風紀委員内において、エルフら三人の立場は楽なものではない。副委員長に委員長であるとはいえ、不信を招けば更迭させられる  
可能性もある。そういう意味では、フェアリーは比較的気楽なものである。  
才能ある問題児達と行動を共にし、優秀な成績を挙げる彼等に向けられる眼差しは、当然ながら羨望や嫉妬、軽蔑が多い。  
だが、今更あの問題児を他人に任せることなどできない。そんなことをすれば、彼等はたちまち入学当初のように、大きな問題を  
引き起こし始めるのは明白だった。また、もしそんな選択をすれば、中途半端に責任を放棄したと叩かれるのも目に見えている。  
彼等には、立ち止まることは許されなかった。たとえそれが自身を破滅に追い込む道だとしても、進み続けるしかなかった。  
とはいえ、彼等自身、立ち止まる気はない。今やあの問題児達は、ただの監視対象などではなく、気の置けない友人であり、大切な  
仲間なのだ。それを見捨てることなど、彼等には考えられなかった。  
「委員長。再三言っていることではありますが、どうして彼女達の退学を具申しないのです」  
「ノーム、それはわたくしも再三答えていることではないんですの?その理由が、ないからですわ」  
定期的に開かれる、風紀委員の会議。とはいっても、課題のためにどこか遠くの中継点にいる生徒も多く、参加人数はまちまちである。  
この時は、委員長に副委員長、そして数人の委員がいるだけだった。フェアリーはサボりも兼ねて、フェルパーの監視についている。  
「理由がない、と言いますが、そう言えるのが信じられません。あのバハムーンは、同じ生徒を殺害したこともあり、ドワーフは小さな  
喧嘩を数多く起こしています。フェルパーに至っては、抜刀されたと訴える生徒が数多くいます。それで、理由がないと言えるのですか」  
「あなたの仲間を殺害したことに関しては、彼に謹慎を与えていますわ。ドワーフは、あなたが言うとおり小さな喧嘩で、あえて  
取り沙汰するほどのことでもありませんわ。フェルパーも抜刀するからこそ、常に三人のうち誰かが付き添っていますわ」  
「抜刀すること、それ自体が規則に違反しているではないですか。喧嘩もそうです。それも一度や二度ならまだしも、数え切れないほど  
それを起こしていて、なぜ何の処罰もなしなのです。それはあなた達が、自分の利益を守りたいがためではないのですか」  
ノームだけあって、彼女は理詰めでエルフを追い込んでいく。だが、エルフは毅然とした態度を崩さない。  
「あなたは、一体何のためにそれを訴えるんですの?学園のためでして?それとも、彼等が気に入らないからでして?あるいは、  
その彼等と一緒にいるわたくし達が気に入らないからですの?」  
「学園のためです。彼女達のような者を野放しにしていては、他の者に示しがつきません」  
「そう、規則は厳正に守られるべきだ、と言うんですのね?」  
ノームが頷くと、エルフは僅かに笑った。  
「では、まずあなたの仲間のバハムーンから退学の具申をしましょう」  
途端に、風紀委員室がどよめいた。  
「なぜ、そうなるのです」  
普段無表情な顔に驚きの表情を浮かべ、ノームは尋ねた。  
 
「彼女は、以前こちらのバハムーンに、喧嘩を仕掛けていますわ。しかも抜刀までして、明らかに殺意を持った攻撃を仕掛けていますわ。  
そんな問題を起こしたのなら、退学も当然ですわね」  
「し、しかしそれとこれとは…」  
「もちろん、彼を一人にしてしまったわたくしの責任もありますわ。だから、彼女を退学にしてから、わたくしも委員長をやめますわ。  
それで満足でして?」  
「いえ……ですから、その退学は…」  
「厳正に規則を守れば、そうなりますわ。それはあなたが望んだことでなくって?」  
「………」  
思わぬ反撃に、ノームは黙ってしまった。他の委員も、固唾を飲んで成り行きを見守っている。  
「自分の仲間だけは特別。でも気に入らない相手は退学にするべき。あなたが言っているのは、そういうことですわ」  
ノームの目をまっすぐに見据え、エルフははっきりと言い放った。  
「あなた、恥を知りなさい」  
「っ…」  
その言葉に、ノームは立ち竦んだ。そんな彼女を見据えたまま、エルフは続ける。  
「規則は厳格に適用されるべき……それは、わたくしもそう思いますわ。でも、時としてそれは、道理に適わないこともありますわ。  
先に仕掛けたのは、彼女。でも、返り討ちにあって殺された。そんな彼女に罰則を与えるなど、人の道に外れていると思いませんこと?」  
「……はい…」  
「それに対して、彼は正当防衛とも言えますわ。でも、謹慎を受けている。殺されそうになったのは、彼も同じですのよ」  
「で、ですが……喧嘩両成敗、というのが規則…」  
「でしたら、今からでも彼女に謹慎を課しまして?」  
「は……いえ…」  
すっかり委縮してしまったノームに、エルフは毅然と続ける。  
「あなたのやっていることは、言いがかりをつけて嫌いな相手を陥れようとしているだけですわ。もちろん、そのすべてが言いがかりと  
切り捨てられるものではないけれど、厳正に処分を科せと言いながら、相手によって処分が違うというのはいただけませんわね」  
「………」  
「あなたは、善の思考をしますわね。でも、善も過ぎれば悪と同じでしてよ。規則は厳正中立であるべき。仲間の恨みを、規則を使って  
晴らそうなど、言語道断ですわ。それこそ、悪の所業ですわよ」  
ノームは無表情に戻っていたが、唇をきつく噛み締め、震えるほどに拳を握っていた。  
「もちろん、彼等に何の問題もないとは、わたくし達だって思っていませんわ。でも、四六時中、彼等を見張るなどということは  
できないというのも、わかってくれますわね?わたくしはできうる限り、同じ学園の生徒を退学になどしたくありませんわ」  
それで、話は終わりだった。以降は大した議題もなく、会議はこれといったこともなく終わった。  
 
それぞれが、教室や寮に戻っていく。セレスティアは他の委員がいなくなったのを見計らって、エルフにクッキーを差し出した。  
「お疲れ様、委員長」  
「ええ、お疲れ様。いただいていいんですの?」  
「どうぞどうぞ。疲れた時には、甘いものが一番だからね」  
「ありがとう。では、いただきますわね」  
クッキーを半分ほど齧る。サクッと小気味良い音が鳴り、口の中にふわりと甘みが広がる。  
「紅茶もいるかい?」  
「あれば嬉しいですわね。でも、なければわざわざ淹れてもらうほどほどでもないですわ」  
「そうか、じゃあ紅茶はあとにしようか。……それにしても、委員長」  
「ん……んく。失礼、何ですの?」  
「さっきの、すごい力技だったねえ」  
そう言い、微笑むセレスティア。一瞬何のことか考え、エルフは笑った。  
「ああでもしなければ、納得させられませんわ」  
「いや、私感心したよ。もし危なくなったら、私が何とかしようと思ってたんだけど……委員長、強くなったよね」  
彼の言葉に、エルフは笑顔を返す。  
「嫌でも磨かれますわ。常に神経を削られる者と一緒にいれば」  
「ははは、いい砥石が三人もいるもんね」  
「いいえ、四人ですわ。あの問題児三人と、いつも魔が差す妖精が」  
「ああ、フェアリーね。でも、彼は彼でよくやってくれてるじゃない」  
「それと、神経を使うということは、また別ですわよ」  
「ま、それもそうかもね」  
二人は同時に笑った。一頻り笑ってから、エルフはちょっとだけ真面目な顔になる。  
「それでも、彼等は大切な仲間。それを失うわけには、いきませんわ」  
「……ああ、そうだね委員長。私も、そう思うよ」  
しばらく、二人は見つめ合った。そして同時に、からりと表情を変える。  
「ふう。クッキー、おいしかったですわ。紅茶、いただいてもよろしくて?」  
「いいよ。私もちょうど飲みたかったところだし。それじゃ、あとはのんびり、お茶の時間にしようか」  
お茶の用意をするセレスティア。机を片づけるエルフ。二人はやはり、とてもお似合いのカップルだった。  
 
それからしばらく後。フェアリーはフェルパーの監視をエルフに引き継ぐと、めぼしい装備でもないかと購買に来ていた。  
ここ最近はオーブの争奪戦が繰り広げられているため、購買に入る装備もなかなかいい物が多いのだ。彼等自身、それに参加も  
しており、忘却の迷宮では見事にオーブを奪取してみせた。だが、それ以外の場所は他の生徒に任せようという話になり、  
参加したのはその一ヶ所だけである。  
購買をふらふら飛び回っていると、その背中に声が掛けられた。  
「お、なあおい、ちょっといいか?」  
「ん?……おお、君は!」  
それは、入学直後にバハムーンと乱闘事件を起こしたヒューマンだった。彼等とはその後も、望む望まないにかかわらず、  
ちょくちょく関わりを持っている。  
「やー、オーブの方はどうだい!?いや、その前に元気だったかい!?君達の話、結構聞くけど活躍してるんだね!」  
多くのフェアリーの例に漏れず、彼もヒューマンは大好きだった。だが小さな者ならまだしも、クラッズサイズの彼に  
まとわりつくように飛ばれると、鬱陶しさを通り越して身の危険を感じる。  
「ああ、えっと……全部総括して『まあまあだ』って答えておくけど、とりあえず落ち着いて話そうか」  
「あー、ごめんごめん!魔が差した!で、何?何か聞きたいことでも?」  
笑顔で話すフェアリーに対し、ヒューマンは真面目な顔を向ける。  
「立ち話もなんだし……あ、いや、立ち話でいいか……とりあえず、率直に聞く。あんたさ、なんであんな奴等と一緒にいるんだ?」  
その質問に、フェアリーも表情を改めた。とはいえ、それは真面目な表情ではなく、少し困ったような笑顔である。  
「ああ、それか。魔が差した」  
「そんな理由かよ」  
「冗談だよ、魔が差した。真面目に答えると、少なくとも建前上、あの問題児の監視。僕個人は、それに便乗した成績アップも狙ってる。  
一応言っておくと、委員長と副委員長は違うからね。あの二人は真面目だから。ま、ギブアンドテイクってやつ」  
「あんた、正直だな……わからなくはねえけど。でも、おかげであんたらの評判まで、ずいぶんひどいことになってるぞ。  
それについては、何とも思わないのか?」  
「別に。言いたい奴には言わしとけばいいさ。体も張らずに、『あいつらだけいい思いしてずるい』なんて言う奴等、僕は別に、  
気にもならないね」  
「あいつに聞いた通りだな…」  
溜め息をつき、ヒューマンはフェアリーの顔を改めて見つめる。  
「体張ってるとは言うけどよ、言うほど大変か?」  
「バハムーンもドワーフも、僕は本来大っ嫌いなんだよ。おまけに、あの快楽殺人鬼の猫。全力で体張ってるよ。ほら、たとえばこれ」  
言いながら、フェアリーは服をはだけて見せた。そこには、以前フェルパーに刻まれた傷跡が、はっきりと残っていた。  
「うわ…」  
「君、言えば変わってくれるのかい?常に死の恐怖が付きまとって、大っ嫌いな種族と一緒に冒険する覚悟は?それに、  
もう乗り掛かった船だ。今更下りられるもんか。君はうちのバハムーンに色々と恨みがあるだろうけど、僕は君ほどには恨みもない。  
嫌いではあるけど、いい仲間だ。君のことは好きだけど、だからといって仲間のことをとやかく言われる筋合いはないな」  
一気にまくしたて、フェアリーは服のボタンを留め直す。ヒューマンはまだ何か言いたそうだったが、それ以上は何も言わなかった。  
「……ま、僕だって最初は、あんなの退学になればいいと思ったさ。でも、魔が差したのかな。今はもう、本当にいい仲間だよ。  
あのバハムーンとは、意外と趣味が合ったしね。ドワーフは喧嘩友達だし、フェルパーなんか慣れれば可愛いもんだよ」  
「……理解したくないな」  
「理解しなきゃ、やってられないよ。それと、旨みがなきゃ、ね。……話は、これで終わりかい?」  
もう話すこともなかった。お互いに理解し合えないということは、どちらも薄々感じていた。  
再び、それぞれの行動に戻る二人。彼等の道は、あまりにもはっきりと分かれていた。  
 
僅か一週間ちょっと。たったそれだけの時間であっても、時に大きな変化を引き起こすには十分な時間でもある。  
崩壊した校舎。荒れ果てた校庭。そこは辛うじて、拠点としての機能を残しただけの、まさに最後の砦だった。  
「……夢みたい、ですわね」  
ぽつんと呟くエルフに、セレスティアが答える。  
「どっちかと言うと、悪夢……だけどね」  
「ほんの数日前まで、わたくし達はただの学生でしたのに…」  
「今や戦争に参加する、兵士の一人、か」  
四つではオーブ争奪戦の決着がつかず、最後の五つ目のオーブ争奪戦。そのさなか、校長がダンテ先生に殺害されるという事件が  
起こった。その目撃者であるパーネ先生も重傷を負ったという話だったが、蓋を開けてみれば彼女が首謀者だった。  
異世界から来たというパーネとダンテ。ダンテとの戦いには勝利したものの、本性を現したパーネとは戦いと呼べるほどのことも  
起こらなかった。結局、二人を取り逃し、倒れた彼等は他の生徒と共に救出された。  
しかし、話はそこで終わらなかった。同じく、異世界から来たというニーナという女性から、その世界の危機を知らされた。そして、  
その危機に陥れている者の中に、ダンテとパーネがいると言うのだ。この世には彼等の住む世界と、ニーナの住む世界、そしてダンテや  
パーネの住む三つの世界があり、その中の一つが、全世界を手中に収めようと戦争を起こした、というのが今回の事件のあらましらしい。  
ニーナの住む世界は、制圧目前となっている。彼女は援軍を要請するために、こちらの世界へ来たのだと言った。  
話を聞く限り、こちらも無関係で済む話ではない。そのため、クロスティーニでは学園を挙げて援軍を送ることに決めた。  
単に学園の依頼として、または義憤に駆られ、あるいはより効率的に稼ぐため。多くの生徒が、通称『裏の世界』へ行くことを決めた。  
彼等も、その中に入っていた。と言うよりも、行かないわけにはいかなかった。飛び抜けた才能と実力を持ち、しかし多くの問題行動を  
咎められる彼等が行かないと言えば、たちまち非難に晒されるのは目に見えている。それどころか、ここぞとばかりに彼等を退学に  
追い込む動きがあっても、不思議ではない。風紀委員の三人としては、決して乗り気ではなかったが、状況は二の足を踏むことを  
許さなかった。  
そんな彼等とは別に、問題児三人組は裏の世界に来ることに関して、大いに乗り気であった。  
「雑魚どもに俺達の力を見せつける、いい機会だろ?それに、パーネには借りもある」  
バハムーンは、これを自分の力を見せつける、いい機会としか見ていなかった。そして、手も足も出せずに終わったパーネとの再戦を、  
強く望んでいた。  
「やっぱり、あいつが黒幕か。だろうと思ったんだよなあ。いいぜ、行ってやろうじゃねえか。あたしらをコケにした分、きっちり  
落とし前付けてやろうぜ。」  
だいぶ以前から、ドワーフはパーネがどこか怪しいと踏んでいたらしかった。彼女曰く、その疑念を決定的にしたのは人懐っこいパンナが  
彼女に懐かなかったことであり、「動物とガキは、本当の悪人には絶対懐かねえから」らしい。  
「いいね!行こうよ!戦争でしょ!?強いの、いっぱいだよね!?ね!?それでさそれでさ!全部殺していいんだよね!?  
あははっ!んなー!すっごく楽しみー!ねえねえ!行こうよ!絶対行こうよー!んにーぅ!」  
フェルパーは相変わらずである。ただただ純粋に強敵を殺すことを望み、それだけのためにクロスティーニに入学した彼女には、  
むしろ裏の世界の惨状はおあつらえむきとも言えた。それに、彼女は魔女の森に悪魔が現れるようになって以来、事あるごとにそこへ  
行こうと言い出すようになっていたので、風紀委員の三人としては裏の世界へ来る方がよほど楽だとも思えた。  
怪物に変えられたコッパの救出など、元の世界でもやるべきことは多かった。しかし、それはフェルパーがいる限り彼等が請け負うわけ  
にもいかず、また善の思考を持つ者が多い、何かと縁のあるヒューマンのパーティがそれを請け負ったことで、彼等は何の躊躇いもなく  
裏の世界へと踏み込んだ。  
 
元々がずば抜けた才能と実力を持つ者達である。彼等はたちまち裏世界の主力となり、瞬く間にマシュレニアの奪還を果たした。  
パルタクスに戻ると報告もそこそこに、休む間もなく今度はランツレートへと進攻する。  
魔法で敵の大半を眠らせ、残った敵を殲滅する。校舎内に侵入した彼等は、魔法剣士と召喚師、そして魔法使いの軍団と対峙した。  
「魔法使い軍団は僕に任せろ!ジェラート、オリーブ!雑魚を寄せ付けないでくれ!」  
「召喚師……相手にとって不足はありませんわね。おいでなさい、フェニックス!」  
「アスペラス!……三人とも、たまには力合わせてくれないかい!?爆裂拳とか、色々あるだろう!?」  
「うるせえ!あたしらに口出しすんな!」  
協調性のなさは相変わらずである。仲が良いことと、戦闘で協力するということは、彼等にとってまた別の話であるらしかった。  
今までに全員で力を合わせたことと言えば、二度目の実技試験で最終試練であるジョルジオに爆裂拳を放ったときぐらいである。  
あの時の攻撃は人生最大の一撃だったと、全員が後に語っている。  
「下郎め……踊り狂え!」  
その時、召喚師軍団の一人が魔法を放った。威力自体は大したこともなく、彼等は難なく耐えきったが、直後バハムーンの様子が  
おかしくなった。  
「ぐっ……うぅ…!?俺はっ…!?どっちが、敵…!?うぅ……うおおおぉぉぉ!!」  
雄叫びをあげながら、バハムーンはフェルパーに切りかかった。混乱していることは、誰の目にも明らかである。  
「んにっ!?今戦う!?あははーぁ!!いいけど、遅いよ!遅すぎるよっ!あはははー!」  
フェルパーは一歩間合いを詰め、彼の腕を膝と肘で挟み込み、その攻撃を止めた。だがそれだけに飽き足らず、もう片方の手で  
ゴルゴンナイフを振りかざすと、何の躊躇いもなしにその腕へ突き立てた。  
「ぐああっ!!」  
「あっははーぁ!!んにゃお!!」  
そのまま、掌までをざっくりと切り裂く。幸か不幸か、途端に石化の効果が発動し、バハムーンはただの石像と化した。  
「おいおい、てめえ!何してんだよ!?」  
「んなーん、私悪くないもんー。先に仕掛けたのあっちだもんー」  
「だからって、カウンターまでするかよ!?ったく、やっちまったもんはしょうがねえけどよ……こいつはほんと、抵抗力ねえよな」  
言いながら、ドワーフはダブルアックスを振り回し、魔法剣士軍団へ次々に致命傷を与えていく。  
「まったくフェルパー、余計な手間を……委員長、ヒールお願いできるかい!?」  
「わかってますわ!回復次第、終わらせますわよ!」  
セレスティアがリフレッシュを使い、直後にエルフがバハムーンの傷を癒す。仲間が揃ってしまえば、あとはもはや敵ではない。  
まさしく獣の如く荒れ狂う三人を相手に、無事でいられる相手など存在しない。人数差をものともせず、そのすべてを倒してしまうと、  
全員を縛りあげてから死なない程度に回復してやる。これで、ランツレート奪還も達成した。  
他にヤムハス襲撃などの任務もあったが、一行はユーノへの報告も兼ねて一度パルタクスへと戻った。  
それが、今から数時間前の話である。連戦でさすがに疲れたのか、問題児三人はさっさと学生寮へ戻っていた。フェアリーはオリーブや  
ジェラートと話をしている。  
 
そして、エルフとセレスティアは、寮の一室にいた。どちらが誘うでもなく、気付けば自然と同じ部屋へと向かっていたのだ。  
「……この世界の空も、わたくし達の世界の空も、あまり変わらないですわね」  
窓から空を見上げ、エルフがポツリと呟いた。既に辺りは暗く、空には星々が輝いている。  
「ああ、そうだねえ。意外と言えば、意外だね」  
「この空を見る限り……本当に、どの世界も繋がっているのだと、納得できますわね」  
太陽も、月も、星も、何一つ変わらない。そこだけを見るなら、まるで自分達の世界にいるかのようだった。  
だが、視線を下げれば崩壊した校舎が映る。久しぶりの勝利に、多少は活気が戻ったとはいえ、やはり生徒の数はまばらで、母校である  
クロスティーニとは雲泥の差である。ここはただの学園などではなく、戦場なのだ。  
しばらく窓の外を見つめ、不意にエルフが尋ねた。  
「副委員長」  
「ん?」  
「あの星々、いくつ見えまして?」  
彼女が指さした先を見ると、紺碧の夜空に小さな星々が集まっているのが見えた。  
「ああ、昴かい?んーと……5……いや、6個かな。もうちょっとあるかもしれないけど」  
「あら、意外と見えないんですのね。わたくしには、14の星が見えますわ」  
「そんなにあるのかい、あれ?委員長、目がいいんだねえ」  
「フェルパーなら、もっと見えるかもしれませんわね」  
少し笑い、エルフはセレスティアの手を取った。  
「あの星は、わたくし達によく似ていますわ」  
星を見つめながら、エルフは続ける。  
「暗く、闇に閉ざされた夜空……でも、そこここにまだ、光る星が残っている。消えない希望、消えない指標。この地に残された  
最後の砦に、多くの星々が集う。儚く輝く小さな星も、強く輝く大きな星も、みな仲間。わたくし達は、夜空に輝く六連星」  
「むつら…?」  
「昴の別名ですわ。わたくしのような種族でない者には、あの星は大体六つほどに見えるそうですわ」  
「なるほど。まさに、私達にそっくりだね。多くの星の中で、特に目立つ六つの星、か」  
セレスティアが言うと、エルフは笑った。  
「もっとも……本当に大きいのは、あの三人だけですけれど、ね」  
「そうかい?私は、私達自身もその資格があると思うけどね」  
優しい笑みを浮かべ、セレスティアはエルフの手を握り返す。  
「確かに、才能や実力じゃ、彼等には敵わないかもしれない。でも、彼等と共に、ここまでずっと歩いてきたことは変わらないよ」  
「副委員長…」  
「あの三人だけなら、今頃全員退学か、初めの森で永遠の眠りについてるよ。私達だけでも、きっと冴えないいち生徒として、今も  
クロスティーニにいただろうね。でも、実際は違う。私達六人は、六人だからこそ、ここまで来られたんだよ。違うかい?」  
優しく笑うセレスティアに、エルフも笑みを返した。  
「ふふ。あなたはやっぱり、うまいですわね」  
「お褒めに預かり、光栄だよ」  
おどけるセレスティア。そんな姿もまた、エルフの疲れた心を癒してくれる。どんな戦場にいようと、どんな地獄に行こうと、  
きっと彼は変わらずこうして、自分を気遣ってくれるのだろう。そう考えると、目の前の彼にたまらない愛おしさを感じる。  
 
重ねた手をそのままに、エルフはそっと席を立ち、セレスティアの前に歩み寄る。  
「副委員長……ううん、セレスティア」  
エルフの呼びかけに、セレスティアは優しい笑みを浮かべた。  
「わかったよ、エルフ」  
それだけで、二人の間には十分だった。セレスティアも席を立つと、エルフを優しく抱き寄せる。  
彼を見上げて微笑み、目を閉じるエルフ。そんな彼女に、セレスティアはそっと唇を重ねた。  
軽く唇を吸い、しばしその柔らかい感触を楽しむ。だがエルフは物足りなかったらしく、不満げに鼻を鳴らすと、舌で彼の舌先をつつく。  
それを受けて、セレスティアも積極的に舌を絡め始める。部屋の中に、二人の唾液の混じる音が淫靡に響く。  
長い長いキスの後、二人は唇を離し、お互いの顔を見つめあった。  
「君はいつも積極的だね」  
「あなただから、ですわ」  
再び、二人は唇を重ねる。強く抱き合い、舌を絡め、お互いの温もりを求めあう。  
僅かに唇が離れたとき、不意にセレスティアが頭を抱き寄せた。  
「あっ…!」  
それに抗い、もう一度キスを求めようとした瞬間、その長い耳をセレスティアの舌がつっとなぞった。  
「はぅ…!やっ…」  
途端に、エルフの体から力が抜け、耳がピクンと動く。刺激から逃れるように動く耳を、セレスティアは優しく舐め、時に甘く噛む。  
その度に、エルフは小さな声をあげ、熱い吐息を漏らす。  
「うぁ……耳は、あまり…!」  
「でも、君ここ好きだろ?」  
「それとこれとは、話が別…!んっ!」  
体ごと逃げようとするエルフを捕えたまま、セレスティアは執拗に彼女の耳を責める。最初はそれなりに本気だった抵抗も、徐々に力が  
抜けていき、抗議の声も荒い息遣いへと変わっていく。  
「んあぁ……セレス、ティア…!」  
だんだん力が入らなくなってきたのか、エルフの足は震え、すっかりセレスティアに体を預けている。その反応に気を良くし、なおも  
耳を責めていると、エルフが翼をくいくいと引っ張る。  
「ん、どうしたんだい?」  
羽根が抜けてないかと気にしつつ、セレスティアはそんな様子をおくびにも出さずに尋ねる。  
エルフは潤んだ目で彼を見上げると、小さな声で言った。  
「お願い……これ以上は、ベッドで……もっとゆっくり、感じたいの…」  
「ああ、ごめんごめん。つい夢中になっちゃって」  
そこでようやく、セレスティアはエルフを解放した。しかし解放されたものの、エルフは本当に腰が抜けてしまったらしく、その場に  
へたり込んでしまった。  
「おっと!エルフ、大丈夫かい?」  
「あ、足が……もう、いきなりあんなにするから…!」  
「ごめんごめん、そう怒らないで。きれいな顔が台無しだよ」  
言いながら、セレスティアはエルフを一度翼で優しく包むと、横抱きに抱きあげた。  
「……腕、震えてますわよ」  
「魔法使い学科だし、力には期待しないで」  
 
それでも何とかエルフをベッドに寝かせ、セレスティアは彼女の服に手を掛ける。同時にエルフも、彼の制服に手を掛けた。  
お互いの服の留め具を外し、全て外すと自らそれを脱ぎ捨てる。ズボンとスカートも同じようにして脱ぎ、下着も脱ぎ捨ててしまうと、  
二人はしばしの間、互いの体を見つめていた。  
「こうしてゆっくり、あなたの体を見るのは久しぶりですわね」  
エルフはそっと、セレスティアの胸に手を当て、それを腹へと滑らせていく。  
「特にこの一週間、余裕なかったからねえ。私も、君の体じっくり見るのは久しぶりかな」  
お返しというように、セレスティアも彼女の胸に手を這わせた。途端に、エルフの体がピクッと跳ねる。  
「あっ…」  
「だから、今日はゆっくり楽しもうか」  
触れた手に力を込め、ゆっくりと胸を揉みしだく。エルフは吐息を震わせ、時折堪えきれずに嬌声を漏らす。  
そんな彼女の姿を楽しみつつ、セレスティアはエルフの硬くなった乳首を指先で弄る。  
「はっ、ん…!」  
声を出すのが恥ずかしいのか、それとも癖になっているのか、エルフは口元を両手で覆い、必死に声を抑えている。あまり声を  
聞けないのは残念ではあったが、そのいじらしい姿は可愛く映る。  
うなじに舌を這わせる。エルフは小さく驚きの声をあげ、身を捩る。同時にへなっと垂れさがった耳を、セレスティアは再び口に含んだ。  
「やっ……セ、セレスティア、またっ…!あんっ!」  
耳と胸を同時に責められ、エルフの体が跳ね上がる。素直な反応を返す彼女に、セレスティアはより刺激を強める。  
「んあぁ…!や、ぁ…!セレスティア……ま、待って…!わたくしだけ、先にっ……あぅ!」  
渾身の力を込めて、エルフは何とかセレスティアを押し返す。無理矢理中断させられたセレスティアは不満そうだったが、  
それを口に出すようなことはなかった。  
「はぁ、はぁ……わたくしだって、あなたに、その……気持ちよくなって、ほしいですわ。だから……ね?」  
今度はエルフが、セレスティアに身を寄せた。そっと胸に手を当て、それを胸から腹へ、さらにその下へと滑らせていく。  
「うっ…」  
指先が、既に硬くなったモノの先端に触れた。思わず呻くと、エルフは嬉しそうに笑った。  
「ふふ。あなたももう、こんなになってたんですのね……こうして触れるのも、久しぶりですわ」  
指を絡めるようにそっと握り、ゆっくりと扱き始める。反応を探るように、あるいは焦らすように、エルフはゆっくりとしたペースを  
崩さない。  
「くぅ……エルフ、できればもう少し…」  
「わかってますわ。ふふ」  
セレスティアの言葉に、エルフは扱くペースを僅かに速める。同時に親指を離すと、指の腹で彼のモノの先端を撫でる。急に強くなった  
刺激に、セレスティアは思わず声をあげてしまう。  
「うあぁっ…!エルフ、急にそんな…!」  
そんな彼の様子を見て、エルフは妖艶に笑う。そして不意に手を止めると髪を掻き上げ、彼のモノを口に含んだ。  
「くぅ…!エ、エルフ…!」  
鈴口を舌先で刺激し、唾液をたっぷり絡めて全体を舐める。根元まで咥え込んでから強く吸いつき、そのままゆっくりと顔を上げ、  
先端まで抜いてから再び根元まで咥える。  
あまりに強い快感に、セレスティアは歯を食い縛り、シーツを強く握ってそれに耐える。その間にも、エルフはキスのような音を  
立てつつ、彼のモノを口で愛撫し続ける。  
 
喉の奥まで咥え込み、その状態で舌を動かし、拙いながらも全体を舐める。時には先端だけを咥え、唾液に濡れたモノを手で扱く。  
「くっ……あぁっ…!エルフ、もういいよ…!こ、これ以上は私が限界来る…!」  
相当に切羽詰まった声で言うと、セレスティアはエルフを押しのける。だが、エルフはそれを不満には思っていないようで、  
むしろ扇情的な笑みを浮かべた。  
「もう。そのまま口に出してくれてもよかったんですのよ?あなたのなら、全部飲んであげますわ」  
「いや、魅力的な言葉だけどさ。二度も三度も出してちゃ、明日に差し支えるよ」  
冗談めかして言いつつ、セレスティアは優しくエルフを押し倒す。エルフは期待に満ちた目で、彼をじっと見つめている。  
エルフの腹に手を置き、下へと滑らせる。指先が秘裂に触れると、くち、と小さな水音が鳴り、エルフが小さな声をあげる。  
「もう、こんなに濡れてるね」  
「んんっ……だって、早くあなたのが……欲しいもの」  
「ふふ。君って、ほんと二人だと積極的だよね」  
セレスティアは足を開かせると、その間に体を割り込ませた。そして自身のモノを、彼女の秘部に押し当てる。  
「……いくよ、エルフ」  
「うん……セレスティア、来て」  
グッと腰を突き出す。濡れそぼった秘裂は彼のモノをすんなりと受け入れ、そのまま一気に根元まで沈み込んでいった。  
「うああっ!ああ、あなたの、で……いっぱい…!」  
「エルフ、動くよ」  
言いながら、セレスティアは既に動き始めていた。その動きは激しく、遠慮というものの一切ない動きだった。  
「ああっ!んっ!あんっ!セ、セレスティアっ……激しっ……すぎ、ですわっ…!うああっ!」  
荒々しく突き上げられ、切れ切れの呼吸の合間に何とかそう抗議する。しかし、その顔に苦痛の表情はない。  
ベッドがガタガタと激しく揺れ、腰のぶつかり合う乾いた音と、結合部からの水音が部屋に響く。二人の体は熱気に赤く染まり、  
流れる汗がシーツに染み込んでいく。  
「ハアッ、ハアッ…!君の中、すごく熱い…!」  
「やぁぁ……そんなこと…!んあうっ!あっ!い、言わないでぇ…!」  
何かを求めるように、エルフが手を伸ばす。セレスティアはその手を握り、指を絡める。  
「ハアッ……エルフ、エルフ!」  
「セレスティア……ああっ!」  
絡めた手をベッドに押し付け、セレスティアはキスを求める。そんな彼に、エルフは貪るようなキスで応えた。  
さらに腰の動きが強まる。体の奥を荒々しく突き上げられ、欲望のままに求め合う快感に、エルフはあっという間に昇り詰めた。  
「ああああっ!セ、セレスティア!わたくし、もうっ……あっ!も、もうっ、イって……うあ、あああぁぁ!!」  
エルフの体が仰け反り、ガクガクと痙攣する。同時に彼のモノが強く締め付けられ、その刺激が今度はセレスティアを追い込んだ。  
「ぐっ……エルフ、そんなに締め付けたらっ……う、あっ……もう、出る!」  
一際強く腰を打ちつけ、一番奥まで突き入れると、セレスティアは思い切り精を放った。  
繋いだ手を強く握り合い、二人はしばらくその余韻に浸っていた。やがて、エルフの体がゆっくりと落ち、同時にセレスティアも  
大きく息をついた。  
 
「はぁ……はぁ……エルフ…」  
エルフが目を開けると、セレスティアの顔が間近に映る。そして彼の顔が、そっと近づく。  
「ん…」  
それに再び目を閉じて応える。ややあって、唇に柔らかい感触があった。  
唇で触れ合い、軽く吸い、二人はしばらくじゃれあうようなキスを続けた。やがて、どちらからともなく唇を離すと、お互いの顔を  
見つめ合う。  
「……エルフ、好きだよ」  
絡めていた指を優しく解くと、セレスティアはエルフの頭を抱き寄せた。  
「わたくしも愛してますわ、セレスティア…」  
翼をひと撫でし、彼の体を抱き締める。その温もりが、昂った心を優しく鎮めてくれる。  
不意に、耳に甘い刺激があり、エルフは小さく悲鳴を上げた。  
「やんっ……もう、セレスティア…!いたずらが過ぎますわよ」  
「ごめん、あんまり可愛くって。もうしないよ、だから怒らないで」  
そう言いつつも、再び耳に唇を寄せると、エルフはそれを察知したらしく、耳を垂らして逃げてしまう。  
取り繕うように、セレスティアはエルフの頭を優しく撫でる。彼女も別に怒ってはいないらしく、ぎゅっと抱き締めることで応えた。  
言葉より、行動より、何より確かな相手の温もり。それをお互いに強く感じながら、二人は抱き合ったまま、いつしか眠りについていた。  
 
翌朝、二人はいつもよりやや遅れながら、壊れかけた学食へやってきた。仲間は既に全員来ており、ドワーフとバハムーンは相変わらず  
一心不乱に食事をしている。  
「おはよう、フェアリー。待たせて悪かったですわね」  
「おお、委員長と副委員長。あの二人の食事が終わる前に来てくれて助かったよ」  
「君とあの二人、相性悪いもんねえ」  
二人の声に、フェルパーも振り向く。だが、彼女は二人を見ると、顔を真っ赤にして固まってしまった。  
「……フェルパー、どうしたんですの?」  
エルフが尋ねると、代わりにフェアリーが答えた。  
「あ〜……実はさ、ゆうべ二人んとこ行ったんだよ。フェルパーがどうしても何か狩りに行きたいって聞かないから。したらさ、  
部屋の前まで行ったら中の声が聞こえちゃってね…」  
一瞬その意味を考え、理解した途端に二人の顔も赤く染まる。  
「あ、ああ……タイミング悪いねえ…」  
「きゅ、急に来るからですわ!だって、その、わたくし達だって…!」  
そんな二人に、フェアリーは笑って答える。  
「ああいや、僕はなかなかラッキーだと思ったけどね。委員長、結構いい声で…」  
「……フェアリー」  
「おおっとぉ、聞かなかったことにしてくれよ。口が滑……魔が差しただけだって」  
「君はほんと、相変わらずだよねえ…」  
その時、ドワーフが顔をあげた。その口にはやはり、骨付きステーキの大きな骨が咥えられている。  
 
「お前も大変だな。そんな好き者の女と付き合ってるなんてよー」  
「だ、誰が好き者でして!?」  
「てめえだ、てめえ。お前等、しょっちゅうヤッてんじゃねえかよ。こっちの世界に来てまでとは、ほんと恐れ入るぜ」  
「うるさいですわ!す、好きな方と愛し合いたいと思うぐらい、変わったことではありませんわ!」  
「だぁから好き者だってんだよ。それにしたって、程度があるだろうがよ、程度が」  
ドワーフの言葉に、バハムーンが顔をあげた。  
「……お前も、結構求めてきてると思ったが?」  
「だっ……てめ、うるせえんだよっ!」  
体毛を膨らませながら、ドワーフはバハムーンの顔面に裏拳を叩きこんだ。  
「……あなたも、人のことは言えないみたいですわね。しかも、ただ快感を求めるだけのあなたは好き者どころか、さしずめ淫乱と  
呼ぶ方がよろしくて?」  
「うっぜえ!じゃあてめえはどういう違いがあるってんだよ!?事あるごとにヤッてるてめえだって、淫乱って言えるじゃねえか!」  
バン!と大きな音を立て、フェルパーが立ちあがった。顔は真っ赤に染まり、おまけに両手にはナイフが握られていた。  
「もう、やーっ!どうしてそういう話ばっかりするのー!?信じられないー!」  
「ちょっ……フェルパー、待て!ゴルゴンナイフは洒落にならないから!委員長もドワーフも、そんな話はよそでやってくれぇ!」  
「うぅ……俺はなぜ殴られたんだ…!?」  
「君は鈍いよ……そ、それより委員長、もうやめよう!フェルパーが危ないし、おまけにみんなこっち見てるし、私恥ずかしいから!」  
「このけだもの!あなたもヒューマンみたいに、盛りが治まらないんですのね!」  
「てめえこそ、エルフの癖にあたしらみたいな盛りがあるんだな!まったく、てめえとは仲良くなれそうだぜ!」  
「二人とも、やめろってばーっ!」  
世界が変わろうと、状況が変わろうと、何一つ変わらない彼等の姿。巨大な闇にも飲まれない、強い輝きを持つ六人。  
その光は、世界をあまねく照らすようなものではない。しかし、確かにそこにあるとわかるほどの、力強い光。  
闇に包まれたこの世界でこそ、彼等は強く輝いていた。まるで、自分の居場所を得たというかのように、強く強く光を放つ。  
その姿はまさしく、星に似ていた。闇の中でのみ人々を惹きつける、夜空に光る星々に。  
 

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