二人は子供の様にはしゃぎながら抱き合っていた。  
「やったやった!……あ…」  
どちらともなく我に返る。  
「…指一本でも触ったら、ぶっ飛ばすって言ったでしょ!全く…油断も隙もないんだから…」  
春香は少し焦った様に言うと、再びソファに腰をおろし、テレビに目を向けた。  
画面には女性―春香の代わりにキャスターを務める望美の姿が映っている。  
「…本当に気に入ってるんだな、彼女の事」  
画面の中の望美を優しげなまなざしで見つめる春香に、雅人が呟いた。  
「ん?…まあ、ね。大切なアシスタントだから」  
たいせつ。その言葉に、そのまなざしに、彼は心に妙な感覚をおぼえた。…そして。  
「ちょっと……悔しいな…それ」  
「え…、きゃっ!」  
春香の腰を抱き寄せ、ソファに押し倒す。  
「…離して…」  
「嫌ならぶっ飛ばしたら」  
「怪我人相手に、何するつもりよ」  
「…なにか、して欲しいの?」  
彼女の眼を見ながら、悪戯っぽく言う。  
「っ…そんなわけ…な、いでしょ…」  
春香は途端に顔を赤くした。  
 

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