小ネタの彼方
学生寮の部屋
「カナタ……僕はもう我慢できないよ」
そう言って頬を赤く染め、荒い息を吐きながらせまるショウンにカナタは恐怖を感じた。
「ショウン、やめろ! 僕達は男同士だぞ!」
「くっ。やっぱり性別の壁は越えられないか……」
ショウンは頭を垂れ、悲しげに部屋から出て行った。
大人しく引き退がってくれたと思ったカナタだが、その翌日……。
「え? ショウンが退学した?」
「ああ。急に退学届けを出してな」
カナタは担任のダンテ先生から、信じられない話を聞いた。
自分の拒絶が、ショウンを退学に追い込んだのだ。
カナタは激しく後悔し、自分を責めた。
数日後。一人になりたい、そう言ってカナタは校庭のベンチに座っていた。
どれだけの時間そうしていただろうか。気が付くと、すぐ隣に見慣れない服を着たノームの少女が座っていた。
「あの、どなたですか?」
「……ふふっ」
答えのかわりの微笑。その笑い方だけで、カナタにはわかった。
「まさか……ショウン?」
「うん。やっぱりカナタは分かってくれたね」
目の前の現実が理解出来ないカナタに、女になったショウンが笑いかける。
「ふふっ。3では男装少女とか、男の娘とかができるんだよ。あ、安心して。僕は入学時にちゃんと性別を女にしてるから。BPまで同じになるように入学しなおすの、大変だったよ。でもこれで――」
ずっと一緒にいられるね
そう言ってカナタに口付けするショウン。
ショウンの柔らかさに、カナタはショウンが女性になった事を実感し……
ショウンも気付いた。カナタも何だか柔らかい。
「え? カナタ、まさか」
「ごめん。僕も、僕が女だったら良かったんだって思って……」
そこに居たのは一度退学して入学しなおし、ヒューマンの美少女となったカナタだったのだ。
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「とりあえず、いちごミルクでも飲みに行こっか」
「……うん」
後にこの二人は百合であり薔薇でもある最強タッグとして名を轟かすのだが、それはまた別の話である。