うっそうと生い茂った森に、激しい戦いの音が鳴り響いている。
プリシアナゴーレム、そう呼ばれる石の巨人と6人、いや7人の少年少女が戦っていた。
「いくぜ、合わせろフェルパー!」
「オーケイ、いくよディア」
鏡に映るように背中合わせに立った二人が呼吸を整え、最大の技を放つ。
『天剣…絶刀!』
降り注ぐ二重の斬撃の嵐に、ゴーレムの体が軋んだ音を立てる。
だが、ゴーレムはその刃の雨を耐え抜いて、反撃とばかりにその巨大な腕をその2人に振りおろす。
しかし、二人はよけない、むしろ余裕の表情でそろって煙草に火をつける。
そして、それを証明するかのように、ゴーレムの攻撃は突然現れた虹色の壁に壁に遮られた。
「二人とも、仲が良いのは良いけど、スノウちゃんも居るんだから外でラブラブしすぎちゃだめだよ?」
壁を作りだしたフェアリーが、魔道書を開いたまま二人をたしなめる。
壁に攻撃が防がれたゴーレムは再度の攻撃のため腕を振り上げる。
しかし、振り挙げられた腕は振り下ろされることなく宙に舞った。
「…ふむ、ゴーレムといっても多少硬い程度だな、…ノーム」
両手に巨大な剣を持ったバハムーンは斬り落とした腕を踏みつけ、背後の妻の名を呼ぶと灼熱のブレスをゴーレムに放つ。
「…了解…」
彼の言葉に応えるようにノームは杖を大きく振って呪文を紡ぐ。
「…凍っちゃえ…ブリザード」
急速な過熱と冷却により、ゴーレムの体には無数のヒビが入っていく。
それでもまだあがくようにゴーレムが健在な腕を無防備なノームめがけて振り下ろす。
「ままをいじめちゃだめ!ひっさ〜つ、りーりーのまね〜〜!!」
ノームの背後に隠れていた白い髪のノームの子供がそう叫んで手を前に突きだす。
「まねっこ、まほーへきー」
緊張感が全く感じられない言葉とは裏腹に、強大な魔力で作られた魔法壁はゴーレムの最後の抵抗を受け止めて、残ったゴーレムの腕と共に砕け散る。
攻撃の手段を失ったゴーレムの目の前に、獣のような笑みを浮かべたヒューマンが立つ。
「あばよ、意外と楽しめたぜ」
銃声は一発…森が大きく震え、ゴーレムの体が砕け散った。
タカチホ義塾
この年現れたそのパーティはその類まれなる才能と力を持って見事、三学園の交流戦で優勝という輝かしい栄光を残した。
されど、彼らのチームには名前がなかった。
ただ、何かに導かれるように集まった寄せ集めのチームが、1年の時を経て、結束を深め6人から7人、本当のチームへと成長していっただけだったから。
だから彼らはこう呼ばれた
「ネームレス」
名状しがたい、そんな彼らをたたえるように…。