「ねぇ、怖いよぉ。地図忘れちゃったしもう帰ろう」  
 僧侶らしきドワーフの少女が、目の前に広がる暗闇を見つめながら、消え入りそうな声でそう呟いた。  
 目の前を歩く、ヒューマンの青年の服の裾を掴んで、ぐいぐいと引っ張りながら、瞳に涙を溜めて、引き返そうと繰り返す。  
「俺がマプル使ってるし、ここのモンスターは大して強くもないし、怖がる必要もないだろ」  
「で、でもぉ……」  
 ドワーフの少女は、ビクビクしながら、後ろに続くパーティのメンバーへ視線を向けた。みんなは「また始まった……」とでも言いたそうに視線をそらす。  
 彼女は中々優秀な僧侶だったが、その利益を打ち消してしまうほど、臆病でもあった。尻尾を両脚の間に挟みこんで、恐ろしそうに毛皮を逆立てながら、再度暗闇を見つめる。  
「じゃあ、さっさと行くぞー」  
『おーっ』  
 リーダー役を努めている、先ほどの青年が号令をかけると、メンバー達は一斉にそう返し、歩き出す。少女は「ま、待ってよぉ〜!」と慌ててながら、それを追いかけた。  
 暗闇は怖いが、こんな場所で一人になってしまうのは、もっと怖い。すぐにリーダーの側まで駆け寄って、服の裾を掴んだ。  
 彼は振り返って、少女の顔を見つめる。何かを言おうとしたのだが、今にも泣きそうな顔を見ていると、喉がつっかえる。  
「敵が出たら離せよ」  
 それだけ言うと、そのまま暗闇へと入っていく。泣かれると思うと、突き放すような事はいえなかった。  
 ドワーフの少女は、獣の耳をピクピクと動かしながら、「ありがとう……」と呟いて、後に続く。いつもの光景に、後ろに続く他のメンバーは、“見せ付けんなや”と呆れ顔を浮かべた。  
 先頭の二人に続いて、溜息がちに暗闇へと入っていく。このパーティは男4人に対し、女性は先ほどのドワーフの少女と、司祭をしているヒューマンの少女だけだ。  
 パーティ内でカップルでも出来てしまえば、あぶれた二人は居心地が悪くて堪らない事が簡単に想像できて、気が気でない。  
 先頭からは、暗闇で何かに躓いたのか、「ひゃっ」とか「うわぁん」とか「待ってよぉ!」とかの声が聞こえてくる。  
 何となくその二人に近寄るのが憚られる空気の中、そういう訳にもいかず、後に続くメンバーは俯き加減に歩を進めた。  
 マプルの魔法で描いた地図で、現在地を細かく確認しながら、暗闇を抜けようと歩き続ける。  
 暗いというだけで、別にそれ以外の支障はなく、マップさえあれば、魔法を使用出来ない区域の方が、よっぽど脅威だ。  
 それはパーティの中でも共通の認識な用で、あのドワーフの少女以外、暗闇に入るのを恐れている者は一人もいなかった。  
 本来、ドワーフは大らかでどっしりと構えた性格の者が多いのだが、特別臆病な彼女は、同族の仲でも珍しいだろう。  
 周囲のちょっとした物音に驚いて、びくびく震えながら、目の前の青年の背中に抱きつく。  
「おい、離れろってっ」  
「だってぇ…!」  
 そうやって、仲の良さを見せ付けるような会話をしながら、暗闇を歩いていると、マップから目も離れてしまい、壁の接近に気付かず、頭からぶつかってしまう。  
「いってぇ……!」  
「だ、大丈夫…?」  
 
 額を片手で擦りながら尻餅をつく青年の横で、少女は不安げに尻尾を縮こまらせながら、彼の表情を覗き込む。  
 もっとも、暗闇の所為で表情などほとんど分からないが、確かめないと不安でたまらないのだ。  
 青年は「平気だ」と返すが、少女はそれでも不安な様子で、ヒールを一回使ってから彼の後に続いた。  
 ヒールをかけられた方は、「無駄遣いするな」と言うが、歩いているうちにMPが回復するのが僧侶の利点だ。  
 少女は「これぐらい、すぐに回復するから」と返し、青年に寄り添って腕を組むと、相変わらずおっかなびっくりの足取りで、暗闇を歩き始める。  
 ただでさえ暗くて足元がよく見えないのに、こんなに寄り添われてしまえば、歩きにくくて堪らない。だが、腕を通して伝わってくる震えを感じていると、振り払う気にもなれない。  
 彼は、掴まれている腕を持ち上げて、自分の胸までの高さしかない、少女の頭の上に置くと、髪の毛をわしゃわしゃと撫で付ける。体を覆う毛皮とは、そこだけ質感が違った。  
「世話が焼けるな。そのうち何とかしろよ」  
「……うん」  
 少女は恥ずかしそうに尻尾を揺らし、耳を垂れさせ、頬を染めつつ返した。小言は言っても、最後には優しい言葉を掛けてくれる。それが嬉しかった。  
 えへへ、と笑って青年に頬擦りすると、腕を引いて歩き始める。彼は仕方ないとばかりに微笑むが、頬に摺り寄せられた毛皮の感覚に、その頬は紅潮していた。  
 彼は周りが暗闇で良かったと思いながら、照れたように頭を掻くが、それも束の間、パーティから鋭い声が掛けられた。  
「いちゃつくのはそこまで。モンスターが来た」  
 凛と響く、事務的な女性の声。同じパーティのヒューマンの司祭だ。その声に応じて二人は走り出し、パーティで陣形を作る。  
 すでに、四方からどたばたと足音が聞こえ、敵の頭数が多いこと、  
 この際、いちゃつくだなんて言われた事は無視して、二人は陣形の先頭に立つ。横にはもう一人、ドワーフの戦士が斧を構えていた。  
 ヒューマンの青年は青年は侍の見せる独特の構えで、腰にさげた二本の刀を抜刀し、ドワーフの少女は多少ビクビクしながらも、手に持った杖を敵に向ける。  
 後ろでもパーティのメンバーが、それぞれの武器を手にしてモンスターへと向けていた。  
 暗闇の所為で敵がいったいどのモンスターなのかは分からないが、ぼんやりと輪郭が浮かんでいる。  
 ヒューマンの青年は、その輪郭へ向けて、刀を構えながら突進する。ドワーフの戦士も同様だ。  
「行くぞッ!」  
 刀の一閃、そして斧の一撃が、確実にその影を捉えた。だが、妙に手応えが薄い。となると、可能性は一つだった。  
「おい!」  
「分かってる」  
 青年がパーティの後衛へ向けて叫ぶと、司祭はまたも事務的に返すと、目をつぶって精神の集中を始めた。  
 彼女の周囲が微かに光を放ち、辺りには聴く者に安らぎを与えるような、穏やかな旋律が鳴り響いた。  
 同時に、パーティの目前に位置する影の群れが、一斉に消え失せる。不死生物や霊魂を浄化させる、レクイエムの音色だ。  
 しかし、前列の敵が消えたところで、すぐに別の敵がパーティへと向かって来る。他のメンバーに牽制を任せながら、司祭は再度レクイエムの旋律を刻み始めた。  
 彼女以外の後列は、大した効果は得られないと知りつつも、後列から弓を放ち、前衛も同じような状態だ。  
 
 唯一違うのは、僧侶であるドワーフの少女だが、いかんせん敵の数は多い。彼女が多少敵を減らしたところで、全体としてあまり効果はなかった。  
 やはりレクイエムを用いてまとめて浄化するのが、最も効率的な戦術だ。  
 だが、その旋律を刻み終えるかと言う間際、モンスターたちの方からパーティへ向けて火炎が放たれる。初歩の攻撃呪文、“ファイア”だ。  
 その火炎は司祭へと向かって直進していく。初歩の魔法とは言え、純粋な破壊の力を持つ炎を侮る事は出来ない。  
 彼女は詠唱を中断して、その攻撃から身を護る以外手はなかった。  
「だ、大丈夫……?」  
「平気」  
 不安そうに尋ねてくる僧侶に、衣服に纏わりつく熱気を払いながら素っ気無く答えると、司祭は詠唱を再開する。だが、同時に魔物たちが次の魔法を放つ。  
 フィアズの呪文だ。パーティのメンバーに、言いようの無い不安感が襲い掛かった。その不安感が背筋を震えさせる。  
 もっとも、戦闘時と言うのは戦意によって意識が高揚しているため、その魔法で恐慌状態に陥る確立はあまり高くはない。  
 パーティのメンバー達は、すぐにその不安感を振り払い、攻防を再開する。その中で、ただ独り足を止めたのが、僧侶の少女だった。  
 激しい恐怖が体を駆け巡り、足を震えさせながら、その場で立ち尽くす。戦闘時、棒立ちになっているのを、敵が見逃すはずもなく、すぐに彼女の元へファイアの魔法が飛んだ。  
「バッカやろう……ッ!」  
 自分へ迫る魔法に目を見開きながら、恐怖で体が動かない。少女が身を護ることすら出来ず、ファイアを正面から受ける間際、ヒューマンの青年が彼女を突き飛ばした。  
 その初撃は何とか交わすことが出来た。だが、尻餅をついて震えている姿は、先ほどよりも無防備だった。次は攻撃を避けられるとも限らない。  
 その背中に青年が叫ぶ「さっさと逃げろっ」と。恐怖に支配された頭の中に、その言葉が深く染み入っていく。直後、彼女は既に走り出していた。  
 中間達の位置など頭にはなく、その場から逃げ出すことだけを考えて。彼女の仲間がそれを追おうとするが、モンスターたちの追撃が、それをさせてくれなかった。  
 一瞬気を抜くことが死に繋がる、この戦闘の中、少女を追って暗闇の向こうへ消える魔物の集団の存在に、彼らは気付く事はない。  
 一刻も早く戦闘を終わらせ、少女を追うために、その攻撃はいっそう鋭さを増していたが、視野は必要最低限まで狭まっていたのだ。  
 そして、彼らが戦闘を終わらせたとき、少女の姿は既にそのフロアにはなかった。  
   
×××  
 
 すでにフィアズの効果は解けていたが、少女の頭は恐怖に支配されていた。薄暗い洞窟の中、モンスターに両腕を捕まれて、何処かへと連れ去られている。  
 武器は奪われ、反撃の手段もない。彼女は恐怖に耳を垂れさせながら、再度自分の周囲を取り囲むモンスターたちを眺めた。  
 数匹のゴブリンにオーク。どちらも体の形状こそ人に近いが、醜悪な外見と低劣な頭を持ち合わせるモンスターだ。  
 獣から剥ぎ取っただろう毛皮で、申し訳程度に体を包み、鍛冶の技術の低さを物語る、刃こぼれした武器が、その文明の程度の低さを表していた。  
 だが、それ故に交渉も命乞いも通用しない。彼女の命は彼らの手の内に握られている。震える以外、彼女に出来る事はなかった。  
 抵抗すらして見せず、彼女はモンスターたちの誘導のままに、付き従うように歩いていく。やがて辿り着いたのは、ダンジョンの壁にぽっかりと開いた洞穴だ。  
 少女がその前で戸惑っていると、一匹のオークが“さっさとしろ”と言わんばかりに、彼女の背を蹴りつけた。  
 
「きゃっ…!」  
 そう悲鳴を上げながら、彼女は前のめりに倒れ込む。体を震わせながら立ち上がり、振り返ると、一本角に巨大な牙、生理的な嫌悪感を抱かせる緑色の肌の持ち主が、その様子を見て笑っていた。  
 そのオークの横で、彼女の無様な姿を一緒に眺めていたゴブリンまでも笑い出し、結局その下卑た笑い声は、モンスターの群れ全員に伝染する。  
 自分が酷く惨めに思えた。醜悪なモンスターにすら指を差して笑われ、そのモンスターに従うしかない。彼女は立ち上がれずに、その場で大粒の涙を零した。  
 さっきまで、恐怖の所為で泣くことが出来なかったが、恐怖以外の感情――屈辱感、虚無感、悲しみが、涙を零させる。  
 だが、いつまでも立ち上がらず泣き続ける姿にじれったくなったのか、今度は一匹のゴブリンが彼女に近寄り、不自然に大きな手で彼女の髪の毛を掴むと、無理矢理持ち上げる。  
「ひっ、痛い! 痛いぃ…ッ!」  
 当然の激痛に彼女は悲鳴を上げるが、だからと言って相手が手を放してくれる訳でもない。「はなして、はなして!」と叫ぶ彼女の姿を意地悪く見つめ、不意に放して地面に倒れる様子を楽しんだ。  
 そのゴブリンは倒れ込む少女の脇腹を蹴り上げると、低く鳴いて“さっさと行け”と急かす。これ以上殴られるのはごめんだった。少女は蹴られた脇腹を押さえながら、何とか立ち上がると、洞穴の奥へと歩いていく。  
 恐怖に耳は伏せられ、尻尾は両脚の間に挟み込まれ、全身の毛皮がぞわぞわと逆立つ。それ以上進みたくない。歩みを止めて引き返したかった。  
 だが、モンスターたちはいつの間にか彼女の側まで来て、その行動を監視している。立ち止まれば、きっとまた蹴り飛ばされるだろう。  
 喉の奥から溢れ出そうになる、嗚咽を飲み込んで、少女は歩いていく。洞穴の奥から流れてくる生温かい風は、モンスターたちが唸り声を上げているかのような、不気味な音色を奏でる。  
 薄暗い洞穴の中を、彼らに付き従って歩くうちに、ホール状の場所に辿り着いた。そこは壁にたいまつがかけられ、内部を照らしている。  
 酷い汚臭がした。犬の鼻がどうしてもその臭いを拾ってしまう。肩を掴まれて立ち止まらされ、俯いていた視線を上げた。  
『グォオウ……』  
 目の前のそいつが、低く太い声で鳴いた。囚われた少女を見つめながら、醜い顔を更に醜く歪めて笑う。  
 そのモンスターが何なのか、少女も知っていた。巨人に属する大柄な魔物、トロールだ。  
 でっぷりと太った体と、巨大な腕、不釣合いに小さな脚、肩と手の甲だけ毛皮で包まれている。  
 そして、体を洗うことなどまったくないのだろう。垢が溜まり薄汚れた体は、酷い臭いを放っていた。  
 そのトロールはどうやら、彼女をここに運んできたモンスターたちの、ボスのような存在らしく、そいつが少女に向けて歩き出すと、魔物たちはトロールの方へ突き飛ばす。  
「い、嫌ぁ……」  
 なす術もなく地面に倒れ込む彼女に、トロールがゆっくりと近づいてくる。逃げ出そうとしても、恐怖に体が引き攣って、上手く動かない。  
 巨大な手が彼女の胴を掴む瞬間、もしや生きたまま喰われるのでは、などと凄惨な想像が脳裏を過ぎった。  
 だが、トロールの考えは彼女が想像していた物とは違っていた。少女の衣服に牙を立てて、強引に引き裂くと、その下の毛皮を、悪臭を放つ唾液を滴らせた舌で嘗め回す。  
 恐怖に全身の毛皮を逆立たせながら、彼女は悲鳴を上げる事すら出来なかった。そのねっとりとした舌遣いが終わるまで、恐怖に引き攣った顔で耐えた。  
 ようやく舌が離れたかと思うと、彼女の全身はトロールの唾液で濡れ、べったりと体に貼り付く毛皮は、トロールと同様の汚臭を放っていた。  
 まるで、野生の動物が自分の縄張りにマーキングするようだ。それと同じように、自分の所有物に自分の臭いを付けたのだった  
 
「うぅ……おぅぅ…ッ」  
 その強烈な臭いに、少女は溜まらず胃の内容物を逆流させた。彼女の胴体を掴む、トロールの腕にそれを吐き出すが、トロールは気にする様子もなく、それを舐めとった。  
 少女は自分の嘔吐で噎せ返って、ゴホゴホと咳をする。トロールはそれを無視して、少女のスパッツを指で千切った。  
 薄茶色の毛皮の中、ピンク色の割れ目が露になる。まだ使われたことのないようで、入り口はびったりと閉じ、最後の抵抗か尻尾を使ってそこを隠していた。  
 まったく濡れてはいなかったが、それでも僅かばかりの雌の匂いが発せられていたのだろう。トロールは、少女の股間に鼻面を埋めて、大きく息を吸い込む。  
 そうすると、粗末なズボンの股間部分にテントが張り、布越しでも、その狂気じみた太さが一目で分かった。  
 それを目の端で捉えた少女は、「ひっ」と声を漏らし、手足を動かしてトロールの手から脱出しようとする。ここに連れて来られて、彼女が初めて見せた抵抗だった。  
 こんな知性の欠片もない化け物に、自分の体を犯されて、いいようにされるだなんて、死ぬよりも恐ろしい事だ。  
 いや、この状況から抜け出す最も手っ取り早い方法は、死ぬことかもしれない。きっと仲間がその遺体を捜し出して、蘇生してくれる筈だ。  
 そう思考を巡らせるが、この土壇場にあっても、彼女に自害する勇気はなかった。蘇生できるかもしれないと知りながら、死ぬことも怖かった。  
 それを本能で感じ取っているのか、トロールは彼女が自害する心配などまったくせず、彼女の両腕を押さえ、股座を舌で嘗め回す。  
 太い舌が恥部を這いずり回る感触に、彼女はぞわりと寒気を感じて、小さく呻く。それでも愛撫と言うのもおこがましい、強引な舌遣いが彼女を責め、いつの間にか彼女の恥部は、トロールの唾液でべとべとになり、まるで愛液が溢れ出しているようだった。  
 実際には彼女はまったく興奮などしておらず、体を強張らせるばかりだったが、トロールの舌で割れ目はほぐれ、いつの間にかぱっくりと入り口を開かせている。  
 トロールはその割れ目を見ながら、満足気に低く鳴くと、片手で自分のズボンをずり降ろす。  
 少女の腕よりも巨大なペニスが、真っ直ぐ天井を向いており、その先端に向けて、少女の腰を降ろしていく。赤黒く血管が浮き出たペニスは、持ち主と同様に醜悪且つ凶悪だった。  
 彼女も身をよじって抵抗するが、あまりに力が違いすぎた。なす術もなく組み伏せられ、巨根の先端を、膣口へとあてがわれる。  
「や、やめ……、やめ…てぇ…ッ!!」  
 少女はもはや半狂乱で、両手を滅茶苦茶に振り回して抵抗する。まるで大人に抵抗する駄々っ子だ。まさに、大人が幼子を嬲りものにするような光景だった。  
 泣き叫ぶ少女の膣へと、トロールは亀頭を挿入する。それだけでも、未経験の恥部に握り拳を捩じ込まれたようなものだった。  
 感じたことのないほどの激痛に、少女は白目を剥いて、意識を失うかと思うほど絶叫する。意識を失うことが出来たら良かったのだろうが、それには彼女の体は強靭すぎた。  
 ドワーフと言う体の丈夫な種族と言うのもあるが、それ以上に、探検を生業としてきた彼女の体は、強靭に成長していたのだ。  
 意識を失うことも、抵抗も出来ず、巨大なペニスがミチミチと音を立てて秘肉を押し広げ、挿入してくる痛みを感じ続けなければならない。  
 もう処女だとかは関係なかった。膣は大きさに耐えられず出血し、それでも巨大な栓を嵌められたせいで、膣口から溢れてくることもない。  
 やがて、トロールのペニスが3分の1ほど挿入されたところで、もうそれ以上入らないようになった。  
 それ以上無理に挿入しようとしたところで、硬く閉じた子宮口に当たって、彼女の内臓を圧迫する以外の成果は得られなかった。  
 トロールは仕方なしに、その上体でピストンを始める。少女は突き上げられる度に「ひぃんッ」やら「ぐぇぇ…ッ」やらと、カエルが潰れたような、くぐもった悲鳴をあげる。  
 挿入されるだけでも地獄だったと言うのに、トロールの強靭な体力のもたらすピストンは、激しい苦痛以外の何も与えなかった。  
 少女の下腹部は、トロールのペニスの圧倒的な質量に、傍目にも膨らみを確認できるほどだ。トロールのピストンに合わせて、その膨らみが上下し、膣が裂ける寸前まで痛めつけた。  
 強すぎる締め付けに、トロールも予想外感じてしまったのか、時が経つほど腰の動きは強くなっていく。  
 未だに隙間などなかったが、ペニスから溢れる先走りが膣内を埋め尽くし、少女の恥部からは、押し出されるように鮮血が漏れ出た。  
 
「お、おねがひぃ……も、う、ゆる…ッひてぇ……ッ」  
 涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、少女が掠れた声で叫ぼうと、トロールはまるで意に介さず、「ぶぐっ、ぐふっ……」と下品な笑い声を上げながらピストンを続ける。  
 トロールの口から吐き出される生温かい息が、少女の首筋に掛かる。強烈な悪臭を放つその息に、もう吐けるものなど残っていない筈なのに、喉の奥から嘔吐感が込み上げた。  
「ひぃっ…ぐぅ…、いたひぃ……うぅ、あぁぅ……んむ…んぐぅ…ッ」  
 怯えた悲鳴を上げ続ける、少女の口へ、トロールは太い舌を捩じ込むと、口内までも自分の臭いを擦り付けていく。  
 ねっとりと口内を嘗め回すと、少女の手足がビクビクと震え、力んでいた尻尾はだらりと垂れ下がる。  
 その蹂躙を終えて口を離すと、少女は激しく咳き込み、胃液を逆流させる。胃液だけではなく、涙と鼻水もとめどなく溢れ、思考することさえ放棄して泣き叫んだ。  
 苦痛と屈辱の中、彼女はここにいるモンスターと同等の所まで落ちていた。そしてトロールは、ようやく堕ちきった少女へ、種付けの準備を始める。  
 少女の頭ほどもある大きさの玉袋を震わせ、ひときわ大きく突き上げた。これまでのピストンで緩んだ子宮口へ亀頭を捩じ込み、ついにトロールは、少女の体の最も奥までも貫いた。  
 それでも巨根の半分ほどしか少女の中へは入っていない。だが、その程度の事は気にならないようで、少女の体を押さえつけながら、一気に絶頂へと上り詰める。  
「ぐがぁ、がぁぅううっ!」  
――どぴゅっ、びゅるるるっ!  
「あがっ…ッ…ひぃああぅ……ッ」  
 人とは比べ物にならない量と勢いを持った精液が、少女の胎内へと流れ込む。少女の下腹部はみるみるうちに膨らみ、トロールが射精を終える頃には、まるで妊婦のようになっていた。  
 彼女はその衝撃に悲鳴を上げると、白目を剥いて気を失った。急に動かなくなった少女に、  
トロールは“つまらないな”とでも言いたげな唸り声を上げると、柔らかくなったペニスを引き抜く。  
 それと同時に、こぽりと音を立てて、血と精液の混じった淡い桃色の液体が、少女の恥部から滝のように溢れ出す。  
 トロールは、気を失った少女を興味なさげに投げ捨てると、大きな欠伸を一つして、地面に寝転がった。  
 それと同時に、地面に打ち捨てられた少女へと、魔物たちが一斉に群がる。気を失っていようが関係ない。  
 拡がりきった恥部には、二匹の魔物がペニスを挿入した。恥部から溢れてくる精液を、アナルに持っていき、未改築のそこへも挿入する。  
 また、別の一匹は少女の顎に手を添えると、気を失っているのを良い事に、ペニスを口の中へと突き入れる。  
 あぶれた者は、少女の犯される姿を眺めながら自慰にふけり、彼女の毛並みはたちまち白濁色に汚れていった。  
 群がる魔物たち全てを満足させ、一端の休憩を得られたのは、それから3日後の事だ。その間、魔物たちの精液で飢えと渇きをしのぎ、あのトロールにも数回犯された。  
 彼女の体からは、魔物たちと同じ汚臭が漂っている。虚ろな目で宙を見上げながら、彼女はもう涸れたと思っていた涙を流した。  
 仲間に見つけてもらおうと言う希望など、もう持っていない。ここはマップにも映らない魔物の巣だ。それに、今の自分を見られたくなかった。  
 精液に塗れ、ピンク色だった膣口と肛門は、黒ずんでぱっくりと開いている。体から醜悪な魔物たちと同じ臭いを発し、随分とみすぼらしい姿になってしまった。  
 それから、さらに数週間経つ頃には、少女の腹は膨れ上がり、あのトロールの仔が彼女の胎内で暴れていた。  
 
 
 魔物たちは繁殖力が高く、例え母体が人だろうとも、1ヶ月ほどで出産に至る。彼女もすでに臨月に達していた。  
 日に日に大きくなっていく自分の腹を見るたび、絶望感が身を包んでいく。申し訳程度の膨らみしか持たなかった胸も、いつの間にか母乳が溜まり、人並みの大きさになっていた。  
「たす……けてぇ…」  
 仲間に会いたくなどない筈なのに、今の自分を見られてまで助けられたくなどない筈なのに、彼女はそう呟いた。  
 それと同時に、腹部へと激痛が走る。陣痛だろうか。化け物を産む覚悟も、その事実を許容できるほどの余裕も、彼女には全くなかった。  
 少女が陣痛に苦しむ姿を見たオークが、彼女の元へとやってきて、拡がりきった膣口に腕を突っ込み、子宮口を小突く。  
 胎内の脈動がいっそう激しくなり、その苦痛に彼女は呻いた。トロールの仔を押し出そうとしている。  
「嫌だぁ! いやぁっ、いやぁっ!」  
 産みたくない。その一心から、少女はそう叫んで手足を振り回す。これほど暴れたのは、ここに運ばれた時以来だった。  
 だが、叫んだところで現実が変わるわけでもない。少女の叫びに見物が集まり、魔物たちの眺める中で、膣口がめくりあがって、トロールの赤仔の頭が出てくる。  
 父と同じ、醜く見るものに嫌悪感を与える顔だ。オークたちがその頭を掴んで引っ張ると、ずずっとその胴体までもが引っ張り出される。  
 生まれたのは、確かにトロールだった。外見的には、ドワーフの形質などまったく受け継いでなどいない。  
 彼女が産んだなどとは、誰も思うはずがないだろう。だが、その魔物と自分を繋ぐ臍の緒は、少女にその実感を与える。  
 もう嫌だ。嫌だ。目をつぶり、歯を食いしばり、目の前の全てを否定しようとする。だが、その間にも、さっき産んだトロールが腹をよじ登り、胸に吸い付く。  
 同時に、魔物たちの1匹が、出産の後で拡がりきった膣口へ、ペニスを挿入する。現実は容赦なく彼女を襲った。  
 腹が大きくなるにつれて、魔物たちに輪姦される回数も減っていたが、これでそれも元に戻る。そしてまた別の仔を孕まされ、産まされる。  
 彼女に残された道は、自己を喪失することしかなかった。それから後、彼女が抵抗を示す事もなくなった。  
 仲間たちと冒険をしていたときの面影など、全くない、薄汚れて疲弊しきった姿で、魔物たちの性欲を発散させるためだけに生かされていた。  
 そして彼女にも、快感以外の感情は残っておらず、冒険者の成れの果てとして、過労で命を落とすまで、魔物を産み続けた。  
 
 
終わり  
 

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