「はぁっ…!くぅ…!」  
静まり返った部屋の中、私は愚かな行為に一人耽る。  
胸をつまみ、浅く入れた指で自分の中を掻きまわす。  
否、この手は私の手ではない。  
「クラッズ…駄目…そこは…弱いの」  
閉じた目の裏側で、彼の姿を夢想する。  
瞼の裏に浮かんだ彼はいつもの優しい笑みを浮かべている。  
だが、想像を重ねた彼の手は、私を激しく掻きたてる。  
「ふぅっ!…そこは!…駄目…苦しい…」  
敏感な部分がつままれて私の腰が高くあがる。  
「う…くふぅ…くはぁぁ…!!」  
最後に腰が跳ね上がり、そのまま静かに布団に落ちる。  
ビクビクと体が震え、敏感になった肌に夜の冷たい空気が触れた。  
彼のことが愛おしい。  
彼の体に抱かれたい。  
彼に貫かれる自分を想像し、彼の姿を夢想する。  
だけど…  
「…馬鹿みたい…。人に好きになる資格なんかないのに…」  
がりがりと肩に爪を立てると、私の肩から赤い血が流れる。  
呪われた子、罪深い子、そう呼ばれる私の血が静かに腕を伝わって涙と共に染みを作る。  
汚い血、彼にすら打ち明けていない、私の秘密。  
「私の血が汚いなら、どうしたら綺麗になれるの…」  
この血が汚れに満ちているなら、その血の全てを入れ替えれば、私の呪いは解けるのだろうか?  
真実を伝えれば私は彼に抱きしめてもらえるのだろうか?  
「クラッズ…クラッズ…」  
何度繰り返しても満たされることのない渇きを覚えながら私は愚かな行為を繰り返す。  
彼が欲しい、彼に抱かれたい、彼にこの身を捧げたい。  
彼に純潔を引き裂かれ、彼に汚されることを夢想する。  
繰り返すたびに味わうのは、ほんの少しの心地よさと、彼がここには居ないという空しさだけ。  
彼のことが好きなのに、私の心を呪いが縛る。  
いっそ、こんなさえ気持ちを持たなければ…私は苦しまずにいられるのだろうか?  
そんなことを思いながら私は一人遊びに今日も耽る。  
この想いが報われること等あるのだろうかと思いながら。  
 
ドラッケン学園の食堂にチーム全員で集まって食事をとる。  
おとぎ話の魔術師のような格好をしたフェアリーの向かいに修道服に身を包んだセレスティアが、首にマフラーを巻いたフェルパーの前に彼女の恋人のバハムーンが、そして私の向かい側に、彼がいつものように座る。  
いつも通りの光景だった。  
 
「…獣殿、この時期にそのマフラーは熱くないのかね?」  
今の季節は夏真っ盛り、そんな時期にマフラーを巻いたフェルパーに同じ様に熱そうな格好をしたフェアリーが呟く。  
「…私だって、ホントはつけたかねぇよ。ただ…外したら…見えちまうだろうが…」  
パタパタと手で仰ぎながらフェルパーが恥ずかしそうに呟いてバハムーンを睨んだ。  
「…またですか?リーダー?」  
フェルパーの隣に座ったセレスティアがどこか楽しそうにそう笑う。  
「うむ…、フェルパーが恥ずかしがる姿が偉く気に入ってな…つい、毎朝つけてしまう」  
何事もないかのように食事を続けながらバハムーンがそう言うとフェルパーが恥ずかしそうに尻尾を揺らしながら食事を再開する。  
「バハムーンの…馬鹿…」  
頬を染めながら、どこか嬉しそうに彼女は笑う。  
―いいな…―  
その姿に、胸が苦しくなる。  
羨ましい、そんな思いが私の心に渦巻いていた。  
「まったく、学生なんだから節度もとうよ。」  
静かに食事をとっていた彼がそう言って苦笑する。  
―クラッズは…誰か好きな人居るのかな…―  
「…努力はしよう…まず回数を減らしてみるか」  
「…え」  
クラッズの言葉に応えたバハムーンの言葉を聞き、明らかにフェルパーが悲しそうな顔をする。  
「減らすのか…?」  
泣きそうな目でフェルパーがバハムーンの目を見つめる。  
「…クラッズ、女性を悲しませるのは関心しないよ」  
ちらりとクラッズを見ながらフェアリーが呟く。  
「…なんでボクが悪役なのさ…、好きにしていいよもう…」  
明らかに悪くなった旗色に彼がため息をつきながら空になったコップを持って立ち上がる。  
「あ、ごめんクラッズ、私のもお願い」  
「ん、分かった、ぬるめだね」  
私がネコ舌なのを知っている彼は、そう笑ってコップを受け取る。  
やっぱり彼は優しい…。  
―優しすぎるから…好きになっちゃうんだよ―  
心の中で小さく彼を非難する、だが、そんなことは彼には伝わらない。  
 
「喜べ、フェルパー。回数は減らさなくて良いそうだ」  
「ホントか!?…あ、じゃなかった、べ、べつに減ったところで大丈夫だっての、全く…  
ま、バハムーンがしたいって言うなら、仕方ねぇな」  
そんな私の隣では、パーティ唯一の彼氏持ちが嬉しそうにブンブン尻尾を振っていた。  
―うらやましい…―  
彼女のことが羨ましい  
幸せそうに、愛する人と過ごせることが…  
―妬ましい―  
私は、誰かを好きになってはいけないのに…  
「…違う、そうじゃない」  
心によぎった思いを小さく呟いて否定する。  
本当に汚れているのは私の血じゃなくて、私の心そのものなのかもしれない。  
「はい、ディアボロス、ぬるめのお茶」  
少しボーっとしていた私は彼の言葉に正気に返る。  
「うん、ありがと、クラッズ」  
「どういたしまして」  
そう言って笑う彼を見ながら私も小さく笑う。  
これでいい、私と彼はきっとこれでいい。  
ぬるめのお茶の入ったコップを受け取り口にする。  
ただのお茶のはずなのに、彼と一緒に飲むお茶は一人で飲む時よりおいしかった。  
 
 
彼女はいつもどこか悲しそうな顔をしていた。  
笑うととても綺麗で可愛いと思うのに、彼女はあまり笑わない。  
時折笑ってくれるけど、それは彼女の本当の笑顔ではない気がした。  
無理に笑うのは見たくない、自然な彼女の笑顔が見たい。  
それがボクの望みだった。  
 
 
「どけよ、ワンコロ…噛み砕かれてぇか!!」  
行く手を阻む巨大な獣に獰猛な笑みを浮かべたフェルパーが叫んで疾走する。  
「フェルパー、先走るな!」  
「心配すんな彼氏様、私の背中。預けたぜ」  
「まったく、仕方ないやつだ…」  
笑いながらバハムーンが彼女に背後から襲いかかろうとした魔獣を切り伏せる。  
その行動は完全に彼を信頼していることが伝わってきて、なかなかうらやましいものがあった。  
「…っと、それいじょうは進ませないよ」  
よそ見をしているうちに二人から逃れた魔獣が襲いかかってくる。  
「クラッズ!」  
「大丈夫、心配しないで、ディアボロス」  
彼女にそう答えながら、サイに似たその魔獣の頭を銃で撃ち抜き、背中に剣を突き立てる。  
苦しげに暴れる魔獣の背を蹴って、再びそれに銃を向ける。  
「よっ…と」  
ドンドンと辺りに銃声が響き、魔獣が動かなくなる。  
「ね?」  
ボクがそう言って笑いかけると、呆れた顔で彼女が笑った。  
 
「ふむ、あらかた片付いたようだが、“襲撃者”とやらの姿は見えんな」  
剣についた血を拭きながらバハムーンが呟いた。  
「ですね…」  
少し疲れた様子でセレスティアが呟く。  
今回ボクたちが受けたのは所謂ところのクエストとは少し毛色が違っていた。  
「…もしかしたら、我々が疲弊するのを待っているのかも知れないね」  
ありえない話ではなかった。  
そもそも、僕らがこの依頼をうけたのはドラッケンに所属する生徒が先日何者かに襲われ、  
全員瀕死の状態で保健室に運び込まれた、という話を聞いたからだ。  
 
「黒い精霊…」  
ぽつりとディアボロスが小さく呟く。  
瀕死の状態で運ばれた彼らが告げた襲撃者の見た目。  
同じ場所で戦ってみてはいるがその姿はどこにも見えない。  
「フェルパー…どうだ?」  
「…学園みたいな場所なら、ある程度気配は読めるが、ここには魔獣共もいやがるからな。  
さすがに私でも、全部は読み切れねぇ…」  
バハムーンの言葉にフェルパーが耳をぴくぴくと動かしながら呟く。  
「仕方ない、ここは分かれて探すことにしよう」  
「…リーダー殿、それは少し危険ではないかね?」  
フェアリーの言うことはもっともだった襲撃者が何人なのかも分かっていない、ただでさえ6人がかりのチームが敗北している相手なのだ。  
「だが、このまま戦い続け、疲弊したところを襲われてしまえば同じことだ。それならばあえてわけ、目標が襲ってきたところで合流をすれば良い」  
「なるほど…ボク達自身が囮ってことだね?」  
ボクの言葉にバハムーンがうなづいた。  
「…なるほど、このままあてもなく探すよりは効率は良いかもしれませんね」  
「うん、連絡石で通信して座標さえ分かれば転移符ですぐに合流できる」  
セレスティアとディアボロスもそう言ってうなづいた。  
「ふむ…、確かにリーダー殿の言うとおりだ。ではそのつもりで行こう、  
リーダー殿どの様に分けるのだね?」  
「俺達前衛と後衛の術士達、それを各1名合計2名のツーマンセルにしよう。  
俺とフェアリー、フェルパーとセレスティア、そしてクラッズとディアボロス、この組み合わせに分かれよう」  
リーダーであるバハムーンの決定に皆がうなづく。  
それぞれに分かれ、緊急用の転移符と帰還符を受け取り僕らは連絡用の魔石を首にかける。  
「それでは、何かあったらすぐに連絡しろ。間違っても各人達だけで行動するな」  
「了解したよ」「分かりました」「オーケイ」「了解」「うん、了解」  
バハムーンの言葉に皆が思い思いに答える。  
そうして僕らは3つにわかれて歩き出した。  
 
「…それにしても、襲撃者って何者なんだろうね?」  
「分からないけど、ドラッケンの生徒だけを狙っているってことなら…  
目的は復讐、たぶん、ドラッケンに居たことのある人間だと思う」  
ディアボロスと共に歩きながら僕らはそんな会話をする。  
今思えば、こうして二人きりで彼女と話すのは初めてだった。  
「なるほど、一理あるね…」  
心の中の緊張を隠しながら彼女の言葉にそう答える。  
「あんまり離れない方が良いね、いつ襲われるかわからないし」  
ボクの緊張を知ってから知らずかディアボロスがボクに寄り添って手を握る。  
人形を操る彼女の指はとても華奢で、力を強く込めると折れてしまいそうなほどに儚い。  
ジャリ…  
「!…ふせて、ディアボロス…」  
「!?きゃっ…」  
何かの足音を聞きボクはあわてて彼女を引き寄せた。  
体勢を低くした僕らのすぐそばを大型の魔獣が通り過ぎていく。  
どうやら気付かれなかったようだ。  
「その…クラッズ…」  
どこか恥ずかしそうな彼女の声にふとボクは手に当たる柔らかい感触に気づく。  
ふにふにと手を動かすとマシュマロのようなやわらかい感触が手に伝わる。  
「あ、ごめん…」  
「良いから…どいて…ふっ…くぅ…」  
その感触をこらえるように彼女がぴくぴくと眉を動かす。  
ボクの手は彼女の胸をわしづかみにしていた。  
今まで見たことのない彼女の表情に、ボクの中の何かがうごめきだす。  
 
「ディアボロス…」  
震える彼女の顎を掴んで引き寄せる。  
「クラッズ…駄目…」  
拒絶する彼女の言葉を無視して、ボクは彼女の唇を無理やり奪った。  
「んむっ!?」  
私の唇に彼の唇が触れている。  
その瞬間に私の胸を恐怖が蝕んでいく。  
あれほど待ち望んでいたはずなのに…彼が汚れてしまうという罪悪感が私を包んでいく。  
―…クラッズが、クラッズが…汚れちゃう…―  
私は汚いから…呪われているから…彼を汚してしまう。  
私に触れている彼の唇が、黒く蝕まれていくイメージが頭によぎる。  
―やめて…―  
頭の中で彼の姿が闇に覆い隠され、見覚えのある人物の姿に変わる。  
―「あんたは幸せになんかなれないのよ…」―  
母と慕っていたはずの女性がそう言って私の首を絞める。  
幻覚だと分かっているのに息が苦しくなって呼吸ができない。  
―「私からあの人を奪ったんだから、あんたなんか呪われてしまえばいい」―  
偽りの母の幻影がそう言って私の首を絞める。  
―「あんたにかかわる人間は皆不幸になればいい…」―  
偽りの母の幻影が霞み、今度はクラッズの首を締め始める。  
嫌だ…。  
ガタガタと体が震える。  
偽りの母の手の中で苦しげに彼が呻いている。  
「やめて…!!」  
次の瞬間、私の手は幻影ではなく、現実の彼の頬を叩いていた。  
 
頬がじりじりと痛む感触にボクはようやく正気を取り戻す。  
「あ…ああ…」  
彼女が涙を流して震えていた。  
「あ…」  
自分がようやく何をしていたのかに気づき、罪悪感がこみ上げる。  
「…ごめん」  
ボクは今、何をしようとした?  
彼女が抵抗をしなければ、ボクは何をするつもりだった?  
彼女を、どうしてしまうつもりだった?  
頭の中によぎった想像を頭を振って追い払う。  
「ごめんディアボロス…」  
彼女を傷つけてしまうところだった。  
彼女を解放するように体を離す。  
「ち…違うの…ごめんなさいクラッズ…そうじゃないの!!あなたを殴ろうとしたんじゃないの!!」  
だが、離れようとしたボクの服を彼女が引っ張って止める。  
「嫌わないで…お願いだから嫌いにならないで…!」  
すがるように泣き叫びながら彼女がボクの手を強く引く。  
「ディ…ディアボロス?」  
彼女の様子が明らかにおかしかった。  
 
「もうやだ…、もう私嫌だよ…クラッズのことが大好きなのに…何で…何で」  
突然の彼女の告白に頭が揺さぶられるような衝撃が走る。  
―ディアボロスが…ボクを…好き?―  
どうして彼女が震えているのかがわからにない、なぜ彼女がおびえているのか分からない。  
ボクにおびえていると思っていたのに、彼女の眼はボクを見ていない。  
何か別の、全く別のものに脅えるように彼女が自分の肩に爪を立て、ガリガリと掻きむしり始める。  
「血…そうだこの血が汚いから…汚いからいけないんだ…」  
突然何かを思いついたように、彼女は虚ろな目でどこかを見ながら、ナイフを取り出して、自分の手首にそれをあてる。  
突然の彼女の行動に驚いてボクは彼女を取り押さえた。  
「ディアボロス!!何やってんの!?」  
「放して!放してよクラッズ!!全部捨てないと綺麗になれないの!!こんな私じゃあなたと一緒に居られないの!!」  
泣き叫びながら彼女は何度も自分の手首を切ろうとナイフを押し当てる。  
「落ち着けこのバカ!!」  
何度止めようとしてもやめない彼女に耐えきれず、思わずボクは彼女の耳元でそう叫んだ。  
驚いた表情で彼女がナイフを取り落とした隙をついてボクはナイフを奪い取りベルトの内側に差し込んだ。  
「あ…」  
ようやく彼女の眼に理性の光がともり、自分のしていた行動に今度は肩を震わせ始める。  
「ディアボロス…一体、何が…」  
「ごめん…」  
そう言って彼女を起こそうと手を伸ばす。  
だがその瞬間、ディアボロスが何かに気付いたように叫んだ。  
「クラッズ…危ない!」  
「え?」  
あわてて背後を振り向いた瞬間、何かがボクを弾き飛ばす。  
そのままボクは壁に向かってたたきつけられた。  
 
「がっ…!?」  
固い壁にたたきつけられ、一瞬、呼吸ができなくなる。  
それでも何とか自分を吹き飛ばしたものを見る為に彼女の方を見ると、黒い虚ろな影が彼女を取り囲んでいた。  
―マズイ…!―  
襲撃者、その見た目と完全に一致する。  
彼女に完全に意識を取られ警戒を怠った自分に舌うちした。  
「こちらクラッズ…襲撃を受けた。座標…X13:Y11」  
首にかかった魔石を掴み直ちに仲間に連絡する。  
だが、反応は何も返ってこない。  
「無駄だよ…、彼らも今頃、ボクの呼びだした闇の精霊に襲撃されているころだからね」  
コツコツと足音を響かせながら、黒い虚ろな影の向こうに、エルフの少年が姿を現す。  
「スティクス…」  
余裕の表情で現れた少年をボクは強く睨みつけた。  
「やぁ、久しぶりだね…クラッズ」  
うすら笑いを浮かべながら、スティクスは手をたたく。  
闇の精霊、ドラッケンの生徒が襲撃される、それらの断片が彼の姿を見た瞬間全て繋がった。  
「襲撃者の正体は…キミか」  
うかつだった、闇の精霊と聞いた時点で彼のことを思い出すべきだったのに、完全に失念してしまっていた。  
剣を引き抜き、銃を構える。  
「おっと…駄目だよクラッズ、こっちには人質がいるんだからね?」  
彼がそう言うと、まだ泣き続けているディアボロスを3体の闇の精霊が取り囲む。  
「…ちっ!」  
舌打ちをしながら剣と銃を投げ捨てると満足そうにスティクスが笑った。  
「それで良い、できれば君にはボクの仲間に入ってほしいからね」  
偉そうに胸を張りながら笑うスティクスが癇に障る。  
「ディアボロスを人質に取ってる分際でふざけたこと言わないでほしいね」  
そんなボクの言葉にどこか楽しそうに笑った。  
「君は本当に分かりやすい、君は昔からそうだ、いつもディアボロスのことを見ている。  
よっぽど彼女に執心の様だね」  
くすくすと笑いながらスティクスは闇の精霊を次々に生み出した。  
状況はどんどん不利になっていく、彼女の武器はボクが奪ってしまった。  
ある意味、ボクの武器の代わりにならなくはないが、彼女がとらわれたままでは、下手に動くこともできない。  
取り囲まれながらもボクは必死で反撃の糸口を探しながらスティクスのことを睨みつけた。  
―動かないで―  
口の動きだけで彼女に告げると彼女が小さくうなづいて返す。  
そんな僕らを見ながらスティクスはニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべていた。  
 
「ねぇクラッズ…君はディアボロスのことが好きなようだけど…君は彼女が呪われた子だとは知らないのかい?」  
「ディアボロスが…呪われた子?」  
くすくすとどこか楽しそうに笑いながらスティクスがそう言うと、ディアボロスが驚いた表情で彼を見上げた。  
「なんで…なんで、あなたが…」  
ガタガタと震えながらディアボロスがスティクスを見る。  
「ボクの新しく所属している学園の校長は物知りでね…いろんなことを知っているんだ。  
だからボクは君の真実を知っている」  
「やめて…クラッズに言わないで…私の秘密を…言わないで…」  
ボロボロと涙を流しながらすがるように言う彼女をスティクスはどこか楽しそうに見つめている。  
―やめろ…―  
彼女を泣かせるな。  
彼女を苦しませるな。  
頭が沸騰しそうなほどの殺意が僕を塗りつぶす。  
「ねぇクラッズ知ってるかい…?彼女はね…」  
「やめて…、お願い…言わないで!私の秘密を言わないで!!」  
―やめろ…―  
泣き叫ぶ彼女をあざ笑うようにスティクスは楽しそうに…笑った。  
「彼女はね…父親と実の姉の間に生まれた、禁忌の子供なんだ」  
「な…に?」  
「あ…ああ…あああ」  
にわかには信じられず、思わず彼女の方を見ると、ボクを見た彼女の顔が絶望に染まっていく。  
「いやぁああああああ!!!!」  
彼女の絶叫が辺りに響いた。  
 
『こちらクラッズ…襲撃を受けた。座標…X13:Y11』  
胸元の魔石からどこか焦っているようなクラッズの声が聞こえてくる。  
「くそっ…!やはり分けたのは俺の判断ミスか!!」  
苛立たしそうにリーダー殿が叫んで闇の精霊を切り捨てる。  
「今更、そんなことを言っている場合ではない!さっさと片付けて合流するぞリーダー殿!!」  
彼の言葉にそう返しながら私は自分に迫ってきた精霊の頭を魔法で吹き飛ばす。  
動き自体は単調で簡単だがいかんせん数が多い。  
―これは…四の五の言っている場合ではないね…―  
瞬間的にそう判断し、リーダー殿と背中を合わせる。  
「リーダー殿、悪いがここは私に任せて、セレスティアやフェルパーと合流してくれ。彼女達は大群との戦いには向いていない!」  
「だが、お前はどうするんだ?」  
襲いかかってきた精霊を切り倒しながらリーダー殿が私を見る。  
「何…心配はない、ただ、ここに君がいると、私が全力を出し切れん…」  
私の隠していることを彼らに知られるのはまだ早い。  
「勝算はあるのか?」  
リーダー殿が私に呟く。  
「無論…このバケモノどもは“みたことがある”ゆえに…私を傷つける事は出来ない」  
襲いかかってきた精霊を吹き飛ばしながらそう言うと、リーダー殿が静かに呟く。  
「分かった…お前を信じよう…」  
「ああ、任せてくれたまえ…」  
最後に少しでも私の負担を減らすかのように、リーダー殿が闇の精霊の群れを薙ぎ払い、転移符を懐から取り出す。  
「先に行く…遅れるな」  
「ああ、すぐに追いつくよ…」  
私がそう笑うと、彼も笑って姿を消した。  
今頃、フェルパー達と合流出来ているはずだ。  
 
―これでいい…―  
たった一人になった私を闇の精霊が取り囲む。  
その精霊の群れを見ながら、私は久しぶりに昔の口調に思い出して笑った。  
 
「ははは…貴様らみたいなモブキャラが…俺を殺そうなんざ百年早い…」  
俺の言葉に怒ったのか、闇の精霊が一斉に飛びかかる。  
だが…それは私にとって“未知ではない”。  
「起動を宣言…どれだけ貴様らがあがいても…俺には絶対届かない」  
ローブがばさばさと羽ばたいて、幾何学的な文様を空中に描き出す。  
互いに尾に噛みついた、絡み合う2匹の蛇の紋章が私の前に浮かび上がる。  
その壁にぶつかった闇の精霊が、一つ残らずはじけ飛んだ。  
「俺を傷つける事が出来るのは…未知であって既知ではない…」  
もはや私に触れることすらできなくなった闇の精霊を見わたし、俺は呪文を紡ぎ始める。  
「あー、邪魔だぞ。俺はこれから急ぎの用事があるんだ…その邪魔だけはしないでくれ」  
闇の精霊が集まった魔力に脅えるように私に飛びかかる。  
しかし、その攻撃の全て、私に届くより先に蛇の文様に噛み砕かれる。  
「無駄なんだよ…滅びろ劣等。ビッグバム!!」  
私の言葉に応えるようにタロットカードが光を放ち、魔力を増幅し、解き放つ。  
閃光がきらめき迷宮が大きく振動した。  
暴風が吹き荒れ、闇の精霊がことごとく砕け散る。  
後に残るのはただ一人、不気味な文様を纏わせたおとぎ話の魔術師のようなフェアリー一人。  
「やれやれ…少しばかりやり過ぎてしまったようだね」  
壊れてしまった壁を見ながらフェアリーはいつもの芝居がかった口調で笑う。  
「終了を宣言」  
フェアリーの言葉に応えるように蛇の文様がローブに吸い込まれるようにして消滅する。  
「おっと…」  
ふらりとよろけながらフェアリーは自嘲気味に呟いた。  
「やれやれ…やはり…昔の遺産など、そうそう使うものではないね」  
そう言ってフェアリーは懐から転移符を取り出し、クラッズの言っていた座標を思い出す。  
だが、どうしてもうまく思い出せなかった。  
失われた魔力と共に、記憶の一部も欠落している。  
「ろくな代償を持ってないね、もう少し…使い勝手のいいものにしてくれれば良いものを…」  
だれともなくフェアリーが呟いて、その姿が掻き消えた。  
 
彼女が泣いている。  
なぜ泣いているのか、そんなことは簡単だ、ボクの目の前のバカが、彼女の傷を抉ったからだ。  
「見ないで…クラッズ…私を見ないで!!私のことを…見ないでよ…」  
ボロボロと彼女が涙を流しながら叫び続ける。  
彼女の精神の状態を現すかのように、辺りの意志が無茶苦茶な軌道を描いて飛びまわっている。  
「あはははは!!どうだいクラッズ…これでも君は彼女を愛せるか?  
彼女という呪われた存在を君の愛で救えるのか?」  
何が楽しいのかスティクスは腹立たしい笑いを浮かべている。  
―笑ってんじゃねぇよ…―  
どうしようもなく、胸糞が悪い。  
久しぶりに頭が煮えそうな怒りがボクの頭を塗りつぶす。  
「…黙ってろスティクス」  
ついに怒りがこらえられず、言葉にこもって表れた。  
「何?」  
スティクスがボクをいぶかしんだ様子で見ている。  
そんな彼を無視してボクはディアボロスに呟いた。  
「ねぇディアボロス…君はボクのこと好き?」  
彼女が呪われた存在だ?  
笑わせるな…、彼女が呪われた存在なら、ボクはもっと呪われてる。  
「え…?」  
ボクの言葉に驚いたように、ディアボロスが顔をあげる。  
「さっきはごめんね…ディアボロスの胸触っちゃって。…しかもキスまでしちゃってさ…  
キミが殴ってくれなければ危うくキミを犯すところだった」  
「クラッズ…?」  
いつも頭につけていたお面に手をかける。  
少し昔を思い出して、どうしようもない笑いがこみ上げた。  
「ねぇディアボロス…キミは自分が汚いって言ってたけどさ…  
ぼら、どうだい?ボクだって十分汚れてるだろ?」  
仮面で表情を覆い隠すと、昔を思い出して頭がクリアになっていく。  
「ディアボロス…人を殺したことはある?」  
たとえ彼女の生まれが呪われていても、昔のボクほど呪われてはいない。  
「ボクはあるよ」  
「…え?」  
ディアボロスの声が凍りついたのが聞こえた。  
「もともとは暗殺者として育てられてたからね。知ってる?暗殺者を育てるとき、必ず一人、年下の子と育てられるの、で、まず最初にその子を殺すんだ…」  
もしかしたら嫌われたかもしれないが、そんなことはどうでも良い…。  
「ボクの体はとっくに汚れてる、君の呪いなんかじゃ汚せない…。それ以上にこの手は血で汚れてる」  
「クラッズ…」  
今のボクがするべきことは…彼女を泣かすやつら、彼女に危害を与えるもの。  
その全てを壊すだけ、ほんの少しだけ昔の自分を思い出し、自らの中にあるスイッチを切り替える。  
 
「ク…クラッズ!そこを…!」  
動くな、とでもいうつもりだったのか、そのスティクスを狙って彼女から奪ったナイフを投げつける。  
同時に剣と銃に走り寄り蹴りあげたそれを空中で掴んだ。  
「動くなスティクス、精霊も動かすな。さすがに操ってるお前が死ねば、  
こいつらだって消えるだろ?」  
ボクの言葉にスティクスの体が震えた、その頬には今の攻撃でついた傷が確かに刻まれている。  
「ク、クラッズ、冗談はやめてくれ、僕と君は友達だろう?」  
彼女を傷つけておきながら、スティクスがそう言ってボクに笑いかけた。  
…ような気がした。  
だけど、その表情は仮面のせいで分からない。  
当たり前だ、これはそのためにあるのだから。  
「ああ、そうだね、友達だ…」  
「よ…よか…」  
たとえどれだけ、相手が親密なものでも確実に殺せるように、  
相手の表情を見なくて良いようにボクはこの仮面を纏う。  
そう、たとえそれが昔の友人であっても。  
「だが彼女を傷つけたら話は別だ、死ねよスティクス、あの世で彼女に詫びろ」  
何の躊躇もなく、ボクは引き金を引いた。  
「ボクを守れ闇の精霊!!」  
自分を守るため、ディアボロスを取り囲んでいた精霊がスティクスのもとに集まる。  
その瞬間を見過ごさず、ボクは走ってディアボロスを抱きかかえた。  
「大丈夫?怪我は無い?」  
仮面を外してそう言うと彼女が驚いた眼でボクを見ている。  
「触らないで…汚れちゃう。…クラッズが汚れちゃう…」  
肩に触れた手を彼女が涙を流しながら振り払おうと暴れる。  
再び呪いに縛られた彼女がボクにそう言うがやはり彼女の眼はボクを見ていなかった。  
だからその肩を掴んで思いっきり抱きしめた。  
「汚せないって…言っただろ?」  
「クラ…」  
「ごめん、少し黙ってディアボロス」  
まだ何かを告げようとした彼女の顎を掴んで再び強引に唇を奪う。  
驚いた表情で彼女の眼が見開かれ、ボクのことを押しのけようとするが、その抵抗を無視して彼女の口内を蹂躙する。  
次第に彼女の体から力が抜け、暴れまわっていたものが地面に落ちた。  
「少しは…落ち着いた?」  
ボクの言葉に彼女が恥ずかしそうな表情で首を縦に振る。  
「よかった…ところでディアボロス…一つ、伝えたいことがあるんだけど良い?」  
「え?」  
ボクの言葉に彼女が首をかしげる。  
もはや何が起こっているのか分からないんだろう。  
だから、そんな彼女に付け込んでボクはその言葉を口にした。  
「君がもしボクを好きなら…ボクの恋人になってよ。ボク、君が好きなんだ」  
そういって笑うと彼女の眼に涙が浮かぶ、でもそれは悲しみじゃなくて…。  
「…うん、私なんかで良かったら…。あなたの恋人になりたい…あなたのモノに、なりたいよ…」  
初めて見る彼女の本当にうれしそうな顔に心が躍る。  
 
「クラッズ!よくも…死ねぇ!」  
スティクスが叫んで更に精霊を呼びだしてくる。  
「うるさいな…黙ってろドサンピンが…!」  
人が良い気分に浸ってるのに、ガタガタとうるさいこと仕方ない。  
「少しは空気読んでくれない?KYにもほどがある。だから君はハブられるんだよ!」  
「黙れーー!!」  
スティクスが叫ぶのと同時に襲いかかってくる闇の精霊を剣で切り飛ばし、逃げるスティクスを追っているように見せて、落ちた彼女のナイフに駆け寄って彼女に向かって蹴りつける。  
「ありがと…クラッズ」  
小さく彼女が囁くとナイフがひとりでに宙を舞い始める。  
彼女が立ち上がって呼吸を整えるようかのように一度目を閉じ、息を吐いた。  
静かに再び彼女が目を開くと取り囲んでいた精霊が細切れになって宙に舞う。  
「な…に…」  
豹変した彼女の様子にスティクスが驚いた声をあげる。  
「ねぇ…クラッズ…もう一度好きって言って…」  
「大好きだよ…ディアボロス」  
「ありがと…クラッズに好きって言ってもらえたからもう何にも怖くないね」  
嬉しそうに笑った彼女は周りを取り囲む精霊を見ると、クスリと笑った。  
「あのさ…もう飽きちゃったから消えてくれる?」  
彼女の眼が怪しい光を放つ。  
同時に、無数の斬撃が辺り一帯に走り回った。  
 
「クラッズ…本気だとどこまでいける?」  
カツカツと靴を鳴らしながら彼女がボクの隣に立つ。  
「どこぐらいまでいってほしい?」  
仮面で顔を覆いながら彼女に笑う、ボクに彼女は背中を合わせて笑った。  
「少なくとも、皆が来るくらいまで時間は稼ごうか」  
踊るように僕らは共にかけだした。  
 
切り捨てて失われた精霊を魔力を使って補充して狂ったように、スティクスが僕らに襲いかかってくる。  
切り捨てた数は2ケタ等軽く超えていた。  
「ボクはな…ボクの精霊は…最強なんだよ!!」  
「…さすがに辛いかも…」  
「…奇遇だねボクもだ」  
彼女と背中を合わせながら笑う。  
新たに呼び出された精霊が襲いかかってくる。  
―ここまでなのかな…―  
だが、そう思った瞬間聞き覚えのある声が辺りに響いた。  
「そうか、それは良かったな」  
瞬間に白い影が走り抜け新たに呼びだされた精霊が、一つ残らず砕け散る。  
「…だがこの程度ならベッドの上のアイツの方がよっぽど最強だぜ?」  
マフラーをなびかせながら、獣のような笑みを浮かべて、フェルパーが笑った。  
「闇の魔力で強化されたボクの精霊を拳で殴り飛ばしただと…!?」  
「こちとら毎晩ミルクを腹いっぱい飲まされて強化されてるんでね…!」  
獰猛に笑いながらフェルパーは“狂犬”と呼ばれた2つ名にふさわしい勢いでスティクスの精霊を吹き飛ばしていく。  
「くっ!?」  
その光景に驚愕の表情を浮かべていたスティクスは、迫りくる何かをよけるようにあわてて飛びのいた。  
「あらら…外しちゃいました」  
どこか間の抜けた笑い声を響かせながらセレスティアが物騒な鎌を薙ぎ払う。  
「あとちょっとで首を切り落とせたんですけどねぇ…」  
「こらセレスティア、人に恥ずかしいセリフ言わせておきながら外すんじゃねぇよ。  
…私が恥さらしただけじゃねぇか」  
どこか恥ずかしそうにそういうフェルパーがセレスティアを睨むと、なぜかハンカチで鼻を押さえた彼女はいつものように笑って答える。  
「いやぁ、よかったですよ。とくに毎晩ミルクをお腹いっぱいとか。アドリブにしては…もう、もう意味深過ぎて私、鼻血が…」  
「ぼ!防御を!!」  
そんな彼女たちを無視し、なんとか彼女の攻撃を回避したスティクスが既に呼び出している精霊を集めるかのようにそう叫んで印を結ぶ。  
だが、その言葉に応える精霊はどこにもいない。  
「なるほど…貴様が襲撃者か」  
大剣を背中に担ぎながらバハムーンが最後の闇の精霊を踏み潰す。  
「何で…、何でボクの精霊はどうした!?」  
「何…簡単だ、切り倒したただそれだけだ。そしてこの場に居るのは  
フェルパーが今先ほど吹き飛ばした…。新たに呼ぶ隙は…ないぞ?」  
 
「バハムーン…」  
僕らが彼を見ると彼がどこか楽しそうに笑った。  
「すまんなクラッズ、ディアボロス、二人きりのところを邪魔をした」  
バハムーンの言葉にボクの腕の中でディアボロスが頬を染める。  
「別にいいよ、ただ今度から気をつけてね」  
「善処しよう」  
ボクの言葉にバハムーンが笑う。  
 
そんな僕らを見ながらゆらりとスティクスが立ち上がる。  
「…はは、ちょっと驚いたけど6人全員無事とはいかなかったみたいだね」  
集まったボク達を見ながらスティクスがどこか歪んだ笑みを浮かべる。  
確かに彼の言うとおり、ここにはフェアリーの姿が無い。  
「…バハムーン、フェアリーは?」  
「あいつは…」  
バハムーンがそう言って口を開くがスティクスの甲高い笑い声がそれを遮る。  
「ボクの闇の精霊に囲まれて無事なわけが無い、次は君たちの番だ!」  
高らかに叫んでスティクスが杖を振り上げる。  
その瞬間スティクスの真横の壁が吹き飛んだ。  
 
「おやおや…こんなところにいたのかね?襲撃者は一体どこにいる?」  
いつもの芝居がかった口調で笑いながらフェアリーがふわふわとこちらにやってくる。  
そんな彼に示すように僕らはそろって彼の破壊した壁を示した。  
正式には壊れた壁に埋もれたスティクスを。  
「はて?」  
フェアリーが僕らに近づきながら後ろを振り返る。  
「…今日は…ここまでにしておいてやろう…」  
ボロボロの体を引きずりながらスティクスが立ち上がる。  
「…いや、悪いけどスティクス、君、満身創痍だから…」  
「うるさい…ボクは闇の生徒会の一員なんだ。この程度で負けを認めるつもりはない」  
ギラギラとした目で僕らを見ながらスティクスの体が闇に包まれる。  
「この借りは…いつか返す」  
お決まりのセリフを呟いて、スティクスの姿は消えていった。  
 
「逃げられちゃいましたね…」  
静かになった迷宮にセレスティアのどこか間延びした声が響く。  
「逃げ足の速いやつだ、だがもはや正体も分かった以上注意を呼び掛けておけば問題ないだろう」  
静かに剣を収めながらバハムーンが呟く。  
「なぁ…ところでよ」  
ちらりとフェルパーがボクを見た。  
正確にはボクとボクの腕の中に収まっているディアボロスを、  
「私ら邪魔じゃないか?」  
ディアボロスの顔が真っ赤に染まり、あわててボクから体を離す。  
「獣殿、そういう時は黙って何もいわず立ち去るのが、正しいあり方だと思うよ?」  
どこか疲れたような表情をしたフェアリーがそう言って笑う。  
みんなの生温かい視線がボクらに注がれていた。  
ディアボロスは恥ずかしそうに顔をうつむかせるだけで何も言わない。  
―あー…まぁ、いっか―  
開き直ってボクは彼女を抱き寄せる。  
「ごめん皆、先学園帰って報告しといて。ちょっと今日一日二人っきりにさせてほしい」  
「ク、クラッズ?」  
驚いた表情を浮かべるディアボロスをしり目にバハムーンが笑う。  
「分かった、宿が決まったらそれだけおしえてくれ。明日、昼過ぎに迎えに行こう」  
ボクの肩を叩いてバハムーンが皆を見渡す。  
「帰るぞ、早いうちに学園に知らせる必要がある」  
彼の言葉に3人が思い思いの言葉を返し、去っていく。  
二人きりになったボクは彼女の手を引き立ち上がる。  
「行こう、ディアボロス…」  
「…うん」  
どこか恥ずかしそうにしながら彼女は小さく笑うのだった。  
 
冷たい風が湯上りで火照った体に気持ち良い。  
ローズガーデンの小さな宿に二人きり、たった一つの部屋だけ取って私達は今ここにいた。  
「隣良い?」  
「同じ部屋だからとなりも何もないけどね」  
背中からかけられた彼の声にそう言ってうなづくと、彼は静かに私の隣に座った。  
「…別に、膝の上に座ってもよかったのに」  
冗談交じりで呟くと彼がいつものように笑う。  
「ボクが膝に座ったらまたディアボロスの胸に触れちゃうよ」  
彼の飛ばす冗談に私は笑って答えた。  
「そしたら…また私をエッチなことしたくなる?」  
「…そうだね、したくなるかも、むしろぐちゃぐちゃにしてどろどろにしちゃうかもね」  
まるで私を脅かすように笑う彼の手をとり自分の胸に触れさせる。  
「…クラッズ、本当に私のこと…好き?」  
真剣な表情で彼を見ると静かに彼がうなづいた。  
「当然、そうじゃなければあんなことしないよ」  
迷宮でしたことを思い出したのか彼が苦笑いを浮かべる。  
嬉しい、本当に嬉しい…だけど、私の心はどうしようもない不安で押しつぶされそうだった。  
「ねぇ…クラッズ、抱いて。本当に私が好きなら…私のこと…抱いてほしい」  
呪われた私が、彼に愛されているのだという証が欲しかった。  
彼の手を握りそう告げると、彼がもう片方の手で私の手を包んで耳元で囁く。  
「ホントに良いの?」  
どこか緊張した面持ちで告げる彼に首を振ってこたえると、そっと彼が私の顔に手を伸ばした。  
顔が彼に向かされて私の唇に彼の唇が触れる。  
また私の心を縛っている鎖が黒い影となって彼を覆っていくイメージがわきあがり体が震える。  
「う…あ…」  
怖い…彼を汚してしまう。  
そんな気持ちが湧き上がってくる。  
だがそんな私の気持ちを察したのか、彼が私の手を掴み、唇を離した。  
「いったろ?ディアボロス、君ごときの汚れじゃボクは汚せない」  
大胆不敵な笑みを浮かべ、クラッズが私を床に押し倒す。  
彼を覆う黒い影が彼によって引き裂かれる。  
「ボクが君を汚してやる」  
彼の言葉に胸がドキリと高鳴った。  
あの時は抵抗できたのに、今度は全く抵抗できそうにない。  
「さて、今度は抵抗しないんだね…、何も抵抗しないならこのまましちゃうけど良いの?」  
楽しそうに笑って彼が制服の上から私の胸を掴む。  
もどかしいような刺激が皮膚の下を通って私をくすぐる。  
ドキドキと心臓がどんどん高まっていく。  
「うん…私をクラッズで汚して…」  
私がそう言うと彼がどこか楽しそうに笑って口づける。  
呪いはもはや私を縛らなかった。  
 
彼の手が私の制服の隙間から潜り込んでくる。  
「ふっ…」  
これから自分がされることを想像すると、胸の鼓動がどんどん高まっていく。  
私はこれから汚される幾度となく繰り返した自慰をなぞるように彼に犯されるのだ。  
もぞもぞと自分の服の下で彼の手が動きまわっている。  
くすぐったいような感覚がざわざわと背中をかけぬける。  
「ふはぁ…」  
「ディアボロスの肌、スベスベしてて気持ち良いね」  
首筋を温かい感触がなぞりあげ、体が優しくさすられる。  
「ホント…?」  
「うん、汚すのがもったいないくらいだけど…。ドロドロに汚れたキミも見てみたい」  
笑いながらクラッズがプチプチとボタンをはずしていく。  
恥ずかしくて、顔が熱い、期待で胸の鼓動はどんどん早くなってうるさいくらいになっていた。  
「ああ…」  
全てのボタンをはずした彼がどこか嬉しそうにため息をついた。  
「ど…どう?クラッズに喜んでもらえる?」  
私の言葉に笑って彼が下着の上から胸に触った。  
「うん、すごく綺麗だよ…。ディアボロス」  
「うれしい…」  
彼の言葉が嬉しくて、涙が勝手に溢れてくる。  
「ディアボロスってホントは泣き虫だよね」  
そんな私の頭を撫でながら彼が笑う。  
「ちがうもん…泣き虫なんかじゃないもん」  
涙はボロボロと溢れて止まらない。  
「強がらなくて良い…、キミがどんな子だってボクが受け入れる。こんな血に汚れたボクで良ければ…いくらだって抱きしめてあげる」  
「クラッズは汚れてなんかないよ…」  
え?と彼が呟いた。  
「だって、あなたは優しいから…過去なんか関係ない。私にとってあなたはクラッズ、とても大切で…愛しい人」  
私の言葉に彼が笑う。  
「キミを好きになって…本当に良かった」  
パチンと彼が私の胸を覆う布をはずす。  
「それじゃ…触るよ…?」  
「うん…私にあなたを感じさせて…」  
耳元で囁くと、彼は優しく私の唇を奪った。  
 
 
彼女と唇を重ねながら、その唇を舌でこじ開ける。  
その行為に彼女は少し驚いた眼でボクを見ながらも、おずおずと自らボクの舌に自分の舌を絡めてくる。  
―すごく可愛い…―  
戸惑いながらも歩みよってくる彼女の姿は驚くくらいの可愛さに満ちている。  
「ふぅ…」  
マシュマロのようにやわらかな胸を優しく揉むとピクリと眉を震わせながら気持ち良さそうに声を漏らした。  
彼女の興奮を表すように小さな桜色の膨らみが少しずつ自己主張するように立ち上がってくる。  
彼女の胸を揉みながらボクはそっと膨らんだ突起を指で挟んだ。  
「ふぁ!」  
とたんに彼女が可愛らしく声をあげて体を震わせる。  
 
「敏感なんだね…ディアボロス…」  
ボクの言葉に彼女が顔を赤く染める。  
「クラッズにこうやってされることを考えていつもしてたから…」  
「え?」  
ボクの言葉に彼女は自分が何を言ったのか思い出し、沸騰してしまいそうなほど顔を真っ赤に染める。  
「いつもしてたって…何してたの?」  
彼女の突起を指で転がしながら彼女の耳元で囁く。  
「それは…」  
恥ずかしそうな彼女の表情がボクのイタズラ心をくすぐる。  
「いってよ…ディアボロス。言わないならやめちゃうよ?」  
少し強く彼女の乳首をつまんだ。  
「きゃふっ!言うから…言うから…もっと気持ちよくして…。最後まで私を汚すって約束して…」  
「いいよ…キミの中が一杯になるまで汚してあげる…」  
耳元で囁くと期待に体を震わせながら彼女は小さく呟いた。  
「オナニー…してました…クラッズにこうされることを思いながら。毎日寝る前…ずっと一人でしてました…」  
羞恥で体を震わせながら呟く彼女が愛おしい。  
「良く言えたね…偉いよディアボロス…」  
彼女の頭を撫でながら、濡れた彼女の下着に手を入れる。  
「あ…クラッズの手が…」  
「うん…優しくするね」  
「…うん」  
彼女のそこは驚くぐらいの湿り気を帯びていた、熱くトロトロとした感触をあじわうように、ボクは優しく彼女の入り口をなであげる。  
「ふぁ…、気持ち良い。…クラッズ…中の方も掻き混ぜて…」  
懇願するように呟く彼女にうなづいて熱いそこに指を差し入れる。  
「くふぅ…!」  
プルプルと彼女が肩を震わせる。  
「うわ…あつくて…キュウキュウだ…」  
彼女の中は異物であるはずのボクの指を逃がさないようにするかのように強く締め付ける。  
火傷しそうなほどの熱さのそこをボクはゆっくりとかきまぜた。  
「ああ…あああ…ああ!!」  
「ここだね?」  
「そこ…!そこ良い!!」  
彼女が強く反応したところを見つけ、そこを重点的に攻めるとガクガクと彼女が頭を縦に振った。  
彼女の額に汗が浮かび、プルプルと震えながら快感に耐える彼女の姿はとても綺麗で美しい。  
思わず、ボクは目の前で美味しそうに揺れる二つのふくらみにかぶりついた。  
「くはぁ!」  
ビクンと彼女の体が跳ね上がる。  
「だめぇ…クラッズ…このままじゃイっちゃうよ…。  
初めてはあなたのでイキたいの…早く…入れて、我慢できない」  
荒い息を吐きながら体を絶えず震わせる彼女の背中をなであげる。  
「わかった…痛いかもしれないけど…我慢してね…」  
コクコクと無言で彼女が首を縦に振る。  
ボクはズボンと下着を脱ぎ棄てて、パンパンに張ったそれを解放する。  
初めて見るボクのモノを彼女はうっとりとした眼で見つめていた。  
 
「クラッズの…これが私を…。私のことを貫くんだよね?」  
優しくボクのモノを触りながら彼女がどこか嬉しそうに笑う。  
「うん…覚悟してよ?」  
下着をずらして彼女のそこに押し当てながら言うと彼女が笑う。  
「いいよ…私の初めて…ズタズタにして…。私のこと…ドロドロに犯して…」  
彼女がボクの頬を撫でながら呟く。  
「じゃあ…いくよ…」  
彼女の腰を掴んで狙いをしっかり定めて腰に力を入れる。  
「来て…クラッズ…」  
ミシミシと音を立てながら彼女の中をボクが引き裂いていく。  
ぴったりとじた彼女の割れ目をこじ開けるようにボクのモノが彼女の中にのみ込まれていく、ざらざらとした彼女の膣壁と熱い彼女の中がボクの侵入を拒むかのように強く締め付けてくるのがたまらなく気持ち良い。  
「あ…ああ…クラッズが…入って…」  
引き裂かれる痛みをこらえながら彼女がボクの肩を掴む。  
中ほどまで埋まったところで、ボクのモノは薄い壁のようなものに止められた。  
彼女が穢れを知らぬ乙女である証、その証拠がボクのモノのすぐ目の前にある。  
「クラッズ…早く…このままじゃ…私…」  
何かをこらえるように彼女がボクの腰に手をまわした。  
「多分…痛いよ?」  
「いいから…早く来て…」  
「分かった…」  
焦るような彼女の声にうなづいてボクは勢いをつける為に腰を引く。  
そして彼女の腰を引き寄せながら、ボクは自分の腰をたたきつけた。  
「きひぃぃ!」  
ビクンと彼女が大きく震えて背中をそらせて体を震わせる。  
「ああ…駄目…」  
ビクビクと体を震わせながら彼女はしっかりボクの体を抱きしめる。  
ぐったりとした様子でボクにもたれかかる姿はまるで…。  
「もしかして、ディアボロス…今イった?」  
ぐったりと体を投げ出しながら彼女は恥ずかしそうに首を縦に振った。  
「ごめんなさい…我慢できなくて…入れられただけで…軽くイッちゃった」  
「痛く…なかった?」  
心配になって顔を覗き込むと彼女が静かに首を横に振る。  
「そんなに痛くない…むしろ…すごくうれしい…。私の中…クラッズで一杯なの」  
そう言いながら彼女が自分のお腹をそっと撫でる。  
ムクムクと自分のモノが彼女の中で更に膨らむのをボクは感じた。  
「ふぁ…クラッズ…おおきい…」  
「ごめん、ディアボロスの中が気持ち良いから…」  
彼女の中はボクのことを離さないかのようにキュウキュウと締め付けている。  
彼女自身の仕草も合わさって今にでも爆発してしまいそうだった。  
そっと繋がった場所を見ると、ボクを伝わって彼女が純潔を失った証がぽたぽたと床に落ちている。  
 
つられてそこをみた彼女はどこか恥ずかしそうに笑った。  
「クラッズので…私の広がってる…」  
「…だね」  
彼女の言葉にボクも笑った。  
ぴったりと閉じていたはずのそこは限界まで広がって根元までしっかりボクのモノを飲み込んでいる。  
「…大丈夫かな?」  
どこか不安そうに彼女がボクを見上げる。  
「何が?」  
彼女の頭を撫でながらそう言うと恥ずかしそうに彼女が呟いた。  
「クラッズの形に…広がったままになっちゃいそう…」  
そう言って彼女は再び自分のお腹を撫でる。  
それに合わせて彼女の中がキュッとボクのモノを締め上げた。  
「ごめん、ディアボロス動かすよ」  
たまらなくなってボクは彼女にそう告げてゆっくりと腰を引いた。  
「うん…くぁぁ…」  
ボクを離さないかのように絡みついてくる彼女の中を振り切るようにズルズルと引き抜いていく。  
「ふぁぁ…」  
入口まで引き抜き、中に沈めていくと今度はボクの侵入を拒むかのように強く押し返してくる、それを無理やり押しのけるようにして突きいれると先がコツンと彼女の一番深い場所に当たった。  
「はぁ…はぁ…」  
「痛い?ディアボロス?」  
肩を震わせながら荒い息を繰り返す彼女のそう告げると彼女が首をブンブンと横に振った。  
「すごく…気持ち良い。もっと早くても大丈夫、だから来てクラッズ。もっと…私を気持ちよくして…」  
彼女の言葉がボクの理性を狂わせる。  
「分かった…。それじゃ、激しくするよ…」  
しっかり彼女の腰を抱きしめ、先ほどよりも激しく抜き差しを繰り返す。  
彼女の中を削り落とすように、時折円を描くように動かしながら腰を振ると、彼女が可愛らしい悲鳴を上げた。  
「すごい…こんなに…私の中でクラッズが。もっとほしいよ…もっとはやく!」  
ボクの腰に手をまわしながら彼女が耳元で荒い呼吸を繰り返しながら懇願する。  
それに合わせて動きを早くするたび、彼女の胸がプルプル震えていた。  
「ん…!」  
その先を口に軽く含んで噛むと、彼女の中が締まる。  
それに気を良くしたボクは彼女の中を味わいながら時折彼女の胸をはむ。  
最初は抗議するようにボクを見ていた彼女も次第に快感をこらえる事に必死なのか目を閉じて体を震わせ、あえぎ声を上げ続ける。  
静まり返った夜の室内に彼女の声と濡れた水音、腰がぶつかりあう音が響く。  
 
「クラッズ…もう…駄目…。飛んじゃう…イッちゃう!」  
額に玉のような汗を浮かべながら彼女が首をふる。  
「ボクも…無理…」  
ボクも既に限界に近かった、複雑に絡みついてくる彼女の中は絶えずボクを締め付けて、今までに感じた事のない快感を与えてくれる。  
ラストスパートをかける為にボクは彼女を組み敷いて彼女の腰を完全に固定する。  
ボクも限界に近いと察した彼女は足をボクの腰に絡めて小さくうなづいた。  
それにボクもうなづいて、もはやなんの手加減も無しにむちゃくちゃに腰を打ち付ける。  
「あー!あー!」  
言葉を忘れてしまったように髪を振り乱しながら彼女が快感に打ち震える。  
「う…くっ!」  
そして、ついに腰にたまったそれに耐えきれずボクは彼女のもっとも深い場所に腰を打ちつけ、自分の欲望を解放した。  
 
「ふぁぁぁ!!」  
同時に彼女の悲鳴を上げビクビクとその体が背中をそらせて痙攣する。  
体の熱を彼女に奪われていくような、満足感に包まれながらボクはドクドクと彼女の中に全てを注ぎ込む。  
「あったかい…私の中が…クラッズで汚されてく…」  
どこか夢見ごごちな表情で彼女は嬉しそうにそうわらった。  
 
 
 
「ごめんね、激しくして、せめてベッドが良かったよね?」  
どこか申し訳なさそうに頭を掻きながら彼が笑う。  
「ううん…クラッズに汚されたかったから、場所なんてどこでも良いの…」  
渡されたシーツで体をくるみながらそう言うと、彼が恥ずかしそうに頬を掻く。  
自分の中にまだ残る彼の熱が、自分が彼に汚されてしまったのだということをおしえてくれて、とてもうれしい。  
私の中に放たれた彼の精液は次第に体にしみこんでいくように広がっていく感覚があってどこか気持ちよかった。  
「私にとても気持ち良い初体験を味あわせてくれてありがとう…大好き、クラッズ」  
彼を抱きしめて頬にキスをすると、彼が笑う。  
「ボクも君が好きだよ、ディアボロス。大好きだ…」  
そう言いながら彼が頬にキスした私の顎を掴んだ。  
少し強引な彼の行動に驚くが素直に私は受け入れて彼と舌を絡ませる。  
たったそれだけのことなのに頭が溶けるくらい気持ち良い。  
頭がくらくらとして、だんだん何も考えられなくなっていく。  
「クラッズ…まだ…できる?」  
胸がどうしようもなくうずいてしまい、彼に懇願するように私は彼の胸に頬を擦り寄せる。  
「まだ、汚されたい?」  
彼はそんなふうに甘える私の頭を撫でながら優しく笑う。  
「うん…」  
彼は自分を人殺しだなんて言っていたけど、そんなことなんかどうでも良い。  
私で彼が気持ちよくなってくれるなら、彼と気持ち良くなれるなら、この身の全てを汚されたい。  
「それじゃディアボロス、次はベッドでしよう?」  
「うん、私のこと…もっとクラッズで汚してね」  
耳元で囁く彼にそう言って笑う。  
そんな私の言葉に応えるように彼は静かに私をベッドに押し倒した。  
破瓜の血と精液で汚れてしまった下着を脱ぎ棄てて、彼に見せつけるように自分のその部分を開くと、とろりと彼の精液がこぼれ落ちる。  
「あ…出ちゃった…」  
折角彼が注いでくれたものがこぼれ落ちるのを見て、思わず呟いた私に彼が笑う。  
「大丈夫…」  
そういって彼が私に自分を押し当てた。  
 
「お腹いっぱいになるくらい、たっぷり注いであげるから」  
「はぁっ…!」  
言葉と共に彼が私の壁を割り開いて、私の中に入ってくる。  
背中をなんともいえない快感が走り抜けて、思わず口から吐息が漏れた。  
目を閉じて快感に震えていると、耳元に彼の声が響く。  
「気持ち良い?」  
「…うん、おなか一杯に…クラッズを感じる…」  
彼の鼓動が、彼の熱が、彼の想いが一つになった部分から伝わってきて心の中が満たされていく。  
体全体が満たされる感覚で頭がとけそうになほど気持ち良い。  
「それじゃ、今度は最初から強めに行くからね?」  
「うん、きて、一杯気持ちよくして…」  
言葉と共に彼が動き出す。  
やってくる快感をもはやこらえず私は大きな声で喘ぐ。  
私達は何度も何度も交わる。  
繰り返すたびに私の中が温かい彼のもので満たされていく。  
私の体の奥深くが彼で汚され、その熱が体全体に染みわたっていく感触が心地いい。  
私の中がほぐされて、彼の体になじんでいく。  
私の中が溢れるくらいに交わって、ようやく私達は眠りにおちた。  
 
ドラッケン学園の食堂にいつも通りのメンツで座る。  
セレスティアが座って向かい側にフェアリーが、バハムーンが座ってその向かいにマフラーを巻いたフェルパーが、そしてボクの向かいに、ディアボロスが座って食事をする。  
いつもと変わらない光景だが、その中の僕らの関係は確かに変わっていた。  
 
「クラッズ…ご飯粒、ほっぺについてる」  
「え?ホント?」  
もぐもぐと食事をとっている時に彼女に言われ、取ろうとするがそもそもどこにあるか分からない、苦戦しているボクを見ると、ディアボロスがクスリと笑って立ち上がった。  
生温かい感触が頬に触れ、彼女がそっと座り直す。  
「はい…とれた」  
「…ありがと、ディアボロス」  
そんな僕らを見ながら他の3人かどこか恥ずかしそうに笑っていた。  
「…私、前にアレと似たようなことバハムーンにやったな…。  
アレ、傍目に見せられるとこんな恥ずかしいことなのか…」  
フルフルと肩を震わせながらフェルパーが羞恥で顔を染める。  
「獣殿、君がやったのは、“はい、あーん”だ。君たちのは恋人同士のそれだが、彼らのアレはもはやそのレベルを超えているよ」  
珍しく、どこか恥ずかしそうなフェアリーがボク達二人を見ながら呟いた。  
「まぁ、あれはもはや新婚の夫婦みたいなものですね…」  
たった一人、素知らぬ顔で食事を続けるセレスティアがそういって笑うと、ディアボロスが何かを思いついたようにニヤリと笑った。  
「新婚…ねぇ、クラッズ」  
「なに?ディアボロス?」  
楽しそうな彼女につられてボクも思わず笑顔がこぼれた。  
「デザートは…私にする?それともワタシにする?それとも、わ・た・し?」  
ディアボロスの発言に、バハムーンがお茶を吹きだしてゴホゴホとむせた。  
「だ、大丈夫か?」  
「大丈夫だ、すまないフェルパー」  
何やら苦しんでいるバハムーンを無視して恥ずかしさをこらえながら、ボクは立ち上がって彼女のことを抱き寄せる。  
「それ、全部君じゃないか」  
「嫌?」  
ボクを上目づかいに見上げる彼女にボクは笑って答える。  
「あとでじっくり食べさせてもらうよ?」  
「…うん」  
クスクスと彼女が笑う。  
彼女はだいぶ明るくなった、今までのどこか皆と距離を置いているような彼女ではなくて、等身大の彼女で接している。  
だからそんな彼女が愛おしくてボクは彼女にキスをする。  
みんなに囃したてられながら、彼女はとてもうれしそうに笑った。  
 
 
薄暗い洞窟に集まった数人の影が揺らめいている。  
その誰もが空を見つめ、かけていく太陽を眺めていた。  
「約束の時は近い…」  
威厳のある声でディアボロスの男がそう告げると彼を囲む人間が恭しく頭を下げる。  
「お前たちの力を見せてもらおう」  
『闇の生徒会の名にかけて…』  
彼らは笑う、自分たちを認めなかった者たちへの復讐を誓って。  
 
 
 

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