「まだ着きませんの?」
「見えて来ないなら、まだじゃないかなぁ……」
フェアリー達は森の道を進んでいた。
どうやらどこかへ行く途中のようだ。
「見えてきましたよ!」
「おぉ……!」
「海だー!」
ヒューマンが着くなり叫んだ。
それだけ何かを感じているのだろう。
「ようやく着きましたわね……。わたくしはもうへとへとですわ」
エルフが持っていた荷物を置き、日差しを避けるように木陰へと移動する。
「とりあえず、別荘に行こうカー?」
「そうだね、落ち着いたらまた砂浜集合で!」
クラッズが提案し、フェアリーが決定する。それと同時に皆が動くのは、もはやお約束のようだった。
「いや、それにしてもよくアイツが貸したよな」
別荘を見ながらヒューマンがボソリとフェアリーに耳打ちする。
どうやらヒューマンの友人から借りたようだ。
「一日1000Gの三日分先払いでOKしてくれたよ。おかげで財布はカラさ」
「はーっ、我が友ながらがめついとは、情けない……!」
ヒューマンが手で顔を覆い、俯く。
フェアリーは苦笑いすることしか出来なかった。
「さって、泳ぐぞー!」
「うっわ、ヒューマンが水着だと違和感あるネー」
「そういうお前は違和感なさすぎなんだよ!」
水着に着替えて砂浜に集まったフェアリー達の中で、ヒューマンとクラッズが無駄にはしゃいでいた。
「全く、はしゃぐのも程々にしませんと、痛い目を見ますわよ?」
エルフが本を片手に、横目ではしゃぐ二人を見る。
クラッズがそんなエルフに、ニヤニヤしながら話かけた。
「エルフもパラソルの下から出たラー?」
「わ、わたくしは大丈夫ですわ!」
エルフが慌てて本に顔を戻すと、セレスティアがそんなエルフを見て微笑む。
「エルフさんは日焼けが嫌なんですよね?」
「なっ、何を言ってるんですの!」
「なんダー、てっきり泳げないんだと……」
クラッズが予想が外れて残念そうな顔をしながらエルフを見る。
「だって……何故わざわざ肌を黒くしなければならないんですの?」
「まぁ、そう言いなさんな!」
「ちょ、手を離しなさいヒューマン!」
ヒューマンがエルフの腕を掴み、無理矢理海の方へと引っ張って行く。
そんな光景を笑いながら見ていたフェアリーに、クラッズが近付いて行った。
「やぁ、リーダー。目の保養中かナー?」
「いや、何を言ってるんだいクラッズ……」
フェアリーはハハ、と苦笑いしながら、ニヤニヤしているクラッズを見る。
「自分は純粋に海を楽しむよ」
そういうとフェアリーは微笑みながら、すでに水のかけあいをしているヒューマンとエルフへと顔を向ける。
「まぁまぁ、そう言わずにさ、小生が極秘に集めた情報を聞きなヨー」
「情報?」
クラッズは何処からともなく一枚の紙切れを取り出し、フェアリーの耳元へと近付く。
「エルフの胸は水着で寄せ上げしてるけど成長してないネー。どうだい、フェルパーの情報は欲しくないノー?」
「そ、それは欲し……じゃなくて!その情報、どうやって集めたんだい!?」
「食いついた食いついター。やっぱりリーダーも男だネー」
顔を真っ赤にしたフェアリーを見ながら、クラッズはヒヒヒと笑う。
どうやって情報を集めたのかはあくまで言わないつもりのようだった。
「フェルパーは当初よりもまだまだ成長してるネー、楽しみ楽しミー。因みにセレスティアは……」
ヒヒヒ、とまた笑いながらクラッズは話を続けようとする……が、その途中でクラッズの体が崩れ落ちた。
フェアリーは状況を瞬時に理解し、いつの間にか背後に居た人物に目を向ける。
「フェアリーさんもクラッズさんも、やんちゃは程々にしないと後悔しますよ?」
「黒い、黒いよセレスティア!落ち着いて!」
マイクをポンポンと手で叩きながら黒い笑みを浮かべるセレスティアを、フェアリーは必死に宥める。
「……なぁ、あいつらは何をやってるんだ?」
「ここからでは、流石に状況までは把握できませんわね……」
手を止めフェアリー達を見ていたヒューマンとエルフは、その光景を不思議そう見ていた。
皆がそれぞれ何かをしている。そんな光景を眺めながら、フェルパーは木陰で溜息をついていた。
「にゃぁ……皆楽しそうだなぁ……」
フェルパーは、指で砂に字を書き、それを消してはまた字を書く。それを延々と繰り返す。
そんな彼女の姿に一番に気付いたのは、セレスティアをどうにか説得し終わったフェアリーだった。
「あれ、フェルパー……?」
どうしたんだろう。そう思ったフェアリーはフェルパーの元へと飛んでいく。
「フェルパー!どうしたんだい?」
俯いていたフェルパーはびっくりしたように尻尾を膨らませ、声の主がフェアリーだとわかると落ち着いたのか、尻尾が元に戻っていく。
「フェアリー……?どうしたの、泳がないの?」
「それはこっちの台詞だよ!」
今日で何回目かわからない苦笑いを浮かべながらフェアリーはフェルパーの横へと腰を下ろす。
「うん、僕泳げないから……。水に入るのが怖くて……」
体育座りをしながら膝に顔を埋める。
そんなフェルパーにフェアリーはふと疑問が浮かんだ。
「でもフェルパー、雨とかシャワーは大丈夫だったよね?」
「水がかかるだけなら大丈夫だけど、入るってなると……足を入れるのも怖いから……」
フェルパーは顔を膝に埋めたまま答える。
一方フェアリーはそんな馬鹿な、といいたげな複雑な表情を浮かべた。
「そっか……よし!じゃあ、まず水に入る練習しよう!」
「だって……僕、恥ずかしいよ……」
それでもなお拒むフェルパーを見て、フェアリーは困った顔をしながら頭をかいた。
そしてキョロキョロと辺りを見渡し、そのあとでまたフェルパーに話しかける。
「大丈夫、自分は笑わないよ。それにあっちに岩陰もあるから、そこで練習しよう?」
「……フェアリー以外、誰にも見られないの?」
ようやくフェルパーが顔を上げ、フェアリーを見つめる。
それに応える様にフェアリーは笑いかける。
「陰になってるからね、大丈夫だよ」
「……絶対に、笑わないでね」
顔を赤くしながらフェルパーが立ち上がる。
フェアリーはそんな彼女の手を取り、ゆっくりと歩きだした。
岩陰に着くと、フェアリーが向こう側から見えないかを確認する。
確認し終えたところでフェルパーに向き直った。
「よし、じゃあまずは水に入ることに慣れようか?」
フェアリーが先に砂浜から海に入り、深さを確認したあとフェルパーに合図する。
「大丈夫?深くない?」
「大丈夫だよ」
フェアリーの言葉を聞き、フェルパーは恐る恐る水に足をつける。が、すぐに離してしまう。
「一気に入れば怖くないよ」
「でも……」
躊躇うフェルパーを見て何かを考え、考えがまとまった所でフェアリーが海から上がる。
そしてフェルパーに近付き、そのままお姫様抱っこをして抱き抱え、海へと入る。
「さて、いい?水に浸けるよ?」
フェルパーは困惑した表情を浮かべるが、やがて諦めた表情になる。
「……うん。」
力無くフェルパーは頷くがやはり怖いらしく、フェアリーに抱き着く。
胸を押し付けられ、フェアリーは若干興奮を覚えたがすぐに冷静さを取り戻し、そして一気にフェルパーを水に浸ける。と同時に背中に鋭い痛みを感じた。
「痛い痛い痛い!ふ、フェルパー、爪が!」
どうやらフェルパーが恐怖のあまりに強く抱きしめ、その結果爪が出たらしい。
「ご、ゴメンね!」
フェルパーが慌てて手を離し、海中の砂に足を着く。と同時にフェアリーが笑った。
「あー、爪は痛かったけど。なんだフェルパー、大丈夫じゃないか」
「あ……僕も気が動転してて気付かなかったよ」
お互いがお互いの顔を見合わせ、どちらともなく吹き出し笑った。
「怖いって思ってたけど、平気だったよー」
「怖いって思ってたから駄目だったんだね」
ひとしきり笑った後、フェアリーが微笑む。
「じゃあ……泳ぐ練習もする?」
「この際僕も怖い物を無くしておこうかな」
またお互い顔を見合わせ、同時に笑みをこぼした。
――『顔を五秒間水に浸けて……』
――『体の力を抜いて浮いてみようか』
――『手を持っててあげるから、足で水をかいて……』
『今僕、前に進めたよ!』――
「フェルパー、上達が早いね」
「フェアリーのおかげだよ」
さっきまで居た場所よりも少し深い所でフェアリー達は泳ぎの練習をしていた。
「もう日も暮れてきたし、そろそろ戻ろうか?」
フェアリーがほぼ砂浜の浅瀬へ移動し、フェルパーを待つ。
「そうだねー、あんまり遅くなるとエルフに怒られそうだもん」
フェアリーの後をついて砂浜に向かう。
だが、砂浜にでる前にフェルパーが砂に足を取られてしまった。
「にゃあっ……!」
「うわわっ!?」
フェルパーはフェアリーも巻き込み倒れ込む。
派手に水しぶきが上がったが、そのおかげもあってかフェアリーも仰向けに倒れ込んだだけで済んだようだ。
「あい、ててて……ん?」
自分のモノに違和感を感じて顔を上げるフェアリー。
そこにはフェルパーの豊かな胸が自分のモノを圧迫している光景が眼前に広がっていた。
「え、ちょ、フェルパー……!」
フェアリーはなんとか動こうとするが、フェルパーが居るため動けない。
更にフェアリーも健全な男である。既に手遅れだった。
「ててて……あ、ゴメンねフェア、リー……?」
フェアリーの腹に顔を埋めていたフェルパーが顔を上げる、と同時にどうやら気付いたようだった。
「フェアリー、コレ……」
「い、いいからまずどいて!これ以上はちょっと……!」
赤くなった顔を手で覆いながら小さい声で叫ぶ。
だがフェルパーは何かを決心した顔になり、その直後フェアリーの水着を一気に下げた。
「フェルパー、何やって……!?」
「いつもフェアリーにしてもらってるから……今度は僕にお礼をさせて?」
「いや、ちょっと意味が違あぁぁ!?」
有無を言わさずに、フェルパーは既に固くなったフェアリーのモノを優しく握り、そのまま水着から零れる胸の谷間へと滑り込ませた。
そしてそのまま両手でなるべく圧迫を加えながら、フェアリーのモノを扱き始める。「ふぇる、パぁ……!何処、でっ!こん、な……!?」
快感に耐えながらも浮かんだ疑問をフェルパーにぶつける。
フェルパーはというと、火照って赤みを帯びた顔をフェアリーに向け、ニコリと笑う。
「この前の『バハムーン事件』の時にやられて……その時かなー。どうかな?気持ちいい?」
フェアリーは退路が無いことを悟り、押し寄せる快感に耐えながら頷く。
海水とフェアリーの先走りによりクチュクチュと水音が響き始め、フェアリーのモノもいっそう強く鼓動しはじめる。
女性経験のないフェアリーに限界が訪れるのは遅くはなかった。
「フェルパー!い、イく……!」
「いいよフェアリー、僕が受け止めてあげるから……!」
フェアリーが一瞬苦しそうな顔をする。それと同時にフェアリーのモノが大きく膨らみ、そして白濁が吐き出された。
元々同種の中では体格が大きいため、フェアリーの大量の白濁はあっという間にフェルパーの髪、顔、胸一面に飛び散った。
「にゃぁっ……熱、い……!」
バハムーンに犯された時と似たような感覚。だが決定的に違ったのは、愛する人のモノということだった。
フェルパーは、胸の谷間でなおも白濁を吐き出しているフェアリーのモノの先を口にくわえた。
「うひゃっ!?」
「んちゅ、んむ……。けほっ、これがフェアリーの味なんだね」
フェルパーは、悪戯っぽい笑顔を浮かべフェアリーのモノを谷間から抜き、白濁を拭い始める。
「続きもしたいけど、今は駄目だからね?」
ある程度拭い終えるとそれを海水で流し、立ち上がる。
「またいつかしようね、フェアリー?」
「え?あっ……」
『今は駄目』の意味を理解し、そしてお互いに顔を赤らめる。
先にその場から逃げだしたのはフェルパーだった。
「……またいつか、か」
日も沈みはじめ暗くなっていく中、フェアリーは愛しい彼女との約束を呟きながら別荘へと歩みはじめた。
「いヤー、エルフも焼けたネー」
「馬鹿ヒューマンのせいですわ!」
「なんだよ、エルフだって楽しんでただろ!」
「まぁまぁ、皆さん喧嘩しないで下さい……」
別荘に着くなり、愉快な喧嘩が聞こえて来る。
皆が浴衣になっているところを見ると、シャワーを浴びた後らしかった。
「よお、フェアリー!遅かったな」
「いや、ちょっと道草してて……」
「あら、フェルパーと同じ理由ですのね」
クラッズが何故かニヤニヤしているが、フェアリーはそれを無視した。
「あれ、フェルパーは?」
「彼女なら今はシャワーを浴びてますよ」
ガチャリ。
セレスティアの説明が終わると同時に浴衣姿のフェルパーが広間へ入って来る。
「あ、フェアリーお帰りー」
猫独特の柔らかい笑みを浮かべフェアリーを迎える。
だがフェアリーはそんなフェルパーを見て固まっていた。
「お?随分早いな」
「シャワーだもんー」
「せめて浴衣くらいしっかりと着付けて欲しいものですわね」
フェルパーが着ている浴衣はしっかり着付けていないため、際どい感じに谷間が除いている。
それを見て、クラッズが固まっているフェアリーに歩みより、囁いた。
「このおっぱい星人メー」
「なっ!?」
この日、自分でも気が付かなかったフェチを気付かされたフェアリーだった。