部室のドアが開き、水着にまだ水滴を滴らせたままの香月が入ってくる。
ただし、その後ろには名前も顔も知らない男子生徒が一人、付き従うように入ってきた。
「鍵、お願いね」
香月は振り返りもせずにそう言って、自分のロッカーを開くと中から取りだしたタオルで髪についた水滴を拭っていく。
「おう」
格闘技でもやっていそうなゴツイ体つきの男子は、鷹揚に言って後ろ手に部室のドアに鍵をかけると、無造作にネクタイを取り去る。
そのまま香月の背後に回ると、その肩に馴れ馴れしく両手をかけた。
「あんっ、もう」
およそ普段の彼女しか知らない者では聞いたこともないような甘い声が、彼女の唇から漏れた。
「お互い時間ねぇんだ。さっさと初めようぜ」
「なによぅ。ムードないわね」
唇を尖らせて抗議するが、本気の声では無いのが見え見えである。
「へへ……久しぶりだからな。メチャクチャにしてやるぜ」
「いやん」
媚びた声を上げる香月。しかしその表情には、明らかに期待のこもった色が伺えた。
「おら」
男子は背後から肩を掴んだまま香月をロッカーのドアに押しつけると、空いた手で水着の上からいきなり尻たぶを握りしめる。
それは、「手にした」「掴んだ」といったような生やさしいものではなく、正に「握った」とするのが正しいような、乱暴な仕草であった。
「い、った……!」
ドアに押しつけられたまま、苦悶の表情でつらそうな声を上げる香月。
しかし、男子はそんなことなど意に介する様子も無く、力強く大きな手のひらでその尻の感触を楽しむ。
ニタニタと下品な表情を隠そうともせずに、今度は肩を掴んでいた手を前に回し、水着の隙間から差し込んだそれで、押し潰されて形を変えている香月の乳房を掴む。
「んくっ」
堪えるような香月の声にそそられたのか、男子はズボンの前を突き上げている股間を香月の尻たぶの間に押しつけ、右の耳たぶにむしゃぶりついた。
「あ……んっ、コラ……耳はダメだって……」
「知ってるって」
ぢゅるりっ、とたっぷり唾液を乗せた舌が、柔らかな耳たぶを通り、耳の穴に滑り込むと、香月は声にならない悲鳴を上げる。
同年代の子の中でも大きい部類に入る乳房は、愛撫と言うにはほど遠いくらいに強く揉みしだかれ、
「んっ……ん、んうっ……」
水着が食い込み、ほとんど剥き出しにさせられた尻にはズボン越しに勃起したペニスを押しつけられて、
「んああ……んっ、んっ、あ、も……」
明らかにそれがどれだけの効果をあげるかを知った上での、舌による激しい耳責めも、
「いっ……く、くひぃ、んあっ……」
それら全てが的確に香月の性感を高めていく。荒々しい貪り方ではあるが、香月の肉体の昂ぶらせ方を心得た、実に見事な手管であった。
「いひっ――!」
目をぎゅっと閉じて、男子の身体と壁とに挟まれたまま、全身を精一杯に突っ張らせる香月。
ぷしゅっ、とかすかな音を立てて、食い込んだ水着の股間から愛液が噴き出す。それを確かめると、男子は目を細めて笑い、香月の身体をようやく解放する。
「あ……ぁ……」
壁にもたれかかりながら、ずるずると自分の身体を支えきれずに床へ崩れ落ちる香月をニヤニヤと見下ろしながら、男子は服を手早く脱いでいく。
まだ微かに震える膝頭を押して、更衣室の壁に手をつき、腰を大きく後ろに突き出すような格好を取らされる香月。
柔らかな尻を無遠慮に撫で回しながら、背後に回ってその絶景をしばらく目で楽しんでいた少年は、既に十分すぎるほどに潤っている香月の膣めがけて、未だ硬度を失わずにいたペニスを勢いよく突き入れた。
「んあ、っはぁう!」
肺に溜まった酸素を押し出されるような不快な感覚と、ズブリと音がしそうな程に激しく、膣を押し分けて進入してきたペニスによってもたらされる快感との板挟みになり、香月は一瞬、意識を失いかける。
「相変わらず……ドロドロだな、お前のココ」
さすがに少し上ずった声で耳元に囁くと、少年は舌なめずりをしながら腰に力を入れると、
「――たっぷり感じてくれや」
尻に指を深く食い込ませると、少年は勢いよくピストン運動を開始した。
「うあっ、あっ、あっ!」
ごつっ、ごつっ、と肉同士がぶつかりあい、ぶちゃっ、ぶちゅうっ、と下品な水音が弾け、
「ふーっ、ふっ、ふーっ!」
「んうっ、んっ、あっ、んあぁうっ!」
押し殺したような少年の荒い息づかいと、とても堪えきれないといった様子の香月の激しい喘ぎ声が輪唱のように室内に響き渡る。
二人ともが、ここがどこであるとか、誰かが来るかもしれないといったような煩わしいことは既に頭の中に無い。
今はこの、短い時間の中でいかにたくさんの快楽を貪り食らうか、それだけが頭の中を占めていた。
「くっ……!」
少年は歯を食いしばりながら身体を前屈みに倒すと、香月の背中に自分の胸板を押しつけるように密着させる。そして、尻を掴んでいた
手をそのまま脇から滑らせ、一突きするごとに大きく揺れるBカップの香月の乳房をしっかりと掴んだ。
「んあんっ!」
指先でしこりきった乳首を器用に挟んで捏ね回しながら、乳房をまるで握り潰そうとでもするかのように強く絞る。
「いっ……たぁ……」
眉根にきつく皺を寄せながらも、その行為を止めようとはしない。
痛みは確かにあるのだが、それ以上に今や香月の肉体を支配している快楽が他の全ての感覚を凌駕していた。
「いたい……痛、いの……いいっ、いいのっ! 痛いのいいのっ!」
「相変わらず、だな、このマゾ豚は」
さすがに声の端々に余裕の無さを伺わせながらも、満足のいく香月の反応を見て、少年はニンマリと笑った。
ぐぢょっ! ぐぢゅっ! ぶぢゃっ!
初心な子供なら、聞いただけでも顔を赤らめさせてしまいそうな程、下品な音が辺りに遠慮無しに響き渡る。
「どうだっ! 俺のチンポがいいのかっ? それとも、乳を握りつぶされてるのがいいのかっ、おい、どっちなんだよっ!」
「い――ぎっ、いひっ、ひっ、どっちも……どっちもっ、いいのぉっ!」
少年は両の乳首を挟んだ指の腹で磨り潰すように捏ねる。
「うあぎぃぃっ!?」
大きく首を仰け反らせて目を白黒させている香月の様子を見ると、今度は膣内の上壁を擦り上げるようにペニスを激しく突き込む。
「ひやっ、ひっ、いっ、いひっ、いあ、いやあっ!」
こうして香月と身体を重ねるのは四度目だが、少年はどの角度で突き込めば香月が悶え、善がりまくるのかをしっかりと把握している。
それでも、肉が接している部分だけではなく、まるで彼女の全身がうねるように少年の身体を愛撫しているかのような錯覚は、彼の性感
をどんどん盛り上げていく。
「はっ――はっ、はっ!」
いつしか言葉を発する余裕もなくなった少年は、目を血走らせてひたすらに香月へと腰を打ちつけ続ける。
「いあっ、いっ、いっ、いぅっ、いうっ、イクっ、イクっ」
既に焦点の合っていない視線を宙に泳がせながら、息も絶え絶えに香月が吠える。
「くそっ! このっ! このっ!」
そこに悪罵を乗せながら、少年も一気に登り詰めていき、
「うぉっ、おんっ!」
えづくような声を上げ、きれいな凹凸にはめ合わせたようにぴったりと腰を香月の尻に密着させたところで、少年のペニスは暴発する。
「きゃヒぃぃっ!」
何の遠慮も無しに子宮を叩く精液の勢いに、香月は口内に溜まっていた唾液をボタボタと床にこぼしながら、喜悦の声を上げた。
「……っく」
意識するまでもなく、少年の腰は勝手にびくびくと動き、一突きごとに亀頭から迸る精液が香月に子宮を隙間無く埋めていく。
このまま意識を手放してしまえたら、どれだけ気持ちよくなれるかを頭の中に思い浮かべながら、かろうじて理性で押さえ込む。
「んっ……んあっ……」
小刻みな痙攣を繰り返している香月の膣から、名残を惜しむようにゆっくりとペニスを引き抜いていく。これ以上は無いと言うくらいに
張りつめたままの亀頭が抜けると、ぽっかりと空いたままの膣口から「とろり」と糊のように濃い粘液が逆流してきた。
香月がシャワーから出てくると、先に出ていた少年が丁度着替えを終えるところだった。
「もう行くの?」
「わりぃな。この後予備校なんだよ」
「キミ、そんなところ行ってるんだ」
少し驚いた様子で言いながら、裸のままタオルで髪を拭く。
「俺なんかは結構上、狙ってるからな。努力、また努力さ」
「ふふっ、強面でレスラーみたいなのにね」
「そりゃあ、レスラーをバカにしすぎだな。俺の見た目はどうでもいいが」
「ふふっ」
「へへっ」
なごやかに笑い合うと、少年は取り出した財布から一万円札を二枚抜き、ベンチの上に揃えて置いた。
「じゃ、今日の分な」
「うん。ありがとね」
「こっちの台詞だっての」
からからと笑いながら、少年はすっきりした顔で更衣室を出て行った。
髪を拭いていたタオルを首に掛けると、そのまま香月は拾い上げた札をすっと天井の蛍光灯に透かして見る。そしてにっこり笑顔を浮か
べると、
「――毎度どうも」
呟いて、軽く札にキスをした。
おしまい
/kaduki's after_01
駅前の予備校から、昨日の少年が出てくるのを偶然見かけた時、香月は夕飯の買い物の途中だった。
先に気づいたのは香月で、足下にカバンを置いてストレッチをしていた少年は、少し遅れて顔を上げる。
「あら、あれってホントだったのね」
「……おいおい、外で話しかけんのはタブーじゃなかったのか?」
寝不足なのか、腫れぼったい目をして少年は大柄な身体をこれでもかと伸ばし、凝りをほぐそうとしていた。
「許容範囲のさじ加減くらい、ちゃんと判ってるわよ」
「だといいんだがな……こっちも、折角の『娯楽』が無くなったりするのはゴメンだしよ」
「うわ……即物的な言い方」
少年は肩をゆっくりと回すと、地面に置いていたカバンを持ち上げる。
「なれ合いが過ぎるとよくねぇ、ってお前さんの姉貴にそう教わったもんだけどな」
「なぁに。それって私に夢中になっちゃうかもしれないってコト?」
買い物袋を片手に、小首を傾げるしぐさをしてみせる。それを見て少年は肩をすくめると、空いた方の手を軽く挙げて立ち去った。
「そんな目してると、はかどるものもはかどらなくなっちゃうわよー」
その大きな制服の背中にそう声をかけて、香月も家路についた。
/after_01 END