時はやや遡り、一行が初めてパーティを組んだ時のこと。校長からのお使いを受け、一行は初めの森へと足を踏み入れた。  
風紀委員の三人は、既にここも慣れたものだが、新入生である問題児三人は、まともにここを通るのは初めてである。  
「名前からして『初めの森』だし、どうせ大したことねえだろ?」  
そう言うドワーフに、セレスティアが首を振る。  
「いや、そうでもないんだよ。そうやってここを甘く見てかかって、命を落とす新入生が毎年いるよ」  
「俺をそんな雑魚と一緒にするな」  
バハムーンが言うと、今度はフェアリーが答える。  
「君みたいのが一番やばいんだよ。それに、ここで怖いのはモンスターだけじゃない」  
「黙れ虫けらが」  
「聞きたくないならいいさ。んじゃ、委員長に副委員長、フロトルはしばらくなしで」  
「……あまり気は進みませんわ。でも、それもいい経験ですわね」  
そんな五人とは別に、フェルパーはここに足を踏み入れた時からひどく機嫌がいい。  
「ねえねえ!ここのモンスターってさ!強い!?強いのいる!?」  
「……ま、まあ君達ぐらいだと苦戦する相手は多いかな。そこまで強いわけじゃないけど…」  
「いる!?いるんだ!?んにーぅ!会いたいね!早く会いたいね!それでねそれでね!絶対ね!私が殺すの!」  
「……頑張って」  
「んじゃ、尻尾三人組。前衛は任せたよ」  
「変なまとめ方するな、チビ妖精」  
意志の統一というものは、最初から全員諦めている。ともかくも現在は依頼の達成が最優先であるため、一行は多大なる不安を  
抱えつつも、初めの森を歩きだした。  
学園の外であるため、そこには当然モンスターが現れるが、それに対する反応も三者三様である。同じイノベーターであり、  
また問題児であるとはいえ、三人はそれぞれに大きな違いがあった。  
バハムーンは、同種族の中でも輪を掛けて高いプライドを持っている。他の者を完全に見下しており、自分以外は全て虫と同程度にしか  
思っていないらしい。しかし接してみると、意外な欠点も見つかった。  
カボチャのおばけとの戦いで、相手が身の毛もよだつような雄叫びをあげた。他の者は大きな騒音程度としか思わなかったが、  
途端に異変が起きた。  
「うぅ…!う、あっ…!」  
呼吸は荒くなり、顔色は真っ青になっている。膝が震え、やがてそれが全身に広がる。  
「ちっ、またかよ!?てめえ、どんだけ心弱えんだよ!」  
恐ろしく精神が弱いのだ。魔封じの光を受ければ即座に沈黙し、恐怖の雄叫びを聞けば恐怖する。  
「委員長、彼を後ろに!」  
「わかってますわ!フェアリー、前衛の援護を!」  
すぐさま隊形を入れ替え、バハムーンを後ろに下げる。代わりにフェアリーが前列に加わり、体勢を整える。  
「ったく、でけえ図体して小せえ肝っ玉だな!その様子じゃ、金玉もさぞかし小せえんだろうよ!」  
悪態をつきつつ、敵に襲いかかるドワーフ。彼女もまた、周りを見下す傾向があり、しかし周りを低く見るというよりは、自分に大きな  
素質があるということを自覚している故らしい。  
 
彼女はバハムーンと逆に、どんな攻撃を受けようと怯むことがなかった。だが、それは冒険者にとっては欠点ともなりうる。  
「くっ……さすがに、ちっと効くな…!」  
既に、ドワーフは多くの敵から攻撃を受け、ボロボロに傷ついていた。それでも、彼女は先頭に立って戦い続ける。  
「はあっ……はあっ……貴様のそれは……勇気ではなく、蛮勇と言うんだっ…!」  
何とかそう言い返し、後ろからバハムーンがブレスを吐きかける。ドワーフを襲おうとしていたカボチャのおばけは、たちまち灰も残らず  
消えていった。  
「弱いのしかいないー。強いのー、もっと強いのがいいー」  
不満げな声を出し、ツリークラッカーにダガーを突き立てるフェルパー。敵が動きを止めると、彼女はすぐ興味をなくしたらしく、  
さっさとダガーを抜いて鞘へと戻す。  
「それで最後だね、お疲れさん。にしても、君格闘家なのにダガー使うんだな」  
フェアリーが言うと、フェルパーは尻尾をゆっくりとくねらせる。  
「だってだって、切るの好きなんだもん!こうね!柔らかいところに刺してね!グーってすると、ビーって切れてね!気持ちいいの!」  
「パンチとかキックはどこに忘れてきたんだい」  
「だ、だって……パンツ見るんだもん…!」  
そう言うフェルパーの顔は真っ赤になっている。殺しに快感を覚えるという点を除けば、彼女が一番扱いやすく、普通の人物だった。  
ただ、その唯一にして最大の欠点が、やはり他の二人よりも危険である。  
「でもさ!君も強いよね!攻撃なんかさ!全然当たらないもん!あはは!ねっ!君も強いよね!」  
「まあ、避けるだけなら…」  
「強い人ってさ!大好き!大好きなんだよっ!あはははっ!んなぅー!」  
瞬間、フェアリーは後ろに飛びのいた。鼻先数センチの位置を、ダガーの刃が通り抜けていく。  
「あはははぁーっ!避けた避けた!やっぱりすごいねっ!強いねっ!」  
「い、いきなり危ないな……おいおい、頼むぜ。僕は君と殺し合う気はないぞ」  
「……ち、惜しい…」  
ドワーフとバハムーンが、ぼそりと呟く。だが状況が状況ゆえに、フェアリーの耳には届いていない。  
「すごいよね!よく避けるよね!ねえねえ、どこまで避けられる!?それでさ、最後はさ!血ぃいっぱい出して死んじゃって!!」  
「フェルパー、そこまでにしてくれないかい。それ以上続けるなら、私達も君を庇うことはできなくなるよ」  
セレスティアの言葉に、フェルパーの動きが止まる。  
「にぅ……だ、ダメ?守ってくれなくなる?」  
「うん、ダメ。そりゃ仲間殺しておいて、『守ってくれ』もないもんだろう?」  
「んむぅ〜…」  
フェルパーの耳が、少しずつ後ろに倒れていく。やがて彼女は、渋々ダガーを収めた。  
「あー、全身冷えた…」  
「あなたは、フェルパーに近づかない方がいいんじゃなくって?」  
バハムーンにリフィアを唱えると、エルフが口を開く。  
「わたくしや副委員長ならともかく、あなたは強いと見なされ…」  
「んにー?二人も強いよね」  
言うなり、フェルパーはセレスティアの前に立ち、その顔をじっと見つめる。  
「……な、何だい?」  
「……ん〜〜……んんん〜〜〜……強いんだけど、なんか違うー」  
 
何やら基準があるらしく、フェルパーはつまらなそうに言う。  
「魔法とかすごいけど、魔法なかったら弱いんだもん。なんか違うのー」  
「そ、そうなんだ。まあ、私としてはよかったよ、うん」  
そんな会話を、バハムーンとドワーフの二人は険しい顔つきで聞いていた。  
「……後ろには絶対したくねえな」  
「そればかりは、俺も同感だ」  
「てめえなら、尻尾ぐらい切られたってすぐ生えてくんだろ?」  
「貴様の毛と一緒にするな。そもそも奴は、尻尾なんて生易しいところは狙わないと思うがな?」  
「怖え怖え。背中の毛がざわざわするぜ」  
大喧嘩した相手とはいえ、お互いに相手を嫌っているわけではないらしく、二人は早くも打ち解け始めていた。相変わらず、ドワーフが  
何かしらの悪態をつき、バハムーンもそれに言い返すという場面は多いが、そこに悪意はあっても敵意は感じられない。  
それ故か、初めの森を抜けるまでには、そう長い時間はかからなかった。途中、電撃床を踏みつけて尻尾三人組がひどい目に遭い、  
あるのがわかっていて、飛べない種族で唯一それをかわしたエルフが責められたりもしたが、それ以外にはさしたる問題も起きなかった。  
ジェラートタウンにたどり着き、想星恋慕を買う。あとはそれを校長に届けるだけだが、それを買ったときからドワーフがひどく  
挙動不審になっている。酒瓶をちらちらと見ては首を振り、何かをぶつぶつと呟くその姿は、相当に異様である。  
「……い、委員長。彼女、なんて言ってるかわかるかい?」  
「わたくしに、あのけだものの声を聞けというんですの?」  
エルフはあからさまに嫌そうな顔をしたが、セレスティアは引き下がらない。  
「いやー、だってさ、あんまり気になるじゃない。せめてなんて言ってるのかだけでもわかればさ、少しはすっきりするから」  
「……わかりましたわ。聞けばいいのでしょう、聞けば」  
そう言うと、エルフは少しだけドワーフに近寄り、耳をそちらへ向ける。  
「貴重な酒……うぅ、一口くらいなら……いやダメだ。バレたら怒られる……あ、でも味見って言えば……いやダメだっ!  
結局変わんねえ……800ゴールドなんて、今のあたしじゃ払えねえし……我慢だ、我慢だっ…!」  
「………」  
エルフの耳が、呆れたように垂れていく。やがてゆっくりとセレスティアの方へ振り返り、ぽつりと呟いた。  
「……戦っているだけですわ…」  
「え……何と…?」  
「自分と……と言えば聞こえはいいけれど、食欲と、ですわね…」  
「ああ、お酒ね…」  
結局、ドワーフは強靭な精神力によって酒の誘惑に打ち勝ち、想星恋慕は無事校長の元へ届けられた。  
以降の依頼も、彼等は順調にこなしていった。初めの森で一日中戦い続けられる力を付ける頃には、コッパに頼まれた物など簡単に  
買えるほどの所持金があった。ダンテとの戦いでは全員があっさりと倒され、特に新入生三人は悔しがり、再戦を固く誓った。  
ルオーテ救出のためにヤマタノトカゲと戦ったときは、力を合わせるということを知らない三人のために多少苦労したが、  
戦闘自体は危なげなく終わった。ただ、死んだふりをしていた相手の止めを刺せなかったことで、フェルパーがとても悔しがっていた。  
そして現在。一行は次の課題までの期間を、ジョルジオとガレノスの依頼をこなすことで埋めていた。  
 
やがて、新たな課題が発表されたらしいと聞くと、たまにはフェアリーがそれを受けたいと言い出した。  
「別に構わなくてよ。でも、わたくしが受けるのでは不満ですの?」  
「いや、違うよ。ただ、僕だって風紀委員だし、たまには代表ってやってみたいだろ?」  
「あなたがそう言うのは意外ですわね。まあ、いいですわ、今回は任せることにしますわ」  
エルフの許しを受け、フェアリーは嬉しげに飛んで行った。その様子を後ろで見ていたセレスティアが、そっとエルフに近づく。  
「……言っとくけど、彼はオリーブに会いたかっただけだからね」  
「ああ、彼女はヒューマンですものね…」  
一瞬でも、彼が真面目になったかと思った自分が馬鹿だったと、彼女は後に語った。  
そしてフェアリーが戻ってくると、風紀委員の三人は揃って風紀委員室に集まることとなった。  
「……で、何か言い訳はありまして?」  
「魔が差した」  
静かに怒りを燃やすエルフと、例の如くどこ吹く風のフェアリー。とはいえ少しは悪いと思っているらしく、目を合わせようとはしない。  
その間では、セレスティアがエルフを宥めている。  
「まあまあ、委員長……これも依頼には違いないんだし…」  
「そうですわね、依頼ですわね。『図書委員VS風紀委員』という名前の、れっきとした依頼ですわね。オリーブの個人的な」  
「……彼女のお願いを、僕が断れるわけないじゃないか」  
「わたくしの目を見て言ったらどうですの?」  
「そんな怖い顔されて、見られるわけないじゃないか」  
今にも掴みかからんばかりのエルフに、セレスティアが天使の笑顔で対抗する。  
「う、受けた以上はもう仕方ないよ。ここはもう立場を抜きにして、あくまでいち生徒として頑張ろうよ」  
「わたくしは委員長で、あなたは副委員長ですのよ!?それが立場を抜きにしてなど…!」  
「い、依頼には違いないよ。受けたのにやっぱりやめた、なんてやっちゃったら、単位だってもらえなくなるかもしれないし、  
風紀委員としての立場だって…」  
「じゃあ風紀委員が、図書委員側に立って戦うのはどうなんですの!?」  
「……あ、でも、三人じゃないとジェラートは戦わないって言ってたし、あの三人に任せ…」  
言いかけて、フェアリーはそれがどれほど危険なことかに気付いた。  
「何か言いまして…?」  
「……いいえ」  
「人選も考えなきゃいけないねえ。ま、もう受けた以上はしょうがないって、委員長。あの三人も混ぜて、みんなで話し合おう」  
「ああ……本当に、溜め息ばかり増えますわね…」  
結局は、依頼の途中破棄などできるはずもなく、エルフも渋々承諾した。しかし、もう二度とフェアリーには任せないと、  
エルフはもちろんセレスティアまでもが固く決意した。  
その日の夕方、学校の授業が終わると、六人は学食に集合した。  
「それで、相手って他に誰がいるんだよ?」  
ドワーフの質問に、フェアリーはあまり気のない感じで答える。  
「んー、詳しくは聞いてないけど、ジェラートとティラミスとパンナちゃんじゃないかな」  
「で、そいつらをまとめて叩き潰せばいいんだな?そんなの、俺一人でも十分だ」  
「潰すのはまずいよ潰すのは。それに、三人って言われてるらしいから、三人じゃないとダメだよ」  
「ねえねえ!その三人ってさ、強い!?戦ってるの見たことないけど、強いの!?」  
「……フェルパーは除外でいいですわね」  
エルフが呟くと、フェルパーは心外だという顔で彼女を見る。  
 
「どうしてー!?私が行きたいー!私が行くのー!殺すの私ー!」  
「殺しに行くんじゃないんだってば。大体、ジェラートは風紀委員で、どちらかというと私達の仲間だよ」  
「……ならあたしが行くか。ティラミスとかいう奴、前から気に食わなかったんだよな」  
スペアリブの骨をがりがりと齧りつつ、ドワーフが無感情な声で言う。  
「そんなこと言われて連れて行けるわけないじゃないか!」  
「じゃあ俺か。俺もあいつは嫌いだ、ちょうどいい」  
「どうしてそう君達はティラミスを嫌うんだ!?あんなにいい子なのに!」  
言ってから、セレスティアはその理由に気付いた。つまり、性格が合わないのだ。  
「んぬー、ドワーフ嫌ーい。性格も嫌いー」  
「……わたくしもドワーフは…」  
「僕もちょっとなー」  
「ちょっと待て!君達全員が敵なのか!?あの子の味方は私だけなのかい!?」  
「じゃあいいじゃん、いっそ僕達三人で行こうよ。それで、それぞれの相手…」  
「この三人は、その間どこに置いて行くつもりですの?」  
横からの声に、フェアリーの言葉が止まった。この問題児三人を放置しては、後がどうなるかわかったものではない。  
「……じゃ、じゃあ混成しかないか。まずフェルパーは除外として…」  
「行きたいのにぃー!」  
「もう一度言うけど除外として、まずこっちは誰が行く?」  
三人は顔を見合わせる。さっきまでの会話を考えると、セレスティアは確定のようだった。  
「じゃ、私は行くことにしようか」  
「僕も行こうか。あとは、フェルパー以外のどっちかを…」  
「いや待って。ジェラートがいるとなると、委員長はいてくれた方がいいよ」  
「あー、それもそうか。じゃあ僕が残……いや、待て待て待て。じゃあ何か?僕はこの快楽殺人者と、えせ高等種族様か暴力女と一緒に  
待ってなきゃいけないのかい?」  
フェアリーの言葉に、バハムーンとドワーフの目つきが険しくなる。それを、セレスティアが無言で宥める。  
「このけだものを連れて行ってくれるなら、わたくしが残ってもいいですわ」  
「うるせえ、無能委員長が」  
「っ!……ふ、風紀委員と図書委員の戦いでしたわね…!?」  
「委員長、委員長。風紀委員側に回ろうとしないで。今回は私達、図書委員側なんだから」  
「それに、ドワーフ連れて行くと大変じゃないのかい。彼女、やるとなったら容赦ないぜ」  
それはそれで問題だった。依頼のためとはいえ、不必要な暴力を振るえば問題にもなりうる。  
 
「……わかった。委員長、私が残るよ。だから、委員長とフェアリーと、バハムーンの三人で行ってもらえるかい?」  
「大トカゲと一緒か」  
「虫と一緒か」  
「……胃が痛くなりそうですわ。でも、それが妥当、ですわね。あなた方も、それでよろしくて?」  
エルフが尋ねると、フェルパーとセレスティア以外が渋々という感じで頷いた。  
「やだー!私も行くー!」  
「君は私と留守番で頼むよ。さすがに死者を出すのはまずい」  
フェルパーはずっと行きたがっていたが、連れて行ってくれそうもないとわかると、拗ねて部屋に戻ってしまった。  
「おい、お前。やるなら完璧に勝ってこいよ」  
ドワーフが言うと、バハムーンは不敵に笑う。  
「言われるまでもない。貴様は俺を舐めてるのか?」  
「いやぁ、なに。肝っ玉の小せえ野郎だからな。あたしがいねえからってビビんじゃねえぞ」  
「余計な気を使わない分、貴様等がいるよりは楽なもんだ」  
「そうかい、まあ強がりは大概にしときな。それで負けちゃあ目も当てらんねえ」  
そう言い、ニヤニヤと笑うドワーフ。さすがに不快だったらしく、バハムーンはムッとした顔を向ける。  
「どうも、貴様は俺を舐めてるようだな」  
「散々、情けねえかっこ見せつけられてるからな。まあ頑張れよ、応援はしてやるから」  
「……これ以上の言い合いは、無駄だな。いいだろう、結果でわからせてやるまでだ」  
「お?珍しくかっこつけたこと言うな?でもいいぜ、そういうのは嫌いじゃねえ」  
そんな二人の会話を、三人はじっと聞いていた。  
「……どうも、この二人は仲がいいんだか悪いんだかわからないねえ」  
「似た者同士だとは思うんだけどね。傲慢で、体力馬鹿で、おまけにどっちも僕が嫌いだ」  
「あれほど悪態をつかれて、よく平気でいられると思いますわ、彼のことは」  
とりあえず、大勢に影響はないだろうと判断し、三人ともそれに対して口出しすることはなかった。  
 
翌日、一行は初めの森を抜け、パンドーロタウンまでやってきた。そこで、セレスティアとドワーフ、フェルパーは宿屋に向かい、  
残りの三人は反対側の出口へと向かう。  
「それじゃあ、頑張って」  
「副委員長、あなたも気を付けて」  
「何にだ、馬鹿妖精」  
「あなたみたいな乱暴者にですわ、このけだもの」  
「二人とも、やめようってば。フェアリー、早いところ委員長連れて行って」  
「わかったわかった。委員長、行くよ」  
「私も行きたいのにぃ…」  
「はいはい、また今度ね。トカゲも行くよ」  
「……いつか絶対に殺してやる」  
相当な不安を抱えつつも、剣士の山道へと向かう三人。それを見送りながら、セレスティアはなるべく早く戻ってくれるように、  
一人祈っていた。  
とりあえず宿屋に向かった三人は、部屋を取らずに入口付近の椅子に座って時間を潰していた。危険人物二人と一緒ということで  
相当な不安はあったものの、二人とも危害を加えようという意思は見られず、セレスティアはホッと息をついていた。  
「でな、あいつらの用事終わったら、あたしパニーニ行きてえんだ」  
昨日の骨をまだ咥えつつ、ドワーフは喋っている。妙に器用だなあと、セレスティアは心の中で感心していた。  
「パニーニに?何をするんだい?」  
「転科だよ、転科。あたしさ、本当は戦士じゃなくて狂戦士がよかったんだ。でも、まずクロスティーニで履修しねえとダメだって  
言われて、そんでしょうがねえから戦士になったんだよ」  
「なるほどね。あ、フェルパーはどうだい?君も確か、ビースト学科っていうのがあったと思うけど」  
水を向けると、フェルパーは耳だけをピクンと動かし、やがてどんよりした目を向ける。やはり、置いて行かれたので拗ねているらしい。  
「やー。爪じゃなくてナイフがいいのー」  
「じゃあ戦士になりゃいいじゃねえかよ」  
「それも、やー。格闘はしたいのー」  
「でも、君今ほとんど格闘してないよね?」  
セレスティアが言うと、途端にフェルパーの顔が赤くなる。  
「だってぇ!蹴ったらパンツ見られるんだもんー!」  
「……下に何か履けばいいじゃねえかよ…」  
「や!動きにくいの嫌い!」  
「じゃあ文句言うなよな」  
「見られるのもやなの!」  
種族的な相性は良くないというが、思ったより二人の仲は悪くないようだった。それも不安材料の一つだったため、セレスティアは  
心の底からホッとしていた。  
「お前はどうなんだよ?確か、堕天使とか何とかいうのなかったか?」  
「いやぁ、私はいいよ。性格的に、堕天使やるのも向いてなさそうだしさ」  
「それもそうだな。変なところ生ぬるいもんなお前」  
「でもでも、時々優しいのって好きー」  
「はは、ありがとう。私としても、君達みたいに突き抜けた人は退屈しないよ」  
敵意さえ向けられなければ、二人ともやはり、同じ生徒である。そんなわけで三人は、他の三人が戻ってくるまでの間、意外と楽しい  
お喋りの時間を過ごすのだった。  
 
一方の三人は、剣士の山道の入り口付近で、ジェラート達と対峙していた。予想通り、オリーブがなぜ来ないのか、風紀委員が  
なぜ図書委員側についているのかなどと突っ込まれたものの、結局は予定通りに決闘することとなった。  
相手はフェアリーの予想した通り、前衛にティラミス、その後ろにパンナ、最後尾にジェラートという構成である。  
「……で、誰が誰相手にする?」  
「さすがに、パンナちゃんには手を出しにくいですわね…」  
「なら、俺がやるか。安心しろ、手加減はしない」  
バハムーンが言うと、エルフが大慌てでそれを止める。  
「やめなさい!彼女も強いとは聞いてましてよ?でも、さすがにあなたが彼女と戦うのは…」  
「うんうん、犯罪の臭いがするね。絵的にやばい。かといって……ティラミス相手じゃ容赦しないだろうし、ジェラート相手は  
絶対ダメだし…」  
「……誰も相手にさせないのが一番ですわね。でも、そうもいかないのも事実ですわ」  
エルフは一度目を瞑り、そして何かを覚悟したように目を開けた。  
「フェアリー、あなたはティラミスを頼みますわ。わたくしはパンナちゃんの相手を」  
「委員長!ジェラートにあいつぶつけるつもりかい!?そりゃあんまりだ!考え直してくれ!」  
大好きなヒューマンが被害に遭うということで、フェアリーは必死に止めようとするが、エルフは首を振る。  
「フェアリー……わかってほしいですわ。それに大丈夫、ジェラートはこれぐらいで死ぬ人じゃありませんことよ」  
「うぅ……どうしてもダメなのかい…?ひどい、ひどいや委員長…」  
「そういうわけで、バハムーン。あなたは……ジェラートの相手を!」  
それを聞いた瞬間、バハムーンは気合を入れるように、首をごきりと鳴らした。  
「そうか、そりゃありがたいな。手加減の必要がないんだからな」  
―――ジェラート、本当にごめん…。  
戦いの構えを取りながら、エルフとフェアリーは心の中でジェラートに謝り続けていた。  
 
剣士の山道にいた三人が戻ると、宿屋で待機していた三人はすぐ迎えに出た。  
「お帰り。結構早かったね」  
「……辛い戦いでしたわ…」  
「そうだったのかい?でも、その割にはあんまり怪我してないみたいだけど…」  
「……精神的にだよ、副委員長……ジェラートが丈夫で、本当に良かった…」  
参った表情の二人の後ろでは、バハムーンがしきりに首を振っている。  
「おう、どうだったよ?ちゃんと勝てたか?」  
「うーん……確実に葬ったと思ったんだが……なぜあいつはあんなに…」  
「何だよ、仕留め損ねたのか?やっぱりお前は…」  
「違う。仕留めはした。だが、確実に殺したはずなんだが……真っ先にあいつが起きるとは…」  
「んむー。いいなあいいなあ。そんなに強い人いたんだ。私も行きたかったなぁー、んなーん」  
その声に、フェアリーが思い出したように顔を向ける。  
「ああ、そうだ。フェルパー」  
「んにー?」  
「これあげるよ。君にはちょうどいいんじゃない?」  
フェアリーが何かを手渡すと、フェルパーの目が一瞬輝く。そして急にどこかへと走り去った。  
 
「ちょっとフェアリー、何したんですの!?」  
「いやあ別に。ただのプレゼント」  
「プレゼント?一体何を…」  
その時、走り去ったフェルパーが早くも戻ってきた。妙に嬉しそうな様子に、一体何事かと訝しんでいると、フェルパーは突然クルンと  
宙返りをし、両手で着地して逆立ちの姿勢を取った。  
「これで見えない!見えないね!んにゃーう!」  
スカートの下から覗いたのは、濃紺色のブルマだった。確かにパンツは見えていないものの、それはそれで恥ずかしくないのかと、  
全員が疑問に思った。  
「……おい」  
不意に、バハムーンがフェアリーに向かって手招きする。隣に並ぶと、バハムーンは声をひそめて話し始めた。  
「貴様……どこであんな物を」  
「いやー、ちょっとね。実はパンナちゃんの私物なんだけど、魔が差した。まあ、勝ったのは僕達だし、決闘は巻き込まれただけだし、  
あれぐらいいいかなってさ」  
「気付かなかったが、いつの間に」  
「勝った直後だよ。気絶してる間にササッとね。レンジャー所属のフェアリーを甘く見ないでほしいな」  
「………」  
ちらりと、フェルパーを見る。相当に嬉しいらしく、フェルパーはむしろブルマを見せびらかすように跳ね回っている。  
少しの沈黙の後、バハムーンは口を開いた。  
「今回ばかりは、貴様を褒めざるを得ないようだな。よくやった、本当によくやった…!」  
「君と趣味が合うのは気が重いけど、同好の士がいるのは嬉しいね」  
「君達、何を話してるんだい」  
後ろからの声に、二人はビクッと体を震わせる。  
「フェルパーのブルマ姿がどうとか話してる気がしたけど?」  
「は、はは、副委員長、別に僕達は…」  
だが最後まで言い終えるのを待たず、セレスティアは二人の手をしっかりと握った。  
「……たまらないよね、あれ」  
「お前もか。お前もやはりそう思うか」  
「……副委員長、僕はあなたのことを誤解してたよ。まさか副委員長もこっち側だなんて…!」  
「しかもフェルパー、ブルマだと見えても気にしないなんて……ああ神よ、天の国は地上にあったのですね…!」  
「しかし、貴様等は後ろなのが羨ましい……前では、ゆっくり見る暇なんて…」  
「でも、かぶりつきで見られるよ君は」  
「そうか。よし俺は決めたぞ。もっと強くなってやる……戦闘中でもよそ見できるほどになっ…!」  
「……副委員長?フェアリー?バハムーンまで、一体何を話してるんですの?」  
エルフの声に、思春期の男三人は慌てて解散した。  
 
「ああ、いや、別に」  
「そうそう、別に。やー、気にしないで」  
「どうせ大した話じゃねえだろうよ。それより、羽三人組」  
「こいつと一緒にするな」  
「こんなのと一緒にしないでくれよ」  
フェアリーとバハムーンが同時に言う。  
「間違っちゃいねえだろ?」  
「ならお前達は、耳長三人組か」  
バハムーンが言うと、今度はエルフとドワーフが同時に口を開いた。  
「こんなのと一緒にすんな!」  
「こんなけだものと一緒にしないでくれますこと!?」  
「んにゃーぅ!尻尾三人とか、耳長三人とか、羽三人とか、まとめ方いっぱいだね!」  
「お前ともあんまり一緒にしてほしくねえんだけどな。まあとにかく羽三人、ちょっと聞け。他のも」  
今度は何を言い出すのかと、五人はドワーフを見つめる。  
「セレスティアとフェルパーには言ったけどな、あたしパニーニで転科してえんだよ。だから、このままパニーニに行っていいか」  
「より、野蛮な学科になるんですのね」  
「うぜえってんだろ、無能妖精」  
「まあ、止める理由もなくってよ。勝手にすればいいですわ」  
「俺も別に構わん。どんな学校か、気にはなっていたしな」  
「私も行きたいー!強い学校なんだよね!?強い人いっぱいだよね!?んなーぅ!」  
全員、特に反対する理由もなく、次の目的地はあっさりと決まった。一度、依頼達成の報告だけしにフェアリーがクロスティーニへ帰り、  
彼が戻るとすぐにまたパニーニへ向けて出発する。  
途中の剣士の山道では、初めの森よりも強力なモンスターが出現し、主にフェルパーが喜んでいた。その中でも特に、ささくれシャークは  
格段に強く、危うく全滅の危機にまで追い込まれたこともあったが、やはり彼等が負けることはなかった。  
パニーニに着くとすぐ、ドワーフは職員室へ向かった。他の面子はジャーノやゾーラといった先輩に当たる生徒と話をしたり、  
寮の部屋に向かったり自由に過ごしている。ただし、問題児の三人を野放しにはできないため、ドワーフにはセレスティアが、  
バハムーンにはエルフが、そしてフェルパーにはフェアリーがそれぞれ付いている。  
転科の手続きが終わる頃には、ちょうど夕食時となっていた。そんなわけで六人は学食に集まり、揃って夕飯を食べている。  
「転科、できるっつーからやってくる。終わるまで待ってろな」  
「確か、転科は結構時間かかるんじゃなかったっけ?」  
「ん〜、あたしもよく知んねえけど、一週間かそこらだったと思う」  
「じゃ、それまで待つかい。せっかくパニーニに来たんだし、色々見てみようよ」  
「強い人!いっぱいだよね!いっぱいいるよね!ね!」  
「フェルパー、あなただけは絶対一人にしませんわよ」  
「俺はいいんだな?」  
「君もダメだよ。ちゃんと誰かと一緒にいてくれな」  
そんな会話があり、一行はドワーフの転科までパニーニに滞在することとなった。その間に五人は相談し、ついでなのでここでの依頼も  
こなして行こうという話にまとまった。  
 
一週間はあっという間に過ぎ、晴れてドワーフの転科も終わる。一週間ぶりの彼女は、随分と雰囲気が変わっていた。  
「野性的、だねえ。これはこれで似合ってるけど」  
「その服、ズタボロだけど一体どうしたんだよ?」  
フェアリーの質問に、ドワーフはかったるそうに答える。  
「訓練が激しかったんでな。いい運動になったけどよ」  
「スパッツか……これはこれで…」  
「ん?なんか言ったか?」  
「いや、別に。しかし……ふん、転科したとなると、また一から修行の積み直しだな」  
バハムーンの言葉に、ドワーフは不敵な笑みを浮かべる。  
「舐めんなよ?確かに戦い方なんかは全然違うけどよ、お前よりは強えぜ」  
「ほーう、どの辺がだ?」  
「真・二刀龍、もう覚えてるからな」  
言いながら、ドワーフは以前ジェラートタウンで買った大斧を片手で振り回して見せる。  
「すごい!すごいねっ!強くなったんだねっ!んなぅー!ねえねえ!殺していい!?いいよねっ!?」  
「てめえの頭叩き割っていいならなー」  
「二人ともやめなさい。それで早速だけど、私達ここで依頼受けたんだよ」  
ダガーを抜こうとするフェルパーを押し留めつつ、セレスティアが言う。  
「ヘル・アナコンダの救出なんだけど…」  
「救出?退治じゃねえのか?」  
「相変わらず野蛮ですわね。退治でなくて、救出。その耳、聞こえないんですの?」  
「てめえも相変わらずうざってえなあ。どこの誰が、ヘル・アナコンダを助けろなんて依頼、出すと思うんだよ」  
「………」  
それは依頼を受けた際に全員が思った事なので、誰一人言い返すことはできなかった。  
「と、とにかく救出だって。だから、早速行こうと思ってるんだけど、大丈夫かい?」  
「おう!肩慣らしにちょうどいいぜ!さっさと行くぞ!」  
「その気合、空回りにならなければいいがな」  
一行は早速準備を整え、剣士の山道へと向かった。途中、何度か戦闘があったが、その内容はバハムーンの言葉を裏付けるもの  
ばかりだった。  
確かに、大斧を片手で振り回すことはできている。しかしそれだけで、ほとんど当たらないのだ。敵がかわすこともあるとはいえ、  
止まっている敵にまで攻撃を外した時は、全員が苦笑いを浮かべるしかなかった。  
「……少し訓練積んでからにするかい?」  
「う、うるせえ!すぐに慣れる、こんなもん!えっと……あ、相手が小さすぎんだよ!ヘル・アナコンダ相手なら、絶対外さねえよ!」  
毛をぼさぼさにして叫ぶドワーフに、バハムーンが冷笑を送る。  
「無理だな。今のお前は、新入生と全く変わらん」  
「うるっせえ!やかましい!絶対あたしが倒してやるからな!」  
「無理だ無理だ、諦めろ。お前が倒せたら、俺はお前の奴隷になってやってもいいぞ」  
「……てめえ、本気で舐めくさりやがって…!」  
相当癇に障ったらしく、ドワーフの体毛は今や怒りで逆立っていた。  
 
「じゃあやってやろうじゃねえか!てめえ約束は守れよな!?」  
「祖先の血に誓ってやろうか?そうする必要もないとは思うがな」  
それでも、バハムーンはダガーで軽く掌を切り、ドワーフに腕を突き出す。  
「お前との約束は、祖先の血に誓って守ろう。これでいいな?だが、俺だけじゃあ不公平だ。お前こそ、仕留められなければ  
俺の奴隷になれ」  
「ああ上等だてめえ!もしあたしが倒せなきゃ、今日一日てめえの言いなりになってやるよ!」  
「一日だけ、か……まあいい。誓いは守れよ?」  
「うるせえ!見てやがれ!」  
この二人の言い合いも、もはや見慣れたものである。一頻り言い終えたと見ると、エルフは黙ってバハムーンの傷を治す。  
「二人とも、白熱するのはいいけど、あまり頭に血を昇らせないようにね」  
「うるせえっ!」  
バハムーンはニヤニヤとした笑みを絶やさず、ドワーフの眉間には皺が寄りっぱなしである。そんな二人とは別に、フェルパーは  
強いモンスターとの戦いに機嫌がいい。  
「んにぅー!二人ともやる気だね!でもね!ヘル・アナコンダはね!私が殺すの!」  
「殺すな!僕達の受けた依頼は救出なんだから!」  
「えぇー!殺したいー!強いの殺したいのー!」  
「ダーメ!」  
「んむー……でも、強いんだよね!?楽しみだね!」  
そして訪れた、ヘル・アナコンダとの戦い。その巨体から繰り出される攻撃や、毒の息吹は多少厄介ではあったが、全体の流れは  
悪くない。ただ、毒の息吹が吐き出される度、バハムーンは毎回毒に侵されている。  
「ぐおっ!?……げほっ、がはっ!」  
「てめえはまた……精神的なもんだけじゃなくて、ありとあらゆるもんに弱えんだな」  
「ぐっ……食らわないお前がおかしいんだ…!」  
セレスティアがリポイズを唱え、エルフがヒーラスを唱えて態勢を立て直す。既に相手はだいぶ弱っており、決着は近い。  
「それよりお前、さっきから一発も攻撃を当てていないようだが?」  
「うっ…」  
ドワーフの耳と尻尾が、ビクッと垂れる。必死に攻撃を仕掛けてはいるのだが、意外に俊敏なヘル・アナコンダはそれを容易く  
かわしてしまうのだ。  
「う、うるせえ!止めはあたしが刺してやる!見てやがれ、この野郎!」  
ヘル・アナコンダが、フェルパーを丸飲みにしようと迫る。間一髪、飛び上がってかわし、ついでに頭を蹴りつける。完全に体勢が  
崩れたところへ、ドワーフが走った。  
「そらぁ!!」  
裂帛の気合と共に、大斧が振り下ろされる。しかし、ヘル・アナコンダは素早く身をかわした。  
「なっ…!?うわ!」  
今度は逆に、ヘル・アナコンダがドワーフに襲いかかる。その動きに対処しきれず、ドワーフは咄嗟に大斧で防御した。  
しかし、衝撃は来ない。代わりに、ドスッと鈍い音が鳴り、続いて巨大なものが倒れる音が響く。  
「……殺してはいないはずだ、安心しろ」  
「え…」  
いつの間にか、横にバハムーンが立っている。峰打ちを叩きこんだらしく、ヘル・アナコンダは文字通り地面に伸びていた。  
 
「さすが、やるね」  
「んにゃーぅ!私が殺す予定だったのにぃー!」  
「そんな予定、組んだ覚えはありませんわよ。ともかく、これで依頼達成ですわね」  
「え……ええ…!?」  
バハムーンがヘル・アナコンダを倒した。その意味を理解し、ドワーフの尻尾は完全に内股へ丸めこまれてしまった。  
そんな彼女をあざ笑うかのように、バハムーンがゆっくりと振り返る。  
「さて、誓いは守るんだったな?」  
「………」  
珍しく、ドワーフは何も言い返せない。ややあって、顔を逸らし一度舌打ちをすると、黙って頷いた。  
「よし、いい心がけだ。じゃあ今日の夜、俺の部屋に来い」  
「なっ…!?」  
途端に、ドワーフは目を剥いてバハムーンを睨みつける。彼女だけでなく、セレスティアやエルフやフェアリーも、白昼堂々と  
そう言い切る彼を信じられない思いで見つめていた。  
「……お盛んだねえ。今は繁殖期だったっけ?」  
「黙れ虫。男が女を求めて何が悪い」  
「体を代価にするなんて……卑怯だと思いませんの?」  
「思わん。約束を破っているわけでもない」  
あまりに堂々とした物言いに、もはや周りは何も言えなかった。フェルパーはというと現実逃避気味に、倒れたヘル・アナコンダの体を  
つついて遊んでいる。  
「……だ、誰がてめえなんかとっ!!そりゃ約束はしたけど……んな要求されるなんて聞いてねえよっ!!くそっ、誰がてめえの  
言うことなんか!!」  
怒りか恥ずかしさか、全身の毛をいつもの倍ほどに膨らませながら、ドワーフが叫ぶ。そしてフェルパーを突き飛ばし、  
倒れているヘル・アナコンダを担ぎ上げると、先頭に立って歩き出した。そんな姿を、バハムーンは黙って見つめている。  
「……まあ、しょうがないと思うよ私は。誰だってああなるでしょ」  
セレスティアが肩を叩く。しかし、バハムーンはフッと笑う。  
「まあこうなるだろうな……この場は、な」  
最後にそう呟くと、バハムーンもドワーフの後を追って歩き出す。残った面子はお互いの顔を見合わせ、すぐに二人を追って歩き出した。  
 
結局、戦闘で役に立てなかったショックもあってか、ドワーフはパニーニに戻るとすぐ部屋へ帰ってしまい、夕食にも姿を見せなかった。  
当然、その大きな原因と考えられるバハムーンは責められたものの、本人は涼しい顔である。  
夕食を終え、全員が部屋に戻る。バハムーンも部屋に戻り、武器の手入れを済ませてからベッドに寝転がった。特にやることもなく、  
そのままじっと目を瞑る。傍から見れば眠っているように見えたかもしれないが、寝息はいつまで経っても聞こえなかった。  
数時間が経ち、消灯時間も遥かに過ぎた頃。  
部屋のドアが、遠慮がちにノックされた。それを聞くと、バハムーンはむくりと体を起こした。  
「入れ」  
ドアがゆっくりと開かれる。そこにいたのは、紛れもなくドワーフだった。  
「よく逃げなかったな。尻尾を巻いていた割には、な」  
その言葉に、ドワーフはムッと顔を歪ませる。  
「うるせえ!しょうがねえだろ、約束はしちまったんだから…!」  
「俺の言うことなど聞かないと、言っていたように聞こえたが?」  
「だからうるっせえな!今からでも帰るぞてめえ!」  
「誓いを破ってか?」  
「くっ……だから、誓った以上は、しょうがねえだろ。ほんとはあたしだって嫌なんだからな」  
視線を逸らし、年相応の羞恥心を見せるその姿は、普段からは想像もつかない。そんな彼女の姿を楽しんでから、バハムーンは口を開く。  
「こっちに来い」  
「っ…」  
ドワーフは躊躇いつつも、彼の前まで足を進める。バハムーンはベッドの縁に座ると、にやりとした笑みを浮かべた。  
「何でも、言うことは聞くんだな?」  
改めて尋ねると、ドワーフは苦りきった顔をしながらも頷いた。  
それを見て取ると、バハムーンは不意にズボンのジッパーを下ろし、自身のモノを取り出した。  
「とりあえず、舐めろ」  
「う……く、来るとは思ったけどよ……この変態が…」  
悪態をつきつつも、拒否はできない。ドワーフはバハムーンの前に跪くと、おずおずと顔を近づける。  
「変な臭い……くそぉ…」  
首を伸ばすようにして、そっと舌先でつつく。特に変な味はないと確認すると、今度は少し丁寧に舐め上げる。  
舌先で先端を舐め、裏筋をなぞる。それを繰り返すうち、バハムーンのモノは大きく屹立していく。  
「なかなかいいぞ。もう少し丁寧に舐めろ」  
「………」  
ドワーフは不機嫌そうな顔でバハムーンを睨むが、やがて舌全体を使って丁寧に舐め始めた。  
根元に舌を当て、先端までゆっくりと舌を這わせる。かと思えば、彼のモノに舌を巻きつかせるようにして舐め、続いて先端を、  
それこそ犬が舐めるようにぺろぺろと舐める。  
「んん……ふ、ぅ…」  
いつも悪態ばかりつくドワーフが、自分の前に跪き、命令のままに自身のモノを舐めている。それが、バハムーンにとって何より  
大きな興奮剤となる。  
「うっ……いいぞ、次はしゃぶれ。絶対に歯は立てるなよ」  
「……難しい注文つけやがるな」  
目の前のモノをじっと見つめ、やがて意を決したように口を開く。まず先端部分を口に咥え、少しずつ喉の奥の方まで飲み込んでいく。  
だが、慣れないためにどうしてもえずいてしまい、結局は半ばまでを口に含み、そのまま口の中で舐めるというものに落ち着いた。  
 
「ふっ……はぅ、ん……ぷぁ…」  
口内に含んだまま、ゆっくりと頭を動かす。その間も口の中では舌を動かし、彼のモノを舐め続ける。  
鈴口を舌の腹で舐め、同時に舌先は裏筋をなぞる。時には舌を巻き付かせたまま頭を動かし、舌で彼のモノを扱く。  
「くぅ……そのまま根元まで咥えろ」  
「ん……ふー」  
文句を言いたそうな顔をしつつも、ドワーフは素直に従う。  
「んっ……う、うえぇ…!……げほっ…!」  
えずきつつも、ドワーフは必死に彼のモノを飲み込んでいく。やがて、湿った鼻先がバハムーンの下腹部に当たり、動きが止まる。  
「んえっ……かはっ…!ん、んぅー…!」  
口内の温かい感触と、押し当てられた鼻のひんやりとした感覚。そして、涙ぐんだドワーフの目が、征服欲を心地よく刺激する。  
既に高まっていた快感が、それらを受けて一気に跳ね上がる。ドワーフが再び舐め始めようとした瞬間、バハムーンは不意に彼女の  
顎を強く掴んだ。  
「うあっ!?あ、がっ…!」  
痛みに口を開けた瞬間、バハムーンは彼女の口から自身のモノを引き抜いた。それを彼女に突き付け、もう片手で強く扱く。  
「くうっ……出すぞ!」  
「えあっ……うあぁ!?」  
ビクンと彼のモノが跳ね、勢いよく精液が飛び出す。それは彼女の顔にかかり、続いて口の中へと吐き出されていく。  
「うえぇ……はあ、え…!」  
ドワーフは顔を背けようとするが、顎を掴まれているためそれも叶わない。やがて精液の勢いが弱まり、動きも止まる。  
バハムーンはドワーフの舌の上に溜まった白濁を満足げに眺め、ようやく彼女を解放する。  
「うえぇ〜、へんなあじ……ひでえにおいふるひ…!」  
「吐き出すな、飲め」  
「うう……このやろお…!」  
悪態をつきつつ、ドワーフはギュッと目を瞑り、口を閉じた。  
「う……おぅっ…!う、ぇ……んっ……んっく…!」  
何度か吐きそうになりつつも、やがて喉がごくりと大きく動く。ややあって、ドワーフはようやく目を開けた。  
「口を開けて見せろ」  
「わざわざ確認までするかよ……この変態野郎」  
それでもドワーフは大人しく従い、大きく口を開けて見せる。  
「ちゃんと飲んだようだな」  
「てめえが言ったんだろうが…!」  
「顔のそれも、掃除しとけ。ハンカチは使うなよ」  
その意味を理解すると、ドワーフは顔をしかめる。  
「……最低だな、てめえ」  
「何とでも言え」  
指で顔にかかった精液を掬い、口元に運ぶ。少し躊躇い、それを舐め取ると、やはり目を瞑ってしっかりと飲み下す。  
そんな彼女の様子を、バハムーンは満足げに見守っていた。その視線に気づき、ドワーフはあからさまに不機嫌な顔をする。  
 
「……見んな、変態」  
「俺の勝手だ。それより、これで終わりだと思ってないだろうな?」  
「言うだろうと思ったよ」  
言いながらスパッツを脱ぎかけると、バハムーンがそれを止める。  
「待て。まだ俺は何も言ってないぞ」  
「はぁ?じゃあ何しろってんだ?」  
「そうだな……オナニーでもしてもらおうか」  
「はあぁ!?」  
それを聞いた瞬間、ドワーフの体毛が一気に膨らむ。  
「こ、ここでかよ!?なんでわざわざ、んな事!?」  
「感謝してほしいところだがな?濡らさないままやっては痛いだろう?」  
「て、てめえが触ればいいじゃねえかよ」  
「自分でやった方が濡らしやすいだろう?俺は気を使ってやってるんだ」  
「……てめえが見てえだけだろうが、変態」  
「ああ、見えないから床には座るな。そこの椅子に座ってもらおうか」  
「……やっぱそうじゃねえか…」  
指定された椅子に座ると、ドワーフはスパッツに手を掛けた。するとまた、バハムーンが口を開く。  
「ああ、完全には脱ぐな。膝の辺りまでにしろ」  
「なんでだよ、やりにくいんだよ……こだわりでもあんのか、変態が…」  
ぶつぶつ文句を言いつつも、やはりドワーフは大人しく従う。  
膝下までスパッツを下げ、許す範囲で軽く足を開く。一度深呼吸をすると、ドワーフはそっと股間に手を伸ばした。  
「……んっ…!」  
形をなぞるように、全体をそっと撫でる。僅かに呼吸が荒くなり、尻尾がピクンと動く。  
割れ目を覆うように手をやり、指先で秘唇をさする。再び呼吸が乱れ、その中に微かな嬌声が混じる。  
しばらくその感覚を楽しんでから、ドワーフは親指で少しずつ尖り始めた突起に触れた。  
「んあっ……はぁ、ん…!」  
普段からは想像もつかない、甘い声。それに加え、普通ならば決して見られない彼女の痴態。それだけでも、バハムーンのモノが  
再び勢いを取り戻すのに十分な刺激があった。  
少しずつ慣れてきたらしく、ドワーフは突起をぐりぐりと押し潰すようにして刺激し、さらに中指を秘裂へと導く。  
「あっ!くぅ……んっ!」  
くちゅ、と微かな音が響き、ドワーフの指が中へと沈みこんでいく。その顔に苦痛とも快感とも取れない表情を浮かべ、震える呼吸を  
繰り返しながら、中に入れた指をゆっくりと出し入れする。いつしか左手は自身の胸へと添えられ、指先でつんと立った乳首を  
弄り始めている。  
さらなる刺激を求め、もっと奥まで指を入れようとしたときだった。  
「んあぁ……わっ!?」  
突然、バハムーンが腋を掴んで持ち上げた。そして再びベッドに座ると、ドワーフを自身の膝に乗せる。  
「な、何だよ?」  
「もう十分濡れてるだろう?そろそろ本番に移ろうか」  
「半端なとこでやめさせやがって……十分っつわれてもな…」  
 
ドワーフは視線を落とし、バハムーンの股間にあるモノを見つめる。  
「……こんなでけえの、入るかな…」  
「お前は欲張りなんだろう?」  
「そりゃ……そうは言ったけどよ!けどっ……あたし、自分でしたことしかねえぞ」  
「お前の手は随分でかいが、それが入るなら大丈夫じゃないか?」  
「手は入んねえよ!指二本入れるんだって、結構きついんだからな」  
だが、今更バハムーンがやめる気はなく、ドワーフもそれについては覚悟を決めていた。  
「さて、話はここまでだ。自分で入れてみろ」  
「ま、またあたしがかよ……てめえは自分でやる気ねえのか」  
「親切で言ってるんだぞ?自分で入れた方が、負担も少ないだろう」  
「初めての奴に、自分からさせるか。変態野郎が…」  
いい加減に邪魔なスパッツを脱ごうとすると、やはりバハムーンがそれを止める。  
「脱ぐな。そのままにしておけ」  
「だぁから、てめえは何なんだよ!?何のこだわりがあるんだよ!?」  
「黙って言うことを聞け」  
「……ちっ、そういう約束だからな、しょうがねえ」  
膝辺りにあったスパッツを少しずり上げ、太股辺りに持ってくると、ドワーフはバハムーンの腰を膝で挟むように体を寄せる。  
彼のモノを掴み、腰を浮かせて自身の秘部へと押し当てる。やはり不安があるのか、ドワーフの耳はいつもより垂れている。  
「……あたしがするんだからな。てめえは動くなよ」  
「いいから早くしろ」  
「うるせえ、黙ってろ」  
先端を何度か秘裂に擦りつけ、愛液を絡める。そうしてある程度絡んだところで、ドワーフはいよいよ腰を落とし始めた。  
「んっ……んぅ……あっ、く……つぅっ…!」  
秘唇が少しずつ開かれ、つぷつぷと音を立てながら、バハムーンの巨大なモノが入りこんでいく。  
先端が埋まり、さらに奥へと入れていくにつれ、ドワーフの顔は次第に苦痛に歪んでいく。  
「うぅ……あっ…!く、はっ…!はあっ……はあっ…!つっ…!」  
彼のモノを半ばまで受け入れた時、ドワーフの動きが止まった。その顔は苦痛に歪み、呼吸は浅く切れ切れになっている。  
「あっつ…!こ、これぐらいでいいだろ…!?これ以上は……つあっ……痛えし、無理だ…!」  
「……まあいいだろう。動け」  
「痛えっつってんだろっ…!やってやるけどよ、くそ…!」  
極めてゆっくりと、ドワーフは腰を動かし始めた。かなり痛むらしく、上下の動きはほとんどせず、前後に動かすことが多い。  
バハムーンとしては多少物足りなくも思ったが、それでも快感が無いわけではない。  
「はあぁ…!あぅ……くっ、あっ…!んんっ…!」  
入らないというだけあり、ドワーフの中はきつく、また彼女自身が痛みで強く締め付ける。そのため腰を動かさずとも、それなりの  
快感は伴っていた。まして、痛みを必死に堪えて奉仕する彼女の姿が、何よりも強い快感をもたらす。  
だが、それでも多少物足りない。しばらくは彼女に任せていたバハムーンだが、更なる快感の欲求は膨れ上がるばかりだった。  
そして、それが限界に達したとき、バハムーンはドワーフの腰をしっかりと掴んだ。  
「え?お、おいっ!何すっ…!」  
彼女の言葉を終わりまで聞かず、バハムーンはドワーフの体を思い切り押し付け、同時に腰を突き上げた。  
 
「ひぐうぅっ!!!」  
大きな悲鳴。硬い肉を無理矢理押し広げ、バハムーンのモノが根元まで彼女の体内に入り込んだ。  
ドワーフの体は強張り、食いしばった歯の隙間からは荒い息が漏れる。その目はギュッと固く閉じられ、眦からはとうとう涙がこぼれた。  
「……て……てめえぇ〜…!」  
涙に濡れた目を開き、ドワーフが弱々しくも非難がましい声を出す。鼻をグスグスと鳴らし、それでも必死にこちらを睨む彼女の姿は、  
バハムーンの目には何とも可愛らしく映った。  
彼女の体ごと腰を突き上げる。途端に、ドワーフはバハムーンの腕を強く掴んだ。  
「うああっ!てめえっ……動くなって言った…!」  
「文句を言うな。黙っていろ」  
そっけなく言うと、バハムーンは再び腰を動かし始めた。だが、ドワーフは彼の腕から手を放すと、代わりに自分の口を押さえた。  
「んんっ!ふぐっ……うぅ〜…!くっ……ふあぁ…!」  
痛みに涙を浮かべつつ、必死に声を抑えるドワーフ。バハムーンは彼女を気遣う様子もなく、またそんな余裕もない。  
根元まで感じる、ドワーフの体温。無理矢理入れたせいもあり、その中は痛みを感じるほど狭く、それこそバハムーンのモノで  
いっぱいになっている。  
突き上げれば、小さな悲鳴と共に強く締め付け、腰を引けば不安げな目でこちらを見つめる。そんな彼女の姿に、バハムーンは  
あっという間に昇り詰めた。  
「ぐぅ……このまま出すぞ!」  
「うあぅぅ……は、早くしろおぉ…!」  
苦痛から逃れたいためか、ドワーフはより強く彼のモノを締め付けた。それにより、バハムーンはあっさりと限界を迎えた。  
ドクンと、彼女の中でバハムーンのモノが跳ねる。みっちりと食い込んでいるそれの動きは、彼女にもはっきりと感じられた。  
それが跳ね、その度に腹の奥がじんわりと暖かくなる。それを何度か繰り返すと、動きは小さくなり、やがて止まった。  
「はぁ……はぁ…!お……終わった…?」  
息も絶え絶えという感じで、ドワーフが尋ねる。バハムーンは答えず、ただ荒い息をついていたが、やがて顔を上げた。  
「……まだだ」  
言うなり、彼はドワーフの体を持ち上げ、体勢を入れ替えてベッドに押し付けた。  
「う、嘘だろ!?だってお前、二回もっ……や、やめろ!もうやめろよぉ!てめえのでかすぎて痛えんだよぉ!」  
「それは嬉しい言葉だ。だが、さっきも言っただろ。文句を言うな!」  
無理矢理四つん這いの姿勢を取らせると、バハムーンは後ろからドワーフにのしかかる。そして逃げられないように腰を掴むと、  
自身のモノを押し当て、一気に貫いた。  
「あがっ……かはっ…!」  
ドワーフは痛みに全身を仰け反らせ、やがて体から力が抜ける。腰だけを持ち上げられたまま、ドワーフはベッドに突っ伏した。  
「いい格好だな。こういうのは嫌いじゃない」  
バハムーンが言うと、ドワーフは抗議の意味を込めて、尻尾で彼の手を叩く。  
「うるせぇ……はぁ……文句は、言わねえでやるから……はぁ……さっさと、終わらせやがれ…!」  
「なら、痛くても文句は言うなよ」  
そう言うと、バハムーンは何の遠慮もなしに腰を動かし始めた。体の奥を貫かんばかりに突かれ、あまりの痛みにドワーフは悲鳴すら  
上げられなくなる。  
「んぐぅぅ〜…!ぐ、ううぅぅ〜……う〜!」  
枕を噛み、シーツを握り締め、ドワーフは必死にその痛みを耐える。ギュッと閉じられた目からはポロポロと涙がこぼれ、シーツに  
染み込んでいく。それに構わず、バハムーンはただただ、己の欲望を満たすために彼女の体内を突き上げる。  
 
腰を動かす度、先に出された精液が溢れ、結合部からドワーフの太股を伝い、スパッツに染みを作っていく。  
「うぅ……ん、ぐっ…………グスッ……んうぅ…!」  
パン、パンと規則正しく響く乾いた音に、グチャグチャという湿った音が響く。部屋の中には熱気が充満し、二人の体からはじっとりと  
蒸れた汗の匂いが感じられる。  
苦痛と疲労でさすがに限界が近いらしく、ドワーフの中はそれまでのように強くは締め付けてこない。それでもきつくはあるのだが、  
既にだいぶ慣れてきたらしく、痛いほどのきつさではない。  
不意に、バハムーンが片手を腰から放す。代わりに尻尾を掴むと、ドワーフはぎょっとしたように振り返った。  
そんな彼女の顔を楽しみつつ、バハムーンはゆっくりと尻尾の付け根へ手を滑らせる。そしてその付け根にある小さな穴に親指を  
あてがうと、一気に中へと突き入れた。  
「きゃあああぁぁぁ!?」  
突然の刺激に、ドワーフは再び全身を仰け反らせ、甲高い悲鳴をあげる。同時に、その指を拒むように穴がギュッと締め付けられ、  
同時に彼のモノも強く締め付けられる。  
「くっ……よく締まるじゃないか。ほら、もっと締めてみろ」  
「お前っ……んあっ!やんっ!い、いきなりそんなっ……ああっ!」  
さすがに恥ずかしいのか、ドワーフの全身の毛は普段の倍ほどに膨らみ、耳はすっかり垂れ下がっている。  
「随分と女らしい声も出せるんだな。そんな声は初めて聞くぞ」  
「う、うるせっ……きゃんっ!」  
「女らしいというより……子犬の悲鳴か?」  
「だ、黙れ!誰が犬……きゃう!」  
実質、それに近い声をあげながらも、ドワーフは必死に否定する。だが、バハムーンにとってそんなことはどうでもよかった。  
精液と愛液が入り混じり、熱くぬるぬるとしつつも、強く締め付けてくるドワーフの中。既に二回出しているとはいえ、その刺激は  
彼を追い込むのに十分なものだった。  
再び、彼の動きが荒くなっていく。子宮を突き上げられ、さらには後ろの穴を指で犯され、ドワーフはその刺激に耐えようと全身を  
強張らせる。それによって彼のモノは強く締め付けられ、バハムーンに大きな快感をもたらす。  
「うああっ!は……激、しっ…!腹がっ……破、れるっ…!」  
「くぅぅ…!また、中に出すぞ!」  
「あぐぁっ…!うあ、あああっ!」  
最後に一際強く腰を叩きつけると、バハムーンはドワーフの中に三度目の精を放った。その感覚に、ドワーフの中がまるで最後の  
一滴まで絞り取ろうとするかのように蠢動する。  
「また……中、出てる……いっぱい…」  
ドワーフがうわごとのように呟く。それを心地よく聞きながら、バハムーンは指を引き抜く。  
「んっ!」  
ピクッと尻尾が跳ね、中が一瞬ぎゅっと締め付けられる。その感覚を味わってから、ようやくモノを引き抜く。  
 
「ふあ……あぁ…」  
もう限界だったらしく、ドワーフはそのままベッドに突っ伏した。バハムーンはそんな彼女に手を掛けると、ころんと仰向けに寝かせた。  
そして、完全には脱がせなかったスパッツに手を掛けると、それをきちんと履き直させる。  
じわりと、股間に黒い染みが広がる。やがて秘部がヒクつき、こぽっと小さな音を立てて精液が溢れる。あまりに多いそれは、  
スパッツを通り抜けて表面まで溢れ出た。  
黒いスパッツに、白濁した精液が強く映える。それを眺め、バハムーンがポツリと呟いた。  
「……たまらんな」  
そんな彼に、ドワーフは息も絶え絶えになりつつ、呆れた顔を向ける。  
「これが……はぁ……はぁ……見たかったのかよ…。はぁ……救いようのねえ……はぁ……変態、野郎め…」  
「何とでも言え」  
言いながら、バハムーンは彼女の隣に寝転ぶと、ハンカチで溢れた精液を拭ってやる。そして、後ろから彼女をぎゅっと抱きしめた。  
「このまま寝ろ」  
有無を言わさぬ強い口調。それに対し、ドワーフはうんざりした顔をする。  
「はっ……帰ってゆっくり寝ようと……思ってたのによ…。それすら、できねえのかよ…」  
「……お前のやりたいようにさせるのも、癪だからな」  
「ま……命令じゃ、しょうがねえな…」  
そう言うと、ドワーフは目を閉じた。程なく、部屋に小さな寝息が響く。  
それを確認してから、バハムーンも静かに目を瞑る。それから間もなく、部屋の寝息は二つになっていた。  
ドワーフを抱き締め眠るバハムーンに、彼に抱かれて眠るドワーフ。その姿は、誰がどう見ても、恋人同士にしか見えなかった。  
 
翌日、ドワーフは何事もなかったかのように、仲間と一緒に行動していた。本人たっての希望で、一行は朝から剣士の山道での  
戦闘に明け暮れている。  
しかし、この日は特にドワーフの動きが悪い。本人はそれを表に出さないよう頑張っているらしいのだが、特に走るのが相当に  
辛いようだった。おかげで、戦果は先日よりさらにひどい。  
「ドワーフ、大丈夫かい?随分辛そうだよ?」  
戦闘が終わって一息つき、セレスティアが尋ねる。すると、ドワーフは悪びれる様子もなく答えた。  
「ゆうべバハムーンの野郎に、すっげえ激しくヤられたんでな〜。文句ならそいつに言えよ」  
あまりにあっさりとした物言いに、最初は誰も反応できなかった。真っ先に動いたのは、やはりフェルパーである。  
「やーっ!この人達大っ嫌いー!なんでエッチなことするのー!?信じられないー!」  
「結局行ったんかい、君は……トカゲもよくやるよ…」  
顔と耳の内側を真っ赤にするフェルパーに、すっかり呆れ顔のフェアリー。そんな彼等にも、バハムーンは涼しい顔である。  
「手頃な女がいて、ヤれる状況だったんだ。ヤらねえ方がおかしい」  
「……さすが、けだものですわね。あなたも、なぜそうなるのがわかっていて行くんですの?」  
「あぁ?約束はしちまったんだからしょうがねえだろ」  
「そんな約束、守る必要がありまして?」  
「あたしはてめえとは違うんだ、この無責任委員長が」  
今までならば、この時点で激昂していたであろう。しかしエルフも、既にだいぶ相手に慣れてきている。  
「言いなりになると約束したとはいえ、限度というものがありますわ。まさか死ねと言われて死ぬわけじゃないですわよね?」  
 
「あたりめえだろ、馬鹿かてめえ」  
「ほら見なさい。あなただって守るものと守らないものがある。つまりあなたの体は、その程度の軽さということですわね?」  
「いや、そりゃ……違うけどよ……えっと…」  
「まして、冒険者は健康管理が最も大切なことですわ。あなたは冒険者としての自覚がありませんの?」  
「そ、そういうわけじゃねえよっ!でも、その……し、死ぬわけじゃねえんだ!それなら約束を守るのは当たり前だろ!?」  
「まあまあ。委員長もドワーフも、そこまでにしておこうよ」  
いつもの如く、セレスティアがやんわりと二人を止める。  
「見方を変えれば、こんな状態でも頑張って、戦闘の訓練をしてるんだ。それはとてもすごいことだと思うよ。でも、そんな状態に  
なるのがわかってるなら、せめて日を改めるなり何なり、手はあったはずじゃないかい」  
「あんな激しくされるなんて聞いてねえし。文句ならあいつに言えって」  
ドワーフの言葉に、バハムーンは不敵に笑う。  
「そう激しくしたつもりもないがな?お前の中が狭すぎるだけだ」  
「てめえのちんこが無駄にでけえんだよ、肝っ玉は小せえ癖に。でかけりゃいいってもんじゃねえぞ」  
「お前は欲張りだと聞いたが?現に、昨日は泣いて喜んでたじゃないか」  
「な、なっ……てめえ、金玉握り潰すぞ…!」  
「泣いて喜ぶモノが消えちまっていいのか?」  
「……よぉし、わかった。それはやめてやるから……てめえの頭カチ割らせろぉ!!!」  
斧を振り上げるドワーフ。それを慌てて止めるセレスティアと、バハムーンを叱り始めるエルフ。そして、バハムーンとドワーフに  
襲いかかろうとするフェルパーを必死に宥めるフェアリー。  
相変わらず、統一性もなければ協調性もない問題児。それと裏腹に、連携と絆を深めていく風紀委員。  
だが、傍から見れば絶望感漂うこの一行も、実際には少しずつ、お互いを理解し始め、また仲間としての意識を持ち始めていた。  
目に見えないほどに、しかし確実に一歩ずつ、一行はお互いに歩み寄っているのだった。  
 

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