「バカかお前は?なんでそこまで行ってヤっちゃわなかったんだよ?ノーム」
?金術科棟から学生食堂へ至る渡り廊下。ノームがクラスメイトに頭を小突かれながら
歩いている。
「..いや、その..予想外の展開で”オプションパーツ”の準備してなくて..」
「Oh my God!!クリスマスだぞ?男と女がペアになったら何が起こるかわからない
ラグナロクな夜にお前は一体何を考えて..」
そういってノームの頭をヘッドロックで固め、容赦なくナックルを叩き込むクラス
メイト。
「痛い痛い痛い!!..だってあれ付けて動き回ると擦れて痛いんだよ」
そう言い訳するノームに向かって、彼は
「ばーか!!この根性無し!!俺なんか相手もいないのに常時装着臨戦態勢だぞ。見ろ!!」
下半身を突き出し、ノームの目の前で制服のズボン越しに股間の”オプションパーツ”を
ひくつかせて見せた。
「俺に一言言ってくれれば、こいつ貸してやっても良かったのに」
「..いや、さすがにそれは遠慮する。それにタイミングもホントギリギリだったし。
わざわざ借りに行ってたら今頃彼女はこの世にいないよ」
クラスメイトの下品さに顔をしかめながら、ノームは食堂へ入る曲がり角を曲がって
いった。
「信じらんない!!そこまで行ってなんにも無かっただなんて!!」
剣士科棟から学生食堂へ至る渡り廊下。フェルパーが「頭大丈夫?」と言わんばかりの
あきれ顔をするクラスメイトと一緒に歩いている。
「..いや、その..まさか追いかけて来てくれるとは思ってなくて..」
「Oh my God!!クリスマスよ?女と男がペアになったら何が起こるかわからない
ラグナロクな夜にあなたは一体何を考えて..」
そう言ってフェルパーの背後から手を回し、胸を揉みしだくクラスメイト。
「いやんいやんいやん..それに死ぬつもりで舞台衣装一つで飛び出しちゃったから、
いざ生きようと思い直したら寒くて寒くて..」
そう言い訳するフェルパーに向かって、彼女は
「ばーか!!この根性無し!!私なんか相手もいないのに来るべき時に備えて毎年元旦の
滝行に参加してるのよ?見て!!」
制服の上を脱ぎ捨て、上半身ブラジャー一丁の姿でヘラクレスのポーズをとってみせた。
「そんなこと言うなら今年は引きずってでも滝行に連れて行く!!」
「..いや、さすがにそれは遠慮するわ。というか、毎年そんな煩悩丸出しで滝に打たれて
たわけ?」
クラスメイトの下品さに顔をしかめながら、フェルパーは食堂へ曲がる曲がり角を
曲がって行った。
「「あ!!」」
食堂の入り口でばったり鉢合わせするノームとフェルパー。瞬時に真っ赤になって
炎上する二人。
「お、お、お食事ですか?」
クラスメイトに脇腹を肘で小突かれたフェルパーが尋ねる。
「..え?あ、まあ、それと舞台の撤収に..」
クラスメイトに後頭部を平手ではたかれたノームが答える。
「「..よろしかったら、ご一緒..」」
と、同時に言いかけて、また真っ赤になって俯いてしまう二人。その後ろでは二人の
クラスメイトが頭を抱えている。
(( 全 く お 似 合 い だ よ 、 お 前 さ ん 達 ))
一時間後
「あーあ、幸せ一杯じゃないの。あんなにしっぽ、ビンビンに立てちゃって」
フェルパーのクラスメイトがぽつりとつぶやく。その視線の先ではノームとフェルパーが
仲良く向かい合って折り畳み机を運んでいる。
「それにしても、もっと上手く行くと思ったんだがなあ。こういうのも”恋は思案の外”
っていうんだろうか?」
そう言って、ノームのクラスメイトが頭を掻く。
「策士が策に溺れたわね。直前にマジックのタネ抜いて剣を刺させるなんてやり過ぎ
なのよ。どうするの?あの二人だったら本当に一年間我慢しちゃうわよ?」
「来年のクリスマスに募り募った一年分の熱い想いをぶつけ合ってもらうしか無いだろうな。
くぁー !!それまでサポートしてやんなきゃならないのか。めんどくさいな」
そう言いつつもどこか楽しそうなノームのクラスメイト。テーブルに片手で頬杖をつき、
細めた横目でその顔を眺めていたフェルパーのクラスメイトが、ぽつりと言った。
「ねえ、めんどくさいついでに、私たちも付き合っちゃわない?」