コンコン……
第7階層のとある宿の1室。ドアをノックする音が聞こえる。
「開いてるぞ」
ソプラノの美しい声が、素っ気無い言葉を綴る。
ガチャ、ドアが開いて、高麗が姿を表した。
「なんだよ、04。話って」
高麗は冷静を装っていた。が、彼らしくない薄笑いがそれを如実に表し
ている。
「ああ……実は高麗に頼みたいことがあってな……まぁ、中へ入れ」
高麗とは対照的に、いつも通りのクールな態度で、高麗を迎え入れる。
「あ、ああ……」
高麗は後ろ手にドアを閉めて、部屋の中へと進む。
「で……なんだよ、頼みって」
気まずそうな笑みを浮かべながら、高麗は改めて聞く。
「私を殺してくれ」
「ああ、そんなこと……」
冷静そのものの表情でさらりと言う04に、高麗は指を振る少しきざな
ポーズをとって、肯定の返事を返しかけたが、
「って、な、なんだよそれっ!」
と、突然、驚愕の表情で04を見る。
「ど、どういうつもりだよ、おいっ」
04の両腕につかみ、食って掛かる。
「私は……すでに、自分を失っている」
両目を閉じ、どこか悲しげな表情で04は言う。
「私は、こんな身体になりたかったわけではない。こんな姿になるぐらい
なら、元の身体のまま、死んでしまえばよかった」
「そ、そんなことねぇよ、こんな……っ」
高麗は否定しようとするが、04は首を横に振る。
「こんな美しさなど意味はない。誰も望んでいない、なにより……高麗、
お前が……」
「!」
だんだんと悲しげな表情になる04の言葉に、高麗は唖然としてその場
に立ち尽くした。
「この姿になってから、お前がよそよそしい……高麗……」
04は高麗の顔から視線を外し、俯く。
「それは……お、俺……」
言い淀む高麗に、04は首を横に振ってから、高麗を見た。
「ガッディールは死んだが、もう1つの完成体である私がいる限り、半獣
の悲劇は終わったことにはならない。でも、今の私は頑丈すぎて、自ら命
を絶つことができないのだ。だから……せめて、お前の手で……お前の胸
で死にたい」
「…………」
しばらく、口を半開きにしたまま立ち尽くしていたが、やがて、妙に落
ち着いた態度になり、静かに、しかしはっきりと言った。
「04は、俺の事好きなのか?」
「そうだ……だから……」
「待った」
何かを言おうとした04を、高麗が制する。
「俺にも喋らせてくれよ」
「ああ……」
04が肯定の返事をする。
「俺、04が苦しんでるから、なんとかしてやりたいと思ってたんだ、歳
だって、ほとんど同じだと思っていたし、その、護ってやりたいって言う
か、そんな感じでさ……」
高麗はいいながら、だんだんと頬を赤らめる。
「…………」
「けど……今の04は、もう苦しんだりしねーし、なんつーか、俺よりず
っと強いじゃんか……」
「やはり……」
高麗の言葉に、04は悲しげに目を伏せる。が、高麗がそこで声を荒げ
た。
「だから……なんか、カッコつかねーような気がして、気まずい思いして
たんだけど……べ、別に、嫌いになったわけじゃねーし、04が、俺の事
好きだって言うんなら……」
真っ赤な顔になりつつも、それまで俯きがちだった高麗は、顔を上げて、
しっかりと04の顔を見た。
04もまた、高麗の顔を見る。
「生きて、側にいて欲しい」
「あ……」
一瞬、きょとんとしたような表情になった04だが、直後に顔を赤くし、
微かに震える。
「高麗!」
「わっ……!」
ドサッ
04は高麗に抱きつき、そのまま、高麗の背後、ベッドの上に倒れ込む。
「れ、04……」
「すまない……高麗……私は……お前の気持ちも考えずに……」
少し焦り気味の高麗に、04はじわりと涙を浮かべながら言う。
「私は、結局いつも、高麗に助けられてばかりだ……」
「べ、別に助けた、ってゆーか……お、俺の本心を言ったまでだよ」
言いながら高麗は、照れくさそうに頬をかく。
その高麗の顔を、04がじっと見据える。やがて軽く目を閉じて、
ちゅっ……
「……!」
04から唇を重ねられ、高麗は少し驚いたように目を見開く。
「れ、04……」
唇が離れると、真っ赤になった高麗に、04がにこっと微笑みを向ける。
「半獣の狂暴性について、高麗には説明したな?」
「? あ、ああ……」
不意に話題を振られて、高麗は赤い顔のままキョトンとする。
「私の場合、いずれも理性を保てなくなる程ではないが……もう1つ、半
獣には普通の人間より高められてしまう感覚があるのだ」
口元に笑みを浮かべたまま、04は目を閉じて言葉を続ける。
「性欲だ」
「せ、せーよくって……え?」
言葉の意味を理解するのに一瞬かかってしまい、高麗は焦りの表情を浮
かべる。
「以前の身体は、年相応の未成熟な身体だったから、それほどでもなかっ
たが、この身体は、性的に成熟しているせいか、以前より強く感じる」
04の言葉に、高麗はごくりと喉を鳴らす。
やがて、04は高麗を見据えて、言う。
「抱いて……欲しい、高麗、お前に……」
「え? 抱く……って…………つ、つまり、あ、アレ、ってことか……?」
憔悴し切った顔で高麗が聞き返すと、04は軽く頷いてから、
「まだ……無理か?」
と、聞き返す。
「そ、そんなことねぇぞ、あ、相手が04だったら……」
まだ少しどもりつつも、表情を真剣なものにして、高麗は応えた。
「くぅぅ…………」
自分もトランクス一丁状態の高麗は、後ろでやはり着衣を解いている0
4を振り返ることができずに、真っ赤な顔で、胸に手を当てて今にも死に
そうな荒い息をしている。
「お、落ち着け俺……」
ぼそぼそと、自分に言い聞かせる。
「高麗」
そこへ、背後の04が声をかけた。
「こっちを向いてくれないのか?」
「え、い、いや、その……」
反射的にくるっと振り返ってしまう高麗だったが、04の肢体を目にし
たとたん、惚けたようにそれに見入ってしまった。
「……どうした?」
04が訝しげに聞く。
「綺麗だ……」
呟くように、高麗が言った。
「……ヤツに言われた時は怒りしか込み上げなかったが……高麗に言われ
ると、嬉しい、な」
照れたように頬を染めて、04が応える。
「04……」
高麗はそっと04に歩み寄ると、背伸びをして抱き締め、今度は高麗の
方からキスをする。
「んっ……」
高麗の意識は少し混乱していた。何故そうしなければいけないのかわか
らなかったが、身体はそのまま、ベッドの上に04を押し倒していた。
「好きだ、04……」
「高麗……」
高麗はそっと両手を伸ばし、やや控えめだが理想的なカーブを描く04
の乳房に触れる。
「こ、こうか?」
試行錯誤的に高麗が、そっと手に力を入れる。
「んっ……ぅ」
高麗の手の力に弾力を返しつつも、その動きに従って形をかえていく。
「やっぱり……柔らかいな……」
高麗が、ほーっと感動したように言う。その言葉を聞いて、04はかっ
と真っ赤になった。
「普通の女性にくらべると、硬いかも知れないぞ、私の四肢は……」
「そ、そんなことねーって! 初めてなんだからよくわからねーけど……」
04の言葉を否定しつつ、高麗は右手を乳房から離し、つつ、と04の
お腹を撫でる。
「う……」
04が、くすぐったそうな表情になった。
「無駄な肉はついてないって感じはするけど、か、硬いって程でもねーよ」
「………」
「04……」
そのまま右手をベッドにつくと、高麗は04の左の乳首に吸い付く。
「っぁ、こ、高麗……っ」
ちゅ、ちゅ、高麗は赤子のように04の乳首を吸い上げる。
その間も、左手がもう一方の乳房を弄んでいた。
「ふぁ…………ぁ……」
降臨からの刺激に昂り、04は膝をおって脚を開き、しだいにあられも
ない姿勢になってしまう。
「こ、高麗……っ」
再度04が高麗の名を呼ぶと、高麗はちゅぱ……と唇を離し、04の顔
を見た。
「ここ……だよな?」
右手を、04の股間に持っていく。
「あっ……」
高麗の未だ細い指が、04の入り口を撫でた。
「んっ……っ」
04は背中を丸めるようにして身体を跳ねさせた。
「なんだっけ……ここ、気持ちいーんだろ?」
そう言いながら、高麗はツンと尖ったクリトリスを人さし指の先で弄ぶ。
「ひゃあぅぅっ、はぅぅっ……」
今度は背中を仰け反らせるようにびくつきながら、04は甘い悲鳴を上げる。
ちゅ……その口を、突然高麗の唇が塞いだ。
「んっ、むぅぅぅ……」
キスされながら、鼻から嬌声を漏らしてしまう
「ぷは……」
「はぁっ、はぁっ、こ、高麗っ、わ、私っ、も、もぅっ……」
懇願するような表情で、04は高麗を見る。
「あ……お、おう……」
高麗は少し慌てたように、04の性器から手を離す。
トランクスを脱ぐ。大きさこそ年相応ではあるが、高麗の逸物は既に亀
頭をすっかり露にし、硬く憤っていた。
「こ、こうか……?」
高麗は少し戸惑いながら、04の性器に自分のそれをあてがった。くち
ゅり、と水音がする。
「そうだ……そのまま……奥に……んぅっ!」
ずずっ、と高麗の先端が04の中に埋まると、04はびくっと身体を跳
ねさせた。
「あ……はぁ……高麗……っ」
じゅぷっと湿った音を立てながら、高麗は自分の根元まで深みに差し込
む。04の最深部までは届かなかったが、04は身体をくねらせて良がっ
た。
「く、……あ……すげ……これ……っ」
高麗もまた、身体を震わせる。
「高麗……動いて、ぇ……」
「お、おぅ……っ」
04に促されて、高麗は拙い感じでストロークを始める。
「あっ、あっ、高麗…………っ」
「すげぇ……これ凄いよ、04……っ!」
04はシーツをつかみ、何度も高麗の名を呼ぶ。高麗もまた、女のよう
な良がり声を上げながら、段々とストロークを激しくしていく。
「こ、高麗……っ、そ、そんなに、したら……っ」
「く、くぅぅーっ、お、俺、も、う、出ちまいそうだ……っ」
びくつきながら、自らの絶頂が近いことを告げる。
「っ、私、もだ、高麗、そのまま、っ……中、でっ……!」
「くぅ……っ」
ずっ、ずっ、ずっ……
高麗はスパートをかけ、そして、
「くぁっ……」
「あっ、あぁぁっ……」
ドクッ、ドクッ、ドクッ……
高麗が放出し、ほとんど同時に04も絶頂に仰け反り、身体を跳ねさせ
た。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……こ、高麗……」
お互い荒い息をしている。04が高麗の名前を呼ぶと、高麗は軽く息を
整えてから、応える。
「はっ……な、なん……だよ」
まだ幾分深い息をしながら、04をじっと見る。
「これからも……私のことを護ってくれるか?」
「……こっちこそ……かな?」
高麗は苦笑しながらそういうと、04の顎を軽く上げさせてキスをした。
そのまま、2人はしばらく抱き締めあっていた――