暗い宿屋の一室に、激しい息遣いと荒々しく腰を打ち付ける音が響く。  
「くうっ……ノーム、ノーム!」  
「あっ、うっ……フェル、パーっ…」  
フェルパーが腰を叩きつける度に、両足を抱えられたノームの体が大きく揺れる。ノームは苦しげな表情を浮かべつつも、  
しっかりと彼のモノを締め付ける。  
「出そうだっ…!ノーム、もう限界だっ!」  
「い、いいよ……出して、いっぱいっ……いっぱい出してっ…」  
「ノームっ……うああっ!」  
一際強く突き上げると同時に、ノームの腹に白濁が吐き出される。全てをノームの腹に吐き出すと、フェルパーは彼女の太股に  
挟んでいたモノをゆっくりと引き抜いた。同時に、ノームは力尽きたように、どさりと足を落とす。  
「フェルパーの……いっぱい…」  
陶然と呟き、ノームは腹にかかった精液を、指でゆっくりと塗り広げる。その指がゆっくりと下りていき、何もない股間にまで  
伸びると、ノームはそこへ一際丁寧に精液を塗り付けた。  
「あったかい…」  
「ふー……ノーム、ごめんな。いっつもお前の体汚しちゃって…」  
「ううん、いいの。だってフェルパーの、すごくあったかいし、あたしの体で気持ちよくなってくれてるんだもん」  
下半身がつかないように、ノームは上半身だけを起こすと、しどけなくフェルパーに抱きついた。  
「ありがとな、ノーム」  
そう答えると、フェルパーも彼女を抱きしめる。嬉しそうに目を細めるノームを見て、フェルパーは優しげな笑顔を浮かべた。  
 
その翌日。ドワーフの部屋では、ノームが彼女の上に跨っていた。  
「だ、ダメだってノーム!ダメだってば!」  
「ダメじゃない」  
「そんなの死んじゃうってば!いくら私だって、そんなの耐えられないよお!」  
「耐えなくていいってば。いいから手、放して。何なら先端だけでもいいけど」  
「やだって!ちょっ……先っちょだけでも危ないからっ……や、やめてって…!」  
「あんたはやめろって言ったのに聞かなかった。あたしがやめる必要がどこにあるの」  
「だからぁ、それはノームが破くからでしょ!?だからってなんで、私が死ななきゃいけないのよっ!?」  
首筋に迫る毒のナイフを、ドワーフは危ういところで止めていた。ノームは両手でナイフを掴み、ドワーフは彼女の手ごとそれを  
掴んで止めている。  
「当たり前でしょっ、フェルパーと小さいののいかがわしい本なんか出して、しかも学祭でそれ売るとかっ」  
「おかげでお金はかなり増えたでしょ!?むしろ感謝してほしいくらいなんだけど!?」  
「そういう問題じゃないっ。勝手にフェルパー使った上に、なんか私のこと馬鹿にしてるみたいだったし、大体原稿は破ったのに、  
なんで本が存在してるのよっ」  
「その前に印刷してたからに決まってるでしょ!」  
「最初っからあたしの意見聞く気なかったんじゃないっ」  
「破かなければ聞いてましたよーだ!くっ……まったくノームは、いい加減調子に乗らないでよね!」  
急に強くなった力にも負けず、ドワーフはノームの腕をしっかりと掴むと、グッと体を起こした。馬乗りになった体ごと持ち上げられ、  
ノームは驚きに目を見開く。  
 
「種族の差って知ってる?いくら私が後衛だって、あんたらみたいに非力な種族じゃあね、力比べで勝てるわけないよ!」  
一転、今度はドワーフがノームを組み敷き、ナイフを奪い取る。それを遠くに投げてから、ドワーフはにやりと笑った。  
「さぁてとぉ……悪い子はどうしちゃおっかなー?」  
「くっ…」  
怯えた表情をするノームを、ドワーフはじっと見つめていた。やがて、その顔にだらしのない笑みが浮かぶ。  
「なんか……こう、無理矢理って感じで、いいですね…?男の子がこういうネタ好きなの、わかった気がしますよ…」  
「や、やめてよ……そんな気持ち、わからないでいいから。もう何も言わないから、もう放して」  
本気で怯えるノームに、ドワーフは割とあっさりどいてやった。ノームは体を起こし、恨めしげにドワーフを睨んでから、  
拗ねたように顔を逸らした。  
「ノームぅー?拗ねちゃったー?」  
「……うるさい」  
「うーん、そういうとこ可愛いよねー。あんまり可愛いから、ついつい可愛がってあげたくなっちゃいますよ?」  
「黙れ、この万年発情期。医学書でも読んでてよ」  
「つれないなぁー。ま、いいけどね。今度うちの学校用の、百合モノでも考えてようかなー」  
「あたし使ったら今度こそ殺すから」  
曖昧な笑みでそれに答え、返答自体はせずに、ドワーフはベッドに寝転んで医学書を読み始めた。ノームはベッドから立ち上がり、  
机の前に座ると、ぼんやりと考え事を始めた。  
―――毛むくじゃらめ……そういえばフェルパー、気持ち良くなってはくれてるけど……やっぱりあの本みたいに、本当に入れたり  
   したいかなあ。あたしも、もっとフェルパーに気持ちよくなってもらいたいし…。  
そんな彼女とは別に、ドワーフも医学書を開いてはいたが、頭の中では全く別の考え事をしていた。  
―――うーん、やっぱりBL系ももう一回やりたいなあ。でも、フェルクラはやっちゃったし、うちの中だと……ディアボロス?  
   でも、それだと攻めは誰だろ?クラッズ……は、なさそうだし、やっぱりフェルパー?  
二人は同時に頭を抱え、それぞれの思考へとさらに深く沈んでいく。  
―――だけど、あたしの体じゃそれはできないし、いくら何でもそんな道具はプレゼントしたくないし…。  
―――でも待ってよ……女装っ子相手じゃ、いっそ普通に男女でも良くない?ていうか一般受け考えたらそっちのがいいし、そもそも  
   BL系としても女装っ子は微妙なとこかな……ならいっそ、ディアボロスを女の子に…?  
「……やっぱり、体変えるしかないのかな…」  
「……ノームもそう思う?うーん、やっぱりそうかな…」  
極めて上の空の会話を交わし、二人は再び考え事を始める。  
―――だけど、依代変えるなんて簡単じゃないよね。今のこの体をどうするかってこともあるし、そもそもそんな体、作れるかな…。  
―――うーん、でも違うなあ。やっぱり私が書きたいのはBLだし、女装っ子は女装っ子でいいか。あ、ならいっそ、受け攻め逆転!?  
   ディアボロス攻め……言い換えると女装っ子攻め!これはいけるかも!?  
「でも、難しいよね…」  
「う、難しいかなあ……うーん、確かに作る側はいけると思っても、ダメなことってあるしね…」  
 
ドワーフの一言で、ノームの眉がピクリと動いた。  
―――ダメなこと……ドワーフの言うとおりかもしれない。確かに、生身に近い体は作れるかもしれないけど、あたしは人体の構造なんて  
   全然知らない。そんなんじゃ、本当にフェルパーを満足させてあげるなんて無理だよね…。  
―――だけど、女装っ子受けなんて普通すぎ……いやいや、そんな考えは良くないよね。奇を衒えばいいってものじゃないし、  
   普通っていうのは言い換えれば普遍!それにディアボロスって、無口でクールな女装っ子で、そんな子が攻められて、ついつい  
   抑えきれない声が漏れちゃうとかっ!  
「……うん。無理するよりは、普通にいった方がいいねやっぱり」  
「普通に……そうか、そうだね。無理はできないし、しちゃダメだよね」  
―――なら、ここは素直にドワーフの手を借りるしかないかな。素直に貸してくれるかは知らないけど、食べ物で釣れば何とかなるかな。  
―――うん、よし!次はフェルディアにしよう!ちょっと変わった善意が受け入れられなくて落ち込むディアボロスに、それをノームすら  
   懐かせる包容力で受け入れるフェルパー!よし、決まった!いける!  
「ノーム、ありがとねー。おかげでいい感じにまとまったよー」  
「ん、あたしも感謝してる。あたしも考えまとまった」  
かくして、一見噛み合っているようで、実は全く噛み合っていない会話の末、二人はそれぞれに考えを煮詰めていくのだった。  
 
それから一週間ほどが過ぎた。一行は冥府の迷宮も攻略し、再びプリシアナへと戻ってきていた。  
これまでは割と好き勝手に動いていたが、ずっと迷宮に潜っているだけでは、卒業単位を取得できない。  
そのため、一行は簡単な依頼をいくつかこなすことに決め、現在はもっぱらリコリス先生の人形劇の手伝いをこなしている。  
依頼の内容自体は、人形劇に必要な素材を持っていくだけなので、さして忙しくなるわけでもない。なので、各々は暇な時間を、  
それぞれの学科の勉強や修練に費やしていることが多かった。  
クラッズは体育館を借りて、剣の素振りや組み手をよく行い、フェルパーはその相手や炎術の勉強、合わせて腕立てや腹筋などを  
やっていることが多い。ドワーフは医学書各種をよく読んでおり、また内容は誰一人知らないが、ここ最近は何やら書き物を  
していることが多かった。バハムーンは妹学科の授業に積極的に参加し、ディアボロスはダンサー学科の授業に加え、フェルパーと  
一緒に柔軟体操や、軽いトレーニングを一緒にやっている。そうやって二人でいる場合、なぜかドワーフもいることが多かったが、  
彼女はそれに参加するでもなく、彼等を見つめながら何か考え事をしていることが多かった。  
そして、ノームは図書館に入り浸り、錬金術のありとあらゆる本を読み漁っていた。収められている本は膨大な数だったが、ノームは  
それらの大半に目を通していた。その甲斐あって、彼女の必要とする知識は、この一週間でほぼ完璧に得ることができた。  
だが、彼女一人では、目的を成就できない。ノームは事前にある程度の準備をし、ドワーフの部屋を訪ねた。  
「ドワーフ、ちょっといい」  
「ん、ノーム?ちょっと待って…………よし、いいよー」  
部屋に入ると、また書き物をしていたらしく、机の上にノートとペンが置いてあった。  
「珍しいね、ノームが来るなんて」  
「ちょっとね、頼みごとがあって」  
「へーえ、ますます珍しいね。どんな頼みごと?」  
割と気軽に聞いてくれそうだったが、内容が内容である。ノームは一瞬の間をおいて、はっきりと言った。  
「性器を見せて欲しいんだけど」  
「……え?」  
さすがのドワーフも、一瞬固まった。その一瞬後に意味を理解したらしく、ドワーフは面白いぐらいに慌て始めた。  
 
「そそそそそれってまさか、その、お誘い、ですか!?いやっ、そのっ、それはさすがにほらっ!私受けは初めてでっ、だからそのっ、  
わ、私にも心の準備がっ!ああでもでもっ、嫌とは言わないけどっ、あの、その、だからえっと、最初は優しくしてっ…!」  
理解ではなく曲解されているのを悟り、ノームは静かに口を開いた。  
「嫌だって言っていいよ。別にお誘いじゃないから」  
「あっ……え?あ、そうなの?なんだ、ふーん……はぁ〜、びっくりしたぁ。で、お誘いじゃなかったら、なんでいきなりそんな?」  
「依代を変えようと思って。でも、あたしは生身の体って知らないから、そことか作れない」  
「うわ、なんかさらっと言ったけど、それって錬金術師として食っていけるレベルの話じゃない?」  
ドワーフも頭は回る方である。その時点で、ノームが一体何を考えているのか、そのおおよそを既に理解していた。  
「つまり……ノームは、生身に近い依代を作りたいわけね?フェルパーのために……肉人形を……作る……むしろ、なるんですね…?」  
「その言い方やめて。で、見せてくれるの、くれないの」  
ノームが言うと、ドワーフは不意に真面目な顔になった。  
「そりゃまあ、減るもんじゃないけどさー。いくらノームの頼みだって、いきなり『おまんこ見せて』なんて言われて、  
はいどうぞ!なんて見せられるもんじゃないよ」  
「だろうと思った。何なら医学書貸してくれてもいいけど」  
「それが一番手っ取り早くはあるけど、実物を見たいから、私に言ったんだよね?」  
既に、二人の駆け引きは始まっていた。ノームは落ち着いて、用意してきた選択肢を選んでいく。  
「そういうこと。もちろん、お礼はちゃんとする。夕飯のケーキ一週間分でどう」  
すると、ドワーフは話にならないとでも言うように首を振った。  
「やっすいね、私。それが朝昼晩ならまだ考えるけど、それだけじゃあね」  
「素材とかの経費で、あたしも何かと入用なの。これでも頑張ってる方よ」  
「まあ鉄則だねー。経費は安く済ませろって。でも、友達相手にまで値切ろうとする?」  
「むしろ、友達なら値切ってくれると思うけど」  
「それにしたって、端から値切る気満々なんじゃ、値切ってあげる気も失せるよ。一ヶ月分なら考えるけどなー」  
すると、ノームは早々に踵を返した。  
「そう。じゃ、この話はなかったことにする。大きいのとか、別の知り合いとか当たってみる」  
最初は黙って見送っていたドワーフだったが、ノームがドアノブに手を掛けたところで、渋々といった風に口を開いた。  
「むぅ〜……じゃ、三週間分なら?」  
「……二週間」  
肩越しに振り返り、しかし手はドアノブに掛けたまま、ノームは答える。  
「もう一声ぐらい頑張ってよぉ。男相手だったら万単位で取るところだよ?」  
「相手によって値段変わるんでしょ。なら、そっちだって少し譲ってよ」  
「一週間分も譲歩してるじゃないの〜」  
「それじゃ、無理。これ以上は出せないから」  
再びドアの方に向き直った瞬間、ドワーフは降参だというように息をついた。  
「……わかったよぉ、二週間分で手ぇ打ってあげる。まったく、強引なんだからー」  
「じゃ、取引成立ね」  
一転、ノームは微笑を浮かべ、ドワーフに手を差し出す。仕方ないといった感じで、ドワーフはその手を握った。  
「うん、これで成立ね。ま、ケーキただで二週間なら、悪くもないか」  
思ったよりもうまくいき、ノームは内心ホッとしていた。  
 
が、ドワーフは急に、締まりのない笑顔を浮かべた。  
「それに……実は、ちょ〜っと楽しみでねー、その依代」  
「ん…」  
「だってさー、私のおまんこ参考にして作るんでしょ?それってつまりさ、ノームの新しい体に、私のが付くってことだよね?」  
「っ…」  
ビクッと、ノームの体が震え、表情が凍りつく。だが、ドワーフは気付く様子もなく、にへーっとした笑顔のまま続ける。  
「それでさそれでさ、フェルパーがそれで出したら……つ、つまり、私のおまんこでイっちゃうってことですよね…!?そんでもって、  
その上さらに夢中になっちゃったりしたらっ……やぁん!考えるだけでドキドキするぅっ!もしそうなったらさ、それ私の  
おまんこだよーって教えたらさ、私にも興味持ってくれたりするかなあっ!?うぅ〜、わふっと楽しみぃーっ!それじゃ、早速…!」  
うきうきと服に手を掛けた瞬間、ノームはドワーフの腕を掴んだ。  
「……ダメ」  
「ん〜?何が?」  
「や、やっぱりダメ……今の話、なしっ…」  
途端に、ドワーフの目がスッと細くなり、冷徹な光が浮かんだ。  
「そんな勝手な話、通じるわけないでしょ?さっき確かに、ノームから取引成立って言ったよね?」  
「だ、だからそれはっ……ダメ、ダメなの。お願い、なかったことにしてぇ…」  
「へ〜え?散々値切った挙句、私がそれ呑んだら『やっぱりやめた』って?ふざけんのも大概にしてよ。あんた、私のこと馬鹿にしてる?」  
「ちっ、違うっ……けど、ダメっ、ダメなのっ…」  
「へえ。じゃ、どうすんの?あんた、どうせ私の他に当てなんかなかったんでしょ?トカゲが見せるわけないし、あんたの性格上、  
他に親しい知り合いがいるわけでもない。だから最初っから、取引持ちかける前提で私に頼んだんでしょ?」  
「っ…」  
ずばり言い当てられ、ノームは困惑した表情を向ける。  
「私にも頼めない、他に当てもない。それじゃもう、手詰まりなんじゃないの?」  
「そ……それ、は…」  
ノームが言い淀んだ瞬間、ドワーフはニヤリと笑った。  
「……ケーキ、朝昼晩で一ヶ月分。それで代わりの案が、ないわけでもないよ」  
「え…」  
救いを求めるように、ノームはドワーフの顔を見つめる。  
「そもそもがね、私のだけ参考にしたって、私のおまんこをそっくり作れるだけだよ?ヒューマン、エルフ、クラッズ、セレスティア、  
バハムーン……それぞれ大きさだって違うし、作りも少しずつ違う。個人差だってあるし、サンプルは多いに越したことないよね?」  
「それは……うん…」  
「そこでねー、私の学科が役に立つんだなー」  
そう言い、ドワーフはにんまりとした笑顔を向ける。  
「ドクターなら、そういうの見せてもらうのも、他の人より楽なんだよねー。それに、私も女の子だしー。それに、私はちょこちょこ  
知り合いいるしさ。お望みなら、色んな子のおまんこのスケッチしてきてあげるけど?」  
「………」  
ノームは黙って財布の中身を確認し、複雑な表情を向けた。  
「……に、二週間……ただし、ケーキとティーセット付き…」  
「およ?ここに来てまだ値切る?」  
一瞬、機嫌を損ねてしまったかと、ノームは怯えた表情を見せた。しかし意外にも、ドワーフは笑った。  
 
「いーい根性してるじゃない?それに、ティーセットはなかなか……あっ、そうだ!」  
急に大声を出したかと思うと、ドワーフはポンと手を打った。  
「三週間、朝昼晩でケーキティーセット。ただしお昼はケーキのティーセットじゃなくて、ドーナツとコーヒーセット」  
「そ、そんなお金、どう頑張っても無理だよ…」  
「知ってる。ところが、それも解決する手段があるんだよねー」  
「ど、どんなの」  
「あのさ、全滅しちゃった生徒の救助のバイト、知ってる?極々一部の生徒しか請け負えないんだけど、成功したら全滅したパーティの  
所持金の半額から、治療費を引いた分がこっちの取り分になるんだけどね」  
「……そんなシステムだったんだ」  
「まあ、それが足りなきゃ、その分単位に色付けてもらう程度だけど。で、これって私はできるんだよねー。ドクターだし、実力も  
あるし。でもさ、これ一人は正直辛いんだよね。だからこれ手伝ってくれれば、ノームのお金の問題も解決するし、私もきちっと  
おごってもらえるし、それに何より…」  
そこで、ドワーフは一種禍々しいとも言える笑みを浮かべた。  
「死人に口なし、ですよ?ノームも思う存分、色んな種族のおまんこ見られるし、私も解剖図見られたりするし、いいこと尽くめだと  
思わない?少々傷つけたって、モンスターが傷つけたんだか、私達が傷つけたんだか、わかるわけもないしねー」  
確かに、その点はかなりの魅力があった。またそれ以外に、もはや道もないように思えた。  
「……わかった、手伝う」  
「ほんと?よぉし、それじゃあ今度こそ、取引成立だね!」  
そう言って差し出された手を見て、一瞬ノームは引っかかりを感じた。しかしすぐに気のせいだと思い、その手をしっかりと握った。  
「それじゃ、あとでリリー先生のとこ行ってくるから、詳しくはその後でねー」  
意気揚々と部屋を出るドワーフ。ノームはもう一度財布の中身を見て、少しぐらいは残るといいなと、暗澹たる気分になるのだった。  
 
それからさらに数日。一行の活動はさしたる変化もなく過ぎているが、ここ最近はノームとドワーフが揃ってどこかへ出かけることが  
多くなっていた。とはいえ、それは自分達の探索などを終わらせた上での行動なので、他の仲間に迷惑がかかるというものではない。  
また、二人は必ず一緒に食事を取るようになっており、その際には何かと話をしていることが多い。  
この日も、二人は一緒に昼食を取り、ドワーフが食後のドーナツとコーヒーを頬張っていた。  
「……また依頼、あった」  
「ん、あっはおー。ははら、あほへいほー」  
「口の中の物、片づけてから喋って」  
「んっく……ふう。このドーナツもなかなかだけど、やっぱりトカゲの作った奴の方がおいしいなー」  
言いながら、ドワーフはドーナツをコーヒーに浸し、染み込ませてから再び頬張る。  
「それで、ドーナツとコーヒーセットなのね」  
「おいしいんだよー、これ」  
「あたしはやる気しないけどね。それにしても、大きいのが作ったドーナツの方がいいなら、毎食作ってくれるように頼んでこようか」  
ノームの言葉に、ドワーフはニヤニヤとした笑みを返す。  
「ん、いいですよーだ。それに、あれはあれ。これはこれ、だもんね」  
「……口約束では、あるけどね」  
「そうだねー。確かに証文もないし、証人もいないし。でも、契約破ったらどうなるか、想像はつくんじゃないのー?」  
「想像したくない」  
「それがいいよー。新しい体、大切でしょ?」  
笑顔を浮かべて言うドワーフに、ノームは薄ら寒いものを感じた。  
 
「ふう、ごちそうさまー!それじゃ、ちょっとお仕事行こっかー。今回は拭えぬ過去の道だってさ」  
「近場ね。すぐに終われそう」  
二人は食器を片づけると、すぐに探索の準備を整え、仲間にはちょっと出かけてくるとだけ告げると、揃って迷宮へと向かって行った。  
実力の高い二人だけに、もはや近くの迷宮のモンスターなど問題にならない。二人はあっという間に拭えぬ過去の道へ辿りつくと、  
全滅したというパーティの捜索を始めた。  
この迷宮は、生息するモンスターの強さこそ大したものではないが、扉やワープゾーンのために予想外の長期探索となることが多い。  
地図や、いざという場合の脱出手段の確保はもちろんのこと、そういった長期戦に備えての準備もなしにこの迷宮へ入ることは、  
死にに行くのとほぼ同義である。だが、探索にこなれてきた新入生が、敵の強さに惑わされて奥へと入り込み、そのまま脱出叶わず  
全滅するという事故が、毎年必ず十数件は起こっている。そして、その報告を受けた同級生や、手段はどうであれ生還した者達は、  
地図の確認や食糧、回復薬の確保、魔力の配分など、戦闘以外で冒険に必要な要素を痛感するのである。  
探索開始から約一時間後、二人は六つの死体に囲まれ、それぞれ思い思いの行動を取っていた。  
「……昨日気付いたけど」  
「ん〜?」  
ノームは倒れたクラッズの女子生徒の服を脱がしにかかりながら、ドワーフに話しかける。  
「あたし、あんたに騙された」  
「ん〜?何が〜?」  
ドワーフはドワーフで、ひどい傷を負って倒れたバハムーンの生徒の様子を、克明にスケッチしている。  
「あんたとあたしが、この手伝いやって、そのお金であんたに三週間ケーキセットおごるって話だったけど、これあたし一人でやれば、  
万事解決だったんじゃないの」  
「そうだね〜、やっと気付いた〜?……大きな傷は少ないし、急所への傷も見られないし、毒を受けた様子もなし……死因は失血による  
ショック死かな?」  
ドワーフはまったく気にする様子もなく、次の死体の死因究明に取りかかっている。  
「というより、これってあんた一人だけ儲かるって構図よね。しかも楽に。その上ケーキまで食べて」  
「ま、情報料と授業料とでも思ってよ。大体、ノームが先に仕掛けてきたんだからね」  
一旦顔を上げると、ドワーフはノームに笑いかけた。  
「私達ドワーフに、商談の交渉持ちかけるなんて、無謀にも程があるよ?基本はしっかり抑えてあったけど、それ以上がなきゃねー」  
「……ちょっと考えればすぐわかったのに、なんであんな提案に…」  
悔しそうに呟くノームを、ドワーフは実にいい笑顔で見つめている。  
「最初にさ、牽制し合ってからノームの提案に乗ったでしょ?それでさ、ノームは完全に油断しきっちゃってたんだよねー。  
だから一発揺さぶりかけて、あとは一気に畳みかけて、本命の提案出して、はいおしまい!ふふふ、面白いほどハマったよねー」  
「……どこから読んでたの」  
「どこも何も、最初っからだよー」  
笑いながら言って、ドワーフはビシッと指を突き出した。  
「鉄則その一、弱味は見せるな。ノームはフェルパーにわふっとラブラブっていうのがわかってたから、ここで簡単に揺さぶれた」  
「………」  
「鉄則その二、最後の最後まで油断するな。交渉がうまくいったと思って、ノームは油断したよね?だから揺さぶりの効果が、二倍にも  
三倍にも跳ね上がった」  
 
突き出した指を、二本から三本に増やし、ドワーフは続ける。  
「鉄則その三、何があっても冷静に。揺さぶられてパニクって、その結果がこれだもんねー。取り乱し……乱れ……乱れて  
いいのは……ベッドの中だけ……ですよ…?」  
「そんなどうでもいい情報いらない。とにかく、あんたに取引持ちかけるのは分が悪いっていうのは、よくわかった」  
「そ?ならいいけど」  
ノームは小さなクラッズの死体を散々に弄んでから、それを庇うように倒れるエルフの女子生徒の死体へと移る。  
「……ところでドワーフ」  
「ん、何?」  
「ドワーフとエルフって仲悪い人多いけど、あんたもエルフは嫌いなの」  
「ん〜、そうだね〜。あんまり好きではないかな」  
「ふーん、やっぱり言葉遣いとか、気が合わないとか」  
「エルフって恥ずかしがりで、おっぱいとかおまんことかなかなか触らせてくれない癖に、耳ちょっと舐めたらイっちゃって、  
全っ然攻め甲斐がなくてつまんないんだもん」  
「………」  
ノームは顔を上げ、ドワーフの顔をじっと見つめる。ややあって、ドワーフも気まずい沈黙に気付き、顔を上げた。  
「……いや、ただの冗談ですよ?」  
「冗談に聞こえなかったんだけど」  
「冗談ですってば。さあさあ、とにかくちゃちゃっとやることやって、これ保健室に運ぼうよ。帰還札はあるんでしょ?」  
「うん、あるけど。じゃ、そっちも早く終わらせてね」  
こうして、救助活動という隠れ蓑を手に入れた彼女達は、非人道的な手段によって、それぞれの目的を遂げていくのだった。  
 
「ほいノーム、今回の取り分ね」  
「ん、意外と多いね。ところでドワーフ、リリー先生に何か言われたりしなかった」  
「ん?あ〜、『ドクターとして勉強熱心なのはいいですけど、同じ生徒を教材代わりにするのは感心しません』だって。噂はひどいの  
多いけど、優しい先生なんだねー」  
「怒ると怖いらしいから、ほどほどにね」  
内心は、目をつけられて少し痛い目でも見ればいいのにと思いつつ、ノームはそう言っておいた。  
その後、夕食のケーキをおごるために一緒に食事をし、以降はそれぞれの行動に戻った。ノームは製作途中の依代の続きを作るため、  
急ぎ足で部屋に向かっていたが、その途中で背中に声がかかる。  
「お、ノーム。急ぎかい?」  
「あ、フェルパー」  
途端にノームの足が止まり、小走りでフェルパーに駆け寄った。  
「ううん、別に平気。どうしたの」  
「ああいや、どうしたってわけでもないけど、何か足取りが軽かったから、いいことでもあったのかなってさ」  
細かいところを見てくれる彼に感動しつつも、依代のことは完成まで隠しておきたかったため、答えをはぐらかさねばならない状況に  
ノームは心苦しさを感じていた。  
「ん、別に。ただその、えっと……錬金術の勉強、そろそろひと段落つきそうだから」  
「ああ、また盗賊を主学科にできるようになるからか。なるほどね」  
自分の嘘を、何の疑いもなく信じてしまうフェルパーに、ノームは内心ひどく心が痛んでいた。  
そこでふと、フェルパーの表情が変わる。  
 
「あ〜、んじゃあ、その……忙しい、かな?この後。よかったら……また、二人で過ごしたいんだけど…」  
「……ごめん、早めに仕上げちゃいたいから…」  
「そっかー……最近、御無沙汰だったから、どうかなって思ったんだけど……ま、ひと段落つくまでは我慢かな」  
残念そうではあったが、フェルパーはすぐに気を取り直したようだった。それが僅かながらに、ノームの心を慰める。  
「うん。なるべく早く終わらせるから……そしたら、いっぱい遊んで欲しいな」  
「ああ、俺も楽しみにしてるよ。それじゃ、またな」  
顔は笑顔で、心の中では今すぐいっぱい遊んで欲しいと泣きながら、ノームはフェルパーと別れる。そして心の中で、できうる限り  
早めに作りあげてしまおうと、固く決心するのだった。  
 
ノームが新たな依代製作に取りかかって一ヶ月。作業は思ったよりも順調に進み、また体の構造はドワーフの助けを借り、  
ようやく最後の仕上げというところまで来ていた。  
「うーん。こうして見ると、依代だとは思えないねー」  
その依代を見下ろし、ドワーフが感慨深げに言う。  
「中身入りだって言っても、たぶん全員信じるよこれ」  
「これ、あたしの卒業制作にしてもよかったかもね。これなら卒業確実でしょ」  
二人の前にあるものは、依代というよりも、ただ眠っている一人の少女と言った方が近いような代物だった。姿かたちはノームに  
そっくりだが、その顔には赤味が差し、今にも目を開けそうに見える。その肉体はノームの作った妙な機械の中に収められ、  
満たされた液体の中に浸されている。  
「卒業制作でライフゴーレム……じゃなくてフレッシュゴーレム?ホムンクルス?まあいいや、とにかくそんなの作ってきたら、  
先生達もびっくりだろうねー」  
「そのどれでもないね。ゴーレムには核が、ホムンクルスには生命があるから」  
「じゃあこれは……に、肉人形で……いいんですか…?」  
「すごく嫌な呼び方だけど、それが近いかな。でもドワーフの言い方だと違うものだよね」  
「そんなことないですよ?……で、いよいよ仕上げだねー」  
ドワーフの言葉に、ノームは表情を改めた。  
「そうだね。ドワーフ、他の人はよろしく」  
「任せてー。探索休みに持って行けばいいんでしょ?それぐらい軽い軽い!」  
「頼むね。それじゃ……あたしは、仕上げに入るから」  
「はいはーい。んじゃ、探索中止にはしておくから、頑張ってねー」  
ドワーフが部屋を出たのを見届けてから、ノームはしっかりと鍵を掛け、新たな依代を見つめる。  
彼女の言葉通り、これは肉を持った人形だった。臓器や血液などを備え、生命活動を行うのに十分な機能を持っており、これに核を  
埋め込めば、フレッシュゴーレムとなる。仕上げとは、ノームがこの肉体に、核の代わりに入り込むことだった。  
―――乗り移るのは二回目だけど……うまくできるかな。  
やはり、緊張は隠せない。また、新たな肉体に乗り移ったところで、馴染むまではまともに動くこともできない。不測の事態が起きて、  
このせっかく作った肉体が破壊されないとも限らない。  
―――……クローゼットに隠しっぱなしの方がいいか。  
一度は引っ張り出した依代一式を、再びクローゼットに収める。それを終えるとベッドに横たわり、ノームは目を瞑った。  
―――さてと……そろそろ始めようかな。  
体の各部に付いている機械を、順次止めていく。最後に頭の後ろに付けられた機械を止めると、ふわふわと不安定な感覚に襲われる。  
じっと意識を集中し、肉体と精神との繋がりを意図的に切っていく。まずは右手、そして左手の繋がりを断ち、軽く腕を上げようと  
してみる。しかし、確かに腕を上げた感覚はあるのだが、依代の腕が上がった気配はない。  
 
ノームはさらに続ける。両足、体、頭と次々に断っていき、そっと目を開けると、依代の内側が視界に映った。  
ふわりと浮かび上がる。体は目を閉じたまま、ベッドの上で眠っているように横たわっている。長らく世話になった依代だったが、  
もうこの依代に用はない。  
クローゼットの戸をすり抜け、さらに機械もすり抜けると、ノームは新たな依代の中に入り込んだ。  
―――入りにくいなあ。  
元々、ノームが取り憑くために作られた今までの物と違い、これは人工的に作られたとはいえ、いわば生身である。入り込むのには  
多少手間取ったものの、ノームは何とか新たな依代に取り憑くことに成功した。  
そのまま、全身の感覚を探る。思った通り、今までとはずいぶん違いがあり、腕を動かそうとして、機械の内側に肘をぶつけると、  
強い痛みが襲ってきた。  
「んっ…!?」  
それが思いのほか強い苦痛であることに、ノームは驚いていた。今までは、依代が損傷しないような衝撃などは、大した痛みとも  
感じておらず、また痛みの質自体が全然違っていたのだ。  
―――これが、生身なんだ……何かと不便そう…。  
指を動かそうとしてみるが、まだ数本まとめて動いてしまったり、関係のない足が動いたりと、感覚が全然馴染んでいない。ともかく、  
今は大人しく依代に馴染もうと、ノームは体を動かすのをやめた。  
液体に浸かっているとはいえ、この機械は一種の生命維持装置である。呼吸が苦しいと感じることもなく、暑くも寒くもない。  
何もすることがなく、ノームはじっと外の世界に耳を傾ける。  
窓の外から聞こえる音は、学生達の喧騒。寮の中では、誰かが親しい友人と会ったらしく、大声で挨拶を交わしている者がいる。  
他にも小鳥の鳴き声や、虫の鳴き声。そして何より、キーンという自身の血流の音や、それを送り出す心臓の音が聞こえる。  
―――ちゃんと、うまく作れたんだなあ。  
そう思うと、なぜか鼓動が高まった。何か不具合でも起きたのかと慌てたが、一般に言われる『胸が高鳴る』というのがこれなのだと  
理解すると、ノームの胸がまた高鳴る。  
―――こんな感じなんだ……ちょっと苦しい感じだけど、何だか面白い…。  
胸が高鳴ることに胸が高鳴るという、終わりのない永久機関を続けていると、不意にノックの音が響いた。ノームはビクリと体を震わせ、  
聴覚に全神経を集中させる。  
「ノーム、いないのか?……おっかしいなあ、部屋にいるって聞いたけど…」  
―――あの毛むくじゃらめっ!  
その声は、紛れもなくフェルパーの声だった。今すぐにでも彼を出迎えたくはあるのだが、まだ体が思うように動かず、それも叶わない。  
心苦しくはあったが、黙っていなくなるのを待とうと決めた瞬間、ガチャリとドアの開く音が聞こえた。  
「しかしなんで、ドワーフが鍵持って……あれ……ノーム?」  
―――あの色ボケ万年発情期がっ!!!  
依代が不具合を起こした時のために、一日経って自分が姿を見せなければ様子を見に来てくれと、ドワーフに鍵を渡しておいたのだ。  
フェルパーが鍵を持っているということは、ドワーフがそれを渡したということである。  
心の中でありとあらゆる悪態を吐いていると、フェルパーの慌てたような足音が近づく。ややあって、ノームは抜け殻となった  
依代を発見されたのだと気付いた。  
「おい、ノーム?おいノーム!どうした!?起きろよ!ノーム!」  
フェルパーの焦った声。ノームは返事をしたくてたまらなかったのだが、液体の中では声も出せず、また機械を止められるほどには  
体も動かせない。  
何度かノームを起こそうとした後、フェルパーは慌てて部屋を飛び出して行った。しばらくして、再び足音が近づき、部屋のドアが  
乱暴に開けられる音が聞こえた。  
 
「ドワーフ、頼むっ……君なら、何かわかるんじゃないか!?ノーム、どうしちゃったんだよ!?」  
「そう言われてもなぁー、ノームの体って普通の種族と違うしー」  
白々しい響きの多分に含まれた言い方だったが、冷静さを欠いたフェルパーがそれに気付く様子はない。  
足音はベッドに近づき、どうやらドワーフが形だけの診察をしているらしいことがわかる。やがて、衣擦れの後にドワーフの  
声が聞こえた。  
「中身、入ってないみたい」  
「え?そ……それって、どういう…?」  
「つまり、この体は抜け殻。フェルパー、最近ノームと遊んであげたー?」  
「い、いや、それはノームが忙しいみたいだから、全然…」  
「もしかしたら、それでも強引に構ってほしかったのかもよー?」  
「ええ!?で……でも、あいつに限ってはそんなことなさそう…」  
「女心は複雑なんだよ?もしかしたら、それで大切に思われてないって思って、どっか行っちゃったんじゃない?」  
「……ノーム…」  
悲しげに呼ぶ声に、ノームは今すぐここを飛び出してドワーフを殴り倒した後、フェルパーの胸に飛び込みたかったのだが、まだまだ  
依代に馴染むまでには時間がかかりそうだった。  
「とにかく、一緒にいてあげれば?もしかしたら戻ってくるかもしれないし、そしたら喜ぶんじゃないー?」  
「そう……かもな…。ドワーフ、ありがとな…」  
「どういたしましてー。それじゃ、ごゆっくりー」  
どう考えても、微塵も心配していない声なのだが、やはりフェルパーが気付く様子はない。足音の一つが出ていき、ドアが閉まる音が  
響くと、残ったフェルパーはベッドに座り、ノームの依代を抱き締めたようだった。  
「……何があったんだよ、ノーム…」  
空の依代が答えられるわけもなく、今のノームも答えられない。また、元の依代に戻ることもできず、ノームはクローゼットの中で  
一人悶々としていた。  
早く馴染んでほしいという願いとは裏腹に、感覚が慣れてくるのには長い時間がかかった。一方のフェルパーは、身じろぎ一つせず、  
ノームの元の依代を抱いているらしかった。  
たっぷり数時間が経過し、窓の外からよりも寮の中の物音が大きくなってきた頃、ノームはある程度自由に体が動かせるのを確認し、  
いよいよ行動を開始した。最後にもう一度、指先から動かせるのを確認し、その感覚がしっかりと繋がっているのを確かめ、それらに  
問題がないのを確認すると、内側に取り付けてあるボタンを押した。  
途端に、生命維持装置内の液体が蒸発していき、同時に蓋が開いたことによって、ノームの体が空気に晒される。  
しばらく、ノームはそのまま横たわっていたが、妙な息苦しさを感じた。しばらくして、自分が呼吸をしていないことに気付き、  
慌てて息を吸う。しかし、まだ口の中に液体が残っていたらしく、気管に入り込んでしまい、ノームは思い切りむせ返った。  
途端に、クローゼットの外から凄まじい威圧感が伝わってきた。  
「……誰だ」  
「げほっ、げほっ!ま……待って、フェルパー…!ごふっ……あ、あたしだから…!」  
体を起こし、立ち上がる。しかし筋力が思ったよりなく、その足はガクガクと震え、うまくバランスを取らなければ  
倒れてしまいそうだった。それでも必死に立ち上がり、クローゼットの戸を開けると、フェルパーの驚いた顔が目に映る。  
「ノ、ノーム!?え!?じゃあこれ…?あ、いや、そ、それよりなんで裸なんだ!?」  
「それは、あの……きゃっ!?」  
外に出ようとした瞬間、足を機械に引っかけ、転びそうになる。辛うじて浮遊が間に合ったが、それとほぼ同時に、フェルパーが  
その体を抱き止めていた。  
 
「大丈夫か……って、ん!?な、何か柔らかいし、温かい…!?」  
「あっ…」  
途端に、ノームの全身がかあっと熱くなる。心臓はうるさいほどに高鳴り始め、頭はくらくらしてくる。  
「あ、あの……えっとね、これ、あたしの新しい体…」  
「新しい体!?じゃあ、その……この、ベッドで寝てたのは、前の依代か?あっ、まさかそれで、最近忙しいって言ってたのか!?」  
「うん……ごめんね。フェルパー、びっくりさせたくて…」  
「ああ、びっくりは今日一日だけで何回かさせられた……しかし、何だこれ…!?今までと全然違う…」  
「ど、どうかな。これね、核のないフレッシュゴーレムなの。だからね、生身とほぼ同じで、声とかも前よりは、人間らしく  
なった、でしょ…?」  
確かに、以前は抑揚のない無表情な声だったが、今はきちんと抑揚が付いている。ただ、そういった喋り方に慣れていないらしく、  
まだあまり抑揚のない声ではある。  
「しかしまた、なんでそんな手間のかかる真似を…」  
「……フェ、フェルパー……あの、胸、とか……どうかな…」  
「胸…?」  
言われて、フェルパーは視線を落とす。そこにあったものは、乳首すらついていない無機質な胸ではなく、いかにも柔らかそうな、  
形のいい乳房だった。途端に、フェルパーの顔が赤くなる。  
「あっ、やっ、その……き、きれいになったな…」  
「……嬉しいっ」  
ぎゅっと、ノームが抱きつく。柔らかく、温かい感触が一気に強くなり、フェルパーの尻尾が一瞬にして倍ほどに膨らむ。  
「そのー、ノーム、おい……と、とりあえず、服着ないか?」  
「なんで?」  
「な、なんでって…!」  
ノームはフェルパーの顔を見上げると、満面の笑みを浮かべた。  
「この体ね、フェルパーともっといっぱい愛し合いたいから、作ったんだよ。だからね、まだちょっと、体慣れてないけど、  
抱いてくれると嬉しいな」  
「ま……まだ少し時間が早いと思うけど、元気だな」  
そうは言いつつも、フェルパーのズボンは既に大きく盛り上がっていた。ノームがそこに視線を移すと、フェルパーは恥ずかしげに  
頭を掻いた。  
「……フェルパーも元気」  
「や……はは、そりゃまあ、一ヶ月以上我慢してたから…」  
「え、一人で処理してなかったんだ……フェルパー、ごめんね。じゃあ今日は、あたしの体いっぱい使って」  
抱き締められたまま、床を軽く蹴る。突然の動きによろめき、フェルパーがベッドに腰を落とすと、ノームはその前に跪いた。  
 
依代に慣れていないため、やや覚束ない手つきでズボンを脱がせ、彼のモノを取り出す。すっかり硬くなったそこを撫で、  
ノームは妖艶に微笑んだ。  
「最初は、口でしてあげるね」  
軽く髪を押さえ、そっと彼のモノを口に含む。途端に、フェルパーが呻き声を上げる。  
「うあっ……ま、前と全然違っ…!」  
唾液をたっぷり絡め、根元まで丁寧に舌で愛撫する。そのまま根元に舌を押し付け、先端までねっとりと舐め上げ、先端を舌でつつく。  
さらに唇をすぼめ、唇で扱くように頭を上下に動かすと、フェルパーはベッドのシーツを強く握る。  
それまではなかった、唾液による滑りと体温の温かさは、思った以上の快感となっていた。フェルパーはその刺激に耐えるのが  
精いっぱいで、ただきつく歯を食いしばり、彼女のされるがままになっている。  
そんな彼の姿に、ノームは胸が締め付けられるぐらいの喜びを覚えていた。自然と行為にも熱が入り、ノームはわざと音を立てて  
彼のモノを強く吸ってみる。  
「くっ……お、おいノーム、もうよせっ…!それ以上されたら出るっ…!」  
呻くように言うと、フェルパーはノームの頭を押した。そのまま口に出してくれてもよかったのに、と思いつつも、ノームは大人しく  
口を離した。  
「ふふっ。フェルパーの、すっごく硬くて、熱くて……ね、もう入れても、いいかな」  
「ん……あ、待って」  
そのまま跨って来ようとしたノームを、フェルパーはやんわりと押し留める。  
「俺ばっかりされるのもなんだし、それに君の体、もっと触りたいから、お返しな」  
「え?あ、うん……あっ」  
今度はフェルパーがノームの体を崩し、ベッドに押し付ける。膝から下はベッドの下に垂らし、ノームは仰向けのまま  
期待に満ちた目でフェルパーを見つめる。  
そんな彼女の胸に、そっと手を伸ばす。彼の手が触れた瞬間、ノームの体がピクッと跳ね、同時に彼女の鼓動がフェルパーの手に伝わる。  
「すごく、柔らかい……それに、すべすべしてて、気持ちいいな」  
「あうっ……んっ…!フェルパー…!」  
感触を楽しむように、ゆっくりと捏ねる。やや控えめながらも、しっかりと存在を主張する膨らみは、フェルパーの手の動きに  
合わせて形を変え、その度にノームの体には強い快感が走り抜ける。  
「あっ……あん!はぅ……フェルパー、んっ……フェルパー…!」  
愛撫を受け、先端が硬く尖り始めると、フェルパーはそれを口に含んだ。ビクリと、ノームの体が跳ねる。  
「やっ!そ、それダメぇ…!んくっ……ふあぁ!」  
ノームの体はすっかり紅潮し、心臓はうるさいほどに高鳴っている。それを新鮮な気持ちで見つめながら、フェルパーは空いた手を  
彼女の腹へと滑らせる。  
「んっ……お、お腹、も……気持ち、いいよぉ…」  
ただ、そこを撫でられるだけで、たまらないほどの快感が溢れる。自分で触るだけでは何とも感じないはずなのに、彼の手が  
触れると胸が高鳴り、同時に強い快感を伴う。呼吸は自然と荒くなり、同時に頭がくらくらするような感覚を覚える。  
フェルパーの手が下へと滑り、一度焦らすように太股を撫でると、それまではなかった器官へと触れた。  
「ふああぁぁっ!?」  
途端に、ノームの体が仰け反り、胸に吸いついていたフェルパーは驚いて体を離した。  
「あっ、ごめん!痛かったか?」  
「あ……う、ううん、違うの。えっと、その…」  
ノームは顔を真っ赤にし、恥ずかしげに視線を逸らした。  
 
「き……気持ち、良すぎて…」  
「……みたいだね。すっかり濡れてる」  
彼の言葉通り、フェルパーの指にはねっとりとした液体が付いており、それが自身の体から出たものだと気付くと、ノームは耳まで  
顔を赤くしてしまった。  
「敏感なのは、相変わらずなんだね」  
「これも、盗賊用に感覚特化の神経構造だから……それに、フェルパーが触ると、なんか、どこでも気持ちいいの…」  
「なんか、嬉しいなそれ。相変わらずといえば、つるつるなのも相変わらずだね」  
一瞬何の事かと思い、それが体毛に関することだと悟ると、ノームは少し不安げな表情になった。  
「あ……毛、あった方がよかった…?」  
「ん?いや、ノームは体毛ないので見慣れてるから、これでいいよ。それより……ここ、もっと触っていい?」  
再び、フェルパーの手が股間へと伸びる。それに対し、ノームは恥ずかしげに笑った。  
「うん。だって、そのために作ったんだもん。いっぱい触って」  
許しを得て、フェルパーは彼女のそこを開かせ、そっと指を差し込んだ。途端に、ノームの顔が歪む。  
「うっ……くっ、あっ…!」  
「ノーム…!」  
「や、やめないでっ…!痛く、ないからっ……もっと、いっぱい…!」  
どうやら苦しそうに見えるのは快感のためらしいと気付き、フェルパーはゆっくりと指を動かす。  
だが、いよいよその感覚を楽しもうとしたとき、ノームの手が彼の腕を捕えた。  
「あうっ……はっ、はぁ…!や、やっぱりダメ…!」  
「え、なんでだよ…」  
不満げに言いかけたフェルパーに、ノームは蕩けるような笑みを送る。  
「指じゃなくって……フェルパーの、ちょうだい。あたしの中、フェルパーのでいっぱいにして」  
「そういうことか……よし、わかった」  
早速足を開かせようとすると、再びノームの手が彼を止める。  
「フェルパーも、上脱いで。フェルパーの体、あたしも直接感じたいから…」  
「ああ、ごめんごめん。ちょっと待ってな」  
フェルパーもそろそろ我慢できなくなってきているらしく、上着を脱ごうとして袖が抜けずに手間取り、しまいには僅かに布の  
裂ける音を響かせつつ、強引に脱ぎ捨てた。その間に、ノームは足もしっかりとベッドに上げ、わざと焦らすかのように足を  
ぴっちりと閉じている。  
すっかり服を脱ぐと、フェルパーもベッドに上がり、ノームの足をそっと開かせ、その間に体を割り込ませる。  
鼓動がいっそう速く大きくなるのを感じながら、ノームは大人しくフェルパーを待つ。そのフェルパーは秘裂にモノを押し当て、  
すぐに腰を突き出すが、焦っていたためか滑ってしまい、うまく入らない。  
「フェルパー、ゆっくりでいいよ」  
「う……ご、ごめん。実際するのは初めてで…」  
「うん、あたしも。だから、ゆっくり……ね?」  
「そ、そうか。それもそうだな」  
それで少し落ち着きを取り戻し、フェルパーは改めてしっかりとあてがうと、慎重に腰を突き出した。  
「んっ……う、うあっ!あうっ!あああっ!」  
秘唇がゆっくりと広げられ、先端が熱い粘液に包まれる。ノームの中は思った以上にぬるぬるしており、またきつい。  
中に侵入するにつれ、ノームの嬌声も大きくなり、その体もじっとりと汗ばんできている。  
 
「うっく…!ノーム、平気か…!?」  
「だ……だい、じょぶっ…!」  
苦しげに答えるが、思った以上に中はきつい。腰を進めると閉じられた肉を無理矢理押し広げる感覚があり、ともすれば  
裂けてしまうのではないかという不安が襲う。しかし彼女自身の言葉に、僅かに残った気遣いも消え失せる。  
モノが彼女の中に埋まるにつれ、熱くぬるぬるとした感触が広がっていく。それを楽しむように、フェルパーはゆっくりゆっくり腰を  
突き出していき、やがてその感覚が根元まで来ると、ノームの上に覆い被さるようにして止まる。  
「くっ……んっ…!フェル、パー……動いて、いいよ…」  
何とかそういうノームに、フェルパーは苦しげな苦笑いで答える。  
「む、無理……今動いたら、出る…」  
「……そんなに、気持ちいい…?」  
ノームは嬉しそうに微笑むと、自分から腰を振り始めた。予想外の攻撃に、フェルパーは呻いてそれを止めようとしたが、初めての  
感覚に、しかも一ヶ月以上我慢していたせいもあり、あっさりと屈した。  
「うあっ……やっ、おいっ、ノームっ……出る!」  
ビクンと、体内でフェルパーのモノが跳ね、熱い液体が中に注ぎ込まれるのを感じた。  
「あっ……フェルパーのが……出てる……あたしの、中に…」  
陶然と呟くノーム。フェルパーはノームに覆い被さったまま、全てを彼女の中に注ぎ込むと、少し怒ったような、しかしどこかばつの  
悪そうな、複雑な表情を浮かべた。  
「……出るって言ったのに、お前は〜…!」  
「だって、出してほしかったんだもん…」  
ノームが言うと、フェルパーは少し意地の悪い笑みを浮かべた。  
「そうか。じゃ、一回じゃ足りないだろ?」  
「え?」  
「まあノームが足りてても、俺は足りないから、少し付き合ってもらうぞ」  
「え?え?ちょっとフェル……んあっ!?」  
一度出したにもかかわらず、フェルパーは抜きもせずに腰を動かし始めた。  
「あっ、あっ!や、フェルっ……はうっ!」  
ノームの中を激しく突き上げつつ、フェルパーは彼女の耳を軽く噛んだ。途端にノームの体が仰け反り、膣内がぎゅっと締め付けられる。  
「み、耳はぁ…!お、お腹、すごいよぉ…!」  
突かれる度に、中で掻き混ぜられて泡立った精液が、結合部から溢れ出る。愛液と精液が混ざり、より滑りの良くなった膣内を、  
フェルパーは容赦なく突き上げる。  
「はうっ!あっ!フェルパー、フェルパーっ…!」  
「ノーム……可愛いよ」  
耳元で囁くと、ノームの体がかあっと熱くなった。そして彼に甘えるように、ノームは全身でフェルパーに抱きつく。  
その体をしっかりと抱き返し、フェルパーは欲望のままに腰を振る。既に二人の体はじっとりと濡れ、汗の匂いが鼻孔をくすぐる。  
「気持ち、いいのっ……フェルパー、もっと、もっとぉ…!」  
「ぐぅ…!ノーム、すごくきつい…!ま、また出そう…!」  
 
フェルパーの動きがさらに激しくなり、さすがのノームも若干の痛みを感じ始める。しかし、その痛みは不快ではなく、むしろそれほどに  
彼が気持ちよくなっているのだと思うと、嬉しさに胸が締め付けられるような感じがした。  
「い、いいよ、出して…!フェル……んむぅ…!」  
貪るようにキスを求められ、ノームは必死でそれに応える。やがて、動きの一つ一つが大きく荒くなり、そして一際強く腰が  
叩きつけられたと思うと、再び体内に熱い物が流し込まれるのを感じた。  
「んっ……ふーっ、ふーっ…」  
何とも言えないほどの快感と、幸福感。  
好きな人に抱かれ、求められ、そしてようやくこうして一つになれたと思うと、自然に涙が溢れてきた。  
「んう……ふあ…」  
フェルパーが唇を離すと、ノームは涙を流しながら、放心したように彼を見上げる。  
「あっ……ごめん、辛かったか?」  
慌てて気遣ってくれるフェルパーに、ノームはとびきりの笑顔を返した。  
「ううん、違うの。嬉しくって、胸が苦しくなって……そしたら、なんか勝手に涙出ちゃって…」  
「……ほんと、生身になったんだな」  
「んっ…!」  
フェルパーはノームの中から引き抜くと、彼女の体を優しく拭ってやった。  
「疲れただろ?」  
「ん……体、重い…」  
「それ疲れてるんだよ。もう体洗うのとかは後にしてさ、今は寝ていいよ。俺、一緒にいるからさ」  
そう言うと、フェルパーはノームを優しく抱きしめてやった。温かい腕が、えもいわれぬ安心感を彼女にもたらす。  
「ありがと……ねえ、フェルパー…」  
言いかけたノームの口を、フェルパーは優しく塞いだ。  
「……好きだよ、ノーム」  
言おうとしたことを先回りされ、ノームは一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに満面の笑みに変わる。  
「ん……私も」  
ぎゅっとフェルパーに縋りつく。そして目を瞑ると、あとはもう自分でもわからないぐらい早く、眠りへと落ち込んでいった。  
 
翌朝、ノームはフェルパーが買っておいてくれた焼きそばパンを五つほど平らげ、さらに学食で朝食を取ってからドワーフの部屋へと  
向かった。しかし、今回は愛用している毒のナイフは部屋に置いてある。  
「……いや、だからさ?」  
降参だというように手を上げ、ドワーフが言う。  
「私なりの気遣いだよ?ノームだってよかったでしょー?」  
「言い残すことはそれだけ?」  
ノームの手には、毒のナイフの代わりにシャドーバレルが握られていた。さすがに飛び道具相手では、ドワーフもどうしようもない。  
「いやいやいや、待ってよ。私さ、フェルパーだけは部屋に行くように仕向けたけど、他のは全部行かないようにしたんだよ?  
そりゃまあ、言われたことではないけどさ、ドクターから見てもあの体はちゃんとできてたし、不都合は起きないだろうって確信が  
あったからやったんだからね。気まぐれでいたずらしたわけじゃないよ、ほんとに」  
「……まあ、確かにフェルパーとゆっくりはできたけどさ」  
「でしょ?だからね、もう銃下ろしてよー。それに、ここでそんなの撃ったら、学校中に知れ渡るよ?」  
「……それもそうかもね。じゃ、次はクロスボウにしておく」  
物騒なことを言いつつ、ノームは銃を収めた。ドワーフはホッと息をつくと、にんまりとした笑みを浮かべる。  
「で……どうでした?初めてのセックス、痛かった?」  
「ん、あんまり。あの辺は、痛覚とかあまり感じないようにして、快感だけ感じられるようにしておいたから」  
「あ、ずるーい。でも、ちょっともったいないかも。最初痛いだけだったのに、だんだん中とかでも感じられるようになってくるのって、  
すっごく達成感というか、そういうのありますよ?」  
「そんなのいらない。それに、あたしが痛がってると、フェルパーも気にしそうだし」  
「うーん、愛ですねえ。それでそれで……結局、どんな感じのおまんこにしたの?」  
遠慮のない質問にも、ノームは気にする素振りもない。  
「やっぱり同族がいいかなって、フェルパー族の参考」  
「あ〜、無難なとこだね。まあ、妥当って言えば妥当な…」  
「でも」  
言いかけたドワーフを無視し、ノームは続けた。  
「大きさはクラッズ族参考」  
「何ですとーっ!?」  
思わず叫ぶドワーフのことなど既に眼中にないらしく、ノームはポッと顔を赤らめる。  
「だって、男の人ってきつい方が好きらしいし……昨日だって、抜かないまま二回もしてくれた…」  
「……ノ、ノーム、それ、ちょっと見せて、くれません、か…?」  
尋ねるドワーフに、ノームは冷たい笑みを送る。  
「やだ。見せるのはフェルパーだけ」  
「そんなこと言わないでさー!私だって依代作り手伝ったでしょー!だからちょっとぐらい、い、いいじゃないですか!」  
「ダメ」  
「じゃ、じゃあご飯おごるって言ったら!?」  
「ダメなものはダメ。さっさと諦めて」  
「あ〜ん、いじわるぅ!」  
そこに、コンコンとノックの音が響く。話を中断して出てみると、頭に三角巾を巻いたバハムーンが立っていた。  
 
「お、ノームもいたのか―。あのなあのな、またケーキ作ったんだけど、食べないか?」  
「食べるっ!ショートケーキある!?」  
どうやら交渉は望み薄と悟ったらしく、ドワーフの興味は早々にケーキへと移っていた。  
「あるぞー!あと、チョコレートケーキとモンブランと……あ、ノームはどうだ?」  
「食べる。フェルパーには声掛けた?」  
「ああ、もう全員掛けたぞー。じゃ、カフェの方で待っててくれよ。持ってくからさ」  
言われて、二人は校内のカフェに移動する。すると、既に男連中は席に着いており、丸いテーブルを囲んで一足先にケーキを頬張っていた。  
「お、ノームとドワーフ。お先に」  
フェルパーとクラッズはチーズケーキを食べており、ディアボロスはショートケーキを黙々と食べている。相変わらず女子生徒の  
制服を着ており、またここが母校のため、ディアボロスだけは非常にカフェの雰囲気に馴染んでいる。  
「あ、いいなー。みんな先食べてるんだ」  
「ああ、三人で体育館いたら呼ばれてなー。んで、ディアボロスが面白かったぞ。バハムーンが、ノームとドワーフ呼んでくるって  
言ったら、ひったくるみたいにしてショートケーキ確保してなー」  
「っ…!」  
楽しそうに言うフェルパーに、ディアボロスはほんのり顔を赤くしつつ、非難がましい目を向ける。  
「……何だよ、怒るなよ。悪かったって。そんな気にすると思わなくてさ……二人とも、クッキーもあるけどどう?」  
「ごちそうさまでした」  
「え、食べないの?」  
「え!?あ、いや、食べますよ!?じゃ、ケーキ来るまでこれ食べてよっと」  
ドワーフは当たり前のようにディアボロスの隣に座り、クッキーをがつがつと頬張りだした。かなり量があったはずのクッキーは、  
瞬く間にその数を減らしていく。それを見て、ディアボロスはクッキーを数枚掴むと、それを制服のポケットにしまった。  
ノームは椅子を掴むと、男連中の中心にいたフェルパーの隣に強引に移動する。もはや言って聞く相手でもないので、クラッズは  
黙って席をずらしてやった。  
「……無理矢理だな」  
「だって、隣がいいんだもん」  
クラッズに目で謝ると、彼は『慣れたものだ』と言うように笑う。  
「お待たせー!これ、追加のケーキな!」  
そこに、バハムーンがケーキを持って現れる。どうやらかなり作っていたらしく、現在男性陣が食べているケーキに加え、  
さらに数種類のケーキがトレイに乗っていた。  
「トカゲ、私ショートケーキ!」  
「じゃ、あたしはモンブラン」  
「これ、俺達の分もある?じゃ、またチーズケーキもらうな」  
「僕はどうしようかな……これ、ガトーショコラ?だっけ?これ、もらうね」  
それぞれ思い思いのケーキを取り、バハムーンは余ったケーキを自分の分にして席に着く。その時既に、ドワーフのケーキは半分ほどの  
大きさにまで減っていた。  
 
「おいしー!最近、トカゲ腕上げた?」  
「お、ほんとかー!?嬉しいなあ、それ!」  
「うん、ほんとにおいしいよね。今度は他のも食べてみたいなー」  
思い思いの会話を楽しむ仲間を、ノームは少し戸惑ったような表情で見つめていた。  
「ん?ノーム、どうした?」  
「フェルパー……あの、なんか胸がドキドキするんだけど……なんでかな」  
「楽しいからじゃないのか?こう、わくわくする感じじゃない?」  
「ふーん……楽しいと、こんな感じなんだ」  
しみじみとした感じで呟くと、ノームはにっこりと笑いかけた。  
「楽しいね、フェルパー」  
「はは、そうだな」  
「あれ?なんかノーム、雰囲気変わったかー?」  
「何、大きいの」  
「……気のせいかな?」  
「あ〜、ノーム依代変えたからねー」  
「ええ!?依代変えたって……自分で作ったの!?」  
「愛は強いんですよー。ね、ノーム?」  
「変な振り方しないでよ」  
とはいえ、ノームの口調は怒ったようなものではない。むしろ、そんな会話を楽しんでいるような、どこか楽しげな口調だった。  
好きな人と、より愛し合いたいという一心だけで、とうとう依代まで変えたノーム。その技術は、もはや学園でも飛び抜けたものに  
なっていることに、本人は気づいていない。元より、そんなことに興味もなければ、比べようとも思っていないので当然ではある。  
その鍛え抜かれた技術は、ただ愛する者のために。  
本人はその言い方を嫌がるものの、ドワーフの言葉を全身全霊でもって体現しているノームだった。  
 
 

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