トリトンは困っていた。今迄にも数々の困難、危機を乗り越えて来た彼だが、  
これ程迄に困った事が在っただろうか。それ位にこの問題は厄介だった。  
問題と言うのは、ピピ子との事である。最近変態を終えた彼はそれ以来、  
彼女に如何ともし難い感情を抱く様になっていた。  
彼がもう少し人間社会に居れば、これが愛情、性欲だと理解出来ただろう。  
最近、ピピ子がしきりに  
「抱いて」  
とモーションを掛けて来る、その言葉の意味も理解出来たかも知れない。  
トリトンは悩んでいた。  
 
 ピピ子は魅力的な女性に成長していた。だが、トリトンは彼女を愛する術を知らない。  
昔、洋子に借りた本の中に、ぼんやりとそんな記述が在った気もするが、それは人間同士――  
下半身に両脚が生えている者同士の方法だった。  
自分とピピ子の場合には通用しない。  
「残されたトリトン族は、僕とピピ子だけだもんなぁ…」  
彼が隠れ家で頭を抱え、そんな事をぼやいていると、向こうからイル、カル、フィンがやって来た。  
「ご苦労、諸君。で、頼んでおいた様な本は在ったかい?」  
「フニャー」  
とフィン。  
「無い無い。何しろ、トリトン族について書かれた本自体、殆んどないんだから」  
とカル。  
「トリトン族ってマイナーだね」  
とイル。両側の二頭に、  
「コラッ!失礼だぞ!」  
と叩かれてしまう。  
恐らく、頼んだのが頼り甲斐の無い彼等で無くとも、  
トリトン族の性交について書かれた本など、世界中探しても皆無だろう。  
「そうか…どうもありがとう。ほら、ヤリイカだ」  
トリトンは彼等に報酬を与えると、再び海を眺めながら考え始めた。  
 
 その日の夜。隣のピピ子に気付かれぬ様、こっそりとワカメ製の布団から抜け出したトリトンは、  
宵闇に在っても燦然と輝く光を目指して泳ぎ出した。  
光の発生源はルカー。トリトンが幼い頃から彼を見守り、助けて来た、優しい母親の様なイルカだ。  
彼女は今、穏やかな波に身を任せ、深い眠りに就いていた。  
「御免よ、ルカー」  
トリトンは、そんな彼女の下に潜り込み、彼女の性器を観察する。  
だが、その部分は、両側の膨らみによって作られる割れ目に閉ざされ、良く見えない。  
トリトンがその部分に手を掛け、彼女の生殖溝を押し広げたその時――  
「誰っ!?何をしているの!?」  
驚いて目覚めたルカーの尾に、思い切り頭を打たれてしまうトリトン。  
「……イタタタタ…」  
「あら、トリトン?何をしているのです?私に何か御用ですか?」  
ルカーは誤って打ってしまったトリトンの頭を鰭で撫でながら、彼に事情を聞こうとした。  
 
 「…と言う訳なんだ。それで、哺乳類の生殖器を観察しようと思って………」  
トリトンは、悪戯を発見された子どもの様な罰の悪そうな顔で事情を話した。  
だが意外にもルカーは怒っておらず、優しく諭す様な口調でトリトンに話し掛けた。  
「そう言う事でしたか。もう貴方も彼女もそんな歳頃ですからね。  
隠さず話せば、何時でも相談に乗りましたのに」  
そんな事を言われても、人間の社会で育ち、人間の常識を身に付けたトリトンが、  
この手の話を簡単に他者に相談出来る筈も無いのだが。  
「私共の物で宜ければ、何時でも御覧になって下さい……でもイルカの生殖器では参考になりませんよ」  
そう言ってルカーは、手近な場所に寝ている雄イルカの処へトリトンを連れて行く。  
「どうです?イルカは通常の哺乳類とは生殖器の仕組みが違うのです」  
確かに、トリトンが見た雄イルカの生殖器は、先のルカーのそれと変わらぬ割れ目に、  
ペ二スが挟まった格好だ。ルカーが解説を続ける。  
「水の抵抗を減らす為の進化です。もっとも、私達雌の場合は、他の哺乳類とそれ程違いは無いのですけれど、  
トリトン族の女性の場合、更に特殊でしょうから……」  
ルカーの言葉もそこで途絶えてしまう。トリトン族に遣えて来た彼女でも、  
そんなプライベートな問題は知る由も無かったのだ。  
 
「うーん……魚の場合は、水中に産んだ卵に雄が受精するんだったよな。でも、僕のは人間と同じだし、  
ピピ子も外に卵を産む様子は無いぜ?」  
先程からずっと黙っていたトリトンが、ようやく口を開き、ルカーに疑問を発する。  
うんうんと唸りながら、悩み続ける二人。しばらくして、ルカーが何かを閃いた様に、頭を上げた。  
「ああ!軟骨魚類の様な卵胎性の魚はどうでしょう?」  
「軟骨魚類?サメとかエイみたいなあれかい?」  
「そうです。鮫等は、雄のペ二スを雌の生殖孔に挿し入れて性交するのです」  
先程から性交だの生殖器だのと、彼女には恥じらいが無いのだろうかといぶかしむトリトン。  
もっとも、自分の為に必死で悩んでくれているのだから、それは口に出さない。  
「生殖孔って?」  
「えぇと…トリトン、私の性器を広げて見て下さい」  
トリトンは海中に潜り、言われた通りに彼女の陰裂を両手で押し広げる。  
「上端に在るのが陰核――雌のペ二スの様な物です。その下が尿道口。  
で、更に下に穴が在るでしょう?それが膣――哺乳類の生殖孔です」  
「ぷはっ!でも、ピピ子にはこんなの無かったけどなぁ……」  
トリトンは、海面から顔を出し、再び疑問を発する。  
「哺乳類以外は肛門、尿道口、膣が全て一つになっているんです。人間の男が言ってましたよ。  
『穴が在ったら入れてみろ』と。後は貴方で考えて下さいな」  
東の空が白む迄悩んだ結論がそれか……トリトンは何だか哀しくなって来た。  
 
「トリトン、何を悩んでるの?ポセイドンの事?」  
「いやぁ、何でも無いよ」  
イルの拾って来たワインを片手に俯いているトリトンの顔を心配そうに覗き込んで来るピピ子。  
トリトンは、その質問を苦笑いして誤魔化す。  
彼女に悩みの内容を知られたら、彼女はどんな顔をするだろうか。  
盲目的な程、トリトンを愛している彼女の事だ。  
きっと、怒りも嫌いもしないだろう。寧ろ、自分と交わりたがる可能性が高い。  
彼女は誰よりもトリトンの愛を欲しているのだから。  
「まぁ、良いわ。そんな事よりトリトン、私達二人切りじゃ寂しいわ。  
仲間が欲しいと思わない?」  
「ぶっ!ゲホッ!ゲホッ…」  
女の勘とでも言うのだろうか。彼女の余りにも的を射た質問に、トリトンは思わずワインを吹き出し、咽てしまう。  
「な、何を言い出すんだピピ子?」  
勿論、トリトンだって彼女の事が大好きだし、彼女と一つになれたらどんなに良いだろうと思う。  
だが、今はそれについて悩んでいるのだ。  
「だから……もう良い!トリトンなんか知らない!」  
ピピ子は急に怒り出し、波間に姿を消した。  
「御免。ピピ子。でも、僕だって……」  
 
 その夜、とうとうピピ子は帰って来なかった。  
心配になって、満月が優しく照らし出す海へ繰り出すトリトン。  
「ったく、ピピ子の奴、何処行ったんだ?」  
暗い海の中、人魚の様な目立つ姿でも、簡単に探し出せる訳が無かった。  
「おーい!!ピピ子ーー!!」  
時折海面から顔を出し、大声で彼女を呼ぶ。だが、彼女の声は返って来る事は無い。  
もしかしたら、再び人間に見付かって攫われてしまったのかも知れない。  
考えたくない想像がトリトンの頭を過(よ)ぎる。だが、彼はその思考を頭の片隅に追いやり、  
彼女を探す為に泳ぎ続けた。  
 
 
 そうして何度目かに彼が海面に頭を出した時、奇妙な光景を見た。  
「夜なのにカモメの群?」  
夜には飛べない筈のカモメが、海面のある一点に集中して群がっている。  
「あそこか!」  
その中心にピピ子が居て、更に彼女の身に何かが起こっている事を察したトリトンは、  
今迄に無い勢いで泳ぎ始めた。  
 
 「あっ!!」  
その恐ろしい光景に、トリトンは目を見開いた。  
何と、ピピ子が巨大な二匹のホオジロザメに追い回されているでは無いか。  
体長が7mを超えるホオジロザメに比して体の小さいピピ子は小回りを利かせ、  
何とか彼等の猛攻を掻い潜ってはいるが、その動きには疲れが見え始めていた。  
「止めろー!!」  
この距離ではナイフを投げても、ピピ子に当たるかも知れないと判断したトリトンは、  
猛然と突進し、片方のサメに体当たりを喰らわせた。  
当然、体躯の差で力負けし、いとも簡単に跳ね飛ばされてしまう。  
「トリトン!!」  
感激し、逃げる事すら忘れて涙目になるピピ子。  
「馬鹿っ!早く逃げろ!!」  
トリトンは、腰に差したナイフを抜き放ち、こちらに気を向けたサメの相手をしながら叫ぶ。  
 
 何度も切り付け、手傷を負わせた処で、ようやくサメ達は逃げ出して行った。  
「トリトン!大丈夫!?うぅ…怖かった…」  
近くの岩陰に避難していたピピ子が、傷付いたトリトンを労わる様に抱き付いて来る。  
「あぁ。昼間は僕が悪かった。御免よ。そんな事より、ここで何してたんだ?」  
自分を心配してくれる、一番に考えてくれる。そんな彼女の事が何よりも愛しく思え、  
トリトンは彼女の体を抱き締め、波に揺らめく美しい黒髪を撫でた。  
それによって少し落ち着きを取り戻した彼女は、ゆっくりと話し始めた。  
「あのね…サメさん達の交尾を見せて貰おうと思って、間に割って入ったら、  
あの人達、急に怒り出して……」  
「はぁ?」  
トリトンは開いた口が塞がらない。そりゃ怒りもするだろう、と言いたかったが、呆れて物も言えなかった。  
 
 
「綺麗だよ、ピピ子。そうやってると、本物の人魚みたいだぜ」  
「失礼しちゃうわ!本物の人魚だもん!」  
「あはは…そうだったな」  
疲れを癒す為、海面からちょこんと突き出た小岩に腰掛けているピピ子。  
月明かりに薄暗く照らし出されたその姿は神々しさすら湛え、トリトンは何時も傍に居る所為で忘れ掛けていた  
彼女の美しさを再認識した。  
先程、ピピ子から事情を聞き、彼女も自分と同じ事で悩んでいたと知ったトリトンには、  
もう彼女に対する気拙さは無かった。  
「ねぇ、トリトン。もしも、トリトン族が沢山居たとしても、私を選んでくれた?」  
「あぁ、ライバルが居なくて助かったよ」  
「ライバルって……私は、誰が言い寄って来ても、トリトンが一番好きだよ」  
その言葉に堪らなくなったトリトンは、ピピ子を抱き、海中深くへと身を沈めた。  
 
 水中で唇を重ね、舌を絡ませる二人。初めて味わうピピ子の舌は、海水を何倍にも凝縮した様な、  
濃い海の味がした。  
抱き寄せた彼女の体はしなやかで、想像していたよりもずっと柔らかかった。  
唇を離し、彼女の髪を掻き揚げて、彼女の耳を甘く噛む。  
トリトン族の性交を知らずに悩んでいた彼も、本能故か、彼女に快楽を与えられるポイントが何となく判った。  
トリトンは彼女を抱き締めていた手で、その乳房を弄る。  
「んん…トリトン、もっと強く…ひぅぁっ!」  
彼女の可愛らしい口から泡と共に嬌声が上がり、顕著な反応を見せる。  
それに気を良くしたトリトンは彼女の乳首に吸い付いた。  
「あン!トリトン!あ、赤ちゃんみたい…ヒッ!イィ!!」  
ピピ子は体を震わせながらも、彼の頭を抱き寄せ、快楽に任せてその髪を掻き毟った。  
 
 トリトンは、ピピ子の尾に絡ませた脚を解き、彼女の尾の先端に回る。  
そこは、お世辞にも綺麗とは言える状態では無かった。  
彼を慕って慣れない陸上を何度も歩いた所為で、ボロボロに傷付き、裂けてしまった尾。  
ピピ子はその部分を気にしていたが、トリトンにしてみれば、その傷跡は、自分への愛の勲章だった。  
そんな尾を愛でる様に、傷跡を労わる様に優しく扱いてやる  
「お願い。そこ……見ないで。……でも、気持良い」  
ピピ子は既に全身が性感帯となり、何処を撫でられてもその刺激を敏感に受け取ってしまう。  
トリトンは、彼女の尾を口に含みながら、彼女の下半身の両側に存在する側線を両手で優しく撫で、  
圧迫してやった。水流、水圧を感じる為の魚類の体では最も敏感な器官。  
魚の下半身を持つ彼女も、そこを刺激されては堪らない。  
「あーーっ!!そ、そこは…あっ!もっとン…優しく…ひ!ひぃぃぃぃぃぃ!!」  
体をくねらせ、その刺激から逃れようとするが、口で尾を捕らえられ、両側からがっちりと掴まれていては、逃れ様が無く、  
耐えられない刺激に人間の性器の部分に位置する生殖孔を兼ねた排泄孔から、糞尿の混ざった黒く濁った排泄物を撒き散らす。  
それが海水に溶け混ざり、全てを排泄し切った頃、ピピ子は体を大きく震わせて絶頂した。  
 
 波に身を任せ、ぐったりとしているピピ子の体を抱き寄せたトリトンは、彼女の股間に開いた小さな穴へと手を伸ばす。  
その部分は既に準備が整った事を示すかの様に開き切り、時折ひくひくと脈動していた。  
「やだ!そこ、汚いわよ」  
穴に触れられた事で、意識が覚醒したピピ子は、トリトンの指を止めようとする。だが、彼は指の侵攻を止めず、  
「ピピ子の体だろ。汚くないさ。それに、今からここに僕のを入れるんだぜ」  
と、その侭指を突っ込んでしまった。それからしばらく彼女の胎内を探っていると、  
「あっ!そこ何か変!!あっ!はぁ!!イイ!」  
と、彼女が悶えるポイントを見付けた。ルカーとの一件以来、様々な動物の生殖器を勉強したトリトンは、  
生殖孔と排泄孔が一つになった生物の雌は、体内にクリトリスが存在する事を知っていたのだ。  
その、指に感じる小さな突起を2本の指で挟み、撫で、押し潰してやる。  
「ヒァーー!!あーーっ!アーーッ!!」  
ピピ子の体は、先程側線を撫でられた時以上の反応を見せる。  
「アッ!アッ!!トリトンッ!また…ひぃ……え?」  
ピピ子が再び絶頂に達しようとした瞬間、刺激が途絶えてしまった。トリトンが悪戯心を起こして、指を引き抜いてしまったのだ。  
「そ、そんなぁ…ねぇ、もっと続けてよ」  
そうねだるピピ子の声は、何時もの溌剌とした勢いは無く、代わって異様な程の艶やかさを備えている。  
だが、トリトンは彼女の要求は聞かず、  
「指じゃ無くて、こっちじゃ駄目かい?」  
と、彼女の穴に先程から膨らみっ放しの己の分身を挿し込んだ。  
 
「あぁーっ!良い!もっと来てぇ!!」  
腰を振り、ピピ子の最深部を何度も突付くトリトンの怒張。それは、彼女の穴の中に在る敏感なクリトリスを押し潰し、  
彼女を何度も絶頂に追いやる。次第にトリトンも彼女の穴の締め付けに耐えられなくなり始めた。  
「ピピ子…僕もそろそろ…」  
「良いわ。私もイくから、一緒に……!あっ!ひぎぃっ!!」  
ピピ子が何度目かの絶頂に達した瞬間、トリトンもピピ子の中にスペルマを解き放った。  
 
 
 トリトンとピピ子が抱き合っている場所から程無い海底の岩陰。  
そこから彼等の姿を覗き見ている者の姿が在った。  
「サメ降って地固まる……なんてね。こんな下らない事を言う私も、もうおばさんかしら。  
何にしても、旨く行ったみたいで良かったわね、トリトン。羨ましいわ」  
そう呟いて、その体から発する光を極力弱めながら去る、一頭のイルカ。  
彼女の乳首とクリトリスは耐え難い程に勃ち上がっていた。  
 

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