新学期。
クラッズはクロスティーニで始まる新しい学園生活に、希望で胸を膨らませていた。
真新しい制服に学生かばん。腰に下げたダガーも誇らしげに意気揚々と登校する。
体育館で校長先生の話を聞いたあと、入学手続きを済ませ、掲示板で自分のクラスを
確認すると逸る気持ちを抑えつつ教室へ向かった。
(へへっ、これが僕の机か..)
自分の机に座り、教室内をきょろきょろと見回していると、隣の席にスッと人影が差した。
魔法使い科の制服に身を包んだセレスティアの女の子だった。
(..きれいだな)
クラッズの視線に気づいたのか、こちらに顔を向けるセレスティア。クラッズと目が合うと
にっこり微笑んで軽く会釈をした。真っ赤になって照れながら会釈を返すクラッズ。
(..楽しい学園生活になるといいな..)
そう思いながら机に両腕で頬杖をついて表情を緩ませるのだった。
翌日から早速授業が始まった。学園での講義や演習の合間に仲間を探しパーティを組んで
冒険へ出る。クラッズもクラスメイトの何人かから声を掛けられてはパーティを組んで冒険に
出かけたが、すばしっこい以外に特技が無い普通科のクラッズは、なかなかパーティに定着
する事が出来なかった。
一方隣の席のセレスティアは、入学当初から専攻科、それも魔法使い科ということもあって
引っ張りだこの様子だった。講義にもなかなか顔を出さないし、たまに学園内や近場の森で
見かけても、いつもどこかのパーティの仲間達に囲まれていて、とても忙しそうだった。
(..今日も来てないや..)
可愛くて優秀な魔法使いのセレスティア。主のいない隣の席に目をやってはため息をつく
クラッズだった。
「..ごめんね、クラッズ君。一生懸命頑張ってくれてるのはわかるけど、やっぱり普通科だと..。
せめて戦士かレンジャーだったら喜んで迎えるんだけど..」
その日クラッズは入学以来7組目のパーティからふられてしまった。
(ちぇっ..もうちょっと時間をくれれば戦士でもレンジャーでも転科できるのに..)
足元の小石を蹴飛ばしながら夕暮れの中庭を寮に向かってとぼとぼと歩いていく。
途中、広場のベンチに人影が見えた。魔法使い科の制服に翼のある背中。そっと近づいて
みると、隣の席のセレスティアだった。
「..こんにちは」
すこしためらいながら声を掛けてみる。
一瞬、背中がピクッと反応した後、ゆっくりと顔が向けられる。口元を押さえ、目が多少
潤んでいるように見えた。
「..どうしたの?」
クラッズの問いに俯きながらなんでもない、というように小さく首を横に振るセレスティア。
くすんくすんと鼻をすすり上げる音も聞こえてくる。なんでもなくは無いことは明らかだったが
クラッズにはどうしたらいいかわからなかった。
「..元気出してね」
学生かばんから女の子が好きそうなハニートーストを取り出すと、ハンカチに包み、
セレスティアの膝の上にそっと置いた。
びっくりしたような顔をするセレスティアに軽く微笑んで手を振ると、再び学生寮に
向かって歩き出した。
(あの子も色々苦労してるんだろうな)
ベッドに入り眠ろうとするたびに、夕暮れにたたずむ寂しそうなセレスティアの後姿が思い浮かんで
は気になって眠れなくなってしまうクラッズだった。
次の日以降、少しずつだがセレスティアが学園の講義に顔を出す機会が増えてきた。彼女は
魔法使い科の授業もあるので毎日会えるというわけにはいかなかったが、それでもクラッズには嬉しかった。
しかし、昼休みや放課後に中庭のベンチに一人たたずむ姿を見かけることもあり、それが少し
気になったが、今のところセレスティアとはただの隣の席同士というだけの関係だったので、詳しい話を
聞きだすことはクラッズには少し躊躇われていた。
「セレスティア?あの女はダメだ。使い物にならない」
そんなある日、食堂でクラスメイトたちと昼食を摂っていると、セレスティアのことが話題になった。
クラッズが内心驚きながらも素知らぬ顔で聞いている傍で、そのクラスメイトは続けた。
「あいつ根暗で仲間ともろくに口を利かないんだよ。おまけに魔法の精度が悪くて同士討ちやらかすし。
みろよ、このやけど」
腕まくりをしてやけどのあとを見せるクラスメイト。
「見た目可愛いし、いきなり魔法使い科だから期待してたんだけどなあ..がっかりだよ」
クラスメイトの愚痴にふんふんと頷きながら、クラッズはセレスティアの寂しそうな後姿を
思い浮かべていた。
「こんにちは。あの..君にお願いがあるんだけど..」
あくる日の昼休み、セレスティアが一人俯いてベンチに座っているのを見かけたクラッズは思い切って
声をかけてみた。
何事かと顔を上げるセレスティア。
「実は僕、まだ決まったパーティに入れなくて一人なんだ。普通科だし、とりえが無いからなかなか
使ってもらえなくて..。でもこのままだと経験も積めないし、転科も出来ないからとにかく冒険に
出たいんだ。だから、もし午後暇だったら森に連れて行ってくれないかなあ..」
しばらくクラッズの顔を眺めていたセレスティアだが、やがてゆっくりと俯いて拒絶するように
小さく横に首を振った。
「..うーん、困ったな。もう午後の予定が入っているの?」
やはり小さく横に首を振るセレスティア。
「だったら、頼むよ。そんなに深くまで森に入るつもりは無いから。こんなに天気もいいんだし、
気分転換のお散歩みたいな感じでいいからさ、行こ?」
そう言ってセレスティアの白くて細い手首を掴むクラッズ。驚いたような顔を見せたセレスティアだが、
抵抗するそぶりは無かった。さらに手首を引くとセレスティアはゆっくりと立ち上がった。
パッと明るくなるクラッズの顔。それを見たセレスティアの顔も少しほころんだ。
クラッズにとって、入学式の日以来の彼女の笑顔だった。
その日の初めの森はクラッズの言うとおり絶好の散歩日和だった。柔らかな木漏れ日を浴びながら
クラッズとセレスティアは森の中を探索していった。
途中がぶりんちょが襲ってきた。セレスティアに少しは良いところを見せようと、張り切ってダガーを
振るうクラッズだが、ぶんぶん飛び回る相手になかなかとどめを刺せない。次第にあせりを感じてきた
その時、背後から風を切る音がしてぱちんこの玉が飛んできた。
「きぃ!!」
短い悲鳴を上げてがぶりんちょが地面に落ちる。
クラッズが振り返るとセレスティアがぱちんこを抱えて不安げにクラッズを見守っていた。
「ありがとう。助かったよ。お見事お見事」
と拍手を送ると、セレスティアは一瞬嬉しそうな表情をした後、恥ずかしそうに赤くなって俯いてしまった。
そんな調子で探索を続けていると、木陰が気持ちよさそうな広場に出た。
「この辺りで休憩にしようか?」
セレスティアがにっこり微笑んで頷くのを見て二人は並んで一本の木の根元に腰を下ろした。
学生かばんを開きホットケーキを取り出す。半分に割り
「食べる?」
とセレスティアに差し出した。
「..君、魔法は使わないの?」
何気なく尋ねたクラッズの一言で、ちぎったホットケーキを口元に運ぼうとしていたセレスティアの手が止まる。
そして困ったような表情を浮かべると、ゆっくり手を下ろして俯いてしまった。
「あああ、でもあれだけぱちんこが上手ならこの辺りじゃ魔法は要らないよね、ははは..」
クラッズは慌てて取り繕ったが、楽しいピクニックが一気に気まずくなってしまった。
「..そろそろ帰ろっか?あんまり奥には行かない約束だったし」
すっと立ち上がるクラッズ。セレスティアも気を取り直したように立ち上がり、学園への帰路についた。
言葉も無く二人が歩いていると、ダストが3体現れた。
(これまた厄介なのが出てきたなあ..)
ヒール以外の魔法が使えないクラッズにとって、物理攻撃が効かないダストは難物だった。
ちらっと横目でセレスティアを見る。彼女も緊張した面持ちで相手をじっと見据えていた。
(..いや、彼女に甘えちゃダメだ。まずは自分が頑張らないと)
軽く頭を振って邪念を払うと、クラッズは敵に向かって駆け出して行った。
ダストの群れの中でむちゃくちゃにダガーを振るうクラッズ。背後からはセレスティアが放つぱちんこ玉
も飛んでくる。しかし、雲か霞を相手にしているかのようにまるで手ごたえが無かった。
(まずい..疲れてきた)
脚が止まった瞬間、クラッズはたちまちダストに取り囲まれてしまった。一撃のダメージは小さいものの、
文字通り嬲られるクラッズ。ダストの間で揉まれている最中、ぱちんこを抱えたままオロオロしているセレスティアと
目が合う。セレスティアは一瞬苦悩するような表情を浮かべたが、すぐに何かの決意を固めたように目を瞑り、
もごもごと口の中で何かを唱え始めた。そして薄目を開き、右手を差し出すとその先から炎の奔流がほとばしった。
1体..2体..。今までの苦戦が嘘のように簡単に消え去るダスト。
(..すげえ..実はやれば出来る子じゃん..)
そう思った瞬間、クラッズの視界が真っ赤に染まった。そして何事が起きたのか知る間も無く意識を失ってしまった..。
(つめたい..雨?)
自分の頬に降りかかる冷たい感覚でクラッズの目が覚めた。ゆっくり目を開けると、膝枕の上にクラッズの頭を乗せ、
しくしくと泣いているセレスティアの顔があった。
「..セレスティア?」
声をかけると、セレスティアははっとしたように目を見開き、そしてクラッズの頭に覆いかぶさるようにして彼を抱きしめた。
セレスティアの胸元の柔らかくも暖かい感覚に嬉しくも恥ずかしく戸惑っていると、耳元に彼女の小さな声が
聞こえてきた。
「かにな..かにな..」
(かにな..?蟹名?..)
言葉の意味はよくわからないが、とにかく謝っているんだろうな、と察したクラッズはセレスティアの肩をぽんぽんと
叩いて起き上がった。
地面にぺたんと座り込み、涙を流してしゃくりあげるセレスティア。
「ほんど、めわぐかげでまっだの..」
セレスティアと膝を突き合わせるように正対したものの、彼女の言葉がわからず困惑するクラッズ。
「..ごめん、何て言ってるのかな?」
恐る恐る尋ねてみると、一瞬ポカンとしたセレスティアだが、目を伏せてがっかりしたような表情を
浮かべて答えた。
「..わのこどばだば訛りこひどくてわがねべ..わりがったの..」
そう言って寂しそうに立ち上がろうとするセレスティアを、クラッズは慌てて押しとどめた
「ごめんごめん!!僕が悪かった。あの..言葉良くわからなくて勘違いするかもしれないけど、一生懸命聞くから
待って!!お願い!!行かないで!!」
クラッズの必死の顔をしばらく眺めていたセレスティアだが、やがて思い直したように座りなおした。
「..ええと..その..やっぱり君も今は一人なんだ?」
小さく頷くセレスティア。
「最初の頃だばみんな、わのごと魔法使いだはんでってパーティさかへでけだばって、やっぱ訛りのごと
笑われで..したっきゃもう、他の人どなんも話せねぐなってまって..」
うんうんと頷くクラッズ。
「..魔法もある程度、声力ねば抑え効かねでごさね、ぽそぽそった呪文だば、なも狙い決まねんで仲間さ
当たってまって..で怒られだらよげ声出せねぐなってまって..」
次第に涙声になるセレスティア。
「..今だばもう"仲間殺し"だの噂されで、だがらも声かげられねぐなってまったね..うっ..うっ..うっ」
と顔を両手で覆って泣き崩れてしまった。クラッズにはほとんど言葉の意味はわからなかったが、それでも
セレスティアが次第に仲間から、そして学園から孤立していく寂しさと悲しさは手に取るように理解できた。
「..だはんで、さきたクラッズささ声かけられたとぎだば、まんず嬉しがったね」
しばらくさめざめと泣いていたセレスティアが顔を上げた。
「もしがしたら、クラッズさとだばうまぐやれるんでねべが、と思って、わんつかだば期待してだんだばって
..やっぱしこったらごどさなってまって..」
一回大きくため息をついた後、吹っ切れたような自嘲気味の薄ら笑いを浮かべ天を仰ぐセレスティア。
「..もうさっぱど諦めついでまったね。わさは冒険者向がね。明日さでも学校辞めで田舎さ帰る..」
「学校辞めちゃうの!?」
何とか理解できる言葉の端々からセレスティアの決意を感じたクラッズは、セレスティアの両手をつかんで
叫んだ。
「だめ!!辞めちゃだめだよ!!」
「だばって、仲間どもまどもに話せねし、冒険さ出でも仲間ば撃ってまるし..わだっきゃなんの役さも
ただねって..」
「..役に立たないのは僕も同じだよ..」
俯いて話し始めるクラッズ。
「普通科で何のスキルも持ってなくて、たまにパーティに入れてもらって一生懸命がんばっても、
結局は普通科ってことでいらないって言われて..。なんでみんな僕がスキルアップするのを待って
くれないのかな?結局僕はその場限りの人数合わせの使い捨てなのかな?って、思ったりして..」
そして顔を上げ、真剣なまなざしでセレスティアを見つめた。
「だから、君が学校辞めるつもりなら、もう少し僕に付き合ってよ。言葉が通じないなら教えるよ。魔法が上手く
使えるようになるまで僕も君に付き合うよ。約束するからさ、君の訛りを僕は絶対馬鹿にしないって。同士討ち
喰らっても文句は言わないって..だから学校辞めるなんて言わないで」
「クラッズさ..」
見る見るうちに瞳が潤んでいくセレスティア。
「..そうだ、今度セレスティアの方言教えてよ。お互いにお互いの言葉を勉強すれば時間も手間も
半分で済むよ?だからさ、もう少し頑張ってみようよ..ね?」
そう言って立ち上がり、にっこり笑いながら右手を差し伸べるクラッズ。
「..わいは..涙っこ止まんねぐなってまったじゃ..どうすべ..」
嬉し涙に暮れながらその右手を取って立ち上がるセレスティア。
「..ねえ、セレスティアの言葉で"僕たち友達だよ"ってなんて言うの?」
「んと.."わんど、けやぐだね"って..」
「"わんど、けやぐ、だね"」
「ん..ありがどな、クラッズさ..ふふふ..」
夕日に照らされて黄金色に輝く道を踏みしめて、二人は学園への帰路をたどっていった。
その日の夜、クラッズは図書室で本を探していた。
(うーん、セレスティアの方言勉強するって言っちゃったけど、どこの出身か聞くの
忘れちゃったな..ま、いいや)
そう思いつつ、棚の上にある「全国地方方言全集」の一冊を取ろうと手を伸ばした。
(えい!!えい!!..あれ、届かないや..えい!!えい!!)
本棚の前で届きそうで届かない本に向かって飛び跳ねていると、その上からさっと白くて細い手が伸びた。
「クラッズさ..本気だったんだ..」
「あ、セレスティア」
振り返るとセレスティアが棚から取り出した本を差し出しながら嬉しそうに微笑んでいた。
そして、クラッズの耳元に口を寄せると、小さな声でささやいた。
「もし暇だば、わの部屋さ来ねが?ルームメイトだば冒険さ出でまて、今夜いねはんで..」
「..ええっと、部屋においでって言ってるのかな?」
にっこり笑って小さく頷くセレスティア。
「言葉っこ覚えるんだば、枕っこ並べて習うのが一番でごさね」
セレスティアが何を言っているのか良くわからなかったが、自分の顔が赤く上気していくのをクラッズは感じた。
「"どさ?""ゆさ!""だど?""など!""わも?""なも!くな?""いが!""はぐ!""まで!"..これ本当に日常会話なの?」
セレスティアの部屋のベッドに腰かけ、「全国地方方言全集第二巻」を読んでいたクラッズが目を丸くした。
そんなクラッズを見てセレスティアがくすくすと笑っている。
(やっぱり笑うと可愛いな、セレスティア..)
クラッズも釣られて笑い出す。
「意味わがねくてもおもしぇべ?まんず耳がら慣れでけへじゃ。話すのだばあどがら付いてくるはんで..。
せば、本の勉強だば今日はこごまでさすべ」
そう言うとセレスティアは自分の机の椅子から立ち上がり、ベッドに腰掛けているクラッズの隣に腰を
下ろすと、クラッズの膝の上から本を取り上げ、ベッドの枕元の棚に置いた。
しばらく並んで座ったままの二人。
「..ありがどな、クラッズさ..」
ポツリとつぶやくセレスティア。
「こないだもらったハニートースト、まんずめがった。あんときだばパーティ外されだばがりで、
どしたらえがわがらねしてだはんで、気さかげてもらって嬉しがったね」
そう言って体をクラッズの方にむけ、その両肩をつかんで目を見つめる。
「あんとぎのお礼、まだだはんで..えがったらもらってけねが?」
目を閉じながら唇を寄せるセレスティア。クラッズもゆっくりと目を閉じて彼女を迎え入れた。
(ん..くちゅ..はむ..ん..)
お互いの温もりと息づかいを充分に確かめ合った後、顔を離す。
クラッズの瞳をまっすぐ見つめながら、ぺろっと舌なめずりするセレスティア。普段の清楚な姿からは
全く想像できない艶っぽい仕草に、クラッズの心臓はときめいた。
セレスティアの右手がクラッズの肩から襟元へ伸びる。そして制服をゆっくりと脱がせ始めた。
クラッズも対応するようにセレスティアの制服に手を掛けた。
お互いの制服を脱がせ、下着姿になる。セレスティアがクラッズのパンツに手を伸ばそうとしたとき、
クラッズの手がそれを押しとどめた。
「あの..僕..クラッズで..その..他の人と比べると..あれだから..」
恥ずかしさで真っ赤になるクラッズに、セレスティアはやさしく微笑んだ。
「..なも、気にさねで..。おなごっきゃ、はどこの大きさで感じるんでねして、ハートの大きさで
感じるもんだはんで..」
そしてクラッズの頬を両手で包み、額と額を合わせ
「..クラッズさは、わの訛りこば嗤わねって言った。訛りこば勉強するって言ってけだ。だば、わも
クラッズさのこど、嗤うごとはなんもねって..」
そう言ってクラッズに口づけた。
唇を重ねつつ、セレスティアの手がクラッズのパンツの中に伸びる。クラッズの手もセレスティアの
背中にまわりブラジャーのホックを外した後、柔らかい乳房をもみほぐし始めた。
(ん..んー、はんっ..ん..)
お互いの息づかいが高まったところで唇を離す。セレスティアの白い頬は上気して赤く染まり、
薄い水色の目もうるうると潤んでいる。
「来てけ..わのこど、なの好ぎさして..」
どちらからともなく、静かにベッドに倒れ込む二人。
恥ずかしさに顔を背けながらも、仰向けになりゆっくりと脚を開くセレスティアの身体にクラッズの
身体が重なった。
「は...んっ!!」
セレスティアとクラッズの体格差はあっても、経験の少ないセレスティアにとってクラッズの身体は
充分に刺激的であった。
(はぁ..はん..んん..ぅん!!)
小さい身体を精一杯揺するクラッズに応え、より深く彼を感じようと、セレスティアもクラッズの身体を
両脚でしっかり挟み抱え込む。
「クラッズさ..クラッズさ..あっ..あん..クラッズさ..」
うわごとのように繰り返すセレスティア。
「ん..ん..セレスティア..好きだった..よ..初めて見たときから..ずっと気になって..ずっと心配で..」
「そんな..クラッズさ..わもクラッ..あ、あ、ああああぁぁ..!!」
クラッズの情熱が注ぎ込まれると同時に、セレスティアも高みへと達していった..。
「..セレスティア..めごいよ..セレスティア..」
並んで横になり、事後の気だるさにまどろみながらセレスティアの耳元でささやくクラッズ
「..わいは..」
達した余韻に浸りながらふっと微笑むセレスティア。
「もう..照れでまるべな..」
そう言って照れ隠し半分に腕と翼でクラッズをやさしく胸元に包み込むと、二人はゆっくりと
眠りに落ちていった。
「セレスティア!!なままどすのや?」
「これがらだね。一緒にくな?」
聞き慣れない暗号のような外国語のような言葉に、食堂にいる学生の生徒全員が声の主を捜した。
見ると、一年生の徽章を付けながらも魔法使い科の制服に身を包んだ美しいセレスティアと、
同じく一年生の普通科のクラッズが仲良くショーケースのメニューを眺めている。
「..あいつら、何話してるんだ?..つか、セレスティア、あいつ口きけたのか..?」
たまたま居合わせていた、以前セレスティアとパーティを組んだことのあるメンバーが、スープを
掬ったスプーンを取り落として呆然とする。
衆目を集める中、楽しく昼食を済ませた二人は、初めの森へ腹ごなしの午後の散歩に出た。
「そういえば最近、セレスティアの魔法精確になって来たよね?」
そう言うクラッズに、はにかんだように微笑んでセレスティアは答えた。
「ん。やっぱ呪文だば腹ん底がらがっつらど唱えねばまね。クラッズさど一緒だば、なも遠慮すること
ねはんで思い切って..」
と、言いかけたところに、ダストの群れが現れた。
お互いに顔を見合わせ、にっこり笑って頷き合う二人。そして相手に向き直ると、さっと
セレスティアの右手が挙がった。
「天地ば焦がす紅蓮の炎よ、わの意のままにやてまてまれぇ..ファイヤー!!」
呪文が高らかに詠唱されると同時に振り下ろされたセレスティアの右手から、
炎の奔流が狙い違わずダストの群れへと伸びていった..
どっとはらい