彼の腰の動きに合わせて腰を下ろす。  
彼が求めやすいよう体の向きを変える。  
首のチョーカーについた鈴がそのたびにチリン…と小さな音を立てる。  
「良い顔だ…クラッズ」  
「それはどうも、でもいい加減あきたんじゃない?」  
のばされた手が私の頭を撫で、恥ずかしさをごまかすために私はそういって笑う。  
「ははっ…、飽きるわけないだろ?ここまでお前を染めてきたんだからな、どこまでも俺に染めてやる」  
彼がいつものように笑って私の弱いところを攻めてくる。  
「くはっ!」  
ざらざらとしたやすりのような舌が小ぶりな私の胸のふくらみをそぎ落とすようになめあげる。  
ビリビリした刺激が皮膚の下を通って背中に抜けた。  
 
「…卑怯者……人が胸弱いの知ってて、舌の質感変更したでしょ…」  
涙目の私を見ながら彼はニヤニヤと笑って動いていた私の腰をしっかりつかんで動きを止めた。  
焦らすように私の浅い部分で円を描く。  
「種族的にはフェルパー系だな、これが俺の特技みたいなもんだからな、それくらい我慢しろよ」  
「十分我慢してるでしょ…」  
楽しむかのようにセレスティアが笑う。  
「今日は危険日なんだろ?この状態でもう少し焦らしてみたくてね、とりあえずいつもの行くか、手を放すから頑張って耐えろよ」  
「また…?するたびに私が不利になってるのに…」  
そう言いながらも期待するように彼を浅いところに受け入れたまま私は膝立ちで立つ。  
 
「本気で妊娠したら責任とってよ」  
「むしろ本当に俺なんかが子供作れるのかね?」  
言いながら、自分の羽を一本抜いて、羽先で繋がった部分の少し上の突起をくすぐる。  
細かい羽根の感触がピリピリとした刺激になって私を襲う。  
「くふぅ…ふはぁぁ…」  
「さて、今日はどれくらい耐える?」  
じわりと繋がった部分から彼を伝わって私の蜜がこぼれおちる。  
「き、記録更新を…頑張って…目指す」  
「最近はだんだん最短記録の更新を目指してるけどな」  
「開発進んじゃったからね、実は浅くても入れてるだけでかなりつらかったり…」  
「んじゃこうしたらどうなる?」  
敏感な突起を、セレスティアは楽しそうに抜きとった羽根でくすぐる。  
 
「ふひぃ!くはっ!」  
必死で耐えようとしているのに、慣れ切った刺激に条件反射のように体が勝手に快感で震える。  
「き、気持良くなるかな?」  
私がそう言うとセレスティアが楽しそうに笑った。  
「よし、クラッズ、ちょっと苦しいかもしれないが頑張って耐えろよ?」  
言葉と共に、羽根の先が包皮に包まれた私の大事な部分の内部を掻きだすように入ってくる。  
「くひゃぁぁ!?」  
あわてて私は彼の胸に手をついて耐える。  
普段刺激されたことのないところまでが細かい毛先でくすぐられる。  
気持ち良すぎて体が言うことを聞かない、ただ必死で腰を落としてしまわないように歯をかみしめて耐える。  
 
「バカバカバカ!何してるの何してるの!あやうくイキかけたよ!!」  
なんとか大きい波をこらえた私は顔を真っ赤にしてセレスティアの胸を力なくたたく。  
「そんなに気持ちよかったか?」  
ニヤニヤとセレスティアが笑いながら私の首の鈴を鳴らす。  
「あんなのされたら気持ちいいにきまってるでしょ!…うひゃ!動かすなぁ!!」  
普段、どれだけしていても刺激されない部分が彼の羽根で弄ばれる。  
くすぐるような刺激にパチパチと瞼の裏で火花がはじけた。  
「げ…限界…ギブアップ…だから膣内は1回で…」  
 
脚と腕の震えが止まらない、このまま刺激されれば、耐えられなくなって、私の一番深いところで一気に彼を感じる事になる。  
危険日だろうが彼は私の中に全てを吐き出しきるまで、やめないだろう。  
だから、せめてもの譲歩を試みる。  
「ギブアップねぇ…」  
言葉と共に、セレスティアが羽根をそのまま軽く回した。  
「セレスティアまさか…!」  
「まぁそのまさかだな、ギブアップはなし、折角だし最短記録更新させる」  
羽根をひねるのと共に胸に吸いついた。  
 
「ひゅいっ!?」  
ひねられた羽根は包皮の中の敏感な部分を絶え間なく刺激し、舌先が胸の中に潜ろうとするかのように中心を舌先で嬲る。  
「うわっ!駄目、無理無理無理!同時は無理!うぁ!」  
頭の中が真っ白になった、噴き出した汗で手が滑り必死で取っていたバランスが崩れる。  
ズンと、浅くつながった場所に私の体重の全てがかかって深く彼を飲み込んだ。  
「くはぁぁぁ!」  
脳天を貫くような快感でもともと決壊寸前の感覚がはじけた。  
パクパクと空気を求めるように口を開きながら背中をそらせ、中の彼を強く締め上げる。  
 
「ほら、また俺の勝ち」  
ぐったりと倒れこむと、そんな私を見ながら彼が笑った。  
「卑怯者〜…そんなに膣内に出したいかな…」  
絶頂を迎えてけだるい体を持ち上げる。  
「どうせ俺としたって出来ないんだから良いだろ?」  
「それ、いままで大丈夫なだけだったじゃない、こんなかわいい子を孕ませようなんてひとでなしすぎるでしょ」  
ぽこぽこと、力を込めずにセレスティアの頭をたたく。  
「そら、人じゃないしな」  
 
そんな私を楽しそうに見つめながらセレスティアは腰を振り始める。  
敏感な膣壁が傘で削られ、瞼の裏ではじける火花が消えない。  
「それでも…6割は…セレスティア…ベースでしょ…」  
彼の軽口に応えながら私も合わせて腰を振る、まだイッたばかりだから刺激が強いけど、動けないほどじゃない、むしろこの強すぎる快感を最後まで味わって狂ってしまいたい。  
「残りの4割は何使ったかすらわかんねぇよ、作ったやつ死んでやがるし、ま、便宜上セレスティアってことにしてるけどな」  
いつものように彼が笑う。  
 
「はいはい…もう好きなだけ出して良いから、私のことを味わってよ、ただし、妊娠したら責任は取ってもらうから」  
チリンと鈴を鳴らして私は彼にキスをする。  
「分かってる、だからお言葉に甘えて好きにさせてもらうわ」  
言葉と共に彼の動きが早くなる。  
彼と私の腰がぶつかり合う音が鈴の音と共に一定のリズムを刻んで部屋に響く。  
 
「くぅぅ…ごめんセレスティア、多分先にもっかいイっちゃう」  
予想外に早く膨らみあがった感覚に私は彼に全てをゆだねて、もたれかかった。  
「耐えるのに精いっぱいでもう動けないから後はお願い」  
「はいはい…んじゃ、一気に行くぞ」  
言葉と共に私の腰がつかまれて、更に彼の腰の動きが早くなる。  
「ふひぃぃぃ!」  
私を突き破るかのように激しく彼が抜き差しを繰り返す。  
何も考えられず与えられる快感の全てを受け入れる事だけに集中し彼を締め付けていく。  
 
「よ…し…行くぞクラッズ」  
「うん…うん…」  
私が何度目かの絶頂を迎えるのと共に、彼が震えて白く濁った欲望を、私の奥深くに解き放った。  
 
それから5回行為を重ね、ようやくセレスティアが私を解放した。  
「あー…もう4時じゃん、また寝坊するよ」  
「気にすんな、どうせお嬢とフェルパー達も寝坊するだろ、エルフとディアボロスは何をするかで分からんが」  
私の恨みがましい声を聞きながしながらそういって彼が私の中から溢れだしてきた精液を拭う。  
 
私の恨みがましい声を聞きながしながらそういって彼が私の中から溢れだしてきた精液を拭う。  
「毎回毎回、危険日に限って溢れるぐらい膣内射精される私の身にもなってよ、リリィ先生、最近避妊薬くれないんだから、ホントいつか妊娠するでしょ〜」  
学生なんだから少しくらい自重してください、と言って薬をくれなくなった先生の顔を思い出しながら彼の背中をたたく。  
「いや、このスリルが良いんじゃないか、できるかできないか分からないってのがまたな」  
楽しそうに彼が笑って頭を撫でた。  
―ホント…ズルイやつ…―  
「…ホントは、私を妊娠させたいんでしょ?“オーウェン”」  
ちょっとしたイジワルで昔の名前で呼ぶと、彼の体がピクリと震えた。  
「…その名前で呼ぶなって、今はセレスティアって名前、折角借りてるんだから」  
そう言って彼が苦笑する。  
「私の初めて散らした時はオーウェンだったじゃん」  
 
プリシアナに入る前のことを思い出してそう言うと、彼がため息をついた。  
「…2年前のことまだいうのかよ」  
「いや、初めてにあんなに激しく腰振られるなんて思わなかったからね」  
ニヤニヤと昔を思い出して笑う。  
「我慢してたぶん、がっついちまったんだよ」  
「だね〜」  
彼も昔を思い出したのか声を小さく上げて笑った。  
「喉、渇いてるでしょ?」  
「ああ、カラカラだな」  
「久しぶりだし飲んで良いよ」  
私の言葉に彼が笑って私の首に犬歯を突き立てる。  
鋭い痛み走って体が震えた。  
「っ〜!」  
唇を噛んで痛みをこらえる。  
 
そんな私を見ながら彼は私の肩に突き立てた犬歯を引き抜き、溢れだした血をなめるように吸った。  
「うぁ…また、イキそうかも…」  
幾度となく繰り返したのに、牙を突き立てられる痛みとこの地を吸われるときの快感には全くなれない。  
「これだけ、俺に汚されてるのに…お前の血はうまいままだな…」  
彼がそう言って笑う。  
「ほめことばとして受け取っとく」  
そう答えながら、私は頭が真っ白になるようなその感触に酔いしれた。  
 
 
彼と初めて出会ったのは最悪なことがあった後。  
野垂れ死にそうな、小娘が、金を持ってる男に拾われた、そんな感じの出会いだけど。  
私は彼と出会えてよかったとそう思っている。  
 
もともと私の家はそこまで裕福じゃなかったけど、それなりの生活はできていた。  
クラッズの母とセレスティアの父、年下のくせに私よりも背の高いセレスティアの妹。  
私は踊りと歌が好きで、練習をしては家族に見せて喜んでもらうのが好きだった。  
うん…大好きだった。  
だから…  
それが魔獣、モンスターなど呼ばれるそれに襲われて無くなった時、私の全ては一度壊れてしまった。  
目の前で昨日まで笑いあっていた家族が死んでいく。  
私達を逃がすため、父が剣を取ってモンスターに向かっていった。  
その体が引き裂かれ、大好きだったはずの父が物言わぬ肉塊へと変わる。  
動けなくなった私と妹を逃げるように叱って、母はモンスターの群れの中に消えていった。  
 
泣きながら私達は近くの村へ走った。  
走って走って…走り続けて、何も考えず走り続けた。  
走り続けてようやく村にたどり着いて…助かったと思って妹を振りかえると、彼女はどこにもいなかった、私が握っていたのは彼女のものであった右手だけ…  
「え…うそ…嘘だよね…」  
プラン…と力なく垂れ下がった腕が地面に落ちる。  
「私…私…あの子を…」  
助け…られなかった、たった一人私だけが生き残った。  
 
歌を歌うといなくなった家族を思い出す。  
踊るたびにとまだ生きていたころの家族を思い出す。  
「何で…皆死んじゃったのよ…」  
泣いて…泣いて…泣いて…涙が枯れて泣けなくなった。  
でも、たった一人の子供が何ができるだろう。  
お金はない、頼る人もいない…。  
 
食べ物もなければ家もない、泥棒みたいなことを続けて生き延び…ヘマをしてつかまって殴られて…お金があれば家族がいれば…そんなふうに荒んでしまっていた。  
そんなときだった。  
私が彼、セレスティア…ううん、オーウェンとあったのは…。  
 
 
「くそっ!どこ行きやがったあの餓鬼!!」  
柄の悪い男たちがそう言って隠れた私に気づかず路地を通り過ぎていく。  
「あー、ヤバかった…まさか冒険者とはね…」  
ただの観光客かと思ったら、運の悪いことにその男たちは冒険者だった。  
スリがバレた上に追いかけられ、何とか逃げ伸びる事が出来たけど、捕まったら私がどうなったか想像すると肝が冷える。  
年頃の女が4人の男に群がられる姿が容易に浮かんだ。  
 
「うへぇ…最悪なこと考えちゃった」  
走ったせいでお腹がすいた。  
もう2日もまともなものを食べてない。  
「…お金さえあれば…多少マシなんだろうけどね…」  
ぽつりと私は呟いた。  
路地に自分の空しい呟きが木霊する。  
「あいつらまだ居るかな…まったく、あんだけ持ってんなら少しぐらい盗んだって罰当たらないでしょうに…」  
「全くだな…少なくとも大の男がよってたかって女の子供を追い回すなんてあんまほめられたもんじゃねぇよな」  
「どうせ捕まえて手篭めにでもしてやろうとか考えてたんでしょ?女っ気全くなかったもん」  
かけられた言葉に応えてあわてて私は振りかえった。  
「誰!?」  
錆びたナイフを向けると、そいつが笑う。  
「おいおい、あぶねぇよ…別に危害加えるつもりはないし…あいつらにお前を突きだしたりする気もない」  
 
物陰から気配も感じさせず現れたのは黒い翼をもったセレスティアの少年…私と同じ年頃くらいかと想像する。  
「…私は誰?って聞いたんだけど?」  
彼の言うとおり敵意は感じられなかったが、私は警戒を解かず、ナイフを向け続ける。  
やれやれ、といった感じでそいつは笑った。  
「…オーウェン…そう呼ばれてた、お前は?」  
「クラッズ…で、オーウェンって言ったっけ?あんた何者?」  
「…さぁな、ところでクラッズ、お前金が欲しいのか?」  
私の言葉に彼が笑った。  
「…お金は欲しいね…何?あんたが恵んでくれるの?」  
「…条件次第ではな」  
私の言葉に、オーウェンが笑う。  
「…へぇ?私に何させようっていうの?何?ヤらせろとか?」  
だとしたらこいつが油断してるときに殺して有り金を全部奪ってしまえば多少は食いつなげるかもしれない、そんなことを心の中で思う。  
 
そんな私を知ってか知らずかオーウェンは呟いた。  
「クラッズ…文字は読めるか?」  
何を言ってるんだろうこいつ?  
「一応ね、いくらなんでも古代の言語とかは無理だけど、自分で言うのもなんだけど頭は良い方だしね」  
「そうか、よかったら教えてくれ、喋るのはみてるうちに何とかなったが、文字だけはどうにもならん」  
何か奇妙なことをオーウェンは言う。  
ただ文字をおしえるだけで金をくれるというのだろうか。  
「何たくらんでるの、あんた?」  
「たくらむ?…あ〜少し待ってくれ、なんとか思い出す…」  
私の言葉に唸りながらオーウェンは悩みだした。  
「ん、なんとか記憶に入ってた、べつに何もたくらんでねぇよ、俺もわけありでな、文字とかを覚えないといけないんだが…わけあってあんまり人とはかかわりたくなくてな、ボロが出る」  
 
「あんたまさか魔物なの?」  
私の言葉に彼が笑った。  
「魔物ね…似たようなもんかもしれないな…」  
そう言って彼が手を差し出す。  
何事かと思うと、オーウェンが静かにしろとばかりに自分の指を口にあてる。  
「ちょっと見てろ…」  
言われるままに彼の手を見ると、ありえないことが起こった。  
メキメキと音をならして、爪が硬質なものへ変化していく。  
まるでビーストのような敵を引き裂くための爪。  
「オーウェン…あんた…セレスティアじゃないの?」  
彼の背中の翼を見ながら私は呟く。  
 
彼の背中の翼を見ながら私は呟く。  
「知らない…だからそれを知るために、文字を覚えておきたい、ヒントになりそうなものはあるが、文字が読めないから意味がない」  
「なるほど、UNKOWN(アンノウン)だから、オーウェンね」  
「…よくわからんが、あんまり良い意味じゃないみたいだな」  
私の言葉に彼が呟く、なんとなくそんな彼に私は興味を持った。  
「金はあるの?」  
「金…これのことだよな?」  
そう言って彼が袋を取り出す。  
そこには溢れんばかりの金貨が詰まっていた10万いや50万はあるかもしれない。  
「…あんた何者?オーウェン」  
「だからそれが知りたいんだよ…クラッズ、どうだ?」  
彼の言葉に私はうなづく…なぜ彼がこんな大金を持っているのか彼が何者なのか興味を持った。  
 
「いいわよ、文字を教えてあげる、その代わりお金や食料を私に頂戴」  
ナイフを納めて手を差し出す。  
一瞬それをみて悩んだ後彼は私の手を取った。  
 
 
「ここが俺の家…だとおもう」  
山奥の小さな小屋を指差してオーウェンがそう呟いた。  
「…いや、それぐらいははっきりしなさいよ」  
「知るか、そもそも家って言う言葉がどんな意味だかまではしらん」  
呆れながら私が呟くと、彼はそう言って首をかしげた。  
「へんなやつ」  
「よくいわれる、あまり良い意味じゃないみたいだな」  
私の言葉に彼が応える。  
「とりあえず家ってのは自分が眠ったり、食料を食べたり、誰かと一緒に過ごすための場所よ」  
「なるほど…ならここは今日から俺とクラッズの家だな」  
私の言葉に彼がそう答える。  
 
「…え?私も住むの?」  
「…住む…過ごすと同じ意味だよな?そうか…クラッズにはクラッズの家があるから俺とは住まないか?」  
「…まぁいいや、別にそれで良いよ、今日からここは私とオーウェンの家」  
住む場所まで手に入ったのは行幸かもしれない。  
そんなことを私は思う、オーウェンの知識は何かおかしくて人として、何かが欠けている気がした。  
一瞬、まだ子供とは言え男と女が一つの家に住む、ということに危機感を覚えたがどうもオーウェンからはそれらの知識が無いように思えた。  
「それより、いつまでたってればいいの?早く私達の家の中に入りましょうよ」  
「ああ、そうだな」  
私の言葉にオーウェンがそう言って歩き出して家の扉をあける。  
中からはどこか埃っぽい匂いが漂ってくる。  
そして、それに混じった薬品のにおい。  
 
「ここが俺とクラッズの家だ」  
そう言ってオーウェンが家の中を案内する。  
広間、寝るところ(ちゃんとベッドが二つあった)、食事を作るためのキッチン、トイレまであって意外とちゃんとしていた、そして何より…。  
「これ…錬金術師が錬金術に使う道具じゃない?あとこの本も…やっぱり錬金術関連」  
大量に積まれた本と魔道書、なぜこんなものが彼の家にあるのだろう。  
パラパラとめくって見ると錬金術に関することがかいてあった。  
これでも、頭は良い方だから、なんとなく理解できる。  
「…錬金術、そう言えば俺をオーウェンといったやつが自分を錬金術師だと言っていたな」  
私の言葉にオーウェンは少しうれしそうに呟く。  
「これだ…クラッズみてくれ…」  
 
そう言って彼が本棚から取り出したのは重ねられた沢山の紙、どうやら前にこの部屋を使っていた人物の手記らしい、細かいことは分からないがこのあたりの本を読めば理解できるかもしれない。  
気になったのは、オーウェンによく似たセレスティアと、全く関係がなさそうな他の種族の名前が書き記されていることだった。  
なにか、彼に関することが書かれているのかもしれない。  
「完全には理解できないけど…、このあたりの本を読めば私なら分かると思う」  
そう言った私に彼がうれしそうな顔をした。  
「本当か!よかった…俺が何なのかわかるかもしれないんだな!」  
「う、うん」  
オーウェンの迫力に思わずあとずさる。  
「ところでオーウェン、この本の持ち主はどうしたの?」  
多分彼の親だと思われる人物、その人がどこにいるか私が聞くとオーウェンは少し困った顔をした。  
 
「だいぶ前に動かなくなった、目も覚まさない、動かなくなったら穴を掘って埋めろと言われたから、すぐ近くに埋めた」  
動かなくなった、それがどういうことか気づいて、私は自分の家族を思い出す。  
「…そっか」  
彼も私と同じなんだ。  
「…とりあえず、これから貴方に文字をおしえるから、ちゃんと覚えてね、それで文字を覚えたら言葉の意味をおしえるから」  
「ああ、たのむ」  
私の言葉にそう言って彼が笑った。  
 
そうして、私と彼、オーウェンとの奇妙な生活が始まった。  
料理の意味すら知らなかった彼に料理がどういうものであるか教え簡単な料理を作る。  
「おお、うまい、って言うのはこういうことだなうまいうまい」  
「…オーウェン、今まで何食べてたの?」  
久しぶりの食事にありつきながら私が聞くと彼はなんでもないことのように応えた。  
 
「食事はとらなくても問題ない、今までは何かを食べたことはなかったが、クラッズが料理がうまいな」  
腹の減らない人間など居るのだろうか?そんなことを思いながら食事を終え、薪を使って風呂を沸かし、久々の風呂に入る。  
オーウェンも風呂、ということは知っていたようで、それは簡単に済ませる事が出来た。  
そうして夜になると彼に文字をおしえる。  
もともとみただけである程度の会話ができるレベルの彼なのだ、私のおしえた内容をどんどん吸収していく。  
 
そうして彼とすごしながら錬金術本を読み彼に関することが書いてある資料を読むための知識を学ぶ、そんな生活を3カ月ほど続け、簡単な本ならオーウェンが読めるぐらいになった辺りで私は書斎の机に隠された手帳のようなものを見つけた。  
「何これ?」  
パラパラとめくって中を見ると、どうやら日記のようだった。  
 
「…この筆跡…」  
あわてて私は紙束の筆跡と見比べる。  
「…同じだ」  
錬金術の知識はほとんどないけど、この日記ぐらいは読める。  
同じ人物が書いた日記なら何か書いてあるかもしれない。  
なぜか緊張しながら私はそれを読みだした。  
 
「…これ、ホントなの……?」  
これが真実だとするなら…オーウェンは人間なんかじゃない。  
おそらく紙束に書かれていたのはある実験の記録、そして日記に書かれていたのはその実験の途中経過なのだろう様々な種族の性質を掛け合わせ、新たなる種族を作り出すための錬金術の研究結果がまとめられていた。  
失敗、失敗、また失敗、ただその言葉が続いていく、幾度となく、失敗を繰り返し、ある日を境に、その言葉が変わった。  
成功するかもしれない、それとともにつづられた内容に私は驚きを隠せなかった。  
 
 
○月×日  
 
 兼ねてより考案してきた新たな種族を人工的に作り出す研究に取り掛かることにした。  
基本のベースには魔法生物に近いセレスティアを使用し、フェルパーの先祖帰りによって誕生するビースト種の生命力、攻撃性、エルフやディアボロスのような特定のものに行使する魔術への適性を持ち、バハムーンのようにブレスを放つ器官をもったそれ。  
サンプルは6体作成したが4体は失敗…2体が順調に成長を続けている。  
 
○月○日  
 
2体の素体のうち1体が本日ついに成長を止めた、セレスティアの因子だけでは全ての性質を併せ持つことはできないようだ。  
おそらく、他の種族の性質を自らで処理することができなかったためだろう。  
おなじことが起きないように残りの一体に特殊な処置を施し、肉体を自分の意志で変質可能とする能力を付与する。願わくば成功をのぞみたい  
 
○月△日  
 
ついに長年の夢がかなうかもしれない。  
素体は順調に成長を続けている。  
セレスティアの因子は全体の60%ほど、見た目はほとんど通常のセレスティアと変わらない。  
問題になるとしたら性質的に、吸血行為を行う恐れがあることだ。  
やはり触媒に使用したもののせいで、人より魔に近くなってしまうのかもしれない…。  
 
×月×日  
 処置に使用した触媒の影響か、素体の羽根が次第に黒く変色し始めた。  
だが大した影響でもないだろう、私の夢は着実に完成へと近づいている。  
そろそろ彼にも名前を与える事にする。  
人のようにありながらそのどれでもない、新たな種族、未知数なこの存在、UNKNOWN(アンノウン)そう、彼に与える名は…  
 
 
「クラッズ…風呂が沸いたぞ」  
「あ、うん」  
彼が書斎に入ってきたのを見て、私はそこであわてて日記を隠した。  
「なにか分かりそうか?」  
「いや全然、錬金術師って何言ってんだろって事ばかり書いてるから理解しづらい、それより、オーウェンの方は課題の本少しは読めたの?」  
とっさに私は嘘をつく。  
ごまかすために続けた言葉に、彼はああ、とうなづいた。  
「辞書というのは面白い、言葉の意味も理解できてなかなか勉強になる、まだ4分の1しか読めてはいないけどな」  
本当にどこか面白そうに彼はその手の百科事典をひらひらと振る。  
「百科事典を面白いって言えるのはオーウェンだけだろうね」  
私が呆れたようにそうつぶやくと、彼は首をかしげる。  
「ん?何でだ?」  
 
「百科事典っていうのは、ただ言葉の意味を並べただけだからね、歌とか踊りみたいに、何か想いがこもってるわけじゃないからね」  
「…そうか、ならきっと歌や踊りを理解できるようになってみたいな」  
彼が少しさびしそうに笑った。  
不意に、私はいなくなってしまった妹の姿を彼に重ねる。  
「いつか歌とか踊りを見せてあげるよ、」  
「クラッズは歌と踊りを知ってるのか?」  
「まぁね…」  
「そうか、なら俺がもっと言葉を覚えたら、いつか聞かせてほしい」  
私の言葉に彼がうれしそうに笑う。  
不覚にも、胸がときめいた。  
「…いつかね」  
「ああ」  
「それじゃ私はお風呂入ってくる」  
ひらひらと手を振ると彼は椅子に座って百科事典を読み始めた。  
 
手を動かすとチャプリと湯に波紋が立った。  
「何であんな約束したんだろ…」  
湯に体を浸けながら私はポツリと呟いた。  
家族を失ってからもうかなりたってしまった。  
歌と踊りがうまいとは言ったが自分がまだ、好きでいるのかはもう分からない。  
でも、彼がそれを聞いてみたいというから、あんな約束をしてしまった。  
「私は…なんでオーウェンが気になるんだろう…」  
不意に、手記の記録を思い出す。  
「UNKNOWNだから…オーウェン…」  
3カ月、知識はそこまでなかったがあれだけの資料を呼んだ、日記の人物が何を作っていたのかは大体分かってきていた。  
「…ホムンクルス」  
錬金術を使って作る、人の形をした合成獣、そして…  
「それが…オーウェン…」  
 
あの日記に書かれた、もう6体の素体の生き残った1つ…彼のことを指しているのだろう、セレスティアでありながらビーストのような爪に帰る事の出来る彼、そしてところどころにあったセレスティアをベースにしたという言葉。  
何より…人間のように見えても何か大事なものが欠けている彼。  
「まだ、分からない、オーウェンが人間じゃないって決まったわけじゃない」  
だから…それを見極める為に…私はいるんだ。  
見極めて…何がしたいんだろう?。  
「…馬鹿みたい、お金にもならないのに」  
彼のことばかり考えている、まるで、恋にでもおちたかのようだった。  
 
 
ある日の夜、オーウェンは突然ベッドから起き上がった。  
「どうしたの?」  
眠い目をこすりながら私は彼を見る。  
「なんか…喉が渇く……」  
「また?」  
最近になって、彼は異様な喉の渇きに苦しんでいた。  
何かを、求めるように。  
「何だろうな…」  
ふらふらとおぼつかない足取りで彼はキッチンへ向かっていった。  
目が覚めてしまい、私は先日、書斎で見つけたそれを持ってキッチンに向かう。  
「…クラッズ、起こして悪い…」  
具合が悪そうに、彼が水を飲んでいる。  
「そんなに喉が渇くの?」  
「何か…どれだけ水飲んでも喉が渇く…」  
病気か何かだろうか?一度医者に連れて行ってみた方が良いかもしれない。  
そんなことを思いながら、私はつい最近書斎で見つけたものをグラスに注いだ。  
琥珀色をした液体をコップの四分の一ほど入れて私はそれをテーブルに置いた。  
 
「クラッズ…それはなんだ?」  
もう何杯めかの水を飲みながらオーウェンが聞いてきた。  
「お酒だよ、この間書斎で見つけたの、試しにオーウェンも飲んでみる?」  
コップを揺らして、私はちびちびとその酒を飲んでいく。  
家族がまだ生きていたころ、こうして夜中に起きて妹と隠れて父親の酒を飲んでみたことを思い出す。  
妹に進めてみた時のことを思い出しながらオーウェンにそう言った。  
「うまいのか?」  
「さぁね、でも私は別に嫌いじゃないかな…」  
私の言葉にオーウェンは水を飲むのにつかっていたコップを差し出す。  
それにほんの少しだけ、その酒を注ぐと恐る恐る彼がそれに口をつけた。  
「…不思議な味だな…なんか体が熱い気がする」  
「それがお酒だからね」  
そう言って私が笑うと、彼がコップの中の液体を一気に飲み干した。  
「うん…悪くない」  
 
口の中でそれの味を確かめるように彼が飲み下し、うなづきながらそう呟く。  
「もう少し飲む?」  
「ああ、頼む」  
再びそそいで、今度は互いのグラスを合わせて音をならしてから酒を飲む。  
「…なんかさ、オーウェンみてると…妹思い出すよ…」  
酒に酔ってきたのか、私の口から勝手に言葉が漏れた。  
「妹…いるのか?クラッズ」  
「いた…ってのが正しいかな…もういない…死んじゃった…私のせいで…」  
もう流れないと思っていた涙がこぼれる…。  
「…そうか…」  
死、それの意味をオーウェンは完全に理解してはいない、ただ最近になって、彼が動かなくなってしまった、というその人に花を手向けるようになったのを知っている。  
「…私が…もっとうまく逃げれば…あの子ぐらいは生き残れたかもしれないのに…私が…私が、もっと早く逃げられていれば…お母さんも死ななかったのに…」  
 
きっと、彼にはまだよくわからない…彼にとって、父と母、家族というものが彼にはまだ理解できるはずがない…なのに…  
彼は泣きだした私のことを胸に抱きしめた。  
「…何やってるの…オーウェン…」  
「…俺も…よくわからない…でもこうしてやったほうが良い気がした」  
そう言いながら、彼は私の頭を撫でた。  
 
優しく優しく…まるで優しかった父のように…私が泣きやむまで彼は私の頭を撫で続けた。  
 
「ごめん、オーウェン…家族のこと思い出して泣いちゃった…」  
私が恥ずかしさを抑えて笑うと彼が少し戸惑った顔をした。  
「いや…俺にはまだよくわからないが…悲しいということが少しだけ分かった気がする」  
彼がそう言って私を見る。  
酒に酔ったのか少し彼の顔も赤かった。  
「どうかしたオーウェン?」  
私の言葉に彼が震えた。  
「いや…なんでもない…」  
嘘をついている。  
 
「隠し事してもばればれだよ、どうかしたの?」  
私が言うと彼は少し言いにくそうに、だが…口を開いた…。  
「クラッズから…良い匂いがする…」  
どういうことかは分からなかったが、彼の眼が少しくらいキッチンで赤く光っていた。  
「どういうこと?」  
「…俺もよくわからない」  
戸惑うように彼が応えた。  
「…自分がしたいようにしてみなよ…ヤらせろってわけじゃないんだったら少しぐらい…許す」  
彼に泣きついてしまったのだから、セックス以外なら別にしてあげても良いと思えた。  
「…いいのか?」  
彼が申し訳なさそうに私を見た。  
「少しだけならね」  
そう言って椅子にもたれかかるとふらふらと彼が私に近づいてくる。  
そして、私の体を逃がさないようにするかのように強く抱きしめる。  
彼の舌が私の首筋をなめあげる。  
その感触に体が震えた。  
 
「…何すんのオーウェン」  
苦しそうに荒い呼吸を繰り返しながら彼が口を開く。  
「…クラッズ、すこし痛いかもしれない…」  
「え?」  
どういうこと、そう言おうとした瞬間…彼が私の首に噛みついた。  
「いっ!?」  
突然の鋭い痛みに私は声をあげた。  
彼の犬歯が私の肩に深く突き刺さって、肉を破る。  
「ちょ…!オーウェン…!」  
痛みで顔をしかめながら彼を放そうとした瞬間、彼がそのまま首筋を強く吸った。  
「うあぁっ!?」  
ビクンと体が震える…そして、彼が何をしているのかを察した。  
彼は…私の血を吸っている、まるで吸血鬼がそうするかのように。  
「これだ…これが欲しかった…」  
彼がうれしそうに私の血を吸っている。  
「くはぁぁ…」  
体温が奪われていくような奇妙な感覚、血を吸われているのになぜか頭が快感で震える。  
―ヤバ…私なんか変…―  
 
もやもやとした感覚が下半身に集まっていく、血が吸われているはずなのに、感覚と共にそこに血が集まっていくような奇妙な感覚だった。  
―何これ…―  
感じた事のない感覚で頭が白くなっていく、酒のせいか痛みが治まってくると、奇妙な感覚はどんどん広がっていく。  
―変に…なる!―  
体が全く言うことを聞かず、頭がとろけてしまいそうになる。  
―無…理…これ以上は…―  
「ふぁあああ!!!」  
彼が再び強く吸ったのに合わせて、集まっていた何かがはじけた、心地よい刺激が体をめぐって、四肢がピンと張る、エッチな本に載っていた話を思い出して少し顔が赤くなった。  
―…今のもしかしてイクってやつかな?―  
けだるい感覚に包まれながら私はそんなことを考える…しばらくしてようやくオーウェンが私の肩から口を放した。  
ぺろりと、唇についた私の血を彼がなめる。  
 
「…おいしかった?」  
なんとなく気になって私がそう言うと彼はびくりと震えた。  
「…悪いクラッズ…お前がうまそうに見えて…気付いたら…」  
震える彼の頭をたたく。  
「おいしかったか?私はそう聞いてるんだから答えてよ」  
血を吸われてイってしまったことを隠したくて、私はそう彼に言う。  
私の言葉に戸惑いながらもオーウェンは静かに口を開いた。  
「…美味しかった…今まで食べた何よりも…」  
何かに脅えるように…彼がそう呟いた。  
「…俺は…人間なのか?」  
「さぁね」  
私は彼にそう答えた。  
「…怖くないのか?クラッズ…俺はお前の血を吸って、うまいと言ったんだぞ?」  
戸惑う彼に私はどうでもいいと答えた。  
「どうでもいいよ、マズイって言ったら殴ったけど、うまいって言われたら、まぁ悪い気はしない…何より…なんか…その…気持ちよかったし…」  
 
最後のほうは、恥ずかしくなって尻すぼみになってしまった。  
血を吸われてイクなんて経験をしたのは多分私ぐらいだろう。  
―…下着、変えないとだめだな―  
彼に血を吸われた時、何も考えられなくなるくらい気持ちよかった。  
「喉の渇きはどう?」  
私がそう言うと彼が更に困惑した表情を浮かべた。  
「…おさまってる…酒でもおさまらなかったのに……」  
多分、手記にあった性質なんだろう…、頭の中で何となくわかっていた彼の正体がはっきりとした。  
ホムンクルス…やっぱり彼はあの手記にあったホムンクルスだと確信する。  
―で、それが何―  
どうでもいいと、そう思った。  
「ま、喉の渇きが治まる方法見つかったならよかったじゃん、さすがに毎日だと困るけど…どうしても喉が渇いて仕方なかったら、私に言ってオーウェン」  
そう言った私を彼は信じられないものを見るかのような目で見た。  
 
「怖くないのか?」  
「うるさい、どうでもいいって言ったでしょ?あんまりしつこいともう飲ませないよ?」  
私がそう言うと彼が少し悩んだ。  
「悩むな馬鹿」  
「お前の血はうまいから…たまに頼むかもしれない」  
私の言葉に彼が申し訳なさそうに呟いた。  
「気にしないの、どうせ、女なんて、月一で血大量に流してるんだし」  
「…もったいないな」  
「よだれを拭きなさい、開き直り過ぎだから」  
「…冗談だ…」  
比較的本気にしか見えない顔で彼が笑った。  
彼のそんな姿を見ながら私は思う、思ってしまう。  
―…マズイな、本気でオーウェンのこと気に入ってきてる―  
気になるだけだった私の中の彼への印象が少しずつ変わり始めていた。  
 
 
暗い森の中を片腕を失ったセレスティアの少女が走る。  
彼女が走ると、髪飾りについた鈴が鳴っていた。  
痛い、痛い、痛い…  
無くなった手が激しく痛んだ。  
ただひたすらに、逃げる事だけを考えて彼女は走っていた。  
何かは彼女をおっている。  
―嫌だ、捕まりたくない…!―  
必死で彼女は走り続ける、だがいつまでも続くと思われた逃走劇はあっけなく終わりを迎えた。  
「きゃぁ!」  
盛り上がった木の根に彼女が足を取られ転ぶ。  
「痛い、痛いよ…」  
張りつめていたものが切れぽろぽろと彼女が無くなった腕を抱きしめて泣きだした。  
「助けてよ…いつもみたいに助けてよ…どこ行っちゃったの…お姉ちゃん…」  
少女は少し前まで腕を引かれて逃げていた、必死で走って、走り続けていた。  
横合いから飛び出した怪物に自分の腕が食べられるまでは。  
 
ジャリ…  
そうして彼女を追いかけていたそれが姿を現す。  
少女よりもふたまわりも大きい狼のような獣が彼女の目の前に立った。  
「あ…あ…」  
チリン…チリン…  
ずりずりと、片手で彼女が後ずさると髪飾りの鈴が音を立てる。  
「やめて…もう食べないで…痛いの…痛いんだよ…」  
がくがくと震えながら少女はあとずさる。  
その背中が、何かにぶつかった。  
恐怖に震えながら、少女は振りかえる、人に似た、それでいて明らかに人とは違う無数の手をはやした悪魔が立っていた。  
「い…いや…」  
少女がにげるだが、その脚に、植物のツタを思わせる触手が絡みついた。  
「いやーーー!!!」  
そのおぞましい感触に彼女が叫び声をあげると、その体を押さえつけるように全身にツタが絡みつく、年の割には豊満な胸が締め付けられて強調される。  
 
少女は必至で暴れ続けた、だが、そんな少女の抵抗をあざ笑うかのように、ツタが彼女の服を引き裂く。  
「嫌だ…嫌だよ…助けて…助けてお姉ちゃん…」  
少女がぽろぽろと涙を流す、そんな少女を無数の手をはやした悪魔が掴んだ、びくりと彼女が震える、持ち上げられた彼女は、悪魔の股間にそびえたつ醜悪なものを見てしまった。  
「やめて…いや…」  
ゆっくりと体がおろされていく、悪魔の手が彼女の服を引き裂いていく。  
「嫌だ…嫌だよ…助けてよ…お姉ちゃん…」  
少女は現実から目をそむけるように瞼を強く閉ざす、そんな彼女をあざ笑うかのように悪魔が笑い最後の布を引き裂いた。  
「いやーーー!!!」  
ひんやりとした夜風が直接触れる、これから自分の少女の体は震えていた。  
 
そして、悪魔が彼女の腰をつかみ、湿ってもいない彼女の秘所にその醜悪なものを突き立てた。  
ブツンとなにかがちぎれる音がした。  
「いやぁぁぁぁぁ!抜いて!抜いてぇぇぇ!」  
ブンブンと彼女が首を振る。  
だが悪魔はそんな彼女にお構いなしに腰を動かし始めた。  
「痛い痛い痛い!死んじゃう!死んじゃう!!」  
明らかにサイズの違うものを突き立てられ、少女は苦痛の悲鳴を上げた。  
彼女の脚には彼女が穢れを知らぬ乙女であった証が伝わっていく…。  
見たくないと思っても突き上げられるたびに嫌でもそこを見てしまう、悪魔のものが突きたてられている自分自身を。  
「痛い…痛いの…死んじゃう…」  
少女の泣き叫ぶ声を悪魔がわらった、そして、彼女を拘束していたツタの一本が、何かを探すようにうごめき、後ろの小さなすぼまりにふれた。  
ビクンと彼女の体が震える。  
 
「やめて…そこは…そこだけは…いやぁ…」  
少女が懇願するようにそう呟き、そして…。  
「いぎぃぃぃぃ!!」  
目を大きく見開き背中をそらせて少女が叫んだ。  
「ああ…ああ…」  
明らかな異物を本来とは異なる場所に突き込まれる激痛に少女は震えた。  
悪魔が動く、少女が叫ぶ、ツタが動く、少女が叫ぶ。  
少女の悲鳴と、濡れた音が暗い森に響きわたる。  
これはきっと夢だ、少女がそう言いながら少女が笑う。  
「覚めてよ…起こしてよ…助けてよ…お姉ちゃん」  
少女の言葉と鈴の音がむなしく夜の森に響きわたる。  
彼女をあざ笑うかのように…悪魔が少女の白い翼をつかむ。  
「うあ…やめて…やだ…」  
何をしようとしているのかを察し、少女は抵抗しようとするが、前と後ろ、両方の穴を貫かれた彼女は動くこともままならない…。  
 
ぶちぶちと何かがちぎれる音と文字通りの体を引きちぎられる痛みが少女の背中に走る。  
激しい痛みと共にぼたり…と何かが地面に落ちた…。  
「い…や…」  
それは鳥の羽根に似ていた、羽毛に包まれた、白い純白の羽根…それが、ボタボタと流れ落ちる血を吸って赤黒く染まっていく。  
姉がいつもきれいと言ってくれた、自分の羽根が、もぎ取られて地面に落ちていた。  
「返して…返してよ…」  
痛みなのか悲しみのせいなのかもはや彼女には分からない。  
「う…うう…」  
心の中で誰かが笑う。  
引き裂かれた純潔…もぎ取られた羽根…彼女を更に絶望に陥れるかのように、悪魔の動きが加速する。  
「もうやめて…これ以上私をいじめないで…」  
どす黒い闇が彼女の精神を覆っていく。  
そんな彼女の心の内などお構いなしに悪魔が強く彼女の奥深くをたたく。  
苦しそうに…息をしていた。  
 
「え…まさか…いや…それだけは…それだけはやめて!!」  
悪魔のものが彼女の中で膨らむ。  
そして、彼女の一番深いところで悪魔が己を解き放った。  
「あ…あ…ああ…」  
汚されてしまった…犯されてしまった。  
少女がボロボロと涙をこぼしながら、震える。  
ゴポリと…収まりきらなかった白い液体が彼女の初めての証と共にあふれ出る。  
同時に後ろを貫いていたツタが彼女を地面に下ろす。  
よろよろと立ちあがった彼女は、かつて自分のものであった翼を抱きしめ泣きじゃくる。  
その背中に、彼女の腕を喰らった獣が、爪を立てた。  
そして、悪魔によって引き裂かれた場所に、明らかにサイズの違うそれを突き立てる。  
「やめて…もうやだ…もう…やだよ…」  
だが、獣がそれを理解するはずがない、彼女を四つん這いに押さえつけ、そのまま激しく腰を振る。  
 
「いやぁ!もうやだ!もうやだぁ!!」  
現実に耐えきれず、少女の心が悲鳴を上げた。  
ウォォォン…  
チリン…チリン…  
どれだけ眼をふさいでも貫かれる感触がこれが現実だと彼女をあざ笑う。  
「やだ…やめてよ…このままじゃ…いなくなっちゃう…私が…いなくなっちゃう」  
走馬灯のように昨日までの彼女の家族の姿が、脳裏に浮かんだ。  
そして…  
「ウォォォォン」  
「いやぁぁぁぁぁ!!」  
遠吠えのように獣が叫び少女の奥底に、濁ったそれを解き放った。  
それと共に、心がピシリと音をたて、壊れた。  
 
ぐったりと倒れた少女がちぎられた自らの羽根に手を伸ばす。  
悪魔や獣はそんな彼女にゆっくりと近づいていく。  
異変が起きたのはその時だった。  
少女が触れた羽根が真紅に染まり金属質な光沢を放つ。  
奇妙にねじ曲がり、羽根ではない別のものに変化していく。  
「殺す…」  
 
かつて自らの翼であった真紅の鎌をもった少女は言葉と共に自らを犯した怪物に襲いかかった。  
 
引き裂かれた服、手折られた翼、震える脚を伝わって濁った白い液体が地面にこぼれおちていく。  
彼女のことを汚しつくした獣たちは、物言わぬ躯となっていた。  
返り血に染まった破れた彼女の服の隙間からは無数の引っかき傷が刻まれている。  
かつて自分の翼であったはずの凶器、鎌を手放し少女は泣きつぶれた。  
次第に日が昇り、朝を迎える。  
再び顔をあげた少女の目に宿ったのは憎悪と狂気。  
「許さない…許さない…許さない…」  
―私を捨てて逃げたあいつを絶対に許さない。―  
失った翼と置き換わるように背中を破って黒い翼が姿を現す。  
「なんで私がこんな目に会うのよ…何で私があんなバケモノに犯されなきゃいけないのよ」  
ボロボロと涙をこぼしながら彼女の脚には渇いた血がこびりついていた。  
 
それが彼女が全身から放つ殺意をより強くしていく。  
「何で私が…何であいつじゃないのよ」  
ゆらり…少女の背中に憎悪の炎がともっていた。  
「許さない…許さない…私とおんなじ目にあわせて…苦しませて抜いて殺してやる…」  
憎悪の炎が強く燃え上がる、許さない、ただその言葉を繰り返しながらセレスティアの少女が歩く。  
翼を模したような真紅の鎌を杖にして少女はただ許さないとその言葉を繰り返した。  
「必ず見つけ出してやる…みつけだして殺してやる……!」  
そう言い放つ少女にもとの逃げ惑っていたころの面影はどこにもなかった。  
チリン…  
「あはは、あははははははははははは!!!!」  
 
 

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