「はい、ミルクティー淹れましたよ〜」  
「ありがとう・・・・・・う〜ん、いっぱい買い物したから疲れたぁ」  
買ってきたものを床に置き、真っ先にベッドに突っ伏すディアボロス。2〜3回ベッドの上でゴロゴロと転がると、ルームメイトであり、  
一番の親友であるセレスティアの淹れてくれた紅茶を啜る。  
「ディア、いっぱい買ってたもんね」  
紅茶を啜りながら、戦利品をちらりと見やる。  
この二人の女子生徒は、つい先程まで買い物に出かけていた。巷で大人気のGJブランドの新作コスメを買いに行ったのである。  
「新作コスメも無事ゲットできたし、これはもう決戦は近い!って感じですね」  
「?!?!違うから!ただ、ほら、私たちGJブランド気に入ってるでしょ?だから新作も買いに行っただけで、別にダンテ先生に見てほしいとかそんなんじゃないから!」  
「うんうん、私は別にそんなことまで言ってないんだけどね。っていうか勝手に口走ってますよディア」  
頬を赤く染めて抱き枕を抱きしめているディアボロスを、可愛いなぁと思いながらクスクスと笑う。  
「セ・・・・・・セレスはヒュマ君と両想いだから笑っていられるんだっ!私の気持ちなんてわかってくれないんだっ!」  
「あ〜!そういうこと言います〜?」  
まぁ確かにヒューマンとセレスティアの場合、入学したその日にお互いが一目惚れであって交際しているのだが。  
このディアボロス。教室では割りとクールで凛としており、元々整った顔立ちを嫌味のない程度のナチュラルメイクを施し、背筋を伸ばして堂々と教室に入って来る様は、  
さながらカリスマモデルのようで、周囲の目を引くのに十分な存在である。  
隣を歩くセレスティアが可愛い系統で、ディアボロスは綺麗系統とすら言われており、種族関係なしで二人そろって男女共に人気のある生徒だ。  
 そんな彼女が唯一持ち前のカリスマ性を発揮できずにいるのが、担任教師のダンテである。  
彼を目の前にすると頬を僅かに赤らめ、立ち居スタイルもモデルスタイルから急にしおらしくなり、うまく振舞えない。そんな様子を見れば、誰もがわかってしまうだろう。  
実際、彼女に告白しようと思っていた男子生徒も、その様を見て諦めたくらいだ。中には諦めずに逆に燃えている者もいたが。  
「もっと自然と先生の傍にいたい・・・・・・ううん、自然じゃなくてもいい。しどろもどろになったっていい。ただ先生の傍にいる時間が、もっと欲しい・・・・・・」  
「・・・・・・そうですよね。好きな人とは傍に居たいですよね・・・・・・あっそうだ!」  
ディアボロスの打ち明け話を聞き入れていたセレスティアに、ピンと案が浮かぶ。  
「放課後に剣術指南を受けてみたらどうですか?」  
「剣術指南?」  
 
セレスティアはにっこりと微笑みながら言葉を続ける。  
「はい。実はヒュマ君、放課後にダンテ先生に剣術指南を(強制的に)受け(させられ)てるんですよ。何でも、剣の才に恵まれているのにも関わらず、  
普通科なのが納得できないらしくて。ディアも戦士科だから、きっとOKもらえますよ」  
「へぇ〜・・・・・・そうなの?・・・・・・セレス、なんで今まで黙ってたの?」  
「うっ!それは・・・・・そ、そうですよねぇ〜私の付き添いということで一緒に見学してれば・・・・・・気づきませんでした」  
実際は、ヒューマンがダンテのことを「鬼人」だの「もう疲れた」だの「身体が保たない」だのとブツブツ文句を言ってるのがあまりにも情けなく、  
逆に笑いがこみ上げてくるので、見られたくなかったからである。  
コホン、と咳払いをして改めて進める。  
「だから早速明日指南していただけるよう、今からお願いしに行きましょう!さっき買った戦利品を使って、ね?」  
「・・・・・・うん。そうだ、これ見てセレス」  
小さな紙袋の中から、桜色のリップグロスを取り出す。  
「わぁ・・・・・・綺麗な色ですね」  
「うん。色があんまり濃いと逆にケバイかなと思って。それでね、これ使うと意中の人をメロメロにするという効果があるらしくて・・・・・・」  
もちろん、ディアボロスも完全に信じているわけではない。商品に対する、所謂キャッチフレーズでしょと思っている。  
だが、作ったのがあのジョルジオ先生だと思うと、本当に何かしらの効果があるんじゃないかと期待してしまうのである。  
「あぁなるほど!早速試してみるん、です・・・・・・ね・・・・・・?」  
じーっと。  
ディアボロスがセレスティアを見る視線が痛い。  
「あ・・・・・・あの?」  
「セレス、貴女これ使って試してみて頂戴」  
「えぇぇぇぇぇ〜?!なんで私が!」  
「いいじゃないのよ!親友を助けると思って!ヒュマ君とは両想いなんだから、これ使ってチューの一つもぶちかましてきなさいっ」  
「ふ・・・・・・ふぇぇ・・・・・・・」  
まだ納得出来てないセレスティアに、テキパキと手際よくメイクを施していき、効果があるかどうかの実践してみることにした。  
 
「お〜いセレス」  
「あっヒュマ君!」  
リップグロスの実験台の二人が、学生寮の廊下に集まった。ディアボロスは、二人から少し離れた柱に隠れながら様子を見る。  
(ごめんねセレス・・・・・・付き合わせちゃって・・・・・・)  
胸中で親友に詫びながらも、効果があるかどうかが気になってしまう自分が少し嫌だった。  
「それで、用は何かな?」  
「うん、あのね・・・・・・」  
顔を赤らめながら、セレスティアはヒューマンの前でクルッと一回転し、ポーズを決める。「どう?似合います?」  
微笑んでいたヒューマンの顔が、ビシッと引きつった。  
(お・・・・・・おばか―――!!!それじゃあ一番何を見て欲しいかわからないでしょぉ―――!!!)  
現にヒューマンは、セレスティアの何が変わったのかまったくわからないでいるようだ。帽子か?!服装か?!アクセサリーか?!と、  
悩んでいるのがディアボロスの位置からも分かる。  
対してセレスティアは、気づいてくれると確信してるかのように期待に満ちた瞳だった。  
迂闊だった。セレスティアが少々天然だったことを、忘れていた。ディアボロスがそう思ったとき、ヒューマンがセレスティアの両肩に手を置き、  
真剣な瞳で答える。  
「うん。よく似合ってるよセレス」  
「あ・・・・・・うん・・・・・・えへ・・・・・・嬉しい」  
バカップルだ。  
気づいていないくせにごまかしたヒューマンはある意味すごいと思ったが。  
それでも、似合うと言われて嬉しそうに微笑むセレスティアを見ると、良かったねと言いたくなってしまうディアボロスがいた。  
ヒューマンと短く何かのやり取りを終えて別れると、セレスティアはディアボロスの元へと駆け寄ってきた。  
「似合うって言われました!」  
「そう。良かったわねセレス」  
効果があったかどうかの役には、まったく立たなかったけどね。  
はぁ、と重いため息をついて顔をしかめる。そんなディアボロスの様子などセレスティアは気にもせずに、  
「ディア、別の作戦も立てませんか?」  
「?何よ?」  
「モンスターに襲われるところを先生に助けてもらうという、古来より伝わるラブイベントです!」  
「あ、貴女、何気に楽しんでない?」  
「そんなことないですよ。恋愛成就のためですよ。ほら、もうモンスターの準備もしておきました」  
ニッコリと微笑み、遠くを指差す。指差す方角には、ヒューマンがモンスターの入ったゲージを運んでいた。  
(絶対、楽しんでる。)  
 
今度はセレスティアが柱の陰に隠れる。隣にはゲージを運んだついでに、とヒューマンが居た。  
(ディア嬢は何してるんだ?)  
元々整っている顔を、嫌味のない程度のナチュラルメイクを施したディアボロスは、さっきから廊下に立ったまま、俯いている。時折、キョロキョロと辺りを見回したりしていた。どこか寂しげなその瞳に、一瞬強く惹かれた。  
ヒューマンには目もくれずに、落ち着いたトーンでセレスティアは告げる。  
(シッ。恋する乙女は、片手でバハムーンをも嬲り殺せるのです)  
恐ろしいな。  
そう思った。例え話なんだろうが。そんなことを聞いてしまうと、さっきから辺りを見回す姿が、手頃なバハムーンの生徒を探してるかのように見えてきてしまった。  
(てかさ、ダンテ先生学生寮なんかに来んの?)  
(それは大丈夫。『ヒュマ君が話がしたいそうなので学生寮に来て欲しいと言ってました』って伝えときましたから)  
しれっとセレスティアは答えた。  
(おい!俺ダシにされてるよ!!別に話なんかねぇよぉぉ!!!!)  
ヒューマンが小声で絶叫してる中、例え話とはいえ、妙な疑惑を着せられた当のディアボロスは、軽く後悔していた。  
(何してるんだろ、私・・・・・・)  
先生の傍にいたい。それは間違いない。彼に対し、仄かな想いを抱いてるのは、何も自分だけではないのだ。油断していたら、それこそブーケトスを受け取るのは自分になる。それだけは断固拒否したい。  
でも。  
実際まともに会話ができるのだろうか?最後にまともに会話したのはいつだった?  
そんなことを考えていると、視界の端に、件の彼が入ってきた。  
ハッと顔を上げた。セレスティア達が隠れている反対側の廊下から、ダンテが歩いてきた。  
どうしよう。逃げたい。  
今なら不自然にならずに逃げられるだろう。別に学生寮に来て欲しいと直接頼んだわけではない。踵を返し、歩いてしまえばいい。  
でも、自分の我侭に振り回され、今でも後ろに控えているセレスティアは?彼の傍にいたいという、本当の自分の気持ちは?  
ええい。ままよ。  
意中の彼に、声をかけた。  
「ダンテ先生!」  
「?何だ」  
一際高い身長。鋭い眼光ながら、整った顔。ディアボロスの意中の彼が今、彼女の目の前にいる。  
足が震える。言葉が出ない。情けなくも、若干涙がこみ上げてきた。  
「どうした」  
「あっ・・・・・・」  
いけない。しっかりしなくては。このままでは彼を困らせてしまう。  
一度目を瞑り、深呼吸。  
(お願い神様、魔王様、ジョルジオ先生。私に力をください)  
パチッと目を開き、ダンテから一歩下がる。両手を後ろで組み、軽く前屈み。上目遣いで彼を見つめて唇に指を立て、言う。  
「これ新作のリップグロスなんです。どうです?似合ってますか?」  
 
わっと廊下を行き交う人たちがざわめいた。学園でもトップクラスに入るであろう容姿端麗なディアボロスのこの行動は、まるでドラマの1シーンのようであった。  
だが当の本人は、かなり緊張していた。顎に手を置くダンテにマジマジと見つめられ、ものすごく嬉しいが、ものすごく恥ずかしい。  
 そして口を開いた彼の一言がこれだった。  
「お前は前衛だったよな」  
「え?はい」  
「前衛に立つものが、そこまで身だしなみに気を使うのか?」  
甘い返事は最初から期待してなかったが、まさかこんな返事が返ってこようとは。飽きれを通り越して軽く笑いがこみ上げてくる。  
ディアボロスはダンテを指差し、若干詰め寄る。  
「前衛だからこそ、身だしなみに気を使うんですよ。だったら先生は、私に裸やジャージ姿で戦えとでも?」  
「そんなことは言ってない」  
ディアボロスの反論に、呆れたようにため息をつく。もう一度彼女を観察すると、あることに気づく。  
「そういえば前衛の割には傷がないな」  
「はい。有難いことに防具は優先的に私に買っていただいてもらってるんです。それにセレスが念入りにヒールをかけてくれますから」  
「そもそも、何故お前が前衛なんだ?」  
「あぁ・・・・・・それはですねぇ・・・・・・。入学以来組んでいるパーティがヒュマ君(普通科・前衛)セレス(魔法科・後衛)お兄ちゃん(忍者・後衛)だから、必然的に」  
「そうか、必然か」  
どうしても回復が間に合わなかったり、戦力不足だと思ったときはスポット参戦としてゲストを呼ぶが、基本的にはこの四人の仲良しメンバーである。また、ゲストが大抵賢者や魔法使いなどの後衛になるので、前衛が足りなくなるのである。  
でも・・・・・・と、胸の前で手を組みながら俯いて、打ち明ける。  
「私だって、好きで戦士をやっているんじゃないんですよ?」  
「・・・・・・・・・・・・」  
俯いたまま、打ち明ける。  
「本当は、私だって人形遣いとか、アイドルになりたかった・・・・・・」  
「・・・・・・フ・・・・・・」  
頭上から笑い声が聞こえた気がして、ハッと顔を上げると、腕組したまま顔を伏せて笑っているダンテがいた。  
「・・・・・・先生?・・・・・・笑いましたね?」  
「・・・・・・笑ってない」  
「い〜え!絶っ対!笑いました!!」  
「笑ってない」  
 
表情をいつもの無表情に戻して、きっぱりと断言した  
が。  
「・・・・・ははははは!!!!!」  
普段のダンテからは想像もつかないほど、大笑いされた。結構真面目で、恥ずかしい独白だったのに。  
「せっ・・・・・・せ〜ん〜せ〜い〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」  
顔を真っ赤にして、拳を振るディアボロス。その拳を余裕で手で押さえ回避するダンテ。  
「悪い、悪かった。だが・・・・・・」  
普段勇ましく剣を振るい、モンスターを一閃する彼女が後衛でウサギのぬいぐるみを振り回してる姿を想像すると。  
「・・・・・・・・・・・・」  
「ま・・・・・・まだ笑ってる!!!!!もう!何が可笑しいんですかっ!!!!」  
先生にだからこそ、打ち明けたことなのに。結構真面目で、恥ずかしい独白だったのに。  
でも。  
(・・・・・・あ・・・・・・なんかこれって、結構いい感じじゃない?)  
現にこのやり取りは、後方に控えているセレスティア達や廊下を行き交う生徒たちからは、じゃれあってるようにしか見えなかった。  
ダンテが見てない隙に、後方のセレスティアにジェスチャーで大きく合図する。  
(中止!作戦は、中止よ!!)  
(・・・・・・あれは、ディアからの作戦中止の合図・・・・・・)  
柱の陰に隠れながら、親友の作戦中止の合図にため息をつく。  
(んもぅ!!あんなにいい感じだったのに作戦中止ですか・・・・・・折角、モンスター捕まえたの・・・・・・に・・・・・・?ヒュマ君、ゲージの中身は?)  
(へ?)  
後ろを振り返ると、ゲージの扉が開いており、中身は空っぽだった。  
(やべッ!すぐ使うと思って鍵かけなかったんだ!!!てかアレじゃね?ディア嬢に真っ先に向かってるヤツ!!!!)  
(きゃぁぁぁぁぁ!!!ディア〜!!気づいて!!!)  
が、肝心のディアボロスはダンテの方を向いていたうえに、良い雰囲気に若干浮かれていたので背後にまで気が回らなかった。  
なので、笑っていたダンテが急に無表情になり剣を抜いたときは驚いてしまった。  
「えっ・・・・・・」  
後ろを振り向いたときには、もうすぐ目の前にモンスターはいた。ギュッと目を閉じると、ダンテの振るった剣によって倒されたモンスターの断末魔が聞こえた。  
「敵に背後を取られるな!!それで後衛を守れるのか!実戦では言い訳は通用しないぞ」  
「はっはい!すみません先生!!」  
さっきまでの良い雰囲気から一転してピリピリとした雰囲気になる。後方の位置からは会話が聞こえないが、流石に今のダンテの怒鳴った声はセレスティア達にも聞こえた。D  
(どうしよう私たちのせいで・・・・・・)  
セレスティアの不安を他所に、ダンテは踵を返して、その場を後にしようとする。  
こんな空気のまま、別れたくない!そう強く思ったディアボロスは、この土壇場で持ち前の頭脳とカリスマ性を発揮し、ある案が浮かぶ。  
ダンテの背中に、ディアボロスは思い切り抱きついた。  
「うわっ!お前・・・・・・!」  
「あ〜ら先生。敵に背後は取られちゃいけないんじゃなかったですか?」  
「敵・・・・・・って・・・・・・今の場合は」  
「『実戦では言い訳は通用しない』です」  
ダンテの背中から離れて真正面に向かい合い、先程自分が言われたことを言ってやる。二人はそのまま睨み合う。そして。  
「・・・・・・ははは・・・・・・」  
「・・・・・・ふふふ・・・・・・」  
もう一度、笑いあう。  
「どうやら私たちは、まだまだ修行が足りないみたいですね」  
「みたいだな」  
ディアボロスは前屈みになり、上目遣いで、本題を切り出す。  
「では、そんな私に明日の放課後、剣術指南をしていただけますか?」  
―――リップグロスの効果があったかどうかは分からなかったけれど、ディアボロスは自然とダンテといる時間を作ることが出来たのであった。  
 
夜の屋上。思いの外、夜風が気持ちいい。  
 夜風に吹かれながら、ディアボロスは月を見上げる。  
―――今日はいろいろあったな  
 昨日の放課後のやり取り。そのとき交わした約束を、先程果たしてきた。先程というよりは3時間ほど前だが。  
 残念ながら先約(=ヒューマン・強制)もあったので二人きりではなかったが、時には文字通り手を取り、密着して教えていただいたりもした。いろいろな意味で顔が火照ってしまったので、屋上に来たのである。  
「・・・・・・やっと、見つけた・・・・・・」  
 声の聞こえた方を振り向くと、ディアボロスの男性が屋上の入り口に立っていた。  
 セミロングの群青色の髪に、ややつり目の赤い瞳。マスクで覆われた顔は、夜ということもあって表情が分かりづらい。首に巻かれたマフラーが、夜風に吹かれてなびいている。  
「お兄ちゃん・・・・・・」  
 兄妹。なるほど、言われなくてもわかったであろう。同種族同士というだけでなく、男と女の違いはあるが、単純に二人はよく似ていた。  
「どうしたの?」  
「・・・・・・こんな時間になっても部屋に居ないと、セレスが心配してた」  
「あ・・・・・・そっか。ごめんね、心配かけちゃったね」  
一度ペコリと頭を下げると、両手を広げてくるりと一回転する。  
「お兄ちゃん。私、この学園に入ってよかった。お兄ちゃんが家を出て全寮制の学園に入ると聞いたときはすごく心配したのよ。お兄ちゃんは口数が少ないから。だから私がフォローしなきゃ、って思ってついてきたの。けどね・・・・・・」  
顔を赤らめて照れながら、けれどもハッキリとした口調で。  
「大切な人を見つけたよ、お兄ちゃん」  
「・・・・・・・・・・・・」  
ニッコリと満面の笑みの妹の頭を優しく撫でて、手を引く。  
「・・・・・・戻ろう。夜風の当たり過ぎは良くない」  
「あ、待ってお兄ちゃん。私まだここにいたい」  
「・・・・・・・・・・・・?」  
「大丈夫。あと30分くらいで戻るから」  
言われて少し考えた。が、一度言ったら聞かない娘だったと彼は知ってるので、もう一度頭を撫でて屋上を後にした。  
去り行く兄の背中を見送り、別段月が好きなわけではないのだが、もう一度月を見上げる。  
―――私はいつから先生のことが好きになったんだっけ  
ふと、そんなことを思った。入学したその日は、まだ好きじゃなかった。むしろ引いていた覚えすらある。だって自分のクラスの生徒を見て開口一番に言った言葉が「軍隊に入ったつもりでいろ」だかなんだかだったのよ?有り得ない、有り得ない。  
好きになる要素0かつマイナス要素100だったハズ。  
「・・・・・・絵になるな」  
「えっ・・・・・・」  
いつの間にか、ダンテが近くに居た。入り口付近とかならまだしも、ディアボロスから近くもないが、遠くもない距離だ。けれどもこの位置なら視界には入っていたはず。  
 
(まったく気づかなかった・・・・・・)  
そして思った。今のこの二人の距離が、まるで自分たちの関係の距離のようにも思える。ただの教師と生徒ではなく、けれども恋人でもなく。  
ただ他の生徒よりは仲が良いというだけ。この距離を越えて、親密な関係になりたい。  
「こんな時間にここで何をしているんだ?」  
「えと、月を、見てて」  
そういうとディアボロスは慌てて月を指差し、見上げる。ディアボロスの横に立ち、それに倣ってダンテも月を見上げる。  
寄り添っている、とまではいかない。若干空間がある。けれどもこの二人の間には誰も入り込めないだろう、という雰囲気がある。  
これで間に入ろうと思うものは、空気の読めない馬鹿だけであろう。  
―――こんなに近くに居るのに、この見えない距離はなんなの?  
不意に、思い出してしまった。  
ダンテに想いを寄せている、別の女の子。  
彼女は自分が悪いとはいえ、この屋上でダンテに見事に突き放された。  
それを目の前で見たディアボロスは、ダンテに対して酷いとも、ましてや彼女に対して突き放されて良かったとも思わなかった。  
ただただ、怖かった。  
いつか自分も、あんな風に突き放されてしまうのだろうか―――と。  
(いつか、私も―――)  
自然とディアボロスはダンテの腕に抱きついた。ダンテも一瞬驚いたが、無理に振りほどこうとしなかった。  
「先生、今日は剣術指南を教えていただいてありがとうございました」  
彼女の言葉に一瞬、目を見開いたが、ダンテは何も言わずに微笑を浮かべた。  
―――違う!  
確かに、今日のお礼も大事。でも、本当に伝えたいことは、もっと大切なことは、  
「・・・・・・先生」  
足が、震える。  
でもいつかは、伝えなければいけないことなんだから。  
顔を、上げて。  
「私、は、」  
腕を放して、正面に向き合う形になり、  
「私は、先生のことが好きです」  
気づけばダンテに抱きつき、唇を重ねていた。  
「なっ・・・・・・」  
突然の告白に動揺しているダンテを余所に、ディアボロスはまるで今まで溜めていた想いが溢れ出るかのように呟く。  
「先生、私は先生のことが好きです。何でなのかな。いつからだったのかな。分からない。思い出せない。でも、ずっと、伝えたかったんです。先生、先生・・・・・・」  
そのまま事切れたのか、ダンテに抱きついたまま、彼女は気を失い、眠りに付いた。  
「・・・・・・なんなんだ、一体・・・・・・」  
抱きついたままの彼女を支えながら、ダンテは深い溜息をついた。  
 
「ん・・・・・・」  
「あっ目、覚めました?」  
セレスティアが少々心配そうな表情でディアボロスを覗き見る。ディアボロスはゆっくりとベッドから起き上がり、周囲を見回す。  
(私と、セレスの部屋・・・・・・ええと・・・・・・)  
何があったんだっけ?と記憶を探る。確か放課後にヒュマ君と一緒に剣術指南を先生から受けて、屋上に行って、夜風に吹かれて・・・・・・  
「ディア!屋上で倒れたらしいですよ!!やっぱり剣術指南って大変でしたか?男子と女子じゃ体力が違いすぎるもんね・・・・・・あぁでも!ここまでダンテ先生が運んでくれたんですよ!  
横抱き、所謂お姫様抱っこです!ミニスカートだからパンチラしたかもしれないですが少なくとも先生には見えてな・・・・・・あれ?先生には見えていいのかな?むしろ他の生徒に見られた方がまずい?」  
セレスティアがいつもの無意識の天然が発動し、自身の頭の中でぐるぐると答えをめぐっているのを余所に、彼女の発言からディアボロスは先程のことの記憶を甦らす。  
(屋上・・・・・・そうだ、私は屋上に行って夜風に吹かれながら先生とお話して)  
 突然告白をして、勢いでキスをした挙句、気を失った・・・・・・?  
「・・・・・・きゃ―――――――!!!!!!!!!!!」  
「ひゃっ?!だ、大丈夫だよディア!!パンチラなんて誰も見てないですよきっと!」  
「いや、そんなパンチラ話じゃなくって・・・・・・あぁ、私、ダンテ先生のところに行かなきゃ!!今すぐ!!」  
「待ってくださいディア!」  
今にも部屋から飛び出そうと走りかけたディアボロスの腕を、セレスティアは慌てて掴む。  
「セレス!止めないで!」  
「行くのはいいんですけどお風呂に入ってから行きましょう。もう九時です。ついでに経緯なんかも聞かせてください」  
「・・・・・・・・・・・・」  
 
肩紐と胸元と裾の部分にひらひらのレースを使われた色違いのお揃いのネグリジェ(ちなみにセレスティアがピンクで、ディアボロスは水色)を着て、セレスティアはディアボロスの髪をドライヤーで乾かしながら話を纏める。  
「つまり、告白の返事を聞きに行くんですね?」  
「・・・・・・うん・・・・・・」  
本当は恥ずかしくて会いたくないけれど。それでも明日教室でいきなり会うと、絶対変な行動を取って、授業をサボりそう。クラス中のみんなにも笑われるような気がする。  
「ディアは思い立ったらまず行動!ですからね。そんなところも魅力的です。でも・・・・・・」  
カチンとドライヤーをOFFにし、時計を指差す。  
「何だかんだでもう十時越えてます。今から会いに行くのは警備が面倒というか、先生のいる寮も鍵がかかってるかもしれないし、それにネグリジェだし」  
「大丈夫!」  
すくっと立ち上がり、余裕に満ちた表情で、  
「忍者の妹、嘗めるんじゃないわよっ」  
「いえ、でも、ディア兄さんはこの学園に入ってから忍者になったんじゃ・・・・・・」  
と言ったが聞こえてないみたいだし、昨日まで消極的だった親友がやる気になってるのだから、いいかな、とセレスティアは思うことにした。  
「ただしっ!ちゃんとこの部屋に帰ってきてくださいね?そのまま先生の部屋に、と、泊まるのはナシです!(フラれたショックで)学園を抜け出して森とかに逃げ込むのもナシです!」  
「森?・・・・・・うん、わかった。・・・・・・」  
鏡で一度身だしなみをチェックする。流石にお風呂上りなのでメイクは落としてしまったが、保湿を保つために桜色のリップグロスだけつける。  
「じゃ、行ってくるね」  
「うん。行ってらっしゃい」  
 
肩にジャケットを羽織っただけのラフな格好でベッドに腰をかけ、ダンテは武器の手入れをしていた。頭の中では、屋上での突然の告白を思い出しながら。  
『私は、先生のことが好きです』  
気づいていた。  
彼女の自分に対する態度が他の者とは違うことは、気づいていた。けれどもそれは単純に他のクラスメイトよりは信頼を寄せられているというか、  
セレスティアを始めとする彼女のグループメンバーへ向ける好意と同等のものだと思っていたのだから。  
「・・・・・・・・・・・・」  
自分は、どうなのだろう。彼女からの突然の告白。嬉しいかと聞かれたら、・・・・・・嬉しい。それは間違いない。どんな形であれ、好意を向けられるのは嬉しいものだ。  
では、彼女の想いに応える事が出来るか?と聞かれたら、・・・・・・分からない。  
ダンテはディアボロスとの今までのやり取りを思い出してみて、あぁそうか、と納得した。  
自分に対する態度だけしおらしかったのも、放課後に剣術指南を受けたいといったのも、純粋に、好意からだったんだと今にして理解できた。  
その時。  
ダダダダダダダダ――――ッと廊下を勢いよく走る音が部屋の中まで聞こえてきた。  
そしてつい今まで考えていた件のディアボロスがいきなり、アポも取らず、ノックもせず、必死の形相で、しかもネグリジェ姿で部屋に入り込んで、抱きつかれた。  
「せっ、先生―――!!!!!!!!」  
「な、何だ?!」  
ディアボロスはうわーっと涙を流しながら、肩で大きく息をしていた。ブツブツと「ごめんなさい、ごめんなさい。忍者の妹とか言って調子に乗ってました」と呟きながら。  
夜で、ネグリジェで、涙を流す女。つまり。  
「・・・・・・強姦魔でも出たのか?!」  
「うっ・・・・・・はうぅ・・・・・・ち、違います」  
荒い息を整えて、ゆっくりと深呼吸をし、言う。  
「ダンテ先生のところの行こうと思ったら、意外と広くて、そもそも部屋分からなくて、扉が少し開いてる部屋を覗いたら、ジョルジオ先生が爽やかな汗を流しながらステッキで素振りしてるし、  
また別の部屋の扉が少し開いてたから覗いてみたら「この液体を入れれば・・・・・・フフフ、完成です」とか言いながらヴェーゼ先生が怪しげな薬作ってるし・・・・・・なんでみんなちゃんと扉閉めないの?!・・・・・・あ〜怖かった」  
一息に感情を捲くし立てたおかげで、ディアボロスは落ち着きを取り戻した。そして慌ててダンテから離れる。  
「あっごめんなさい!!えっと、私・・・・・・先生の気持ちが、知りたくて」  
自ら本題を切り出すディアボロス。誤魔化してもしょうがないと気持ちを割り切っていたのだ。  
「・・・・・・。俺は・・・・・・」  
「あっ!待って!私、セフレでもいい!!」  
 
瞬間、ビシッと頭を叩かれた。  
「あいたっ!!」  
「そういうこと言うな」  
うぅ〜と唸り、頭を押さえながらディアボロスはダンテを見つめる。  
「女の子叩くの、善くないです。古くから伝わる決まりごとです。ましてや、こっちに悪気がなかったにも関わらず・・・・・・」  
「ツッコミだ、ツッコミ」  
「うわー!なにその先生らしくない切り返しの仕方!」  
うーうーと文句を言うディアボロスを見ていると、自然と笑みがこぼれてくる。・・・・・・彼女とのこういうやり取りは、素直に楽しいと思う。  
その時の彼女の反応の一つ一つが、可愛いと思う。・・・・・・愛しいと思う。  
(でも、それでも俺は・・・・・・)  
人質にされている「大切なあの子」を救わなければ。囚われの身になっているあの子を措いて自分だけが幸せになるなんて、・・・・・・出来ない。  
『だから想いに応える事が出来ない』―――だからこのままの関係で十分に嬉しい。こうしてじゃれ合っているだけでダンテは嬉しい。  
けれどもディアボロスは違う。その距離を越えたがっている。  
考え込んでしまったダンテを見て、ディアボロスは表情を曇らせた。そしてベッドから立ち上がりペコリと頭を下げた。  
「先生、ごめんなさい・・・・・・勝手に告白したくせにそのうえ返事を今すぐ出せなんて、図々しいですよね。やっぱりいいです、ごめんなさい。忘れてください」  
踵を返してドアに向かうディアボロスの腕を、ダンテは掴む。振り向くディアボロスの瞳には涙が浮かんでいた。  
(馬鹿だな、俺は・・・・・・)  
ディアボロスの涙を見て思い知らされた。  
「あの子」もとても大切だけど、「この娘」もとても大切だ、と。  
そのまま、ごく自然な動きでディアボロスは抱きしめられる。  
「なっ?えっ、えぇ?な、なになになに?」  
「・・・・・・・・・・・・」  
「えっとえっとえぇと、あぁ、そっかぁ、油断した敵を窒息死させる練習ですね?いやいやいや、でもこれでは窒息死させるには優しすぎるというか、むしろ相手喜ぶんじゃないかなとか、あ、あはは」  
予想してなかった突然の行動に動揺し、しどろもどろに言葉を続ける。  
「せっ先生、離してください、でないと、でないと好きっていう意味で捉えちゃいますよ?」  
「そう捉えていい」  
「えっ・・・・・・」  
 
その言葉と、より強く抱きしめられたことによって、ディアボロスの動きが止まる。  
「・・・・・・嬉しいです、先生。同じ気持ちでいてくれるとは、まったく思ってなかったんです。他の生徒よりは近しい関係だとは思っていましたが、どこかお兄ちゃんが私に接するのと同じなような感じにも思えて――」  
瞬間、ディアボロスの鼓動がドクンと跳ねた。  
「お兄ちゃん」という単語を出したとき、一瞬ダンテの顔が曇った気がして、嫌な予感がして、・・・・・・そんな表情して欲しくなくて、だからディアボロスは動揺を隠し、何か話題がないかと思考をフル回転させていると、今更ながら気づいた。  
「うわっうわわ、先生、上半身、何も着てな、」  
「お前が飛び込んで抱きついてきてジャケット落ちたんだろ」  
「うぅ、すみません。・・・・・・てかそもそも、ちゃんと着てたら落ちなかったんじゃ」  
「自分の部屋でどんな格好でいても自分の勝手だ」  
「うぅぅ、そう、ですけど、うぅ〜・・・・・・」  
「お前もそんな格好で男の部屋に来るな」  
言われて改めて自分の格好を見る。淡いブルーの、普通に女の子らしいネグリジェだと思うんだけど・・・・・・確かに丈は短いけど。  
「変ですか?このネグリジェ。セレスと色違いのお揃いなんだけどな。レースがひらひらで可愛いのに」  
「そうじゃないだろ、この場合」  
ベッドに座り無邪気な笑顔を覗かせるディアボロスを見る限り、異性に寝巻きを見られることに何の抵抗もないものと思われる。  
「でもね、先生。セレスとお兄ちゃんに見られるのはいいんだけど、他の人、男性は嫌かなぁ。だから迅速にこの部屋に来たんですよ。先生は見られても全然構わないですからね」  
あぁ、もう。  
この女、男を無意識に誘ってるんじゃないだろうか。  
そう思うと、ダンテの腕が自然とディアボロスの身体に伸びる。が、ディアボロスは慌てて回避する。  
「わ、わわわ、ダメダメ!」  
「それでよくセフレでもいいと言えたもんだな」  
「うわー!なんか、なんかムカついた!・・・・・・けど、うん」  
自分から回避したくせに、ディアボロスは自らダンテに抱きついてきて、  
「初めてはホントに好きな人と、って・・・・・・決めてたから、だから」  
ディアボロスはダンテに爆弾を投げてきた。  
「先生、しましょ?・・・・・・私の初めて、貰ってくれます?」  
 
「・・・・・・・・・・・・」  
「・・・・・・・・・・・・」  
何か言って欲しい。そう思った。  
自分から誘うという行為がものすごく恥ずかしかった。だから、この、沈黙が辛い。  
スッと、ダンテの手がディアボロスの頬に触れる。  
「あっ・・・・・・」  
「・・・・・・そういえばこの間、聞いてきたよな」  
「え?」  
「唇」  
あぁ・・・・・・と思った。桜色のリップグロス。店先でその色合いとキャッチフレーズに惚れ、効果があるかどうか試してみて、効果があるかどうかという意味では失敗して。でも、それでも、自分的には幸せな結果になって――  
「似合ってる」  
「・・・・・・こんなときそんなこと言うの、反則です」  
そのまま、ごくごく自然な動きでキスをした。最初は軽く、そして徐々に深いキスへと変わる。ディアボロスの口内に、まるでそれ自体が生き物のように動くダンテの舌が唇を割って入ってきた。  
「んっ・・・・・・・!」  
屋上で自分からしたときもそうだったが、キスといえば唇が触れるだけのソフトなキスしか知らないディアボロスにとって、正直苦しい。が、そう思っていると、不意に銀色の糸を引いて唇が離れる。ディアボロスはキスをしただけで頬を紅潮させ、大きく息を吐いている。  
ダンテは彼女のネグリジェの肩紐をずらす。どうにも女子は寝る前はブラジャーを着けないらしく、胸がすぐに露出した。それほどボリューム感はないけど、ウエストが細いのでグラマーに見える。  
「率直に聞くと、これ何カップだ?」  
「率直過ぎます。反則です。・・・・・・セレスのほうが一つ大きいとだけ言っておきます」  
なんだそれ、とダンテは思ったが、無理に聞くこともないと思ったので、彼女をベッドに寝かせてそのまま乳房を揉んでみる。手の中の乳房は柔らかく暖かい。  
「ん・・・・・・あぁ・・・・・・はぅ」  
乳房にゆっくりと愛撫を加えていくと、いつの間にかピンク色の乳首も少しずつ頭をもたげ始めている。その部分を口に含んで吸ってやると、ディアボロスははしたなく悶えてしまった。乳輪の周りを舌でなぞり、少し焦らしてから乳首を舐め転がし始めた。  
敏感な乳首を丹念に舐めていくと、ディアボロスはベッドの上で恥ずかしそうに身を捩じらせたが、ダンテがネグリジェのスカート部分をめくった瞬間、  
「わ、わわ、やだっ・・・・・・先生、そこは、怖いです」  
ディアボロスの遠回しの拒否の言葉も構わず、ダンテはショーツの端に指を掛けるとそのまま一気に下ろした。見ると、ディアボロスのそこは、うっすらと湿り気を浴びている。  
 
ダンテはそこにむしゃぶりついた。濡れそぼった部分に唇を押し付け、愛液をすする。  
「あぁんっ!」  
生まれて初めてのその行為の恥ずかしさと快楽がごちゃ混ぜになり、ディアボロスはベッドの上で激しく身をよじらせた。  
「はぅ・・・・・・身体が、熱い・・・・・・」  
ダンテは舌を縦横無尽に動かしてディアボロスの秘所を舐めまくった。粘り気のある愛液が溢れ出してくる。  
「あ・・・・・・はぁん!っああ!・・・・・・先生、私、」  
「そろそろお前もこれが欲しいんだろ?」  
ダンテはクンニをやめると、反り返ったモノを取り出しディアボロスの濡れそぼった秘所にあてがった。  
「ま、待って待って先生――!!」  
ガバッと起き上がり、ディアボロスはダンテに抱きつく。  
「何だ?今更後戻りは出来な、」  
「そうじゃなくってぇ・・・・・・えぇと、その、私、普通の体位は嫌です!」  
「は?」  
「初めてが正常位ってなんだか普通過ぎるから、別の体位で・・・・・・あっ、この体勢で・・・・・・」  
今のこの体勢というと、対面座位である。ディアボロスは「お願いします」と言い、ダンテの膝から退こうとしない。  
ディアボロスはそそり立ったダンテのモノを怯えた表情で見つめていた。  
(怖い)  
単純にそう思った。けれども、これが、ディアボロス自身が越えたがっていた最後の距離。  
曖昧な関係だった二人の最後の線。  
深呼吸をして、もう一度お願いします、と言う。  
「先生、来てください。あ、でも、私がいいって言うまで絶対動かないでくださいね?」  
「・・・・・・注文が多いな」  
言葉とは裏腹に、ダンテは唇の端を歪めて彼女の頭を撫でる。そして再度、ディアボロスの秘所にモノをあてがい、今度は一気に突き進めていった。かなりの締め付けだったが、愛液が十分に溢れ出しているので挿入は意外とスムーズだった。  
「あっ!!んんっ・・・・・・!!」  
「大丈夫か?」  
ダンテの気遣いに、ディアボロスはこくん、と頷いてダンテの背中に回していた手に力を入れた。  
「思ったより、痛くないです。伊達に前衛じゃありません。けど、先生・・・・・・まだ動いちゃダメって言ったじゃないですかぁ・・・・・・!」  
ディアボロスがいいと言うまで動くな、という約束を無視し、荒々しいピストン運動を開始していたのである。内部の締め付けに負けないようにしながら、何度も打ち込む。A  
「やっ!あぁん!あっ、あっ・・・・・・・」  
ディアボロスの秘所は最高だった。腰を引くと秘肉がモノに絡みついてくる。そして思い切り奥まで突くと、ギュッと締まる。  
「あんっ、あぁ!す、凄い・・・・・・」  
ダンテは腰の動きにさまざまなバリエーションを加えながら彼女の秘所を責め立てた。  
ディアボロスは過敏な秘肉をモノでこすりまくられ、もう甘い声を漏らし、彼にしがみついているしかなかった。  
ピストン運動のスピードが速まるにつれ、腰が止まらなくなり、ダンテ自身も急激に限界へと追いやられてしまった。  
「あああぁ・・・・・・!!私、私もうダメです・・・・・・!あっ、あぁぁ!!!」  
ディアボロスはそう絶叫しながら身体を仰け反らせた。ディアボロスが頂点に達した直後に、ダンテも彼女の中にそのまま全てを放出した。  
「はぁ・・・・・・あぁ・・・・・・熱いよ先生」  
二人は繋がったまま、そっとキスをした。唇が触れるだけの、ソフトなキス。  
それは二人が曖昧な距離を越えて恋人同士になり初めて交わす、幸せなキスだった。  
 
行為が終わって。しばらくはベッドの中で抱き合っていたが、ディアボロスは立ち上がりネグリジェを整える。  
「戻るのか?」  
「一緒にいたいんですけど、部屋で待っている娘がいるので」  
部屋の扉を開けると、流石に夜なだけあって暗い。ディアボロスが軽く怯んだのをダンテは見逃さなかった。  
「・・・・・・部屋まで送るか?」  
「だ、大丈夫です。誰かに見つかったら面倒なことになりそうだし。それにっ」  
ビシッと人差し指を立てて、  
「忍者の妹嘗めるなよ、です!」  
あぁ、そういえばなんか言ってたなーと思った。確かこの部屋に入った瞬間にその肩書きを物凄く懺悔してたような。  
「それじゃあ先生、おやすみなさい」  
「ああ。・・・・・・」  
ディアボロスが、目を瞑り背伸びをして唇を寄せてきた。  
少し屈んで、ダンテは唇を重ねた。  
 
 
「ディ〜〜〜〜ア〜〜〜〜!!!!」  
「セレス・・・・・・」  
無事に部屋に帰還できたディアボロスを見るなり、セレスティアは怒りに震え、だが夜中なので小声で説教を始めた。  
「まったく!心配したんですからねっ?!なかなか帰ってこないし、ホントに森にでも逃げ込んだのかと思って眠れなくて・・・・・・」  
「森?でも・・・・・・うん。ごめんね。それから待っててくれてありがとセレス。あのね、私ね・・・・・・」  
そのまま手を繋いで一緒のベッドに入り、全てを打ち明ける。  
惚気話にしか聞こえないというのにも関わらず、まるで自分のことのようにセレスティアは良かったね、と満面の笑みで話を聞く。そのまま語っている間にいつのまにか二人は眠ってしまった。とても幸せな気分で眠ることが出来たであろう。  
 
――この後、文化祭や実技試験などの学生らしいイベントがあり、ドラゴンオーブ探索の課題を乗り越えた後、結ばれたはずの二人が長い間離れる運命になることは、まだ誰も知らない。  
 
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!