「ほら…っちゃんと自分で歩きなさい…」  
千鳥足の望美に肩を貸しながら春香は言った。  
「ん〜〜」  
望美からは返事と受け取って良いのか分からないような声が返って来た。  
「もう!なんで私がこんな事しなきゃいけないのよ」  
春香は溜め息をついた。健介の実家の店で浴びるほど酒を飲んだ望美は、ひとしきり騒いだ挙句に酔いつぶれてしまったらしい。  
自分達ではもう手が付けられないから、迎えに来て欲しい、と健介から連絡を受けたのだ。  
「酒が入ると人格変わるタチなのね…さ、着いたわよ。早く入って。」  
玄関のドアを開け、望美を部屋の中へ誘導しようとする。  
しかし、体の支えを失った望美はそのまま座り込んでしまった。  
「ちょっと、しっかりしてよ!ほら、水飲んで。」  
水の入ったグラスを望美に手渡そうとすると、不意に望美が口を開いた。  
「…つばきさんって…」  
 
「ん?」  
「椿木さんって、いつも他人に命令してばっかりですよね。」  
「何?」  
「いっつも強引にあれしろこれしろって…言われた方の気持ちなんか全然考えてないんですよ」  
「…だったらどうだって言うのよ」  
酔っ払いの戯言だとは思っていても、唐突に言われたその言葉に少し苛立った春香は、冷ややかにそう答えた。  
「そんなだから、38歳に…38歳になっても結婚出来ないし、恋人もいないんですよ!」  
「ちょっと待って、な・ん・で2回も言うのよ!それに私が結婚したいなんていつ言った?ねえ、いつ言った?」  
まるで子供の喧嘩だ。二人ともいつしか声を荒らげていた。  
「もう少し他人を気遣おうとか、女らしくしようとか思ったことないんですか」  
「余計なお世話よ。あなたには関係ないわ」「…そもそも、椿木さん、本当に女なんですか…」  
「何ふざけたこと言ってるのよ。女に決まってるでしょ!何なら確かめさせてあげましょうか?!」  
 
ここまで言ったところで、お互いに少し黙り込む。  
重い沈黙の後で、春香が呆れたように呟いた。  
「…もう寝るわ…こんな事で時間を無駄にしたくないもの。あなたも休んだら?明日も早いんだから。」  
そして、望美に背を向けようとした、その時。  
「…じゃあ、確かめさせてください…」  
 
「確かめさせてください。椿木さんが本当に女なのか」  
「え…?」  
望美の言葉に思わず耳を疑った。  
「あなた…相当酔ってるのね。」  
「…だったらどうだって言うんですか。椿木さんが言ったんですよ。確かめさせてあげましょうか…って」  
望美はいつの間にか立ち上がり、春香のすぐ側まで近付いて来ていた。  
春香は、危ない、と思ったが、すでに遅かった。  
 
「いやだ…ちょっと、やめてよ冗談でしょ…嫌…ひっ!!」  
望美の手が服の中へ滑り込んで来る。  
それと同時に、バランスを崩した春香は床に倒れこんだ。  
「痛っ…あ、やっ…嫌ぁ…!」  
望美の手が春香の胸を柔らかく揉みあげている。  
「椿木さんあんまり胸ないですねー」  
そう言う望美の顔は、心なしか楽しそうだ。  
「いい加減にして…!離してよ!」  
倒れた時に強く打ったらしい。痛みで体に力が入らない。  
うまく抵抗出来ない春香は、ただ叫ぶしかなかった。  
 
「んっ…はぁ、は…ぁ…」  
春香の呼吸が乱れ始める。  
「椿木さんもしかして…感じてるんですか?」  
「ちが…っ…ぅ!うぁ…や…ああっ!」  
春香が否定し終らない内に、望美の手が春香の下腹部へと伸びた。  
「あれぇ、どうしたんですか?すごく湿ってますよ?ここ」  
望美が、春香の秘部を下着越しになぞりながら言った。不意に指が淫核に触れる。  
「ふ…っ…ぁん…あぁぁあ!」  
春香はもう抵抗する気力をなくしていた。望美を押し退けようとしていた腕は、いまや彼女にすがりつく形になっている。  
「ふふ、やっぱり椿木さんも、普通の女なんですねぇ」  
望美は笑った。その指で、春香の淫核を擦りあげながら。  
 
 
「あ、あぁっ…んん…っはぁ、はぁっ!はうぅ…」  
ひくひくと体をひきつらせながら、春香は喘ぎ続けている。限界が近いようだ。  
それに気付いたのか、望美が指の動きを速める。  
「ひぃ…っいぁ…やっ!あす…か、さ…ぁん、も、だめっ…」  
 
「…つばきさん…かわいい…」  
「はぁっ、はぁっ!ふぁ…!んん…く…っあぁ、あっ、あぅ、…あ……?」  
もう少し、というところで突然、望美の手が止まった。  
「あ…あすか…さん?」  
肩で息をしながら名前を呼んでみたが、反応は無い。聞こえるのは、静かな呼吸の音だけだ。  
「飛鳥さん!」  
「………」  
「信じられない…!眠っちゃってる…」  
「…どうするのよ、これ…」  
中途半端に疼く体を持て余したまま、春香はしばらく呆然としていた。  
 

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