あいつと私は最初からあまり仲が良くなかった。
あいつはいつも煙草を吸っていて、まじめな姿を見たことがなくて、「くだらねぇ」が口癖で。
侍のくせに武士道なんざどうでもいい、といつも口にしていた。
一言で言うなら、ロクデナシ、そんな言葉がよく似合う。
おなじ侍なのにこの違いはなんだろう?種族の違い?性別の違い?
私はフェルパー、あいつはディアボロス、私は女で、あいつは男。
本当はそんなことは関係ないのかもしれない、力があるのにやる気がない、結局私はそれが気に入らない。
だから、私たちはいつも喧嘩をしているのだった。
タカチホ義塾の食堂、そこにはフェルパーの少女とディアボロスの少年がテーブルを挟むように座っていた。
なぜか、剣呑な雰囲気を纏って…。
「いいかげんにしなさいよ!」
ばん、と私はテーブルを叩いて立ち上がった。
「うるせぇなぁ…、何がきにくわねぇんだよ?」
灰皿に煙草を押しつけ、火を消しながらあいつが私を見た。
「あんた、また朝の稽古にこなかったじゃない、侍たるもの武士たるもの日々の稽古を忘れてはいけないとそんなこともわからないの?」
侍の基本ともいえる事なのに、最近のこいつは顔すら出しに来ない。
「これでも、いろいろ忙しくてな、行きたくても行けないんだよ」
へらっ、といつもの軽薄な笑みを浮かべて笑う、どうしようもなく腹が立った。
「はいはいそこまで二人とも、君らはホントに仲がいいな」
変わらない態度に怒りが抑えられず、殴りかかろうとしたところで、私たちの間に見覚えのある影がわって入る、彼はチームのリーダーであるヒューマンだった。
「こんなやつと仲がいいなんて吐き気がする。」
「奇遇だな、俺も仲良くなるならテメェ見たいな貧乳よか、他のやつとお近づきになりたいね」
「このっ!」
人がひそかに気にしていることを言われて、ついカッとなって刀に手をかける、が…。
「そこまで…俺はそういったはずだが…聞こえなかったか?フェルパー、ディアボロス」
ヒューマンは銃を抜いてその銃口を私たちに向けた。
「ちっ、わかったよ、だからその物騒なもんしまってくれ、ったくホントにくだらねぇ」
「ごめんなさい…」
あいつと私がそういうと、ヒューマンは静かに銃をしまった。
「分かってくればいいんだ、分かってくれれば」
その顔にはいつもと変わらない笑顔が浮かんでいる。
「あれ?みんなどうしたの」
何も知らない顔で入ってきたのはチームメンバーでヒューマンの彼女であるフェアリーだった。
「なんでもないよ、フェアリー、それよりも今日のヘアピン、似合ってる」
「あ、気付いた?ヒューマン、この間ノームがつくってくれたの」
彼女の言うノームとはフェアリーのルームメイトで私達のチームメンバーである。
今はこの場にいないがきっと今の時間なら彼女は恋人のバハムーンと食事でもしていることだろう。
「それよりも、ヒューマン、今日はどうするの?」
「ん、今日は何にもクエストもないし、自由行動かな、最近はクエスト続きだったからみんなにも休息が必要でしょ?」
「そいつは良い、俺もゆっくり休めそうだ」
「あんたはいつも、そうでしょうが!」
ヒューマンの言葉に口笛を吹きながら答えるあいつに、私は我慢できなくなって叫ぶ。
「フェルパー…」
たしなめるようなやさしい声、フェアリーがいるからだろう、だがその目には、黙れ、と言葉には表わさない意志が宿っていた。
「…休みなら、私は稽古してる」
言いようのないむしゃくしゃとした気持ちが私の胸にわだかまっていた。
初めてあいつを見た時、素直にすごいな、と私は感じた。
身の丈ほどの大太刀、鬼切をまるで自分の腕の延長のように扱うあいつ、すごい技を持っているのに、あいつはめったに使わない。
私にはまねできない才能を持っているのに…
鋭い呼吸と共に放った一閃は確かに的をとらえ断つ。
刀を納めると、わらでできた人形は静かに滑り落ちた。
まだ…足りない…
自分の愛刀である刀に視線を注ぐ。
何の変哲もない、無名の日本刀、ある意味今の私にはふさわしい代物だと思う。
繰り返しの鍛錬でだいぶ痛んでしまっているし、そろそろ研ぎにだしたほうがいいかもしれない。
「すごいね…真っ二つ……」
不意に声をかけられて振り返る。
そこにいたのはノームだった。
表情こそほとんど分からないがぱちぱち、と手をたたく彼女の姿から私のことをほめてくれているのだと分かる。
「私なんてまだまだだよ」
「どうして?」
「ノームはあいつ…ディアボロスの居合を見たことがあるか?」
私の言葉に、ノームはふるふると首を横に振る。
「私も、一度しか見たことはないけど、一度しか見ただけでもあいつのすごさは分かる」
そもそも、居合には大太刀は向いていない、踏み込み、呼吸、鞘から刀を抜く角度。
それらをそろえなければ、刀の速度は死に、十分な力は発揮できない。
その点で、大太刀には長さの問題がある。普通に踏み込む程度では大太刀で居合など到底できるものではない。
それなのに…、今でも思い出せる。
腰だめにあいつが刀を構え抜き放つ、キン、という音がなって刀が鞘に収まる。
まるで、剣術の手本を演じるかのような、ゆったりとした動きだったのに放たれてから収まるまでの軌道が私には見えなかった。
「こんなもんか…」
あいつがそう言って煙草に火をつけ、わら人形を指ではじく、ようやく切られたのを思い出しかのように2つにわかれるわら人形。
「…想像できない、そもそも彼が練習してるとこなんて私は見たことない」
「だろうな、私もあいつが稽古している所を見たのはその一度だけ」
だから余計に腹立たしい。
「…フェルパーはあいつのこと嫌いなんじゃないの?」
「嫌いだよ」
何がどうしたというのだろう。
「…その割には今の話をしてる時、悔しそうだった」
「それは、対して練習もしないのにあいつがそんな腕を持ってるのは悔しいじゃない」
「そうじゃない…」
ノームが何を言いたいのかよくわからなかった、表情が皆無なこともあわさって余計によくわからない。
「こういうのは自分で気づくべき?」
頭の上にクエスチョンマークを浮かべて彼女が首をかしげる。
「いや、ごめん、何が言いたいのかさっぱり分からない」
「まぁいいや…そろそろバハムーンのとこに戻る」
彼女はそれだけ言うと、ふわふわと、漂うように去って行った。
結局、彼女が何を言いたかったのか、私にはよくわからなかった。
仲間はみな休んでいるから、修行のために遠くへ行くことはできない
だが、やはり鍛えるには実践しかないのだからと、私は飢渇之土俵へと足を運ぶ。
この辺りには何度も足を運んでいることもあって、別段苦戦するようなモノノケはいない。
一人で修業するにも別に危険はないだろう、ただひたすらに作業のようにモノノケを見つけ、狩る。
―強くなりたい…、あいつを超えられるぐらい強く…―
より強く、この道を極める為に、あの背中を超える為に…。
―強くなってあいつを超えて…―
「あいつを超えて…私は何がしたいんだろう」
あいつがすごい技を持っているのは知っている、そして、それを超えたいと思っている。
だけど…、私はあいつを超えて、何がしたいのだろう?
分からない…一体自分が何をしたいのか…苛立ちが募る。
モノノケを狩る、この苛立ちをぶつけられるなら何でもいい。
しかし、刀には迷いが宿り、切れ味は鈍っていく。
「…今日はもう帰るか……」
そう思い、学園へ引き返そうと歩き出した時だった。
ここによくいるモノノケなど比較にならないほどの気配、心を引き締め、腰の刀に手を添える。
どうやら私の隙を窺っているようだった、やはり、ただのモノノケではないらしい。
「隠れてないで出てきたらどうだ?」
すると、私の言葉にこたえるように風が集まって竜巻が起こり、その中心から一匹のモノノケが姿を現した。
「ずいぶんと吠えるな、小娘…よくもわが眷族をいたぶってくれたものよ」
黒い鳥の翼をもつ、鳥と人を合わせたようなモノノケ、烏天狗
見たことはある、倒したこともある、しかし、その時は自分一人ではなく他の仲間もいた、当然あいつも、だが、今ここにいるのは私一人、この迷いに濁った刀で戦うことができる相手だろうか?
「覚悟はできておるか?」
烏天狗が余裕の表情でつぶやく。
「は、ぬかせモノノケ、刀の錆にしてくれる」
鼻で笑って刀を抜くそして私は烏天狗に切りかかった、キン、と金属が打ち合う音が響く。
烏天狗がゆらゆらと惑わすように飛び、襲いかかる、その攻撃を刃で受け流し、反撃する。
白刃がきらめき、烏天狗の体をとらえるが、浅い。
「なるほど…この程度か」
「次はその羽をいただこう」
私がそういうと、烏天狗は何がおかしいのか笑いだす。
「何がおかしい!」
「何がおかしいだと小娘!きさまのその刀で、どうやってわが羽を切り落とすというのだ?」
烏天狗の言葉に私は愛刀に目をやる。
見慣れているはずのその刃には、見たことのないヒビが刻まれていた、まるで、今にも折れてしまいそうなほどに…。
「傑作だな小娘、そのような刃で我を倒すなどと方腹痛いわ!!」
烏天狗が再び迫ってくる、先ほどの要領で再び受け流そうとした私の耳にピシリと、何かが壊れるような音が聞こえる。
あわてて私は受け流すのではなく、攻撃を回避することに専念する。
「遅いわ」
「しまっ!」
キィィン……
回避しきったと思った瞬間放たれた追撃が私の体をうちすえる。
「くっ!」
とっさに受けたおかげで幸い傷は浅い、だがそれ以上の問題があった。
私の手に握られているのは愛刀のなれの果て…、その刃が中ほどから折れて失われていた。
失敗した、今のは私にあえて刀で受けさせるために放った攻撃だろう。
その誘いにまんまと引っ掛かったせいで刃は失われた。
「くくく、覚悟するがいい小娘」
私は折れてしまった愛刀を鞘に収めながら術を紡ぐ、でも遅い。
「遅い、遅い!」
立て続けに放たれる攻撃に術を中断され、攻撃ができない、このまま体力を消耗すればやられるのは目に見えていた。
―マズイ、どうすれば…―
思考を回転させる、一撃は受けるつもりで術を確実に当てるしかない…
迫る烏天狗に向かい、回避を捨て術を完成させる、攻撃を受けるつもりで真っ向から相手を見据える。
が、その瞬間、烏天狗の姿がかき消えた。
―フェイント!?―
完全に虚を突かれる、放った魔法は烏天狗をとらえることなく、空に向かい消えていく。
「もらった!」
死を覚悟した瞬間、今までの思い出が頭の中に駆け巡る。
これが、走馬灯か…。
なぜか、あいつの顔ばかりが浮かんで消える。
―何でこんな時まであいつのことを…―
そう思いながら襲ってくる衝撃に備える。
「伏せてろ貧乳」
…あいつの声が聞こえた気がした。
―言われなくても伏せるわよ、そうしないと、堪えられないだろうから…―
次の瞬間、予想外のことが待っていた。
「ぐああ!」
―え?―
衝撃は来ない、それどころか、烏天狗の悲鳴が辺りに響く。
「貴様何者だ!」
目をひらくと、烏天狗は何か刃物で切られたような傷口をおさえながら私の背後を睨んでいた。
何が起きたのか分からない、そんなことを思っていると、背後から聞き覚えのある声が響いた。
「通りすがりの、イ・ケ・メ・ン」
そいつはいつものように煙草をくわえて、いつもの様な軽薄な笑みを浮かべてそこにいた。
「小僧、貴様この小娘の仲間か…」
怒りに震えた声で烏天狗があいつを睨む、だが、あいつは臆する様子もなく、煙草を吸っている。
「残念ながらね、ま、俺もテメェ見たいなモノノケは嫌いだし?ちょっとまぁ…」
区切るようにそう言って、煙草を投げ捨て、
「死んでくれや」
笑った。
「ぬかせ小僧!」
烏天狗が襲いかかる。
「すげえなぁ、速い速い」
手をポケットに入れたまま、あいつが笑って回避する。
よけきれなかったのか頬がさけて血が滲む。
「このっ!」
攻撃をよけられた烏天狗が血走った眼でうちわを振るうと竜巻が巻き起こり、あいつに向かって竜巻が勢いを増しながら迫る。
「ディアボロス!!」
叫ぶ私にあいつはわらって、ポケットから折り紙で作られた何かを取り出し。
迫る竜巻に向かってほおった。
「かえる」
彼の言葉に反応して、投げられた折り紙が魔力を発する。
「な、何!?」
ぱん、と何かがはじける音と共に竜巻が消えた、驚く烏天狗がもう一度、竜巻を起こすためにうちわをふるう、が…。
「ぐぁぁぁ」
響きわたる烏天狗の絶叫…、消えたはずの竜巻は烏天狗の目の前に現れ、その体を打ちすえる翼が奇妙にねじ曲がり、浮力を失った烏天狗は地面に向かって落ちていく。
そして、その烏天狗を睨み、あいつは目を閉じ静かに刀を腰だめに構えると息を整え、紡ぐ。
「疾き太刀の…白刃で作る赤花で…舞う白雪を…桜に変えんと…」
あいつが静かに息を吐いて…目を…開く
「…天剣絶刀!」
言霊と共に抜き放たれた剣線は無数の斬撃へと変わり、烏天狗の体を引き裂いた。
乾いた絶叫が辺りに響く、引き裂かれた烏天狗の体が石に変わり、石に変わった体を斬撃が刻む。
「まったくもって…くだらねぇなぁ」
後には何も残らない…烏天狗であった砂とあいつの吐いた煙草の煙が、風に吹かれて消えていった。
「…なぜ助けた」
立ち上がりながら、私はあいつに向かってそういった。
「別に…」
いつものようなへらへらとした笑いが、感に触る。
「私はお前なんかに助けてほしくなかった」
「そうかよ」
自分の無力が恨めしい、情けなくて…涙が出る。
「お前なんかに助けられるくらいならいっそあのまま…」
「オイ…」
あいつが何かを言おうとしたけれど、私は八つ当たりするようにその言葉をいった。
「あのまま死んだほうがましだった!!」
シン…と辺りが静まり返る。
「オイ…調子乗ってんじゃんぇぞ貧乳」
ゾクリと、背筋が凍るような冷たい本当に怖い声色であいつがそう言って、私の胸倉をつかんだ。
「テメェが俺を嫌うのは勝手だがな…死んだほうがマシだ?」
怖い、今まで見たことのない、本当に怒っている声、何か触れてはいけないものに触れてしまったのだと直感的に悟る。
「生きてる分際で生意気いってんじゃねぇよ!ああ!?あいつはな!ずっと苦しんで、苦しんで、それでも生きて!生き続けたかったのに死んだんだぞ!死んだほうがマシだ?pライドだ!?武士道だ!?くだらねぇ!」
力はどんどん強くなって私は呼吸を奪われる。
怖い…怖い…こんなこいつ見たことない。
いつもへらへら笑ってるのに、いつもふざけてばかりなのに。
そんなこいつが本気で怒ってる。
「ごめんなさい…ごめんなさい」
怖い…怖い…
「…胸糞わりぃ、二度とツラ見せんな」
吐き捨てるようにあいつが呟いて、私は砂漠に落とされる。
舌うちをして、あいつが去っていく。
「あ…あ…」
―いかないで…―
あいつの背中に手を伸ばす。
「…かないで…」
―嫌わないで―
去っていく背中に手を伸ばす。
あいつの姿が視界から消えていく。
「いやだ、行かないで、ごめんなさい、謝るから嫌いにならないで!」
あいつの姿が涙で滲んで見えなくなる。
「う…う…うぁぁぁ…!!」
去りゆくあいつの背中を見るうちにようやく、私は、あんなにあいつに追いつきたかったのか、それが分かった。
いつも、背中を追っていた。
あの背中を追いかけて、いつか追いついて、隣に並んで歩きたくて…。
だから、あいつの背中を見てたんだ…
「嫌だよ…いかないでよ…」
いつの間にか、私はあいつのことがどうしようもないくらい好きになっていた…。
重い足取りで、学園に帰る、食事の時間あいつは集合場所にこなかった。
みんなはいつものことだろうと、食事を始めたが、私はあいつの言葉が頭から離れない。
「二度とツラ見せんな」
なんで自分があんなことを言ってしまったのか深い後悔にとらわれる。
結局、私は食事に手をつけなかった。
逃げるようにみんなから離れ、一人で泣く。
刀は折れ、あいつには嫌われてしまった。
「ふっ…うっ…」
もうあいつといつものように喧嘩することもできない。
あの癇に障るいつものような笑顔をあいつはもう私に見せてくれない。
「いやだ…いやだよ…」
悲しい…苦しい…
折角自分の気持ちに気付いたのに、気持ちを伝える前に嫌われてしまった。
プライドなんか気にしないで、素直に助けてくれてありがとうと言えばよかった。
何度も繰り返した後悔に胸が痛む。
「…あいつと何かあったんだな……」
不意にかけられた声に振りかえる。
「バハムーン…」
あいつの幼馴染、ノームの彼氏…
「あいつ、お前を追いかけて飢渇之土俵にいったんだ、それなのに帰ってきたときは不機嫌で、何にも言わずに部屋に帰って行った」
あいつが、私をおってきてくれていたことがうれしいのに、同時にそんな彼になんてことを言ってしまったんだろうと、悲しみが押し寄せる
「わたしが、わた、私がわるいの、助けてもらったのに、もらったのに、あんたに助けられるんて、しんだほうが…死んだほうがマシ…って」
「そいつは…」
バハムーンが顔を苦しげにゆがめる。
「怒ってた、あいつ、生きてくせに、って、あいつは生きたかったのに死んだって」
「…」
バハムーンは私の話を黙って聞いてくれた。
「…まず、落ち着け、落ち着いたら、少し…あいつの話をしてやる」
「…うん」
深呼吸をして、自分の気持ちを落ち着ける。
苦しいけど、無理やり、自分に言い聞かせて落ち着かせる。
しばらくそうしていると、バハムーンがポツリと呟いた。
「あいつが冒険者になったのはな…あるアイテムがほしかったからだ…」
「ある…アイテム?」
私の言葉にバハムーンは静かにうなずく。
「蘇生の果実、どんな病気であってもどんなにひどい傷であっても治すことができる幻のアイテム」
「なんで…」
「あいつにはな…妹がいたんだ、先天性の病気で、ずっと苦しんでいた…」
あいつの妹がかかっていたのは生み出される魔力に耐え切れず体がむしばまれる病
薬や魔法は効かなくて、治療法はなかった。
そんな時、ある冒険者から、あいつはそのアイテムの話を聞いた。
助けられるかもしれないと希望を持った。
助かるすべはそれしかないのだと、あいつはそれを求め狂ったように戦いに明け暮れた。
目につくモノノケは殺し、手に入れた宝を売り払って金を作る。
自分の力なんか関係ない、噂を聞いては旅立った。
でも、幻は幻…探しても探しても見つからなかった。
そして…
「結局、あいつは助ける事が出来なかった…」
妹は兄の帰りを待ちながら、自らも冒険者になることを夢見ながら…目覚める事は無かった。
「あいつが、折り紙士をやってるのはしってるか?」
「…うん」
「妹がさ、言ってたらしいんだ、お兄ちゃんが敵と戦うなら、私はそれを助けるんだって、戦うんじゃなくて、守るんだって…」
「それは…」
「…妹が死んで、あいつは抜け殻みたいになった、何をするでもない、ただ、何もかも失ったみたいに…」
「あいつ、そんな風に見えなかったのに…」
生きたかったのに、生きれなかった妹、助けたかったのに、助けられなかった兄
いつもへらへらしているあいつからは想像もできない。
「…お前は似てる、あいつの妹に…」
「私……が?」
ああ、とバハムーンは呟いた。
「妹はな、お兄ちゃんは侍なんだから、武士たるもの日々の稽古を忘れちゃいけないとかいつも言ってた」
「あ、それは…」
私が、あいつにいつも言っていた…
―私たちは侍でしょう?武士たるもの日々の稽古を忘れてはいけないと、そんなこともわからないの?―
「あいつはな、いつもそれにへらへら笑ってたんだ」
―俺はいろいろ忙しくてな、したくてもできないんだ―
「うれしかったんだろうな、お前とあって、あいつはいつもお前を気にしてた」
「それなのに…私は…」
私は、あいつを傷つけてしまった。
「…私、謝ってくる」
「…そうか」
「謝って許してもらえるとは思ってないけど…」
許してくれるなら何でもしよう、心に…誓う。
許してくれなくてもいいせめて…
「私を許してくれなくても…良い、でもせめて、あいつを傷つけたことを謝りたい」
私の言葉にバハムーンは静かに笑った。
「あいつならたぶんまだ部屋にいる、帰ってきてすぐに部屋に帰ったからな」
「…ありがと、バハムーン」
そう言って、私は寮に向かって走り出した。
あいつと私は最初からあまり仲が良くなかった。
あいつはいつも煙草を吸っていて、まじめな姿を見たことがなくて、「くだらねぇ」が口癖で。
侍のくせに武士道なんざどうでもいい、といつも口にしていた。
一言で言うなら、ロクデナシ、そんな言葉がよく似合う。
でも…
そんなあいつが気になって、そんなあいつを目で追って。
あいつの背中を追いかけて、あいつの隣に並びたくて、並べない自分が苛立たしくて。
あいつのことを傷つけて、自分の気持ちをようやく知って。
謝りたくて走り出す、今なら自信を持って、胸を張って言うことができる。
私はあいつが好きだった。
準備を終えて、私はあいつの部屋の前に立つ。
部屋の灯りは消えている、それでも、私にはあいつがまだ中にいる事が分かった。
忘れるわけがない、あいつの煙草の匂いが漂ってきてる。
コンコン、と部屋の扉をノックする。
少し遅れて、声が返ってくる
「…誰だ」
「…私、です」
「何しに来た、二度とツラ見せんなっ、つっただろうが」
扉越しに、あいつの不機嫌な声が響く。
逃げだしそうな自分を叱咤し、私は彼の言葉に応える。
「謝りに…来たの」
「謝るだ?いまさら何を謝る気だ?帰れよ」
「貴方に…ひどいことを言ってごめんなさい」
見えるわけじゃないけど、扉の前で、土下座して彼にわびる。
「…」
「貴方は、私を助けてくれたのに…それなのに、そんなあなたを私のちっぽけなプライドで傷つけて…ごめんなさい…」
泣いてはいけないと思ってるのに、ホントに彼に申し訳なくて、涙がこぼれる。
「…聞いたんだな」
何をとは聞かない、分かっていた。
「…うん」
「あのクソトカゲ…」
忌々しそうにあいつが呟く…。
「ほんとは、嬉しかった、あの時…貴方が助けてくれて」
あいつは黙って聞いてくれる。
「貴方が助けてくれて、ホントはありがとう、って言いたかった、でも…言えなかった」
「お前…」
「認めたくなかった自分でそのことを、だからあんなことを言って……」
貴方を、傷つけてごめんなさい…
ガチャリ、と小さな音が鳴って、部屋の扉が開かれる。
「…入れよ、そんなところで泣かれて変なうわさがたったら困る」
あいつの声が、扉越しじゃなくて、直接聞こえる。
「…うん」
そう言って、彼の手を取って立ち上がって、導かれるまま部屋に入る。
今まで見たことなかったけれど、意外ときれいな部屋だった。
「その辺にでも座ってろ」
あいつがそう言ってキッチンに向かう。
―なんでもするって、誓ったから…―
心の中で私はそう呟いた…。
「これでも、のめ…って何してんだお前!?」
戻ってきたあいつが、お茶をお盆にお茶を載せ、私の姿を見て驚いた。
「…だって、私貴方にお詫びするにも、何も持ってない…」
私はほとんど裸だった、制服ははだけ、スカートはすでに床に落ちている。
ブラも今にも落ちそうで、心もとない。
「だからって嫌いな男に抱かれるだ?それがお前の武士道か?そんなもん…」
「違う!!!」
彼の言葉をさえぎるように叫ぶ。
「嫌いなんかじゃない、武士道なんて関係ない、私はただ…」
「ただ…なんだよ」
「ただ、貴方に本当にお詫びがしたいの…」
「…下らねぇ…な」
私の言葉に、彼がいつもの口癖を呟く、お茶がテーブルに置かれ、毛布が私に投げられる。
「やっぱり、私なんかの体じゃ…だめだよね」
やっぱり私は彼に何もできない…そうつぶやく
「ちげぇよ…」
彼の言葉に私は彼の顔を見る。
そこにはいつもの癇に障るあの笑顔があった。
「俺がくだらねぇ、っていったのは俺自身だ、お前に下らねぇプライドなんざ、捨てろとか言いながら、俺の下らねぇプライドでお前を傷つけてる、お前はあいつじゃないのにな…」
自嘲気味に、あいつが笑う。
「結局、俺もお前もおんなじだ、だから、今回のことは痛み分けってことで許してくれ…」
彼が、さっき私がしたように、土下座の姿勢になる。
「悪かった…」
「う…」
うれしいのか、悲しいのか分からない、ただ、胸がいっぱいになって涙がこぼれる。
「ううう…う」
我慢できなくなって、私は彼の胸に飛び込んだ。
驚きながらも、彼は私をやさしく抱きしめてくれる。
「ごめんなさい、ホントは、ホントに、助けてくれてうれしかったの」
「…そうか」
彼の手が、私の頭をなでてくれる。
「ずっと、ずっと貴方に追いつきたくて…」
「俺を?きらいだったんじゃねぇのか?」
「ううん」
そんなわけない…、こんどこそ伝えよう、勇気を出してこの胸の想いを。
「ずっとずっと、前から…ずっと前から…貴方のことが大好きです」
「…俺もだ」
そう言って、彼が私の顎を掴んで自分に向かせる。
私は静かに目を閉じる。
初めてのキスは煙草の味がした。
「落ち着いたか?」
「…うん」
気持ちを伝えたと思ったら、気が抜けてしまったのか、私は涙が止まらなかった、そんな私を彼は泣きやむまでずっと抱きしめてくれていた。
「…にしても服着てくれないか?」
そう言われて、毛布で覆っているけど、自分がほとんど裸のような格好をしていることを思い出す。
「何で…?」
「何で、ってお前それは…好きなやつにそんな恰好で抱きつかれてりゃ…襲いかかりたくなるだろうが…」
「別に…いいよ、貴方なら…」
私の言葉に、彼があわてる、抱きしめられた胸から彼の鼓動が伝わってくる。
「ドキドキしてる」
「お前な…」
「ねぇ…」
なんだ?と言おうとした、彼の手を取って私は自分の胸にあてる。
「お、おい」
「ほら、私もドキドキしてる…」
「…ホント…だな」
彼の手は少し冷たかったけど、気持ちが伝わってくるような気がして、胸が温かくなる。
不意に、彼の頬にできた新しい傷に目をやる。
「ごめんなさい、私のせいで怪我させて…」
「こんなのくだらねぇ怪我、怪我のうちになんかはいらねぇよ、どうせすぐ治るだろ」
彼がいつもの笑顔で笑う。
そんな彼が愛しくて…
体を離して、毛布を脱ぐ。
「ねぇ私にも、1つくらい貴方の傷を刻んでよ…」
ほとんど落ちたブラを脱ぎ去る。
「ああ…」
彼が熱に浮かされたように私を御姫様だっこの状態で抱きあげる。
そして、そのまま抵抗することなく、私はベッドの上に下ろされた。
電気が消え、ベッドに横になった私に彼が覆いかぶさる。
「その…」
「なんだ?」
いまさらになって恥ずかしくなって、私は言えなかったその言葉を彼に呟く。
「初めてだから…やさしくお願いします…」
これから、あなたに抱かれるという、私なりの意志表示、きっと彼の眼に映る私は真っ赤な顔をしてるんだろう。
「気にすんな、俺もすんのは初めてだ」
彼の手が私の薄い胸をなでる、むにむにと、彼の手で私の胸が形を変える。
「ごめんなさい…胸薄くて…」
「あ〜そのなんだ気にすんな…それに」
「きゃっ!?」
突然、胸の中心をつままれる刺激に私は声をあげる。
「これだけ敏感なら十分だ」
恥ずかしくて声が出ない、自分でもよくわかるくらい、胸をつままれた時の声は快感を感じている声だった。
「それよりもお前…もしかして…」
「…うん、シャワー浴びてきた」
「やっぱりな、シャンプーのにおいが残ってる」
最初から、私は彼に抱かれるつもりだった、結果として、今のようにやさしくしてくれているけど、そんなことをされずにされてしまうことも想定して。
「…嫌い?こんな女」
ぽふんと、頭がなでられる。
気持ちいい、このまま全て捧げてしまいたい。
彼の舌が私の首をなめ、強く吸われる。
「あ、こら…痕ができちゃう…みんなに見られたらどうすんの…」
そういいながらも、彼のものの証なのだと、嬉しくなる私もいる。
「見られても気にすんな、それに…そんなこと、すぐ言えなくなる」
言葉と共に、胸が彼の口に含まれた。
「ふみゅ!?」
生温かい感触が胸をいじる、かたい感触に中心が挟まれる、必死で抑えているのに声が出る。
「駄目、声が、出ちゃう」
必死で押さえているのに、胸を刺激されると何も考えられなくなる。
「ぬがすぞ」
言葉と共に下着で隠していたそこが空気に触れ、水音を立てた。
彼に私の裸が見られている、私の全てがさらされる。
ピチャリと音が鳴って、温かくて、少しごつごつした感触がそこをなでる。
「すごいな…」
そう言って、彼が私の目の前に指を見せつける。
彼の指はぬめりを帯びた液体がまとわりついて糸を引いていた、そして、それが自分の愛液なのだと気づいて…
「っ〜〜〜!バカバカバカ!」
「ちょっ!やめろ!」
恥ずかしくて、彼の背中をたたいた。
「見せつけないでよ!恥ずかしいでしょ、まるで私がみだらな女みたいじゃない」
「悪かった!悪かったから…」
はずかしくて死にたい、初めてなのに彼の愛撫であんなに感じてしまうなんて、自分では分からなかっただけに、あんな風に見せつけられてしまうともしかして本当に私はみだらな女なんじゃないかと思ってしまう。
「みだらな女じゃないもん、あんただから濡れてるだけだもん」
「落ち着けよまったく…」
彼が呆れたように呟く、そして不意打ち気味に私にささやいた。
「心配しなくても、お前は十分良い女だ」
そして、彼の顔が私の足の間に消えていく、指とは全く違った感触に体が震えた。
「そんなとこなめちゃだめ…」
彼の舌が、敏感な部分を見つけ出して、かんだ。
「噛んじゃだめ!」
彼の口が押しあてられて、中にたまった愛液がズズズズという音とともに、吸い上げられる。
その全てが気持ちいい。
「だめ…だめ…駄目だよ…」
体に力が入らない、意識と感覚だけが鋭敏化して、もやもやとした何かが集まっていく。
「あ、あ…やめて、なんか変、なんか変になっちゃう」
「イクのか?」
彼はそういいながら愛撫を続ける。
ぱちぱちと、瞼の裏で何かがはじける。
「やめてよ、このままじゃ私壊れちゃう…!」
こんな感覚私知らない、こんな感覚感じたことない、もやもやはどんどん大きくなって、彼に刺激されてる場所あたりが熱くなる。
「いいんだよ、…そのまま感じて…イっちまえ」
彼の指が私の中に入ってきて、浅い抜き差しを少しずつ繰り返す。
体は言うことを聞かなくなって、びくびくと痙攣を繰り返す。
もやもやはどんどん膨らみそして…何かがはじけた。
体全体に快感が駆け巡り、筋肉が勝手に収縮する、足を開いていられなくて、あいつの頭を挟んで締め上げる。
歯を食いしばって、ベッドのシーツを強くつかんで、私は、今まで感じた事のないその感覚に酔いしれた。
「はぁ、はぁ…はぁ…」
「お疲れ…イイ顔してたぜ」
彼が、私にそう言って口づける、彼がほしくて、私は唇を合わせたまま舌を伸ばす。
彼の舌が私の舌に気付いて、絡みついてくる、唇が離れて糸を引く。
体は未だに電流が走っているかのように震えてた。
「ショックウォールにぶつかってるみたいだった」
「…お前な、他にもっと良いたとえかたないのかよ」
「そんなの…しらない…」
ふと、腿のあたりに何かが当たっているのが分かって、私はそこに目をやる。
そこにはパンパンに膨らんだ彼のズボンがあった。
「うにゅ…」
けだるい体を起して、彼のズボンのチャックを口で下ろす。
「おいおい…」
「いいから…」
バネが飛び出るように飛び出てきたそれは彼の指など比較にならない大きさでパンパンに膨れて、先から何か液体が漏れている。
「はむっ」
「くあっ!お、お前…」
おもいきって口にふくむと、青臭い変なにおいがする、そして、とても熱い
「んちゅ…あむ…はむ」
ぺろぺろの先をなめ、その裏の辺りをなめあげる。
びくびくと彼が震えていた。
「お前…初めてっつってたよな」
焦ったような、何かを抑えようとするかのような声が私に掛けられる。
「んむのーむは。ほうふふほ」
「咥えたまましゃべんな!」
「ぷはっ、ノームが…男はこうすると喜ぶって前…」
表情に乏しい友人のことを思い出しながら言うとディアボロスがバハムーンの部屋があるらしい方をみて呟く。
「あのトカゲ…ずいぶんやることやってんのな…」
気を抜いた彼をしり目に、彼自身を私はもう一度加えて棒のようなそれを上下にこする。
「うあっこれは…マズ…!」
彼が立ち上がって逃げそうになるのを、私は腰を掴んで離さない。
「おい、フェルパー離せ!このままだと口の中に出しちまう!」
「ひぃひほ、はひへ…」
「だからお前は咥えたまましゃべんな!」
そう言って彼が私の頭を掴んで無理やり引き剥がす。
「ぷはっ!」
「うぁ!」
ビクンビクンと彼の腰が震え、彼自身の先から白い濁った液体が私に降り注ぐ。
「あっつい…」
顔についたそれを手ですくってなめてみる、青臭くて、苦い変な味がする。
「あんまりおいしくない…」
「お前なぁ…」
「ノームはおいしいって言ってたのに…」
「…クソトカゲ…」
また彼がバハムーンの部屋らしいところを睨む、つられて見える部屋ではベッドの上で影が上下に動いていた。
「おい…フェルパー」
「はい!」
ぴん、と尻尾を立てて私は彼と向き直る。
「そろそろしていいか?」
「う、うん」
何をなんて、聞かない、彼のそこはびくびくと脈打っていたから。
私は彼のベッドに両手と両足をついて彼に向けて腰を見せつけるような形で横になる。
「…それもノームに聞いたのか?」
なぜか、彼が顔を赤くしながらそう言う。
「うん…」
「あのトカゲ、明日殺すか」
何か、私は間違ったのか、不安になって彼を見る。
「あの…」
「大丈夫だ、任せろ」
「…うん」
じっと、彼が私のそこを見る。
「な、何か変?」
私は何かおかしいのか不安になって彼に声をかける。
「いや?きれいなもんだと思って、じっと見てた」
「ばっ!…どうせ、これから好きな時に見れるんだから、じっと見なくていいじゃない」
「ああ、そうか…そうだな」
そう言って彼が私の腰を掴むびくり、と尻尾が震えた。
温かい感触が押しあてられる。
「え?これってあ、嫌だ、ちょっとまっ!…あっ、あ、あああっ!」
「わ、悪い」
「いきなりこんな…ふぅぅ」
入口が広がっているのが分かる、肺の中の空気を押しだされるような圧迫感に体が震える。
「痛いか?」
彼がやさしく背中をなでてくれる。
初めて、男の人を受け入れるそこは限界まで広がって少し息苦しい。
「いいから…まだ、一番奥まで入ってないでしょ?」
よく見ると、彼のそれはまだ先の部分が私の中に入っただけでほとんどまだ、中におさまっていない。
「…痛いんだろ?」
「でも、私が死んだ方がマシって言った時貴方はもっと痛かったんでしょう?」
私の言葉に、彼が笑う。
「仕方ないな…我慢しきれなかったらすぐ言え」
首を縦に振ってこたえる、それに合わせて彼の手が力強く私の腰を掴んだ。
勢いよく、彼の腰が私の腰にたたきつけられる。
私の中で何かがちぎれる音が響いて、体を2つに割かれるような痛みが背中をかける。
痛い、痛い、今まで感じた事のない激しい痛みに涙が止まらない、それでもしばらく我慢して待っていると、おなかの内側が何かにたたかれる感触がやってきた。
「全部…入ったぞ…」
彼の言葉に私は繋がっている部分を見る、私と彼の腰はぴったりくっついて、その間から私の腿を伝って赤い液体が彼のベッドに赤い染みを作る。
痛いことは確かに痛い、ズキズキするし、おなかの中の異物感で呼吸が苦しくなる、でもそれよりも、それよりも…
「私、貴方を受け入れられたの?」
「ああ」
うれしい気持ちで心が満たされる、ずっと追いかけ続けた彼がすぐそこにいる。
彼が頭をなでてくれるのがくすぐったくて…気持ち良い。
「…動いていいよ…男の人は動いた方が気持ちいいんだよね?」
「痛いだろ?」
確認のため、軽く腰を動かす、ゆっくりならあまり痛みは感じなかった。
「ゆっくりなら大丈夫…」
「分かった」
のろのろと、緩やかなスピードで彼のものが入口まで引き抜かれ、また奥深くに沈んで私の中をノックする。
「ふあっ…」
おそらく、子宮、そこが彼のものでノックされた時、ゾクゾクとした快感で腰が震えた。
「奥が良いのか?」
初めてで痛いはずなのにそこを叩かれると腰がとけてしまいそうなほど気持ち良い。
あまりの気持ちよさに何度も首を首を振って彼に応える。
少しずつ彼の速度が上がってくる、そうすると、奥がたたかれる感覚も短くなって次第に痛みがマヒしてくる。
彼の速度が増す、もっと早くしてほしい、もっと早くたたいてほしい。
「どう…した」
既に腰はたたきつけるようなスピードで何度も何度も奥がたたかれるのが分かる。
「はっ!あっ!きっ!気持ち!気持ちいいのが!」
体から力が抜けて、手が体重を支えられない、初めてなのに、感じてしまう。
「とまらないの…初めてなのに、初めてなのに…こんなに奥が…」
腰の動きに合わせて胸を揉まれる、敏感な部分がいじられる。
先ほどとは比較にならないほどの感覚が迫ってきているのが分かる。
突然、ぎゅっと、力強く尻尾がつかまれる。
握られた尻尾の痛みと抜き差しを繰り返す彼自身が与えてくれる感覚が混ざって、痛みを快感に感じてしまう。
「いたいの!いたいのが気持ちよくなっちゃうの!」
ぎりぎりと彼が胸の先端をちぎるかのようにねじる、痛いのに、痛いことが気持ちいい、頭の中がパンクしてしまいそうで変な性癖が目覚めてしまいそうになる。
パンパンと腰を叩きつける音がリズミカルに部屋に響く。
「お…い、フェルパー」
腰を叩きつけながら彼が私の足を掴んで私の体を回転させる。
それまでとは違う場所がこすられて、びりびりする。
「にゃ…にゃに?」
もう呂律が回らない、彼が私の方に手をまわして抱き上げる、繋がってる部分に体重がかかって、奥が余計に強くたたかれる。
「はぁ!もう、りゃ、りゃめ…イク…イっちゃ…」
「俺も…だ」
そういいながら彼が唇を重ねる、私はその唇をむさぼるようにキスを重ねる。
不意に、また尻尾が握られる、その瞬間に、私の奥に深い一撃がたたき込まれた。
「あっ!あ、ふぁああああああああ!!」
びりびりとした刺激に私は全身で打ち震える。
「くっ!くぉぉぉ!?」
達した私の締め付けに彼が限界にたっしてその欲望が私の中に注ぎ込まれる。
溶岩のような熱さががおなかに吐きだされ、満ちていくと、疲れ切った表情で彼が倒れこむ。
「悪い、膣内に出しちまった」
「いいよ、今発情期じゃないし」
発情期だったら間違いなく出来ちゃっただろうけど…。
あふれ出てきた精液を彼がティッシュで拭ってくれる。
「ねぇ、ディアボロス…今日、ここでそのまま寝てもいい?」
「…好きにしろ」
いつものような癇に障る笑顔であいつが笑う。
「愛してるフェルパー」
「私も、貴方を愛してる」
そうして、彼の腕に抱かれたまま、私は幸せな気持ちで眠りに落ちたのだった。
あいつと私は初めのころあまり仲が良くなかった。
あいつはいつも煙草を吸っていて、まじめな姿を見たことがなくて、「くだらねぇ」が口癖で。
侍のくせに武士道なんざどうでもいい、といつも口にしていた。
一言で言うなら、ロクデナシ、そんな言葉がよく似合う。
あいつと俺は初めのころあまり仲が良くなかった。
あいつは、死んだあいつによく似てて、ふざけた姿を見せたことがなくて、
「侍たるもの」そう言って、いつも俺に突っかかってきた。
一言で言うなら、クソマジメ、そんな言葉がよく似合う。
そんなあいつが気になって、そんなあいつを目で追って。
あいつの背中を追いかけて、あいつの隣に並びたくて、並べるわけがないだろう、
勝手に思い込んでいた、だから今あいつに聞きたい。
なぁ…俺は、お前と一緒にいても良いか?
ねぇ…私は、貴方と一緒にいても良いの?
嗅ぎなれた煙草の匂いと、鳥の声に目を覚ます、布団で胸元を隠して起き上がると、少し痛みがやってくる。
「…起きたのか」
「うん、ちょうど今ね」
いつもの稽古の時間はだいぶ前に過ぎている。
「初めて稽古さぼっちゃった…」
「そういやそうだな、まぁでもどちらにしろこれじゃ無理だな」
彼の言葉によく見ると、そこには折れた私の刀が広げられてる。
そういえば、私の刀は折れてしまったんだ
毛布を体に巻きつけて、彼の隣にすわって、柄から抜かれた刃に目を落とす。
だいぶ痛んでいたんだなと、心のなかで小さく呟く。
「あとで、他の素材と合わせて、ノームに新しい刀作ってもらえ、材料は俺の持ってるやつをやる」
そう言って、袋におさめられた何かを彼が私に差し出した。
「あ、これ…」
折れてなくなったはずの私の刀の刃が布に巻かれて他の素材と一緒に入っている。
「…見つけといてくれたんだ」
「さっき、たまたま見つけてな」
そう言う彼の体は汚れをあわてて落としたのだろう、まだ少し濡れていた。
「ありがと、ディアボロス」
今度は素直にそう言って、頬にキスをする。
「ふん、くだらねぇ…」
赤い顔をそむけるように、彼がそうつぶやく。
「一本頂戴」
そう言って、煙草をケースから一本ぬきだすと、お前が吸うのか?と言わんばかりの顔で見られた。
「貴方の隣に立てた記念」
わらって言うと、いつもの癇に障る笑顔であいつが笑って火をつける。
―へんな味…―
彼は何でこんなのが好きなんだろう?
もっと、彼を知りたいと思う…、だから…。
「ねぇディアボロス」
「なんだ?」
煙草の煙を吐き出して、彼が私を振り返る。
「私とつきあってくれませんか?」
彼の真似して煙を吐き出す…少し、むせた。
「ははっ!」
彼が楽しそうに笑う。
「煙草にむせながら言うセリフじゃねぇよ…馬鹿…しかたねぇから付き合ってやる」
「あはは、ごめんね」
笑う私のことを彼が真剣な目で見つめて。
「フェルパー…」
「はい」
私の名前を呼ぶ、なんて言いたいのかなんとなく察して、笑みがこぼれる。
「俺の女になってくれ」
「ふふっ」
彼の言葉に思わず笑う。
「なんだよ?」
「いや、結局、私達って意地っ張りなんだなって思って」
気付いたように彼も笑う。
「違いねぇ」
「それと、答えだけど…こんな私でよければどうぞ」
タカチホ義塾の食堂
その日、食堂は静かだった、いつも喧嘩している二人が向かい合って食事をしているのに。
皆が不思議に思いながら遠巻きに眺めていると、彼らのチームのリーダーが二人の元へ寄っていく。
「ほんと君たちは仲いいね」
いつもと変わらぬ問いかけに、皆がいつもとおなじ光景を相応し、食堂が静まり返る。
だが、
「うん、私は彼のこと好きだからね」
「まぁ、俺はこいつのこと好きだからな」
あの二人の豹変に、食堂に動揺が走る。
何があったと憶測が飛び、ヒューマンが洗脳したんだと誰かが叫ぶ。
すると…
「おい、黙れテメェら、食事ぐらい静かに食えや、そんなに鉛玉を腹いっぱい食いたいか?」
唯一いつもと変わらないヒューマンの言葉に再び食堂は静まり返る。
死にたくない、そんな皆の思いとは裏腹に二人は楽しそうに食事を続ける。
タカチホ義塾は今日も平和だった。
あいつと私は昔、仲が良くなかった。
あいつはいつも煙草を吸っていて、まじめな姿を見たことがなくて、「くだらねぇ」が口癖で。
侍のくせに武士道なんざどうでもいい、といつも口にしていた。
一言で言うなら、ロクデナシ、そんな言葉がよく似合う。
おなじ侍なのにこの違いはなんだろう?種族の違い?性別の違い?
私はフェルパー、あいつはディアボロス、私は女で、あいつは男。
でも、今となっては関係ない、あいつは彼氏で、私は彼女
喧嘩もするし、キスもする、なんてことないただのカップル。
事実はそれだけ、それだけだ。