若き知的好奇心  
KKG pp'l  
 
「平和だなー」  
 ルリもチェルシーも、今ではすっかり地上に馴染んでいる。  
 買い物に出かけたチェルシーが、紫外線で肌を痛めて大騒ぎした……ルリは肌  
の色のせいか、平気だった……ことや、地上の食事にルリがお腹を壊した……貧  
乏暮らしが長かったせいか、チェルシーの胃腸はびくともしなかった……のも、  
昔のことのようだ。  
 祖父は門徒仲間と問答に出かけて、数日は帰らない。  
(どうせ酒でも飲んでいるんだろうけど)  
 勉学にいそしむべきなのだろうが、公司との戦いで出席日数が大幅に不足し、  
留年は確定している。いまさら、真面目に勉強する気にもなれない。  
 留美奈は居間でごろりと横になった。ルリとチェルシーは夕食の材料を買いに  
出かけている。夕日に照らされた畳を、横目に眺めた。  
 ルリたちの来る前はゴミや埃まみれで、寝そべる気にもなれないような居間だ  
っただが、最近は転がり回るのも抵抗のない、きれいな畳が維持されている。  
 やっぱ女手があると違うなあ、などと思いながらぼんやりとしていると、畳の  
へりに、何か光るものが挟まっているのが目についた。  
「お、金髪の抜け毛か」  
 夕日に透かし、しげしげと眺める。  
「そういや、あいつって、下の毛も金髪なのかなあ」  
 呟いてから、首を傾げた。  
 
 ルミナは自分の部屋に入ると、安堵のため息をついた。ポケットからチェルシ  
ーの下着を引っぱり出し、椅子に腰掛ける。  
 ルリもチェルシーも、風呂を済ませ床についている。  
(夜中シャワーを浴びるにしたって、大丈夫、あいつら脱いだのは直接洗濯機に  
入れるから、覗きこまれさえしなけりゃ、ばれっこない。今晩中に戻しておけば、  
大丈夫だ)  
 ルミナは自分に言い聞かせ、くしゃくしゃに丸めた下着を広げた。  
 真ん中に、短く、細い金髪が引っかかっている。息を吹きかけただけで吹き飛  
んでしまいそうな細さだ。  
「やっぱ、下の毛も金髪なんだなあ」  
 感心して、ルミナは呟いた。手の中の下着は、汗ばんだような湿り気がある。  
鼻先をかすめるチェルシーの体臭と入り交じって、それはひどく淫らな感じがし  
た。  
 ごくり、とのどを鳴らす。  
 ルミナは扉を開け、廊下に人影がないことを確認した。誰もいるはずはない、  
と解っていても、確認せずにはいられない。  
 扉をしっかりと閉じる。引っかかっているチェルシーの金髪が、落ちそうな気  
がして、下着をくしゃくしゃに丸めると、鼻先に押しつける。  
 鼻腔に、むっとこもるような性臭が広がった。かき立てられた欲望と、背徳感  
でルミナの身体は硬く高ぶっていた。  
 左手はズボンに伸び、自分の身体を引っぱり出そうとするが、不器用な動きの  
せいで上手くいかない。  
「くそっ」  
 苛立たしげに毒ずくと、チェルシーの下着をくわえる。引っぱり出したそれは、  
ルミナ自身驚くほど熱く、硬く強ばっていた。先端からは滴がこぼれ、引っぱり  
出した指を汚す。  
 ルミナはかまわず、自分の物をこすり立て始めた。丸めた下着を手の中で転が  
し、より強い匂いを探り、貪る。チェルシーの性臭が、頭が痛むほどに肺を充た  
す。早くもルミナは達しかけていた。手を上下させるたびに小さく飛沫が散る。  
(やべ……)  
 ルミナは慌ててティッシュを探したが、ティッシュは枕元に置かれているきり  
だ。ほんの数歩だが、今のルミナにとっては届かないきょりである。  
 
(しょうがねえ……)  
 たまったつばを飲み下し、ルミナは先端にチェルシーの下着をあてがった。チ  
ェルシーの下着に、樹液が染みを作る。連想される嫌らしさに、ルミナの鼓動は  
さらに早まった。そのまま下着を広げ、チェルシーの下着で自らの身体を包み、  
こすり立てる。  
「くっ……」  
 チェルシーの下着に、樹液が打ちつけられた。吸いきれない分が、にじみ出て  
くる。  
 ルミナは息をついた。  
「うわー」  
 大量にこぼれた樹液を見て、ルミナは呆れた。普段の倍近い量が、チェルシー  
の下着に吐き出され、一部はルミナの身体を伝い、根本に樹液溜まりを作ってい  
た。  
「そんなにため込んでたわけでもないのになあ……」  
 枕の中に隠しているルリの……落ち葉焚きで芋を焼いているとき、強風にあお  
られてスカートがめくり上がった瞬間の……写真を使うのが、ルミナの定番なの  
だが、下着の匂いと感触の生々しさのためか、いつもより没頭できた気がする。  
(というか、どうせやるならルリのでやれよな、俺)  
 そんなことを思いながら、汚れをチェルシーの下着で拭い取る。ティッシュペ  
ーパーとはちがった感触と、後ろめたさとが相まって、ぞくぞくするような気持  
ちよさを伝えてきた。  
 下着の汚れをティッシュペーパーでふき取ると、下着を洗濯機に戻し、ルミナ  
はベッドに横になった。  
 
 翌日の昼、食事を終えたルリは部屋で一息ついていた。  
「いいお天気」  
 窓から見える青空を眺め、思わず鼻歌を歌いそうになる。  
 ルリとちがって、チェルシーは青空があまり好きではない。長い地下生活と肌  
の白さのせいで、強い日差しを浴びると肌が赤剥けてしまうのだ。  
 そのため、庭掃除やゴミ出し、簡単なお使い、洗濯などは、しばしばルリに任  
されるようになってきている。ルリとしても、いつまでもお姫様然としているつ  
もりはないし、自分にできる仕事があるというのは、素直に嬉しい。  
「今日はお布団も干そうかな」  
 呟きながら、ルリはポケットからティッシュペーパーを出した。ルミナの部屋  
のゴミ箱から失敬した、自慰行為の痕跡だ。  
 ゴミ出しはルリの仕事だし、ルミナのゴミは信じられないぐらい無神経に放り  
込まれているから、軽く分別しておく必要があるのだ。  
 どうやらルミナにとっては野菜の切れっ端も、食べ残しのごみも、紙屑もまと  
めて「燃えるゴミ」らしいが、ルリやチェルシーにしてみれば、野菜の切れっ端  
は食料であり、食べ残しは堆肥の材料であり、どちらもゴミではないのである。  
 そして当然、年頃の少年のゴミ箱には、旺盛な性欲が痕跡をとどめていた。  
 ルリもまた、ルミナとは大して歳のちがわない、性的なことに興味を持つ年頃  
であり、しばしばそうした痕跡を失敬しては、密やかな楽しみに耽っていた。  
 がさがさとティッシュを開き行為の残滓を調べる。  
「うわあ」  
 生乾きの樹液は、昨夜出したばかりなのだろう。いつもよりも強い牡の匂いが  
鼻を包んだ。匂いを感じているだけで、下腹部がじんわりと暖かくなる。ルリは  
再びティッシュを丸め、くんくんと匂いを嗅ぐ。  
「ルミナさん……」  
 指先が裾から下着へと潜り込む。そこはすでに、熱く濡れていた。下着越しに  
蜜が溢れ、指をぬめらせる。指を数度、下着越しに走らせた。  
 ふぅっ……  
 少しもどかしい快感に、ルリは背筋をふるわせる。指を下着に潜り込ませると、  
ルリの秘華は、溢れた蜜ですっかりとぬめっていた。  
 ぬるぬると恥丘をなぞってから、ちゅくっと指先を秘裂に潜り込ませる。  
「んんっ……」  
 
 まだ、指全体を中に突き入れたことはない。ルリの行為は、秘華をなで回すだ  
けの、単純で、未熟なものだ。  
 ちゅっくちゅっく。  
 指と、下着と、秘裂が蜜に濡れ、粘りのある音を奏でた。下腹部全体が温みで  
充たされる。  
(ルミナさん……)  
 ルミナの枕には、ルリの写真が隠してある。ルリはずいぶん前から、そのこと  
に気がついていた。用途の方も、想像がつく。  
 想像の中で、ルリの写真がどんな風に変換され、どんな風に犯されているのか  
はわからない。けれど、分からないだけに、ルリの想像の中では、淫猥で執拗な  
行為が繰り広げられていた。  
 ルリはティッシュを広げ、ぺろり、と舌先で生乾きの樹液をすくい取った。も  
ごもごと口の中で希釈し、舌全体でルミナの味を感じ取る。  
「んん、んんっ……」  
 薄く引き延ばされた樹液を飲み下し、また舌先ですくい取る。腰全体が、熱っ  
ぽく、汗ばんだ。身体の欲望に答えるように、指先が秘裂を強くこする。  
(ルミナさんの、えっち……)  
 妄想の中では、後ろから抱きしめ、動きを封じたルミナがルリの秘華を執拗に  
いたぶっていた。ルリは身をよじるが、強く抱きしめたルミナの腕からは逃れら  
れず、いっそう強く秘部が玩ばれる。  
 指にまとわりつく蜜は、どんどんと粘りを増し、ぐちゅぐちゅと音を高めてい  
った。  
「んぅっ……」  
 単調な指の動きが、もどかしい。一刻も早く達っしたいのに、指の、単純な動  
きだけではなかなか高ぶらない。  
 もどかしく、太股同士をこすりあわせる。ルリの身体は、もどかしくも、ゆっ  
くりと高ぶっていった。  
(やだ……だめ……)  
 指に生乾きの樹液を絡め、口に含む。  
 ちゅぱっ、ちゅぱっ……  
 そろえた指先を、ルミナの物に見立ててしゃぶり、樹液を味わった。口の中を  
激しく前後し、ルリの唇に樹液をなすりつける。  
 
 ちゅぱっ、じゅるるっ。  
 息苦しさと、唇をこする感触が、秘裂がこすり立てられる感触と混じり合い、  
ルリの身体をどんどんと高ぶらせていった。  
 下腹部全体がどくどくと脈打ち、熱い血液を全身に送っていた。  
「ん、んむっ、ん、う……」  
 ごくん、ごくん、と口の中にたまった樹液混じりの唾を飲み下す。  
「んんっ、んんんっ!」  
 びくっ、とルリは身体をふるわせた。  
 はあーっ  
 大きく息をつき、指を口から引き抜いた。名残惜しげに唇をなぞる。  
 気だるく、壁により掛かり、下着から指を出した。下着も指も、蜜でべとべと  
に汚れている。  
(まあ、どうせ洗濯するからいいんだけど)  
 ふと気がつくと、握りしめたティッシュペーパーから樹液がはみ出て、手を汚  
していた。ルリは苦笑いを浮かべ、手に着いた樹液を舐めとろうと、唇を近づけ  
た。  
「なんだろ、これ?」  
 ルリはふと、樹液の中に混じった糸屑のような物に気がつき、そう呟いた。  
 
 とんとん、と扉を叩く音がした。  
「どうぞー?」  
「ルミナさん、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけど」  
 そう言って入ってきたのは、ルリだった。不思議と、恥ずかしげに頬を染めて  
いる。  
(こっ、これはっ! まさしくバラ色の同居生活の定番!? 『ルミナさん、好き  
な人って、いますか?』とか、いやいやあるいは)  
 一瞬にしてルミナの脳内を五分方不健全な妄想が駆けめぐる。  
「なに?」  
「あの、お時間大丈夫ですか? お忙しいようでしたらまたの機会にしてもいい  
んですけれど」  
「いや、退屈していたぐらいだよ。聞きたい事って?」  
(こ、これは脈ありか? 『ルミナさん、私最近変なんです。ルミナさんのこと  
想うと、胸がどきどきして』とかっ! いやいやあるいは)  
 九分九厘不健全に進化した妄想が、ルミナの脳内を駆けめぐった。ルリの方は、  
良かった、とにっこりと笑うと、ポケットの中から見覚えのある布を引っぱり出  
した。  
「実は、これのことなんですけど」  
 広げられたチェルシーの下着を見て、ルミナの顔から、さああっ、と血の気が  
引いた。間違いなく、昨夜自分が使った物だ。  
「そ、それが何か?」  
 動揺を隠しきれないまま、ルミナはとぼけた。ルリがにこにこしたまま首を傾  
げる。  
 
「ルミナさん、心覚え、ありません?」  
「いや、ちょっと、ないかなあ」  
「そうですかあ」  
 くるり、とルリが背を向けた。  
「それじゃあチェルシーに聞いてみることにします」  
「待った! 待った待った!」  
 ルミナは慌ててルリの肩をつかんだ。  
 チェルシーの下着は、洗濯をしてあるようには見えない。ティッシュで拭った  
とはいえ、ルミナが使った痕跡は、歴然と残っていることになる。  
(殺される)  
 チェルシーに知られたら、鉄拳制裁ではすまない。  
「ルミナさん、とりあえず座って、落ち着いて下さい」  
「あ、ああ」  
 言われるままに、ルミナは椅子に座り直した。すぐ横に立ったルリが、ルミナ  
を見下ろしながら、指先に引っかけた下着をくるくると回してみせる。  
「それじゃ、事情を説明してもらいましょうか?」  
 緊張のあまり、ルミナは唾を飲み下した。  
(しょうがねえ……正直に答えるか)  
「ほら、金髪ってさ、金髪じゃん? それでまあ、下の毛も金髪なのかなーって。  
知的好奇心って奴?」  
 
「知的好奇心で、洗濯機の中からチェルシーの下着を引っぱり出したわけです  
か」  
「うん、まあ、そう」  
「でもそれだけじゃ、ないですよね?」  
「いやほら、なんとなくその、見ているうちに、こう」  
 さすがに具体的に言葉にするのは憚られ、ルミナは言葉を濁した。ルリが、く  
すくすと笑った。  
「それじゃ、見ているうちにどうしたのか、見せてもらえます?」  
「見せる?」  
 言葉の意味がつかめず、ルミナは首を傾げた。  
「そうですよ。チェルシーの下着をどういうふうにして、どうなったのか、見せ  
て欲しいんです」  
 ルリの言葉の意味を、ゆっくりと理解すると、ルミナは絶句した。  
「え、いや、でも、なんで?」  
「知的好奇心ですよ、知的好奇心」  
「いや、ちょっとそれは」  
 さすがにルミナは難色を示した。逆はすごくあこがれるが、自慰行為を女の子  
の目の前で行うのは、恥ずかしいというのもあれば、屈辱的な感じもする。  
「じゃあチェルシーに」  
「分かった! 分かったよ、もう」  
 やけくそ気味にそう言うと、ルリはうふふ、と嬉しそうに笑うと、チェルシー  
の下着をルミナに押しつけた。そのまま床に膝をつき、ルミナの股間に顔を寄せ  
る。  
 前後の状況がなければ、そのまま自分の物を舐めさせたい衝動に駆られる構図  
だった。  
 ルミナは大きく息をつくと、チャックを引き下ろし、自分の物を引っぱり出し  
た。  
 
 ルミナの手に握られたそれは、ルリの想像よりも一回り太めで、がっしりとし  
た物だった。それが首をもたげ、見る間に硬く強ばっていく。  
 鼻先に、汗ばんだ、蒸れた匂いが漂ってくる。ティッシュに残っていた、牡の  
匂いも、生々しく混じっている。ルリは自分の秘華が、じんわりと蜜を湛えはじ  
めたのを感じた。  
 ルミナの手が身体を握り、静かに上下する。手の動きに従って、ルミナの身体  
は、さっきよりも少し大きくなったようだった。手慣れた動きで、ひたすらに上  
下する手の動きを見ながら、ふとルリは妙なことに気がついた。  
 さっきから見ていると、ルミナはチェルシーの下着を左手に握ったままだ。特  
に、手の中で感触を楽しんでいるという様子もなく、別にあってもなくても変わ  
らない感じがする。  
「あの、ルミナさん」  
「ん?」  
「チェルシーの下着は?」  
「ああ、これは、その」  
 ルミナは手の動きを止め、左手でチェルシーの下着をつまみ、困ったような顔  
をした。  
「これあったときは、匂い、嗅ぐとかしたんだけど、汚しちゃったから」  
「そう、ですか」  
 ルリは冷ややかにそう言った。  
「ルミナさん、ちょっと窓を見ていてくれますか」  
「え? あ、うん」  
 ルミナは戸惑った様子を見せながらも、言われるままに窓の方を見た。ルリは  
立ち上がると、大きく息をついて、気持ちを落ち着かせた。  
(よしっ)  
 勢いに任せ、スカートをまくり上げると、ルリはためらうことなく下着を脱い  
だ。下着に覆われていた部分は、意外に汗ばんでいて、脱いだ瞬間、肌寒い感覚  
に襲われる。その感覚さえもが、ルリの身体をいっそう高ぶらせた。  
「ルミナさん、もう、いいですよ」  
「あ、うん」  
 向き直ったルミナの手から、チェルシーの下着を強引に取り上げると、ルリは  
自分の下着を押しつけた。  
 
 渡された下着を見て、ルミナの顔が赤くなった。  
「ル、ルリ、これ」  
「それなら、汚れてない、ですから。全くきれいってわけじゃ、ないですけど」  
 言いながら、ルリも自分の行為と、その言葉に顔を赤らめる。ルリは再び膝を  
つくと、ルミナを見上げた。  
「それで、大丈夫ですよね? 私のじゃ使えないなんて言ったら、怒りますよ  
?」  
 からかうように言うつもりだったが、ルリがそう口にしたときには、わずかに  
棘のある色が滲んでいた。ルミナはその色に気がつかなかったのか、ほんの少し  
ためらった後、ルリの下着を鼻先に押しつけた。ルミナが貪るように、その匂い  
を吸い込む。  
(うわぁ)  
 ルリの目の前で、ルミナの身体が一回り大きくなった。手の動きは速まり、そ  
の先端からは透明な滴があふれ出している。あまりに現金で正直な反応に、ルリ  
はごくりとのどを鳴らした。  
(ルミナさん、私ので、興奮してるんだ。すごく、興奮してるんだ)  
 ルリの秘部が、じんじんと痺れる。自然と指が下肢へ伸びそうになる。ルリは  
それを我慢し、代わりにルリはもぞもぞと太股をこすりあわせ、不意に太股がぬ  
めっているのに気がついた。  
 蜜がこぼれ、太股を濡らしているのだ。ルミナが今手にしている下着にも、蜜  
がべっとりとついているに違いない。  
 ルリは奇妙な満足感のまじった吐息を漏らした。  
「ルミナさん、味は、どうですか?」  
「え?」  
 そう応えたとき、ルミナの手は、時間を稼ぐように遅くなった。  
「味です。私の、味」  
「え、ん」  
 一瞬の戸惑った様子を見せながらも、ルミナは舌を伸ばし、蜜を舐めとった。  
ぎちぎちと、ルミナの身体が高ぶる。  
「どう、ですか」  
「ん、酸っぱい、かな」  
「チェルシーのと比べて」  
 
「わかんないよ。金髪の、舐めたわけじゃないから」  
「そうなんですか」  
 意外だったが、考えてみれば無理もない。ルリの下着と違って、チェルシーの  
下着に、直接的な痕跡は残っていなかっただろう。下着は確かに生々しいとはい  
え、ティッシュペーパーのような直接的な残滓ではない。  
 ルミナの手が、再び動きを早めた。こぼれた滴が、手を汚している。もうすぐ  
達っしそうなのだと言うことは、ルリにも察しがついた。  
 不意に、ルリの視線から隠すように、ルミナの身体がルリの下着で包まれた。  
「ちょっと……!」  
 咎めるように声を上げた瞬間、ルミナの身体が強ばり、びくびくと震えた。ル  
リの下着が、ルミナのもので汚されてゆく。  
(ああ、だから汚れたんだ)  
 その光景を見て、チェルシーの下着の汚れていた理由が分かった。はあ、はあ、  
とルミナは荒い息をついていた。  
「ルミナさん、どうして、隠すんです?」  
「いや、別に隠したつもりはないけど、昨日の通りにしただけで」  
 首を傾げるルリに、ルミナは苦笑いを浮かべて見せた。覆っていた下着を外す  
と、白く汚れた身体がルリの目の前に現れる。  
「なんつーかその、普段はティッシュとか使うんだけど、ほら、どこに飛ぶか分  
からないからさ」  
「なるほど」  
 納得する反面、その瞬間が隠されたのは、不満だった。  
「でも、だめですよ?」  
 呟くように言うと、ルリは身を乗り出した。舌を伸ばし、汚れをすくい取る。  
昼間味わった物より、ずっと濃く、強い匂いが口の中に広がる。  
 ルミナがうめき、腰を引いた。出した直後で、感覚が鋭敏になっているのだろ  
う。ルリの頭は熱く痺れ、酔ったように考えが回らない。  
「ちゃんと、出すところ、見せてくれなくちゃ。もう一回」  
 言いながら、ルミナの物を口に含んだ。  
(わたし、すごいこと言ってる……)  
 ひどく淫蕩で、下劣な何かを演じるように、ルミナの身体に舌をはわせる。汗  
なのか肉なのか、樹液の味とは違う塩辛い味が舌に混ざった。  
 
「ル、ルリっ!」  
 ルミナの手が頭を押さえつける。拒むのか、強制するのか、ルミナ自身決めか  
ねているかのように、ただ押さえるだけだ。ルリは口を離した。  
「ルミナさん、出すときには、言って下さいね? 今度は、見せてもらいますか  
ら」  
 そう言うと、もう一度ルミナの身体を口にした。舌でルミナの身体を包み、唇  
を前後させる。  
 ルミナの手は、それを拒むことなく、ルリの髪を撫でつけた。  
(これ、やっぱり大きい)  
 見たときにもそう思ったが、実際に口に含むとその大きさが実感できる。指で  
感じただけだが、それがルリの身体に、それを受け入れられるだけの余裕はあり  
そうにない。  
(大丈夫、なのかな?)  
 ルリは漠然とした不安を感じた。ルリの口の中で、それはすぐに硬さと大きさ  
を取り戻し、どくどくと脈打っている。  
「く、うぁ」  
 ちゅぱちゅぱという淫らな音が、部屋の空気をいっそう淫らな物にしていく。  
 まとわりついていた汚れと、先端からにじむ滴をじっくりと味わう。ティッシ  
ュペーパーにへばりついていた痕跡よりも、ずっと生々しく、ねっとりとした匂  
いをルリは味わった。頭がじんじんと痺れる。  
 けれど、ルリにはそれほどの知識も経験もない。ただ漫然としゃぶるだけの動  
きに、ルミナの身体は満足しなかった。  
 ふやけるほどの時間がたっても、ルミナは達っする様子はなく、それどころか  
ルリの口の中で勢いを弱めそうな気配さえあった。  
 焦って動きを強めるが、ルミナの反応よりも疲労の方が強い。  
「ルリ、もういいよ。あとは自分でやるから」  
 ルミナの手がルリを退けた。ルリの目の前で、ルミナの指が行為を再開する。  
けれど、ルミナの指がこすり立てても、身体はなかなか勢いを取り戻さなかった。  
「ルミナさん、大丈夫ですか?」  
「ん、ちょっと、間延びしちまったかも」  
「ごめんなさい」  
 
 ルリは肩を落とした。そのつもりはないにしても、さんざん焦らしていたせい  
で感覚が鈍ってしまったのだろう。  
「大丈夫、ちょっと待ってて」  
 ルミナはそう言ったが、身体の反応はあまり芳しい物ではなかった。ルミナの  
手は激しさを増していったが、動きはむしろ粗雑になっていく。  
「ん……」  
 見ていられず、滴を垂れ流す先端を、ルリは舌先でつついた。ルミナの身体が  
ぴくんと震え、わずかに硬さを取り戻す。  
「どう、ですか?」  
「ん、ありがとう」  
 勢いを取り戻したのか、ルミナの手に従って、身体がどんどんと強ばっていく。  
それでも、なかなか達っするまでにはいかない。  
「やっぱり下着とかないと、だめですか?」  
「そう言うわけじゃないけど、ちょっとだれちゃった感じはするかな。なんつー  
か、タイミング逃しちゃった感じ」  
 話していると集中できないのだろう、手の動きをゆるめてルミナはそう言った。  
(何か刺激になる物があればいいんだろうけど)  
 ルリはそうした知識や経験に乏しい。直接的な刺激であれば、ルリが手伝うよ  
りも、手慣れたルミナ自身の手の方が効率がいいのだろう。  
 ルリ本人の身体を提供するという手段もあったが、さすがにそれには、心の準  
備もできていない。  
 
(普段は写真とか、使ってるんだろうけど)  
 さすがにルミナとしても、ルリの隠し撮り写真を出すわけにはいかないだろう  
し、ルリがそれを示唆するのも悪い気がする。  
(じゃあ……)  
 ふと、下着や写真の代わりを思いつき、ルリはぞくぞくっと身を震わせた。想  
像するだけで、全身が熱っぽくなる。  
「ルミナさん」  
 呼びかけながら立ち上がると、ルミナの背後にある机に寄りかかった。  
「こっち、向いてくれますか?」  
「あ、うん」  
 戸惑った様子で返事をすると、ルミナが手を止め、椅子をくるりと回した。ル  
リは机に座り、心持ち腰をつきだした格好になる。  
 ごくり、  
 ルリはつばを飲み込み、スカートをまくり上げた。下着をつけていない局部が  
晒される。  
「み、見えますか?」  
 あまりの恥ずかしさに、声が震えた。自分で目にしたことすらない部位が、ル  
ミナの視線に晒されている。その事実に、ルリの秘裂は燃えるように熱く、蜜を  
溢れさせた。  
 ルミナが、ゴクリとのどを鳴らした。視線が肌に突き刺さるのが感じられる。  
「よく、見える。すごく、やらしい」  
 かすれる声でルミナが言う。秘華は、太股までぬるぬるするほどに蜜を溢れさ  
せている。そんな状態の秘部が、ルミナの目に晒されているのだ。  
 
 くふうっ……  
 ルリは熱い吐息をついた。羞恥に背筋が震える。  
 誰に強いられているという物でもない。ルリが、自分の意志でスカートをめく  
り上げ、腰をつきだし、自らの秘裂をルミナの目の前に晒しているのだ。  
(私、すごいことしてる)  
 くぱぁっ……  
 痺れた頭が認識するよりも先に、ルリの指が秘華を割り開いた。蜜の滴る果肉  
が外気に晒される。ルミナの視線が、内蔵といってもいいような粘膜を、直接焼  
いた。  
 不安定な脚が揺れ、ルミナの椅子の小さな空間を探り出す。ルリは肘をつき、  
ルミナに見え易いように腰を持ち上げた。  
 今の自分の姿を考えるだけで、ルリの頭は恥ずかしさにぐらぐらした。同時に、  
そうした淫らで、品のない格好を自分の意志で行っていると言うことに、ぞくぞ  
くするような背徳的な快感を覚えてもいる。  
 じんじんと秘華が痺れる。指をうごめかせば、たやすく達っしてしまうだろう。  
それぐらい、ルリは興奮していた。  
 つうっ、と新しい蜜がこぼれ、机に滴る。  
「ル、ルリ、そろそろ」  
「え?」  
 切羽詰まったルミナの声に、ルリはぼんやりと応えた。  
「そろそろ、出る」  
「あ、はいっ」  
 危うく目的を忘れるところだった。ルリは慌てて机から降りると、ルミナの前  
に膝をつく。  
 溢れた滴でぬるぬるになった指が、同じくぬるぬるになった身体を激しい勢い  
でこすり立てていた。  
 
(もうすぐ、出るんだ)  
 不意に、ルミナの左手が先端を覆った。ルリは慌ててその手を退けた。  
「ルミナさん、隠さないで下さい」  
「でもほら、どこに飛ぶか、分からないから」  
(あ、そうか)  
「じゃあ、私が受け止めます」  
 ルリはそう言うと、ルミナの前に手をかざし、自分は真横から覗き込んだ。ほ  
とんど同時に、ルミナの先端から白濁した樹液が噴き出し、ルリの手に打ちつけ  
る。  
「うわぁ……」  
 予想外の勢いに、思わず声を上げた。二度、手の平に打ちつけられ、その後は  
先端から染み出すように流れる。  
「ん……」  
 ルリは手の平の汚れを舐めとり、ルミナの身体をきれいにし、ルミナの指を清  
める。  
 浅ましい淫らさと、見届けた満足に、ルリは満足のため息をついた。  
 その後、ルリは自分の下着とチェルシーの下着をまとめて洗濯機に突き込んだ。  
すぐ側の洗面所では、ルミナが手を洗っている。  
「ルミナさん、私、怒っているんですよ?」  
「……ごめん」  
 申し訳なさそうなルミナの声に、チェルシーはくすくすと笑い、片目をつぶっ  
た。  
「今度チェルシーのなんか使ったら、承知しませんからね?」  
「えっと、じゃあその、ルリの、なら?」  
 戸惑ったようなルミナの言葉に、ルリはうきうきと笑った。  
「お風呂入るんですから、出ていった出ていった」  
 ルミナを廊下に追い出し、ルリは鼻歌を歌った。なんにしても、今日までと、  
明日からは、ずいぶんと違った様子になるだろう。  
 ルリは自分でもよくわからないぐらい楽しくて、自分でもよくわからないぐら  
い明日が楽しみだった。  
 
 翌日、ルリは地獄を見ていた。  
「痛痛痛ー!」  
 わめきながら、トイレに駆け込む。完全に下痢だった。  
「大丈夫?」  
 トイレから戻ったルリに、夕食待ちのルミナが心配そうに声をかける。  
「駄目です。完璧にお腹壊し」  
 言いかけて、どたどたどたと、またトイレに駆け込む。朝からこんな調子で、  
何度トイレに駆け込んだか覚えていない。  
「……こんなにひどいのは、久しぶりです」  
「大丈夫ですか? 食事に手抜かりはなかったと思うんですが」  
 地上に着たばかりの時は、食べ物があわないのか、しょっちゅうお腹を壊して  
いたのである。完全にへばったルリの前に、チェルシーの作った夕食が並べられ  
る。気を使ってくれたのだろう、消化の良さそうな物がそろっていた。  
「ルミナ、あんた変な物ルリ様に食べさせたんじゃないでしょうね」  
「そんなわけ」  
 ルミナがむっとしてそう言いかけた直後、二人は声を上げた。  
「「あ」」  
 食べた物に心当たりはなかったが、「口」にした物にならば心当たりがある。  
 同じ事を考えたのだろう、ルリとルミナは顔を見合わせ、頭を抱えるのであっ  
た。  
                                 おわり  
 

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