―――  
「というわけで、このクエストを受けるぞクラティウス」  
ドラッケン学園の図書館、ある意味、この図書室の主ともいうべきディアボロスの少女キルシュトルテは専用に用意された机の上に一枚の紙を置き、  
腕を組みながら反対側に座るフェルパーのクラティウスにそう言い放った。  
「わかりました、さっそく御用意をさせていただきます」  
「うむ」  
クラティウスの言葉に満足そうにうなづいたキルシュトルテは紅茶を優雅に飲みながらこちらを向く。  
「聞いておったか、シュトレン」  
「聞いてるよ〜、とは言ってもボクは特に用意するようなものは無いしね〜」  
確認のためだろう、ボクにそう聞いてきた姫様に私はいつもの言葉を返す。  
「ふむ、まぁそなたはいざとなれば武器等無くても戦えるそうじゃからな」  
「まぁね〜」  
ボクが専攻している学科はくのいち、一応、刀なんかを使って戦うのが仕事だが、モンスターの息の根を止めるだけなら別に刀は無くてもどうにでもなる。  
それに食料や水分の問題も彼女たちと冒険する分には用意する必要はない、どうせ、クラティウスが用意してくれるからだ。  
「まぁ、でも、姫様がまた、別の人の邪魔をしろっていうんなら別だけどね」  
以前、入ってきたばかりの転入生たちが受けたクエストでのことを思い出す。  
まさか、6人相手に戦うことになるとは思わなかった。  
あの時は適当に相手してから逃げたけど。  
「安心せい、わらわにしてみればたいしたクエストではない、1名ほどパーティの増員を行う予定じゃが、それ以外はピクニックの様なものじゃ」  
「ふ〜ん、でその人って誰?」  
姫様がボクたちの正式なパーティに増員を行うことはそう多くない、あんまり人が増えると自分が目立たない、そんな理由でボクたちはずっと3人で組んできたのだ、そんな姫様がわざわざパーティに加えたくなったというその人物に私は少し興味をひかれていた。  
「予定だとそろそろ来るはずじゃが・・・遅いのう?」  
「遅れました〜〜〜!」  
と、図書室のドアがガラリと大きな音を立て開き、焦った表情の黒髪の少女が入ってきて・・・  
「きゃあっ!」  
こけた、白だった。  
白の子もとい、黒髪の少女はエリスと名乗った  
「見ての通り、種族はヒューマンで、学科のほうはガンナーとパティシエを専攻してます」  
「へ〜姫様にしては珍しい人を選んだね〜」  
専攻の内容から考えて、彼女は完全な戦闘要員だ、しかも敵を排除する、という意味での。  
クエストをある意味、遊びとして見ている姫様にしてはずいぶんと珍しい。  
「うむ、少し前に、どこのパーティにも所属していないガンナーがいると聞いてな、腕前もなかなかであった故、もったいないと思ってな」  
「あはは、そこまでの腕じゃないですけど、脚は引っ張らないように頑張ります」  
姫様の言葉に苦笑いしながらそう答える彼女、だが、その表情に一瞬陰りの様なものが混ざる。  
―ん?―  
「ガンナーは、大勢に囲まれても対応できる技があるという、そなたの働きに期待しておるぞ、今まではクラティウス一人にまかせっきりじゃったからな」  
そういいながら姫様は傍らに控えるメイドをみる。  
「姫様、私のことを思っていただいていたなんて・・・」  
「よい、そなたのためを思えば・・・」  
始まった、姫様とクラティウスのストロベリータイム  
私とエリスを置いて、主従は二人の空間を展開しはじめる。  
「えっと〜・・・」  
「あ〜、しばらくすれば、二人の世界から帰ってくるからそれまで、適当に待ってようよ」  
「あ、はい」  
「んじゃ、これからよろしくね」  
「あ、よろしくお願いします・・・」  
握手をしようとして、お互いに手を伸ばしたところで彼女が止まる。  
ああ、忘れてた。  
「はじめまして、ボクはシュトレン、見ての通りクラッズ、専攻はくのいちね、よろしくねエリス」  
あらためて、名乗ってからもう一度手を出す。  
「…よろしくお願いしますシュトレンさん」  
そのとき彼女はなぜか一瞬悲しそうな顔をした気がした。  
それこそ、気のせいかと思うくらいに。  
 
―――  
約束の雪原、雪の降りしきる白銀の世界、ちかごろそこでクマのような魔獣が現れ、人を襲っているらしい。  
それを倒すだけだから確かに簡単なクエストには間違いない、魔獣を探す道中でのエリスの活躍あって探索は順調に進む。  
先ほどまでのおとなしそうな気配が消え、右手に構えた拳銃で、モンスターを打ち抜いていく。  
「うむ、やはりなかなかの腕じゃな、まぁわらわには及ばんが」  
実際に彼女は強かった、ガンナーではあるが彼女の希望で、前線に立ちモンスターを引き付け、確実にモンスターの体に銃弾を撃ち込んでいく。  
腕、脚、そして、モンスターが機動力を失ったところで、もう片手に持ったナイフをモンスターに突き立てる。  
ガンナーとしては奇妙な戦い方ではあったが、別段気にするほどでもない。  
戦いの最中、何度か彼女が何かを恐れるように呼吸を乱していることが気になったが、まだ慣れないパーティで緊張しているのだろう、そう考えていた。  
だが、それが違うということを知るのは、クエストを終えたあとでのことだった。  
「お疲れ様です、姫様」  
「うむ、苦しゅうないぞ、クラティウス」  
目的のモンスターを軽々と撃退し、いったんの休憩をとる  
「でも、なんだかんだ、かかっちゃったね〜、今日はスノードロップで泊まって明日学校に帰る形かな」  
日はだいぶ傾いており、このまま学園に帰るには少し遅い、おそらく、途中で完全に夜になってしまうだろう。  
「よし、ならば、今日は早く、スノードロップに帰ろう、早いとこ暖を取りたいのじゃ〜」  
そう言って姫様が立ち上がった瞬間だった。  
「グロォォォ!!」  
「何!?」  
死んだと思っていたはずの魔獣が再び立ち上がり、姫様に襲いかかる。  
不意を打たれた形になり、クラティウスの反応が遅れる、だから、ボクが動くほうが先になった。  
「ごめん姫様!」  
「なに、っきゃん!?」  
一瞬で間合いを詰め、姫様の頭を踏み台にして、魔獣に飛びかかる。  
狙いは首、私は走り寄った勢いそのままに体ごとぶつかり魔獣の喉にナイフを突き刺す。  
「ガァァァァァ!!!」  
絶叫と同時に魔獣が放った火球は私の髪を少し燃やしてはるか後方へ飛んでいく。  
少し、遅れていたら火球は姫様の体を焼きつくしていたことだろう。  
手をひねり、魔獣の体を蹴って背後に飛ぶ。  
着地と同時に魔獣の首から大量の血液が噴水のように溢れ、その勢いに押されるように魔獣の体が倒れ込み、動かなくなる。  
―危なかった―  
緊張の糸が切れ、ボクはその場にへたり込む  
「これ、シュトレン、わらわを足蹴にするとは・・・」  
魔獣が完全に沈黙したと分かったらしい姫様が私に駆け寄って軽く頭をたたいた。  
「あはは、ごめん、姫様、とっさだったからついね」  
「お怪我はありませんか姫様」  
クラティウスがあわてて姫様に駆け寄り、傷がないかを確認する。  
「うむ、その点ではシュトレンの見事な技で助かった例を言おう」  
「はは、それほどでも」  
立ち上がって雪を払いながらナイフを鞘におさめる。  
そこで、先ほどの火球が背後を通過したことを思い出し  
もう一人の仲間に声をかけようとして、振りかえる。  
「ん?」  
彼女は銃を持ったまま固まっていた、それも荒い息を繰り返し、魔獣が動かなくなったのに気づいていないかのように。  
「エリス?」  
もう一度声を、かける。  
ぱっと見で、彼女に傷は無い、しかし呼びかけに反応することは無くただ彼女は荒い呼吸を繰り返すだけだ。  
もう一度、声をかけようと彼女に近づこうとしたところで、私は何かが轟音とともに迫ってくる音に気付く。  
―マズイ!―  
ズズズ…  
音は勢いを増しながらこちらへ近づいてくる。  
「クラティウス、結界を!」  
「!?」  
ボクの言葉に反応して、姫様を抱きかかえるようにしながらクラティウが瞬時に魔法壁を展開する。  
だが、少し離れていたエリスまでは守りきれない。  
「エリス!!」  
考えている暇はない、  
ボクは、急いで駆け寄り、彼女を抱きかかえる。  
その瞬間、猛烈な雪崩が私たちを襲った…。  
 
―――  
「う、う〜ん」  
しばらくして、目を覚ます、何とか生きているらしかった。  
「みんなは?」  
辺りを見回す、すると、一面の雪の白にまじり見覚えのある黒髪が目に入った。  
「エリス!」  
急いで駆け寄り、彼女を掘り起こして揺さぶる。  
しかし、何度揺さぶっても彼女が眼を覚ます様子はない。  
まさか、と背中に冷たいものが流れるが、口元に手を当てるとかすかな呼吸が聞こえる。  
生きている。  
「とはいえ・・・」  
少しまずい、どれくらいボクが気を失っていたのかわからないけど、彼女の体は明らかに体温を奪われており、このまま放っておいたら大変なことになるのは分かっている。  
何かないか他の二人はいないか、もう一度辺りを見回すが辺りにはボクたち以外の姿は無い。  
魔法壁はあらゆる衝撃や攻撃を吸収する。クラティウスの魔力で展開し続ける限り、彼女たちは無事だろう。  
とうなると、問題はボクとエリスのほうだ。  
彼女は意識を失っているし、このまま放置するわけにもいかない。  
そして、現在どこにいるのかが分からないこともあって、転移魔法で帰還することもできない。  
こういうときに帰還魔法があれば少なくとも宿までは帰還できたであろうに、ボクはそれを知らないしいつも通り全ての用意をクラティウスに任せたせいで少量の食料と武器ぐらいしか所持していないのも悔やまれる。  
「とりあえず…」  
雪に埋まってしまっているエリスを掘り起こし、担ぐ。  
彼女をこのままにしておくわけにはいくまい。  
「どこか、ほら穴でも探して寒さをしのがないと…」  
時期に日が落ちる。  
ボクは、彼女を背負って、雪の降りしきる森を歩きだした。  
 
それから彼女を背負ったまましばらく歩き続けるうちにほら穴は見つかった、もともとは何かの獣の巣であったのか、奥にたまたま敷き詰められていた木の枝を拾い集め、魔法で火をともす。とりあえずの灯りと暖は確保できた  
「エリス…」  
しかし、ここを見つけるまでに時間をかけすぎたのか、すでに彼女の体は冷え切り、唇も紫色に変色してしまっている。  
「仕方ない、か…」  
このままこのほら穴が温まるまで彼女をそのままにしておくわけにはいかない。  
「不可抗力だから…ごめんね?」  
意識のない彼女にそう言って、ボクは自分のブラウスのボタンに手をかける。そうして、上着を脱ぐと、もう一度、心の中で彼女に謝り、彼女のブラウスのボタンを一つ一つ外していく。  
全てのボタンをはずすと、白くきめ細やかい肌と、それによくあった純白のブラジャーが現れる。  
制服の上からだとよくわからなかったが、彼女の胸は意外とボリュームがある。  
「ん…」  
手が冷たかったのだろうか、彼女の口から小さな吐息が漏れる。  
―な、何だろう、何か変な気分になってきた―  
胸が異様なほどバクバクと音を立て、頬が熱くなってくる、そのまま手をまわし彼女のブラジャーのホックに手をかけ…  
「って、何をやってるんだボクは!?」  
ぶんぶん、と頭を振り邪念を振り払い、彼女の体を抱きしめ、互いのブラウスのボタンを掛け合わせて、熱が逃げ出さないようにする。  
こうやってやれば、互いの体の熱で彼女の体温が下がりすぎてしまうのを防げるはずだ。  
少なくとも、ほら穴の中がある程度温まってくれば、何とかなるはず。  
彼女の冷えた体を温めるにはこれしか方法が…  
「ふぅ…うう…」  
「っひん!?」  
―こ、これは…別の意味でマズッ…―  
普通に考えれば、そうなるのは分かってた。  
クラッズであるボクはヒューマンである彼女に比べて小柄だ  
その彼女を何とか温めようとするために抱き合うには、彼女の頭はボクの肩に乗せて固定するのが一番簡単である。  
「ふぅ…」  
「くあっ…!?」  
耳に温かい息が吹きかけられ、そのたびに背筋をゾクゾクとした感覚が走る。  
―よ、よし、こういうときは深呼吸をして…―  
自分に言い聞かせながら、息を吸い込んで吐く、息を吸い込んで吐く  
―あれ、何か、いい香り…甘い、匂い…―  
パティシエ学科にも所属している彼女の制服に移っていたのだろうかお菓子のような甘いにおいが彼女から漂ってくる。  
彼女の匂いだ…そう思いながら息を吸い込むたびに頭がくらくらしてくる。  
「あ…」  
小さな水音が鳴った。  
静かにボクは自分の下着に手を触れる。  
そこは、ぬめりを帯びた液体でほんのり濡れていた。  
―落!ち!着!け!ボ!ク!―  
―そうだ、こういうときは素数を数えよう!?―  
―えっと?1、2、3、5…って1は素数じゃない―  
「エリス?エリス?」  
このままだとどんどんおかしくなる、というか、すでにおかしくなってる気はするけど。  
熱を逃がさない様に注意しながら彼女の体をゆする。  
ゆするたびに首筋や耳に息がかかって、変な気分はどんどん増してくる。  
理性はすでにパンク寸前、顔からは火が出そうなほどだ、なにかきっかけがあれば彼女の意識がないことをいいことに、変なことをしかねない自分をひたすらに抑え、彼女に呼び掛ける。  
すると、  
「ん・・・」  
シュトレンの想いが天に届いたかは分からないが小さな吐息と共に彼女の瞼が動き、ゆっくりと目を開く。  
「シュ…トレ…?」  
「あ、よかった気が…」  
ついた?  
そう言うつもりだった。  
が、意識を取り戻しかけた彼女が体を起こそうとしたのだろう、伸ばされた手がたまたま、ボクの敏感な部分をなでた。  
さすがに予想していなかったボクはその刺激に耐えられなかった。  
「んんん!?」  
彼女の体を抱きしめたままぶるぶると震える。  
まだ、完全に意識が覚醒していないのか、ぽかんとした表情のエリスを抱きしめながら、ボクは必死に声を抑えるのだった。  
 
―――  
「そ、それにしても気がついてよかったよ」  
なんとか、彼女が完全に覚醒する前に戻ったボクは衣服を正しながら焚火の前に座る。  
あえて焚火の近くに寄ったのは、まだ赤い顔を隠すためだ。  
「こ、こは?」  
「ボクが見つけたほら穴、あのままだと凍死しちゃいそうだったから…」  
ちなみに、エリスはまだ胸元をはだけたままなので目のやり場に困る。  
「ほら穴?キルシュタイン様とクラティウスさんは?」  
「はぐれた…私たち雪崩にのまれたんだけど…覚えてない?」  
そこまでいうと、彼女はようやく全てを思い出したかのように目を見開いた。  
「思い出した?」  
「…はい、シュトレンさんが、助けてくれたんですね」  
自分の服がはだけている様子と、さっきまでの様子から何があったか察したらしい。  
彼女の言葉にボクは頭を少し恥ずかしくなって頬をかく。  
「私のせいで…すいません」  
「いいよ、気にしないで」  
「本当に…」  
「謝らない、仲間を助けるのは当然でしょ?」  
ほおっておけばいつまでも謝り続けそうな彼女を私はそういってたしなめる。  
少し、戸惑った表情をしたが、彼女は静かにうなづいた。  
「それよりも…」  
制服をただし、焚火の向こうに腰かけた彼女に向けてボクは呟く、気になっていることがあった。  
「あのとき、何があったのか聞いてもいい?」  
あのとき、倒したはずの魔獣が立ち上がった時、彼女はあの魔獣を止めようと銃を抜いたはずだ。  
状況的に考えればそのとき、何かがあって彼女は動けなくなっていたに違いない。  
「もし、いいたくないんなら言わなくていいけどね」  
おそらく、何らかのトラウマなのだろう。  
しばらく、彼女はいうべきか悩んでいるのか、顔を上げたり、うつむいたりを繰り返す。  
「隣に座ってもいいですか?」  
「…うん」  
「もともと、私は別のパーティに参加していたんです、そのころの私は、特待生としてこの学園に入ってきて、一言でいえば、うぬぼれていました」  
 彼女は話しだす。  
「私ができていることが、他のみんなにできない、それが腹立たしくて、それでも、私は冒険者にずっとなりたかったから…」  
仲間との衝突も幾度ともなくあったという。  
そんな時、彼女はある仲間の一人と喧嘩をした、きっかけはとても些細なことだった。  
本来ならば大した事のない、何もなければ、後で笑ってしまうようなくだらない理由。  
「そんな仲間を、モンスターとの戦闘中、私が誤射をしてしまったんです」  
たび重なる戦闘で疲弊していた。  
ほとんどの仲間は戦う力を失い、余力を残した彼女一人が戦っていた。  
その時に喧嘩をしていた一人が意地でモンスターに飛びかかったのだ。  
たまたま彼女が狙い、銃弾を放ったモンスターに。  
まっすぐ急所に向かって放たれた弾丸はモンスターと、飛びかかった仲間の両者を貫いた。  
今の時代、冒険者のロストはあり得ない、きっとその人物も治療によって良くなりはしたんだろう。  
だが、たまたまとはいえ喧嘩をしている最中の相手を彼女が誤射してしまったというのが問題だった。  
「仲間は、私を怖がりました」  
当時のリーダーであったバハムーンの少女は彼女の故意による行動ではない、と仲間を説得した。  
されど、もともと彼女に対して不満がたまっていた他のメンバーの感情を抑えることはできなかった。  
次は自分の番なのでは?本当は事故ではなかったのではないか?  
彼女は故意でなかった、しかし、他のメンバーは故意なのではと疑った。  
憶測は憶測を呼び疑惑へと変わる、そして、疑惑は彼女への不信へつながった。  
誰も彼女を信用していない、気付いた時、そこに彼女の居場所はどこにもなくなっていた。  
「結局、私は逃げるようにそのパーティから抜けることになりました、それ以来です」  
あの異変が私に起きるようになったのは、と彼女が呟く。  
「怖いんです、また失うのが…、どうしても、思い出すんです」  
しゃべりながら彼女は静かに涙を流し始めた。  
 
―――  
特待生であった彼女はすぐに他のパーティから誘いを受けることになる、だが、戦いのたびに思い出す光景に彼女は引き金を引く力を失っていく。  
「また、私は誤射するんじゃないか、繰り返すんじゃないかって」  
戦うための力を失った彼女は新たなパーティでも居場所を失っていった、そして結局、彼女は耐えられなくなって、そのパーティからも逃げ出した。  
専攻学科を変え、銃を扱うことは一度は考えた、しかし、素早さではフェルパーやエルフに劣り、力ではバハムーンやドワーフに劣る、ディアボロスやセレスティアの様な魔力もない。  
彼女が特待生であれたのは銃の扱いに秀でたその能力だった。  
涙を流し、震える彼女の肩を抱きしめると、既知感と共に、ある思い出がよみがえってくる。  
「…そのときだったんだ、ボクとあったのは」  
「え?」  
覚えているの?そう言いたげに彼女がボクを見る。  
記憶の中の彼女と目の前の彼女の姿が重なり、ある思いと共に封印した記憶がよみがえってくる。  
「…覚えてる、ううん思い出した」  
姫様に雇われる前のことだった。  
あるとき、ボクが暇つぶしの探索をしている時、1人の少女が3人の男に囲まれているのを見つけた。  
役立たず、仲間殺し、そんな言葉をぶつけ、男たちが少女を蹴る  
一方的な暴力、彼女を見つめる男たちの下卑た視線  
暇つぶしを探していたボクはたまたまそいつらに囲まれていた少女を助けた。  
自分を子供と侮った男たちを叩き伏せ、囲まれていた少女の手を引いてたまたま持っていた帰還符を使い学園に帰還する。  
その後、彼女とは、何度となくあった  
夜毎に、射撃の訓練を繰り返す彼女を遠目から見たり、時には一緒に食事をとったり。  
姫様に雇われ仕事が忙しくなると、彼女を見に行く時間が減り、少しずつ彼女のことをボクは忘れていった。  
―いや、違う、忘れたのはそれが理由じゃない―  
思い出すのは夜毎、彼女を思って一人慰めていたあのころの自分。  
「ボクはさ、大丈夫だよ」  
「え?」  
「もし、撃たれてしまっても別に気にしない、わざとかどうかなんて気にしない、君を信じてるから」  
「何で……信じられないよそんなの…」  
「仲間だったのに、仲間だって信じてくれなかったのに!何で信じられるの!?」  
涙を流しながら彼女は立ち上がってずっと抱えていた思いを吐き出す。  
「君がどれだけ、練習してたのかも思い出した」  
「忘れてたのに!?」  
「それはごめん、言い訳はしない」  
図書室であいさつした時、彼女が残念そうだったのは、彼女はまだボクを覚えていてくれたからだろう、悪いことをしたと思う。  
「じゃあ、なんで!?」  
自分の気持ちに気付いてみれば答えは、簡単に出てきた。  
「好きだから」  
「え?」  
ボクの答えに、彼女は動きを止める。  
「好き、といってもlikeじゃなくてlove恋愛感情のほうね」  
―なんだ、姫様のこといえないじゃんボク―  
「何であのあと、しばらく君とずっと一緒にいたのか、何で突然いなくなったかっていうと、理由は単純で怖かったから」  
「どういう…こと?」  
初恋ってやつだった。  
偶然助けた彼女、一生懸命な彼女、一緒にいるうちに好きになって、それが普通の好きという感情とは違うことに気づいて…  
夜毎、その日の彼女のことを思い出し、妄想の彼女に犯されながら自分を慰める。  
同性に対する本来ありえない感情、本来なら異性に感じるべき感情をボクは彼女に持ってしまっていた。  
「拒絶されたらどうしよう、それが怖くて…」  
気持ち良さそうに寝ていた彼女を見るうちに自分の中の黒くよどんだものを知って。  
それでも、自分の感情を抑えながら、日々を過ごし…、でも、抑えられなかった。  
ある時、ボクはいつものように昼寝をしている彼女を見つけた。  
パティシエとしての勉強を始めたばかりだという彼女からはお菓子の甘い匂いが漂っていた。  
疲れて眠る彼女の無防備な寝顔を見つめる、そう、見つめるだけ…そう思っていたのに  
気付いた時にはボクはその無防備な彼女の唇を奪っていた。  
彼女が目を覚まさないのをいいことに何度も何度も…  
しばらくして彼女が目を覚ましそうになるとあわててボクは何事もなかったように装い、いつもの他愛のない話をして、彼女が自分の部屋に帰っていくのを見送る。  
そして、彼女の去った後に残ったのは彼女に対する罪悪感と、素知らぬ顔で彼女と接する自分に対する嫌悪感。  
だから、姫様に雇われた時、ボクは彼女から逃げ出した。  
 
――――  
 
「ははは、気持ち悪いでしょ?」  
こんなことを今言ったところで拒絶するかもしれないと分かっているのに、  
自嘲気味に笑って、彼女から離れる。  
今の弱い彼女を見ていたら、また、あの自分が抑えられなくなりそうで…。  
「ちょっと、まき拾ってくるね」  
消えそうな火を理由に私は立ち上がり、ほら穴を出ようと歩き出す。  
「まって」  
エリスがそう言ってボクの手をつかんだ。  
「私のこと、本当に好き?」  
「…うん」  
もはや自分の気持ちは隠さない。  
彼女が後ろから私に抱き付いてきたのを背中の感触で感じる。  
「本当に私を信じてくれるの?」  
「うん」  
「じゃあ・・・」  
彼女の顔が私の耳元に近づくそして、  
「証拠を見せてよ」  
その言葉と共に、柔らかい感触がボクの口をふさいだ。  
「私が貴方を信じられるように、抱いてほしい…」  
 
 
―――  
新たに薪をくべられた焚火がほら穴をほのかに照らす。  
「本当にいいの?」  
心臓がバクバクいっていた、先ほどの体を温める行為のためでなく、これから行われる行為への期待はいやおうなく高まっていく。  
コクリと彼女は首を縦に振ってこたえると床に腰をおろし、ブラウスのボタンを焦らすように一つ一つはずしていく。  
ボクも一つずつ、ブラウスのボタンをはずすがなぜかうまく外せない。  
「…あの」  
「な、なに!?」  
エリスの声にボクはあわてて彼女を見る、彼女はすでにブラウスのボタンを全て外し前をはだけさせていた。  
「…はずそうか?」  
「え?」  
ボクが答えに詰まっていると、彼女の手が伸び、ボクのブラウスのボタンをはずしていく。  
「……はい」  
「あ、ありがとう?」  
落ち着いているのか、彼女はあっという間にはずしてしまった。  
「もしかして経験あるとか?」  
「そんなわけ…ない、ほら」  
そういいながら彼女はボクの手を取って自らの胸に潜り込ませた、ブラジャーの内側に…。  
―柔らかい―  
「心臓の音、聞いて…」  
言われるままに意識を集中させると、彼女の心臓はボクに勝るとも及ばない勢いで脈打っていた。  
「こういうことをするのは初めてだけど…できるだけ頑張るから」  
エリスの言葉に胸が熱くなる。  
「ボクも初めてだけど、できるだけやさしくするよ」  
そういいながら空いた手を伸ばし、エリスのブラジャーのホックをはずす、ピクンと彼女の体がはねた。  
やっぱり、行為に対しての緊張が高まってきたらしい。  
ボクのブラウスのボタンをはずすとエリスはボクのブラジャーのホックを探しているのか背中に手をまわしてさする。  
「くふぅ…」  
耳ほどではないが、指が肩甲骨のふちをなぞるように触れるとくすぐられるような快感がやってくる。  
「ボ、ボクは前にあるタイプのやつをつけてるから」  
彼女の手が背中からわき腹をなでてボクの胸の前に伸び、パチンと、小さな音を立てて胸からブラジャーが外れる。  
お互い、隠すものはほぼなくなったわけだ。  
「触るね」  
ボクは一応、断ってからエリスの胸に手を伸ばす、ゆっくりとやさしく、円を描くようになでるとエリスの体が静かに震える。  
自分とは違ってボリュームのある柔らかい胸の感触に夢中になっていく、快感を抑える彼女の表情にボクは嗜虐心を刺激されながらも、理性を総動員して耐え、膨らみだした右胸の突起を口に含んだ。  
「ふぁっ!?」  
エリスの体がはねる。  
「胸が弱いんだ」  
「そんなこと・・・」  
ない、と消え入りそうな声で顔を真っ赤にしながら呟く彼女。  
意地悪がしたくなって、突起の周りをなめ、左の胸をやさしく揉み、突起を指でつまみ、右の胸をあまがみする。  
「きゃう!?」  
かわいらしい彼女の反応にボクの中の欲望がどんどん溢れてくる。  
―もっと、感じてほしい、もっとかわいらしい顔を見せてほしい―  
胸をいじりながら空いた右手をのばし、背中から腰にかけてなでおろし、そしてそのまま手を伸ばし、彼女の下着に触れる。  
その部分は先ほどのボクのようにぬめりを帯びた液体が染み出してきていた。  
「濡れてる…」  
「そ…それは…胸ばかりいじるから…」  
ボクが呟くと、彼女は涙を浮かべながら恥ずかしそうに答える。  
「ああ、ごめん」「え?」  
「こっちもほぐさないとだめだよね」  
そう言って、僕は彼女のショーツをずらして指を一本彼女の中に潜りこませた。  
 
――――  
「ふぁ!?」  
「あったかい…」  
彼女の中は火傷をしそうなほど熱くて私の指を逃がさないようにぎゅうぎゅうと絞めつけてくる。  
更に奥を目指して指をどんどん沈みこませていく、彼女の吐息が、耳にかかってくすぐったい。  
「シュトレン…」  
「ん…?っくぅ!?」  
彼女の声に顔を見ようとすると、ボクの中に何かが入ってくる感触がやってくる。  
たまらず、背中をそらせて、天井を仰ぎ見る。  
「ホントだ…あったかい…」  
彼女の言葉に自分のその部分を見ると、びっしょりと濡れたショーツをずらして、彼女の指が私の中にのみ込まれているのが見えた。  
―負けるわけにはいかない―  
変な感情が湧きあがり、ボクは彼女の中に入れる指を2本に増やし、更に彼女の大事な部分のピンク色の突起を口に含み、カリッとかむ  
「くぅぅぅ!?」  
「痛っ!?」  
彼女の体がビクンと、跳ね上がり、同時にボクの中の彼女の指が奥まで突き立てられる。  
処女膜が押し上げられ、ぴりっとした痛みが下半身に走る。  
ボクの声にあわてて彼女は指を入口まで引き抜く。  
「はうっ…」  
抜ける瞬間に感じたのは快感、もっともっと続けてほしいという気持ちがわきあがり、自然に言葉が出た。  
「だ、だいじょうぶ」  
だけど、彼女は泣き出しそうな表情でごめんなさいとくり返す。  
それならばいっそ…  
ボクはある決心をして彼女から両手を離して彼女の腕をつかむ。  
―奥まで…入るかな?―  
もはや意味を果たしてないショーツを脱ぎ、あらわになったそこに彼女の指を2本そろえてあてがう  
軽く、押しあててみたけど、がんばれば入らなくもないだろう。  
―大丈夫そうかな―  
ボクの入り口は十分に濡れていて入り口で浅く抜き差しを繰り返す分にはスムーズに動く。  
「シュトレン?」  
「大丈夫だよ、心配しないで」  
そういってボクは意を決して一気に腰を落とした。  
 
―――  
勢いとは異なり先ほどまでとは比べものにならない圧迫感が襲い、指はなかなか奥までたどり着かず、ゆっくりゆっくり沈みこんでいく。  
気持ちだけがあせるが思うようにいかない、それでも次第に彼女の指はボクの奥深くに沈んで何かに触れてとまる。  
私の行動が理解できないのか、ただ、私と繋がっている部分に彼女の視線が集中する。  
そして、ボクは勢いをもう一度つけるため、少し彼女の指を抜き、もう一度自分に打ち込む。  
次の瞬間、ブツリ、とボクの中で何かがちぎれる音が確かに聞こえた。  
瞼の裏が真っ赤に染まって、光がはじける。  
「いったぁぁぁぁ…」  
―よ、予想外に痛いんだけど…―  
たまらず、僕は地面に両手をついて痛みに耐える。  
大きく息を吸い込み、吐き出して、自分の筋肉の硬直をといていくと、少しだけ痛みが治まった。  
「しゅ、シュトレン!」  
彼女があわてて自分の手を引き抜くと、そこにはボクの初めてを失った証がまとわりついていた。  
「ははっ、なんか、邪魔でさ…」  
痛みをこらえながら彼女に笑いかける。  
「さ、もうこれ以上痛くなることは無いから遠慮なくどうぞ?」  
まだずきずきとした痛みはするけど、痛みには慣れてる、それに、余計なものがなくなったから、彼女が何かを心配する必要もない。  
そんなボクを彼女はやさしく抱きしめる。  
「なんで…」  
「いや、君に泣いてほしくないし」  
何よりも、どうせ誰かにあげるなら彼女にもらってほしかった、そうおもうと痛みより満足感の方が大きい。  
「それよりもさ、続きしてもいいかな?」  
自分が原因とはいえ、中途半端なところで中断したせいで理性を保ち続けるのがつらくなってくる。  
互いに触れ合っている胸、彼女の匂い下腹部の熱がどんどん高くなってくるのが分かる。  
「いいけど、条件が一つ…」  
「何?」  
何かを決心した彼女の表情  
「私のもシュトレンがもらって」  
何を、とは聞かない  
理性を保ち続けるのも、そろそろ限界だった。  
 
改めて行為を始めると、私は両手で彼女の胸をいじりながら大切な部分に顔をうずめる。  
「何を…」  
「いや、もらうのはいいけど、その前に一回ぐらいは達してもらったほうがいいかな?と思って」  
「そんなこと言ったら、シュトレンは…」  
彼女を温めるとき、偶然とは言え、彼女の行為で達してしまったことを思い出し、赤くなる。  
「ボ、ボクはいいの!!」  
「でも…」  
まだ、何か彼女が言いたそうだったが私は行為で黙らせることにした。  
彼女の敏感な部分の突起を噛み、胸にのばしていた手でピンク色の頂上をつまみあげる。  
「あっ!?」  
そうして、いじり続けながら、彼女の中に舌をつき込んでいく  
「ふっ、し、舌が入って」  
彼女の腰が逃げるように浮きあがるが私はその腰をしっかりと押さえこんで、逃れられないように固定する。  
「しゅ、しゅとれ…」  
甘い、彼女が甘い  
ボクは夢中で彼女の中をなめしゃぶり、彼女の蜜の味を堪能する。  
しょっぱいような不思議な味だが、彼女のだと思うと、なんとなく甘い。  
―もっと、もっとほしい―  
「だめ、だめ…」  
息を切らしながら彼女が私の頭を離そうと手で押してくる。  
―邪魔しちゃ…駄目だよ?―  
小さな抵抗を止める為にボクは歯で敏感な部分をこすり挙げる。  
そして、中を舌でいじるスピードをどんどん上げると、彼女は手を離し、快感をこらえるように顔をおさえる。  
「へんに、へんになっちゃう!!」  
絶頂が近いんだろう  
「いいよ、イって」  
―イって、かわいい顔を見せてほしい―  
とどめ、とばかりに、彼女の敏感な突起を強くつまみあげる。  
「あああああ!」  
ギュウゥゥゥと、彼女の体が収縮し、頭が足に挟まれ、強く押し付けれられる。  
しばらくすると、収縮がやみ、力を失った彼女の体が地面に落ちる。  
―ああ、やっぱり思った通りでかわいいなぁ…―  
汗で張り付いた髪、口の端からこぼれたよだれ、はぁはぁ、と荒い息使いを繰り返す彼女、その全てが愛おしくなり、その唇に自分の唇を重ねる。  
―ただのキスでは終わらせないよ?―  
唇を重ねたまま舌を伸ばし、歯茎をなめあげる。  
初めは戸惑ったような表情を浮かべていた彼女だが、行為を続けるうちに、おずおずと舌を伸ばしてくる。  
その舌に自分の舌をからませながら唾液を彼女におくると、彼女はそれを嚥下する。  
少し前まで残っていた下腹部の痛みが熱に変わり、彼女の全てを奪ってしまいたいという感覚が私を襲う。  
ゆっくりと唇を離すと、唾液が橋を作り、切れる。  
トロンとした彼女の眼がボクを見つめ、静かにいいよ、と呟いた。  
 
いい加減に邪魔になってきた彼女のショーツを脱がせ、指をまず1本、彼女の中に沈め抜き差しを繰り返す。  
かなり狭いけど、クラッズである私の指なら  
その感触に彼女は眼を閉じ、ふぅふぅと方で息をしながらその時を待つ。  
指を増やすたび、次第に彼女の腰が動き初め3本目を受け入れるころには指の動きに合わせて彼女の腰が動くようになっていた。  
ハァハァと、彼女は荒い息を繰り返し、すがるようにボクの背中に手を回す。  
すでに、ボクを攻めようという考えは無いらしい。  
繰り返して彼女のそこがほぐれてくるとボクの指も次第に奥に奥に導かれるように進み、ついにはその部分に到達する。  
―これがエリスの…―  
ほんの少し前まではボクの中にもあったかと思うと感慨深いものがある。  
「いくよ」  
そういうと、彼女はコクリとうなづく。  
ボクは少し指を引いて勢いをつけ、彼女の純潔に指を突き立てる。  
「いっ!」  
「…ん!」  
背中にまわされた彼女の爪がボクの背中に突き立てられる。  
そして、ブツリという音とともに、抵抗がやみ、ボクの指が深く彼女の中に埋没する。  
「くぁっ!?」  
「大丈夫?痛いでしょ?」  
ボクの言葉に彼女は涙を流しながらも何度もうなづき、呟く  
「でもね、でも…これで、私は貴方のもの…」  
けして消えない傷という形で彼女の言っていた証拠が刻まれる。  
「ありがとう」  
いったん指を引き抜くと、そこには私が彼女を奪った証がまとわりついている。  
ぺロリとなめるとそれは鉄の味がした。  
「もう…おわり?」  
まだ痛むだろうに彼女はそう言ってボクに抱き付いて首筋をなめた。  
「まだ痛いでしょ?」  
少し前に味わったからその痛みがどれほどのものか分かる。  
「痛いけど、シュトレンには最後までしてほしい」  
「…最後ってどこまで?」  
「……イかせてほしい」  
消え入りそうな声でささやく彼女  
「うん、分かった」  
もう一度、深くキスをして、手についた彼女の純潔の血を彼女自身にすりこむように胸をなでる。  
「ふぅ…はぅ…」  
そうしながら、空いた手の指を再び、彼女の中に差し入れる  
一瞬彼女が顔をしかめるが、浅く抜き差しを繰り返すと、次第に声の調子が変わっていく。  
「はぁ……はぁ…」  
「気持ちいい?」  
私の言葉に彼女はコクコクと頭を縦に振る。  
指を2本に増やし、抜き差しの速度を上げると、呼吸は更に荒くなる。  
「シュトレン…シュトレン…!!」  
「エリス…エリス…!!」  
「は、はぁぁぁ!」  
突然彼女が叫んで、私の指をきつく締めあげる。  
達したんだろう。  
まだ忘我の彼方で荒い息を繰り返す彼女に再び口づけると、舌をからめているうちに彼女が起き上がり、体勢が入れ替えられて今度はボクが仰向けに押し倒された。  
 
「うまく、できないかもしれないけど…いい?」  
ボクが無言で首を縦に振って答えると、彼女の手がボクの薄い胸に触れる、ゆっくりと、中心の突起部分をあえてよけるように、円を描きながらなでられ、自分のそこが少しずつ、膨らみ始めるのが分かる。  
「…小さいから、あんまり、手ごたえないでしょ?」  
「ううん、あったかくて…とっても柔らかい」  
ボクの言葉に彼女はそう答えながら膨らんできた中心をつまむ。  
「ん、くすぐったい」  
自分の胸に自分以外が触れる感触に私は身をよじる。  
そして、彼女の顔が吸い寄せられるように胸に近づき、中心を軽く噛む。  
ピリピリと電流が走るみたいな快感が胸の頂上から背中に抜けていく、妄想じゃない、本当の彼女に犯されている。  
自分でする時とは違い、いつどんな時にどこが刺激されるかわからず、次はどこだろうという期待で胸がいっぱいになってくる。  
「ねぇ…」  
「っひゃん!?」  
胸からの刺激に夢中になっていて、彼女が何か耳打ちしようとしたことに気づいていなかった。  
不意打ち気味に耳にかけられた熱い吐息に、ついつい甘い声を出してしまう。  
「な、何?」  
耳を押さえ、顔を真っ赤にしながら彼女に応えると、彼女の眼があやしく光った。  
 
「耳が感じるの?」「そ、そんなこと…」  
必死で否定しようとするがそれよりも先に彼女の手が耳を押さえていた私の手を掴んで引き剥がす…そして、  
ふっ、と息が吹きかけられる、たまらず、ボクは甘い声を出して反応してしまった。  
拘束されていない手で口を抑えるがもう遅い、彼女の顔が耳に近づき、生温かい感触と水音が直接耳に響く。  
「そんなとこ…ふくぅぅ」  
耳の穴に舌が差し入れられ、耳たぶが齧られる。いつ、感触が襲ってくるかが分からなくて、空いた手が宙をつかむ。  
―気持ちいい、こんなことがたまらなく気持ちいい―  
下腹部が熱くなって、いつまでも訪れない刺激を待ちわびるように何度も足をすり合わせる。  
「エ…リス…エリス!」  
「なに?」  
「耳ばっかじゃやだ、他のとこも、他のとこもさわってよ」  
さきほどまでエリスに行っていた行為のせいですでにボクは限界に近かった。  
分かった…、そう呟きながらエリスは耳に差しこんでいた舌を抜き、首筋からゆっくりと下腹部を目指すように舌を這わせていく、手もそれに合わせ胸から腰にかけてのラインをなぞり、やはりもどかしいスピードで下っていく。  
だが、舌は目的地の下腹部に到着することなく、途中のへそで動きを止めた。  
「ひぁっ!?」  
突然の刺激にボクは思わず跳ね上がる、彼女の舌はへその中に潜りこみ、その中を丹念になめあげていた。  
―気持ちいい、気持ちいいのに…―  
いつまでもとれない下腹部の熱に我慢できず自分で手を伸ばすが、その手はエリスの両手につかまれ動きを止められてしまう。  
必死で手を動かそうとするが彼女の意外な筋力に阻まれて手は全く動かせない。  
かわりに送られてくる彼女の熱がボクをどんどん熱くしていく、ついに、せつなさが抑えられなくなって涙がこぼれた。  
びくりと彼女が震える、私が泣いていることに気付いたのだろう。  
「シュ…シュトレン…」  
「早く、早く早く……熱いの、熱くて頭がおかしくなっちゃう…」  
ボロボロと勝手に流れ出す涙が抑えられない。  
彼女がほしくて仕方ない、おなかの中をかき回してほしい、頭の中がそれだけでいっぱいになる。  
ふらふらと怪しい光を目に宿した彼女が私を抱きしめる。  
「早く、早く!」  
幾度となく繰り返すと彼女は入口の周りを指でなぞり上げる、まだじらされていた。  
「お願いだから…早く入れてください…」  
はしたないお願いを口にすると彼女は満足そうに笑って力強く指をあて突きいれた。  
「くぁぁぁ!?」  
かなり乱暴な挿入だったが待ち望んでいた刺激に、ボクは入れられただけで達してしまう。  
限界まで彼女の指を締め付け、自由になっていた手で彼女を抱きしめる。  
ふわふわと宙を浮くような感覚が訪れ、落とされる。  
酸素を求めるようにボクは方で息をして荒い呼吸を繰り返す、体の緊張が解け、彼女の腕が解放される。  
同時にボクの体も彼女の手から解放……されなかった。  
イったばかりのボクの中を彼女の指が蹂躙する。  
「イった、まだイったばかりだから」  
たまらず、彼女の背中をたたくが、イったばかりということもあって抵抗にしてはかなりかよわいものになってしまう。  
ゆえに彼女の動きは止まらない、指は2本に増え、抜き差しの勢いはさらに早くなる。  
下腹部の熱をかきだそうとするかの様な動きに私は再び上り詰める。  
「ふぅぅぅぅぅ!?」  
2度目の絶頂は瞼の裏で火花がはじけたかと思うと真っ暗に染まるようなとても激しいものだった。  
 
「…ごめんなさい」  
ようやく、絶頂から解放されたボクにエリスが土下座してそういった。  
2回も続けて絶頂を迎えさせられたせいで腰はガクガクいって。  
いくらなんでもセックスをして、イケないせいで自分が泣くとは思わなかった、しかもエリスはSだし。  
「泣いてるシュトレンがかわいくってつい…」  
変なスイッチが入ってしまったと彼女が応える。  
「あの…なんでもするから許して…」  
上目づかいでそういう彼女に、昔押さえていた黒い欲望を満たしたくなってくる。  
「なんでも?」  
ボクの言葉に彼女は静かにうなづく。  
―ねぇ、エリス?ボクは妄想の君に犯されるだけじゃなく、ずっとずっと妄想の君を犯してたんだ?―  
「ねぇ、エリス」  
彼女がボクを狂わせる。  
「お願いが、あるんだ…」  
夜はまだ始まったばかりだった。  
 
 
「つかれた〜」  
「うん」  
空も白みだしたころ、黒い欲望を吐き出しきったおかげでようやく私は理性を取り戻す。  
幾度となく達したせいで腰はがくがくとなり、大量にかいた汗は愛液とまじりあって何とも言えない行為の後の匂いをほら穴の中に漂わせている。  
今、ボクは彼女の膝に腰かけ抱きかかえられるようにして座っていた。  
何でそんな風にしているかというと、互いになんとなくはずかしくて、まともに顔を見られないからだったりする。  
「あ〜腰ががくがくする〜エリス激しすぎ〜」  
なんでもさせてくれるといった割には攻守が再び逆転すると、信じられないくらいエリスの攻めは激しかった。  
弱い部分を見つけると、そこを丹念に攻めながら焦らしに焦らしてボクに懇願させてからとどめをさす。  
そして、ボクが達したばかりで敏感になっていても攻めを止めない。  
やはり、彼女にはSの気があるようだ。  
「シュトレンこそ…まさか、私の中に腕全部入れる何て…」  
「あはは…」  
「なんでもするとはいったけど…」  
指が3本入ったんだから、クラッズのボクの腕なら入るんじゃないかと腕を入れ、中で手を開いたり、握ったりしたのはさすがに悪いとおもってる。  
「シュトレンの形になっちゃったらどうするのよ…」  
「そしたら責任とって嫁にもらってあげるよ」  
「…そうしないともらってくれないの?」  
「ふふ…」  
彼女がボクにすがるようにそうつぶやく、そんな彼女がかわいらしくて仕方ない。  
「そうじゃなくても、むりやり嫁にするけどね」  
彼女の言葉にそう答えると彼女の顔が真っ赤に染まった。  
 
「…まだボクがいなくなるか怖い?」  
「ううん」  
彼女は首を振った。  
「だって、シュトレンの初めての人は私だしね」  
もう、忘れられないでしょう?笑いながら彼女がそういう。  
「そんなこと言ったらエリスの初めての人もボクだけどね」  
おかしくなって二人で笑いあって私はある事に気づく。  
「あ、そういやボク、エリスから返事もらってない」  
何のことかわからないといった表情を浮かべる彼女  
まぁ、しかたないのかもしれない、だから改めてこういった。  
「エリス…好きだよ、ボクの恋人になってほしい」  
彼女は一瞬、悩んでいるかのように沈黙し少し間をおいてから  
「…大切にしてね」  
恥ずかしそうに笑って、そう答えた。  
そうしてもう一度、キスをして、ボクたちはそのまま抱き合って眠りについたのだった。  
 
 
翌朝、ボクたちは現在の位置がどこなのかを調べながらスノードロップを目指して歩く。  
微妙に二人ともガニ股気味なのは気にしない。  
昨日、余りに激しく愛しあいすぎて忘れてたけど両方ともまだ初めてを失ったばかり。  
特に無茶をしたボクに至っては起きてすぐは、生まれたての小鹿の様な足取りだったせいでエリスに笑われた。  
自業自得だけど…  
 
 
「あー、早くスノードロップに帰って温かいベットに横になりたい」  
「うん…」  
隣を歩くエリスの姿は昨日とは少し異なり、腰には拳銃を入れたホルスターが二つ取り付けられ、よりガンナーらしい格好へと様変わりしている。  
彼女が変わった理由を姫様たちに知られたら何を言われるかわかったもんではないがバレたらそれはそれで仕方ないだろう。  
「でも、姫様たちも同じくらい進んでるんじゃない?」  
思っていたことがボクの口から出ていたのかエリスがそう答える。  
「どうだろ、クラティウスとか奥手だからね〜せいぜいキスぐらいじゃない?」  
そう思うと、ボクたちは一晩でずいぶんと進んでしまったものだ。  
お互いに昨日のことを思い出したのか、顔が赤くなる。  
 
 
「お〜い、シュトレ〜ン、エリス〜おらんのか〜?」  
「お」  
「噂をすれば、だね?」  
遠くから声が聞こえてくる。  
「姫様〜お〜い」  
こちらが答えるとボクたちに気付いたらしい姫様とクラティウスがこちらに向かってくる。  
「あ〜無事でよかった〜」  
ほっと胸をなでおろそうとする。  
と、目に見える距離まで二人が近づいてきたところで二人の後ろにモンスターが現れる。  
―マズイ!―  
二人はこちらに夢中になっているのか、後ろの気配に気づいていない。  
急いで走ろうと足に力を入れる。  
「いたっ!」  
下腹部に鈍い痛みが走る。  
マズイ、全力では走れない、間に合うだろうか、そう思いながらせめて二人に気づかせるために全力で叫ぶ  
「二人とも後ろ!!」  
「何!?」  
ボクの声にようやくモンスターに二人が気付いたが間に合わない。  
最悪の状況を想像しながら、痛みをこらえて走り出す。  
と、その時だった。  
 
走り出したシュトレンの速度が昨日よりも遅い、まだ残る痛みが彼女の動きを阻害しているんだろう。  
このままだと間に合わない。  
「伏せて、二人とも」  
そう思った瞬間、私はそう叫んでホルスターから相棒である2丁の拳銃を抜き出し、二人の背後に立つモンスターに狙いをつける。  
瞬間、あの時の光景が目に浮かび、胸が締め付けられるような痛みが襲ってくる。  
だけど…、それ以上にシュトレンが私を愛してくれた結果の痛みが私を現実に引き戻してくれる。  
「ごめんね…」  
―いつか貴方達としっかり向き合うから、それまで、この傷を抱えて私は歩んでいくから…走るのは苦手だし、いつ追いつけるかわからないけど…必ず、いつか追いついてみせるから…だから―  
「バイバイ…また逢いましょう」  
決意を胸に私は引き金を引いた。  
 
辺りに獣の咆哮にも似た銃声が響き、二人に迫っていたモンスターはそのまま仰向けに倒れていく。  
放たれた2発の弾丸は見事にモンスターの頭を打ち抜き、沈黙させた。  
「エリス…」  
銃声を放った人物のほうを向くと、少し震えながらも彼女は拳銃をしまってボクに笑いかける。  
驚く二人をしり目に、彼女はボクに近づいて大丈夫と耳打ちした。  
「いこう、シュトレン」  
「うん」  
二人で手をつないで、歩き出す。  
「二人とも大丈夫〜?」  
「うむ、お主らも無事で何よりじゃ」  
「なんとかね〜」  
ふと、クラティウスが何かに気付いたように私たちを見る。  
「お二人とも、怪我をなされているのですか?血の匂いが…」  
―…しまった、フェルパーの嗅覚忘れてた!!―  
「なんじゃと!?今すぐ治療を」  
「あ〜えっと…」  
なんて応えるべきよう、考えていると  
「大丈夫です、これは…」  
「エリス?」  
「いわゆるところの名誉の負傷ってやつですから」  
二人はわけが分からないといった表情を受かべていたが、エリスは私だけに見えるように舌を出して笑った。  
「だね」  
私もそれに合わせて静かに笑った。  
 
 
さてと、何はともあれ、クエストは達成じゃの」  
「さようですね姫様」  
静まりかえった図書室、主人と従者は専用の机に“2枚の紙を広げ”、呟く。  
 
一枚は雪原に現れた魔獣の退治  
もう一枚はとあるバハムーンの生徒からの依頼  
「それにしてもシュトレンはどのように彼女を立ち直らせたのかのう?」  
キルシュトルテは達成済みのハンコを二つの書類に押し、隣に控える従者に手渡す。  
「さぁ、そればかりは彼女しか知りません…が」  
まさか一発やって立ち直らせたとは知らない二人は、状況から確認できる彼女の変化を結果として知ることしかできない。  
「いい表情をしていたと思います、もう、彼女が立ち止まることは無いでしょう」  
「…うむ」  
 
従者クラティウスは書類を達成済みの棚に入れながら思い出したように呟く。  
「姫様も随分と、思い切ったことをなされましたね」  
従者の言葉に姫はうん?と不思議そうな顔をした。  
「彼女を我々のパーティに加えたことです」  
エリス、ヒューマンの少女、学科はガンナーとパティシエ  
ある事件を境に、敵と自分の間に味方がいると戦うことができなくなっていた少女  
従者の言葉に姫はそれか、と呟いた。  
「シュトレンにいったことは偽りではない、確かにお主の負担を減らしたかったのは事実じゃしな」  
くすくすと、いたずらがうまくいった子供の様な笑みを浮かべて姫は応える。  
「彼女の存在は昔、シュトレンから聞いたことがあってな、凄腕のガンナーがいると、  
シュトレンは忘れておったようじゃが、わらわは覚えておる、あ奴が認めるほどの腕じゃ、腐らせておくのはもったいない、それに依頼のこともあったしの」  
しまっている最中のクエスト依頼の紙をクラティウスは確認する。  
 
 
 
 
 
依頼人はバハムーンの少女  
 
――――  
昔、私の至らなさのせいで傷つけてしまった少女がいる。  
噂で、彼女は未だにそのことを抱えて苦しんでいるということを聞いた。  
彼女にわびるには、私はまだ未熟すぎる、彼女も私と会うことで苦しんでしまうかも知れない。  
勝手な話かも知れない、それでも、誰かに彼女を助けてほしい  
むしのいい話かもしれないが、彼女には前を向いて歩いてほしい  
 
――――  
 
 
「…依頼主に報告をしておいてくれるかの?クラティウス」  
紅茶を口にしながら姫は従者にそう命じる。  
「はい、姫様」  
パタンと、棚をしめた従者は姫がまとめた報告書を受け取る  
「報酬はいらん、その代わりに、いつか謝れるようになったら彼女にちゃんと謝るように伝えてほしい」  
「わかりました、それでは…」  
 
 
去りゆく従者を見送り、一人残されたキルシュトルテは離れている間に溜まった書類を片付ける。  
まず、最初の書類は新たに自らのパーティに加わった少女の部屋割に関する書類。  
「……別にシュトレンとエリスの部屋は相部屋でいいじゃろう」  
クラティウスは気づいていただろうか?  
学校までの道で常に手を組んでいた二人に…  
「少し、妬けるの…」  
彼女の呟きは、図書室の空気にとけ消えていった…。  
 
 

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