スチームの立ち込める繁華街。  
その中心を二人の男女が悠々とした足取りで歩いていく。  
ボサボサ頭の黒髪の少年と、長い髪を真っ直ぐに垂らした金髪の女性。  
「…それにしても、随分と人が多くてごみごみしてんな。  
いつもこんな感じなのかな。なぁ? 金髪」  
ずらりと並んぶ露店と、道を歩く外套に目を泳がせながら、少年…浅葱留美奈は  
斜め後ろを歩く連れ添いに話し掛けた。  
「そんなの、私が知る訳無いでしょ。…全く、もうちょっと考えてから発言してくれない?  
唯でさえ私は周りを見てきて疲れてるっていうのに――」  
金髪と呼ばれた女性、チェルシー=ローレックは少年を質問を振り払う様に  
早口で捲くし立てる。  
眉間にしわが寄っているのは気のせいでは無いだろう。  
「あーあー、悪かった悪かった。どーせ俺は気の回らない男だよ」  
こんな時に言い合ってもしょうがないと留美奈は会話を打ち切って、黙々と先へ足を進めていった。  
 
 
 
時を遡る事数十分前…  
 
「な…! それじゃあ、第一階層から何十メートルも落っこちてきたってのか!?」  
「そういう事になるわね。…にわかに信じ難いけど」  
 公司に攫われた少女を助ける為に、東京の地下に広がるアンダーグラウンドと呼ばれる世界に  
潜り込んだ留美奈の一行。  
何度か足止めを食いながらも確実に公司の本部へと近付いていったのだが、  
陰兵の仕掛けた爆弾によって階層と階層を区切るプレートを爆破され、  
それに巻き込まれた彼らは第一階層から最下層の『スラム』まで落ちてしまったのだ。  
つまりそれは、目的地を通り越した事になる訳で…  
 
「公司を目指して下に降りる筈が、今度は上へ昇れってのか!? ふざけてやがる…!」  
「私に向かって言われても困るんだけど……まぁ、気持ちは分からないでもないけどね」  
焦燥を隠せない留美奈とは対照的に、チェルシーはいたって冷静だ。  
「何を呑気な…!」  
「もう、そんな事言ったって意味が無いでしょ! 今やるべき事はここからの脱出方法を探す事。  
…それから、あんまり大きな声出すとその子が起きるわよ」  
言いながら目線をベッドの方に移すチェルシー。  
ベッドには、留美奈より少し年下に見える少年が横たわっている。  
 
 高麗と名乗っていたその少年は、公司からの刺客、磁力使いの師兵だった。  
そう、過去形だ。  
彼はまだ真実を知らないが、高麗は留美奈達を確実に仕留める為の捨て駒だったのだ。  
敵である高麗を留美奈達が助けたのもその為。  
   
 高麗が起きる気配は無い。死んだ様に熟睡している。  
「って言っても、あんまり騒がしくしたら起きちまうよな」  
留美奈は外套を羽織り、ドアへと歩いていく。  
「ちょっと、何処にいくのよ!」  
「このままじっとしてても意味無いだろ? ちょっと辺りを見て回りたいんだ。  
金髪もついて来てくれ。帰り道が分からなくなったなんて笑い話にもならないからな」  
 
 はぁ、と大きな溜息を一つ吐いて、チェルシーはソファから立ち上がり、  
「分かったわよ。アンタの言ってる事は至極正論…それに、アンタ一人で外に出したら  
何を仕出かすか分かったもんじゃないし」  
留美奈の後について、部屋から出て行った。  
 
 木を隠すなら森の中、公司の反抗分子である留美奈達が身を隠すには絶好の場所とも言える  
アンダーグラウンド最下層の『スラム』。  
ここにいる限り、彼らが刺客に襲われる危険はほぼ皆無だと言っても過言では無いだろう。  
しかし、留美奈達は敵から逃げる為にアンダーグラウンドへ潜り込んできた訳では無い。  
彼らの本懐は攫われた生命の巫女、ルリを取り戻す事にある。  
時間が経てば経つほど、状況は相手の方へと傾いていく。  
出来るだけ早く、スラムからの脱出方法を探し当てなければならないのだ。  
 
 チェルシーは焦っていた。  
本来ならこんな所で時間を削っている暇は無い。  
しかし、このスラムから上層階を目指すのは、ただ上から下へ降りる様に簡単にはいかず、  
安全に、確実に脱出できる方法を模索しなくてはいけない。  
(でも、早くしないとルリ様が……)  
焦りの原因はこれだった。  
気を急いてもしょうがないのは彼女も分かっている。たったさっきすぐ目の前の少年、  
留美奈にその事を諭したのは他ならぬ彼女自身なのだから。  
だが、頭では理解しているのにどうしても冷静ではいられなかった。  
ルリという名の少女。  
チェルシーはルリの護衛役を務めながら、彼女を自分の妹の様な、  
娘の様な存在として接してきたのだ。  
肉親の身を案じない人間などいる訳が無いのと同じに  
チェルシーも頭の中にルリの事がこびり付いて離れなかった。  
それが彼女から冷静さを奪い取り苛立ちを与え、結果として  
……自分の周りのいる人間、即ち、留美奈に辛く当たってしまうのだった。  
 
 
 ふと、チェルシーは自分の先を歩く少年を視界の中へ入れた。  
スラムの繁華街が物珍しいのか、興味深そうに目を輝かせて辺りを見回している。  
欲しかった玩具を買って貰った小さな子供の様、と言ったところだ。  
…浅葱留美奈。  
チェルシーがルリを連れて地上に出た時、彼女が一番最初に出逢った人間。  
初めの頃はルリ相手に鼻の下を伸ばしたり、公司の追っ手にあっさりと殺された時の  
反魂の力で目覚めた際に身に付けた風の能力は思う様に扱えず、情けない事この上無かったが、  
根性と負けん気だけは人一倍で、厳しい鍛錬を乗り越えた留美奈はそれ以前とは比べ物にならない  
位の成長を遂げた。  
アンダーグラウンドに入り込んでからの戦い振りにしてみても、彼女にとって留美奈が  
もはや足手纏いでは無く、頼れる相方になっていたというのも事実だろう。  
戦闘においてもそうだが、留美奈の存在が精神的にも多少なり助けになっているのを  
チェルシーは実感していた。  
 
お互い歯に衣を着せないのでイヤミな事を言うし、言われもするが、  
彼女にしてみればそれは自然な自分を留美奈にさらけ出しているという事に他ならないのだ。  
(それに最近は、体付きも結構逞しくなってきて――って、こんな時に何考えてんのよ私…バカみたい)  
チェルシーは頭を振ってその考えを振り落とすと、いつの間にか止めていた足をまた進めていった。  
少しばかり離れてしまった留美奈との距離がこれ以上広がらない様に、小走りで。  
 
 
 それから二人は色んな所を歩いて回っていった。  
公司に侵入した時の為の忠告がてらプリクラを撮ったり、  
チェルシーは留美奈に帽子を、留美奈はチェルシーにイヤリングを買って与えたり、  
二人で屋台のラーメンを食べたり…  
これだけ見るとまるでデートだが、二人はどんな気持ちでこの時間を過ごしたのだろうか。  
 
 
 
 時間は刻一刻と過ぎていき、時刻は黄昏時。  
夕日など出ている筈も無いが、代わりに発電プラントの稼動率が下がり  
あたかも日が落ちたかの様に錯覚させる。  
それに伴い空間を常温に保つスチームが減って、外気に晒す肌から少しずつ体温が  
抜け落ちていく位に冷え込んできた。  
「……なぁ、金髪」  
留美奈は自分の真後ろ、パイプを上で蹲っているチェルシーに声を掛ける。  
「……………」  
「お前さ、俺が迷わない様にって付いて来たんだよな?」  
「……………」  
 
チェルシーは答えない。  
膝を抱えて、顔を埋めたままピクリとも動かない。  
「…ふぅ。なんか、少し先の方が見えない位暗くなっちまったな」  
そう、二人は迷子になっていた。  
脱出の方法を探すのに歩き回ったは良いが、いつの間にか部屋から随分と離れた所まで  
来てしまったらしく、おまけにここまで薄暗くなると足を止めざるを得なくなってしまった。  
 
「下手に動くとかえって危険だろうからな。今日はここで寝るしかねぇか」  
「……………」  
「ここじゃ風が吹かないってのが不幸中の幸いだな。そうじゃなきゃとてもじゃないが――」  
「……ごめん」  
今まで黙りこくっていたチェルシーの口から言葉が漏れる。  
しかしその声色は、いつもの彼女のものとは大きく違う。  
 
 留美奈は一度だけ大きく背伸びをして、チェルシーのすぐ隣に腰掛けた。  
チェルシーは少しだけ顔を上げて留美奈をちらと見る。だがすぐに俯いて縮こまってしまう。  
まるで、今の自分を見られたくないという意思表示をしているかの様に。  
「金髪、もうちょい気を抜けよ。そりゃ、ルリの事が心配なのは分かるけどさ。  
俺だってそうだし。でもさ、思い詰めても意味が無いって俺に教えたのは、…金髪なんだぜ」  
留美奈は真剣な表情でチェルシーに言う。責めようとか、バカにしようとする色は、一切無い。  
「それにさ、お前がそうやって塞ぎ込んでると、俺も、その…張り合いが無いんだよ。  
だから―――」  
「……ありがと」  
そう言ってチェルシーは顔を上げた。頬には、涙の通った跡。  
 
ドクン  
 
留美奈の鼓動が、大きく高鳴る。  
彼の覚えている限り、チェルシーのこれほど弱々しい姿を見た事は今まで一度も無かった。  
それを意識すると、心臓の音が更に大きくなってくる。  
 
「…あーあ、あんたに諭されるなんて、私もヤキが回ったものね」  
抱えていた膝を開放して、チェルシーはそんな事を口にした。  
皮肉っているが、その顔は穏やかな笑顔をたたえている。  
 
ドクン ドクン ドクン…  
 
訳が分からなかった。  
今まで、チェルシーの事を異性だと実感した事は何回かあった。  
だが、ここまで緊張した事など一度も無い。  
それどころか、チェルシーの一挙一動が気になって仕方がなくなっている。  
長い髪を指で梳く仕草、足を組みかえる仕草、言葉を発する唇の動き…  
(もしかして、ルリよりも――)  
「…聞いてもいい?」  
「な、なんだよ」  
「あんた、さっき私にイヤリングを買ったじゃない。その時私に…」  
 
――お前も少しは可愛いんだからよ――  
 
「…あれって、どういうつもりで言ったの?」  
 
 どういうつもりで言ったんだろう。  
頭の中が滅茶苦茶に混乱していて、頭の処理がやけに重たい。  
しかし、答えは単純明快だ。処理が重くても、すぐに答えは弾き出される。  
問題はそれを認めていいかどうか。  
(俺は、ルリの事が――)  
これは紛れも無い事実。  
少年は、初めて自分の手を握ってくれた少女に心惹かれ、ここにいる理由も偏にその少女を取り戻す為。  
これは、紛れも無い事実の筈だ。  
だが、チェルシーと話をしたり、喧嘩をしている時、留美奈の中からは  
―――ルリと言う少女の存在が、消えてなくなっていた。  
そして気付く。  
一緒に行動していくに連れ、良くも悪くもチェルシーという女性の存在は  
留美奈の中で次第に大きくなり、ルリを押し退けていた事にも。  
 
 結論に到達した頭が、嘘みたいに冷静になっていく。  
こんな簡単に自分の気持ちを決め付けて良いのかとも思うが、  
自分の気持ちに嘘など、吐ける筈も無かった。  
 
「…俺は、ルリの為にアンダーグラウンドへやって来て、ルリの為に今まで闘ってきたん、だよ」  
「……………」  
「全てはルリを取り戻す為。それがここにいる理由だったんだ」  
「………ええ」  
「でも、途中からもっと大きな理由ができてた気がする」  
「……………」  
「そいつは、普段は言葉が乱暴で、すぐに手を上げる、とんでもない暴力女でな」  
「………っ!」  
「でも、そいつと過ごしてると、凄く気が楽になるんだよ」  
「……………」  
「…俺は、お前と同じ場所で、同じ時間を過ごせればそれで良くなってたんだ」  
「…それって」  
「ああ、たったさっき気付いた。俺は、お前の事が――」  
「……待って」  
チェルシーは留美奈の方へ向き直り、口を開いた。  
「ありがと。気持ちは嬉しいわ。でも…」  
 
留美奈の背筋が凍りつく。思考が勝手に絶望的な状況を思い描いていく。  
 
「…ルリ様の事を考えてみて。本当ならこういう事は私の口からは言っちゃいけないんだろうけど、  
あの方は屋敷に匿って貰ってた時から、あんたに好意を寄せていたわ。  
何時もあんたの方を見ていたし、部屋に二人でいる時の話も  
ルリ様はあんたの事ばかり話題に上げていたもの。  
あんたが言おうとしている言葉は、彼女の気持ちを裏切る事になるのよ?」  
 
確かにそうだ。  
ルリが自分に好意的だという事が本当ならチェルシーの言う通り、ルリを裏切る事になる。  
だが、それでも――  
「それでも、お前の方が大事だ。軽い奴だとか思うかも知れないけど、  
お前の事が………好きなんだ」  
 
顔が、沸騰したみたいに熱い。  
顔だけじゃない。好きという単語を口にした途端身体の隅から隅まで、熱を発しているんじゃないか  
と錯覚するほどの火照りを、留美奈は感じていた。  
堪らず、帽子を更に深く被り直す。  
 
「…………ばか」  
はにかみ気味に言って、そのまま俯いてしまうチェルシー。  
真っ赤に染まった顔を留美奈に見られない様にする為なのは、言うまでも無い。  
俯いたまま、更に言葉を続けていく。  
「私は…あんたの事は、その、嫌いじゃないけど、好きなのかって聞かれたら、  
分からないって答えるしか無い……わね…」  
「…金髪」  
「…確かめてみていい? 私が、あんたの事をどう思っているか。その答えを…」  
「でも、確かめるって、一体どうやって――――」  
 
言い掛けて。  
留美奈の視界が、急に暗転した。  
 
 
 
 
首に巻きつく、細い腕。  
 
押し付けられる、温かく、柔らかい身体。  
 
鼻腔をくすぐる、石鹸の香り。  
 
そして、自分のそれと重なり合う、甘い唇。  
 
 
 
「……ん……んんっ……」  
 
 くぐもった声。  
それを聞いただけで、留美奈は意識が飛びそうになる。  
両腕が勝手にチェルシーの腰を包み、抱き寄せていく。  
口唇に意識が集中する。  
時間の感覚が吹っ飛んで、周りの景色が目に入らない。  
映るのは、目の前の愛しい女性だけ。  
 
 
 
 暫らくして、どちらからとも無く唇を離す。  
時間にしてほんの数十秒だが、彼らにとってはそれこそ、永遠とも言える長さだった。  
興奮からか二人共に呼吸が乱れ、肩で息をしている。  
「どう、だ……金髪。俺……」  
「…はぁ…はぁ……わた…し…すごくドキドキしてる…。こんな…こんなのって……」  
問い掛けてくる留美奈に対し、コクンと息を飲み込んで言葉を返す。  
頬を上気させ、目をトロンと濁らせて。  
その姿は普段とのギャップからか、留美奈の目にはこの上無く扇情的に映り、  
留美奈の中で、何かが弾けた――  
 
 
「…はぁ…はぁ……んっ! ふ…んんっ…」  
再び、チェルシーを抱き寄せて、唇を交わした。  
柔らかな、マシュマロの様な唇を咥える様にして味わう。  
「……ん、むぅ……んん……ふぅ…ん…」  
チェルシーは拒まない。  
逆に、自分から唇を押し付けて、留美奈の存在を確かに感じ取っていく。  
それは、先程の問いに対する、答えでもあった――  
「んんぅ! は……ぅん……ちゅっ……ふぁ…」  
不意にチェルシーの口腔へと、舌が差し込まれた。  
突然の侵入者に驚き体を強張らせるがそれも一瞬で、すぐに力を抜いて留美奈に身を預けた。  
口の中を侵してくる舌を受け入れ、舌同士を積極的に絡ませていく。  
「……はぁむ……ちゅ……ちゅぶっ……ぴちゃ…ぴちゃ…はぁ…」  
(何、これ……熱い…)  
絡みついてくる「これ」は、言い換えれば麻薬だった。  
自分の舌を、歯茎を触られる度に体温が上がっていく。  
思考がマヒして、今そこにある行為の事以外は何も考えられなくなっていく。  
「……ちゅっ…ふぅ…ん………んっ! んぁ…」  
 
ピリピリとしたむずかゆい刺激に、チェルシーは声を上げる。  
留美奈が腰を抱いていた手を彼女の胸へと移動させて、さわさわと撫で回していた。  
服の上からでもはっきりと分かる、女性の象徴。  
大きすぎず小さすぎず、柔らかな張りのあるそれを留美奈は丁寧に擦っていく。  
「あ……あぁ……は…ぅん………んっ……やぁ……」  
留美奈の手が服の皺をなぞる度、ピクン、ピクンと微かに震えるチェルシーの身体。  
彼女の薄く開いた唇から、熱を帯びた吐息が漏れる。  
気丈な彼女が普段は決して見せる事の無い女性の面に、留美奈は気を昂ぶらせていく。  
 
 崩れそうになるチェルシーの身体を、留美奈は優しく壁に寄り掛けると彼女の頬に片手を添えて、  
朱を染めたように赤らむ顔にキスを降らせ、舌を這わせていった。  
「……ん……ふぅ……んんっ……く…くすぐったい……」  
チェルシーの唇を、頬を、耳を。  
隅から隅まで隈なく愛していく。  
チェルシーは自分のものだと、訴えかけるかの様に。  
 
 暇を持て余したもう一方の手はスカートの少し下、太腿へと伸びる。  
「……あぁ……んあ……ぅ…ん……はぁ…ぁん…」  
スカートとニーソックスの間から覗かせるそれは雪の様に白く、  
触り心地は玉の様にきめ細かく滑らかで、留美奈はその感触に否が応でも夢中になっていく。  
そして、次第に留美奈の手は太腿から上、脚の付け根へと上っていき…  
「あっ…ん……やぁ! はぅ…んぁっ……ふぁぁ…」  
スカートの中へと、忍び込んだ。  
(……っ! 金髪の、ココ…)  
ショーツに触れた指先から感じ取れる、微かな―――湿り気。  
ある一箇所だけ生温かい液体が滲んで、生地の色が濃くなっていた。  
留美奈がそこを指の腹で撫で擦り、押してやると滲みはどんどん広がっていく。  
下着の奥に隠れた蜜の壷から零れ出て来る、愛液によって。  
チェルシーが留美奈を、悦んでいる証拠だった。  
 
「ふ……んぁ! く…ふぅ……んっ……は……あぁ!」  
チェルシーの痴態に、興奮を高めていく留美奈。  
愛撫に入れる力、それを受けるチェルシーの反応も目に見えて激しくなっていく。  
そして…  
「…金髪、もうそろそろ、いいか…?」  
一つになる、という事に合意を求める言葉。  
チェルシーは弱々しい動きで一度だけ、頷いた。  
   
 
 留美奈は、チェルシーに壁に手をつかせて腰を自分の方へと寄せる格好を取らせた。  
自然と、チェルシーは自分の秘処を留美奈の方へ、突き出す形になる。  
「……っ…うぅ……は…はずかしい…」  
留美奈の眼に映る、チェルシーの姿。  
なだらかな斜面…腰の両脇へと、流れる様にして垂れ下がる艶やかなブロンドの髪。  
腰とは反対に綺麗な形の弧を描く、丸みを帯びたヒップのライン。  
視点を下にずらすと、片足の膝元には大雑把に降ろされて丸まっているショーツが引っ掛かっている。  
それは膝に引っ掛かっているというより、張り付いていると言った方が自然な位に、  
ぐっしょりと濡れていた。  
そして太腿の付け根、スカートの捲り上げられたそこには―――  
 
ゴクンッと思わず息を呑む。  
生まれて初めて見る、女性の性器。  
やや赤みの掛かったピンク色の花弁は、留美奈の愛撫によって  
十分に解されグショグショに濡れそぼり、そこから滴る水滴が地面に僅かな水溜りを作る。  
留美奈の眼にはチェルシーの「そこ」が、自分を誘っているかの様にヒクヒクと揺れて映っていた。  
「…それじゃいくぜ、金髪」  
言うなり、留美奈はチェルシーの入り口へ痛々しいばかりに膨れ上がった自分の欲望をあてがい、  
ゆっくりと押し込む様に、挿入した。  
 
「……!! か…は……ぁ…うぅ…」  
「っ…き…きっつ…」  
チェルシーの膣は留美奈の想像していたものとは程遠く、快感どころか痛みしか感じない。  
留美奈のモノを包み込む、否、締め付けるチェルシーの内壁は、  
少しずつだが確実に奥へと侵入してくる異物を吐き出そうとするかの様に、留美奈を圧迫する力を  
強めていく。  
「…く…あぐっ……いっ…つぅ……」  
痛みを感じるのは、チェルシーも同じ。  
しかしこちらは留美奈より何倍も辛い苦痛を味わっている。  
まるで、……痛々しい表現だが、身体を股関節から縦に真っ二つに裂かれているかと思うほどの  
強烈な痛み。  
留美奈からは見えていないが、歯を食いしばり、眼からは大粒の涙を次々と流していくチェルシーの  
表情からは、苦悶の色しか読み取れない。  
先程までの快楽に溺れるオンナの貌とは、正しく対極。  
 
 初めての性行為に理性が吹き飛んでいた留美奈も流石に様子がおかしいと感じたのか、  
腰に入れている力をストップさせた。  
「なぁ…金髪……お前、もしかして……」  
「…はぁ…はぁ……っ……え、えぇ…これが、初めてよ…」  
振り向かず、ただ事実だけを口にする。  
「バ…! バカ!! 何で言わないんだよ!…俺は、てっきり…」  
「…まさか、ここ、まで……痛いなんて、思わなかったのよ………ふぅ、  
これなら、闘って受ける傷の方が、全然マシだとも、思えてくるわ」  
チェルシーの語り口が、いつもの調子に戻りかけている。留美奈が動きを止めた事で  
痛みが引いてきたのか、留美奈に心配を掛けまいと単に強がっているだけなのか…。  
「いいから、続けて。痛いけど、我慢できないほどじゃ、無いから…」  
そしてそれっきり、チェルシーは口を閉ざした。  
彼女の後ろ姿しか見えない留美奈には、彼女の心境など分かる筈も無い。  
しかし、留美奈にも一つだけ分かっている事がある。  
このまま続けても痛いだけ、お互いに後味の悪い初体験で終わるという事。  
なにより彼女は、その事に喜も楽も見出せない事も間違い無いだろう。  
(…じゃあ、今の俺に出来る事、それは…)  
 
 留美奈はチェルシーの腰にやっていた手を彼女の上着の裾から服の中へと潜らせ、  
その上、胸へと上らせた。  
「……!? ちょっと、一体何を……」  
チェルシーが驚くのも無理は無い。  
いきなり後ろから、服の中に手を入れられたのだ。  
「…お前を少しでも気持ち良くしてやれれば、痛みを紛らわせるだろ?  
それで力を抜いて貰えば、俺も楽になって一石二鳥だしな。  
…なにより、お前が辛そうにしてるのなんか、見たくないんだよ」  
言いながら、ブラを上へとずり上げて、服の下にて乳房を露出させる。  
「――金髪。俺に任せてみてくれ。その、努力するからさ…」  
「………うん」  
チェルシーが頷いた事を合図に、留美奈は彼女の双乳を両手で掬い上げる様に  
やんわりと揉みしだき始めた。  
「……んっ……あ……はぁ…ん……」  
激痛によってさっきまで消え失せていた感覚が、チェルシーの中へと舞い戻ってくる。  
それも布越しの時より、ダイレクトな刺激が。  
 
(なんだ……これ……さっきと全然、違う…?)  
留美奈は留美奈でたわわな柔肌を堪能しながらも、その感触に驚きを感じていた。  
指を押し込むと抵抗なく沈み込んでいくくせに、力を抜くと瞬時に弾かれる。  
まるで、崩れる事の無いゼリーを手にしているかの様に、今まで感じた事の無い不思議な感触。  
そして、その頂を指で弾いてやると面白い様にチェルシーの身体がビクン、と痙攣する。  
そこを中心に指の動きに変化をつけ、チェルシーの神経に快感を染み込ませながら、  
下の方も少しずつ、奥へと進み始めていった。  
「……くっ……ふぅ…ん……あっ……う…あぁ…」  
体を駆け巡る痛みと快感に、チェルシーは悶える。  
だが先程の、悲痛に塗り潰されていた声とは明らかに違う。  
そして今も、本当に少しずつだが痛々しい響きが和らいでいってる様に、  
留美奈の耳には聞こえていた。  
 
やがて留美奈の先端は行き止まり…膜の様なものに突き当たり、  
押し進む動きを一旦停止させた。無論、胸を弄る手は休めない。  
「金髪、あとは……」  
留美奈の言わんとする事の意を悟ったのか、  
「…んぁ…ええ……もう、一気に……んっ…ぁん…お願い…  
私ももうそろそろ、…楽に、なりたいから」  
留美奈の方へ一瞬だけ眼を向けて、思う様にする事を勧めた。  
「…力、抜けよ……」  
留美奈はそれへの返答に一言だけ返すと、胸へとやっていた両手を再びチェルシーの腰に添えて  
思い切り、突き出した。  
「……っ!! うあぁ! ぐ…ぅぅぅ!」  
今までのどれとも違う、悲鳴。叫び声。  
結合部から、薄紅色の液体が滴り落ちていく。  
正真正銘に、留美奈がチェルシーの処女を貰い受け、  
二人が一つになった証拠だった。  
 
「…ふぅ。大丈夫か、金髪」  
「え、ええ…」  
「…辛いかも知れないけど、動くぞ。なるべく痛く無い様にゆっくりとやるからさ」  
そう言うと、留美奈はチェルシーの返事を待たずに抽挿を開始する。  
ゆっくり、ゆっくり腰を引いて、入り口まで戻ったところでまた奥へと突き入れる。  
「……く…ふぅ…あ…ん……あぁ! んっ…ふああ!」  
「……え?」  
最初に挿入した時とは全く違う、何の阻みも無くスムーズに前後する留美奈の分身。  
そして、ウレシそうな声を上げて喘ぐチェルシー。  
「金髪、痛くないのか?」  
知らず知らずに腰を動きが止まり、疑問が口から漏れていた。  
「はぁ…はぁ……う…うん。さっき…は、緊張して、力みすぎちゃってて……  
さっき、私に気を使ってくれたじゃない…? あれで、なんだか凄く気が楽になって…  
兎に角、今は、全然痛く…ないわ……」  
「じゃあ…」  
「ええ、好きな様にしてくれて、大丈夫。だから…」  
「………」  
「私を、ルミナだけのモノにして…?」  
「―――――」  
振り向きざま、留美奈に告げる、蕩ける様な、甘い囁き。誘う言葉。  
その言葉によって、留美奈の理性の箍(たが)は今度こそ、粉々に砕かれた――  
 
「……んあ!……は…あん!……ん…あっあっ…ああぁ!!」  
ぱんっぱんっ、と肉と肉とがぶつかり合う小気味良い音が周囲の空間に響いていく。  
勢い良く、乱暴な位に腰を打ちつける留美奈。チェルシーへの気遣いだとか、思い遣りだとか、  
一心不乱に彼女を犯していくその姿からは欠片も読み取れない。  
「……んっあっ…はぁん! ルミ…ナぁ……や…あ…ふあああ!」  
たったさっきまで純潔であったなど微塵も感じさせないほどに、チェルシーはよがり狂う。  
留美奈が腰を引けば自分もそうして、腰を打ち付けてきたら思いっきりヒップを突き出す…  
まるで、盛りのついた雌犬の様に腰を振り乱す。  
否、今の彼女は、盛りのついた雌犬そのものだった。  
「……っ……うぅ、……く…」  
チェルシーの膣内は、怖い位の快感を留美奈のモノに与え続けていた。  
肉棒を取り巻く無数の襞はその一つ一つが意思を持ち、溢れる愛液を塗りつけながら  
纏わり付き、絡み付いてくる。  
前後に動く度に擦れ合うそれの醸し出す感覚は何物にも変え難いほど甘美で、恐ろしかった。  
だがその恐怖が、その戦慄が留美奈の情欲を掻き立てる。  
もっと深くチェルシーを味わいたい、もっと深くチェルシーを愛したいと。  
留美奈の情欲を掻き立てていった。  
「……ぅ…あぁ!…ルミナ……ルミナっ…あ…はぁ!!」  
今まで呼ぶ事の無かった自分を求めてくる少年の名前を、チェルシーは何度も何度も連呼する。  
ルミナという名前を唱えるだけで、少年の存在を確かに感じるから。  
自分を愛してくれている、少年の存在を。  
 
「ふぁぁ!! ルミナ…は…ぅんっ…私…もう……もぉ…ダメぇっ……はぁぁ!」  
限界を知らせる言葉。互いに、もう頂上まで上り詰めようとしていた。  
留美奈はラストスパートを掛ける。腰の動きを速めると同時に、  
右手でチェルシーの双乳、その片割れを揉みしだき、  
左手で結合部のほんの少し上、隠れる様にして存在する小さな突起を転がした。  
そして…  
「あぁ! んっあぁ! はぁん! ルミ…ナ……やぁぁ! あっ……はぁぁぁぁぁぁ!!!」  
「……くぅぅ! チェルシー!!」  
留美奈はチェルシーの性感帯を一斉に刺激して、  
チェルシーは留美奈のモノをこれ以上無く締め付けて、  
 
留美奈は己の白く濁った欲望をチェルシーのナカへ叩きつけて、  
チェルシーはその中出しという行為の背徳感に、全身を激しく痙攣させ、  
二人同時に、絶頂を迎えた―――  
 
 
 行為の余韻が収まった頃には、直ぐ隣に居る相手の顔さえ見えない位に、  
辺りは深い暗闇をたたえていた。  
二人は壁に背を預け肩を寄せ合いながら、行為の疲れから来る睡魔を迎え入れようとしている。  
「そういえば私、ファーストキスと処女をまとめて一度に奪われちゃったのよね…。  
これって、結構異常かも……」  
「……あぁ、そうだな…」  
留美奈は強烈な眠気のお陰で、生返事しか返さない。いや、返せないのだろう。  
「……ふぅっ。ま、いいんだけどね」  
軽い溜息を一つ吐いて、チェルシーも瞼を閉じた。  
「…ねぇ、ルミナ」  
「……………」  
完全に寝入ってしまったのか、もう言葉すら返ってこない。  
耳を澄ますと、安らかな寝息が微かに聞こえてきた。  
構わず、チェルシーは語り掛ける。  
「あんた、最後の最後で私の名前、呼んでくれたよね」  
「…………………」  
「……嬉しかったよ…」  
 
 
 どうして、今まで少年を名前で呼ぶ事をしなかったのだろう。  
向こうが自分の事を、金髪、なんて実も蓋も無い呼び方をするから、  
意地でも自分も彼の事を名前で呼びたくなかった、のかも知れない。  
それとも、ルリの事だけ名前で呼んでいたのに嫉妬して、  
意固地になって留美奈を名前で呼ぶ事を無視していた、のかも知れない。  
今となっては些細な事。  
留美奈に名前を呼んで貰えたのがただ純粋に嬉しくて、ふとそんな事を考え込んでしまっていた。  
 
(……眠い…。明日に備えて、もう寝よう…)  
小さな欠伸を一回。そして、  
「…おやすみ…」  
物言わない彼氏に一言告げ、  
ダランと力なく垂れ下がる留美奈の手をそっと握り締めて、  
チェルシーも深い眠りへと、落ちていった。  
 
 
 
 
―――彼らには数日後、命を掛けて闘う修羅場が待ち受けている。  
 
だが、彼らに未来の事など分かる筈も無く。  
 
今はただ、小さく大きな幸せを、その手の中で際限無く愛でていた―――  
 
 
 
                                 end  
 

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