「はぁぁぁぁ……」  
 浅葱家……ほぼ1年ぶりになる自室で、留美奈は沈みこんだようにため  
息をついている。  
 旧来の公司は潰えた。華秦はチェルシーと“刺し違えて死んだ”。ルリ  
の反魂の能力は、なぜか華秦には通じなかった。  
 白龍は行方不明。アンダーグローブに落下したが、その死は確認されて  
いない。  
 崩壊しかけたアンダーグラウンドの秩序は、翠がリーダーになって再構  
築した。もっとも、本人は半年近く(連絡もなしに)家を空けたのが原因で、  
嫁さんに顔の形がかわる程殴られたが。  
 で、留美奈と銀之助がルリ、チェルシー、シャルマを連れて地上に2週  
間前。  
 しかし、今ここに地下世界の3人はいない。  
「留美奈さん、本当にお世話になりました」  
「は……?」  
 ルリが言って頭を下げる。すると、留美奈は唖然として間抜けな声を出  
してしまった。  
「この御恩は一生忘れません」  
 ルリが両手を握って言うが、留美奈はぽかーんと口を開けたまま動かな  
い。  
「私の一番のお友達です、また……逢いましょうね」  
「…………」  
 ルリのトドメの一撃に、留美奈は真っ白に燃え尽きた。  
「じゃ、そー言う事だから、アンタも元気でね」  
 ニヤニヤと薄笑いを浮かべながら、玄関先からルリと共にチェルシーは  
出ていく。  
「いや……あの……」  
 ようやく声を絞り出し、間抜けながに股ポーズで手を伸ばしかけた留美  
奈。その肩に、ポンと浅黒い手が置かれた。  
「ま、人生こんなモンや、これに懲りんと、強く生きるんやで」  
 
 そう言いながらも、苦笑しながらシャルマも2人に続く。  
「ほんじゃ、またな」  
 ガラガラガラ……ピシャン。  
 無情に、玄関は閉じられた。その背後で、銀之助が壁に頭をついて笑い  
を押し殺していたのは言う間でもない。  
 もちろん、きっかり3分後に留美奈の八つ当たりが銀之助に向かって炸  
裂したわけだが。  
 
 そう言うわけで、思いきり失恋した留美奈は、連日勉強机に頬杖をつい  
たまま、上の空でため息をついている。  
 学校は既に留年決定なので、平日にもやる事はない。  
 意外にも金銭的には恵まれている地上での留美奈だが、生理的欲求の解  
決以外に何の行動もせず、この調子で毎日を過ごしていた。  
 そんなある日……。  
「やっほー、遊びに来たよー」  
「なんだ、雷娘か……」  
 玄関先でシエルを迎え入れた留美奈は、それだけ呟くと抜け殻のように、  
シエルを放って、Uターンして自室へと階段を上がっていった。  
「……どうしたの? 風使いのにーちゃん?」  
 シエルはキョトン、としながら、少し乱暴に靴を脱ぎ捨てて、留美奈を  
追っていく。  
 留美奈の自室にまで入り込んだシエルは、ベッドへ腰掛けて、留美奈の  
話を聞いた。  
「ふーん……風使いのにーちゃん、ねーちゃんに振られちゃったんだ」  
 興味あるのかないのか、ニュートラルな表情で天井を見ながら脚をばた  
つかせていたシエルだったが、はっと、何か、悪戯を思い付いたように、  
ニヤっと笑いながら、ベッドから立ち上がった。  
 ぼーっと机に頬杖をついている留美奈に、  
「ねーぇ、にーちゃん」  
 と、猫なで声を出しながら、擦りよっていく。  
「私がねーちゃんのかわりに、にーちゃんの恋人になってあげよっか?」  
 シエルがそう言っても、留美奈はそのままの姿勢だったが、2、3度ま  
ばたきすると、顔を手から離し、ゆっくりシエルの方を向いた。  
「な、なに……?」  
 シエルはドキッ、としたような表情になる。  
 そっと後ずさりしようとした次の瞬間。  
 
 がばっ、ちゅっ  
 突然留美奈に抱きつかれ、いきなりキスを奪われる。  
「んぅっ……」  
 ドサッ  
 そのまま、ベッドに押し倒される。  
「に、にーちゃ、何を……っ」  
「…………」  
「あっ……」  
 留美奈は何も言わず、シエルのシャツをたくしあげる。フロントホック  
の白いジュニアブラが露にされた。  
「ルリのかわりをするんだろ……だったら、セックスぐらいさせてくれる  
よな?」  
 有無を言わせないような口調で言うと、ブラのホックに手をかけた。  
「せ、せっくす、って……わ、たし、あ……っ!」  
 ブラが外され、まだ膨らみ始めたばかりの乳房が露にされる。かと思う  
と、その突起の片方に、留美奈の口がむしゃぶりついた。  
「ふぁ……ひぁぁぁっ……っ」  
 泣き顔になってしまい、シエルは身をよじりながら声をあげる。  
 反対側の乳首も、留美奈の手が摘まみ上げ、指先で擦るように弄くり回  
される。  
「に、にーちゃ、あっ、ひゃうっ……」  
 留美奈の指の中で、幼い乳首が真っ赤に充血し、痛々しい程に硬く尖っ  
てしまう。  
 ちゅぱっ、ちゅぷっ、ちゅぱっ……留美奈はわざと音をたてるようにし  
て、何度もシエルの乳首を吸い上げた。  
「あぁぅぅ……あぅ……ぅっ……」  
 首を俯かせるようにしてシエルが身悶える。  
 ひとしきり乳首を攻め上げられた後、再びキスで口を塞がれた。  
「んんぅ……んんっ……ぅ!」  
 
 キスをされたまま、スカートのホックを外される。  
 唇が離れ、ほぼ同時に、ショーツの中に留美奈の右手が潜り込んできた。  
左手でシエルの右肩を押さえ付けている。シエルの小さな身体は、それだ  
けでも大きな動きをする事ができなくなっていた。  
 留美奈の指が、その先端を小さな割れ目に埋める。  
「ん、ああっ!」  
 びくっ、とシエルの身体が跳ねる。  
 粘液質の湿り気が留美奈の指先にまとわりついた。  
「濡れてる……へぇ、こんなガキでも、もう感じるんだな」  
 留美奈は妙に嬉しそうに言い、そのままシエルの浅いところを指でこね  
まわす。  
「あふっ、あっ、ふぁっ、は、ぁぁっ……」  
 シエルはぴくぴく……としながら、留美奈の指の動きに合わせて声を出  
してしまう。  
 シエルの性器は未熟ながらも、少しずつ男性のそれを受け入れる準備を  
してしまう。  
「そろそろいいか……」  
「えっ?……きゃぁっ!?」  
 スカートごと、ショーツを引きずり下ろされた。  
 留美奈は再びシエルを左手で押さえ付けると、ズボンのベルトを緩め、  
トランクスの中から自分の逸物を取り出した。  
「にーちゃん、あっ!」  
 涙をぼろぼろと零すシエルの、女性器にそれを突き立てる。  
「く、さすがにきつい、なっ……」  
 留美奈の表情も歪む。ゆっくり、あくまでゆっくりとシエルの中へと押  
し進めていく。  
「ひ、ひぎ、ぁぁっ!」  
 幼い処女を奪われ、破瓜の痛みにシエルが悲鳴をあげる。それでも、留  
美奈は徐々にだが、シエルの奥まで自分のペニスを進めていった。  
 
「お、奥まで……は、はぁ……はぁっ……っ」  
 苦しそうに息をしながら、そう言ったのはシエルの方だった。  
「動くからな……」  
 留美奈はそう言うと、ゆっくりとストロークを始めた。  
 留美奈が腰を引く度、ごぷっ、とシエルのヴァギナから、鮮血が溢れた。  
「くぁ……に、にーちゃ……にーちゃ……っ」  
 シエルは留美奈の脇に、ぎゅっとつかまった。  
 留美奈は徐々にストロークの速度を上げていき、一定のリズムになった  
ところでそれをくり返す。  
「くぅぅっ、すっげー締め付けだぜ、雷娘、よぉ」  
「う……うぁ……ぅ、うっ……っぁっ……」  
 シエルには、留美奈の言葉に反応する余裕もない。それでも留美奈は、  
ストロークを止める事はしなかった。  
「くは……で、出ちまう……くっ、……中で、出す、からなっ……」  
 留美奈はそう言うと、シエルの中にひときわ深く突きこんだ。  
「あああっ、あぁ……っ……!」  
 シエルがびくっ、と身体を跳ねさせた。絶頂してしまったのだ。ただで  
さえきつい膣が、きゅーっと留美奈のモのに食い付く。  
「くはぁぁっ……」  
 びゅくっ、びゅくっ、びゅくっ、びゅるるるるるっ……  
 留美奈の溜まりに溜まった精が、幼い膣内に放出された。  
「はぁぁ……はぁ……はぁぁ……はぁ……」  
 シエルはぐったりとして、肩で息をしている。  
 ずるっ、と留美奈はシエルから自分の逸物を引き抜いた。  
 欲望を放出した留美奈は、我に返り始めていた。むしろ今してしまった  
ような行為を嫌悪する自分に……  
 自失状態の留美奈に、そうとは思わずにシエルが追い討ちをかけてしま  
 
う。  
「に、にーちゃん……はぁ、はぁ、ま、満足、できた?」  
 荒い息をし、まだ涙の滲んだ目で、健気に笑顔を作って、留美奈に向け  
る。  
「あ……あ……あ………………うわぁぁぁっ、ああああっ」  
 留美奈はその場で、頭を抱えてのたうち回ったかと思うと、突然、部屋  
を飛び出していってしまった。  
「! にーちゃん!?」  
 シエルは吃驚したような顔で飛び起き、留美奈の後に続いて部屋から飛  
び出した。  
 だが、そこでガラガラガラ、ピシャン、と玄関の閉まる音がした。  
 
 留美奈は走った。逃げるように走った。  
 しばらく走り続け、さしもの留美奈も、息が上がりかけたところで、歩  
みを遅くした。  
 そのまま、ふらふらと肩を落としたまま、焦点のあわない目で街の中を  
彷徨う。  
 ドンッ  
 不意に、他の通行人と肩がぶつかった。  
「おい、てめー、何処に目ェつけてあるってやがんだ!」  
 と、留美奈の胸ぐらをつかみ、凄んだのは、スキンヘッドにゲジゲジ眉  
毛の男――  
「! 誰かと思ったら、恥かかせてくれた1年坊じゃねーか! 今の今ま  
で何処に姿くらましてやがったか、だがここであったが百年目だ、覚悟し  
やがれ!」  
「…………ああ……」  
 留美奈は気の抜けたような返事をしただけだった。だが、それが返って  
相手の神経を逆なでした。  
「この野郎、何処までもバカにしやがって!」  
 そう言うと、留美奈は人気のない路地に連れ込まれ、3人程のグループ  
に囲まれた。  
 まず、スキンヘッドの右ストレートが留美奈の左頬に命中する。それを  
皮切りに、留美奈に殴る蹴るの暴行が始まった。  
 いつもの、まして今の留美奈なら、この3人が300人でも軽く捻れただ  
ろう、だが、留美奈は抵抗しようとせず、ひたすら一方的に暴行を受け続  
けた。  
 
 やがて留美奈は、立ち続けている事もできなくなり、地面に尻をつける。  
「へっ、もうグロッキーか、だが、まだこんなモンじゃすまさねーぞ」  
「雷天尖っ」  
 拳を振り上げたスキンヘッドを、背後から爆圧が襲う。  
「ぐぁっ!?」  
 スキンヘッドが吹っ飛んだその隙から、しゅっと小さな影が素早く滑り  
込み、留美奈の前に立った。  
「……か、雷娘……っ……!?」  
 痣だらけの留美奈が、驚いたように言う。  
「なんだ、このガキゃぁ」  
「すっこんでろっ!」  
 と、残りの不良連中がシエルに向けて掴み掛かろうとする。  
「ふんっ」  
 バチバチバチッ  
 シエルが不機嫌そうに声を漏らすと、稲光りが迸る。  
「ぐぁぁぁっ」  
「ぎゃぁぁぁっ」  
 不良グループは悲鳴を上げたかと思うと、その場にうずくまった。  
「…………にーちゃんっ」  
 シエルは慌てたように振り向き、留美奈の前に屈みこむ。  
「どうして……こんな連中に、やられてるんだよっ」  
 心配そうな顔で、留美奈に訴えるように言う。  
「お前……こそ……」  
 痛みに呻くように、留美奈が言い返す。  
「どうして……助けにきたんだよ……俺……お前にあんな事……しちまっ  
たのに……」  
「あんな事?」  
 
 自嘲気味に留美奈が言う。シエルは一瞬もきょとんとしたが、すぐに元  
の表情に戻った。  
「だって……私、ルリねーちゃんの代わりになるって、言ったじゃない、  
にーちゃんは、ルリねーちゃんとしたい事、私にしただけでしょ!?」  
 どこか必死に、シエルが言う。  
「けどよ……あんなひでーこと……」  
「え……酷くなんか、なかったよ?」  
 留美奈の言葉に、シエルは困ったような表情で即答した。  
「最初はびっくりしたけど……その……私……」  
 顔が赤くなって、留美奈から視線を逸らせてしまう。  
「にーちゃんは、充分優しかったよ、だから、私……」  
「だって、あんなに嫌がってたじゃねーか」  
 留美奈が聞き返すと、シエルはいよいよ顔を赤くして俯いた。  
「だって……私まだ子供だから……にーちゃんと上手く、その、できるか  
不安だったんだ……」  
「……なんで、お前そこまで…………」  
 留美奈は真剣な表情になって、じっとシエルを見た。  
「2度目に……スラムで逢った時、私の事……受け止めて、くれたじゃな  
い……私……あの時から、風使いのにーちゃんの事、ホントのにーちゃん  
みたいに思ってて、好き、だったから……だから、にーちゃんが落ち込ん  
でるの、放っとけなかった……」  
「…………」  
 シエルが言い終えると、留美奈はゆっくりと動き、シエルをぎゅっと抱  
き締めた。  
「あ……にーちゃん……」  
「ごめんな……」  
「ううん……いいの、ちょっと早い初めてだったけど、にーちゃんだった  
から嫌じゃないよ。だから気にしないで」  
 
「それもある……けど……俺……お前の、にーちゃんにはなれないみたい  
だ」  
「え、ど、どうして、そんな事言うの?」  
 シエルが、不安そうな表情で聞き返す。  
「今の俺は、お前の事……シエル……」  
「………………!」  
 名前で呼ばれた事に、ぴくっと反応する。  
「女として、好きになっちまった……みたいなんだ……恥ずかしい、けど  
よ」  
「にーちゃん……いいの? 私、まだ11だよ、子供だよ……?」  
 シエルはじっと、留美奈を見た。  
「俺は構わねぇ、シエルが大きくなるまで待つ……それとも、シエルは、  
嫌か?」  
「う、ううん!」  
 首をぶんぶんと横に振り、シエルは即座に留美奈の問いを否定した。  
「そんな事ないよ! 嬉しいよ、私も……留美奈……っ」  
「そっか……ふふ……」  
「くすくす……」  
 留美奈が小さく笑う。すると、シエルも微笑んだ。  
 やがて、2人の唇が重なりあい、そのまま、しばらくその場で抱き合っ  
ていた……  
 

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