つくづく、ここには自分の居場所がないと、彼女は思っていた。  
それなりの資質を持ち、他の多くのフェルパーと違って剣士ではなく、あえて戦士として腕を磨き、今ではクロスティーニの中でも、  
そこそこ強い方になっているとは思う。だが、それでも自分は、このパーティには居場所がないと感じていた。  
「今日のお兄様は、一段と逞しいですわ。過去のいかなる英雄とて、今のお兄様にはかないませんわ」  
「お前も、今日は一際美しい。そのハープの調べも、お前の歌声のように澄み切っている。お前は本当に、自慢の妹だよ」  
「嬉しい……でも、それはきっと、お兄様の温もりが力を与えてくれたのですわ」  
「私の力は、お前の香りが与えてくれるものだよ。お前と香りを交える度、それが力になるのを感じる」  
二人だけの世界に浸る、精霊使いの兄妹。エルフという種族自体、あまり得意ではない上に、この兄妹は万事こんな調子で時と場所を  
問わず、熱烈に愛の言葉を交わすため、近くにいる彼女としては非常に居心地が悪いのだ。  
「ああ……わたくし、幸せですわ。故郷では、こうしてお兄様と睦言を交わすことすら許されなかったんですもの」  
「私も幸せだよ。いつもお前が隣にいる。これ以上の喜びなど、この世界には存在しえない」  
常に後ろから聞こえる二人の言葉だけでも、十分に居心地は悪い。だが、それだけではない。  
「二人とも、ラブラブでいいねー。私にも幸せ分けてほしいなー、あはは」  
そう笑うのはクラッズである。明るくよく笑い、誰とでもすぐ親しげに話しかけるため、とても付き合いやすいように見える。  
だがフェルパーにとっては、それが苦手なのだ。元々が人見知りの彼女にとって、いきなり近づかれるのは、苦痛以外の何物でもない。  
今ではもう、それを苦痛とは感じないのだが、今度は別の理由で彼女と話すことができない。  
楽しげなクラッズの顔を見ていると、ついつい自分もその輪に入りたいという思いが湧き上がり、おずおずと声をかける。  
「あ……あの…」  
すると、クラッズは不意に笑顔を収め、無表情に彼女を見つめた。  
「ん……何?」  
それまでと違い、どこか無機質な感じすら与える言い方に、フェルパーは萎縮してしまった。  
「……ご、ごめん。何でもない…」  
「……そう」  
最初に会った時、フェルパーはクラッズにそっけない態度をとってしまった。それがショックだったのか、今度はクラッズがフェルパーを  
苦手としているのだ。そしてそれが引き起こす、普段の笑顔と自分と話すときのギャップに、今度はフェルパーが委縮してしまい、  
結局まともに話せないという悪循環である。  
ため息をつき、視線を横に滑らせる。そこには屈強な体つきのバハムーンが立っている。  
「……ん、何だ?」  
視線に気づき、バハムーンが声をかける。が、フェルパーは慌てて視線を逸らした。  
「ふん」  
どちらかというと、彼は比較的マシな方である。多少、人を見下しているようなきらいはあるが、それ故かあまり干渉してこないのだ。  
それが気楽でもあるが、こうも周りと接点がない状況では、少しぐらい話しかけてほしいとも思ってしまう。  
そんな仲間達に囲まれ、フェルパーは何度脱退を考えたか分からない。それでも留まり続けるわけは、一つは脱退したら再び慣れない  
人達と付き合わねばならないこと。そしてもう一つは、ただ一人気の合う仲間がいることである。  
 
さりげなく移動し、アイテムの錬成をするノームに近づく。  
「ねえ、ノーム…」  
フェルパーが声をかけると、ノームはすぐに振り向いた。  
「どうしたの」  
「あ、ううん、どうしたってわけじゃないんだけど……その…」  
「まあ、そこの彼でもない限り、話す相手がいないと退屈するものだよね」  
ほんの僅かな微笑を浮かべて言うと、バハムーンは大儀そうに振り返った。  
「ん?俺がどうかしたのか?」  
「ううん、別に。ただ、ずっと黙ってられてすごいなって話してただけ」  
「ふん、そうか」  
そう言われて悪い気はしないらしく、バハムーンもノームに微笑みを返す。  
「ノームちゃん、今の切り返しうまいなー」  
後ろから、クラッズの明るい声が響く。  
「私なんか、バハムーン君と話すの苦手なのに。そういうとこ、尊敬しちゃうなー」  
「私は、あなたみたいな笑顔ができる人を尊敬するな。私はそういうの、ちょっと苦手」  
「あははー、やっぱりノームちゃんはうまいなー」  
誰とでも分け隔てなく接するノーム。種族ごとの違いもしっかり把握し、どんな相手でもうまく立ち回ってみせる彼女は、  
やはり誰からも好かれていた。フェルパーとしても、この干渉しすぎず、また適度に話してくれる仲間は好きだった。  
それからクラッズと二、三言葉を交わし、ノームはフェルパーの方に向き直った。  
「結構経つけど、まだ慣れないなんて。あなたの人見知りって、結構重症ね」  
「……ごめん」  
「謝る必要はないよ。でも、楽しくやりたいなら自分から変わっていかないと、ね」  
「………」  
それができるなら、苦労はしない。実際、彼女は何とか周りと話そうと努力はしているのだ。しかし、いざ話せる状況になると、  
どうしても言葉が出なくなってしまう。何を話せばいいのか、どう話せばいいのか。そういったことで頭がいっぱいになってしまい、  
そこから来る沈黙が余計に彼女を慌てさせ、おまけに相手が自分を見ていたら、もう顔を真っ赤にする以外、何もできない。  
「……そうなれればいいんだけど」  
思わずそう独りごち、ため息をつく。そんな彼女を、ノームは少し呆れたような目で見つめていた。  
 
その夜。一行は町で宿を取り、エルフの兄妹を除いてそれぞれの部屋で眠りについた。フェルパーも当然、一人でのんびりと旅の疲れを  
癒し、早々にベッドに入った。  
はずなのだが、今彼女の目の前にはノームが立っていた。  
「……んにゃ?」  
「どうかしたの」  
「いや、あの、ここ私の部屋……っていうか、私寝たはず…?」  
確かに寝たはずなのだ。だが、今目の前にはノームが立っているし、自分も部屋の真ん中に立っている。  
「まあいいんじゃないかな。細かいことは気にしないで」  
「細かいこと……いや、これって細かいことの範疇じゃないんじゃ…?」  
「だから、気にしないでいいの。仲間が仲間の部屋にいたって、別に不思議じゃないでしょ」  
相当に強引な言葉ではあったが、フェルパーはなぜかその言葉に納得してしまった。  
「で、相談があるんじゃないの」  
「え?」  
言われてみれば、確かにそんな用事があった気もする。  
「ああ、うん……そうだよね。あの、えっと、私もさ、できればノームみたいに、色んな人と話したいと思ってるんだ…」  
「うん。それで」  
「でも、どうしてもみんなの顔見ると、言葉が出なくなっちゃって……仲良くしたいんだけど、仲良くなれなくて……私、どうしたら  
いいのかな……このままじゃ嫌なんだけど、変わるなんて、そう簡単にできないし…」  
不思議と、彼女の前ではスラスラと本音が流れ出てきた。二人きりだからというのもあるのかもしれないが、それにしてもここまで  
喋るのは、フェルパーにしては珍しいことだった。  
「他の人と話すって、恥ずかしいことかな」  
「え!?い、いや、話すことは恥ずかしくないけど……でも、何か、何て言うんだろ……どうしても、恥ずかしいし、怖い…」  
「なるほどね。じゃ、恥ずかしくなくなれば、普通に話せるってことかな」  
「え、う〜ん……そうなる、かな?」  
ノームの手が、優しくフェルパーの肩を撫でる。その感覚が何とも気持ち良く、フェルパーはうっとりと目を細める。その手が、肩から  
首に回され、不意に力が入ったと思った瞬間。  
「にっ…!?」  
極めて自然な動作で、一点の躊躇いもなく、ノームはフェルパーの唇を奪った。突然の事態に、フェルパーの尻尾はまるで  
ブラシのようになり、目は驚きに見開かれる。  
「んぐっ……ぷはぁっ!」  
何とか彼女の腕を振りほどき、フェルパーは後ずさろうとして足がもつれ、床に尻餅をついた。  
「いっ…!ちょ、ちょっとちょっと!いきなり何するのー!?」  
「キス」  
「違っ……わ、私が言いたいのはそうじゃなくって、どうしていきなりキスするのー!?」  
「あなたがかわいいから」  
「にゃっ…!?」  
 
貞操の危機を感じ、フェルパーは床を後ずさる。しかし、それよりも早くノームが覆い被さってくる。  
「にゃにゃにゃにゃっ!ちょ、ちょっと落ち着いて!ね!落ち着こ!?だ、ダメだよ!?私は女だし、ノームも女の子で…!」  
「大丈夫。女同士でも好きになるのはおかしいことじゃないから」  
「おかしいってばーっ!」  
「うるさい子。少し黙らせてあげる」  
「や、やめっ…!」  
逃げようとした体を押さえこまれ、ノームはフェルパーの顔を強引に上げさせると、再び唇を重ねた。それどころか、口の中に侵入する  
異物の存在を感じ、フェルパーの体毛がぞわぞわと逆立つ。  
「んふぁ…!ふぅ、あ…!」  
「ん……ふふ、かわいい」  
ノームの舌が、フェルパーの口内を蹂躙する。逃げる舌を押さえ、牙を舐め、口蓋をなぞる。自身の口の中で響く、くちくちという水音に  
フェルパーの顔はたちまち真っ赤に染まる。  
初めこそ、抵抗しようとも考えた。だが、ノームのキスを受けていると、なぜかその考えは急速に消えていった。それどころか、  
彼女のキスは優しく、暖かく、今までに感じたどんな快感よりも気持ちよかった。  
ただ、キスをされているだけなのに。舌が触れ合っているだけなのに。その快感をいつまでも感じていたいと思うような、それこそ  
全身が蕩けそうなキスだった。  
長い長い口づけを終え、ノームがそっと唇を離す。妖艶な笑みを浮かべるノームと、放心したようなフェルパーの唇の間に、  
唾液が白く糸を引く。  
「うふふ、静かになったね」  
まるで子供を褒めるように、ノームはフェルパーの頭を優しく撫でる。  
「まだみんな、あなたの魅力に気づいてない。もったいない」  
ノームの手がゆっくりと動き、頭だけでなく、小さく震える耳を撫で始める。  
「ふあ…!」  
「でも、それはあなたが話そうとしないから。あなたも、他の子も、お互いの魅力に気づけない」  
ノームはそっと屈み込むと、フェルパーの耳を軽く噛んだ。  
「んにゃっ…!」  
背筋がぞくぞくするような快感に、フェルパーは知らず熱い吐息を漏らす。そんな彼女を見つめ、ノームは妖しく笑う。  
「こんなに可愛いのに、ね。でも、だからこそ、今日は私があなたを独り占め」  
耳を甘噛みしつつ、ノームは片手をフェルパーの服に滑り込ませた。  
「んあっ!?ノ、ノーム、そこは…!」  
「恥ずかしいでしょ。やめてほしいでしょ。でも、もっとしてほしいとも思ってる。違うかな」  
「う……うぅ、お、思ってない思ってないっ!!」  
ノームの言葉に、フェルパーはぶんぶんと首を振る。  
「そう。でも、するけどね」  
「そんなっ……あっ!?」  
胸を掌で包みこまれ、フェルパーはビクリと体を震わせる。ノームは胸全体を優しく包みつつ、少し硬くなり始めた先端を指で挟み込む。  
「うあ、あっ……んんっ……にゃぁ!」  
全体を柔らかく揉みつつ、挟んだ指で乳首をコリコリと弄る。彼女の手が動くたび、フェルパーは全身を駆け抜ける快感に体を震わせ、  
抑えられない嬌声を上げる。  
いつの間にか、フェルパーは服を脱がされていた。ノームの方も、いつの間にやら裸になっている。  
 
「うにゃぁ……ノームぅ、もうやめ…」  
「ここ、こんなになってるのに」  
言いながら、ノームはフェルパーの秘部に指を這わせた。  
「あうっ!」  
くちゅっと水音が響き、フェルパーの体が仰け反る。  
「敏感なんだ、ふふ。体もきれいだし、本当に可愛い」  
「ま、待って!ノーム、お願いだからもう……にゃあっ!」  
ノームの手は、フェルパーの弱いところを的確に責めてきた。フェルパーも自分で慰めることはあったが、今受けている快感は、  
それとは比べ物にならないほど大きい。  
胸を捏ねるように揉まれ、その先端を指先で弄ばれる。さらに秘所を開かれ、体内に指が沈み込む。今や、フェルパーの体には  
玉のような汗が浮かび、全身は快感と恥ずかしさとのために、真っ赤に上気している。  
「どう、気持ちいいでしょ」  
「うあぁっ!!うあぅ……にゃあ!」  
「私もちょっと、気持ち良くなりたいな。一緒に、気持ち良くなろ」  
そう言うと、ノームはフェルパーの足を開かせ、敏感な突起を擦り合せるように腰を押し付けた。  
「あうぅ……ノームぅ…」  
「ふふ。ちょっとわがまま、付き合ってね」  
ゆっくりと、ノームが腰を動かす。途端に、全身を電流のような快感が駆け抜け、フェルパーの体がビクンと震える。  
「うにゃあぁ!!ノ、ノームっ!ダメぇ!それ以上しちゃダメぇ!!」  
充血した突起が擦れ合い、その度に強すぎるほどの快感が襲う。さらに、ノームは器用に胸までも合わせ、それこそ全身で快感を貪る。  
「気持ちいい。あなたは、どう」  
「ああ、あっ!こ、擦れちゃうぅ!ダメだってばぁっ……や、やめてぇ!」  
フェルパーの言葉に、ノームはちょっとだけ唇を尖らせた。  
「ふーん、擦れるのは嫌いなんだ。……じゃ、期待に添えるようにしてあげる」  
どことなく不機嫌そうな声で言うと、ノームは体を離した。しかし、フェルパーがホッとしたのも束の間。ノームは自分の股間に  
手を当てると、何やら目を閉じて神経を集中させているようだった。  
やがて、彼女の体に異変が起こった。陰核が見る間に巨大化し、まるで男のモノのようになったのだ。  
「にゃーっ!?ちょ、ちょ……な、何それー!?」  
「私は錬金術師で、この体は依代。改造くらい、簡単にできるってこと」  
「な……な、な、な、何するつもり!?」  
「決まってるでしょ。これの使い道なんて、一つしかないじゃない」  
それぐらいは、フェルパーにもわかっていた。だが、今ノームの股間にあるものは、異常に巨大だった。しかも、フェルパーは  
自分で慰めた経験こそあるが、まだ男性経験はない。  
「う、嘘だよね!?そんなの無理だよぉ!!」  
「大丈夫。痛くないし、普通に入るよ」  
言いながら、ノームはゆっくりとフェルパーに近づく。フェルパーは慌てて逃げようとしたが、腰が抜けてしまったのか、  
いくら逃げようとしても一向に体が動かない。やがて、ノームの手が彼女の肩を捕らえた。  
「や……やだ、やだよぉ!!そんなの入らない!!し、死んじゃうよぉ!!」  
あまりの恐怖に、フェルパーはガチガチと歯を鳴らし、目にはいっぱいの涙が溜まっている。  
「大丈夫大丈夫。死なないから安心して」  
フェルパーをいたぶるように、ノームはゆっくりとその巨大なモノを押し当てた。  
 
「やだああぁぁ!!ノーム、やめてぇ!!!お願い、助けっ…!!」  
そんなフェルパーの哀願を嘲笑うように、ノームは思い切り腰を突き出した。  
「ぎにゃっ……あっ、あ…!!」  
フェルパーは一声悲鳴を上げると、全身を強張らせ、思い切り仰け反った。丸い目はさらに大きく見開かれ、だらしなく開かれた口から  
唾液がこぼれ落ちる。しかし、それは痛みのためではなかった。  
「ふふふ、どう。痛くなかったでしょ」  
「ひっ……にゃ、あ…!な……なん……でぇ…!?」  
痛みなど、まったくなかった。それどころか、腹が膨らんで見えるほどに巨大なモノを受け入れたにも拘らず、血の一滴も  
出ないどころか、それこそ苦痛と紙一重の快感が襲ってきたのだ。  
「うあぁ……これ……これぇ…!」  
「じゃ、動かすよ。もっと気持ち良くなってね」  
「ま、待って!まだ……うにゃぁ!!」  
ずるずるとノームのモノが抜け出る。体の奥深くから何かが抜け出ていく感覚に、フェルパーは悲鳴じみた嬌声を上げる。  
直後、ノームは再びフェルパーの中に突き入れる。  
「あぐっ……かは、あっ…!」  
子宮を突き上げられ、痛みの代わりに凄まじい快感が全身を襲う。もはやフェルパーはまともな意識を保てず、開きっぱなしになった  
口からは唾液がこぼれ、焦点の合わない目は何も見てはいない。  
「あなたの中、すっごく熱くて、きつくって、気持ちいい。あなたも、こんなにぬるぬるにしちゃって」  
「はーっ……はーっ……はぐ、ぅ……そんな、こと……い、言わないで、ぇ…!」  
ぼんやりと聞こえる声に、フェルパーは辛うじて言葉を返す。だが、もはやその余裕もなくなりつつある。  
「にゃうぅ…!ノーム……ノームぅ…!も、もうダメぇ……やめて、ぇ…!わ、私、もぉ……あぐっ!!い、イっちゃ…!」  
ノームが腰を動かす度、拷問に近い快感が全身を走り抜け、フェルパーを確実に追い詰めていく。  
「うあ、ああぁぁ!!ノームっ!!ダメぇ!!もうそれ以上はっ……ほ、ほんとにイっちゃうよぉ!!ノームぅ!!」  
荒い息をつき、ギュッと拳を握る。そしていよいよ快感が絶頂を迎えるという瞬間。  
不意に、ノームはフェルパーの中から自身のモノを引き抜いた。  
「ふあ…!?ノ、ノーム……どうしてぇ…!?」  
「ダメなんでしょ」  
冷たく、ノームは言い放った。  
「え…!?」  
「だから抜いてあげたの。イっちゃうのは嫌なんでしょ」  
「ち、違っ…!」  
慌てて否定しようとするも、それが何を意味するかを察し、フェルパーは慌てて口をつぐんだ。  
「何か違うの」  
「う……あ、あの、だって……こ、こんなとこでやめちゃうなんてぇ…!」  
「あなたが言ったんでしょ、ダメだって。それとも、何か違ったの」  
どうやら本当に、ノームはこれでやめにするつもりらしかった。フェルパーは少し躊躇い、やがて顔を真っ赤にすると下を向いた。  
「……違う……のぉ…!」  
「ふーん、違うんだ」  
無表情な声で言うと、ノームはその顔に妖しい笑みを浮かべた。  
「何が、どう違ったの」  
その言葉に、フェルパーはますます顔を赤くし、ぎゅっと拳を握った。  
 
「……やめて……ほしくなかったのぉ…」  
「何を」  
「う……動く……のを…」  
「何が動くのを」  
「ノ……ノーム、が……動くの…」  
「どうやって動くのを」  
「ううぅぅ〜…!」  
あまりの恥ずかしさに、フェルパーの目に涙が浮かんだ。  
「ノームがっ……わ、わ、私……の……中に、入れて……動くのがぁ…!」  
「へえ。でも、今やめちゃってるよね」  
フェルパーを見つめ、ノームはますます意地悪そうに笑う。  
「フェルパーちゃんは、何を、どうしてほしいのかな。はっきり言って、教えてよ」  
「そ、そんなっ…!」  
「じゃなきゃ私にはわからないから。ちゃんと、自分の口で言ってみてよ」  
「う……うぅ〜…!」  
とうとう、フェルパーは涙を流した。そして固く目を瞑ると、大きく息を吸い込み、一気に叫んだ。  
「だからぁ!ノームのそれ、私の中に入れてほしいのぉ!!その太いので私の中思いっきり突いてほしいのっ!!いっぱい気持ち良く  
してほしいのぉー!!う、うっ、うわぁーん!!」  
真っ赤な顔で泣き崩れるフェルパーを、ノームはぞくぞくする思いで見つめていた。そして、いっそう妖艶な笑みを浮かべ、  
フェルパーの前にそっとしゃがみこんだ。  
「ふふふふ。よく頑張ったね。ほんと、あなたってかわいい……イかせて、あげる」  
涙を舐め取り、頭を優しく撫でると、ノームは再びフェルパーの中に突き入れた。  
「うあっ……こ、これっ、これぇ!」  
「私も、すごく気持ちいいよ。だから、ね。一緒に、イこ」  
ノームの動きが、大きく荒くなっていく。それに比例して、フェルパーの快感も一気に跳ね上がる。  
「ひにゃっ!!あぐっ!!ノー、ムぅ…!わ、私、私ぃ…!」  
「もうちょっと我慢して。私も、もう少しだから」  
「も、もう無理ぃ!!私っ、私もうっ!!頭真っ白にっ……うああぁぁ!!は、早くイってええぇぇ!!」  
「んっ……もう、出そう。いいよ、思いっきりイって」  
ノームが一際強く腰を打ちつける。それと同時に、フェルパーは体の奥に熱い液体が勢いよく流れ込むのを感じた。それは今まで  
感じたこともない快感をもたらし、同時に止めとなった。  
「あ、熱いぃっ!!お腹、火傷しちゃっ……ひぐぅ!!うあああぁぁぁ!!!」  
後から後から、体内に熱い液体がかけられていく。もはや入りきらなくなったそれは結合部から溢れ、床にドロドロと白い水溜りを  
作り始めている。その終わらない快感に身を震わせながら、フェルパーは次第に意識が遠のくのを感じた。  
「ああ、ぁ……ノー……ム…」  
沈んでいく意識の中、フェルパーは額に優しいキスをされるのを感じた。  
「あなたなら、すぐにみんなと話せるようになるよ」  
おぼろげな意識の中、遠くでそんな声が聞こえた気がした。だが、それが現実かどうかも分からないまま、フェルパーの意識は途絶えた。  
 
「にゃ〜〜〜〜っ!?」  
がばりと、フェルパーは勢いよく体を起こした。慌てて周りを見渡すと、そこはベッドの上で、外はうっすらと明るくなり始めている。  
「にゃっ……にゃ!?」  
大慌てで全身を触る。愛用のパジャマに脱いだような形跡はなく、部屋には誰の気配もない。辺りは静まり返り、自分の鼓動だけが  
大きく聞こえる。  
「……ゆ、夢…?」  
混乱していた頭が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。あまりにもリアルな夢ではあったが、それ以外に考えられない。そもそも、  
夢でなかったとしたら、あれほど巨大なモノを入れたら普通は痛くてたまらないはずだ。  
「……ど、どうしてあんな夢…」  
ふと、下半身にひんやりとした不快感を覚え、フェルパーは視線を落とした。  
「にゃっ!?」  
パジャマのズボンは、おねしょでもしたかのようにぐっしょりと濡れていた。だが、おねしょではない証拠に、その液体はやや粘り気が  
あり、何より臭いが違う。  
「うわ、シーツまで…!う〜、あんな夢見るからぁ…!」  
結局、フェルパーはトイレでショーツとパジャマを洗う羽目になり、再び寝ることもできず、そのまま朝を迎えることになるのだった。  
 
翌朝、フェルパーが寝不足の目を擦りながら宿の食堂に向かうと、ノームが一人で朝食を取っているのが見えた。  
さすがに夢のこともあり、フェルパーは一瞬ビクッとしたが、あくまで夢の話だと自分に言い聞かせて彼女の前に座る。  
「お、おはようノーム」  
「ん、おはよう。今日もいい天気ね」  
至って普通の返事に、フェルパーはホッと胸を撫で下ろした。やがて、朝食のパンを齧り始めたとき、ノームがおもむろに口を開いた。  
「ごちそうさま」  
「ん?」  
ノームの前には、まだいくつかの料理が残っている。しかも『ごちそうさま』と言いつつ、ノームが食べるのをやめる気配はない。  
「まだいっぱい残ってるみたいだけど?」  
「朝ご飯のことじゃないよ」  
「……?」  
「ゆうべの、あなたのこと」  
「?……っ!?」  
ボッと、フェルパーの顔が一気に赤く染まる。  
「なっ、にゃっ……ちょっ、えっ…!?」  
「そんなに驚くことないでしょ。そもそもがアストラルボディなんだから、夢の中にお邪魔するくらい、訳ないよ。正確に言うと、  
あなたの体にお邪魔させてもらったんだけどね」  
「なななななっ!?ノ、ノームっ!!」  
顔を真っ赤にしつつ席を立つと、ノームはいつも通りの微笑を浮かべた。  
「怒ることないでしょ。気持ち良くさせてあげたし、ちゃんと相談には乗ったつもりだけど」  
「そ、それはそうだけど!!でも、あんなっ…!」  
「恥ずかしいことさせたって、怒ってるんでしょ」  
気のない感じで言いつつ、ノームは真面目な顔を向けた。  
 
「人と話すの、恥ずかしいって言ってたよね。でも、それはあのおねだりより恥ずかしいことかな」  
「うっ……お、思い出させないでよ!」  
「それだけじゃないよね。あなたの体、全部見せてもらっちゃったし、イかせて…」  
「にゃーっ!!!もうそれ以上言うなーっ!!」  
フェルパーが叫ぶと、ノームはまた微笑を浮かべる。  
「あれと比べたら、人と話すくらい、なんてことないでしょ。あんなに恥ずかしい思いなんて、そうそうあることじゃないんだから。  
それができたんだから、仲間と話すなんて、もう楽なものでしょ」  
「……むー…」  
言われてみれば、その通りでもある。フェルパーは渋々ながらも、納得するしかなかった。  
そこに、仲間のクラッズがやってきた。彼女はノームに手を振ると、二人から少し離れた席に座った。  
「ほら、早速」  
「え、何が…?」  
「話してきたら。話すことなくっても、挨拶くらいはできるでしょ」  
「う……ま、まあそれくらいならできそう……かな…?」  
フェルパーは席を立つと、おずおずとクラッズに近づく。それに気づき、クラッズもフェルパーの方へ顔を向ける。  
「ん……どうしたの?」  
いつも通りの、冷たい感じの声。だが、フェルパーは逃げそうになる足を必死に抑え、何とか声を絞り出した。  
「お……お、お、おはよっ!!」  
思いの外大きな声が出て、クラッズとフェルパーは同時にビクリとした。二人はしばらく見つめ合い、ややあってクラッズが口を開いた。  
「ああ、うん……おはよう。あ、朝から元気だね」  
「あ、う……げ、元気なんじゃない……と、思う、けど…」  
「うん、まあ……うん、そっか。なんか、ごめん」  
「あ、ううん、私こそ、ごめん」  
「気、使わせちゃってごめん」  
「いや、あの、私のせいで、ごめん」  
そのままでは一生謝罪の応酬が続きそうだったので、フェルパーはそそくさとノームの元へ戻った。戻ってきたフェルパーに、ノームは  
いつもの微笑みを送る。  
「どう、感想は」  
「……や、やっぱり緊張する…」  
「でも、挨拶できたんだから上等だね。あ、次の獲物きたよ」  
言われて後ろに視線を向けると、相変わらず人目を憚らないエルフの兄妹がいた。  
「ふふ、お兄様。昨夜は、お兄様の愛をあんなに注いでもらえるなんて。まだ、体の中がお兄様で満たされているようですわ」  
「それでも、私はまだお前を愛し足りないよ。お前の香りが、今の私にはほとんど残っていない」  
「それならば……今度は、香りを繋ぎ止めるほどに愛してくださるのね」  
「ああ、もちろんだ。そしてお前にも、私の香りを等しく刻みつけたいものだよ」  
そんな二人の話を聞いていると、フェルパーの中の二人に声をかけようという気が急速に萎えていく。  
「……やっぱり、声かけなきゃダメ?」  
「気まずいのはわかるけど、今やらなきゃこの先もできないよ」  
それもそうだと納得し、フェルパーはさっきよりもずっと重い腰を上げ、二人に近づく。  
「お……おはよう」  
何とか声をかけると、二人は同時にフェルパーを見つめ、意外そうな目を向けた。  
 
「……臆病な獣か、慎み深い獣か。判断に迷うね」  
「寡黙は悪徳。でも沈黙は美徳。これから判断すればいいことですわ。それより、お兄様…」  
「……じゃ、じゃあ私はこれで…」  
よくわからない言葉を返され、おまけに早々に捨て置かれ、フェルパーはぐったりした感じでノームの元へ戻った。  
「お帰り。お疲れ様」  
「……う〜、私あの二人苦手だよぉ…」  
「得意な人なんていないでしょ」  
「だから、話すの嫌なんだよぉ…」  
「相手が悪かっただけ。それよりほら、最後のきたよ」  
そちらに目を向けると、バハムーンが席に着くのが見えた。エルフ兄妹で疲れていた彼女にとって、もうこれ以上他人と接するのは、  
ただの拷問としか思えなかった。  
「もうやだよ……絶対冷たいこと言うもん…」  
「そう言わないの。練習だと思って、ね」  
「でもぉ…」  
「頑張って。最初の一歩を逃げちゃ、いつまで経っても進まないよ」  
「う〜……わかったよぉ…」  
その言葉に、フェルパーはストムを食らったかのように重い腰を何とか持ち上げ、のろのろとバハムーンの前に向かう。  
「……おはよ」  
消え入りそうな声で言うと、バハムーンは大儀そうに首を巡らせた。その仕草だけで、フェルパーはもう逃げ出したい衝動に駆られる。  
「おう、おはよう」  
返事が来たので、さっさと戻ろうと思い、フェルパーは後ろを向きかけた。そこに、バハムーンが続ける。  
「お前の方から挨拶するとは、珍しいな。ずいぶんかかったが、少しは慣れたのか?」  
「え?あ、うん……その、まあ…」  
「ふん、まあ慣れきってはいないんだろうな。だが、挨拶するだけでも、それは確かな進歩だ。お前みたいな種族に、いきなり多くを  
求めはしない。最初はそれでいいんだ、あとは少しずつ慣れていけばいい」  
「あ……ありがと」  
一番冷たそうな人物に一番温かい言葉をかけられ、フェルパーは何だかキツネにつままれたような気持ちでノームの元へ戻る。  
「ただいま……なんか、意外だった…」  
「ふふ、言ったでしょ」  
そんな彼女を、ノームは微笑みを浮かべて見つめる。  
「みんながあなたをわかってないのと同じで、あなたもみんなをわかってない。彼、態度は大きいけど、いい人なんだよ」  
「……そうなんだ」  
ノームの言葉に、フェルパーは自分がどれだけ仲間のことを知らなかったか理解した。同時に、命を預ける仲間のことを、  
もっと知りたいという気持ちが芽生える。  
「少し、頑張ろうかな」  
「ふふ。ずっと、それ聞きたかったよ」  
そう言い、ノームは笑みを浮かべた。それは夢の中で見たような、満面の笑みだった。  
「うん。ありがとね、ノーム」  
「いいの。私も楽しめたし、ね」  
「……も、もうあれはやめてよね!ていうか、ノームって誰とでも仲いいけど、まさかあれ、他の人にまで…!?」  
「ん、秘密」  
「どっちなの!?気になるから教えてよー!」  
相変わらず、このパーティに居場所はないと、彼女は思っている。だが、それは今までとは少し違う。  
居場所なんて、最初はどこにもないもの。それは少しずつ、時間をかけて作り上げていくものだと、フェルパーは思うようになっている。  
『まだ』居場所がないだけで、いつかはここにも、確かな自分の場所を築けるはず。  
そう考えているフェルパーの顔は、前よりも少しだけ、明るくなっているように見えた。  
 

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