俺はどこかが歪んでる。  
 
あいつの笑顔をみるたびに、苦痛で歪む姿がみたい  
細い体に爪をたて、その体を引き裂いてしまいたい  
あいつが俺を呼ぶたびに、細い首を絞め、苦しむあいつの姿がみたい  
俺をあいつに突き立てて消せない傷を刻みたい  
あいつがどうしようもないくらい好きなのに  
あいつを壊してしまいたい  
 
ああ、俺はどうしようもないくらい歪んでる。  
 
 
抜き打った練習用の拳銃は、木製の練習刀に弾かれ飛んで行った。  
「どうしたよヒューマン、調子悪いじゃねぇか」  
組手の相手をしてくれたディアボロスが僕を見てそうつぶやいた。  
5戦、0勝5敗、普段の僕なら考えられない成績だと彼は言いたいのだろう  
「…どうにも、欲求不満でね」  
最近は手ごたえのないクエストが多くて、僕の胸に抑えている暴力的な衝動はたまり続ける一方だった。  
「たまってんなら彼女のフェアリーに処理してもらえば良いじゃねぇか」  
煙草を咥えたディアボロスが軽薄な笑みでそう言ってくる。  
「黙ってろ、二度とモノが使えねぇようにしてやるか?」  
「おお、怖ぇ怖ぇ、そいつは簡便だな、フェルパーを満足させられなくなる」  
「ちょ!ディアなにいってるの」  
傍らで僕らのことを見ていたフェルパーが真っ赤になりながら近づいてくる。  
「ははは、ホントに君らは仲いいね」  
苦笑いで彼に言った言葉は本心だった。  
 
自然体で接し合える彼らがうらやましい、彼らがつきあいだしてからもう9カ月ほどにもなっていて昔の彼らからくらべると想像もできないほど二人は変わった。  
顔を合わせるたび喧嘩が絶えなかった二人は楽しげに会話をするようになったし、フェルパーは煙草を吸うようになり、ディアボロスはこうして稽古をするようになった、互いに影響を与えあっているということが二人を変えた。  
フェルパーはディアボロスの妹のような人間を助けるようになりたいからと、ドクターとして勉強を始めた。  
その腕はパーティ内でもかなり信頼におけるものとなっていて、4か月ほど前にノームの妊娠が発覚した時もその知識を発揮し問題の解決に一役かってくれた。  
ノームとバハムーンも子供が生まれてからだいぶ変わった。  
昔はほとんど表情や感情をうかがい知れなかったノームは母親になってからは少し、感情が分かりやすくなった、僕らの中で最も年下ではあるけれど、精神的な面でいえばうちのパーティでもっとも大人として意見を言えるのが今の彼女だと思う。  
そして、昔はあまりしゃべることがなかったバハムーンはかなり口数が増えた、そのほとんどはまだ幼い娘の話ばかりではあるけど、それもある意味もっと父親らしいことだと思う。  
みんな変わってきている。  
初めて僕らがあった時から…。  
 
 
変わっていないのは僕…、未だに胸の中に抱える歪みのせいで、好きな彼女との関係を進める事すら恐れている僕。  
ときおり自分が彼女のことを好きでいるのは別の理由なんじゃないかと思う自分がいる。  
依存させるだけさせて、裏切った時どんな顔をするのか見たいだけなんじゃないかと、自分自身が信用できない。  
それが、俺に彼女との関係を進めさせることを拒んでいる。  
余計なことを考えたせいか俺の中の歪みが獣のように暴れだす。  
「あ〜クソ…」  
胸糞が悪い、何もかもぶち壊してしまいたい。  
 
 
「ヒューマン腕だして、精神安定剤注射してあげる」  
俺を見たフェルパーがドクターとしての顔でそう言う。  
「悪いが頼む、すげぇ気持ち悪ぃ…」  
「でしょうね、ひどい顔」  
傍らに置いた鞄を開き、中から注射器を取り出し、アンプルを片手で開けて、中の薬剤を注射器で吸い上げ、軽くはじいて空気を取り除く。  
そして、慣れた手つきでアルコールを含ませた綿で僕の腕を吹き、注射器の針を腕にさし薬剤を押しこむ、薬が注射されしばらく休んでいると少しだけ暴れてた馬鹿がおとなしくなってきて心がだいぶ落ち着いてくる。  
早く、こんな薬の世話にならなくて良いようになりたいものだ。  
「よし、ディアボロスもう一回やろうぜ、ちょっとばかし暴れてぇ」  
薬だけでは抑えきれない分が少しだけ、まだ暴れてた。  
「はいよ、リーダー」  
ほんの少しでも良い、この衝動を抑えられるようにするのが僕の目標だった。  
 
 
タカチホ義塾、食堂  
 
ここにはあるルールが存在していた。  
曰く、とあるヒューマンに逆らってはいけない。  
曰く、そのヒューマンに何かを言うときは言葉の頭と終わりにサーをつけないといけない。  
ある意味食堂の掟とも言うべき彼はチームのメンバーと共に静かに食事をとっていた。  
ゆえに食堂は静かだった。  
 
「…平和だね〜」  
冬も過ぎて温かくなってきた、だがそれ以上にぽわぽわと温かい空気を漂わせてフェアリーが呟く。  
「僕としては少し物足りないかな、なんか思いっきり暴れられる相手がほしいよ」  
「ヒューマンは戦うの好きだもんね」  
「戦うのも好きだけど、フェアリーのことも大好きだよ」  
心の中の凶暴性を抑えながら僕はフェアリーにそう答える。  
「やだ、ヒューマン」  
僕の言葉にフェアリーが頬を染めて恥ずかしそうに笑った。  
彼女は僕が抑えている凶暴性に気付いているだろうか?  
彼女に笑顔を見せながら心の中で、彼女は首を締めたらどんな顔をするのだろう、という暗い想いを抱いている。  
「でも、確かにヒューマンの言うことも分かる気がする、なんか最近静かすぎ…その分、子育てに専念できるから私はうれしいけど」  
腕の中で眠る、生まれて約半年になるわが子の頭をなでながらノームはぽつりとつぶやいた。  
「まぁ、今はいろいろ忙しい、クエストの依頼も内容が限られるだろう」  
バハムーンは眠るわが子、スノウの頬をつつきながらそう答える。  
しばらくすると、三学園の交流戦が開かれる、その準備もあって、受けられるクエストもその準備にちなんだものが多い。  
そんなこともあって、最近の僕らは暇だった。  
「ディアは少しうれしいんじゃない?」  
「まぁな、フェルパーが毎日俺の部屋にくるから退屈はしねぇし」  
少し離れた位置で煙草を吸う侍カップルはもはやこの食堂の名物と化している。  
ふと、僕はそんな二人をフェアリーがうらやましそうに見ているのに気がついた。  
「どうしたの?フェアリー」  
「…ん、なんでもない」  
僕の言葉にそう答えるフェアリーは言葉とは違って少し悲しそうだった。  
 
 
俺はどこかが歪んでる。  
彼女の悲しそうな顔を見るたび、俺だけのものにしてしまいたいと思う。  
何かを耐える彼女を見るたび、泣き叫ぶ彼女を夢想する。  
彼女のことを汚したい、彼女のことを壊したい…  
彼女の服を引き裂いて、彼女に自分を突き立てて、あの羽を爪で切り裂いて…  
ああ、俺はやっぱり歪んでる。  
彼女の全てを奪いたい…  
 
 
食事を終えると、僕は散歩と称して一人で学園を後にする。  
いい加減爆発してしまいそうな衝動を発散させておきたかった。  
ノームに作ってもらった薬を振りまいて、モノノケが集まってくるのを待つ。  
衝動に一度身をゆだねてしまうと僕は仲間であっても傷つけてしまう。  
フェアリー以外のみんなは知っていて、何も言わずに協力してくれる。  
それがとてもありがたい、彼らとパーティを組めて本当によかったと思う。  
次第に集まってきたモノノケを見ながら、僕はゆっくりと自分の心を縛る枷をはずす。  
 
今この瞬間だけ、僕は俺という獣になる。  
集まったモノノケの中心に飛び込み、手じかなモノノケの頭を拳銃でポイントし吹き飛ばす。  
辺りに血が飛び散って、集まったモノノケが騒然とする。  
そうだ…おびえろ…  
拳銃では味わえない感触が楽しみたくて、俺は拳銃をホルスターにしまう。  
目の前の恐怖にとらわれたモノノケが、恐怖の原因を排除しようと俺に飛びかかる。  
「…くはっ!」  
笑みが、こぼれる、ああこれだからたまらない。  
飛びかかってきたモノノケの首をつかみ、地面にたたきつけ、暴力的に引きちぎる。  
一瞬で絶命できなかったモノノケが苦しげに暴れ、辺りに血をまき散らせながらゆっくり力尽きる。  
息を大きく吸い込むと、血の匂いが胸を満たす。  
「くはは!くはははは!」  
ああ、楽しくてしょうがない。  
次のモノノケに手を伸ばす。  
俺はただただ衝動を満たすため。素手でモノノケを屠り続ける。  
モノノケを狂ったように引き裂いて、その体をまき散らす。  
狂った行為に酔いしれる。  
――――  
「…はぁはぁはぁ」  
ようやく衝動がある程度おさまる頃には辺りは血の海と化していた。  
歪に引きちぎられたモノノケの死骸が散乱し、スプラッタ映画の様相を見せている。  
これを自分がやったのだと思うと、その醜悪さに吐き気がする。  
「うぐ…」  
こみ上げてくる嘔吐感に僕は胃の内容物を吐き出した。  
僕と俺、どちらが本当の自分なのかが分からない。  
僕は彼女が大好きで、彼女のことを守りたい。  
俺は彼女が大好きで、彼女のことを壊したい。  
「ははは…ホント自分がやんなるなぁ…」  
どうしてこんなにも自分は歪んでしまっているんだろう  
「でも、僕は君といたいんだ…」  
だから僕はこの行為をやめられない。  
抑えておいた衝動を発散させ、理性で縛れるようにしなければいけない。  
彼女を傷つけないように、彼女に嫌われないように…  
僕は歪んでる、彼女を傷つけないために、他のものを代わりに傷つけないと自分を保てない。  
「歪んでんなぁ…」  
楽しいことなんて何にもないはずなのに、なぜか笑いが止まらなかった。  
 
 
ぽつぽつと地面に広がる染みにヒューマンが歩みをとめた。  
「あー…雨が降っちゃったか」  
「う〜ん急いで帰れば大丈夫だと思うけど…」  
今、私と彼は二人きり、ただのお使いのようなクエストを受け、ヨモツヒラサカへ来ていた。  
学園を出てきたときは雨など降るとは思っていなかったし、当然雨具など用意しているわけがない、予報士の私にしては気を抜いてしまったなと思う。  
「最悪あんまり強くなるならどこかで雨宿りしよう、ある程度すれば、弱まると思う」  
「フェアリーがそう言うなら、それで行こう」  
彼が私にそう言って歩き出す。  
「そういや、二人きりっていうのも久しぶりだね」  
「そうだね」  
私達はチームだから何かをするのも6人一緒だった。  
「スノウちゃん大丈夫かな?」  
「フェルパーもいるから大丈夫だよ、きっと」  
本来は今日のこのクエストだって6人、いや7人で行く予定だった。  
先生に頼まれたアイテムをヨモツヒラサカに買いに行くだけ、だからピクニックみたいな感じで行こうと言ってたのだけど…。  
今朝になって、ノームの娘、スノウちゃんが熱を出した、バハムーンは大慌てで、ノームは冷静だったけど、結局二人は子共の看病をするため、クエストに向かうのを断念した。  
更に不幸は重なってウヅメ先生が出張とのことで不在だったことからドクターでもあるフェルパーも学園に残ることになった。  
ディアボロスは「この状態で、俺だけ行ったら馬に蹴られて死ぬからやめとくわ」とか言ってたけど、友人の娘のために薬を調達しに行ったのを私は知ってる。  
そんなこんなで今、私と彼は二人きり。  
次第に強くなる雨から逃げるように足早に歩く。  
「結構強くなってきたね」  
「…うん、このままだとまずいね」  
予想外に天気がひどくなってきている。  
空は黒い雲に覆われて、どんよりと濁り遠くからはゴロゴロと私の苦手な音が聞こえてくる。  
雨の勢いも強くなって、しばらく弱まりそうにない。  
「あそこ…あそこで雨宿りしよう!」  
「分かった!」  
少し遠くに見える洞窟を指差し、彼と一緒に走り出す。  
どうせゆっくり向かっても濡れてしまうのだからなるべく雨に濡れないように、などといったことはもはや気にしない。  
ルートなんか無視して手じかな洞窟へ走り込む。  
「う〜びしょびしょ〜」  
思ったよりも距離があったせいで結局びしょぬれになってしまった。  
「何か、取り合えず火を用意しよう」  
「うん」  
 
彼の言葉にうなづきながら洞窟の中を調べると、枯れた草や木の枝のようなものがすぐ見つかる。  
「ん、これなら大丈夫かな?」  
とりあえずそれをかき集めて広いところへ移動させる。  
「あつめてきたよ〜」  
「ありがと、フェアリー」  
そう言って彼が私の集めた草に向かって札を投げる。  
「火遁」  
ボッっと火が燃え上がって草や枯れ木に燃えうつる。  
洞窟内が少し明るくなって、彼と笑い合おうとして、私を見た彼があわてて目をそらした。  
「ん?どうしたのヒューマン?」  
「その…フェアリー、なんて言うか…透けてる」  
彼の言葉の意味をすぐには理解できないけど、彼の顔が赤くなっていることに気づいて…。  
私はあわてて背を向けた。  
確かに、少し自分で子供っぽいと思ってる緑のストライプのブラが透けていた。  
「あはは…多分すぐ乾くから、それまで…ごめん、見ないでほしい」  
「うん」  
私の言葉にヒューマンは背中を向けて洞窟に座る。  
少しはずかしいけど、私は上着を脱いで、焚火の近くに置いておく。  
しばらく、私の上着が乾くまで私達は無言だった。  
 
ようやくある程度乾いた上着を着て、下着が透けていないのを確認する。  
「ごめん、ヒューマンもういいよ」  
「ああ」  
さすがにもう、落ち着いてきていた。  
外の様子を見てみるが、雨は先ほどよりも強くなっている。  
「雨…弱まらないね」  
「そうだね、ディアボロスとかが迎えに来てくれれば良いんだけど…」  
もしかしたら迎えには来ているかもしれないけど、このような洞窟にいるのでは気付かないかもしれない。  
「気付かない…かな?」  
「だろうね」  
私の言葉にヒューマンがうなづく。  
「火が消えちゃいそうだからもっと草とか持ってくるね」  
「分かった、僕は一応、ディアボロス達が来ないか外を見とくよ」  
 
 
洞窟の奥に再び向かって、枯れた草を拾い集める。  
その中に私はふと特徴のある草を見つけた。  
「この草…どっかで見た気がする」  
何だっただろうか、思い出せないけど…毒とかそういう草ではなかったはずだ。  
「まぁいいか、大丈夫だよね」  
そう言って私は彼のもとに戻る。  
その草が、どんなものであるかも知らずに…。  
 
 
「ただいま〜」  
そう言って彼女が返ってくる。  
「お帰り、少しは弱くなってきたからもう少しの辛抱だろうね」  
「本当?よかった…」  
彼女がそう言って火に持ってきた草を足していく。  
ぱちぱちと火が再び強くなって、燃えた煙が洞窟に満ちていく。  
―ん?―  
その匂いに、何か嗅いだ事のある匂いが混じっていた。  
麻酔効果を持った葉の匂い。  
そんなものがこのあたりにあるはずがない、僕はそれを気のせいだと思い、雨がやむことを彼女と祈っていた。  
 
だが、しかし、時間がたってくると、異変がやってくる。  
頭に時折、鈍い痛みが走る。  
彼女にばれてしまわないように、僕は洞窟の壁に背を預けて、その痛みに耐える。  
「どうかしたの?ヒューマン」  
彼女が僕を心配したのかそう言って僕のところにやってくる。  
「ん、大丈夫、なんともない、ちょっと疲れたな、と思って」  
僕の言葉に、そっか、とフェアリーが隣に座った。  
少し、彼女も熱っぽいような感じがする  
だとすると、やはり、あの草の中に僕の予想通りのものが混じっていたのだろう。  
嗅いだ事のある匂いはまだ漂っている。  
麻酔効果といっても体の痛みをマヒさせるためのものじゃない、理性を少しだけマヒさせる一種の媚薬みたいなものだ。  
少ない量だから彼女に与える影響は小さいからちょっと熱っぽくなる程度、だけどその少ない影響でも今の俺には十分に辛い、危ういバランスを保っていた理性が崩れそうだった。  
くそったれ…  
心の中で俺は吐き捨てた。  
「ホントに大丈夫?ヒューマン」  
「うん、大丈夫だよ、フェアリー」  
だから今の俺に近づかないでくれ…  
ゴロゴロと空がなる。  
そう思ったかと思うと空が白く光った。  
「きゃあ!」  
フェアリーが小さく悲鳴を上げて、抱きついてくる。  
彼女の匂いが漂ってくる。  
「こわかった〜」  
彼女がそう言って、顔を上げる。  
思わず、俺の目が彼女の細い首に行く。  
理性がきしんだ音を立てる。  
「大丈夫?ヒューマン?」  
「ああ…」  
彼女の声が遠くで聞こえる気がした。  
だれでも良い、今の俺を止めてくれるなら。  
いつも抑えてる暴力的な衝動が、俺の胸に襲いかかってくる。  
まだ大丈夫、だけど、お願いだ、もうこれ以上、俺に彼女の弱い姿を見せないでくれ。  
自分が抑えられなくなってしまう。  
だが、現実は非常で、再びの稲光と共に彼女が俺に飛びついてくる。  
俺の腕に彼女の柔らかい感触が触れている。  
意識が黒く、塗りつぶされていく。  
「雷やめてほしいのに…っごめん!」  
何かに気づいて恥ずかしそうにあわてて離れた彼女の眼に涙が見えて…  
その彼女をほしいと思った。  
一度、思ってしまうと俺の理性なんてもろい…抑えていた衝動が暴れだす。  
理性の崩れる……音が聞こえた。  
 
 
「雷やめてほしいのに…」  
思わず、彼を抱きしめていたことを気付いて、あわてて離れる。  
「ご、ごめんヒューマン思わず…」  
続けようとした言葉が彼の唇でふさがれた。  
―え?―  
突然の行動に、頭が真っ白になる。  
強引に彼の舌が私の口の中に入ってくる。  
無理やり舌をからませて、口の中が蹂躙される、重ねられた唇から、彼の唾液が私の中に流れ込んでくる。  
遅れて到達した思考が、彼が私の唇を奪っているということをようやく、伝える。  
「んん!!」  
逃げ出そうとするけど、頭は強く抱かれて、動かせない。  
彼の舌から逃げるように必死でからめられている舌をはずそうともがく。  
逃げる私の舌が彼の舌と激しく絡み合う。  
息が苦しくなって、あばれると、ようやく彼が私を解放する。  
呼吸を整えようと大きく息を吸い込むと、その瞬間、再び頭を抱かれて唇を無理やり奪われる。  
「ん〜〜!!」  
呼吸がまともにできない。  
苦しくて思わず叫んで、涙が出る。  
酸欠で倒れそうになると、ようやく拘束が解放され私はあわてて息を大きく吸い込んだ。  
「ヒュー…マ、いきなり…なんで」  
肩で息をしながら彼にそう問いかける、でも彼は何も答えず私の肩を掴んで引き倒す。  
「いたっ!」  
石の床にたたきつけられ、背中を打った。  
なんとか立ち上がろうと床についた手が、彼によってひねられる。  
「やめて!痛いよ、痛いよ」  
でも、彼は何も答えない。  
ただ、どこか楽しそうな目で私を見ている。  
怖い…怖い……  
「いや…いや……」  
思わず彼から逃げるように後ずさる。  
「にげんなよフェアリー…」  
ゾクっとするほどの冷たい声で彼がようやく言葉を発する。  
彼が私の肩を掴んで強くきしむぐらいの力でがかけられる。  
「痛い!痛い!!やめて、やめて!!」  
「ああ、その声だその声でもっと泣けよフェアリー」  
彼が楽しそうに笑う。  
見たことのない澱んで歪んだ笑み。  
そのまま私は再び冷たい石の床に押し付けられる。  
もがいた両手が頭の上で彼に拘束される。  
ようやく、私は彼が何をしようとしてるのかを察して叫んだ。  
「ヤダヤダ!やめてよ、こんなのヤダ!こんな無理やりなんてイヤーーー!!」  
もがくように暴れる私を彼が暗い笑みで見下ろしている。  
こんなのヒューマンじゃない、こんな怖いのが彼であるはずがないと私は今目の前で起きていることが信じられない。  
私だって、彼に抱かれることを考えたことがないわけじゃない、でも、こんな風に無理やりされるのは、恋人がするものとは絶対に違う。  
ビリビリと布が裂ける音が響いて、胸に直接冷たい空気が触れる。  
犯される…彼が怖くて仕方がない  
絶望が私を包んでく。  
「もう…やめて…いつもの貴方にもどってよ…」  
―怖いよ、助けてよヒューマン―  
襲っているのは彼なのに、私は心の中で彼に助けを求める。  
ぼろ布のように犯される姿が頭に浮かんで恐怖で涙があふれてくる…。  
「もう…やめてよ…ヒューマン…こんなの…やだ…」  
―初めてが…こんなの…いやだよ…―  
私が彼の名前をつぶやくと、ビクンと彼の体が震えた。  
 
涙でゆがんだ視界の中で彼の眼にようやく正気の光が戻ってくる。  
そして、私の姿と自分の両手を見つめ何かを恐れるように震える。  
「ご…ごめ…フェア…リー…僕は…俺は…そんな…」  
頭を押さえてヒューマンが震える。  
自分が何をしていたのか、それを思い出すかのように震え  
「ヒュー…」  
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」  
彼の絶叫が洞窟内に響きわった。  
「ああああ!!!!」  
涙を流し、叫びながら洞窟の壁を殴りつける、頭を叩きつける、拳に血が滲み額が裂けて血があふれる。  
「ヒューマン!大丈夫、わたし大丈夫だから」  
あわてて駆け寄って彼をゆする。  
だけど彼は私が目に入らないかのように壁を殴り、頭を叩きつける。  
「もうやめて…!私…こんなふうに…あなたにこんなふうになってほしくなんて…」  
拒絶したけど、ただ初めては彼の部屋で優しく奪われたいだけだった…  
あんなふうに一方的に奪われたくなかっただけなのに…  
 
痛々しい彼の姿が見ていられない。  
耳をふさいで目を閉じて震える。  
―聞きたくない、見たくない―  
彼を止めなきゃいけないのに…私は目をそむけてしまう。  
「オイ、どうした!!」  
聞き覚えのある声に私は顔を上げる。  
フェルパーとディアボロス、その二人が驚いた表情で立っている。  
「ヒューマンを…ヒューマンを止めてよ…このままじゃヒューマンが」  
狂ってしまったように壁を殴り、頭を叩きつける彼の姿にフェルパーが叫んだ。  
「ディア!ヒューマンを!」  
「くそ!このいい加減にしろ!っこのバカが!!」  
ディアボロスがヒューマンを壁からひきはがし、取り押さえる。  
「ああああああああああ!!!!」  
だけど普段のヒューマンからは想像できないような暴れ方でディアボロスを弾き飛ばす。  
「くそっ!正気失うとめんどくせぇやつだ!」  
殴られた腹を押さえて立ち上がったディアボロスがもう一度ヒューマンと組み合う。  
「今だ!やれ!フェルパー」  
その言葉に応えるように、フェルパーが二人の脇を駆け抜け、ヒューマンの背後に回り込む。  
「…ごめん!ヒューマン!」  
キン!と何かが鋭い音をたてて、鳴った。  
ヒューマンの体から力が抜け、倒れる。  
「ヒューマン!」  
「安心して…峰うちよ」  
フェルパーはそう言って懐から注射器を取り出すと、意識を失ったままのヒューマンの腕に注射する。  
そして、注射器をはずすと、ようの無くなった注射器を背後に投げ捨てる。  
「疲れた…」  
「ほんとだよまったく…くだらねぇ…」  
安心したように呟き、煙草に火をつける二人の姿に、ようやく私も力を抜いて倒れこんだ。  
私達を二人は迎えに来てくれたらしい、どこかで雨宿りしていることを考えながら探している時に、悲鳴と絶叫が聞こえたからたまたま場所が分かったらしい。  
「ヒューマンは…?」  
「鎮静剤打ったからしばらく目を覚まさない、それよりもフェアリー」  
はい、と彼女が袋から取り出した白衣を私に投げる。  
「とりあえず、それ着て」  
私はただうなづいてそれを着る。  
何があったのかを察してるみたいだった。  
「…よし、とりあえず、こんなとこにいつまでもいるわけにもいかねぇし帰るぞ…」  
ディアボロスがヒューマンを担いで、呪符を取り出す。  
どこからともなくやってきた飛竜の背に飛び乗って、私達は学園への帰路を急いだ。  
だれも言葉を発すること無い。  
雨はようやく止んだのに、空は黒い雲に覆われたままだった。  
 
 
タカチホ義塾の食堂、もう夜も遅いこともあって生徒の数は多くはない、その一角に私とフェルパーとディアボロスの3人は座っていた。  
 
「…それで、突然、ヒューマンが私に襲いかかって…怖くなって…ようやく正気に戻ったと思ったら…」  
「なるほど…」  
私の話をフェルパーは静かに聞いてくれていた。  
話がちょうど終わったころになって、食堂の扉が開いてバハムーンが姿を現した。  
「とりあえず、保健室に寝かせてきた」  
ヒューマンのことだろう、バハムーンがそう言って椅子に腰かける。  
「ごめん、スノウちゃんだって大変なのに…」  
「…気にするな、スノウの熱は大したことなかったし、ディアボロスが持ってきた薬のおかげでほぼ治っている、今頃ノームが寝かしてやってる、それに俺にとっては子共と同じくらい仲間も大切だ、仲間が大変な時だけに俺だけ何もしないわけにはいかん」  
私の言葉に、バハムーンが私の頭をなでてそう言ってくれる。  
「それで、フェルパー、ヒューマンはもとに戻るよね、いつもにみたい戻ってくれるよね」  
彼が、どうしてあんな風になってしまったのか分からないけど、なんとなく、自分がその原因の一つであることに私は気付いてる。  
私のせいでヒューマンが傷ついてしまった。  
「わたし…わたし…」  
私があのまま彼に犯されていれば、彼はあんなに傷つくことはなかったかもしれない。  
私が怖がったりなんかしなければ、彼はあんな風にならなかったかもしれない。  
「私のせいで…」  
「フェアリー、お風呂入ってきなさい、風邪ひいちゃうよ、それに体が温まれば多分少しは落ち着くと思う  
まずは貴方が落ち着かないと、彼のことを思うなら余計に…」  
繰り返す私の肩をフェルパーがそう言ってたたく。  
「…うん」  
私は静かにうなづいた…。  
 
 
「重傷かもね…」  
フェアリーの背中を見送ってからフェルパーが呟いた。  
「…フェアリーか?」  
犯されそうになって動揺しない女が居るわけがねぇからな…。  
だが、冷静な目をしたフェルパーはただ事実だけを俺に言う。  
「ううん、フェアリーはショックが大きくてまだ心がついて行ってないだけ、少し落ち着けばきっと大丈夫、それよりも問題は、ヒューマンのほう」  
俺の言葉に、フェルパーはそうつぶやいた。  
「確かに、あいつからしたら自分がフェアリーを傷つけたってのはダメージが相当デカイだろうな…馬鹿な真似しなけりゃいいが…」  
ずっと、あいつはフェアリーを傷つけたくないといって、薬や他の行為でごまかし続けていた。  
それなのに、あいつはついに自分で傷つけてしまった、未遂とはいえ、フェアリーに消えない傷を刻むことになっていたかもしれない。  
あいつがあんなにまで理性を失って暴れる姿は初めてみた。  
「ごめん…ディア、悪いけど……」  
「わかってる、ヒューマンは俺が見ておく、だからお前は自分のするべきことをしろ」  
「うん……でも、私いつもどおりにできるかな」  
俺の言葉に、フェルパーが自分の体を抱いて震える。  
だから俺は、そのフェルパーの唇を少し強引に奪った。  
俺と同じ煙草の匂い、俺が変えた女の匂い。  
「弱気になんなよフェルパー、テメェは俺の女だろ、くだらねぇことに惑わされんな」  
「うん、そうだよね」  
懐から煙草を出して、フェルパーが火をつける、そして、更に一本抜きとって俺に差し出した。  
「…そうだ、お前はそれで良い」  
それを受け取り火をつけて、俺はあいつの頭をなでてヒューマンのもとに向かう。  
―ヒューマンにはいろいろ恩義もあるいな…たまにはフェルパーみたいに武士道ってやつを通してやっても悪くねぇ―  
腰に感じる相棒、鬼切の重さを感じながら俺は心のなかでそうつぶやいて、歩き出した。  
 
 
タカチホ義塾、大浴場、そこはこの時間には珍しいことにほとんど人がいなかった。  
大きな湯船につかりながら私は今も眠る彼を思う。  
「ヒューマン…ごめんなさい」  
彼のことが大好きなのに拒絶してしまった。  
彼は目を覚ました時、また私に笑いかけてくれるだろうか?  
「そんなわけ、ないよね」  
あの時の彼の顔を思い出す。  
自分がしたことに脅える彼のことを。  
一人、静かに湯船につかっていると、脱衣所の扉が開いて見覚えのある顔が姿を現した。  
彼女はふわふわと地面から少し浮いて入ってくる。  
「ノーム…スノウちゃんは大丈夫?」  
「うん、大丈夫、私とバハムーンの子供だから…元気、眠っちゃったからパパに任せてママは休憩」  
そう言って笑うノームは6人の中で最も年下でありながら、だれよりも大人の雰囲気を漂わせていた、母親という立場である事が彼女を変えたのだろう。  
「…フェアリーなんか悩んでる、ううん後悔してる」  
「…すごいねノームは」  
「…一児の母だからね」  
私の言葉に彼女は誇らしげにそうつぶやく、前はあんなに子供のことで悩んでたのに。  
そんな彼女に、私は自分の想いを呟く。  
「私が…ヒューマンにあのまま犯されてたら、ヒューマンは苦しんでなかったのかな?」  
拒絶なんかしなければ、彼は自分を傷つける事等なかったのではと、そんな思いが私を責めていた。  
「…それは、違うね」  
湯を体にかけて風呂の縁に座った彼女が呟いた。  
「え?」  
「…フェアリーは処女?」  
「……うん」  
彼女が何を言いたいのかは分からないけど、私は素直に答えた。  
母親という、私達よりも少し違う立場の彼女の意見が聞ききたかった。  
 
「…初めての想い出は女の子にとって大切、でも男の子にとっても、大切」  
「…どういうこと?」  
「…フェアリーが犯されて、傷ついたら、今みたいに彼と居られる?居られないよね、絶対彼を見るたび、思い出して、怖がる、そんなフェアリーを見たら彼も自分がしてしまったことを苦しみ続ける」  
彼女の言葉が心にしみわたる。  
「…ホントに?」  
「…未遂にすんだのに、今苦しんでる、きっと未遂じゃなければもっとひどい」  
「…そうだね」  
「…少なくとも私はバハムーンに初めて抱かれた時、彼に、「ありがとう」と言われてうれしかった、死んじゃうんじゃないか、裂けちゃうんじゃないか、ってくらい痛かったけど、それでも…それでも、そう言われて、彼を受け入れられて良かった、って思った」  
何かを思い出すように、どこか遠くを見ながら。  
「だから自分が傷つけばよかったなんて、冗談でもいっちゃだめ」  
め、と彼女が私のおでこを指ではじいた。  
「女の子が犯されてればなんて言うもんじゃない」  
「なんか、ノームお母さんみたい」  
「…だって私、お母さん」  
私の言葉に彼女は胸を張って笑う。  
「…だから、フェアリー」  
「うん……」  
「…怖かったんなら、泣いてもいいの、泣いて怖かったって思いを吐き出して、またいつものように笑えるようになって、少しぐらいなら、お母さんの代わりできるから…」  
「ノーム…」  
そういって彼女が私を本当の母親のやさしく抱きしめてくれる。  
「怖かった!ヒューマンがいつものヒューマンじゃなかったの…!無理やりキスされて、服を破られて…!犯されるって……!私…」  
「…よしよし…怖かったね」  
彼女の胸に抱かれながら私は声をあげて泣いた。  
「名前を呼んだらヒューマンが……」  
「…そっか、ヒューマンは、貴方を守ってくれたんだ」  
「うん……うん……」  
私は泣き続けた、母親のような優しい彼女の胸の中で…  
 
しばらく泣き続けると、やっと心が落ち着いてくる。  
「…ありがとうノーム…ホントにお母さんみたいだった」  
「……どういたしまして、また、お母さんに聞いてほしいことがあったら言ってね?」  
くすくすと、彼女が笑う。  
私もつられて、笑う。  
私はちゃんと笑えてる。  
流した涙をぬぐって、頬をたたいて、私は一つの決意を固める。  
「よし…!」  
「…なんか決めたって顔だね、いつものフェアリーらしい顔してる」  
「うん、確かにおどろいちゃったけど、あれもヒューマンの一つなんだから、私は受け入れる、助けてもらったし、今度は私がヒューマンを助ける!!」  
「…そう…それじゃ、上がりましょう、のぼせて、フェルパーにこれ以上迷惑かけてもいけないし」  
「だね」  
ノームのそんな軽口に笑って答えて、お風呂からあがる。  
―ヒューマン、私決めたよ、私貴方が好きだから―  
新しい制服に身を包み、その決意を言葉にする。  
「貴方の全てを受け入れる」  
そう誓った瞬間に、脱衣所の扉が勢い良く開かれて、白い髪の少女が飛び込んできた。  
「まま、りーりーたいへんたいへん!ひゅーにゃんともーもーが!!こーてーで!!!」  
「フェアリー、行きなさい!!」  
スノウの言葉に、ノームが全てを察した表情で私に叫ぶ、彼女の言葉に私は走り出した  
 
 
ひどい頭痛で目を覚ます。  
「ここは…」  
灯りがないからよくわからない、ただ、辺りを見回すとなんとなくそこが学園の保健室であることに気づく。  
なんで、こんなところに居るのか記憶をたどる。  
「そうか…俺は理性を失って…」  
危うく、彼女に消えない傷を刻んでしまうところだった。  
あの時、彼女が呼んでくれなかったら、間違いなく俺は彼女を傷つけていた。  
「畜生…」  
結局、僕なんかどこにもなくて、俺が嘘を塗り固めて猫を被るように僕を演じてただけだったんだ。  
鏡を見ると手と、頭に包帯が巻かれている。  
「フェルパーがやってくれたんだな」  
ウヅメ先生は今学園に居ないはずだ、どこまでも彼女たちに迷惑をかけている。  
「…」  
俺は何も言わずベッドから体を起して、保健室から校庭に出る。  
―もうここに居るわけにはいかない―  
何も言わずに去るのは心苦しいがあいつらならきっとうまくやってくれる。  
そう思って歩き出す。  
「ずいぶんと遅い時間に散歩に行くんだな、ヒューマン」  
聞き覚えのある声が背後から投げかけられた。  
 
「ディアボロスか…」  
ふりかえると、保健室の壁に背を預けてディアボロスが立っていた。  
「…逃げる気か?」  
「彼女を傷つけてまで、俺はここに居るつもりは…ない、もう俺なんか居なくてもお前らはどうにかなる、リーダーはフェルパーあたりがうまくやってくれるはずだ…」  
そう言った俺に、あいつが煙草に火をつけて、並んだ。  
「男なんて、どうせ女を傷つけて泣かせるもんだ」  
静かに、俺を追い越して、背中を向けてそうつぶやく。  
「お前らしい、言い方だな」  
ああ、とディアボロスが呟く。  
「にげんなよ、ヒューマン、馬鹿みたいにフェアリーに謝って、またフェアリーのことを守ってやればいい」  
「守れるわけが…ないだろう、許してくれるわけがないだろう」  
悔しくて拳を強く握った。  
「んなはずねぇよ、これまでお前は、自分自身からフェアリーを守ってきたんだ、それに…お前の中のフェアリーはそんな器量の狭い女か?」  
「うるせぇ…したり顔でナマ言ってんなクソったれ!!」  
苛立ちが抑えられなくて、俺は銃を引き抜いた。  
「てめぇに俺の何が分かる!!」  
「お前のことなんざ分かるか、俺はくだらねぇことが嫌いなんだよ」  
ディアボロスは刀に手をかけ、振り返る。  
「どけよ、ディアボロス、俺の邪魔をするな」  
最後通告、そのつもりで俺はディアボロスに銃を向ける。  
それにあいつは煙草を吐き捨て、嫌だね、と呟いた。  
「侍たるもの恩義は忘れず、お前には恩があるからな、一時的な感情で出ていこうとするお前なんか認めてやらねぇ、俺の女に重荷を押しつけようっていう魂胆が気に入らねぇ…お前が間違ってると思うから俺はお前を行かせるつもりねぇ……」  
「そうかよ、それなら好きにしろ、ただし俺も好きにする」  
イライラする、何もかもが思い通りにいかない。  
「タカチホ義塾、侍学科、ディアボロス、受けた恩義に報いる為、ここから先へは進ません」  
真剣な表情であいつが構える。  
「どけや、クソガキ、邪魔すんなら俺はてめぇを倒して、勝手にいかせてもらう」  
暴れたがってる衝動を解放する。  
「勝負!!」  
互いに叫んで走り出す。  
戦いが始まった。  
 
 
激しい銃撃の音と斬撃の音が交差する。  
火花が散って地面を穿つ。  
 
―止められるか?―  
向かってくる銃弾を切り落としながら俺は思う。  
あいつは六連リボルバーのシャドーバレル、対して俺は大太刀、鬼切。  
ただでさえ得物のリーチに開きがあるのに、俺はあいつを殺さないように止めなきゃいけない。  
それに対して、もはやあいつは俺を倒すべき敵としか見てない、必要があるなら殺すだろう。  
相手を殺してしまうより、相手を殺さないことのほうが難しい。  
―状況も不利とは…くだらねぇ…―  
どこまでもくだらねぇ、なにもかもくだらねぇ、そんな思いが胸によぎる。  
何より一番くだらないのが…  
―ホントくだらねぇよ、ヒューマン…結局テメェはそれだけフェアリーが好きなんじゃねぇか―  
アイツ自身の考えだった。  
好きならその想いをちゃんとぶつければ良い。  
―傷つけるのが怖い?くだらねぇ…―  
俺だって一度はフェルパーを傷つけた、フェルパーに傷つけられもした。  
それでも俺たちは向き合った、傷つきあってようやく並んだ。  
なのにこいつは向き合うことすら逃げようとしている。  
それが何より気に入らない。  
何が何でも行かせるわけにはいかない。  
 
心の中で意志を磨き上げ、ただひたすらに銃弾を切り落とす、反撃の機会を待つ。  
あいつを止める為の反撃の機会を待つ。  
切り落とす銃弾の中に不意に呪符が混じる。  
「ちっ!」  
「火遁!!」  
呪符がはじけて炎が迫る。  
「アクアガン!」  
とっさに水の術を放って襲いかかる炎を相殺する。  
厄介なこと極まりない、武器だけじゃなくて術まで使ってきやがる。  
―それだけ、本気って、わけだよな―  
「ホント、忍者ってのはきたねぇもんだ」  
「折り紙士のお前に言われたくねぇよ」  
ガンナーにして、忍者、その二つを学んでいるあいつの動きは異様なまでに素早くて、一切の手加減もこもってない。  
「そんなにてめぇが本気なら俺も本気でいかせてもらうぜ!」  
 
懐に手を突っ込んで、ため込んだ鶴を空に放る。  
百ではあいつに届かない、二百でもあいつに届くはずがない、ゆえにその数は千。  
「千鶴!あの馬鹿を止めろ!」  
言霊に反応した鶴が魔力を帯びて、式としてあいつに向かっていく。  
「千鳥!」  
あいつが叫んで、連続した銃声が響く、一斉射撃、向かう式が一つ  
二つと撃ち落とされる、銃撃は止まない。  
「オイオイ…」  
視界を埋めるほどの式は銃撃にものすごい勢いで撃ち落とせれる。  
鳴り響いた銃声がようやく止む、最後の一体があいつによって撃ち落とされた。  
辺りには元の紙に戻った俺の式とあいつが捨てた薬きょうが転がっている。  
馬鹿げてる、これでも本気だったのに千匹分の式があっさり撃ち落とされちまった。  
「手品は終わりか折り紙士?ならこいつはお代だ…とっときな!!」  
あいつがそういって笑う、狙い澄ました一撃が俺に向かって放たれた。  
「遠慮しとくぜ、まだまだ終わってないんでな」  
もはや、傷つけないようにあいつを止めるのなんて無理だと察する。  
「かえる!」  
式を放って攻撃を捻じ曲げる。  
反射の式、一度だけならどんな攻撃だろうが跳ね返す。  
それに反応できるわけ…。  
「ははっ!謙虚なやつだ、胸糞割りぃ」  
あいつはわらって、跳ね返る銃弾に狙いをつけて、撃ち落とす。  
跳ね返った銃弾はおなじ力を持つもう一発の弾丸に相殺されて吹きとんだ。  
むちゃくちゃすぎる。  
 
それでも攻撃の手を弱めるわけにはいかない。  
息を吸い込み、ブレスを吐く。  
あいつに見せたことのない数少ない技の一つ。  
炎はあいつめがけてまっすぐ伸びた。  
「なるほど…遠距離攻撃は水術だけかと思ってたがちゃんと用意してんだな」  
言葉と共にその姿が薄れるようにかき消えた。  
―マズイ!―  
とっさにブレスを中断し、地面をけって回避する。  
少し前まで俺の居た場所に苦無が突き刺さる。  
振り向きざまに俺は頭上の木の枝を薙いだ。  
何かがそれをよけるように、飛ぶ。  
「よく、よけたな…」  
地面に突き刺さった苦無を引き抜いてあいつが呟く。  
「何度かお前がその技使ってるのは見たからな」  
暗殺、物騒な名前をした忍者の技。  
銃だけに警戒していたらやられてたかもしれない。  
つくづく、厄介なやつだと思う。  
俺の得意な術は水術、対してあいつの得意な術は炎術、得物の間合いは一方的で、折り紙士としての最大の技でもある千鶴も破られ、式での攻撃は無意味だと判断する。  
そもそも最近大したクエストがなかったこともあって、式を折るのをさぼっていた、おかげで式の在庫が心もとない。  
防御用の式の在庫は十分だが、攻撃用の式は使えばすぐに使い切ってしまいそうな量しかない。  
こんなことならフェルパーとヤってばかりじゃなくて、もう少し攻撃用の式を折っておくのだったと思う。  
おかげでほとんど八方ふさがり、もしもの時の切り札だったブレスもばれてしまった以上、対策はすぐにされるだろう、あまり効果は期待できそうにない。  
あとはあいつの弾切れを期待したいところだが、ガンナーであるあいつの弾丸が切れるより俺が力尽きる方が間違いなく早い。  
それでも時間はだいぶ稼いだはずだ、だれかが気付いてくれていることを祈る。  
あと、もうほんの少し、ほんの少しだけ、時間を稼ぐ。  
こいつを止めるために…自分の持つ技の中で最も自信のある技を思い浮かべる。  
たった一つだけ、あいつを止められそうな技が思い浮かんだ  
 
不意に、ずっと続いていた攻撃がやむ、俺の気配にあいつが何かを察したのだろう。  
「…どうした、来いよ、ディアボロス、来ないなら…俺から行くぜ?」  
「あせんなよ、ヒューマン」  
刀を鞘に納めて、腰だめに構え、呼吸を整える。  
「どうもお前とこのまま戦ってても決着がつきそうにないんでな…俺のできる最大の技を使わせてもらうわ、お前も手品は飽きただろ?」  
「へぇ?」  
ヒューマンの顔が奇妙に歪む、笑っている。  
すぐに、そのむかつく顔やめさせてやる。  
「疾き太刀の…白刃で作る…赤花で…舞う白雪を…桜にかえんと…」  
こいつで止められないならば、俺にはもうこれ以上こいつを引き止める事は多分できないだろう。  
―お願いだから、死なないでくれ、お願いだからこれ以上動かないでくれ―  
あいつが止まってくれることを信じて、誰かが間に合ってくれることを信じて、刀を解き放つ。  
「天剣…絶刀!!」  
 
無数の斬撃が、あいつに降り注いだ。  
 
さすがに…これはよけられそうにねぇか…  
あいつの最大の技…天剣絶刀、縦横無尽に降り注ぐ、不可避の斬撃、俺は回避することを捨てて耐え抜いての反撃を考える。  
薬莢を排出し、次弾を装填、視線の先のディアボロスに狙いを定める。  
引き金はまだ引かない、今引けば、あいつの式で跳ね返されて俺の負け。  
ぎりぎりまでたえる、受けきれば俺の勝ち。  
賭けになるかもしれないがそれしかない。  
そう心に決めた瞬間だった。  
 
「もうやめて!!」  
不意に校庭に大きな叫び声が響く。  
迫る斬撃をさえぎるように俺の目の前に虹色に輝く壁が形成される。  
―なんだ?―  
斬撃は俺の目の前に現れた虹色の壁に吸収されて消える、全ての斬撃がやむと、虹色の壁はガラスが砕けるような音を立てて崩れ去った。  
「これは…」  
反撃を忘れ、俺は呟く、ありとあらゆる攻撃を吸収する魔法壁、パーティでこの技を使えるのは彼女しかいない…予報士としてその技を磨いてきた彼女しか。  
 
「ヒューマン…」  
背後から聞こえてきた声に、震える。  
―そんなはずがない、俺は彼女に拒絶された、そんな彼女が俺を守るなんてことがあるわけが…―  
そんな俺を見たディアボロスは、再び静かに刀を納め、煙草に火をつける。  
「時間切れ…また俺の勝ちだなヒューマン…」  
 
何を言ってるんだ、俺はまだ立っている、戦える、弾丸はまだあるし、呪符だってまだ沢山ある、俺はまだ戦える、あいつの切り札はもうないはず。  
「俺は…まだ」  
「いい加減、腹くくれ、お前らしくねぇ」  
ディアボロスの吐いた煙が消える。  
「また、お前の負けだ」  
―そうか…―  
カシャンと俺の手から銃が落ちる。  
お前の言うとおりだよ、ディアボロス…俺の負け…だ。  
もともと、こいつは俺を引きとめていれば良かったんだ。  
静まりかえったここで戦えば、当然のように誰かが気づく、そうすれば、嫌でも他のメンバーに伝わる、他のメンバーと合流されてしまえば…勝てるわけがない…。  
分かっていた、だから一度は暗殺を使ってまであいつを倒そうとした。  
しかし、倒せなかった、俺はこいつの作戦に負けたんだ。  
 
「…ヒューマン」  
再び名前を呼ばれ、俺は振り返って彼女と向かい合う。  
真剣な目が俺を見ていた。  
そして、自分が彼女にしたことを思い出して…息が詰まる。  
 
「ヒューマン…」  
彼女がそう言って俺に近づいてくる。  
「やめてくれ…俺に近づかないでくれよ…フェアリー」  
もう君を傷つけたくないんだ…。  
「大丈夫、私は大丈夫だよ、ヒューマン」  
そう言って、彼女が俺を抱きしめる。  
遅れてきたフェルパー達が俺を見ていた。  
「決めたんだ…やさしいヒューマンも、怖いヒューマンも…ヒューマンのことだから受け入れる」  
彼女が震える。  
「だから…私のせいで、そんなに傷つかないで…ヒューマン」  
なんで、彼女はこんな俺のことを…  
「なんでだよ…俺はお前を」  
君のことを傷つけるとこだったのに…  
「それでも…貴方は最後まで私を傷つけなかった」  
「そんなの…結果論だ」  
傷つけるだけじゃない、いつか彼女を殺してしまうかも知れない。  
「それでも…私は貴方が好き」  
「君はバカだ…」  
「うん…」  
彼女に抱かれたまま俺は泣く…。  
「俺も…馬鹿だ…」  
こんなにも俺を愛してくれる女を捨てて逃げようとしてたなんて…。  
また彼女を傷つけるかもしれない…それでも彼女と離れたくない、そう思った。  
「悪かった…フェアリー、こわがらせて…ごめん…」  
俺は泣く…僕は泣く…  
優しい彼女に抱かれながら、子供のように泣き続けた。  
彼女への謝罪を繰り返して。  
ディアボロスが言ったように馬鹿みたいに謝り続けた。  
 
 
タカチホ義塾、食堂  
もう僕らぐらいしか人はいない、集まった5人、いや6人に僕はその言葉を告げる。  
「みんなに迷惑をかけて…すまなかった」  
今回のことで、迷惑をかけてしまったことを謝る。  
「気にするな、お前にはもっと迷惑をかけている」  
バハムーンが笑った。  
「…うん、私も、この子が生まれる時に、相談に乗ってもらったんだし、少しぐらいの迷惑は…お互いさま」  
ノームがスノウの頭をなでて笑う。  
「ひゅーにゃん、いいこ、りーりーとなかよし」  
スノウが笑う、もう調子は良くなったのだろう、ノームのくせに母親とは正反対に感情が分かりやすい、ただうれしいのだということが伝わってくる。  
「気にしないで、みんなを助けるのが私の仕事だしね」  
煙草をくわえてフェルパーが笑う。  
「気にすんな、てめぇにはまだまだ恩があるからな、それにたまに本気でやり合うのも悪くねぇ」  
ディアボロスはいつもの軽薄な笑みを浮かべて笑った。  
「フェアリー」  
「うん」  
「こんな僕を好きになってくれて、ありがとう」  
彼女が恥ずかしそうに笑う。  
 
「…さてと…もう寝ましょうね、スノウ」  
「うん!ぱぱきょうも、ごほんよんでごほん」  
「分かった、今日はスノウも手伝ってくれたから読んでやろう」  
ノームが小さく呟いて、子供を抱き上げ、バハムーンと一緒に食堂を出ていく。  
気を使ってんだろう。  
「ディアボロス…」  
フェルパーがディアボロスに何か耳打ちする。  
「…そいつはいいな、言葉に甘えさせてもらうぜ、明日になって文句言うなよ?」  
食堂を出ていくフェルパーに続いてディアボロスも出ていこうとして、俺とすれ違う時、肩をたたいて呟いた。  
「ハメをはずしすぎんなよ、ヒューマン」  
言われなくてもわかってる、だからだまってろディアボロス。  
軽口を言っていたあいつだが、なんだかんだ空気は読んだらしい。  
 
また、僕ら二人が残される。  
…なんとなく、話すきっかけがつかめない。  
「あの…ヒューマン…」  
フェアリーが恥ずかしそうに僕を見る。  
「ヒューマンの部屋に行ってもいいかな?」  
まだ怖いだろうに、彼女は僕のことを求めてくれる。  
彼女の言葉に、僕は静かにうなづいた。  
 
二人で手をつないで、寮の自分の部屋に戻る。  
心臓がバクバクうるさい音を立てていた。  
理性を失ったときには何も感じなかったのに、緊張して仕方ない。  
理性があるとこんなにも緊張するものなのだな、ふとそんなことを思った。  
部屋のカギを開け、彼女を部屋に案内すると、彼女がベッドに腰を下ろす。  
「…緊張する」  
「…ぼ…俺もだ」  
彼女の言葉に俺自身を偽るのをやめて、そう答える。  
「…やっぱり制服破りたい?」  
彼女がごまかすように上目づかいで俺を見た。  
「…それは言わないでくれ」  
「ご、ごめん」  
確かにそう言う欲望もあるけれど、今はただ彼女を愛したい。  
「フェアリー…」  
彼女の肩をつかんで唇をかさねる。  
「ん」  
目を閉じて、彼女はそれを受け入れてくれる。  
互いに舌をからませて、何度も何度も口づけを繰り返す。  
彼女の制服に手をかけて、優しくそれを脱がしていく。  
彼女はそれに抵抗しない。  
彼女のつつましい胸とそれを覆う布が俺の目にさらされる。  
どうはずせばいいのか分からない、戸惑っていると彼女が俺の手を導くように伸びてきた。  
導かれるままにしておくと、金属の留め金に指が触れる。  
「つまんで…軽くひねれば外れるから…」  
彼女の言葉通りに留め金をつまんで軽くひねるとパチンと小さな音が鳴って、布が緩んだ。  
肩ひもに手をかけて、それをはずす…。  
「…触るぞ」  
「うん…いいよ」  
彼女にそう言って、その胸に優しく手を触れる。  
柔らかくて温かい、俺が軽く握ると握った形に形を変える。  
ぴくぴくと彼女が震えた。  
「気持ち良いか?」  
「…うん」  
恥ずかしそうに彼女が答える。  
優しく、繊細に彼女の胸を揉むと、ピンク色のふくらみがプックリと、立ち上がる。  
それを軽くつまんで指の腹で転がしてみる。  
「ん、なんかヒューマンの触り方、いやらしい」  
赤い顔で彼女が呟く。  
「いやらしいことしてるんだから、当然だろ?」  
こりこりした乳首の感触に夢中になって、俺は彼女の胸を弄ぶ。  
指、舌、歯、その全てで彼女の感触を味わう。  
彼女が震えて、あえぎ声を繰り返す。  
暴力的な衝動がまたやってくる。  
彼女の細い首を食いちぎりたいと心の中の獣が笑う。  
だけど…  
 
―今、イイトコロなんだから引っこんでろ、駄犬―  
うるさい獣を黙らせる。  
お前程度の衝動なんか、今の俺には関係ない。  
衝動なんかじゃなくて彼女に対して酔いしれていた。  
残った下着をはぎ取って、彼女のそこに手を差し入れる。  
自分の中に異物が侵入する感触に彼女の体がはねた。  
そこは十分に濡れているけど、彼女の体のサイズもあって、小さくて、狭い。  
指がぎちぎちと締め上げられる。  
彼女に自分を入れたら壊れてしまいそうで、不安になる。  
「大丈夫…」  
不安な表情が表に出ていたんだろう、彼女が耳元で囁いた。  
「大丈夫だよ、ヒューマン…痛くても、怖くても、優しくても…その全部が貴方なんだから」  
「ありがとう…フェアリー」  
俺はこれから彼女に消えない傷を刻む。  
俺のモノはすでに限界に近かった。  
ズボンを脱いで、下着を脱ぎ棄てる。  
ガチガチになったそれがそそり立っている。  
「さ、さっきはああ言ってみたものの…お、おっきいね、ホントに入るかな?」  
俺のモノと彼女が自分のそこを見比べて呟いた。  
「多分…入るだろ」  
それを、彼女の小さな割れ目にあてがう。  
「いくぞ、フェアリー」  
「うん、大丈夫、来てヒューマン」  
俺のモノが彼女の中を引きさくように、彼女の中に沈んでいく。  
「いっ…た…さ…け…」  
彼女はその痛みを必死で耐えながら、俺の背に爪を立てた。  
俺のものが進むたび、背中に刺さった爪が深く食い込む。  
この程度の痛み、彼女が今感じている痛みに比べればきっとどうってことない。  
俺のモノの先端が何かに阻まれ、動きを止めた。  
彼女の純潔が今、すぐそこにある。  
涙をこらえながら、彼女が静かにうなづいた。  
俺はそれに口づけで返し、彼女の純潔を引き裂いてゆく。  
「っ!!!」  
彼女が声にならない悲鳴を上げた。  
 
それでもそのまま力をこめると、不意に抵抗が緩んで、俺のものが彼女の更に奥へと埋没する、かなりきつくて狭いが俺のものは何とか彼女の中におさまった。  
彼女と繋がっている部分から彼女の初めての証が俺を伝ってベッドに赤い染みを作る。  
「ヒューマンの…ものに…なっちゃった」  
痛いだろうに、彼女が目に涙を浮かべたまま笑う。  
「ああ、フェアリー、お前は俺のものだ…」  
ありがとう、感謝のつもりで彼女の頭をなでる。  
彼女の中は痛いくらいに俺を締め付けている。  
「動かなくて…良いの?」  
「ああ…このまましばらく、お前を感じたい」  
そっか、とフェアリーが呟く。  
彼女が呼吸を整えていくと、少しずつ締め付けが緩んでくる。  
「…おなかの中にヒューマンがいる…」  
恥ずかしそうに彼女が自分の腹をなでる。  
「ああ、こんなに小さいのに全部入るんだな…」  
俺の言葉に彼女がぴったりとくっついた部分を見る。  
そして、自分の腿についた血を指ですくい上げた。  
「これが、私の初めての証なんだ…」  
「ああ」  
その指をなめる、鉄錆のような味がする彼女の血の味がした。  
「おいしい?」  
彼女がそう言って笑う。  
俺は自分の指で彼女の腿の血をすくうと、彼女の口にそれをくわえさせる。  
彼女がぺろぺろと指をなめる、くすぐったい、そんな感触が指に伝わってくる。  
「血の味がする…」  
「ま、血そのものだしな」  
指を引き抜くと、それは彼女の唾液で濡れていた。  
「動いていいよ、ヒューマン」  
「ああ…」  
浅く、ゆっくりと腰を動かす。  
まだ痛むのか彼女の眉が苦痛で下がる。  
「…だいじょうぶ」  
彼女が囁く。  
だから俺は腰をゆっくり動かす。  
抜き差しをするのではなく、円を描くように、ゆっくりと、ただひたすらゆっくりと。  
彼女の胸に手を伸ばし、愛撫を再開する。  
胸を揉みながら入口まで俺のものを抜いて、胸の中心をつまみながら、奥まで自分を埋没させる。  
繋がった部分の近くの真珠のような突起を指の腹で擦る。  
「ふう…」  
彼女の口から、苦痛以外の吐息が漏れる。  
それに気づいて、彼女の頬が染まっていく。  
「かわいいなフェアリー」  
「ん、ありが…ふぅっ!」  
彼女の言葉をさえぎるように、腰を動かす。  
「ふぁ…くうっ…はふっ…」  
抜き差しに合わせて彼女があえぐ。  
「気持ちいいか?フェアリー」  
「うん、気持ちいい、ヒューマンは?」  
腰を動かすと、彼女の中が俺を逃がさないように吸いついてくる。  
「気持ちいいぜ、フェアリー、狭くて、きつくて…すぐにでも出そうなくらいだ」  
「うれしいな…ヒューマンに喜んでもらえて…」  
抜き差しを繰り返す。  
彼女と溶け合って一つになるような感覚が気持ちいい。  
射精してしまいそうになるのをこらえながら、彼女の中をじっくりと味わう。  
 
「ヒューマン…気持ち良いよ…」  
次第に彼女の締め上げてくる力がまた強くなってくる。  
だいぶ腰を動かすスピードは速くなっていて、痛くないか心配だっただけに、その言葉がうれしい。  
ふと、ある事に気づいて動きを止める。  
だが、抜き差しは止まらない…。  
彼女が自分から腰を振っていた。  
「あ…」  
彼女が自分の行動に気づく、それでも彼女の腰は動きをやめない。  
「あ、やだなんで?なんで?勝手に体が…恥ずかしい…ヒューマンも動いて…」  
彼女が懇願する、イキたくて仕方ないかのように…  
「分かった」  
動きを再開する、今度は突き上げるような感じで力強く。  
「ふくぅ…ふあぁぁ…ふぅぅ…」  
彼女の腰に合わせて、より深く、突き込む、腰の動きが加速する。  
常にうごいていないと射精してしまいそうで、彼女を少しでも長く味わいたくてただ腰を激しく振る。  
「ヒューマン…私…もう…」  
彼女が俺にとどめを刺してくれとねだる。  
「俺も…イクからもう少しだけ我慢してくれ」  
「うん…うん!」  
そんな彼女と唇をかさね、むさぼり合う、そして、抜ける寸前までモノを引き抜いて一息でそれを一番奥まで突き込んだ。  
「くぅぅぅぅ!!」  
彼女のが俺を強く締め上げて、叫んだ。  
「うぐっ!」  
あまりの締め付けの強さに我慢しきれなくなって俺も彼女の中に欲望を吐き出す。  
「ああ、あっついヤケドしちゃう!」  
モノを引き抜こうとするが彼女が腰をしっかりつかんでいて離さない。  
ぎゅうぎゅうと彼女の中が俺を絞りあげる。  
抵抗をやめ俺はドクドクと彼女の膣内に欲望を注ぎこむ。  
彼女の体が痙攣してぴくぴくと震えている。  
長い射精が終わってもまだ彼女は絶頂を感じて震えていた。  
「はあ…」  
彼女が深いため息をついた。  
「フェアリー…」  
彼女の額に口づける。  
「ヒューマンのせいで…初めてなのに…イっちゃった」  
恥ずかしそうに笑いながら、彼女が俺の胸に頬を擦り寄せる。  
「感じてくれたなら本望だ、にしても、よく入ったよな」  
繋がったところをみるとそこから彼女の血と混じった俺の精液があふれ出てきていた。  
「…た、たしかに、改めてみると、す、すごいことに…なってるかも…」  
彼女のそこは限界まで広がって、俺のことを飲み込んでいる。  
「なんか…じっとしてると…か、形が分かって…」  
フェアリーの顔がどんどん赤く染まっていく。  
そんな彼女を見ていると、下半身に血が集まって彼女の中でまた俺のものが硬くなる。  
「あ…、びくびくして…また元気に…私の中で大きくなってる」  
自分の腹をなで、俺のそれを彼女が確認する。  
「ごめん」  
まだ彼女を求める自分に恥ずかしくなる。  
「もう一回…しようかヒューマン、今度は…」  
彼女は…俺の耳もとで小さく囁いた。  
 
「…本気か?」  
彼女の言葉に自分の耳を疑う。  
「大丈夫…お願い…」  
いわれたとおりに彼女の制服を拾って彼女に渡した。  
彼女がそれを身につけている間に僕は自分を引き抜いて彼女のそこから溢れるそれをティッシュで拭う。  
時折彼女が感じるように震えながらも、なんとか彼女は制服を身に付けた。  
ただし、下着はつけていないから、制服の胸元で突起がとがっているのが分かる。  
立ち上がって彼女がベットから離れて深呼吸をした。  
「いいよ、ヒューマン」  
「ああ」  
俺に近づいてきた彼女の腕を引いて、ベッドに力強く押し倒す。  
「きゃっ!?」  
彼女がかわいい悲鳴をあげる。  
両手を頭の上におさえつけて、片手でそれを固定する。  
あいた手で制服の胸元をつかみ、力任せに引き裂いた。  
びりびりと音を立て、制服の布がちぎれる。  
破れた制服の隙間から見える胸にかぶりつく。  
「ふうっ!」  
ビクンと彼女が震える。  
彼女が声を抑えるように自分の手で口をふさぐ、彼女のことを犯しているみたいで、頭がくらくらとしてくる。  
もう片方の胸を力任せに揉む。  
「い…」  
何かを言いそうになって彼女があわててその言葉を飲み込んだ。  
俺はわざと自分の理性を壊していく、彼女の申し出に応えるために…。  
彼女の中に指を突きいれ、中にたまった俺の精液をかき出すように、動かす。  
「ふぅ!それ…刺激…つよ…かき出され…おなかが…!」  
両手を拘束された彼女がその刺激から逃れるように腰を振る。  
―今度は…洞窟でしようとしたみたいに…私を犯して、もしヒューマンがまたそうなったときに受け入れられるように―  
先ほど彼女は俺の耳元でそう囁いた。  
彼女はバカだと俺は思う、そんな彼女が大好きな自分はもっとバカだ。  
指を彼女から引き抜いて拘束していた手を放してやると、  
犯される自分を演じる彼女は体をひねって俺から逃れようとする。  
その腰を掴んで引き寄せた。  
「ああ…」  
彼女の口から悩ましい声がこぼれる。  
そして、彼女の腰を掴んだまま、自分自身を彼女に押し当てる。  
カリカリと、彼女がシーツを引っかいて逃げるようなポーズを繰り返す。  
「行くぜ?」  
ただ一言それだけ告げて答えも聞かずに一気に彼女を貫いた。  
 
「ふぁぁぁ!」  
彼女の眼が見開かれ背中が大きくのけぞる。  
びくびくと彼女が震え、達したのだと気づく…そんな彼女が愛おしい。  
だから俺は腰を激しく突き込んだ、休憩なんかさせるわけがない。  
「ちょっと!ヒューマンすこし、少し待って!イった、イっちゃったから休憩させて!」  
そんな彼女の懇願を俺は無視して激しく彼女を突き上げる。  
「ふひゃぁぁぁ!くひぃぃぃ!はぁぁぁ!くぅぅぅぅ!」  
達して敏感になった彼女のことを犯すみたいに蹂躙する。  
「やめて…イキすぎて変に…!変になる!」  
絶え間なく彼女はイキ続ける、絶頂を感じている最中に、俺の突き上げで無理やり絶頂を感じさせられている。  
そりかえる背中をなめると、それだけで彼女が達する。  
「死んじゃう…イキすぎて…死んじゃう」  
彼女がそう俺に訴える。  
「俺も…イクからあと少し」  
「早く!早くイッて!イキすぎてくるしい…!」  
言葉とともに、彼女が僕を強く締め上げた。  
「くぅぅ!」  
思わず射精しそうになるのを歯を食いしばって耐える。  
「何で、何で耐えるの耐えちゃだめ!イッてよ!イッてってば!」  
彼女がそれに気づいて、むちゃくちゃに腰を振る、イキ続けている彼女は俺止まれば休憩できることが分からなくなったらしい、俺をイかせるために更にイキながら無理やり腰を動かした。  
「ぐあっ!」  
むちゃくちゃな動きに耐えられなくなって射精がはじまる、俺は最後の抵抗で腰を彼女の一番にたたきつけ残りの欲望を吐き出した。  
「ふぅぅぅ!」  
体の熱が全て奪われるような感覚に腰が震えた。  
「くひぃぃぃ!」  
ようやく訪れた終点に、フェアリーはシーツを強くつかんで震える。  
幾度となく絶頂を迎えていたせいだろう彼女の痙攣は止まらない。  
しばらく背中をそらせてぶるぶる震え、糸が切れたように突然ベッドに倒れこむ、長い絶頂がようやく終わったらしい。  
「もう…無理…これ以上イカされたら…死んじゃう…」  
ぐったりとした様子で俺にそうつぶやく、その体はまだ少し震えていた。  
「…悪い」  
自分の欲望を目の当たりにしてみると、少し後悔の念が襲ってくる。  
まだ2回目の体験なのに、彼女をあんな激しく責めてしまった。  
だが、彼女はそんなことを気にしてる様子などなく、満面の笑みを浮かべて俺を見る。  
「でも、これでもう、ヒューマンが襲いかかってきても大丈夫だよ」  
「…お前な、犯されることの予習してどうすんだよ」  
胸が満たされた感覚は確かにあるけど、それ以上に呆れながら俺は彼女の頭をなでた。  
俺の胸に彼女が頬をすりよせる。  
「それだけ、ヒューマンが好きってこと」  
「もう猫かぶるのもやめるけどな」  
「いいよ、ヒューマンはその口調のほうが似合ってるし」  
そんな彼女の言葉に満たされる。  
俺はもう一度彼女の唇を奪って目を閉じる。  
「お休み、フェアリー」  
「お休み、ヒューマン」  
俺はフェアリーを腕に抱いて、その温もりを感じたまま  
やってきたまどろみに身をゆだねた。  
 
 
私はきっと歪んでる。  
 
優しい彼を見るたびに、怖い彼も見たいとおもう。  
彼が歪んでいるのを私は知っている、それでもそんな彼が私は大好き  
だから、きっとそんな私も歪んでるんだ。  
歪んでいるから引き合った。  
私はそう、信じてる。  
私は…歪んだ彼を愛してる。  
だから私は歪んでる。  
二人で歪んでいるのだから…  
きっとそれが、ちょうど良い。  
 
 
 
ふと眼を覚ますと、彼はまだ眠っていた。  
その寝顔は優しくて、私はその頬に口づけて、体を起こそうとする。  
昨日、彼を受け入れた場所は少し彼がまだ中に入ってるような感覚があった。  
幸い、痛みはあまりないけれど足に力は入らない。  
「…腰ぬけちゃった、飛べるからいいけど」  
ボロボロになっている制服の上着を脱いでまとめる、スカートのしわを伸ばして、下着を身につけ私の上着の代わりに部屋の隅にかけられた彼の予備の制服を見つけてそれに袖を通す。  
とりあえず、羽を出すため、勝手に背中に穴を開ける  
私には大きすぎてブカブカなそれをきて、眠る彼の隣に座った。  
昨夜の行為を思い出し少し恥ずかしくなる。  
 
「…初めてが普通で良かった」  
ノームの言うとおり、初めてはすごく痛くて、体が裂けてしまいそうだった。  
彼が優しくしてくれたから途中から感じる事が出来たけど、もし私の初めてがあの洞窟で奪われてしまっていたら、きっと私は耐えられなかった。  
2回目にあの洞窟で彼がしようとした行為を受け入れて、その激しさをこの身で知った。  
一度感じたあとだったからこそ、受け入れられた、彼の与える刺激を快感として受け止められた、絶頂を感じて、絶え間なく絶頂しつづけられた。  
もし、あの洞窟で初めてをあの激しさで失っていたら、きっと痛みしか感じなくて、私はその痛みを与えた彼を受け入れられたか分からない。  
あの快感が全部痛みだったら、思わず体が震えてしまう。  
あの激しさを受け止められたのは彼が私のために苦しんでくれたからだと私は思う。  
彼は私を傷つけたと思っていたけど、改めて、私は彼に救ってもらったんだと、そう思う。  
「ん、フェアリー…」  
彼が私を探して腕を伸ばす。  
「大丈夫…私はここにいるよ…」  
彼の手を握る、安心したように彼の寝顔がほほ笑みに変わる。  
ずっと、彼は自分の想いに苦しみながら、私と共にいてくれた。  
今度は私がそれを受け入れていく番、彼の欲望を受け入れていく番。  
優しい彼と、激しい彼、一度、受け入れた私に受け入れられないはずがない。  
「いつでも、求めていいんだよ…」  
眠る彼に囁いた。  
 
「…そんなこと言ってると、後ろの初めてだって奪っちまうぞ」  
どうやらいつの間にか起きていたらしい彼が私にそう言う。  
後ろの初めてというのはお尻の穴のことだろうか?ノームにもらった本を読んで変則的にそこですることもあるのは知識として知っている、経験は当然ないけど、彼はもしかしてそれがしたいのだろうか?  
「別に?したいなら良いけど?」  
本では気持ち良さそうだったから、正直すこし興味がある。  
「アホか…前であれだけ限界なんだから後ろでやったらお前の後ろがガバガバになるわ」  
呆れたように彼が呟く。  
…ちょっとされてみたいかも、と思ったのは内緒にしておく、言ったら多分この場で実行される、さすがに今日この場でされるのは遠慮したい。  
体を起して残った眠気を払うかのように頭を振って彼は私の姿を見た。  
「それ…俺の予備の制服だよな?」  
何で着てるんだとばかりに彼が私を見る。  
「いや…私の制服の上着、あれだし…」  
私の制服の上着…もとい、かつて制服だったはずのものを指差す。  
もはや制服というより糸くずと布らしきものの塊だった、どう見ても着れそうにはない。  
「…ごめん」  
彼が謝る。  
「大丈夫…それよりヒューマン」  
彼に向けて手を伸ばして目をつぶる。  
「ん…」  
口づけを交わす。  
不意に、視界の端で布団が膨らんでいるのが見える。  
布団をはがすと、彼のそこが元気に天井に向かってそそり立っていた。  
「朝から元気だね…」  
「…生理現象だからな」  
彼が少し恥ずかしそうに頬を掻く。  
そっと私はそれに、手を伸ばす、触ってみると思ったよりも硬くてびくびくと震えて温かい。  
「…どうかしたか?」  
じっと彼のモノを見つめる私に彼がそう言ってくる。  
「辛い?」  
彼に私は聞いてみる。  
「いつものことだ、しばらく待ってればおさまる」  
そう彼は言うけれど、びくびくと脈打つそれはどう見ても苦しそうに見える。  
不意に、私はあることを思い出した。  
「…ねぇヒューマン、口でしてあげようか?」  
 
「は?」  
彼が私の言葉に目を丸くする。  
「…ノームにもらった“ご奉仕させてご主人さま”って本読んで、そう言うのがあるって私、知ってるよ?」  
「…あいつ母親だよな?」  
ヒューマンがどこか遠くを見ている。  
本では確か…  
「ご主人さま…私にご奉仕をさせていただけないでしょうか?」  
こんな感じで、上目づかいで見るのが正しかった気がする。  
「…」  
ヒューマンが私を無言で見てる、手の中のソレがまた少し固くなった。  
「…頼む」  
なぜか、ヒューマンが少し恥ずかしそうにそう答える。  
「はい、それでは…ご奉仕させていただきます」  
本でドレスみたいな服を着ていたフェルパーの少女の言葉をそのままなぞって口にする。  
口を大きく開けて、彼のそれを咥える、大きくて少し顎が辛い。  
本でしていたように、先をなめて、棒のようなそれを上下に手で擦る。  
「はむ…ん、あむ…」  
もう片方の手で、彼の袋のような場所を揉み、アイスキャンディーのようにそれをなめてみる。  
「うあっ…いい…ぞ、フェアリー」  
「ほんふぉ?」  
彼が気持ちよさそうな顔をしている。  
うれしくなって夢中で彼をなめしゃぶる。  
次第に彼の先から汁のようなものが溢れてくる、なめてみると少ししょっぱい。  
続けているうちに、私もお腹が熱くなってくる。  
―なんか変な気分…―  
だんだん体が火照ってくる。  
不意に、行為を続ける私のそこを彼の手がなでる。  
「…濡れてるなフェアリー」  
「な、なんでだろ…なめてたら、変な気分が…」  
「続けてくれ…俺も続ける」  
「うん」  
彼に愛撫を受けながら彼のそれを夢中で味わう。  
与えられる快感を返すように。  
「く、フェアリー…出る…」  
彼が苦しそうにそう言っている。  
「ふーふー」  
私も彼の愛撫のせいで達しそうになっていた。  
頭がボッーとして、彼をひたすら味わうことしか考えられない。  
「うぁ!」  
彼の腰が震えて私の口の中に欲望を吐き出す。  
「んん〜」  
少し驚きながら喉に叩きつけられるそれを、私は少しむせながらのみこんでいく  
彼の熱が喉を伝わって、お腹の中が熱くなる。  
―変な味、でもあったかい…―  
「おい、フェアリーお前…まさか」  
「ん?」  
彼が私を何か驚いた眼で見ている。  
「飲んだのか?」  
「え?飲んじゃいけないものだった?」  
本だと確かに飲んでたはずだけど…?もしかして何か間違ってたのかも知れない。  
そう言えば本では口をあけて、たまったものを見せていた気がする。  
「あ…ごめん、私すぐ飲んじゃった…口にためて見せて、「いいよ」って言われてから飲まないといけないのに…」  
あんなにしっかり覚えたと思ったのに驚いて手順を一つ飛ばしてしまった。  
「いや…まぁすぐ飲んでも、問題はない」  
「そう…よかった…今度するときは気をつけとく…」  
 
それよりも…なんか、むずむずする、彼はイったけど私はまだイってない、昨日初めて失ったばかりなのに、あれだけ愛してもらったのに何というか……すごくしたい。  
「あの…ヒューマン、なんていうか、その…」  
なかなか言い出すことができなくてもじもじ震える。  
みだらな女と思われないだろうか?  
そんな私をみた彼が笑って、横になったまま私を自分の腰をまたがらせるように、抱き上げる。  
「フェアリー、悪いな」  
「ふぇ?」  
「あんなのみたら我慢できない」  
彼が私のことを求めていた、そして同じように私も彼のことが欲しいと思っていた。  
だから、答えは簡単だった。  
「…いいよ、またしよう…ヒューマン、今度は私も頑張って動くね」  
「そいつは魅力的だな」  
彼が下着をずらして突き込んでくる。  
腰は少し痛いけど、頑張れば動ける。  
快感に震えながら、私は再び彼の欲望をこんどこそ自分から受け止めた。  
 
 
3回目になる行為を終えると私のお腹が小さく鳴った。  
「そろそろ朝ごはん、食べにいこっか」  
彼のお腹の上に乗ったまま彼にそう告げる。  
「先にデザートを食べた気もするが、そうするか…服着るからどいてくれ」  
「は〜い」  
乱れた制服を直しながら、私は彼と繋がりをといた。  
「ふいてやろうか?」  
抜いた瞬間あふれ出た精液をみて彼が言う。  
「いや…良い、ヒューマンにされたら多分濡れちゃう」  
「…そうか」  
はずかしかったけど、ティッシュをもらってふきとった。  
ちなみに、下着はスカートに入れていた予備を履いた。  
彼も下着をはいて自分の制服に袖を通して起き上がる。  
ベッドに座ってそれを待ちながら、立ち上がった彼の腕に自分の腕をからめて羽で浮遊する。  
「自分で歩けよ」  
恥ずかしそうに彼が笑った。  
「無理、あんなにしたから歩けない」  
「今夜が楽しみだフェアリー」  
「そうだね〜」  
そんなことを話しながら私達は食堂に向かう。  
 
曲がり角を曲がるとちょうどディアボロスの部屋があいてフェルパーとディアボロスの二人が出てきた、そして普通に目があった。  
「あ」  
私達4人の声が重なる。  
「お、おはよう二人とも」  
「お、おはよ、フェアリー、ヒューマン」  
少し肌のつやが良いフェルパーが答える、ただなんか様子がおかしい。  
「よう旦那、昨夜はずいぶん楽しんだみてぇだな」  
腕に抱きついている私を見たディアボロスが煙草をくわえたままヒューマンの肩をたたく。  
「だまってろディアボロス、お前は人のこと言えんのか?」  
様子のおかしいフェルパーをみたヒューマンが笑ってディアボロスの胸を叩く。  
「フェルパーがご褒美くれてな、“花見”とかいろいろ楽しんだぜ…まぁ、見てるだけじゃなくて、ついつい手を出して散らしちまったがな」  
意味深にディアボロスが笑うとビクン!とフェルパーの尻尾が立った。  
なんか、フェルパーが自分のお尻を気にしてる気がする。  
「……痛いかったのに…痛いのがあんなに…絶対、私変なの目覚めた…目覚めちゃった、もうお嫁にいけない…」  
多分、気にしないであげた方が良いんだろう。  
「…お前何した、なんか散ったというか、むしろ咲いたみたいなことうちのドクター口走ってるぞ」  
ヒューマンが少し引いてる。  
「いや…調子に乗っていろいろやったら、なんか目覚めたらしい」  
新境地に達したらしい彼女に感想をきいてみたかったけど、フェルパーが危険そうだからやめておく。  
「お前たちは廊下で何を話してるんだ、少しは学生として節度を考えろ馬鹿者どもが」  
スノウを肩車したまま階段をおりてきたバハムーンが私達を見て呆れたように呟く。  
「子持ちのお前が節度を語るな」  
ディアボロスとヒューマンの声が重なった。  
「……それもそうだな、すまん、だが娘がいるからやめろ」  
「ままーおたのしみってなに〜?」  
「…スノウも大人になったらわかる」  
「ふーん」  
娘の問いにノームはほほ笑みながらそう答える。  
「あの…ノーム」  
その答えはさすがにどうかと思う。  
「…嘘は言ってない、それに女の子だからいつかは経験する」  
「…そうだね」  
この話題はスノウの今後のためにやめとこう。  
 
折角集まったから私達は7人そろって食堂に向かうことにした。  
「あ、そうだノーム、後で制服直して」  
「…昨日おろしたばかりなのにまた?」  
「ヒューマンお前、猫かぶるのやめたんだな」  
「ああ、もう温かい季節になったからな、かぶる必要ないだろ」  
「にゃーにゃー、どしたの?おしりいたい?」  
「痛かったのに…痛くて…でもそれが…気持ち良くて…痛いのが良くて…」  
「スノウ、フェルパーは今悩んでるから静かにしてやれ、それよりも今日こそピーマン食べろよ」  
「え〜!?もうぴーまんや〜」  
くだらない、何気ないことを話しながら私達は歩いていく。  
…一名だけ、新しい自分と戦ってるけど。  
 
先頭のヒューマンが食堂の扉を開くと、食事をしていた全員が立ち上がって彼に敬礼する。  
今まではずっと不思議だったけど今なら理由がちょっとわかる。  
「それにしても、フェアリー、どうしてずっとヒューマンの腕にくっついてるの?」  
意地悪そうな笑みを浮かべてノームが笑う。  
私もそれにのることにした。  
「その…ヒューマンが激しくて…腰が…」  
頬を染めて照れてるようにそうつぶやく。  
嘘はついてない、実際今の自分が一人でまともに歩けるかはわからない。  
朝起きてから更にしてしまったというのもある。  
私の衝撃的な発言に食堂に緊張が走った。  
「テメェら…お前らは何も今聞かなかった…そうだよな?」  
ヒューマンが自分を見つめる視線に銃を引き抜く。  
「イエス、サー!私達は何も聞いておりません、静かに食事に集中しております、イエス、サー!」  
彼らの言葉に彼は笑う。  
「まぁ良い、今日は好きなだけ騒げ、今日の俺は気分が良い多少の騒ぎは許してやる」  
そう言っていつもの指定席に座る彼を見ながらひそひそと会話が交わされる。  
今、あの軍曹、信じられないこと言わなかったか?  
つかあのフェアリーの服どう考えても軍曹のサイズだよね。  
おい、余計なことを言うな!死ぬぞ!  
そんな言葉が交わされる。  
そんな彼の向かいに私は座る。  
みんながそれぞれ自分の席に座って食事の前で手を合わせる。  
「いただきます」  
「まーす」  
そんな声が食堂に響く…  
 
タカチホ義塾は今日も平和だった。  
 
 
俺はどうしようもないくらい歪んでる  
今でもあいつのことを壊してしたくて  
あいつが居ないと心配で  
気づけばあいつのそばにいて  
あいつの気持ちに付け込んで  
それでもあいつといたいから  
隣であいつが笑うから  
あいつのことを守ってやろうと俺は再び胸に誓った。  
 
きっとそれが、あいつに俺がしてやれる、たった一つのことだから  
それが歪んだ俺の中にある  
たった一つ真っ直ぐな想い  
 
 
 

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