――とある廊下  
   
「バハ子、ちょっといいか?」  
「……何? ヒュム男」  
「いや、大した事ではないのだがな」  
「大した事ないなら……」  
「い、いや! 違っ、その、大した事ないというのは言葉のアヤで……」  
「そう。で?」  
「あ、あぁ……バハ子、昼休みは暇か? 暇なら一緒に昼食をとらないかと思ってだな」  
「……ごめんなさい。ちょっと用事があって」  
「……そうか」  
「ごめんなさい。また今度にでも……」  
「あぁ、楽しみにしてるよ。呼び止めてすまなかったな」  
「気にしてないから……じゃあ」  
   
   
   
「はぁ……」  
「コレで17回目だな。ヒュム男」  
「……覗き見とは感心しないな、フェル男」  
「不純異性交遊は感心出来ることなのかい?」  
「……」  
「んにしても一月前までは堅物だったお前さんがよくまぁ、食事のお誘いをする気になったな」  
「黙れ」  
「はいはい。ま、俺は応援してるからな。我が戦友(とも)よ。さて、昼が暇なら俺につき合え。奢ってやるぜ?」  
「はぁ……どうせノム子についてだろ? お前も懲りないな」  
「類は友を呼ぶのさ。それにノム子は可愛い。異論反論異議却下その他一切は認めない。絶対認めん。  
 ノム子があの可愛い顔を俯かせながら手をモジモジさせて消えそうな声で『可愛いくなんか……』とかメッチャ悶え死ぬ事をしても俺は絶対ノム子は可愛いとショック床のド真ん中で叫んでやる」  
「いっそ清々しいな。貴様」  
「誉めるなよ。ホレ、行くぞ同士よ」  
「同士言うな。馬鹿猫め」  
   
 ◇◇◇  
   
 ――女子寮  
   
 タッタッタッ バタン! ガチャ! バタン!  
   
ディア「ん? あれ? バハ子……食堂に行ったんじゃ?」  
バハ「ハァ……ハァ……ハァ……」  
ノム「……またヒュム男に会ったの?」  
バハ「でぃ、ディア子、ノム子……」  
ディア「いい加減昼食ぐらい一緒に食べればいいのに」  
バハ「む、無理無理無理! 絶対無理! だ、だってヒュム男だよ!?  
 あんなキリッとした顔で優しく『バハ子』って名前を呼ばれるとか、もう私はそれだけで胸が爆発しそうなのに一緒にお昼? 笑顔で血を吐いて死んじゃうよ!」  
ディア「そん時はノム子にリバイバル頼むから安心して行ってらっしゃい」  
ノム「……ドクターノム子に任せて。ブイ」  
 
バハ「ヒドいっ! で、でもそんな事言ってるノム子はどうなのよ!? フェル男と進展したの!?」  
ノム「だっ、だって……フェル男……肝心な時にいないんだもん……」  
ディア「まぁ、実際はフェル男の精神攻撃(ホメゴロシ)で顔を真っ赤にしてフリーズしたノム子が戻ってくるまでに、フェル男がどっかに行っちゃうからなんだけどね」  
バハ「何だ。私と同じか」  
ノム「あなたと一緒にはされたくない」  
バハ「何だと!?」  
ノム「じゃあバハ子。ヒュム男に出会って第一声が『おはよう。今日も可愛いな』って言われながら頭撫でられたらどうする?」  
バハ「え……ヒュム男に可愛い……カワイイ……頭……撫で……ナデナデ……グハァッ!」  
ディア「ちょっ! ノム子! バハ子に手を繋ぐ以上の事言っちゃダメでしょう!?」  
ノム「ゴメン……」  
ディア「バハ子もそろそろ慣れなきゃダメでしょう……? ハァ……そんなんじゃ赤ちゃんつくる時どうするの?」  
バハ「グハァ……ハァ……ハァ……え? ……何で?」  
ディア「え?」  
ノム「え?」  
バハ「え? だ、だって赤ちゃんってドラゴンが運んでくるんじゃないの?」  
ディア「」  
ノム「」  
バハ「? 2人ともどうしたの?」  
ディア「……ノム子、頼んだわ」  
ノム「……バハ子、ちょっとこっち来て」  
バハ「え? 何で? え?」  
ディア「純情な子だとは思っていたけれど……まさかそんなレベルの純情だった何て……」  
バハ「でぃ、ディア子?」  
ノム「バハ子のお父さん、お母さん……ごめんなさい。純情なバハ子のままいさせられなくてごめんなさい。  
 でも友人として、バハ子にはヒュム男と一緒になって幸せになって貰いたいんです」  
バハ「ノ、ノム子? 2人ともどうしたの……ねぇ、ねぇったら!」  
ディア「さらば純情バハ子」  
ノム「いざ南無三」  
   
 〜おしべめしべについて講義中〜  
   
バハ「」  
ディア「生きてる?」  
ノム「何とか。でも貧血気味」  
ディア「血ってなかなか落ちないのよね……」  
 
バハ「グハァ!」  
ディア「あ、おはようバハ子」  
バハ「おはよう。あ、何だ夢だったのね。ヨカッター」  
ノム「いい? バハ子。男の性器はね――」  
バハ「(л゚Д゚)アーアーキコエナーイ」  
ノム「……だからヒュム男と付き合ったら最終的には1つのベッドの中、裸で抱き合いながら朝を迎える事になるのよ?」  
バハ「(л゚Д゚)」  
ディア「……フリーズしたわ」  
ノム「……」  
   
   
   
ディア「……あんなんで本当にヒュム男と付き合えるのかしら?」  
ノム「むしろ明日目を合わせられるかが心配」  
ディア「心配、ねぇ……」  
ノム「……何?」  
ディア「何だかんだ言って、ノム子も優しいわね」  
ノム「……」  
ディア「ふふっ、そんかノム子も私は応援してるからね?」  
ノム「……ありがとう」  
ディア「どういたしまして。さて、私はバハ子を見てるからノム子は食堂に行ってらっしゃい。今頃フェル男が昼食を食べてる頃よ?」  
ノム「いいの?」  
ディア「大丈夫。それに、私は後からバハ子を引きずってでも食堂に連れて行かなきゃね」  
ノム「……じゃあお言葉に甘える。行ってきます」  
ディア「行ってらっしゃい……さて、昼食は遅くなりそうだけど……友達の為だから仕方ないわね。ホラ、バハ子。起きて」  
バハ「ハッ!? ……何だ白昼夢か。ヨカッター」  
ディア「そうね。白昼夢ね。じゃあバハ子。食堂に行きましょうか。もうお昼よ」  
バハ「え? あ……ヒュム男のお誘い断ったんだった……」  
ディア「そこは私がフォローするから。ね?」  
バハ「あ、ありがとうディア子! このお礼は必ずや!」  
ディア「はいはい。期待しないで待ってるわ。そんな事より早く行きましょう?」  
バハ「うん!」  
   
   
   
バハ「ところでディア子」  
ディア「? どうしたの?」  
バハ「えっと……その、ね……せ、せっくすってどうするのかなって……(ゴニョゴニョ)」  
ディア「……ふふっ、バーハー子ー?」  
バハ「な、何!?」  
ディア「ちゃんと聞いてるじゃない」  
バハ「(л;゚Д゚)ア、アーアーキコエナーイー! キコエナーイ!」  
 
 
 

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