空への門にある安宿の一室に、一人のディアボロスが住み着いている。彼はパルタクス学園の制服に身を包んではいるが、決して武器をとり地下道に出掛けることはしない。そもそも彼には共に探索に行くべき仲間がいない。  
 冒険者学校の上位校たるゼイフェア学園が出来て久しいが、未だラーク地下道を踏破できる者は多くない。空への門に辿り着いた者ならば、彼を見付けることは容易だった。  
 錬金術士である彼は、日がな一日部屋にこもってなにやらしているらしい。彼が姿を見せるのは週に一度ほど、宿の主人に色をつけた宿賃を払うときと、幾つかの武器を適当に売り買いして金を稼ぐときだけである。  
 彼に用がある者はそのときを待ってつかまえるか、無視されるのを覚悟で部屋まで訪ねていく。パルタクス学園の制服を着たヒューマンの男子生徒は後者であった。  
 ディアボロスが空への門に留まってどれくらい経ったかわからない。宿の主人さえ寄り付かなくなった部屋のドアを、軽くノックする。その日は機嫌が良かったらしく、返事はすぐに帰ってきた。  
「……なんだよ、うるせえな」  
 立て付けの悪いドアが薄く開き、途端に鼻をつく異臭の中からディアボロスの赤い目がのぞいた。ヒューマンは顔をしかめそうになるのをなんとかこらえ、精一杯の愛想笑いを浮かべる。  
 充血した真っ赤な目はヒューマンをしばらく眺めたあと、何かを思い出したように「ああ」と言ってドアを開けた。  
「お前さん、いつもの……ああ、とりにきたのか。出来てるよ、入りな」  
 どこか虚ろにそう言って、ディアボロスはドアを開ける。生物が腐ったような異臭は彼自身ではなく、部屋の奥にある机の上からしていた。  
 魔術魔法の炎に炙られてじわじわと焦げているよくわからない動物のよくわからない中身からは必死に目をそらして、ヒューマンはディアボロスに小さな袋を差し出した。ディアボロスはそれを受け取ると中身も確認せずに適当なところに放った。  
 棚から薄い桜色の瓶を取り出し、ヒューマンに投げて寄越す。ヒューマンは大事そうにそれを受け取り、ディアボロスにまた愛想笑いを送る。  
「へへ、ありがとな」  
「しかし、なんでまあ……そんなもんが欲しいかねえ」  
「金は払ったんだ、関係無いだろ。……まあ、お前には説明したってわからないかも知れないけどな」  
 
 そう言うとヒューマンは瓶を本当に大事そうに懐にしまい、そそくさと部屋を出ていった。部屋の不気味な雰囲気に耐えられなかったのもあるのだろうが、痛い腹を探られる前に帰りたかったのだろう。  
「下衆の考えなんてわかりたくもねえよ…」  
 ディアボロスはため息混じりにぼそりと呟くと、薄く埃の積もっているベッドに寝転んだ。数週間ぶりに横になったベッドは、相変わらずギシギシとうるさかった。  
 ゆっくり目を閉じて、今しがたディアボロスの薬を手に嬉しそうにほくそ笑んだヒューマンの顔を思い出す。何度かディアボロスのもとを訪ねているが、そのペースが早くなっているように思う。  
「ピクシーの秘薬の、二十番目…。何であんなもん作っちまったんだろうなあ」  
 彼に渡したのは強い幻覚作用と強烈な依存性のある薬だった。少しだけ良心が痛んだが、知ったことではないと必死に否定する。  
 彼のもとに訪ねる者の多くがそういった薬を求めてくる。何に使うのか想像したくもないが、強い催眠作用のある媚薬も売れ筋商品のひとつだ。  
 ……一体いつからこうなってしまったのか。  
 ディアボロスは重苦しいため息をひとつついて、ゆっくりと眠りに落ちていった。せめて夢の中でくらいは、ただ幸せだったあの頃が思い出せるような気がしたからだ。  
 
 突然のフェルパーの言葉に、ディアボロスはただ目を丸くした。  
「何言ってんの、お前」  
 呆れたようなディアボロスの一言に、恥ずかしそうに尻尾を揺らしていたフェルパーが泣きそうな表情に変わった。ディアボロスはフェルパーの言葉が信じられないと言ったように、首を横に振る。  
「え、バハムーン…?無理だろ、無理無理」  
「なんでだよっ!そりゃ、俺は彼女よりちょっとひ弱かも知れないけどさあ…」  
「仮にも戦士が僧侶よりひ弱って……いや、まあ、それは仕方ないことだけどさ」  
 そうじゃなくて、とディアボロスは食堂の向こうの机で道具を鑑定しているパーティの女子たちを見る。司祭のノームが淡々と鑑定をし、その結果にドワーフとバハムーンが一喜一憂している。ふとノームの手が止まり、暗い表情でそっぽを向いた。  
 すると待ってましたとばかりにバハムーンがノームに抱き付く。豊満な胸にノームの頭を抱き、ぐいぐいと押し付ける。  
「むぎゅ」  
「おー、よしよし。ほぉら、お姉さまの胸でお泣き」  
「ちょっ…。バハムーン、苦しいですって…」  
 
 普通にリフィアを使えば良いものを、バハムーンはわざわざノームに過剰なスキンシップをしている。それも、今日その場かぎりの冗談ではなく、毎度のことだから始末が悪いというものだ。  
 ディアボロスはフェルパーに視線を戻し、大袈裟に肩をすくめてみせた。  
「なんつーか、百合ってーの?そんな感じするし、相手にもされないんじゃねえか?」  
「そ、そんなこと…」  
 精一杯否定の言葉を呟くが、フェルパーは次第に目を泳がせ、耳を倒し、力なく肩を落としてしょんぼりと項垂れてしまった。ディアボロスが言い過ぎたかなとちょっと良心を痛めていると、それまで黙々とアイスクリームを食べていたフェアリーが口を挟んできた。  
「良いじゃないか、とにかく告白しちゃいなよ。当たって砕けろ、ってね」  
「え、ちょ、結局砕けるのかよ…」  
「それはまあ、言葉のアヤってやつさ。ボクは大穴のうまくいく方に賭けるね」  
「じゃあ、俺は無難に玉砕に賭ける。ホットケーキ一週間だからな」  
「おい、俺で遊ぶなよっ!……くそ、お前らに相談した俺が馬鹿だった…!!」  
 ディアボロスとフェアリーは顔を見合わせ、心から楽しそうに笑い合った。フェルパーは怒ったように拳を振りかざしているが、しっかりにやけ顔である。  
 そんな男子三人を眺めて、バハムーンは呆れたように目を細めた。  
「何してんだい、あの馬鹿どもは…」  
「あはは、またアホなことで喧嘩にならなきゃ良いけどねー」  
「うーん。仲良きことは美しきかな、ですねえ……む、鉄くずです」  
 女子三人の生ぬるい視線など気付かずに、ディアボロスたちは実に楽しそうにじゃれあっている。  
 
「そんなことがあったんですか」  
「ん、つくづくあいつも苦労性だよなあ」  
「ふふ、そうでしょうか?」  
 ノームの鑑定が終わると一行はだらだらと解散し、それぞれ自分の部屋に戻っていった。ディアボロスはノームを部屋に招き、久しぶりに二人きりの時間を過ごしている。この二人が恋仲であることは、パーティの者たちはまだ気付いていないようだった。  
 ディアボロスは先ほどのフェルパーの独白を暴露しながら、鑑定で疲れたであろうノームに飲み物を用意していた。錬金術の実験用の器具やらに紛れて解りづらいが、ノームのリクエストにより本格的なコーヒーメーカーがある。  
 
 ノームにミルクを少しだけ入れたコーヒーを手渡し、自分のにはミルクも砂糖もどっさり入れる。コーヒーにうるさいノームはそれを見て今日もちょっと眉を潜めた。  
「そんなにしたら、コーヒーじゃなくなっちゃいますよ」  
「良いじゃん、甘いのが好きなんだから。タデ食う虫も好き好きって言うだろ?」  
「使い方が違いますー」  
 ノームは不満そうに唇を尖らせて、自分のコーヒーを一口飲んだ。コーヒーの味は気に入ったのか、拗ねたような顔を僅かに綻ばせる。  
 ディアボロスはそんなノームに背中を向けて、機材をいくつか引っ張り出して何かを作り始める。  
「そういえば、その、タデってあるだろ」  
「え?ええ、ありますね」  
「あれ、なんか酸っぱいんだぜ」  
「食べたんですか…」  
「だって気になるじゃん。なんか、渋味と酸味のような……っわ!」  
 ふたつの無色透明な液体を混ぜると、もふんと勢い良く青色の煙があがった。慌ててもうひとつの液体を注ぐと、煙はすぅっと消え失せる。  
 ノームはその背中を眺めて、美味しいコーヒーを楽しんでいた。ディアボロスはそんな彼女の視線を愛しく感じながら、楽しそうに何かを作っている。  
 しばらく何やらやったあと、気が済んだのか突然手を止めてノームに向き直った。出来たばかりの薬が入ったビーカーを軽く振って、ちょっと誇らしそうにノームに見せる。  
「それはさておき、今日はこんなのを作ってみましたっ」  
「……何ですか?」  
「さあ、何でしょうね」  
 ディアボロスはビーカーに口をつけ、薬を口に含んだ。ノームに歩み寄り、顎をつかんで唇を重ねる。  
 口移しで薬を半分ほどをノームに飲ませ、残りは自分で飲み込むと唇を離す。ノームは渋い顔で首を傾げ、胡散臭いものでも見るような目でディアボロスを睨んだ。  
「味が良くありません」  
「そりゃ仕方ない。良薬口に苦し、ってな」  
「それで、その良薬の効果は……んむっ」  
 説明を面倒くさがったディアボロスは、とりあえずノームの唇をふさいだ。舌を絡めると、微かにコーヒーの味がした。  
 はじめは抵抗するようにディアボロスの舌を押し返していたノームも、次第に積極的にディアボロスの舌に絡み付いてくる。時折こぼすため息のような吐息が、熱を帯びてきた。  
 
 やがてノームは甘えるようにディアボロスの首に腕を回し、ねだるような目で見上げてくる。ディアボロスの方も込み上げるノームに触れたいという衝動をなんとか抑えながら、ノームとのキスに専念した。  
 二人がようやく唇を離した時には、飲みかけのコーヒーはすっかり冷めてしまっていた。ノームはどこかトロンとした目付きで、手を伸ばしてこないディアボロスを批難がましく見上げ唇を尖らせる。  
「……意地悪しないでくださいよ」  
「いや、俺も我慢してるんだ」  
 そう言って再び唇を合わせる。次第にノームの様子に落ち着きがなくなり、もどかしそうにディアボロスに身体を密着させてくる。ディアボロスの首に回していた腕が腰におりてきて、熱に浮かされたような目でディアボロスを見ていた。  
 ディアボロスもノームを抱きしめてそのまま押し倒したい思いをなんとか押し留めている。ノームは鼻にかかったような吐息を漏らして、ディアボロスに身体を擦り寄せた。  
 遂にノームが我慢の限界を迎えたのか、慣れない手付きでディアボロスの制服の前を開ける。前衛と比べると貧相だがそれなりに筋肉のついた胸板をまさぐり、ゆっくりと手を下におろしていく。  
 既にテントを張っているそこを軽く撫で、やはり慣れない手付きでベルトを外し、ズボンを下着ごと下ろしたところで唇を離した。ひざまづいてディアボロスのそれを口に含もうとしたノームを、ディアボロスは慌てて止める。  
「ストップ。待て。ちょっとかなり惜しいけど、それはまた今度…」  
「もうっ、ディアボロスの意地悪!」  
「いや、だから俺もかなり我慢してるんだって。ノーム、続きはベッドで、な?」  
 怒ったように顔をしかめたノームだったが、ディアボロスの言葉に嬉しそうに服を脱いでベッドに入った。普段なら恥ずかしがって絶対にしないであろうノームの態度に、ディアボロスは一人納得したように唸る。  
 ともあれディアボロスも我慢の限界だったので、服を脱ぎ散らかしてベッドにあがり、横たわっていたノームに覆い被さった。ノームの身体は人に似せて作られた人形らしいのだが、こうして裸になって抱き合っても信じられないほど精巧である。  
 期待に満ちた目で見上げてくるノームとキスをしながら秘所に指を這わせると、そこは既に蕩けたように粘液で濡れていた。  
 
 そこは本来ならばノーム同士での生殖には必要のない器官らしいのだが、他種族と交流を持つようになった長い歴史の中で自然と依り代に備え付けられたらしい。  
 以前、好奇心から依り代の詳しい仕組みをノームに聞いたのだが、錬金術士であるディアボロスにさえよくわからなかった。  
 とりあえずノームの身体は依り代といっても他の種族の女の子と何も変わらない。一般的な女の子と同じように乱暴にしてしまえば痛みを感じるため、ディアボロスはノームのそこがしっかり濡れているのを念入りに確かめる。  
 秘裂を優しく開き、そっと指をあてる。くちゅ、と小さな音と共に、吸い込まれるように指が第一間接まで沈んでいった。その瞬間、ノームの身体がピクンと跳ねる。  
「あっ……ディアボロス…」  
「すげえ、もうこんなになってる」  
「ディアボロスが……変なの、飲ませるから…っ」  
「……もう良いよな?」  
 こくんと頷いたノームの足を大きく開かせ、限界まで張り詰めている自身のモノをあてがう。ノームの期待と不安のない交ぜになった目をのぞきこみながら、ゆっくり腰を突き出した。  
 先端が埋まったところで、ノームの腰を掴んで一気に根本まで突き入れる。ノームの背中が弓なりに反り、ディアボロスもまたきつく目を閉じて呻き声をあげた。  
「あ、ああ……ディアボロス…っ!!」  
「ぐっ、ノーム…!動くぞ…!」  
 ディアボロスは荒い息が整いもしないまま、ノームの返事も待たずに腰を動かす。肌のぶつかり合う音に合わせてベッドがギシギシと音を立て、結合部からは水の弾けるような音が響いた。  
 ノームの中はディアボロスの動きに合わせるように絡み付いてくる。もとよりディアボロスのそれに対してかなり狭いのだが、更にぎゅうぎゅうと締め付けているので、ディアボロスは絞りとられるような錯覚すらおぼえた。  
「はあっ、はあっ……ノームっ、いつもより……締まる…っ」  
「ディアボロス……んんっ!ディ……あ、ああっ…!」  
 自ら調合した媚薬の作用は予想していたよりも強烈で、ディアボロスは頭の芯が痺れるような凄まじい快感に夢中になっていた。ノームもまた青い瞳はどこか虚ろで、唇の端から涎が伝っている。  
 次第に意識の中心が快感に侵食される。相手を気遣うことも相手への愛しさも彼方に霞んでしまうほどに、その快感を貪った。  
 
 既にディアボロスの身体に浮かぶ汗の量は尋常ではなく、ボタボタとノームの上気した肌に落ちていった。発汗機能に乏しいノームは身体を真っ赤に染め上げて、犬のように舌を突き出して荒い息を繰り返している。  
「うっく……ノームっ、ノームっ!」  
「っあ、ああ、あんっ、ディアっ、ボロス……あっあっあっ!」  
 どちらからともなく強く抱き合い、言葉にならない声で互いを呼び合う。彼らが強く感じているのは、恋人と身体を交える幸福感よりも身体が溶けてしまいそうなほどの快楽である。  
 そうしてディアボロスの動きが次第に雑になり、腰を何度もノームに強く叩き付けた。肌のぶつかる音もベッドの軋みも水音も、喘ぎと快感と共に大きくなっていく。  
「ノーム、ノームっ!うっ……も、ダメ……うぐっ!!」  
 ノームを力の限り抱き締め、深くに叩き込むように腰を打ち付ける。その瞬間ディアボロスは痺れるような激しい快感を覚え、ノームの中に熱い精を注ぎ込んだ。  
「んああっ!ディ、ディア……ああ、あああああっ…!!」  
 ノームも身体を仰け反らせて、凄まじい快楽の絶頂に昇りつめた。ガクガクと身体を痙攣させ、限界まで見開いた虚ろな瞳からボロボロと涙を落としていた。  
 ディアボロスもディアボロスで、そんな恋人を気遣う余裕はない。だらしなく開いた唇の端から泡混じりの涎を垂らして、精を吐き出す陰茎の脈動に身体全体をビクン、ビクンと震わせている。  
 気が狂いそうなほどに膨大な快楽も、時間と共に少しずつ薄れていく。ノームはそのまま気を失うように眠りにつき、ディアボロスは崩れ落ちるようにノームの隣に寝転んだ。  
 おびただしい量の汗が冷静になったディアボロスの体温を容赦なく奪っていく。  
「寒い……だるい……動けねぇ…」  
 体温と血圧が急激に下がったためか、強烈な寒気に襲われるディアボロス。だが足元に丸まっている毛布を取るだけの体力も気力ももうない。  
 後悔と寒気と改良の余地を考えながら、ディアボロスはいつまでもガタガタと震えていた。  
 
 
 太陽が傾いて薄暗くなった埃だらけの部屋で、ディアボロスはぼんやりと目を覚ました。幸せだった夢から醒めてしまえば、彼にのしかかるのは陰鬱で残酷な現実しかない。  
「……あのあと、どうしたんだっけ…」  
 ディアボロスは身体を冷やしすぎたせいで風邪を引いて、ノームは腰が痛くて動けないと怒っていたように思う。そのときのノームの怒った顔も声も、焼き付いたようにディアボロスの記憶から離れない。  
 それから、ある日突然フェルパーがバハムーンに告白して、バハムーンが照れながらフェルパーを全力で殴り飛ばして、なんだかよくわからないけど二人は付き合うようになって……  
 寝惚け半分のディアボロスの頭にはかつての楽しかった日々が次から次へと思い出され、ディアボロスは知らず笑いをこぼしていた。  
 押し殺したような笑い声は次第に抑えきれなくなり、しまいには腹を抱えてケラケラと声をあげて笑った。  
「ふ、ははっ、あははっ!はははははっ!」  
 足をばたつかせれば埃が舞い散る。涙がボロボロと流れ、頭を掻きむしり、ベッドから転がり落ちて、床に適当に置かれている器具をめちゃくちゃに蹴り飛ばす。  
 ディアボロスの大切だったものは全てこぼれ落ちて砕けていった。親友は容赦なく奪われ、恋人は自らの手で突き放してしまった。彼の掌に残ったものは、汚れた金だけ。  
「なんで……なんでだよっ!くそ……ちくしょう、チクショウッ!!」  
 気が狂わんばかりの自己嫌悪。いっそ本当に狂ってしまえれば楽なのに、幸せな日々の記憶が楔のように彼を正気に繋ぎ止める。  
 泣き、喚き、笑い、再び泣き、喚き、笑う。部屋の中のありとあらゆるものを壊しながら、ディアボロスはのたうちまわった。  
「うあああああ…っ!あ"あ"あ"あ"あ"ああああ…っ!!」  
 その夜、ディアボロスの慟哭はいつまでも響いていた。その姿はただ、哀れだった。  
 

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