のものになんて、そんなひどいことは出来ない!」  
 
小さな部屋の出口が、なぜこんなに遠いんだ!  
 
「ただ、好きになってほしいんだ、おれの事を愛してほしいんだ」  
 
ドアノブがあった場所に手を伸ばす。  
 
無い!  
 
ドアノブどころか、ドアそのものが消失している。  
 
・・・そこはつるりとした、ただの壁だ。  
 
 
動揺からさめると、おれはその壁に、黒人の腕力で渾身の一撃をくらわした!  
 
強い衝撃が腕に返ってくる!  
「うっ!」  
 
壁はびくともしない。  
無言で逃亡をこばんでいる。  
 
「この部屋はすでにおれの心の一部になっている。出口はない。脱出は不可能だな」  
冷ややかな声で黒・田村が言う。  
 
「ここでどんなに騒いでも、暴れても、近隣の住人には届かない。助けは呼べない」  
黒・田村の口元がつりあがる。  
 
「ここはオレの檻の中だ、お前も美寿々もすでにオレの虜囚だ、奴隷さ」  
 
黒・田村は白い歯をむき出して哄笑した。  
 
「す、好きになって欲しいだと」  
その言葉がふさわしい、あざけるような笑いだ。  
 
「ひ、笑わせるぜ、お前は、さっきまで、ここで美寿々に何をした!」  
 
「無理やり、いやがる美寿々の処女を奪ったのは、誰だ!」  
おちつけ・・・言葉はフェイントだ、おれが動揺し、油断するのを待っている。  
 
「おれがお前を操っていた?いいや、お前はそうしたかったんだ」  
・・・相手が屈強な黒人とはいえ、今、体格は互角。  
 
「どんなに言葉を並べても、目覚めた美寿々はもうお前を許してはくれまい」  
・・・戦うなら今だ。  
 
いざとなったら組み合って、刺しちがえてでも・・・。  
 
おれは、美寿々の体をベッドに投げた。  
 
そのまま勢いをつけて黒・田村に殴りかかる!  
が、黒・田村は、おれの心を読んでいた。  
 
動けない!  
黒人の右腕が、おれの方にこぶしを突き出している。  
 
おれは腕をふりあげたまま、動きを封じられてしまった。  
 
指を広げ、そしてゆっくりと何かを握り締めるように指を曲げ、閉じてゆく。  
「言ったろう、この場はオレが支配しているんだ」  
 
黒・田村は、低い声であの太古の言葉をつぶやきはじめた。  
 
目に見えない力がおれをとらえ、圧迫していく。  
 
ふたたび、おれの存在が何かのゆがみの中に入っていく怪しげな感覚に襲われた。  
黒人の呪文が、今度は、おれの肉体を急速に衰えさせてゆく  
 
・・・弱く、小さく、年老いた田村に。  
 
体全体から、急速に生気が失われていくのを感じる。  
 
たくましい黒人の姿から、モンゴロイドの田村勝弘に、そして、やせ衰えた老人の姿に。  
まるでSFX映画のCGを観るように、見る見る変貌していく自分を感じる。  
 
髪が抜け落ち、皮膚にみずみずしさが失われ、シワが、老人班が浮き出す。  
 
体全体から筋肉が衰えていく。  
 
やせ細り、節々が痛み、視覚がひどく悪くなる。  
 
鏡を見たおれは、痩せこけた老人になった自分の姿に恐怖した。  
まるで・・・アウシュビッツの囚人のようだ!  
 
体が重い、もはや自分の力で立っていることもかなわない。  
 
すべての希望が、夢が、色あせ、むなしく感じられる。  
 
「死」が、いきなり現実のものとして意識される。  
 
おれは、その場にしゃがみこんでしまった。  
 
黒・田村は動けないおれに、いきなり蹴りを入れた。  
すさまじい激痛がおれを襲った!  
 
再度の蹴りを受ける。  
部屋のはしまで、おれは蹴り飛ばされた。  
 
激痛で息ができない!  
 
 
黒人はベッドの美寿々に歩み寄り、おおいかぶさるとおれを見ながら耳元で声をかけた。  
「残念だな、相棒はもう立たないんだとよ」  
 
美寿々の顔を、太い舌でぺろりとなめる。  
「なあに、心配するな。相棒の分は、おれがたっぷりかわいがってやるさ」  
 
黒人、黒・田村は美寿々をベッドから引きずりおろし、平手打ちを食らわす。  
「起きろ!」  
 
うめき声を上げて、失神からさめた彼女の身体をもちあげる。  
 
おれのほうに頭を向けて、また四つんばいにさせる。  
「こんどはオレが入れる番だったな」  
 
美寿々は力なくあらがう。  
「おねがい・・・おねがい・・・もうやめて・・・」  
 
黒・田村は高く持ち上げた尻に、容赦なく挿入をはじめた。  
 
美寿々はのけぞり、悲鳴を上げた。  
「アアッ!あッ!いやああ!」  
 
前戯も、愛もない、ただ行為者の快楽のための性行為だ。  
「いやああ!・・・もう、やめてぇ・・おねが・・・おかあさん・・・たすけ・・・」  
 
自分の心をとりもどした今、目の前の光景がおれを苦しめる。  
 
今までおれは・・・おれは、あんな風に美寿々をもてあそび、はずかしめていたのか!  
 
おれは大切に思う女性を、自分自身が陵辱し苦しめた記憶に戦慄した。  
 
 
衰えた耳からかすかに聞こえてくる美寿々の悲鳴が、おれを責めさいなむ。  
哀願が、おれの心を拷問にかけている。  
 
黒・田村が後ろから美寿々の髪をつかみ、引き、耳元で何かを言った。  
 
何かを言えと命令したようだ。  
 
「わた・・・し・・は、・・・はず・・・かし・・・い」  
美寿々は、その美しい顔を羞恥に染めて、あえぎながら言葉をしぼり出す。  
「いん・・・らん・・・・ぶ・・・・た・・・・・・です」  
 
黒人は、美寿々のドレッサーにあった大きな金属のイヤリングを取り出した。  
 
そしてそれを、まるで鼻フックのように彼女の鼻に取り付けた。  
「どうだ、立派な淫乱ブタになったぞ」  
 
黒・田村はそんな彼女の姿をみせつけて、おれをさらに苦しめ、弱らせようとしている。  
 
「田村、あのままバスにおとなしく乗っていたほうが利口だったぜ」  
黒・田村が、あざけるように声をかける。  
 
「そのまま、オレと入れ替わりに心の闇の世界に運ばれていたら、こんな辛い思いをしなくても良かったのにな」  
 
・・・・あいつの目的は何だ!どこにあるんだ?  
 
黒人は、美寿々の顔をおれによく見えるように、さらに髪を引っぱる。  
「ああ!あッ!」  
 
悲鳴を上げ、美寿々の顔が苦痛にゆがむ。  
 
なんとか・・・できないのか!  
 
 
つづく  

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