「ん?あのひと…どこかで見たような気がしますわ」
藍沢みんとは、その青年に気づいて足を止めた。
藍沢邸の中庭で、庭師に混じって花壇の手入れをしている、長身で髪の短い青年が気になった。
新人なのだろう。青年は庭仕事の指導を受けているようだった。
今まで邸内では見たことがない顔のはずなのに、よく知っている人のような気がしたのだ。
みんとは、青年の顔をよく見ようと、庭師たちの方に近づいていった。
「ええと…?」
そんなみんとに、庭師たちの方が気づいた。
「あ、お嬢様!新人を紹介します」
「奥様が香港からスカウトした、植物学者の卵なんだそうで」
「白(パイ)です。よろしく」
「パイさん?こちらこそ…って?あっ!」
みんとは叫び声を上げそうになり、自分の口に手を当ててそれを無理矢理飲み込んだ。
目の前にいたのは、確かに東京ミュウミュウの敵、エイリアンの一人であるパイだった。いや、少なくともパイにそっくりだった。
確かに、目の前にいるパイは身なりも普通だし、エイリアンの特徴である大きな耳もなく、普通の人間に見える。
しかし、その顔と声、クールな態度は確かにエイリアンのパイのモノだ。
「お母様がスカウトしたですって?」
その日の夜、宿題を済ませたみんとは部屋着のままサンダルをつっかけ、中庭に出ようとしていた。
「お母様が自分で庭師を雇うなんて、あるはずありませんわ!家の中のことはばあやに任せているのに…」
そのばあやに確かめても、白青年は確かに母親が雇った人物だった。身元調査の結果も白だという。
「でもそんなの、エイリアンならなんとでもなるわ…」
みんとは、昼間パイ(と思われる人物)が手入れした花壇に近づいていく。あのパイがエイリアンなら、花壇に何か細工をしている可能性もある。ミュウミュウの超感覚で何か探り出せるのではないかと考えたのだ。
花壇の中に用心しながら手を入れ、感覚を研ぎ澄ましてみる。しかし、何も感じない。
「ん?これは…?」
気配の代わりに、手に何かが当たった。取り上げてみると、何か固いものが入った紙袋だった。
「なにかしら?」
耳を澄ましても時計の音がするわけでもない。爆弾でも無さそうである。
とりあえず自室に戻って開けてみると、手紙とビデオテープであった。テープにはラベルも何もない。
「みんとお嬢様へ。
このビデオは確実に誰にも見られない様にしてください。
また、内容についてはもちろん、このビデオの存在自体肉親、親友であっても一言も漏らしてはいけません。
もしも臭わせるような事を一言でも漏らしたら、その時はこのビデオの映像が世界中のテレビから流れると思ってください。
明日の晩10時に中庭で会いましょう。この約束のことも誰にも言わないように。
言えば、藍沢家は破滅します。
白」
みんとは、手紙を前に首をかしげた。
「なに…あれ?」
みんとはテーブルに突っ伏したままつぶやいた。
思い出す事さえ辛い。昨夜見たビデオの内容である。
ビデオには、みんとの母が映っていた。一緒に映っていたのはパイだった。パイの顔は映っていなかったが、声で分かった。
母親が、パイの前で全裸になり、自らをメス犬と、奴隷とののしり、パイとセックスしていた。
普通のセックスではない。男女の肉の交わりを初めて見たみんとでも、はっきりと分かった。
母は何らかの方法でパイに洗脳され、肉の人形にされてしまっているのだ。
「お母様が…エイリアンのメス犬奴隷ですって?」
「みんとー!寝てないで働いてよー!」
いちごの声が降ってくる。それを聞いて初めて、みんとはここがカフェミュウミュウであることを思い出した。
慌てて顔を起こす。周りを見回しても、いまのみんとの呟きは誰にも聞かれた様子はなかった。
「ふふん?私はエイリアンとの戦いに備えて英気を養っているのですわ?」
いつものように返すみんと。いちごも他のメンバーも、突っ込みながらもみんとを放置して働き続ける。
みんとは、それを眺めながら、口の中で続けた。
「そう、今夜のためにね…」
ビデオのことが世に知れれば一大スキャンダルだ。
藍沢家の名誉を、いや、母のことを考えれば、このことはミュウミュウの仲間にも言えない。
みんとだけの力でパイを倒し、母を取り戻す必要があった。
「私を本気で怒らせましたわね?どうなるか、思い知らせてあげますわ」
夜10時。藍沢家の中庭に、ミュウミントが立っていた。
陰の中から現れた、エイリアン・パイに向かって、ミントはむしろ静かな声でそう告げた。
パイは驚いた様子もなく肩をすくめてみせる。
「ミュウミントか。
私は藍沢みんとお嬢様を呼んだのだがな。
簡単に正体をばらしてしまっていいのか?
『また』脅迫の種が一つ増えてしまうぞ?」
もともと変身前のみんとにも何度も会っているくせに、そんなことを言ってくる。
挑発するようなパイの口調だが、みんとは挑発以前に怒りに我を忘れていた。
「良くもお母様をあんな目に!
リボーン・ミント・エコーッ!!」
いきなり、パイに向かって必殺技を放つミュウミント。しかし、パイはこれをあっさりとかわした。
「くっ!このっ!逃げないでっ!当たりなさい!」
ミントはパイに向かって闇雲に攻撃を繰り返していく。しかし、パイはあくまで冷静にかわし続けた。
「うぅっ!この!この!このっ!
返しなさいっ!お母様を!返してっ!」
ミントの目に涙がたまる。
「なんでっ?当たらないの?勝てないの?
駄目よっ!わたくし、絶対に、お母様を、取り戻すんだからっ!」
そんなミントの攻撃を、パイは無情にかわし続けた。
力の差を見せつけられ、ミントの胸に屈辱と無力感が疲労と共にたまっていく。
そしてついに、ミントは足をもつれさせてしまう。パイが信じられない素早さでミントの肩をつかみ、顎を引き寄せて唇を奪った。
「なっ?!」
パイに唇を奪われ、ミントは瞬間頭が真っ白になり、されるままに抱きすくめられてしまった。
妙に生暖かい唇の感触が胸にしみこんでいくにつれ、同じところから真っ赤な怒りが迸った。
「あぁぁっ!私の唇!ざくろお姉様のものだったのにぃ!」
こん身の力でパイを突き飛ばす。パイはその力に、驚きと共にどこか楽しげな表情をひらめかせた。
「ほう?まだそんな力が残っていたか。
だが、それももう終わりだ」
「冗談ではありませんわっ!
わたくし、あなたは絶対に許せない!」
みんとは力強くパイの言葉を否定する。しかし、ミュウミントの力は、本当にそこまでで尽きてしまっていたのだ。
「いきますわ…あぁぁっ」
一歩を踏み出そうとしたミントの膝が突然砕ける。
「なんですの、これぇ?力が…抜ける?」
がっくりと地に伏すミュウミント。全身から力が抜けていき、それと共にあんなに吹き上がっていた怒りもどこかへ蒸発してしまったかのようだ。
ミントは這いつくばったまま、ふるふると肩を震わせた。
「こんな…こんなことって…」
突然動けなくなり、攻撃どころか逃げることさえ出来なくなってしまったミュウミント。
「ふ…」
パイは氷の微笑を唇の端に浮かべ、余裕を見せてゆっくりと歩み寄ってくる。
「くっ…うぅ…」
ミントは起きあがろうとして果たせず、うめき声を漏らした。あんなにも熱くたぎっていた怒りも消え失せ、今は恐怖と屈辱に震えるだけだ。
「お前の負けだ。ミュウミント」
パイはミントの側らに立ち、感情のない声を投げつける。その淡々とした響きが、ミントの屈辱をさらに増した。
パイは毒やクスリを使うのが得意だ。さっきのキスの時にでも、ミントに何かした可能性は高い。
だが、それが分かったとしても、今のミントにはどうすることも出来なかった。
「くっ…私を殺すのですか?」
「いや、罰を与えるだけだ」
きしる声にで問えば、そんな言葉が返ってくる。
「罰って…あっ?!」
痺れる身体をパイに押さえつけられ、ミントは四つん這いの姿勢を取らされてしまった。
そして、パイはミントのパンツを無造作に引き下ろし、尻を丸出しにした。
「何をなさる…あぁっ!いやーっ!」
ミュウミントはパイの奸計にはまって敗北し、痺れた身体を這いつくばらせている。
パイはミントのパンツを引き下ろし、可愛らしい桃尻をあらわにしてしまった。そんな酷いことをされても、今のミントには逆らうことが出来ない。
「いやっ!止めてくださいっ!」
痺れた身体で、身をくねらせるミュウミント。
「罰を…いや、お仕置きを与えると言っただろう」
パイはそう言うと、ミントの背後で手を振り上げた。
ぱしーーんっ!
「あぁぁっ!いゃあーーっ!」
パイの手のひらがミュウミントの小振りな尻に振り下ろされた。
ミントは四つん這いの屈辱的なポーズで、パイに尻たたきを受けてしまう。
「なんですのーーっ?!いゃぁーーっ!」
ぱんっ!ぱしんっ!
パイは無表情のまま、ミントの尻たたきを続けた。
「いゃぁぁぁーーーっ!痛い!痛いっ!」
尻が真っ赤に腫れるころ、ついにミントは泣き叫び始めてしまった。痛いが、痛みよりも、むしろ精神的な衝撃の方がダメージが大きい。
「うぁぁーーっ!いゃぁーーーん!もう、もう、許してーっ!」
ミントの意識は真っ白になって飛んでしまっていた。自分の置かれた状況が理解できず、今やただ肉体的な痛みに反応するだけの子供だ。
とうとう泣き出してしまったミュウミントに、パイの無機質な声が投げつけられた。
「お前の負けだ。ミュウミント」
「うぅ…ぐすっ」
放り出され、地面に突っ伏してすすり泣く。パイの宣告と共にミントの変身が解け、藍沢みんとに戻ってしまった。
まるでパイの宣告どおり敗北を認めたようなタイミングだった。
みんと自身がそう思った。敗北感が胸を押しつぶす。
(わたくし…あぁ…)
「藍沢みんと」
呼びつけられると、身体がびくりと震えた。今のみんとは怯える小鳥だった。
「明日の晩も10時に中庭に来い。
ビデオのことも、今夜の、もちろん明日の事も他言するな。
話せば…分かっているな?
せいぜい、母親のために耐えるんだな」
そう言い捨てると、パイは影の中に去っていった。
変身が解けても、みんとは尻を丸出しにしたままだった。その姿のまま、パイの去っていく気配が消えるまで、みんとは地面の上で身を固くしていた。
「お母様…」
「お母様を…どうするつもりなの?」
次の日の夜、藍沢家の中庭で、ミュウミントはエイリアン・パイにそう尋ねた。
香港人の庭師白は、この2日間も普通に仕事をしているようだったが、みんとは彼を避け、昼間は顔を合わせないようにしていた。
今日は昨夜の敗北で精神的にまいっていたため、学校もバイトも休んでしまっていた。
「べつにどうもしない。
ただの人間など、どうでもいい。
お前が私の出す条件を飲むなら、洗脳を解いてやってもかまわない」
パイは、相変わらずの無感情な声で答えてきた。特に戦う意志も無さそうに、庭園灯にもたれている。
ミュウミントは、それでもいつでも戦えるように身構えながら、聞いた。
「条件って?」
「お前が私に忠誠を誓い、メス奴隷になることだ」
「め、メス、どれい、ですって?!」
聞き返す声が裏返ってしまった。ミントの脳裏に、ビデオで見た母親の痴態がよぎる。
「そ、んなこと!出来るわけありませんわっ!
大体、私とあなたは敵同士なのですよ?」
「だから、ミュウミュウを裏切り、私のものになれと言っている。 断るなら、お前の母親は私のメス奴隷のままだ。
それだけのことだ」
「それだけって…そんな」
あまりに素っ気ないパイの物言いに、ミントは言葉を失う。
「ミュウミュウのメンバーを奴隷にすることには意味がある。
人間を奴隷にすることには意味はない。ただ、お前を脅す材料に使えるというだけだ。
お前が手にはいるなら、私は他の奴隷はいらない」
「それは…私が、ほしい…ということですの?」
パイの言葉に、一瞬どきりとするミント。敵の言葉なのに、そこに好意のようなものを感じてしまい、首を振って我に返る。
「駄目ですわ。私は地球を守るミュウミント。
エイリアンのものになるわけにはいきませんわ」
「そうか。ではどうする?」
またも素っ気ないパイの問いかけ。ミントはふう、とため息をついた。
「戦うしか、ありませんわ」
きっぱりと、告げる。だがパイは冷静さを崩さずに指摘してきた。
「お前は私には勝てない。昨日で分かっただろう」
「分かっていますわ。十分に…
それでも、私は…戦うしかないんですわっ!」
ミントは一気に間合いを詰め、パイの懐に飛び込む。
「リボーン・ミントっ!」
「止めろっ!」
初めて聞くパイの怒鳴り声。ミントは、無視して必殺技をたたき込もうとする。が、昨日の敗北のためか、ほんの一瞬身体が硬直してしまった。
その一瞬で、すべてが終わった。
パイは、怒鳴りながらミントの横に回り、ミント・エコーの発動前に裏拳を放った。拳が容赦なくミントの側頭部を捉え、ミュウミントは必殺技を放つことも出来ずに吹っ飛んでしまう。
パイは、ひと飛びで倒れたミントの身体が地面に落ちる前にそれを抱き止め、昨夜と同じように唇を奪った。
「んっ…うんん…」
(ああぁぁ…また…)
今夜は、昨夜のような怒りはわいてこなかった。
唇を奪われたとたん、ミュウミントの全身から力が抜けていく。 ミントはパイに抱きすくめられ、その可憐な唇を思うさまに嬲られ、蹂躙され尽くした。
「あぁ…」
「お前の負けだ。ミュウミント」
「あぁ…わたくし…また、負けてしまったの…ですね」
必殺技を出すことも出来ず、今夜もパイに唇を奪われたミュウミント。
昨夜と同じように、パイのキスによって全身から力が抜けてしまい、身動きもできない。
パイは勝者の権利を主張するかのように、たっぷりとミントの唇を啜り、舌を絡めて舐めしゃぶった。
パイの唇に、何か薬でも仕込んであるのか、そうしてキスをしているだけで、ミントの全身から力が抜けていくのだった。
「そうだ。お前の負けだ。ミュウミント。
はいつくばれ。お仕置きしてやる」
パイはそう言ってミントの身体を離す。膝が砕けて地面に落ち、身体が前に倒れる。
手では身体を支えられず肘をついて顔を打つのを止めるしかできない。ミントは自然とそこに這いつくばってしまい、命令どおりのポーズをとった形になる。
パイが手を添えてミントの膝を立て、尻を突き出す格好をとらせた。
「では、お仕置きだ」
パイが手を振り上げる。鋭い音が昨夜の記憶を呼び覚まし、ミントを怯えさせた。
「あぁぁっ!いやぁーーーっ!」
ミントの叫びも虚しく、今夜もまた、尻が真っ赤になるまでスパンキングのお仕置きを受けてしまう。
「いやっ!いゃぁぁーーーっ!許してーーーっ!」
ミントが許しを請うて泣き叫ぶと、パイは一つの命令を下す。ミントは尻叩きを止めて欲しくて、その命令に従ってしまった。
「パイ様…ミュウミントの…負けですわ
パイのスパンキングに屈し、ミュウミントは這いつくばったまま敗北宣言をした。
「よし」
パイは命令に従ったみんとに素っ気なく頷く。そして、命令の続きを促した。
「変身を解け」
「うぅ…許して…」
一度は承知したが、敵の前で変身を解くなどあり得ない行為だ。ミントは首を振り、実行をためらう。だが、パイが無言のまま手を振り上げ、さらに2,3発尻を叩くと、ミュウミントの最後の誇りも砕け散ってしまった。
そして、パイの見ている前でミュウミントの身体は光を放ち、変身を自ら解き、藍沢みんとの姿に戻って見せた。
「あぁあ…」
変身が解けても、捲られたパンツはそのままだ。みんとは丸出しの尻を掲げた格好で、パイの前に土下座をしているのだ。
「あぁぁぁ…惨めですわぁ…」
さめざめとすすり泣くみんと。そこには、クールで気の強いお嬢様の面影はない。虐められて怯える小動物、か弱い小鳥そのものだった。
みんとの顎にパイのサンダルの甲がかけられる。顎をつま先で持ち上げられ、上向かされた。
みんとは、土下座したままパイを見上げる格好になった。人間みんとの目には、パイが今までよりも遙かに巨大な存在に見えた。
「明日の晩もこい。いいな。みんと」
パイの言葉に、みんとは涙でかすむ瞳を伏せて小さく頷いた。
「…はい…」
明晩も中庭に来いとの命令に、みんとは泣きながら頷く。
敵の前で自ら変身を解き、なんの防御も無い姿で土下座している。変身していても手も足も出なかったパイの前では、この姿では命まで手のひらの中に握られたも同然だった。
みんとは肩を震わせて、パイの次の行動を待つしかできなかった。
だが、パイはみんとの返事を聞くと無言でみんとから離れ、そのまま影に消えてしまった。みんとは呆然として、動くことも出来ない。恐怖が去った後に、敗北感と屈辱感の大波がみんとを襲った。
「うぅ…うぁぁ…あぁぁ…ぁぁぁーーー!!」
尻を丸出しにして庭に這いつくばった惨めな姿のまま、ミントは泣いた。あまりの惨めさに、魂が切り刻まれたように胸が、心が痛んだ。
その晩はほとんど眠れず夜を明かしたみんとだが、学校はもう休めなかった。気力を振り絞って登校し、放心したまま一日を過ごした。
ミュウミュウの仲間の顔を見る気にはとてもなれなかったので、バイトは休んで帰宅し、食事もとらずに部屋にこもった。
くれていく夕日、宵闇に包まれていく中庭を、自室から眺めながら、ミントの心は千路に乱れた。
恐れや惨めさ、悲しみが入り交じってみんとを苛む。だがその中に、何か自分でも正体の分からない感情が隠れているのが分かり、それがみんとをさらに不安にさせる。
みんとは椅子の上で膝を抱え、ただ呟き続けることしかできなかった。
「わたくしは…でも…わたくしは…」
そして夜10時。
みんとはミュウミントに変身して中庭に立っていた。
ミントを待っていたかのように、すぐにパイが現れた。実際そうなのだろう。パイはいつものように感情のこもらない声で聞いてきた。
「私のペット奴隷になる決心は付いたか?ミュウミント」
ミントはか細いため息を漏らし、顔を上げてパイの目を見返した。
「決心…決心は…つきました…わ」
パイをまっすぐに見つめ、ミントは告げた。
「私はミュウミント!地球の未来のために…ご奉仕しますわ!
ミントーン・アローッ!」
ミントは背中に隠していたミントーンから光の矢を放った。
(そう、わたくしはミュウミント…エイリアンと戦うのがわたくしの使命なのですわ)
ミュウミントの決意を込めた攻撃は、しかしエイリアン・パイにあっさりとかわされてしまう。パイは一瞬でミントの眼前に迫り、平手打ちでミントの頬を打った。
ぱぁんっ、という乾いた音が響き、ミントがショックに一瞬ひるみ−それで終わりだった。
パイがミントの唇を奪い、ミントの身体から力が抜け、ミントは今夜も中庭に這いつくばった。
「お前の負けだ」
3度同じ結果、同じ宣告。ミントも同じように答えた。
「ええ…わたくしの、負け、ですわ…でも…
ミュウミントは…決して…エイリアンの奴隷になど、なりませんわ」
肩と声を震わせ、ミントはそれでもそう言いきった。しかし、ミントの抵抗はそこまでだった。続く尻叩きを受けてミントの抵抗心は今夜もまた崩れ去り、泣きながら敵に許しを請うた。
そして、今夜もミュウミントはパイに命じられるままに屈辱の行為を演じるのだった。
「……い、偉大な…パイ様…の、前には…ミュウミントなど、敵、では…ありませんわ…ぴぃ、ぴ、ぴぃ…」
「もう一度だ」
ミントは麻痺を解かれていた。叩かれて熱い尻を地面につけ、下半身を晒したままでパイの足下に正座して身体を起こし、背を伸ばしてパイを見上げている。屈辱の涙を止めどなく流しながら、命令のままに敗北宣言を何度も、何度も繰り返し続けていた。
「はい…
ぴぃ…ぴぃ…ミュウミントの負けです…偉大なパイ様の前には…ミュウミントなどか弱い小鳥ですわ…ぴ、ぴぃ…」
それからは、みんとは毎晩中庭でミュウミントとしてパイに戦いを挑み、あっさり敗北する、というパターンを繰り返した。
パイは毎晩ミントを呼び出し、自分のペット奴隷になるかと問う。ミントは断って攻撃を仕掛けるが、何度やっても一撃さえ与えることは出来なかった。
パイはミュウミントからキスを奪い、キスされるとミントの敗北だった。1週間、そして2週間とそれは続いた。
さすがに学校もバイトももう休めず、4日目からはバイトにも通ってはいたが、心は常に夜の中庭にあった。
1週間をすぎる頃には、みんとはパイに勝てないという事実を骨身にしみて理解していた。
それでも、みんとは誰にも何も言わず、パイに挑み続けた。
毎晩、パイに挑み、負け、お仕置きの尻叩きを受け、泣いて許しを請うた。その度に、屈辱的な命令を受けて、実行することで解放された。
そして、半月経った晩に、中庭に藍沢みんとの姿があった。
「…」
中庭に立っていたのはミュウミントではなく、藍沢みんとの姿だった。初めての敗北から、半月が過ぎていた。
「どうした。今夜はミュウミントは来ないのか」
「もう…あなたには勝てないと分かりましたから…」
俯いてそういうみんと。既に高飛車なお嬢様だったみんととは別人になっていた。
「そうか。では、私のペット奴隷になるか」
「…」
その問いには直接答えず、みんとは問い返した。
「私を奴隷にして、どうするんですの?」
「まず楽しむ」
「楽しむ…?」
あまりに端的な答えに絶句するみんと。
「そうだ。お前に命令して思い通りに屈辱を与えて楽しむ。その身体を使ってセックスも楽しむ。それから、粗相をしたお前にお仕置きをして楽しむ。お前はなかなか良い玩具だ」
みんとは、酷い言葉を淡々と発するパイの顔を見つめる。パイはいつもどおりの無表情だが、いつもよりも少しだけ早口になっているような気がした。
「わたくしは…良い玩具でしたか…
あなたは…いままで私を虐めて…楽しんでいたのですか?」
自分の身体を抱きしめるように身をすくめ、みんとは上目遣いに問いかけた。身体が震えている。正体不明の何かが胸の奥からわき上がって来ようとしているのが分かる。
「当然だ。そうでないと思っていたのか?
お前を辱め、罰するのは私の楽しみだ。
もちろん、おまえはただの玩具ではない。ミュウミュウを裏切って私たちを勝利に導くのに役だってもらう。だが、ただ勝つだけのためにこんな遠回りをする必要などない。
この作戦はお前を私のものにするためだ。」
パイは彼には珍しく、まっすぐにみんとを見て話し、最後の言葉と共に手を広げて見せた。
「…その後は?ミュウミュウを…倒したら?」
静かに尋ねる。パイの答えはまたも簡潔だった。
「家畜として飼う」
「かちく、ですか」
初夏の花が咲き始めた自宅の中庭で、藍沢みんとは部屋着のまま静かにつぶやいた。みんとを家畜にすると宣言したエイリアン・パイは、ほんの少しだけ熱意を感じさせる声音でみんとの未来を告げた。
「そうだ。お前は私に楽しみを与え、奉仕する家畜になるのだ」
「奉仕…では、ちゃんと奉仕出来なかったら」
「もちろん、おしおきだ」
その口調は今まで何度も聞いた、敗北の後の宣言だった。その声を聞いた瞬間、みんとは意識せず身体を震わせる。
「…ぁ…」
それきり黙ったみんと。胸の前で二の腕を抱いたまま顔を上げず、しばらくの間身体を震わせていた。
静かな一刻の後、パイが再び問いかける。
「決心はついたか」
そう言われて、みんとは顔を上げ、はっきりと頷いた。
「…はい」
顔を紅潮させ、身体を硬くしながら、みんとはもう一度頷いた。
「はい。わたくしの、負けですわ…パイ様」
戦わずして発した敗北の宣言。パイは冷静な声音で最初の命令を下してきた。みんとは、その命令に従った。
「ミュウミュウミント、メタモルフォースっ!」
みんとの身体が光に包まれ、藍沢みんとはレッドデータアニマル・ノドジロルリインコの遺伝子パワーを示す姿に変わる。光がおさまり、地球と人間をを守るヒロインとして誕生したミュウミントが現れる。
ミュウミントはエイリアン・パイの前で、バレエの動きで一回転すると、優雅に頭を垂れ、腕を左横に伸ばして一礼した。
戦うべき敵であったパイの前で、腰を折り頭を低くしたままで顔を上げ、ミントはミュウミュウの名乗りを上げた。
「ご主人様に…ご奉仕しますわ」
敵であったパイの前で変身し、戦闘の構えでなく服従の礼をしてみせるミュウミント。パイは、その勝利しても無表情を崩すことは無かった。しかしその命令は既に肉奴隷に対してのものになっていた。
「跪け。これをしゃぶって奉仕しろ」
股間から肉棒を取り出し、口唇奉仕を命令する。ミントは顔を朱に染め、眉根を寄せながらも、もはや拒否することなく従った。
「はい…」
「やり方は分かっているな?」
「はい…わかっていますわ…」
数日前から、母親がパイに奉仕するビデオを毎日見るように命令され、みんとは、律儀にもその命令を実行していた。男のモノにどのような奉仕をすればよいか、母親のフェラチオ姿から学んでいたのだ。
「ん…はむっ…くちゅっ…ぺろぺろ…」
ビデオの中で母親はパイの肉棒の虜だった。心の底から嬉しそうに舐め、しゃぶり、頬ずりまでする姿はみんとを打ちのめしたが、同時に怪しい胸のざわめきを植えつけてもいたのだ。
「んっ…パイ様のおちんちん、とても…おいしいですわぁ…」
ミントは肉棒をしゃぶりながら、母親と同じ台詞を口にする。いつの間にかミントはパイの腰に抱きつきながら上半身全部を使って動き、体内に迎えた肉棒を口と喉に擦りつけていた。
若くたくましい肉棒が喉を塞ぐのも気にならない様子で、飢えを満たすケダモノのように男の股間にむしゃぶりつく姿は淫らな奴隷そのものだ。
パイの欲望器官はその刺激を受けて、破裂寸前にみなぎっていた。
「脱げ。お前の身体を楽しむ」
このままでは達してしまうと見たのか、パイがミントの頭を押さえて告げた。ミントの方も既に精神が逝っているのか、顔を真っ赤にしたままで即座に命令に従う。
「はいっ…ミントの処女を捧げますわ。どうぞ…」
ミュウミントは水色のバトルコスチュームを引き裂くように脱ぎ捨てる。手袋や足のバンド、ブーツなどはそのままに、地面に身体を横たえて自ら股を開いた。処女の未成熟な性器を晒し、支配者に向かって陵辱を請う。
「どうぞ…ミントを犯してください…」
パイも下半身裸になってミントに覆い被さる。
「最初は痛む。だがすぐに痛みはなくなる。安心しろ」
処方箋を読むように告げると、オスの欲望でみなぎる剛直を一気に突き込んできた。
「っ!…ぁぅ…!」
覚悟していてさえ、身体がバラバラになりそうな痛み。だがミントはけなげにも悲鳴を飲み込み、足をパイの腰に絡めさえして耐える。
愛し合う男女の様に正常位で繋がり、パイはミントを見下ろして言ってきた。
「これで…私のものだな…」
「あぅ…はぃ…あ、ぁぁ…」
ミントはがくがくと頭を振ってそれを肯定する。零れる涙が滴になって散った。
「もう少し我慢していろ…痛みが消えてくる」
パイはそう言いながら、ミントの膣内をパイのモノになじませるようにゆっくりと突き上げてくる。その度に脳天に突き抜ける様な痛みがミントを襲い、思わず「ひぃ…ひっ」というか細い悲鳴が漏れる。
だが、予告どおりしばらく経つとその痛みが薄れてきた。身体を貫く衝撃はまだまだ激しいが、腰の中心から熱い愉悦の兆しがわき上がってくるのが分かる。
「あ…ぁぁ…ぁ…」
破瓜の痛みが確実に薄れ始めていた。
ミントは、この短時間にセックス奴隷として身体を開発されているのだ。パイのペニスに何か仕掛けがしてあったのかも知れない。あるいは、この2週間の間に何らかの薬物に影響されていたのか。
いずれにせよ、パイがミントの表情や腰の動きにを見ながら突き込んでくる肉の杭が、痛みを与える凶器から、悦びをもたらす愛しいモノへと、急速に変化していくのがはっきりと感じられた。
ミュウミントの表情は既に痛みをこらえる悲痛なものから、淫悦にとろける笑みへと変化していた。喉から漏れるのも既に悲鳴ではなく甘い喘ぎ声だ。
「そろそろ良くなって来たろう…今度はお前が上になれ。自分で動いて、私に奉仕するのだ」
ミントは繋がったまま身体を返され、横たわるパイに跨った格好になった。パイの胸板に手をつき、命令に従って腰を動かすと、まだ快感になりきらない衝撃が背筋を貫いてか細い悲鳴が漏れる。
「ひ…ぁ…あぁ…あ…」
それでも、ゆっくりとだが確実に腰を動かし、ミントはパイとのセックスに励んだ。動くたびに、身体を突き抜ける衝撃がはっきりと心地よいものとして認識されていく」
「ん…あっ!…ぁ、ぁぅ、ぁ…ぁっっ…!」
頃合いを見て、パイが下から腰を突き上げてくるようになると、ミントは彼の上で淫らに踊る肉の人形になった。
「あぅ…すご…これ…凄くて…駄目…ですわ…ぁぁぁ…」
「気持ちいいか」
「はいぃ…きもちいいですわぁ…すごい…これが…セックス、なのですね…わたくし…わたくし…もう…」
ミントは涙腺が壊れたかのように、涙を流して身体を揺らす。
「よし、後は自分で動いて、イッてみろ」
「いいえ…逝くのは…あなた…ですわ」
息を乱しながら、動きを止めるミント。
「ミントーン…アロー…」
つぶやいて、ミュウミントの武器を取り出し、繋がったままパイに向かって上から構える。
「これなら…ぁぅ…逃げ…られ、ない…でしょう…」
至近距離から必殺武器を突きつけられても、パイは外見上うろたえる様子は見せなかった。しかし、言葉を発することはなく、ただミントとミントーンアローを見ている。
「驚かないの…?」
「いや…驚いているぞ?
つまり…服従は芝居だったわけだな…」
ミントの問いに、全く驚いた様子のない声音で答えてくる。その上、下から腰を突き上げてきた。
「も、もちろん…あぁ…です、わ…んぁ…
わたくし、は…地球を、守る…はぁ…ミュウミント…ああ…なのです」
光の弓矢を構えたままそう言う間にも、パイはミントの腰をつかみ、がつん、がつんと突き上げを与えてくる。既に快楽に目覚めた身体は自然に反応してしまい、反逆の宣言は甘い喘ぎ混じりのものになった。
無表情に身体を責めてくるパイに、ミントは必殺の一撃を加えようとする。
「これで…んっ…終わり…です…
リボーン…ぁ…ミント…」
パイの眉間めがけて技をコールしていく間も、セックスの責めは続いていた。
全く攻撃を避ける気配のないパイの前で、ミントの攻撃が止まる。
そのまま、僅かに硬直した時間が流れる。だがすぐに、パイの方から即してきた。
「どうした?撃たないのか」
2度腰を突き上げ、肉の竿の先がミントの奥にある熱い部分を叩いてくる。ミントははっきりとわき上がる悦楽に耐え、技の集中を切らすことなく、最後のコールを行って光の矢を放った。
「ミント…エコーッ!」
…シュッバッッッ!!!
パイに犯されたまま、ミュウミントは必殺技を放つ。
目の前にあるパイの顔面を狙ったはずの一撃。しかし。その光の矢は夜空を切り裂いて彼方へと飛んでいった。
最後の瞬間にパイがミントの腕を押さえながら身体を起こし、必殺の一撃をかわしたのだ。ミントーン・アローはパイの顔の横にずらされ、パイは対面座位の形で向き合って、額をミントのそれにぶつけるように密着させている。
パイの乱れた息がミントにかかる。ゆっくりとその手が動いて、ミントの後頭部を押さえ、唇がミントの唇を捉えた。
必殺技を放った後のミントは、放心したかのようにされるままになり、パイの舌がミントの唇を割って口内に侵入するのも無抵抗に受け入れた。
ミントーン・アローは虚空に消え、ミントはパイに抱きつくように身体を預ける。起こしていたパイの背が地面に落ちるが、ミントは抱きついたまま唇を話さなかった。
長いディープキスの後、ミントはパイが口を開く前に、その瞳をまっすぐに見つめて言った。
「…わたくしの…負けですわ…パイ様」
ミントの涙がパイの頬に落ちる。だがその声と表情には、はっきりと開放感と悦びがにじんでいた。ミントはそのままパイの肩に顔を埋めてすすり泣いた。
「後でたっぷりとお仕置きしてやろう…
だが今は、セックスの続きだ。私の上でもっと激しく腰を振れ…精液を注ぎ込んでやる」
「はい、パイ様…ミントは、動いて…パイ様にご奉仕…しますわ…
ミントの身体を…楽しんでくださいませ…」
そうして、今夜もミュウミントはパイに負け、羞恥と屈辱のお仕置きを受ける。
何度でも繰り返される敗北。
今夜も、明日も、その先も…
「明日も来い。楽しみにしているぞ」
「はい、もちろんですわ…」