ブルスケッタの学生寮の一室に、鏡を見つめるノームが一人。  
彼女は鏡の中の自分を見つめ、かれこれ五分ほどそうしていた。  
やがて、右手がゆらりと動き、自身の右目に添えられる。  
ずぶりと、眼窩に指がめり込む。表情一つ変えず、彼女は自分の右目を抉り出し、残った左目で取り出した眼球を見つめた。  
静かに目を閉じ、意識を集中する。すると、眼球だった物はいくつかの素材と、一つの青い水晶とに分解されていた。  
水晶を手に取り、じっと見つめる。次にそれを日にかざし、改めてじっくりと観察する。  
「……やっぱり、ちょっと濁ってた」  
そう呟くと、ノームは錬金を繰り返す。元々ほんの僅かな濁りだったものがたちまち消え失せ、彼女の手にある物はそれだけで  
途方もない値がつくほどの、透き通った青い水晶になっていた。  
再び、素材とそれを錬金し、元の目玉に直す。それを右の眼窩に押し込み、しばらく目を瞑ってからゆっくりと開く。  
「……うん、よく見える」  
無表情な、しかし満足げな声で言うと、ノームは寮を出た。昼時ではあったが、学食には向かわず、購買へと足を運ぶ。  
錬金術師である彼女にとって、ここは退屈しない。新たな武器や防具もさることながら、廃品であっても彼女には十分な価値がある。  
その時、ブルスケッタには珍しい、バハムーンの男子がいるのが見えた。物珍しさから、彼女は彼に近づき、その顔をじっと見上げた。  
「ん…?何だよ、俺がどうかしたのか?」  
向き直った彼の目を、ノームはじっと見つめる。そして、彼の顔に手を伸ばした。  
「きれいな目。私にも使わせて」  
眼窩に指がめり込む瞬間、危険を察知したバハムーンはその腕を捕えた。  
「ぐっ…!この、やめろ!」  
抉られかけた目を押さえ、バハムーンはノームを睨む。だがノームは悪いことをしたとも思っていないような、むしろ心外だと  
言わんばかりの表情で彼を見つめる。  
「つっ……俺達の目は、お前達と違って替えは利かないんだ!それぐらいわかれ!」  
「代わりの目玉ぐらい、作ってあげるのに」  
「だから、それは義眼であって目玉じゃない!俺達の目は、お前達のような作り物とは違う!俺達の体は、依代じゃないんだ!」  
怒りを押し殺した声で言うと、バハムーンは購買を出て行った。その後ろ姿を、ノームは複雑な表情で見送っていた。  
その顔が、不意に元に戻る。同時に、購買の入り口から小さな女の子が走ってきた。  
「ノーム、お待たせ。いっつも早いね」  
「うん。体の調整なんか、すぐ終わるから」  
彼女は子供のように小さく、声も同年代の者に比べ、かなり高い。一見すれば、クラッズと見紛うような風貌である。  
しかし、彼女はれっきとしたヒューマンであり、その証拠に以前は魔法使い学科に所属していた。しかし、今は普通科所属である。  
「それじゃ、行こうか。魔女の森でいいかな」  
「うん、いいよ。あ、ノームの武器は?」  
「ちゃんと持ってるから、大丈夫。ヒュムちゃんのは」  
「外だよ。あれ、邪魔なんだもん」  
仲良く話しながら、二人は校門を抜け、魔女の森へと入って行く。  
 
二人に、仲間はいない。普通は六人でパーティを組むことが多いのだが、彼女達はたった二人のパーティである。それでも、二人には  
十分だったし、もっと多くの仲間を欲しいとも思わなかった。  
第一、仮にもし二人が仲間を求めたとしても、その声に応じる者はいないだろう。それというのも、ノームは近づいてくる者すべてに、  
購買でのような事件を引き起こすからだ。瞳がきれいと言ってはその目を抉ろうとし、腕が立派だと言ってはその腕を切ろうとする。  
声がきれいだと評された者に至っては、危うく喉を切り裂かれかけた。そんな危険人物に、近寄る者の方が珍しい。  
そんな彼女の友人は、この小さなヒューマンただ一人である。小さな体に身長を超えるサイズを担ぎ、人懐っこそうな笑みを浮かべる  
彼女にだけは、ノームは危害を加えようとしないのだ。  
ここ最近の授業の話や、購買に入った装備や、好きな学食の食べ物の話をしながら歩いていると、辺りの気配が変わった。  
二人はすぐに気付き、身構える。  
二人の前に現れたのは、つちのことゴブリンの群れだった。それを見た瞬間、ヒューマンの表情が変わる。  
「ねえ、ノーム…」  
袖を引っ張るヒューマンの頭を、ノームは優しく撫でてやった。  
「わかった。他は任せて」  
言うが早いか、ノームはファイガンを詠唱し、つちのこの群れを灰へと変える。ヒューマンは大鎌を振りかざし、ゴブリンの群れに  
切りかかった。  
「えい!」  
可愛らしい声とは裏腹に、その一撃は目にも留まらぬ速さで襲いかかる。一瞬後、一匹のゴブリンが両足を切断され、悲鳴を上げた。  
「ヒュムちゃん、それでいいの」  
「うん」  
「わかった。あとは掃除だけだね」  
相手の攻撃を容易くかわし、二人は再び体勢を整える。今度は魔法を使わず、ノームは背中から釘バットを取り出し、一匹ずつ着実に  
頭を砕いていく。ヒューマンの方も、今度は足など狙わずに、容赦なく相手の首を刈り飛ばす。  
動く相手がいなくなり、両足を切られて身動きの取れないゴブリン一匹だけが残る。二人はその前に立つと、それぞれの武器を大きく  
振りかぶった。  
直後、サイズが左腕を地面に縫い付け、釘バットが右腕を砕いた。絶叫を上げるゴブリンに構わず、ヒューマンは嬉しそうな  
笑顔を浮かべた。  
「ふふっ、できたできた。ノーム、いつもみたいにお願いね」  
言いながら、ヒューマンは服を脱ぎ始めた。その間に、ノームはゴブリンの四肢の根元を強く縛り、出血を止める。  
すっかり服を脱いでしまうと、ヒューマンはしばらくゴブリンの足元に座り、その姿を眺めていた。  
やがて、痺れて痛みが消えてきたのか、ゴブリンの声が小さくなってくると、ヒューマンはゴブリンの股間に手を伸ばした。  
思わず呻くゴブリン。ヒューマンはそこに男性器の存在を感じると、パッと弾けるような笑みを浮かべた。  
「あったあった!ふふっ、いっぱいいっぱい、してもらうんだから!」  
身を屈めると、ヒューマンはゴブリンのそこに舌を這わせた。ゴブリンは思わぬ快感に呻き声をあげるが、動くことはできない。  
体を洗うという習慣がないのか、ゴブリンのそれは舐めるなどとは考えたくもないような異臭を放っている。そんなモノを、ヒューマンは  
嬉しそうな笑顔を浮かべ、一心に舐めていた。  
 
少しずつ、ゴブリンのモノが硬く大きくなってくる。ヒューマンはそれを口に含んだ。最初、歯が当たってしまい、ゴブリンが小さな  
悲鳴を上げると、ヒューマンはそのお詫びというように、当たった部分に優しくキスをし、丁寧に舐めてやった。  
「ん……ふぁ……んく…」  
口をすぼめて頭を上下させ、さらに口の中で先端をねっとりと舐める。唾液をたっぷりと絡め、鈴口を舌先でつつき、それをほじるように  
舌を動かす。それらの刺激を受け、ゴブリンのそこはますます大きくなる。口に収めているのすら困難になり、ヒューマンは仕方なく  
口を離すと、代わりに手で強く扱いてやる。  
本人の太い四肢と同じく、ゴブリンのモノはヒューマンの腕と同等の太さとなり、その長さも人間ではなく、馬や竜といった生物に  
近い長さとなっていた。  
「ふふ……そろそろ、いいかな?」  
ただ口と手で奉仕しただけにもかかわらず、ヒューマンの秘部は既にすっかり濡れていた。  
ゴブリンにまたがり、彼のモノに手を添えると、先端に秘所を擦りつけて愛液を絡める。そして自分で割れ目を広げると、ゆっくりと  
体重を掛けた。  
「んっ……入って……くるぅ…!」  
つぷつぷと小さな音を立て、巨大なモノが小さなヒューマンの中に飲み込まれていく。腹部にはゴブリンのモノの形が浮かびあがり、  
秘裂は裂けんばかりに広がっているが、ヒューマンの顔に苦痛の表情はなく、むしろ強い快感が浮かんでいた。  
「んあっ……あふ……ん、んん…!これ以上は、無理……かぁ…」  
さすがに根元までは入りきらず、ヒューマンはその三分の二ほどを納めたところで動きを止める。  
「あぅ、すごっ……お腹の奥まで、いっぱいぃ…!」  
陶然とした声で呟くと、ヒューマンは腰を動かし始めた。くちゅくちゅと湿った音が響き、その合間にヒューマンの嬌声と  
ゴブリンの呻き声が混じる。  
ヒューマンが動く度に、結合部から愛液が伝い落ちる。体の奥を突き上げられる感覚が、ヒューマンにとってたまらない快感となり、  
さらにその行為を強めていく。  
「うああっ!いい!いいよぉ!私のお腹、もっといっぱいにしてぇ!」  
一声叫ぶと、ヒューマンはますます激しく腰を動かす。まるで子供のような外見ながら、とめどなく蜜を溢れさせて更なる快感を  
叫ぶヒューマンの痴態は、異種族といえども興奮させるのに十分な魅力があった。  
自身の腕ほどもあるモノを咥えこみ、激しく腰を振るヒューマン。すんなり入っているとはいえ、やはりその中はきつく、  
また彼女自身がモノをぎゅうぎゅうと強く締め付ける。ぬるぬるとした中の感触に反し、その締め付けは思いの外強く、  
痛みと紙一重の強い快感をもたらしていた。  
そんな二人の前に、ノームがしゃがみ込む。その無表情な顔からは何も読みとれないが、両手に握った血塗れのダガーが恐怖心を煽る。  
「ふふ。どいつもこいつも、みんなおんなじ。どいつもこいつも、どいつもこいつも、何にも違いなんてない」  
多少なりとも知能があるのが不幸だった。ゴブリンが周りを見ると、辺りの死体はすべて解体され、内臓や骨が個体ごとに  
きれいに並べて置いてあった。その傍らにはそれを写した紙が置かれ、そして今、ノームは目の前にいる。  
 
「あなたも、きっとおんなじだよね。一皮剥けば、他のと全部一緒だよね。おんなじかどうか、私がバラして、見てあげる」  
ダガーを持った腕を上げ、ノームは笑った。  
「その方が、ヒュムちゃんも喜ぶしね」  
直後、ダガーの刃が閃いた。あっという間に肩の骨が露出し、一瞬後には関節からきれいに切り落とされる。  
ゴブリンの悲鳴が響き渡る。ノームは表情一つ変えず、もう片方の腕も肩から切り落とし、その腕自体も解体していく。  
それが終わると、今度は胸から腹を切り裂く。ゴブリンの悲鳴はますます大きくなるが、ノームも、そしてヒューマンも、  
それをまったく気にかける様子がない。  
ノームの操るダガーは容赦なかった。皮を切り、腹筋を切り裂き、その下にある内臓が露出すると、ノームはそこに手を突っ込み、  
臓器を引きずり出した。  
「これが腸。肺はやっぱり二つ、だから一つはいいよね。あと肝臓、腎臓……この出血なら、まだ平気かな」  
言いながら、ノームはダガーを振るい、次々に内臓を取り出していく。生きながら解剖され、臓器を切り取られる苦痛に、ゴブリンは  
最初こそ凄まじい悲鳴を上げていたが、少しずつその声は小さくなっていった。  
同時に、突然ヒューマンの体が震えた。  
「あっ!?あっ、ああぁぁっ!!き、きたぁ!!わっ、私のお腹の中、精液いっぱい出てるよぉ!!」  
体を弓なりに反らし、未発達な体を快感に震わせるヒューマン。そんな彼女に、ノームは下から笑いかけた。  
「どう、もっとほしいかな」  
「あぁ、あっ!も、もっとぉ!もっといっぱいぃ!ノーム、まだ殺しちゃダメぇ!」  
「ふふ、わかってる。最後の一滴まで、全部絞り取っちゃえ」  
「う、うん!うん!そうするぅ!あああ!もっといっぱいぃ!私の子宮の中まで、精液でぐちゃぐちゃにしてぇ!」  
狂ったように叫び、ヒューマンは一心に腰を動かす。ゴブリンはもはや呻き声すら上げず、死の危機に瀕して種の保存を為すという  
生物の本能に従い、ただただ彼女の中に精液を注ぎ込んでいく。  
もはや入りきらないほどに流し込まれ、溢れた精液が愛液と混じり、伝い落ちる。死の淵にいるまま生かされているゴブリンのモノは  
萎えることを知らず、まるでそれ自体が生きているかのように脈打ち、なおもヒューマンの子宮を満たそうとしている。  
「ああぁ、す、すごいぃ…!こんなにいっぱいっ……こんな、すごいの……う、馬よりすごいよぉ…!」  
口をだらしなく開け、唾液を零しながら、はあはあと荒い息をつくヒューマン。未発達な体も、声も、まるで子供のようではあったが、  
その顔だけは成熟した女にも劣らない、むしろ雌の顔とも言えるような、何とも淫靡なものだった。  
やがて、ゴブリンの動きが小さくなり、ずっと硬さを保っていたモノも、少しずつ柔らかくなり始めた。それに気付くと、ヒューマンは  
悲しげな顔で結合部を見つめる。  
「んあぅ……もう、おしまい…?」  
「みたいだね。じゃあヒュムちゃん、解体するよ」  
言うが早いか、ノームは再びダガーを振るい、重要な臓器を次々に切り取り始めた。最後に、まだ微かに拍動する心臓を切り取ると、  
とうとうゴブリンはその動きを止めた。  
 
同時に、ヒューマンの体がピクンと震える。  
「んやぅ!?ま、まだちょっと残ってたぁ……お腹に、びゅくってきたよぉ…」  
陶然と呟き、ヒューマンは腰を上げると、ぱたりと倒れてしまった。そこに、ノームが近づく。  
「だいぶこぼれちゃったね。でも安心して。ちゃんと、全部すり込んであげる」  
ノームはゴブリンのモノを根元から丁寧に舐め上げ、そこについていた精液をすべて口の中に収めた。そしてヒューマンの足を  
広げさせると、ひくひくと震える彼女の秘部に舌を突き入れた。  
「うあぁっ!し、舌が入ってくるぅ!うあっ、あっ!そ、そんな奥までぇ!?」  
舐め取った精液を舌に乗せ、ヒューマンの膣内に擦り付ける。それが終わると、ノームは舌を抜き、代わりに二本の指を彼女に  
突き入れた。  
「んっ!」  
「全部、子宮の中に入れてあげる」  
言うなり、ノームは彼女の中を激しくかき回し始めた。  
「きゃああぁぁ!!は、激しいよぉ!!ノームっ、激しいよおぉ!!」  
体を弓なりに反らし、ヒューマンは思わずノームの腕を掴む。しかしそれに構わず、ノームはますます激しく指を動かし、子宮口に  
精液を塗りこむようにぐりぐりと動かす。  
「ああああっ!!ノっ、ノーム!ダメ!!もうダメぇ!!頭がふわってぇ!!やっ!!くるぅ!!もうっ!!あっ、あああぁぁぁ!!!」  
ガクガクと体を震わせ、同時に透明な液体がノームの顔にかけられる。しかし、ノームは表情一つ変えずにそれを受け止め、やがて  
くたっと脱力してしまったヒューマンの体を抱き起こし、優しく口づけをした。  
「ふぁ……ノー……ムぅ…」  
「……いいよ、寝ちゃって。ちゃんと連れて帰ってあげる」  
「うん……ノーム、ありがとぉ…」  
うわごとのように言うと、ヒューマンは目を瞑った。程なく、すうすうと小さな寝息が辺りに響く。  
ノームは簡単に彼女の股間を拭いてやると、解体したばかりのゴブリンの横に立ち、懐から紙とペンを取り出した。そして、瞬く間に  
解剖図のスケッチを終えると、他の死体のところにある紙も回収する。  
「……どいつもこいつも、全部おんなじ」  
無表情に呟くと、紙を鞄にしまいこむ。そして、ヒューマンを抱きあげ、彼女の制服をしっかりと持つと、無言で帰還札を使った。  
あとには、性の営みがあったとはとても思えないような、惨殺されたモンスターの死体だけが残っていた。  
 
 
数日後、ノームの部屋にノックの音が飛び込んだ。ドアを開けてやると、そこには不安げな顔をしたヒューマンがいた。  
「ヒュムちゃん、どうしたの」  
「あ、あのね……今日でね、この前の、ヨダレタラシのね、一ヶ月なの…」  
「ああ、そっか。じゃあヒュムちゃん、そこに座って。見てあげるから」  
ヒューマンを椅子に座らせると、ノームは彼女のショーツを下ろした。そして、秘裂を優しく開くと、そっと舌を這わせた。  
「んんっ…!」  
「………」  
両手を口に当て、声を押さえるヒューマン。ノームは何度かそこを舐めると、やがて顔を離した。  
「ど……どう…?」  
不安げに尋ねるヒューマンに、ノームは首を振った。  
「……残念だけど、またダメだったみたい」  
「……っ……っく…!ひっく…!……ふえ……ふええぇぇ…!」  
それを聞いた瞬間、ヒューマンの目に涙が溢れ、やがて彼女は傍目も気にせず泣き始めた。ノームはそんな彼女を優しく抱きしめ、  
子供をあやすかのように頭を撫でてやる。  
「まだ、いっぱい試したのあるじゃない。ゴブリンだって、まだ試したばっかりなんだから。きっと、合うのが見つかるよ。だから、ね。  
泣かないで、またいっぱい試してみようよ」  
ヒューマンが未発達なのは、外見だけではなかった。彼女は未だに、生理すら来ていないのだ。  
それは同時に、生殖能力のなさをも示していた。繁殖力の強いヒューマンの中にあって、彼女はその機能を持たなかったのだ。  
だからなのだろう。彼女は、子供を作ることに固執していた。ありとあらゆる種族と交わり、果ては馬などの家畜と交わり、  
それでも子を為すことができず、今ではモンスターにすらそれを求めているのだ。  
そしてノームは、生身でありながら他と違う彼女に興味を持った。  
自身が生身を持たず、子を為すこともできない。生身を持つ種族を羨みながらも、それを屈折した形で表すことしかできない。  
無理とわかっていながら、腕や目など相手の体を求めた。自身が他の種族と違うとわかっているからこそ、全ての生き物を解剖して  
どれもこれも一緒だということを確認し、同時に自身が他種族と違うことを痛感し続けていた。  
腕を切ろうと、血は出ない。胸に手を当てようと、鼓動はない。体を解体しようと、臓器もない。首を切ろうと、死にはしない。  
そんな中で出会ったヒューマンは、ノームにはまるで本当の仲間のように思えた。生身を持っているはずなのに、子を為すことができず、  
悲しみに打ちひしがれつつも子を求める彼女の苦しみは、ノームには痛いほどわかった。むしろ、彼女は自分以上の辛さを  
持っているだろうと、ノームはわかっていた。ヒューマンもまた、彼女を否定せず、むしろ自分に協力してくれるノームを唯一の  
友人と思い、ノームにだけは心を許していた。  
欠けたものを持つ同士、不思議と心が通った。欠けたものがあるからこそ、二人は強く繋がった。  
同じなのが分かっているからこそ、解体してみたかった。違うのがわかっているからこそ、解体したくなかった。  
その屈折した思いを理解できるのは、少なくともこの学園にはヒューマンただ一人である。自身が周囲と違うというのは、  
周りが思う以上に辛いことだった。彼女達の心を、簡単に壊してしまえるほどに。  
「ヒュムちゃんだって、いつかきっと子供作れるよ。だって、こんなに頑張ってるんだから。私も協力するから、ね。また頑張ろ」  
「うええぇぇん…!赤ちゃん、ほしいよぉ…!わ、私……私だって、赤ちゃん作れるもんん……うわああぁぁん!」  
恐らく、彼女が子供を作れることは、この先ないだろうと、ノームは思う。しかしそれでも、もしかしたら、という思いは  
捨てきれなかった。それは打算などではなく、ただただ純粋に、ヒューマンの悲願が叶えばいいという思いゆえだった。  
その、あまりに人間じみた思いが芽生えていることに、ノームはまだ気づいていない。それに気付けば、まだ救いもあるというのに。  
そして彼女達は今日も、人間とは程遠い、残虐な凶行に手を染めていく。いつかその凶行が、自分達の心を癒すと信じながら。  
 

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