あれから一週間過ぎた。
まだ少しぎこちないものの、パーティーとしての連携も取れ始めて来ていた。
「ふぅ、疲れたネー。そろそろ寮に戻ろうカー?」
「そうだな。女子は女子で、話しが弾んでるみたいだしな……。おーい、一旦戻るぞー!」
ラグナの叫ぶ声に気付いた様に、少し遠くの木陰でレミアが手を振る。
その隣にはカレンがいた。
「一旦戻るとラグナが言っていましたわ。わたくし達もあちらへ戻りましょうか」
「うん、分かった!」
どうやら二人は仲良くやれているようで、時々、主にカレンのラファに対する相談をレミアにしているようだ。
「で、貴女達は最初の口づけ以来、関係を持っていない訳ね」
「う、うん……」
カレンは今まさにラファの相談をレミアにしていた。
レミアははぁーっと溜息をつき、カレンにダメだしをする。
「駄目ですわよ?貴女は女性としての美しさはあるのですから、積極的にいかなくては……」
「そうだヨー、胸だってこんなに大きいんだかラー」
「う、うにゃあ!?」
いつの間にか後ろにいたノイルに胸をわしづかみにされ、悲鳴にも似た声をあげる。
「フムフム……一般女性の平均値を越えてるネー、このパーティーでは一番大きいんじゃないノー?」
「へぇ……では私は『このパーティー』では、どの位置なのかしら?」
「一般女性よりも小さい位だかラー、このパーティーでは一番小さ」
「このっ……ムッツリスケベ!」
怒り浸透のレミアに気付かずにノイルは素で答え、そしてスタッフでの一撃を受ける。
パーティー二日目にラグナに炸裂した一撃とは、威力もキレも比べ物にならなかった。
ノイルは薄れゆく意識の中で、強くなったネー……、と呟いた。
「どうしました?ラファさんもラグナさんも行ってしまわれますよ?」
三人が遅いため、様子を見に来たセレーネにレミアは
「大丈夫、モンスターをやっつけただけですわ」
と、ノイルを引きずりながら答えた。
いつもの日課になりつつある『反省会』を行うため、皆はラファの寮へと集まった。
ラグナが扉をノックし、それに合わせてラファが「入って来てー」と締まりのない声で受け答える。
ラグナが先に扉をくぐり、残りの四人が入って来る。
皆で円を描くように座り、ようやく反省会が始まる。
「では、反省会を――と言いたいけど……そろそろ反省会を開くのはやめにしない?」
開口一番がこれだったので、流石のラグナも開いた口が塞がっていない。
「お、おい、それどういう」
「だって、もう一週間だよ?」
どうやら始めから一週間、というのは決めていたらしい。
始めこそラグナは渋っていたが、反省会を開かない事で落ち着いた。
「まぁ……リーダーが決めたことだもんな、俺に異論はない。」
「ごめんね、勝手に一人で決めちゃって。だけど、皆を見てみて意思の疎通はできてたから」
敵との遭遇時に不測の事態に陥った時、それぞれが最良の行動、連携をとっていたのを見て、下した決断だった。
「それに最初から、どの敵が現れたらどう動くとか決めるのだって、窮屈でしょ?」
皆はお互いの顔を見合わせ、そして皆一致で頷いた。
「そんな決められた行動は嫌だ。それに自分達はパーティーであり個人、それを自分は大切にしたい。」
ラファは照れた様に鼻を擦る。
「じゃあ、これにて『話し合い』は終わり!皆、自分の寮に戻っても良いよー」
今日はこの発言とともに皆が自分の寮へと戻っていく。
ラファは独り、ボソリと
「これで、良いよね……」
と、呟いた。
カレンはと言うと、レミアの寮へと来ていた。
「リーダーは、普段ヘタレなのに言うときは言うんですわね……」
「うん……惚れ直しちゃった、僕」
先程の事をレミアと語り合っていたようだった。
ふと、レミアはカレンに問い掛ける。
「貴女は、リーダーの……ラファの、どこが良いんですの?」
カレンはというと、目を丸くしてレミアをみたあと、ふっと笑い、語りはじめる。
「普段は頼りなさそうだけど、誰にでも親切で、優しいところかな……。あ、これじゃあ最初に惚れた理由か」
あと、決めるときに決める所かな?と付け足し、ほんわかとした顔を浮かべる。
するとレミアは部屋の天井を見つめ、ポツリと呟く。
「何となく、惚れた理由もわかりますわ」
「え、なんて?」
よく聞こえなかった――そういいたげなカレンにレミアは叫ぶ。
「何でもないですわ!ほら、自分の寮に戻りなさい!」
そう言い、カレンを扉の外へと押し出す。
カレンはうにゃあ、と言うと扉を閉められてしまった。
ガチャリという音からして、鍵をかけられたのだろう、カレンはわからない、といった表情で自分の寮へと歩きだす。
「他の人が好きな殿方を好きになるなんて駄目ね、わたくしも……」
レミアは、誰も居なくなった部屋でポツリと呟いた。