・全編田村視点  
・交際中でセックスも経験済み  
 
 
 
夜9時。俺は住吉先生の家のインターホンを鳴らす。  
「…遅い」  
出てきた先生はややご機嫌ななめだ。  
「いや、ちょっと面倒な案件が多くて…それに、週明けの朝イチで役所に提出の書類もあったので…」  
「まーたゆとりんの言い訳?あんたの処理能力の問題でしょ?」  
残業代どころか夜間の電気代が給料からさっ引かれるわよ、…って重森さんですか。  
訪問が遅くなったことは、以前も何度かあった。だが彼女が「お疲れ様」なんて言葉をかけてくれたことは一度もない。  
でも、俺は怒らない。  
じゃあ先生も事務所残って手伝ってくださいよ、なんて言わない。  
残業終わりの寒い夜道を急ぐ俺のために、部屋を暖めて待ってくれてたのを知ってるから。  
 
 
俺はコートとジャケットを脱ぎ、コンビニで買ってきたつまみやら惣菜やらの入った袋をテーブルに置いた。  
いつからか、金曜の夜は用事がない限り彼女の家を訪れるようになった。  
彼女が部屋と酒を提供する代わり、料理はしないので食料は俺持ちというわけだ。  
 
「はい、カンパイ」  
「お疲れ様です」  
2本の缶ビールががちんと鈍い音をたてて重なり、それぞれの口に運ばれる。  
俺は彼女と比べてかなりの下戸なのでそんなに飲まないが、酒量に関してはお互いさほど気にしていない。  
というより、酒を口実に2人の時間を作っているようなものだ。  
同僚(上司と部下か?)であり毎日のように顔を合わせているのだから、積もる話なんてのもない。  
仕事の話をしたり世間話をしたり、ほとんど何も話さないこともある。  
ただ2人でいると、彼女の空気はちょっと柔らかくなるのだった。  
 
先生は俺よりやや速いペースで数本の缶ビールを空にした。  
新しいものを持ってこようと席を立ちしな、軽くなった缶を振る俺の仕種を目に止めた。  
「田村も、もう一本いる?」  
「あ、いや…俺はもういいです」  
「…飲まないの?」  
「ん…あんまり酔いたくないので」  
「……そぉ」  
席を立つ彼女は、ほんの少し頬が赤い。  
アルコールのせいだろうか。  
 
「…はい」  
烏龍茶の入ったグラスを先生がテーブルに置いた。  
「あ、ありがとうございます」  
そのまま、俺の隣に無言で腰掛ける。  
ふわっと鼻孔をくすぐる香りは、嗅ぎ慣れたものだ。  
近づいて初めて、彼女が化粧を落としていたことがわかった。  
なんで化粧なんてするんだろ、何もしなくてもこの人は十分に可愛らしいのに。  
自身は缶ビールのプルタブに爪を立てている。  
ぷしゅ、と炭酸の弾ける音がする。  
「…あたしも、この一本でやめとく」  
一口飲んで、彼女はそう言った。  
「別に…俺のことは、気にしなくていいですよ?先生は好きなだけ飲んでください」  
そういえば以前、酔った勢いというのは好きじゃない、と言ったことがあった。  
それは俺の心掛けであって、彼女にまでそうあることを強要するつもりはない。  
「そんなんじゃ、ないわよ…」  
あ、ちょっと猫なで声。  
伏せたまつ毛がなんだか色っぽい。  
──えいっ。  
 
 
「……唐突、すぎ」  
「相変わらず、慣れないんですねえ」  
「慣れるも何もないでしょ、いきなりキスされて」  
視線、泳ぎまくってるなあ。顔も赤い。  
動揺してること、自分で気づいてるんだろうか。  
キスだってそれ以上のことだって、してるのにな。  
でも、そんな風に不慣れなところも可愛いのだけど。  
「最初の時といい…あんたは唐突なキスしかできないわけ?」  
「唐突じゃなければいいんですか?じゃあ、これからしますよー」  
「ちょっ…ちょちょ、バカ!」  
からかい混じりに迫ってみると、顔を真っ赤にして抵抗された。  
「………」  
「…た、田村…?」  
おそるおそるといった表情で、先生がこちらを見ている。  
大きな瞳が不安げに揺らぐ、そのさまが美しい。  
腕の中にその身体を包むと、おとなしく収まってくれた。  
温かくて、いとおしい。  
これだけで幸せだなあって思えるんだから、我ながらお手軽だ。  
…いや、訂正。  
抱き締めてたら、本格的に欲しくなってきた。  
細い肩、腰。  
生々しい温度と色気を持つ吐息。  
表情や身体つきなんかは時折少女みたいだとさえ感じるのに、どうしてこんなに魅惑的なんだろう。  
「…先生…今日泊まってっていーですか…?」  
「…どうせ、最初からそのつもりだったんでしょ?」  
「残業してると、ものすごく先生が恋しくなるんですよ…」  
「よく言うわよ。残業がなくたって泊まっていくじゃない」  
確かにそうだ。反論のしようがないな、これは。  
 
瞳が迷っている。  
その瞳にかかるまつ毛は、感情までも隠してしまいそうに伏している。  
顔の距離を縮めると、まつ毛の陰影が認識できた。  
「…キスして、いいですか?」  
「……勝手にすれば」  
やれやれ、今度はちゃんと訊いたのに随分な返答だ…そんな真っ赤な顔して。  
「じゃあ遠慮なく」  
つい、と指を顎に掛けてこちらを向かせ、静かに口づけた。  
先ほどの“唐突な”キスでは感じることのできなかった感触を味わう。  
唇を唇でなぞると、ホップのほろ苦さの中に不思議と甘さを覚えた。  
端正な歯列を舌が知覚したかと思うと、導くように口内が開かれる。侵入し、舌を絡めた。  
「……ん、ン…」  
噛みつくようなキスじゃなかった。  
一つ一つを確かめるように吸って、絡めて。  
それが思いの外濃厚なものになり、仕掛けた自分も頭が眩みそうに気持ちが良かった。  
くちゅ、くちゅ、と音がして、それに煽られるように舌を深く入れていった。  
 
もっとくっつきたいと、無意識に腕に力を込めていたらしい。  
胸のあたりを軽く優しくノックされて、ようやく唇と身体を少し離した。  
「ふゎ、は……」  
彼女の柔らかな唇は唾液でてらてらと光っていた。  
たぶん、俺のもそんな風になってるんだと思う。  
右手で彼女の左頬を包むように撫でると、最上級に艶めいた表情で  
「……はあっ…」  
と、濡れたような甘いため息。  
シャツをぎゅっと握りしめる彼女の手がなんともいじらしい。  
平時かっちりとした空気を身に纏う先生にこうしたしどけなさを感じさせられて、自分に完全にスイッチが入ったのを自覚した。  
確かに今日は泊まるつもりで来た。  
朧気な感覚で抱きたくはないから酒も控えめにした。  
でも…こんなに急くつもりはなかったんだけどな。  
ペース乱される、だけどそれで悪い気はしない。  
「ベッド…行きましょっか」  
「………」  
「返事がないと、ここで押し倒しちゃいますよ」  
「ッ!だっ、ダメ!」  
「じゃそういうことで」  
ベッドへ向かうべく、彼女の身体を抱き上げた。  
否定や拒絶ははっきりするのに、素直に首を縦に振るのはどうも不得意なようで。  
こんなに扱いにくいのにこれが可愛いと思ってしまうから、ナントカは盲目というのは本当なのだろう。  
 
先生の身体を横たえるなり、首筋に吸い付いた。  
彼女の口から漏れる吐息には時折嬌声が混じる。  
それも、声になるかならないかという微かなもので、奥ゆかしいかんじがすごく可愛らしい。  
「脱がしていいですか?」  
「っ、いちいち、訊かなくていい…」  
いいよ、って言えない人だよなあ。今さらなんだけど。  
上も下も、一枚一枚剥がし、ブラジャーとショーツだけを残した。  
「キレイ、ですね…」  
ほんとに、ちょっと触るのを躊躇するぐらい、キレイなんだ。触るけど。  
こんなことを言っても、彼女は喜んだ顔なんてしない。  
わずかに頬を赤らめてぷいっとそっぽを向く。  
でも、こういう反応だからこそ、俺は思ったことをちゃんと言ってやんなきゃなと思っている。  
こうして色んなことを許してもらえる関係になって初めて、彼女がものすごく感情表現が下手なのがわかった。  
自分からああしたい、こうしたいってなかなか言わない人なんだ。  
「あっ、ふあ……」  
ブラジャーの上から膨らみを優しく揉みしだいた。  
ひくっと肩が強張る。  
「痛い?」  
尋ねると、ふるふると首を横に振った。  
布越しでも、なんとなくその下に硬くなったものがあるのがわかる。  
ブラジャーの下側から手を入れて押し上げるように直に揉んだ。  
柔らかくて温かい膨らみの中央で、いじらしいまでに主張する存在。  
「先生…感じてくれてる?…嬉しいです」  
「ッ、や、だぁ…」  
耳元で囁くと、可愛い反応が返ってくる。  
「だって…ココこんなに硬いですよ?気持ちいいからじゃないんですか?」  
乳首を摘まんで再び囁いた。  
ひゃん、と高い声をあげたのち、瞳が訴えてくる。  
「意地悪」と。  
確かに、初めの頃と比べると、少々意地の悪いことをするようになったかもしれない。  
 
いじめてるつもりは、ないんだけどな。  
でもおそるおそる触れていたら、この人はいつまでも敏腕で優秀(で、カバチタレ)な法律家の殻が外れないのだ。  
男嫌いだったからかこういうことに関して頑なで、多少強引なことをしないと感情が表に出てこない。  
本気で嫌なことはしないように…と手探り状態ではあるが、何度か肌を重ねてそれが少しずつ判ってきた。  
「可愛い……」  
ブラジャーを乳房の上方に押し上げ、今度は唇で頂をぱくりとくわえた。  
「ひゃ、ぅ、んんっ」  
大きくはないながらもたぷんと柔らかく弾む膨らみは、唇で触れてもすごく心地好い。  
乳首を舌でころころと転がせば、耳に彼女の嬌声が官能的に響いた。  
「は…ぁ、あん、やんっ…!」  
……まあいろいろ御託を並べても、結局は俺が可愛い彼女を堪能したいだけかもしれないが。  
 
片手は腰のラインをなぞる。  
女の子の身体の曲線ってそれだけで艶かしくて、すごくヤラシイものだなと思う。  
その滑らかなラインと肌触りを指、掌でゆっくり楽しみつつ、俺は胸から顔をあげた。  
「先生…うつ伏せに、なってください」  
言われたとおり背中を上向ける住吉先生の、ブラジャーのホックを外した。  
そして唇と舌と手を使って白い肌に愛撫を加える。  
「っあ……ぅ、ふゃ、…ぅあぁ…」  
お腹の裏側、なだらかな面に時間をかけて点々と口づけを落とす。  
背骨に沿う窪みを下方からざらりと舐めあげると、微かに汗の味がした。  
一つ一つに、正直すぎるほど正直に反応が返ってくる。  
肩がひくつき、肩甲骨が起伏し、甘い声があがった。  
 
細い肩を荒っぽく掴み、ふわふわとした黒髪を少しばかり顔で掻き分けて、現れた首筋にキスをした。  
「…っあ!ん……ぅ、ふあぅ…」  
彼女の匂いがする。  
仄かなシャンプーと香水の匂い、それが彼女自身の焦がしたような甘い匂いと混ざる。  
何度も嗅いでいるはずなのに、そのたび嗅覚に新鮮で、劣情を喚起させた。  
しばし首に顔をうずめて浸っていると、彼女の息遣いを感じた。  
すぐそばにあるのに今は見えない顔、そこにある彼女の器官が、微かな音と共に空気を送り、迎えている。  
心なしか、呼吸に合わせて身体も上下する。  
 
──ちゅ、  
音をたてて首筋に吸い付くと、息を飲んだのがわかった。  
声ですらない、秘したような呼吸。  
密やかであればあるほど、たまらなく色っぽい。  
俺は彼女の肩を放した。  
その手を、シーツを堅く握り締める彼女の手に重ねる。  
「……住吉先生、…」  
名を呼んだ人は、ゆっくりとこちらを向いた。  
体勢が体勢なのでその顔が半分も見えない。俺は自分の身体を起こした。  
彼女の身体も支えて起こし、向かい合って座った。  
「…た、むら…」  
 
びっくりした。  
名前を呼ぶなり、俺の胸元にぎゅっとしがみついてくるから。  
「せ、先生?」  
あ、ブラジャーが肩に掛かったままだ。  
ストラップを腕から抜き、しがみつく手を一瞬だけ放してもらって外し、俺は彼女をそっと抱いた。  
「…背中…ダメ、ですか?」  
おずおずと尋ねると、腕の中で彼女は小さく頷いた。  
言えばいいのに。俺が訊いて、初めて意思表示をする。  
…言えないんだよな。俺も無理強いは本意ではないんだけど。  
「…ごめんなさい、嫌なことして」  
よしよしと頭を撫でた。  
普段こんなことしたら間違いなくひっぱたかれる。  
おとなしくしてるところを見ると、気持ち的にはだいぶほぐれてきたかな。  
あんなに色っぽい声あげてたのに。気持ちよくても、嫌なこととかダメなことがあるんだ。  
「う…後ろからは、や…」  
「え?」  
「顔が…見えないのは、や、やだ、から…」  
ああ、てことはバック、ダメなんだ。覚えておこう。  
……というか。  
「可愛いですね、先生」  
「……バカ」  
相変わらず俺のシャツにしがみついて胸元に顔をうずめているが、たぶん真っ赤な顔をしているのだろう。  
まさか「顔が見えないと嫌」とは。  
こういう好き嫌いを口にすることも珍しいが、こんな可愛らしいことを言うとは思わなかった。  
最初の頃は、絶対なかっただろうに。  
 
彼女の顎に手を掛けた。  
こちらを向かせると、目尻に涙の痕がある。  
顎に掛けた手を目尻へ運び、そっと拭った。  
「…、……」  
何かを言いあぐねるかのように、彼女の唇が小さくふわふわと動く。  
「…ぁ、…」  
気がつけば、吸い込まれるように自分の唇を重ねていた。  
上、次いで下の唇を甘噛みし、さらに深く重ねる。  
唾液を舌にのせ、彼女のそれにたっぷりと絡ませた。  
「ん…んっ……」  
両手を彼女の顔に添え、逃げるはずもないのに口内で小さな舌を追い回す。  
そのまま、崩れるように2人で倒れこんだ。  
 
押し倒す形になってようやく唇を離した。  
見れば、唾液が彼女の顎を伝っている。  
舌でそれを拭うと、小さく声があがり、身がすくむのがわかった。  
顔をあげて今度は指で自分の顎を拭うと、ふと思いついてその指を彼女の唇にあてた。  
 
「くわえて」  
「え?」  
「…舐めてほしいんです。嫌ならいいですけど」  
「べ、別に…」  
さほど困った様子も見せず、人差し指と中指が彼女の唇の奥に吸い込まれる。  
彼女の瞳は俺の指から顔、そして再び指へと揺らぎ、最後にそっと閉じられた。生暖かい口内で、舌がゆっくりと指をなぞっていく。  
ちゅぱ、と音がして唇が閉じられ、指が外気に晒された。  
「ふふ…ありがとうございます」  
満足。  
瞳を開けると、彼女はこちらをじっと見つめてきた。  
「…口でしてほしいの?」  
「…はい?」  
あ、フェラってことか。  
「いいです。先生にそんなことしてほしくない」  
なんだか腑に落ちない表情の彼女を見て、思わず苦笑が漏れた。  
「…下手だと思ってるとか、そういうことじゃないですよ?」  
だいいち、先生にやってもらったこと無いし。  
「俺が、先生にそういうことしてほしくないっていうだけで」  
「…好きじゃないの?」  
「したいんですか?」  
過去の経験と洞察力を総動員して考えても、したいってわけじゃなさそうだ。  
アレは男が気持ちよくなるためだけのもんであって、女の子に強要するもんじゃないと思ってる、ただそれだけのこと。  
…にしても珍しいな、俺の嗜好を訊いてくるの。  
少しずつだけど、変わってきたのかな。  
 
片手を下方に伸ばした。  
脚の付け根はじんわり熱を持っている。  
「んっ……」  
彼女の吐き出した息は熱を抱いていた。  
艶めいた表情から目を逸らすのを惜しみつつ、自分の身体を下方へずらした。  
焦れったそうに擦り合わさる太股。  
華奢というほど細くはないしなやかなそれは、触るとたまらない肉感だ。  
左脚の外側を優しく掴みあげ、その内側にキスをした。  
唇が沈んでいきそうなほど柔らかい。  
内股への口づけは段々と、ショーツに覆われたその部分へ。  
「はっ…ぁ…、はぁぁ…」  
甘い声が耳にひどく心地好い。  
唇がクロッチ部分まで辿り着くといったん離れ、そこに指を宛がった。  
確かに湿り気を帯びていることにじわり嬉しさを覚えながら、布の中央を縦になぞる。  
「…や…っ、はあっん……」  
浅く、軽くしか触れていない。  
反応を見たくて、湧きあがる本能をぐっと抑えている。  
「ん…、田村ぁ……」  
ああもう、すっごく表情がエロい。可愛い。  
ソコに顔をうずめた。  
濃い匂いに包まれながら、指でしていたのと同じように、舌でなぞりあげた。  
 
「……はぁん…」  
嬌声と共に、クロッチの湿り気が大きくなった。  
布越しなのに、どうしてこんなに感じてくれるんだろう。  
何度か舌を上下させたのち、唇をその部分にそっと押し当てて静止した。  
蒸れたような女の匂い。  
割り入った身体を切なげに締める両脚。  
辺りを包む高湿な暖かみ。  
じわじわと俺の中で熱が高まった。  
身体を起こし、彼女のショーツを脚から抜いた。  
もうあんまり、俺も我慢が利かない。  
上も下もばさばさと全部脱いだ。  
「先生……」  
再びソコへ顔をうずめた。  
粘つく襞に舌が触れた瞬間、  
「や…っ、ぁぁあん!」  
高く切ない声だ。  
やめたほうが、といつも頭をかすめるが、…止まれないんだ。  
にちゃにちゃと卑猥な音をたてながら舌は襞をかき分ける。  
すぐにぽってりとした小さな膨らみに辿り着くと、それを唇にくわえた。  
「ひゃぁっ、やっ、やああっ!」  
もうずっと彼女は鳴きっぱなしだった。  
口元をだらだらにしながら陰核を蜜ごとじゅるりと吸った。  
秘部全体が、ひくひくと蠢くのがわかる。  
「…先生?イっていいですよ…?」  
呼吸も絶え絶えで、絶頂が近いようだった。  
「ん…っ、んやぁ…」  
ふるふると首を横に振り、なんとか堪えようとするさまはすごく、すごく可愛いんだけど。  
もう一度陰核を、きゅ、と強めに吸った。  
「はっ……ん、んぁあ…!!」  
彼女の身体がぴくぴく強張り、それが長く続いた。  
やがて全身から力が抜けて、深い呼吸音だけが耳についた。  
 
彼女の上に被さり、見つめた。  
絶頂は余韻を残すだけとなったのに、未だに泣き顔が晴れない。  
年甲斐もなく(なんて言ったら100パー怒られるな)俺の前で泣いてくれるのは、けっこう嬉しかったりする。  
「先生、可愛い」  
「ん、っ……」  
「先生、すごい好きです」  
潤んだ大きな瞳に、俺が映っている。  
関係をもったばかりの頃は、俺の言うことにおもしろいくらいいちいち噛みついてきた。  
最近、何も言わない代わりに、瞳で訴えてくるようになったなあと思う。  
それは抵抗されるよりもずっと嬉しいことで。  
「…いれて、…いいですか?」  
でももっと素直になってほしいな、と考えるのは、今はまだ贅沢ってもんだろう。  
ゆとりゆとりとバカにされてきたことを考えると(仕事の場では未だにそうだが)、我ながら進歩だ。  
彼女は瞳を伏せ、ゆっくり小さくこくんと頷いた。  
 
すぐにでもいれてしまいたい気持ちを抑え、蜜壺に指をあてがう。  
経験上、これなら指の1本や2本(身も蓋もない言い方だが)スルッと入ってしまうはずだが、慣らしてあげないといけない。  
「んっ…、はぁぁ…ぅ」  
案の定、抵抗もなく指が埋まっていく。  
膣内は愛液でいっぱいで、潤滑液としては申し分無いなあなんて思った。  
指を動かすと、外に流れ出ていく。  
「…いっぱい、垂れてきちゃいますよ。たくさん感じてくれたんですね」  
溢れ出る愛液が皮膚を伝ってシーツにしみを作るのが、彼女にもわかるだろうか。  
「ばか……」  
叱責が虚勢と化す、蕩けたような声だ。  
柔らかな膣壁をさらに押し広げるように、指の腹でゆっくりと撫でる。  
動かすたびにくちゅ、と音がして、指に愛液が絡んだ。  
敏感な部分をそっと擦ると、一際甘い声。  
官能的ってのは、こういうことを言うんだ…。  
頭が眩みそうだ。  
「…指じゃない方が、いいんでしょう?」  
何より、俺自身がもう限界に近くて。  
引き抜いて、糸を引く指を舐めた。  
避妊具を装着し、時間をかけて挿入していった。  
「っ…力、抜いててくださいね…」  
って言っても挿入時の彼女はけっこうガチガチで、俺は脚とかお腹とか、色んなところを撫でさする。  
歯を食い縛ってるのはまだいい方。  
あんまりキツいと、自分の唇を噛んじゃうんだから。  
…あ、やばい。  
「…ンッ」  
身体を倒し、唇を重ねた。  
「…ダメですって唇噛んじゃ。血出ちゃいますよ。ずっとキスしてますからね」  
俺の唇なり舌なり、噛んでしまえばいいのだ。  
幸い結合部から多少意識が削がれるのか、そういったところを噛まれたことはないけど。  
唇を塞いだまま、挿入を続けた。  
直接見なくても奥まで進める程度には、すでに深くまできている。  
「ん……ぅー…」  
首を、肩を、髪を撫でながらたっぷりと時間をかけ、ようやく全部はいった。  
唇を離すと、うっとりとした表情。  
うあ…すげえ幸せ。  
「だいじょぶですか?」  
「……うん」  
返事だ。またちょっと幸せがこみあげる。  
「…気持ちいい?」  
あ、目逸らされた。  
ここまできてなお恥じらう彼女は、ホントに可愛らしい。  
下腹部に手を伸ばし、撫でさすった。  
「ふあっ……、ゃ…」  
「…ちゃんと、気持ちいいんですね。よかった」  
艶の混じる声が、証明していた。  
 
「…はいっちゃった、んですね」  
少し力を入れてお腹をさすると、なんとなくペニスの形が確認できた気がした。  
「………っ、」  
彼女は瞳を閉じ、深い吐息を送り出す。  
静かに堪えるようなその表情も、小さく開いた唇も、吐き出される空気も、あまりに艶かしい。  
「すみよし…せん、せえ…」  
彼女の言動の一つ一つが、不完全な自分の欠落箇所を充たすような、不思議な暖かい気持ち。  
上擦る声に反応して瞳を開けた彼女を見て、自然と笑みがこぼれた。  
彼女の髪をふわりと撫でた。  
指が肌に当たるか当たらないかの、細やかな仕種で。  
緩いウェーブが心地好く指に絡まるのを楽しむ。  
しばし指を滑らせていると、その手に彼女の視線と手とが重ねられた。  
手首を反し、彼女の手をシーツに縫い付ける。反対の手も同じように合わせた。  
「……田村」  
「…キスしていいですか?」  
「ふ…こんな時まで訊かなくていいよ」  
僅かに口角の上がった唇に、自分のそれを重ねた。  
唐突と言ったり勝手にと言ったり訊かなくていいと言ったり。  
舌を絡め、角度を変えた。  
「……ん」  
彼女の喉が反り返る。  
小さな舌を、ぢゅぢゅ、と吸い上げた。  
「んっう……ぅぁ」  
少し苦しげに鳴る喉に気づいて唇を離した。  
潤む瞳に誘われるように瞼に口づけると、そのままスルスルと耳元へ。  
耳朶を甘噛みし、たっぷりと唾液をまぶした。  
「ふあっ…あ、んん…」  
不安げにもぞもぞと動き出す手を、さらに強く縫い付ける。  
耳の裏にキスをして、穴に舌を潜らせた。  
「ん、ゃあん…っ、ひゃ、あ…っ」  
彼女がどんな風に感じてるのか…声と、つながった部分の締め付けで伝わってくる。  
余裕、無くなってきた…。  
 
「先生…、唇噛んじゃダメですよ。怒りますからね。俺に噛みついていいですから」  
放した手を彼女の身体に回した。彼女の手も俺にしがみつかすよう促す。  
噛んで堪えなければならないほどの快楽なら、初めから声に出してしまえばいいのに、と思う。  
乱れた声をあげるのに抵抗があるようで、いつも抑えている(たぶん、最後にはそれも抑えられなくなるんだけど)。  
まあ、彼女が自分で自分を傷付けるようなことがなければそれでいい。  
もう少し慣れたら、声出して、って言ってみようと思っている。  
彼女の身体を僅かばかり抱き起こして、ゆっくりと律動を開始した。  
 
「んっ、はぁ…ぅ」  
ぎゅっと密着した身体が強張った。  
細い肩が折れそうなほどに、回した手に力がこもる。  
加減が調節できないくらい気持ちいいんだ。  
緩慢なストロークの合間から、愛液がだらりと垂れてくる。  
俺のペニスを伝い、彼女のお尻を伝った。  
ぐっちゃぐっちゃと鳴る水音は、嬌声混じりの彼女の呼吸と同じくらい、扇情的だった。  
「ッ…すっげ、ヤラシイ、音……」  
思わず一人ごちた本音が、彼女を刺激したらしい。  
首に回された腕の力が強まり、そして腰がゆら、と動いた。  
「っあ…」  
この反応。先生も無意識だったんだ。  
「…何に感じたんですか?音?…俺が言ったこと?」  
「あ…っ、ゃ、だぁぁ……」  
支配欲なんてものはないつもりだけど、彼女に煽られてしまう。  
なんてのは男の都合いい言い訳なんだろうか。  
単調なストロークを変化させ、彼女が感じやすいところを攻めながら加速する。  
痛って……。  
肩のあたりが鈍く疼く。彼女が口を当てたところ。  
空気を含んだ愛液が、ぷちゅ、と泡立ちながら彼女の入り口を上塗りして濡らしていく。  
肌の打ち鳴る音も響いていた。  
びたびたと、ぶつかっては愛液の糸を引いて離れ、またぶつかる。  
肩の疼きが強くなる。刺激されてまた激しく打ち込む。  
限界に近づきながらも、それが相互効果であることを身体の全部で知覚し、嬉しくなる。  
「…住吉先生、」  
「た、田村ぁ……も…だ、め…」  
え…うそ。  
「先生…イきそう?」  
こく、と頷いたのがわかる。  
うわ、だって、…触ってないのに。  
両手はしっかりと彼女の身体に回している。  
直接刺激を与えているのは、膣内に抽送を繰り返す男性器だけ。  
ああ、やばい、なんか嬉しい。  
というか嬉しくて、気持ちよくて、もう爆発しそう…。  
「…っ俺も、イきそう…やばいです…」  
無我夢中で打ち込んだ。  
ベッドが軋んだ。  
抽送の音がいっそう卑猥さを帯びた。  
腕の中のこの人と、もっと繋がりたい。  
俺の先端が、彼女の最奥に突き当たる。  
「…せん、せぇ……」  
「はっ…あん、あっあっあっ…ふぁ………っ!!」  
爆ぜた。  
ゴムの中にどくどくと液体が溜まる。  
彼女の身体も全身がビクビク痙攣した。  
腰に絡まる彼女のしなやかな脚が、震え続けていた。  
 
彼女の身体をベッドに下ろしたが、腕は俺の首から離れようとしない。  
いや、すっごく嬉しいんだけどね。  
頬をそっと撫でた。  
「…大丈夫、ですか?」  
「ぅ、ん……」  
脱力しきって、なんか蕩けちゃいそうだな、先生。  
「…ごめんなさい、いっぱい泣かせちゃって」  
決壊し、なお彼女の瞳は涙をたくさん湛えている。  
唇で頬をのぼり、瞳に口づけて涙を拭った。  
右側、それから左側。  
顔を少しあげると目が合い、触れるだけの静かなキスをした。  
離れるとまた目が合った。  
大きな瞳はうっとりと恍惚の色を浮かべ、潤んでそこに映る像を揺らしている。  
「…風呂、沸かしてきますから。休んでてください」  
彼女がほんの少し名残惜しそうに手を放した。  
ペニスを抜き、手短に後処理をする。  
脱ぎ捨てたボクサーを穿いてバスルームへ向かった。  
 
戻ってくると、どうやら先生は眠っているようだった。  
ベッドの横に屈んで頭を撫でてみたが、目を覚まさない。  
いつものこと、風呂が沸いたら起こせばいい。  
すやすやと寝入っているところを起こすのはしのびないが、キレイにしないと翌朝不機嫌なのは彼女の方なんだから。  
ベッドにもたれるようにして床に座り、テーブルにある缶ビールに手を伸ばした。  
一口飲めば、ぬるいわ炭酸抜けてるわで、お世辞にも旨いとは言えない。  
それでも行為の後の身体に水分が行き渡るのは気持ちのいいものだ。  
 
彼女の方をちらりと見遣った。  
起きない…よな。  
「…美寿々さん」  
以前、こう呼んだら怒られた。  
プライベートの時ぐらいいいじゃないですかと食い下がったが、断固拒否。  
『だいいち、田村が先に言ってきたのよ?住吉先生で、って』  
『いや、それは、そうですけど…』  
『あんた、なんであたしを先生って呼ぶの?』  
『…先生が、資格保持者だからです』  
『…わかってんじゃない』  
『えっ?』  
『あたしは資格保持者、あんたはそうじゃない。だからあたしを先生と呼ぶ』  
『…はい』  
『じゃあどうなればあたしを名前で呼べるか…ゆとりんの頭でもそれくらいわかるでしょ?』  
──というわけで、“美寿々さん”は俺が行政書士の資格を取るまでお預けである。  
試験受かったら呼び捨てしてやる。俺のが歳上だし。  
…でもキャリアはどうしても負けてるから、やっぱりさん付けじゃなきゃダメかな。  
そんなことを考えながらちびちびとビールに口をつけていた。  
やたら残ってるなと思ったら、コレ先生が一口飲んだだけのやつか。  
飲み干したころ、湯沸かし終了のベルが聞こえた。  
 
「先生、風呂沸きましたよー」  
瞼の重たそうな先生を抱き抱えてバスルームへ向かう。  
「田村、着替え……」  
「はいはい」  
下着類はバスルームに隣接する脱衣所に置いてあるが(残念だ)、彼女のパジャマは部屋で朝脱いだまま。  
脱衣所へ戻ってパジャマを渡し、再び出ようとすると呼び止められた。  
「…田村も、入る?」  
「え」  
魅力的過ぎる提案、なんだけど。  
「いいですよ、だってタオル無いじゃないですか」  
驚くことに、この家には予備のバスタオルというものが無い。  
一時は時間差で入って彼女のタオルを使わせてもらうことも考えたが、いくらなんでも彼女に悪いので諦めた。  
最近はずっと、彼女が風呂に入っている間にフェイスタオルを借りて身体を拭くだけだった。  
彼女がチェストの引き出しを開けた。  
「…はい」  
取り出したのは、淡いブルーのバスタオル。新品だ。  
「え…これ…」  
「買ってきた」  
…ホントに?  
「…マトモに汗流さないままで、風邪引かれても困るし」  
「先生ぇ…」  
ものすごく嬉しくなって、たまらず抱きついた。  
「…あんまりくっつかないでよ。汗だくだし」  
彼女が胸元に抱えたバスタオルが、俺の上半身に触れた。  
ふかふかと気持ちよかった。  
 
 
「…タオル準備してもらえるんだったら、どうせなら着替え持ってくるんだったなあ…」  
どうせ身体を拭くだけだからと、今まで着替えを持参したことはなかった。  
背を向けた彼女を抱えて、たっぷりと湯の張ったバスタブに身を沈める。  
うわあ、幸せだ。  
「調子乗ってる…別にあんたのためだけじゃないのよ?来客全般のためなんだから」  
「俺以外に、バスタオル貸すような来客なんていないじゃないですか」  
「…おケイとか」  
「彼女が家に来る時は朝まで飲んでそのまま帰るんだって言ってましたよ、前に」  
というか男が使ってるタオルを女友達に貸すんですか。  
「……うるさい。もういいわよバカ」  
拗ねちゃったよ。  
「…すごく、嬉しいですよ?ありがとうございます」身体を引き寄せ、耳元で静かに囁いた。  
「今日は、『初めて』がいっぱいあって嬉しいです」  
「…『初めて』?」  
彼女は腕の中におとなしく収まっている。  
「初めてタオル用意してもらって、一緒に風呂入った。背中がダメなの初めて知った。あと、先生が初めて中イキした」  
「……は?」  
「自覚ないですか?いつもアソコ触ってあげないとイかないけど、今日はいれて動いただけでイ「ちょ、や、やだ、バカ!!」  
振り向いて思いっきり遮ってきた。  
広くはないバスルームに高い声がびんびん響く。  
 
露骨な言い方、すごく嫌がるもんなあ。  
それを知ってて、ちょっと悪戯心が芽生え口にしてみたら、耳まで真っ赤だ。  
…ホントに中イキの自覚なかったのかな。  
そんなに、いっぱいいっぱいでいてくれてるんだ。  
湯船から剥き出しになった首筋に口づけた。  
「っきゃ…!」  
突然の刺激に彼女の身体がびくんと震えた。  
「…ホントに背中ダメみたいですね」  
囁いたらそのままその耳をくちゅくちゅとしゃぶった。  
「ん、ひゃ…、や…ん」  
可愛い声と反応をもっと楽しみたい気もするが…あんまりやると俺にスイッチが入ってしまう。  
そんなつもりはない。ゴムが無いし、たぶん彼女がもたない。  
吸った耳朶を放すと、ちゅぱ、と響いた。  
「田村…ちょっと、いい加減、…に」  
また振り返って突っかかってきた…と、思いきや。  
「…先生?どうか、しました?」  
彼女の視線が一点で止まる。  
唇をキュッと結び、泣きそうな表情で向き直ってしまった。  
「……肩…、ごめん…」  
「えっ?」  
「痕、残ってる…。2つも」  
「あ」  
彼女が噛みついた痕だ。  
自分では見えないが、触ってみると確かに少し痕が残っているみたいだ。  
一つはもう一方と比べて薄く、ほとんど消えかかってるようだが。  
「たぶん、一個は先週のですよ。…別に気にしなくていいですから」  
俺がそうしろって言ってるんだし。  
…ああ、しゅんとしちゃった。  
 
「…先生、明日の予定は?」  
「え…っと、特にない、けど」  
「じゃあ、住吉先生の明日、俺にください」  
「どういう…こと?」  
「明日も一緒に居たいです。どっか出かけるとかじゃなくて、先生の家で過ごしたい」  
泊まった翌日は、いつも朝には帰っている。  
気にしなくていいのに凹んでる彼女に、甘えてみることにした。  
「あ…俺一回帰って、着替えてテキストとか持ってくるんで、勉強付き合ってください」  
「いい…けど」  
と言いながら、彼女は不安げな瞳を覗かせている。  
図に乗りすぎたかと少し焦った。  
「ふ…2日続けては、無理、かも…」  
「え?何を………あ。」  
顔真っ赤。気づいて思わず苦笑してしまった。  
「先生、俺そんながっついてないです。そんなつもりで提案したんじゃないですって」  
「……っ」  
あーあー、ほんっと可愛い人だなあ。  
「しません。大丈夫です。でも夜までは居ていいですか?11時ぐらいまで」  
「…なんで11時」  
「そりゃ、10時からバラエティ番組ありますからね。一緒に見ましょう」  
「…?」  
嬉しい。仕事でも一緒な分、プライベートまで長く拘束するのはなんとなく躊躇われることだから。  
大半は仕事仲間として接する相手だからこそ、こうやって2人で過ごす時間はやっぱり特別でかけがえがない。  
知らなかった彼女を知って、変化していく彼女を感じて、そしてまた彼女がいとおしくなる。  
俺はもっと、この人をわかりたい。  
さて、明日はどんな住吉先生が見られるだろうか。  
 

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