クロスティーニ学園で起こった校長殺害事件は大きな衝撃を与えた。  
 校長がかつて有名な冒険者で高齢の今でも鍛練を怠っていなかった事と、その犯人が教師であるダンテだった事である。  
 そう、教師が校長を殺害して逃亡したという事が。何よりも大きな衝撃を与えていた。  
 
 ただ、ダンテ達がボレンタ港の先にある塔にいるという情報だけは多くの生徒に知られていた。  
 しかしまだ混乱の収まっていないクロスティーニ学園は生徒達に塔へ向かう事を禁止し、すぐにでも突っ走りがちな生徒達を宥めていた。  
 
 だが、それも深夜になってしまえば警戒の目は緩む。  
 消灯直後、宿直教師の巡回が始まる前に抜け出した三つの影は、塔を目指してひたすら走っていた。  
 先頭を走るのはディアボロスの少女で時折飛びだしてくるモンスターを手にした刀の一閃で全てを蹴散らしていた。  
 そんな彼女に少し遅れて、クラッズとノームの少女が後に続く。動きの速いディアボロスの後を必死に追い掛け、追い付こうとしている。  
「ディアボロス、早いよ……少し待って」  
 長い橋の終わりまで辿り着いた所でクラッズがそう声をかけ、先頭を走るディアボロスが足を止める。  
「……すまない」  
「急ぎたい気持ちは解ります。でも、ペース配分も少し考えた方が良いです」  
 ディアボロスが頭を下げると同時に、クラッズと共に追い付いてきたノームがそう声をかける。  
 錬金術士学科の彼女は二人よりも多くの荷物を抱えている。クラッズと同じペースで走る事自体が大変なのだ。  
 ディアボロスはもう1度「すまない」と謝ると、鞄から地図を取りだして広げる。  
「ここからはもう一本道で行けるな」  
「そうだね……ねぇ」  
 クラッズが口を開き、ディアボロスが顔をあげる。  
「なんだ?」  
「本当に……行くの? 黙って出て来ちゃったけど」  
「………」  
 クラッズの言葉に、ディアボロスが無言で頷く。  
「ダンテ先生の為だ」  
 ディアボロスは淡々と答える。  
 ダンテが校長を殺害した、という事実はある。それは確認された事だ。  
 だが、何故それをしたのか?  
 彼女にはそういう疑問があった。厳しくも優しく指導してくれたダンテが何故そのような所業に出たのか解らなかった。  
 だから、ダンテに会って話を聞く為に。  
 ディアボロスは、仲間達と共に塔に向かっているのだ。  
「彼女の言う通りです」  
 ノームがクラッズにそう口を開いた。  
「ダンテ先生が何をしようと、それでも私達の先生である事に変わりはありません。何が待ち受けているか解らなくとも、それでも私達がクロスティーニ学園の生徒である以上、進むべきでしょう」  
「……なるほど。そうだね。行くべき、だよね」  
 クラッズは前方に視線を向けると、大きく伸びをした。  
「じゃ、もうすぐだからそろそろ行こう」  
「うむ」  
 ディアボロスが先ほどより少しペースを落として走り出し、クラッズとノームがその後に続く。  
 再び、夜の闇の中へと消える。  
 
 遠くの空が明るくなりかけた頃、ボレンタ港を抜けて塔まで辿り着いた3人は一端足を止める事にした。  
「話には聞いてたけど、本当に大きい塔だよね」  
 クラッズの言葉に、二人が頷く。元々はレベルが高いから近づくな、という理由で生徒は殆ど足を踏み入れないその塔に。  
 そんな場所に、今は校長殺害犯と言われるダンテに会いに行く為に、足を踏み入れようとしている。  
「…………なぁ、二人とも」  
「なに?」  
 ディアボロスの言葉に、クラッズが首を傾げる。  
「心配だったら、ここで待っていてもいいんだぞ? 私が誘ったようなものだし……」  
「それは心外ですね。貴方が言わなくとも私は行くつもりでしたよ? 用意していたら貴方に誘われただけです」  
 ディアボロスの言葉にノームがそう返事を返し、クラッズも「そうだね」と頷く。  
「ディアボロスは、ダンテ先生のこと、本当に心配してたものね。友達が危ないかも知れないトコ行くのに、クロスティーニ学園の生徒として黙ってみる訳には行かないし。  
 ノームがさっき言ってたのと似てるけど……」  
 クラッズは照れたように笑いつつそう言葉を続けると、背負っていたその小柄な身体に似合わぬ鎚を持ち上げ、塔を示した。  
「ともかく、入ってみて、ダンテ先生探そう」  
「……ああ」  
 クラッズの言葉に二人は頷くと、周囲を少しだけ見渡した後、塔の中へと急いで突き進んでいった。  
 
 その姿を、塔の中から見下ろす一つの影がいた事に気付かずに。  
 
 手強いモンスターが多く潜んでいる、と聞いていたが彼女達は一階を抜けるまで、一体のモンスターとも出くわさなかった。  
 そう、不気味に思えるほどに、静かで響くのは3人が立てる足音だけ。  
 逆に何かあるのかと不安になってしまうほどに。  
 
 そして上の階層に抜けた直後、ディアボロスは薄々感じていた不安が徐々に膨れ上がっていく事に気付いた。  
「………なぁ」  
「なんですか?」  
 急に足を止めたディアボロスに、ノームが視線を向ける。  
「さっき、何もいなかったな」  
「ええ。いませんでしたね」  
「変じゃないか? レベルの高いモンスターが沢山いると聞いていたのに」  
「………今はまだモンスターも寝てるんじゃない?」  
 ディアボロスの言葉にクラッズが欠伸をしつつそう答える。明かり取りの窓から覗く空はまだ夜は明けていない。  
「夜行性のモンスターぐらいどこにでもいます」  
 ノームが冷静にそう口を開き、ディアボロスは「そこなんだが」と言葉を続ける。  
「もう1度手分けして一階を探さないか? 何か腑に落ちないんだ」  
「…………反対はしません」  
 ディアボロスの言葉に、ノームは転移札の束を鞄から取りだしつつそう答える。  
「手分けしてって、一人一人で?」  
「危険になったら転移札を使って合流すればいいだけの事です」  
 クラッズの不安げな言葉にノームが淡々と答え、一つかみ分の転移札をクラッズとディアボロスにそれぞれ配り、荷物を少しだけ漁る。  
 クラッズは少し躊躇ったが転移札と幾つかの回復アイテムを受け取ると「じゃあまた」と言って下の階層へと降りていった。  
 未だに鞄を漁り続けるノームと、アイテムを幾つか受け取りつつ視線を伏せたディアボロスの二人が残される。  
「で」  
 ノームは鞄を漁りながら口を開く。  
「どうしたのですか?」  
「ああ、うん……」  
「一人になって考えたいという気持ちは解らないまでもありません」  
 ノームは淡々と続ける。  
「ダンテ先生がいなければ、貴方はいつまでも一人だったでしょうから」  
 ノームの言葉にディアボロスは頷く。  
 他種族から忌み嫌われるディアボロスの彼女。元々気も強い方ではなく、入学してしばらくの間ただ途方に暮れるばかりだった。  
 口ではなんだかんだ言いつつも、そんなディアボロスを塔に辿り着ける程度のレベルまで引き揚げたのはダンテである。  
 今年こそ新入生の担当に入ってはいるものの、ディアボロスの中ではダンテが自分の担任であるという思いは強い。  
 そしてだからこそ。  
 ダンテが校長を殺害して逃げた、という話を聞いた時は嘘だと思っていた。  
 でもそれが事実だと知って、いてもたってもいられなくなった。けれども。  
「ダンテ先生に会って、何を話したいのか解らない」  
 ディアボロスはノームの背中に向かってそう答えた。  
 そう、何を話せばいいのか。何をすればいいのか。  
 昔から孤高を保っていたダンテに、ディアボロスも授業の事以外に不必要な事は聞かなかった。それで充分だった。  
 ダンテもダンテで彼女に対する指導以外であまり口を聞いた事はない。それで充分だった。  
 
 ダンテの事を心配してここまで来たのに、結局の所ディアボロスは何がしたいのかまるで解っていなかったのである。  
 そんな勝手な事にノームやクラッズを巻き込めない、と思ったディアボロスは手分けして探すことを提案したのだった。  
 
「………問題ですね。でも……私は残念ながらその答えを知りません」  
 ノームはディアボロスの言葉にそう口を開く。  
「私自身がダンテ先生にかける言葉は決まっています。でも、それは私の言葉であって貴方のものではありません」  
「……うむ」  
「と、いう事で一人になって考えるのもいい事だと思います」  
 
「…………ああ」  
「では、またあとで」  
 ノームは鞄を閉じ、階段を下に向かって降りていった。  
 口では厳しい事を言いつつも、ノームもディアボロスやダンテの事を心配しているのだろう。  
 ディアボロスは少しだけ安心し、壁に背中を預けた。  
「先生……」  
 何故、こんな事をしたの?  
 そんな単純な問い掛けですら、ディアボロスは怖くて言えないようにも見えた。  
 生徒と教師。  
 そんな関係だけで、充分だった筈なのに。ディアボロスは、ダンテに何を求めているというのだろう。  
「…………」  
 目を閉じた時、いつものような仏頂面で自分を見ているダンテの顔が浮かんだ。  
『強くなりたければ生き残れ。無駄死にだけはするな』  
 ダンテの口癖のような台詞は何度言われたか解らない。迷宮の中で倒れていた自分を回収した後にそう言われた事もあった。  
 今の自分は、無駄死にしようとしているのだろうか。自分の先生は、校長を殺したのだ。  
 でも、とディアボロスは思う。  
 例え校長殺害犯であろうと、ダンテはきっとダンテのままなのだろう。いつもあの先生は、何をしようと何を言おうと仏頂面のままだから。  
 嬉しい時も哀しい時もどんな時も。彼はいつも変わらない。変わらない、ダンテのまま。  
「ああ、そうか」  
 そう。何ら変わる事は無い。  
 何をしようと、ダンテはダンテであって自分の先生なのだ。  
「………バカだ」  
 くだらない事を悩んでいた。本当に、何を悩んでいたと言うのだろう。  
 どんな事があろうと、ダンテと自分の関係は変わらないのだ。そう、きっと。  
 いつものように、ディアボロスの事を指導してくれるのだ。いつもの仏頂面で。  
 
 でも……でも。  
 本当にそれだけなのか、少しだけ疑問に思ってしまう。  
 ディアボロスにとって、初めての先生であったダンテは、初めて自分と向きあってくれた相手でもある。  
 そしてそれは―――――ただの憧れとか、ただの教師への敬愛とか、そういうものでは現せないものになっていたのかも知れない。  
 何を話に来たのか解らない。でも、そうだっていい。  
 話を聞いてどうしたいのか、それはもう、ディアボロスが疑問に思っても、どうでもいい事だったのだ。  
 ダンテが、ダンテが。  
 
 ディアボロスの、愛する人である事に変わりはないのであれば。  
 
「先生……」  
 ディアボロスは、ダンテの顔を思い浮かべながら、そっとひざを抱えた。  
 
 
「……ここで何をしている」  
 ディアボロスが慌てて顔をあげると、真正面にダンテが立っていた。  
 ただ、ディアボロスの首元に―――――背負っている剣の切っ先を突き付けたまま。  
「ダンテ、先生」  
「………………俺はもうお前の教師でも無い。だから先生なんて呼ぶな」  
 いつもの仏頂面のまま、ダンテは口を開く。  
 その気になればいつでもディアボロスを殺せる。そんな位置にいるのに、ダンテは剣を動かさない。  
「でも、私にとって、先生は―――――」  
「まぁ、確かにお前に割いた時間は長かったな。他の奴よりかはだ」  
 ダンテは同じ体勢のまま、そう告げる。  
「だが、それでもお前も生徒の一人という認識でしかない。そして今は俺の――――」  
 ダンテが言葉を続けるより先に、ディアボロスの手が動いた。  
 
 腰から抜き放った刀の一閃がダンテの手を弾き、ダンテの持つ剣を遠くの床へと吹っ飛ばす。  
「それより先は言わないで下さい、先生……」  
「……………お前に俺が殺せるのか?」  
「殺せません……」  
 ディアボロスは首を振ると、刀を遠くへと投げる。  
 ダンテの剣のすぐ側に落ちた。  
「……………」  
「……………」  
 お互い素手のまま、ただ顔を合わせるだけの時間が続く。  
「……剣を拾っていいか?」  
「駄目です」  
「おい」  
「…………話したい事が、あって来たんです」  
「……………」  
 ダンテは一瞬だけ頭を抑える。その癖は、ディアボロスは何度も見ていた。  
 そう、生徒に何かを指導する直前に。ダンテはじつに面倒くさそうに頭を軽く抑える。  
 パーネ先生から教師としてその癖はどうなのでしょうかと言われていたのも知っている。  
「……先生」  
 ダンテは、やはりダンテのままだ。  
 ディアボロスは、そう確信した。  
「先生に指導してもらってる間、先生は本当に指導しかしませんでした」  
「それはそうだ」  
 あくまでも教師と生徒の関係、ダンテはそれを保っていただけに過ぎない。  
「でも、私としてはそれだけでも充分でした。私も先生に必要以上の事は聞かなかったし、先生も私に必要以上の事は話しませんでした。  
 それだけでも充分でした。だから、こういう難しい話とかするの、先生とは初めて、ですね」  
「……………」  
「先生がどんな思いでこんな事したのか、私には解りませんし私は知る気もありません」  
「おい」  
 じゃあ何の為に、とダンテが言葉を続けかけた時、ディアボロスは口を開いた。  
「でも、一つだけ言える事は、私にとってどんな事があろうと、先生が私の先生である事に変わりはありません」  
「………………」  
「それだけは本当です。だって、ダンテ先生はダンテ先生ですから」  
「……そうか」  
 ダンテは視線を少しだけ伏せる。  
 申し訳ないと思っているのか、それとも少し困っているのか、また微妙な表情を見せていた。  
「俺はな……何と言えば良いのだろうな」  
 遠くに落ちた剣から視線を外し、頭を掻きつつ、困ったように呟く。  
 ダンテのそんな表情は初めて見る。ディアボロスは少しだけ笑った。  
「………これは俺が……いや、俺ともう一人が勝手に起こした事だ。校長を殺した事もここに逃げた事も、だ」  
「何故、それを」  
「お前に話しても意味はない」  
「ならば聞きません。けど……」  
 ディアボロスはダンテから視線をそらさずに、言葉を続ける。  
「でも、先生がここにいる事が先生の勝手なら、私がここにいるのも私の勝手です」  
「巻き込まれるぞ。死ぬかも知れんぞ」  
「先生の側に、貴方の側にいられるのであれば。構いません」  
 ディアボロスの言葉に、ダンテは首を振る。  
「……………聞き分けの悪い生徒だなぁ。お前がそこまで頑固な奴だとは思わなかったぞ」  
「先生が気付かなかったです。ついでに言うと……そうしたのは先生です」  
 ディアボロスの恥ずかしそうな呟きに、ダンテは呆れ顔でため息をついた。  
 ダンテはゆっくりと床に腰を下ろす。  
 目線がほぼ同じ位置になる。  
 
「もう1度だけ聞く。本当に、ついてくるのか?」  
「はい」  
「……そうか。わかった」  
 ダンテはそっとディアボロスの肩へと手を伸ばすと、優しくすぐ側まで抱き寄せた。  
 ぶっきらぼうな彼だとは思えないぐらい、優しい手。  
「俺についてこい」  
「……勿論です、先生」  
 ディアボロスは目を細めると、ダンテの体に身を預けるかのように寄りかかった。  
 そしてダンテも、そんなディアボロスの事を優しく抱きしめた。  
「ん……」  
 ダンテの頬に、少しだけ濡れたディアボロスの柔らかい唇が触れた。  
「!」  
「………先生、その……私は、初めて、ですけど先生なら……」  
「おい……そんな簡単に出すものじゃないだろう」  
「ついていくと言いました」  
 ディアボロスはきっぱりと言い放つ。ダンテはもう1度だけため息をつくと、そっとディアボロスの制服へと手を伸ばした。  
「……いいな?」  
「はい」  
 ディアボロスは頷くと、マフラーを首から外した。  
 床に落ちたマフラーをダンテは片手で丁寧にどかしつつ、もう片方の手は上衣のボタンを外していた。  
 ボタンが外され、同年代と比べて大きくも無いが小さくも無い胸が白い下着に覆われつつ現れる。  
 パーネのように特別大きいわけではない。だが、それでもダンテが今担当している新入生達よりはずっと成長した肢体。  
 その下着に覆われた胸へとダンテは手を伸ばし、ゆっくりと揉みしだく。  
「ん……!」  
 ディアボロスが少し頬を染めつつも声を出す。その声に満足したのか、ダンテはもう片方の手をスカートの中へと這わせた。  
 スカートの中のショーツの下へ。ディアボロスの秘部へ、手が伸びていく。  
 誰の侵入も許していない秘部へ。  
「……少し濡れてるな」  
 そこに触れた時、ダンテは思わずそう呟く。  
 だがディアボロスはそれには答えず、スカートのホックを片手で外した。  
 ショーツの中にダンテの手がすっぽり入っており、その中でダンテが秘部に指を入れているのが見える。  
「……!」  
 無骨な指とは思えないほど、ディアボロスの中でダンテは指を優しく動かした。  
「っ……先生」  
「………大丈夫か?」  
「いえ、もっと……」  
 今まで自分で弄った事もあまり無い。そして何より、元々、よほどの相手でも無い限り、差し出すつもりだって無かった。  
 でも、ダンテなら、自分の敬愛するダンテになら。構わないとディアボロスは思った。  
 だから。  
「お願いします、先生……」  
 ディアボロスの膣の中を、優しく撫でるダンテの指。  
 一本だったのが二本になり、少し無理に入ったという感じもするが、それでもダンテの指使いは見事なものだった。  
「……っ……!」  
 初めてのディアボロスにも、痛くないように、絶頂を迎える程でなくてもそれでも快楽を与えるには充分に。  
 初めての行為が、自分の敬愛する相手なら。  
 そして、こんなにも優しくしてくれるのなら―――――。  
 
 そして、湿り気を帯びていた秘部から、液体が流れ出した頃になって。  
 ダンテはベルトを緩めた。  
「……挿れても、いいか?」  
「…………」  
 
 ディアボロスはゆっくりと頷き、両手をダンテの背中へと回した。  
 ほぼ密着するようなカタチの中で、ダンテがそれを取りだすのをディアボロスはじっと見ていた。  
 直視するのはきっと始めてであろうそれは、大きいのか小さいのか解らなかった。  
 だが、それが自分の中に入ってくるという事実だけは解っていた。  
「………」  
 ダンテのそれが、中へと入っていく。濡れていたせいか、思ったほど痛くはない……。  
 いや、違う。  
 大きい。  
「…………んんっ……先生ぇ」  
「ど、どうした?」  
「お、大きいです」  
「そうか」  
 ダンテは困ったように首を振る。  
「だが、諦めろ」  
 1度だけそう言って、ディアボロスの頬に接吻をした。  
 それが合図だった。  
 
 中へ深く入ったそれが、ディアボロスの膣の奥に当たった。  
 力強く、そう、力強く。  
「ひっ……!」  
 ダンテが腰を動かし始めると、大きなダンテのものが文字通り中で擦れつつも何度も奥へと当たる。  
 擦れる壁。当たる奥。  
 痛みを感じるのに、でもダンテのそれが気持ちいいと感じてしまう。  
「せ、先生っ、ちょっと」  
 力強いダンテの動きに痛みを感じても、ダンテは抜こうとはしない。  
 どんな時も手加減などをしないダンテだからだろうか。  
 ディアボロスには解る。  
 ダンテがいつも通りのダンテだという事が。  
「あっ、ふぁっ、ぁぁ……」  
 無理に奥まで突き刺さる、というほどではないが中に打ち付けられる度に、ディアボロスの身体が跳ね上がる。  
 悦が混じったその声をあげる度に、ダンテはディアボロスの身体を時に舌で、時に手で刺激していく。  
 上も下も。  
 敬愛する教師の腕で抱かれているという事。  
「随分嬉しそうだな」  
 ダンテの囁きに、ディアボロスは答えずに頷く。  
「なら、もう少し耐えろ」  
 ダンテはそう言った後、ディアボロスの肢体をそのまま床へと押し倒した。  
 深く、深く。彼女の意識が落ちていくのに、充分だった。  
 
 
「…………」  
 意識を失ったディアボロスの身体から身を起こすと、ダンテは慌ててズボンを元に戻した。  
 中に出したりはしなかったが、それでも性交をしていたという事に変わりはない。  
「…………参ったな」  
 まさか生徒に本当に手を出してしまうとは思わなかった。  
 実際、欲求不満があったのかと聞かれるとそうではない。このディアボロスが入学した頃から何度か受け持っていたし、実際補習で二人きりになる事は何度かあった、  
 ダンテ自身も彼女も必要以上に会話をするようなタイプでは無いので、ダンテとしてはやりやすい相手だった。  
 もっとも、彼女が本当に自分を愛していたとは気付かなかったが。  
「やれやれ、俺もヤキが回ってきたか・」  
 今まで散々色々とやらかしてきた分、変なオチがついてもおかしくはないと言えるが。  
「どうしたものかな」  
 ついてくるか、とは聞きはしたものの、ダンテ個人としては出来れば誰も巻き込もうとは思っていなかった。  
 何せ本当に自分自身の勝手なのだ。でも。  
『でも、先生がここにいる事が先生の勝手なら、私がここにいるのも私の勝手です』  
 彼女がここに自分の意志で来ている事も、ダンテの側にいると言った事も。それと同じ理由。  
「……………」  
 このまま置き去りにするのも、酷なのかも知れない。  
 ダンテは、腹を括る事にした。  
 
 彼女を連れて、共に行く事を決めた。  
 
 ダンテはディアボロスの着衣を戻すと、まずは遠くに落ちた剣を拾う。  
 少し躊躇い、ディアボロスの刀も拾うと、彼女をゆっくりと抱き上げた。  
 
 塔の上にはパーネがいる。そして、自分とパーネが出した課題を守ろうとしている生徒達もいる。  
 このディアボロスにしたって、クラッズとノームを連れていた筈だ。  
 だが、もう。  
 そんな事はどうでもいい。  
 
 彼女を抱き上げたダンテは、塔の出口を目指しゆっくりと歩きだした。  
 いつもの仏頂面が少しだけ緩んだ、困ったような顔を浮かべながら。  
 
 
 

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