【星空の下。(ディア♂×セレス♀)】  
 
昼間は生徒と教師が忙しく動き回る学園も、夜遅くにもなればすっかり人気は無くなる。  
特に昼間は生徒達が入れ替わり立ち替わりで現れる屋上は月と星の明かり以外何も無くなるせいだろう。  
俺はその夜の屋上を気に入っている。静かで、それで一人になれるからかも知れないが。  
 
俺はそんな事を考えながら、空を見上げてみる。星は瞬いているが、流れ星は流れていない。  
「流れ星を見たら何回祈ればいいんだっけな……」  
昔、聞いた事のある話だった気がするが、俺はよく覚えていない。祈るとかそういう事をあまりしないからかも知れない。  
自力本願、というより独りよがりなのはディアボロスの種族としての特徴なのだろうか。  
「ま、祈ったところでさして変化はないしな……」  
俺がそうため息をつきかけた時、背後から声がした。  
「そうですか? 祈る事は、大事だと思いますよ?」  
「………そうか?」  
その誰かにそう返答する。すると、その誰かは不満そうな声をあげた。  
「こっちを向いて話して下さい」  
「やだ。俺は星を見てるんだし」  
「むー……これだからディアボロスは………」  
その誰かは不満そうに呟くと、背後から俺の顔をしっかり掴んで強引に半回転させる。  
無理矢理捻じ曲げられた視界の中に、セレスティアの少女が不満げな顔を向けていた。  
「何をするんだよ。痛いだろうが」  
「貴方がこっちを見てくれないからです。それよし、こんな深夜にどうしたんです?」  
「お前もだろう」  
俺がそう答えると、彼女は困ったように視線を落とした。  
学科もパーティも違うが、同じパーティを組んでいるセレスティアの男が彼女と知りあいだった気がする。  
顔は覚えているが話したことはあまり無かった筈。せいぜい、挨拶をするかしないか程度の関係だ。  
「と、ともかくですね……こんな深夜に出かけるなんて感心できませんよ」  
「お前も起きてるだろうが。それに、俺は単に夜の屋上ってのが好きなんだ」  
「変わってますね」  
「……そうかもな」  
まぁ、確かにそうかも知れない。授業やダンジョン潜りで疲弊した身体を回復させるには寝るのが一番いい。  
その睡眠時間を削って夜中に起きだす奴もそうそういないだろう。此処に二人ほどいるが。  
「昔は…」  
「え?」  
彼女が驚いた声をあげるのにも構わずに、俺はふと昔の事を呟いた。  
「昔は、夜が嫌いだった。夜の闇が怖かったというか………故郷が、北の果てみたいな所でさ。隣りの家まで行くのにも何時間も歩かなきゃいけないんだよ。  
 それで、冬にもなれば毎日のように吹雪がやってきて、家が凄く寒くてさ。家の中に雪が積もった事もあったな。そんなんだから、ちょっとでも気を抜いた  
 ら死んじまいそうな場所で、だから俺、冬や夜はずっと震えてばっかだった。そんな時な、姉さんや母さんが優しく抱き留めてくれた」  
他の生徒に、昔の事を話すのは初めてだった。話す必要が無かったというか、聞かれなかったからかも知れない。  
俺からも特別話す事も無かったから、これが初めて。  
 
「……お父様の方は?」  
「親父は冒険者だったんだよ。もっとも、ディアボロスだからパーティを組んでいくよりは単独で行ってたんだけど。ただ……何だろうな。  
 そんな親父を見ていたから、俺もこの学校に入ろうと思ったのかも知れない。親父は、実際強かったから」  
「良いお父様だったのですね」  
「いや。親父は家にいる時は酒飲んで寝てばっかりだったからなーんも教えてくれなかった」  
俺の返事に彼女はあんぐりと口を開け、その直後小さく首を振ってから再び口を開いた。  
「それで、今、家族の人達は……?」  
「親父は知らない。母さんと姉さんは家の事で忙しいだろうし……弟や妹達は多分腹空かしてるだろうし。あいつらが一番腹減ってるのに俺が一番メシ喰ってるってのも酷いけどよ」  
「学校にいる間は食堂で食べられますものね………」  
彼女はそう言うと、俺の肩に手を回し、身体を少しだけ近づけてきた。  
何だか温かい感じがするがそれは置いておこう。  
「ところで……寒くないですか?」  
「……寒いのか?」  
正直な話、俺自身は特に寒いという程ではないのだが。  
「寒いですよ。こんな夜遅くですし。あまり上着も着てませんし」  
見ると、彼女は寝巻きの上に制服の上を羽織っただけだ。そりゃ確かに寒いに決まっている。  
俺はため息をつくと、羽織っていた制服をひょいとかぶせてみる。  
「あらっ?」  
「いいから、着とけ。寒いってんなら」  
「……………」  
彼女は恥ずかしそうに俺を見上げた後、第一ボタンを勝手に留める。  
「……優しいんですね」  
「誰が?」  
「貴方がです」  
いきなりそんな事を言われたので俺は思わず自分の顔が赤くなったのが解った。  
待てい、落ち着け俺。何を考えているんだ。  
「いきなり何を言いやがるんだ、お前は!」  
「え? だ、だって……その……見掛けに寄らずに優しい人なんだなって」  
「………そうなのか?」  
ようやく落ち着いてきたので顔を見ないようにしながらそう答える。  
彼女は「ええ」と頷きながら返すと、再び俺の顔を掴んで強引に回転させて目を合わさせた。  
正直な話、凄く痛い。  
「痛いんだが」  
「人と話をする時はこっちを向いて下さい」  
ああ、やはりそういう事なのか。  
俺は諦めてため息をつくと、身体の向きを彼女の方向に向ける。  
 
すると、彼女は彼女で俺が先ほどかぶせた制服の一部分に顔を埋めかけていた。  
あのポケットには確か……!  
「甘い匂いがしますね」  
「そりゃそうだろ。てか、フレンチトーストは好物なんだから食べたりするなよ。俺のだぞ」  
「甘いの好きなんですか?」  
「ディアボロスはカロリーを求める生き物だ。ディアボロスは皆甘党なんだよ」  
もっとも、俺の故郷の地域は皆甘党だらけだったが……。寒い地域だと消費するエネルギー量も多いに違いない。  
「でも、頂きます」  
彼女はそう言って勝手にフレンチトーストをポケットから取り出し、勝手に食べ始めた。  
「だから喰うなって言ってるだろ」  
「返して欲しければ取り返せばいいです」  
彼女はそう言って笑うとフレンチトーストを口に銜えながら笑った。  
ふむ、そこまで言うなら取り返してやろう。  
俺は彼女の両肩に手を置くと、彼女が銜えたままのフレンチトーストの反対側を俺が加え、強引に引っ張った。  
微かに唇が触れた気がするが、気のせいの筈だ。  
「………!」  
「よし、奪還成功……甘いのは、いいな。やっぱり」  
「いえ………今、その………!」  
「ん? ああ、悪かったよ。でも、お前も取り返せばいいとか言ったのも悪いんだぞ」  
「いえ、そうじゃなくて! その………」  
彼女は顔を赤くしたまま困ったように呟くと、視線を逸らした。  
微かに見える首筋と、少し赤くなっているとはいえ、白い肌も。髮も。  
 
月と星しか明かりの無い中でも、それでも美しいと思える。  
その、恥ずかしそうな表情が。  
 
「………んっ……」  
接吻ると、仄かに甘い香りがした。  
生温い唇を塞ぎ、俺は手をそっと彼女の背中から首筋へと回す。  
柔らかい。もう少し力強かったら千切れてしまうかも知れないと思う位に。  
 
俺は手を首からそっと、制服と肌の隙間へと滑らせると、その下にある彼女の下着の上からそっと胸に触れた。  
「……ここは随分と柔らかいな……」  
「っ、どこ触って……やめて………」  
「悪いな」  
俺はそう呟くと、制服の間の、下着をそっと外した。  
 
「俺、抑えきれないかも知れない………だから、先に謝っとく。悪い」  
 
そう、言い放ってから彼女の返事を聞く前に。  
俺の両手はもう、彼女を押し倒していた。  
 
ブラを外した後、制服のボタンを一つずつ外していくと、小ぶりだが、形の整った胸が露になった。  
先ほどまでは抵抗していたが、もう抵抗も無く、彼女は恥ずかしそうに視線を逸らしていた。  
「……ひゃっ…………」  
胸を少しだけ揉むと可愛い悲鳴をあげる。何となく、可愛いと思った。  
「可愛い声出すな、結構」  
屋上に横たわった彼女の上に覆いかぶさるように、俺は彼女の胸の先端を少しだけ舐める。  
尖った乳首が少しだけ揺れた後、下半身も同じように揺れた。そう言えば、スカートの下はどうなっているのだろうか。  
俺はスカートの中へと手を伸ばすと、手探りで秘所を探り当てた。微かに濡れているのが解る。  
「濡れてる?」  
「……ええ…………そこは……触らないで」  
「嫌だと言ったら?」  
「………嫌です」  
彼女の答えに、俺は秘所を覆うショーツに手をかけると、そっとズラして引き剥がした。  
彼女が股を閉じるより先に秘所へと手を伸ばし、指で少しだけ弄る。  
「いやっ……やだ、やめて…………お願いっ……」  
指を動かす度に彼女がそう声をあげ、その後、瞳に涙が溜まってきているのが解った。  
「………お願い……」  
そう言う彼女は、セレスティアで。俺は、ディアボロスで。  
 
このまま彼女を手にかけるのか、それともそれを辞めるのか。  
手を掛けて、彼女を壊すのか。それともそのままでいるのか。  
 
決めるのは、俺でしかない。  
 
 
「………やめた」  
押し倒していた彼女から両手を放すと彼女は涙目のまま俺を見ていた。  
「………えっちなのは……良くないですよ……」  
「そいつは悪かったよ」  
俺はそう答えると、開いたままの彼女の上着のボタンを閉じようとしたが止められた。  
「……止めないのか?」  
「まだ下着付けてません!」  
そう言えば俺が脱がしたんだった、すっかり忘れてた。  
彼女が下着を付けている間、俺は強引に背後を向かされていた。一度半裸を見てるんだから別にどうでもいい気がするのだけれど。  
「………ああ、もうそろそろ朝か……」  
空を見上げると、空の星も殆ど消えて月はとっくに沈んでいた。いつの間に時間が経ったのか。  
「……もうそんな時間なんですか?」  
「ああ、そうだな」  
「……………次にエッチなことをしたら怒りますよ」  
「解ってるよ」  
彼女の言葉に、そう返す。流石にこれ以上やったらアレな事になるかも知れないし。  
「でも、責任はとって下さい」  
「……へ?」  
 
ああ、解っていたさ。  
まさかここからそんな関係になるのであれば問題無いって事はね。  
何、今どうしてるかって?  
彼女は俺の彼女。ただ、それだけの話さ。  
 

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