ドラッケン学園、数々の冒険者を生み出してきた学園
歴史あるその学園の片隅に、ひっそりとその場所は存在していた。
まるで牢屋を思わせる薄暗いその場所を黒い羽根をはやしたセレスティアの女性が歩く。
コツコツとヒールと石の床がぶつかって静まり返ったそこに音を響かせる。
どこかを目指すように歩いていた彼女が目的の場所にたどり着くと、その音が不意にやむ。
代わりにジャラジャラと金属がこすりあう音が彼女の視線の先で鳴った。
「これで何回目かしら?」
目線を合わせるようにしゃがみこんでセレスティアの女性、カーチャは呆れたようにその人物を見る。
「確か5回目だったか?」
ジャラリと両手に鎖をつけられたその人物は楽しそうにそう笑って答えた。
「いいえ7回目よ、貴方自分がなんて呼ばれてるか知ってる?」
カーチャの言葉に、その人物は愉快そうに笑って答えた。
「確か…“狂犬”だったか?なかなか愉快な名前じゃないか」
くすくすとその名前を喜ぶかのように暗闇の人物が笑う。
「オイ、カーチャ、煙草くれないか?丸三日吸ってないせいかどうも調子が上がらねぇ…」
「…全く、仕方ないわね」
そう笑って、カーチャは煙草とライターをその人物に手渡す。
暗闇の人物はそれを受け取ると実にうれしそうにその煙を吸い込んだ。
「ああ…生き返るな、やっぱ俺はこいつが無いと始まらねぇ…」
そんな人物を見ながらカーチャは手足の鎖の鍵をはずす。
「はい、あんまりシュピール先生を困らせちゃだめよ?」
子供に注意するようにカーチャが笑うとその人物も愉快そうに笑った。
「あとでまた謝っておくよ、にしても、ん〜やっぱ鎖が付いてないってのは良いことだな」
固まった体をほぐすように伸びを始めるその人物をカーチャが見つめて笑う。
「それと…女の子なんだから、その口調はやめた方がいいわよ」
窓から差し込む灯りがようやくその人物の姿を浮かびあがらせる。
「はは…!悪いな、もうこの口調でなれてるから今更変える気なんかねぇよ」
まるで男性のよう口調で答えながら、狂犬と呼ばれた白髪のフェルパーの少女は獣のように口をゆがめて笑うのだった。
たった3日懲罰房にいただけなのに校舎の中を歩くのは久しぶりな感じがする。
「にしても…」
ちらちらと自分を見つめる視線に“彼女”はつまらなそうに顔をゆがめる。
「ほんとかったるいぜ…」
また、俺の噂でもしてるんだろう、内容はどうせ碌なことじゃないだろうと、簡単に想像がついて彼女は毒づく。
―話があるなら面と向かって言えっつーの―
煙草を咥えて火をつけながら彼女は久方ぶりのまともな食事のために食堂に向かって歩みを進める。
「あー!学内は禁煙って何回も言ってるじゃないですか!!」
そんな彼女に向かってそう叫びながら一人のフェアリーが走ってくる。
つまらなそうにしていた彼女はその人物を見つけると少しうれしそうに顔を緩ませた。
「おう、シュピールセンセ、元気にしてたか?」
彼女の頭に手を置きながら彼女はニヤニヤとした顔で笑う。
「シュピールセンセ、じゃないですよ!なんど言ったらフェルパーちゃんは先生の言うこと聞いてくれるんですか!?」
プンプンと子供のように頬を膨らませながら怒るシュピールを見ながら彼女、フェルパーは楽しそうに笑った。
「はいはい、それと、心配かけて悪かったな」
少しも悪びれた様子を見せずフェルパーはシュピールの頭をわしゃわしゃと撫でた。
狂犬、そう呼ばれる彼女に対しても自分の生徒の一人としてわけ隔て無く接するシュピールは彼女が心を開いている数少ない人物の一人だった。
「まったく…今回の喧嘩の原因はなんだったんですか?」
ぐちゃぐちゃにされた髪形を直しながらシュピールが彼女と隣り合って歩く。
「あん?いや別に、なんか群れて気にくわねぇことをやってやがったからうぜぇと思って殴り飛ばした、んでちょいとやり過ぎていつもんとこ、さすがに骨を折ったのは失敗だったな」
けらけらと自分が懲罰房に送られる原因となった喧嘩を思い出しながらフェルパーが笑う。
「全く…フェルパーちゃん、ホントは優しいのに、そうやって悪ぶるから勘違いされちゃうんですよ?ホントは今回のことだって、苛められてる子を助けたのが原因じゃないですか…ただでさえ女の子なんだからおしとやかにしないと好きな人ができた時大変ですよ?」
大人びた表情で呟くシュピールを見ながらフェルパーが苦笑する。
「別に良いんだよ、他人が俺をどう思うかなんてな、俺は自分のやりたいようにできればそれでいい」
がらりと、食堂の扉をあけると、彼女の姿を見た食堂の人間が一斉に黙る。
―あーウゼェ…―
視線を一身に浴びながらフェルパーは黙ってメニューを確認する。
「フェルパーちゃんは決まりました?」
「んー、B定かな?今あんま金ねぇし」
冒険者を目指しながらも、孤高であり続けるゆえの金欠に悩みながらフェルパーはそれなりのメニューに目をやる。
「奢りましょうか?先生ですし」
「いんや、やめとく、カーチャにでも使ってやれよ、お前あいつ好きだろ?」
「いやぁ…まぁ…それなりに…優しいですしね、てかフェルパーちゃん、先生はちゃんと先生って呼ばないとだめですよ?」
「あ〜はいはいわかったっての…」
注意するように言うシュピールの言葉にフェルパーは、はいはいと適当に答える。
長くなりそうな話を適当に聞き流しながら、フェルパーは食堂の人間に自分の食事を頼むのだった。
「久しぶりだな、フェルパー」
シュピールと食事を終え、一人残ったフェルパーが今日は何をするか考えていると彼女に声をかける人物がいた。
「またお前か…何の用だよ…」
椅子に寄り掛かりながら彼女がそう言うと彼女の向かいに声をかけてきたバハムーンの少年が座る。
「いつものことさ、俺のチームに入ってくれ、フェルパー」
「またかよ…」
バハムーンの少年の言葉にフェルパーは嫌そうに顔をゆがめた。
「俺はどこにも所属するつもりはねぇよ、飼い犬になるのはごめんだね、かったりぃし」
煙草に火をつけ、その煙をバハムーンに吐きつけながらフェルパーがそう告げる。
「変わらないな、どうしたらうちのチームに入ってくれる?」
幾度となく繰り返された会話にフェルパーはやれやれと肩をすくませた。
「テメェが俺と戦ってくれて、俺に勝ったらかんがえてやる」
「あいにくと、俺は女とは戦わない主義だ」
彼女の言葉に、バハムーンがいつもの言葉を返す。
「んじゃ、無理だな、あきらめろ、つかなんでお前は俺にそんなにこだわるんだよ」
灰皿に煙草の灰を落としながらフェルパーは頬杖をついてバハムーンを見る。
「だから何度も言っている、お前ほどの腕を持つ格闘家はそうそういない、俺のチームにぜひ欲しい逸材だ」
「逸材ねぇ…」
真顔で自分を見つめるバハムーンに呆れたようにフェルパーが呟く。
「…真剣だぞ?」
「分かってるっての、だが俺は弱いやつに従う気はねぇ」
それだけ言ってフェルパーは話は終わりだと言わんばかりに立ちあがる。
「どこに行く?」
「トイレだよ、女にわざわざ聞くなっての」
呆れたように笑ってひらひらと手を振りながらフェルパーは食堂を去る。
後にはぽつんとバハムーンだけが残された。
フェルパーが立ち去り、またにぎやかに鳴り始めた食堂で、バハムーンの向かいに黒い髪のフェアリーと狐を模したお面を頭につけたクラッズの少年が座った。
「どうやら、また振られてしまったようだね、リーダー殿」
まるでおとぎ話の魔術師のような格好をしたフェアリーが笑う。
「本当に残念だ…なぜあいつはこうも俺を拒絶する」
はぁと大きくため息をつきながらバハムーンは肩を落とした。
「ま、彼女は極端に自分を見下されることを嫌ってるからね、バハムーン彼女より背、高いし、あんまり好ましく思われてないんじゃない?」
遠まわしに嫌われていると言われ、バハムーンが更に落ち込んだ。
「…なぜだ、俺はこれほどまでにあいつを欲しているのに…」
「…うむ、実に意味深なセリフだね、この場に彼女がいなかったことを喜びたまえリーダー殿、もし彼女に聞かれていたら平手の一発、いや拳の一撃はされても仕方ない」
芝居がかったような口調で大仰に肩をすくめながら笑うフェアリーにバハムーンが首をかしげた。
「どこか今の俺のセリフにおかしなところはあったか、クラッズ?」
「バハムーン、君は変なところで馬鹿だね、男性が女性に対して欲してるとか言ったら間違いなくそれはヤリたいと言ってるみたいなものでしょ?」
まるで年下に言い聞かせるようにクラッズがバハムーンを見る。
「…」
その言葉になぜかバハムーンが黙った。
「え?まさか…バハムーン?」
「うむ…なんとなく想像はしていたがね、やはりリーダー殿が彼女に執着していたのは彼女自身に興味があったからか」
不思議なものでも見るようなクラッズとは対照的に、納得がいったというような表情でフェアリーがうなづく。
「…男が女を好きになって何が悪い…」
微妙に顔を赤くしながらバハムーンが呟いた。
「…マジで?相手はあの“狂犬”だよ?」
確認するかのようにクラッズがバハムーンに言う。
「美しいじゃないか、孤高であり、気高いそして何よりあいつは可憐だ」
真面目な顔で呟くバハムーンにクラッズが少し引く。
だがフェアリーは目を閉じながら静かにうなづく。
「うむ、その言葉には賛同しよう、多少口調に問題はあるが容姿の面では確かに美しい」
「分かってくれるか…フェアリー…」
「美しいものはたとえどんなものであっても認められるべきだ、リーダー殿にそれを見る目があったことに私は好ましく思っているよ」
がっしりと彼の手を握りながらバハムーンが首をふる。
「ま、口調さえアレじゃ無ければ確かにきれいかもしれないけどね…」
クラッズも彼女の姿を思い出しながら、小さく呟いた。
事実、彼女は確かに美しい、容姿は淡麗であるし、スタイルはかなり良い方だろう、だがそれでも彼女は彼女なのだ。
一人称は俺、口調は完全に男、狂犬と呼ばれる由縁となった伝説は計り知れない。
曰く、武装した三人の男を素手で倒した、曰く、気に入らないという理由で一人の生徒を半殺しにした、その手の話題はいくらでも聞ける。
多くはおひれのついた噂だろうが、いくつかは真実である証拠に彼女は懲罰房と呼ばれるところに何度か送られていた。
「フェルパー…なぜ俺に振り向いてくれない…」
「…いや、いきなりマジすぎるよバハムーン」
ため息をつくバハムーンをクラッズは奇妙なものを見る目で見る。
「ふむ…リーダー殿…私に考えがあるのだが…少し聞いてみないかね?」
「聞こう、名案があるのか?」
「うむ、私に任せたまえ、リーダー殿、配役に少々問題はあるが脚本は一流の私だ」
何やら思いついたように笑うフェアリーをどこか疲れた目でクラッズは見つめるのだった。
トイレと称して食堂を抜け出したフェルパーはあても無く校舎をブラついていた、ビーストと格闘家どちらの単位も獲得し終わっている彼女はわざわざ授業に出る必要もない、強いて言えば彼女は暇なのだ、ブラブラと歩きながら、彼女はふと自分のことを追い続ける気配に気づく。
―どうやら、俺をつけてるみたいだな…―
どこかで、また俺を気に食わない連中がまだ居るんだろう、そんなことを思いながらフェルパーは屋上を目指す。
―多少のストレス解消にはなりそうだな…―
煙草を口にくわえながらフェルパーは楽しそうに顔をゆがめた。
戦うことは嫌いではなかった、むしろあの生と死が入り混じった感覚は彼女が最も欲するものである。
―懲罰房に入ってた間にたまったストレス解消には最適だな―
ガチャリと屋上の扉を開け、その中心に進んで彼女は背後の気配に声を投げかける。
「そろそろ姿見せろよ、テメェらも、隠れ続けんのは飽きただろ?」
振り返りながら彼女が笑うと、剣を持った4人の人影が出口を塞ぐように現れる。
「久しぶりだな“狂犬”懲罰房の暮らしはどうだった?」
リーダー格と思われるディアボロスの少年がそう言うとフェルパーはにやりと口の端をあげた。
「退屈だな…俺には生きるか死ぬかその瀬戸際に立って戦うのが一番の楽しみなんだ」
鋭くとがった爪をなめながらフェルパーが笑う。
「この間のオトシマエつけさせてもらうぞ」
正直この前のオトシマエと言われても心当たりがあり過ぎて思いつかない。
武装した4人を目の前にしながらも彼女は笑っていた。
「悪いが…手加減はできねぇぜ?」
獣のように笑いながらフェルパーが構える。
「いくら“狂犬”とて4人がかりに勝てると思うか?」
「うだうだいってねぇでかかって来いよ…多少は楽しませてくれや」
手招きして笑うとその挑発に乗るように4人が彼女に襲いかかる。
「くはっ!」
振り下ろされる剣を踊るように回避しながら楽しそうにフェルパーが笑った。
「おせぇ!」
自分に襲いかかってきたヒューマンの頭を掴んで屋上の床にたたきつける。
ゾクゾクと背中を駆けあがる快感にフェルパーは体を震わせた。
「くはは…くはは!!」
何がおかしいのかフェルパーは腹を抱えて笑いだす。
「やっぱ…良いなこうやって、命を狙われると…生きてるって感じがするぜ…」
奪い取った剣を握りながらフェルパーが自分の唇をぺろりとなめる。
―楽しませてくれよ?―
心の中で呟きながらフェルパーは走った。
殺すつもりで振り下ろされた剣を紙一重で避けながら、自分を切ろうとした少年の腹を手加減なしに蹴り飛ばす。
吹き飛ぶ少年を見ながら背後に回り込んだ少年の剣を弾き飛ばす。
金属がぶつかり合う音を聞きながらフェルパーは笑い声をあげた。
「どうしたクソガキ!?そんなんじゃたのしめねぇよ、もっと俺をたのしませろよ!!」
襲いかかる剣をかわしながらフェルパーが笑う。
「くそ…」
倒れた仲間を見降ろしながら、リーダー格の少年がフェルパーを睨んだ。
彼の背丈は、彼女より少し高い。
「調子に乗るなよ狂犬!」
振り下ろされた剣がフェルパーの剣を弾き飛ばす。
「おっと…」
へらへらと笑いながらフェルパーがリーダー格の男を見た。
「女の分際で、男にかなうと思うのか?」
にやりと彼女を見下すように少年が笑う。
その瞬間、フェルパーの纏っていた気配が変わった。
「…ぇ」
それは決して触れてはいけない、彼女の逆鱗に触れる行為。
「…何?」
フェルパーの呟きにその男が首をかしげた。
聞き取れなかった、ただそれだけであったのに、それがより彼女の苛立ちを増幅させる。
再び顔をあげた少女の眼に宿るのは純粋な敵意。
「俺を…見下してるんじゃねぇ!!!」
拳を握り、獣のように目が光る。
「な…!」
少女の豹変にリーダ格の少年が一瞬怯んだ。
それを彼女は見逃さない。
先ほどまでとは比べようもないスピードで一気に詰め寄り、少年の無防備な腹に拳を叩きこむ。
「がっ…!?」
大きく体がくの字に曲がり、少年が腹を押さえてよろめく。
その少年の頭を掴みフェルパーは膝を顔面にたたき込んだ
「俺を見下すな!俺を…勝手にみるんじゃねぇ!!」
「がっ!ぐっ!ぐはっ!」
もはや戦意を失っている少年をフェルパーは何度も何度も打ちのめす。
気を失って倒れた少年をまるでごみを捨てるかのようにフェルパーは投げ捨てる。
屋上を誰かが駆けあげってくるのが聞こえる。
よく見ると屋上に倒れている少年の数は3人、1人たらなかった。
「…」
無言のままにフェルパーは屋上の扉を睨む。
勢いよくそれが開け放たれ更に6人の少年が駆けこんでくる。
「狂犬…テメェ…!」
倒れ伏した3人を見て、少年たちが剣を抜いた。
その少年たちをフェルパーが冷酷な目で睨みつける。
「…オイ…」
ジャリ…フェルパーが静かに男たちに向かって歩き出す。
「てめえら…俺を見下してるんじゃねぇよ…」
静かに拳を握りながらフェルパーの少女が駆けだした。
「…というわけだが?どうかなリーダー殿?」
大仰に両手を開きながらフェアリーが話を締めくくる。
「…なるほど、つまりいっそ開き直れと」
長々しかった話を聞き終えたバハムーンは静かそう言ってうなづいた。
「…どうやらリーダー殿には風情や感性と言ったものが無いようだ」
どこか不満そうにフェアリーが呟く。
「いや、バハムーンにそう言うことを求めた君が悪いそれより…」
ほとんど空になったお茶を飲みながらクラッズが横目でそれを見る。
「何かずいぶん騒がしくない?」
何やら剣呑な雰囲気を纏ったやつらが集まって何やら話をしていた。
「…確かに…何かあったのか?」
ようやくそれに気づいたバハムーンもいぶかしむようにその人物たちを見る。
「結構、大変なことになってるみたいですよ?」
「また、狂犬さんが暴れてるみたい」
青と赤、白と黒、対照的な雰囲気を纏ったセレスティアとディアボロスの少女がそんな彼らに声をかけた。
「おやおや…セレスティア…今日も君は美しい…その美しさを私一人のものにできないだろうか?」
おお、と大仰に頭を押さえながらフェアリーがそう言ってセレスティアの手を取る。
そんな彼を見ながらセレスティアはクスリと笑った。
「いつも通りですね、フェアリーさん」
「ああ、私は常にいつもどおりさ、いつも通り、君がどうしたらボクに振り向いてくれるのか考えている」
芝居がかった口調と動きを続けるフェアリーを無視し、バハムーンは静かにディアボロスを見た。
「また…アイツが暴れてるだと?」
「ええ…どうやらそうみたい、ここに来る前にちょっと小耳にはさんだれべるだけど、なんか彼女完全にキレちゃってるみたいね、誰かが彼女の逆鱗に触れちゃったそうよ」
「…それはマズイね、つい先日は懲罰房で済んだけど…あまり暴れてしまうと今度こそ退学になっちゃうかもしれない…」
クラッズがそう呟くとバハムーンがガタッと立ちあがった。
「ディアボロス、フェルパーはどこだ!」
「屋上…止めるつもりなら急いでいきな、多分間に合わないけど…先生たちは…私とクラッズで何とかするよ」
ディアボロスの言葉にクラッズがうなづく。
「お前たち…」
自分のチームのメンバーを見ながらバハムーンが小さく呟いた。
「…何をしているのだね?リーダー殿、先を急ぐのだろう?ここでおしゃべりしていて良いのかね?」
「フェアリーさんに笑われていますよ?リーダー?」
「…あとは任せた」
それだけ言ってバハムーンが食堂をあとにして屋上を目指して駆けだした。
「フェルパーさん私達のチームのメンバーになってくれると良いですね」
そんな彼を見送りながらクスリとセレスティアが笑う、同じ様にフェアリーもクスリと笑った。
「なに、私と君の考えた物語だ役者はすこし粗暴だが、きっとうまくいくだろう」
「…ん?どういうこと?」
首をかしげるクラッズとディアボロスにフェアリーが笑う。
「つまりこういうことさ…君たちもうその辺で良い、ご苦労だった」
パチンとフェアリーが指をならすと食堂の隅で剣呑な雰囲気を纏っていた少年たちがやっと終わりか、といった表情でフェアリーのところにやってくる。
「おーい、カントクー、屋上の奴らはいつ回収するんだ?」
のんきな顔でそう笑う少年にフェアリーが笑う。
「リーダー殿とフェルパーの決着がついたら適当に回収しておいてくれたまえ、あとで私から直接報酬を支払おう、とりあえず、これが君たちの分だ」
ごそごそとローブの中から金貨の入った袋を取り出すと、そう言って彼らに投げ渡す。
「怪我してる人は後で私とカーチャ先生で治療しますから、悪い人達役の人達に治療費は気にしないように言っておいてください」
「はいよー」
ひらひらと去っていく少年たちをクラッズとディアボロスがポカンとした表情で見つめている。
そして少年たちがいなくなると、入れ替わりにカーチャとシュピールの両先生が並んではいってきた。
「どうやらうまくいきそうね?」
くすくすと笑いながらそう言ってカーチャが席に座る。
「あとはフェルパーちゃんとバハムーン君がどうなるかですね〜」
のんびりと机に体を投げ出しながらシュピールが笑った。
「…信じられない…まさか今までの全部ウソ?」
「…え、マジで?」
ようやく気付いたディアボロスの言葉にクラッズが驚いた表情を浮かべる。
「ウソ等では無い、あまりにも彼の行動がもどかしいのでね、私とセレスティア、さらにシュピール先生とカーチャ先生にも協力していただいて一芝居打っただけだよ」
けらけらと笑いながらフェアリーがお茶を飲む。
「君さっき驚いてたじゃん」
クラッズがフェアリーにそう言って首をかしげる。
「世の中には監督と主役が同じ映画もあるのだよ、クラッズ、私も役者を演じる以上その程度の演技は心得るさ」
フェアリーの言葉にクラッズはやれやれと肩をすくめる。
「それにしてもリーダー、フェルパーさんに勝てますかね〜」
セレスティアはそんな彼らを見ながらくすくすと笑っていた。
「心配無いでしょう、確かにビースト学科と格闘家学科マスターしてるフェルパーちゃんは強いですけどバハムーン君十分強いですし」
のんびりと寝そべりながらシュピールが笑う。
「少しは、これで彼女もおとなしくなってくれるといいわね、懲罰房、私は何度も行きたくないもの、あそこ気味悪いし」
くすくすとお茶を飲みながらカーチャも楽しそうに笑う。
「…はぁ、後で二人にばれても知らないよ?」
呆れたようにクラッズは呟いて、お茶のお代わりを取りに行く。
「あ、ごめんクラッズ、私の分もお願い」
「ん、ディアボロスは温めだよね?」
「うん…猫舌だから」
はいはい、とクラッズは笑い、リーダーたちはどうなるのかな?などとクラッズは新たに仲間になるかもしれない少女のことを思いながら、やれやれと小さく呟くのだった。
「…オイ、もうだれも向かってこねぇのか?」
屋上に伸びた9人を見降ろしながらフェルパーはそう呟いた。
だが、そんな彼女の声に応えるものは誰もいない。
「ちっ…!」
舌うちしながらフェルパーは煙草を取り出し火をつけた。
立ち上る紫煙を見ながらフェルパーはぽつりとつぶやく。
「…今度こそ、退学かな…アイツとも、もうおさらばだな…」
煙草の煙を吐き出しながら、何度も自分をチームに誘ってきたバハムーンの少年を思い出しフェルパーは呟く。
―結局、最後までやりあえなかったか…―
退学になる前に一度ぐらいアイツと戦いたかった、そんなことを思いながらフェルパーは煙草の灰を地面に落とす。
次の煙草を取ろうとして、彼女は煙草の箱が空であることに気づく。
「ちっ…」
空になった煙草の箱を握りつぶし、背後に投げ捨てる。
「ああクソ…」
煙草が無いことでちょっとした苛立ちがやってくる。
「おいフェルパー」
不意に、声がかけられ何かが宙を舞って自分に飛んでくるのに気付き、彼女はそれを空中でつかんだ。
「確か…そいつでよかったよな?」
開いた屋上から現れた見覚えのある顔にフェルパーが笑う。
「ああ、サンキュ…」
手の中の新しい煙草の箱を開け、煙草を口にくわえながらフェルパーが笑う。
そのまま煙草に火をつけると、バハムーンが彼女の隣の地面に腰を下ろす。
背の高い彼が彼女に合わせるように、むしろ彼女よりも頭が下に来るように座るのを見て、フェルパーは笑う。
「なんだ、俺の下着でも見たいか?」
くすくすと笑いながらフェルパーは煙草の煙を吐き出す。
彼が自分のことを思ってそう座ったのには気づいていた。
「…見て良いならな…」
「…アホか」
真顔でそう言ったバハムーンにフェルパーがいつもの表情で返す。
「ずいぶん暴れたみたいだな…」
屋上に倒れ伏した男たちを見ながら、バハムーンがフェルパーを見上げる。
「まぁな…、馬鹿が俺のこと見下しやがったからついつい、いつもより暴れちまった」
自嘲気味に呟いたフェルパーにバハムーンが笑う。
「…満足か?」
「…いや、どうも微妙だな…これでしまいになるかもしれねぇかと思うと、お前とやり合ってみたかったよ」
まるで退学が決まったかのように話すフェルパーにバハムーンがふと呟いた。
「…退学にはならん、フェアリーたちがうまくやってくれるだろ」
まさかそのフェアリーにたばかられている等とは知りもしないバハムーンがそう呟く。
「なぁバハムーン、どうしたらお前は俺と戦ってくれるよ…」
煙草の灰を落としながらフェルパーはぽつりとつぶやいた。
まるで、恋をする乙女のように…
「…そのことだが、お前がある条件をのんでくれるなら…戦ってやっても良い」
「あん?」
予想外のバハムーンの言葉にフェルパーは思わずバハムーンを見た。
「条件って何だよ?」
首をかしげるフェルパーをバハムーンが少し楽しそうに見つめる。
「俺が勝ったら、俺の女になってくれ、それで俺の女として…チームに入ってくれ」
「は?」
予想外のバハムーンの言葉にフェルパーの手から煙草が落ちる。
「ん?お前の女になれって…お前まさか…」
「ふむ、端的に言おう、抱かせろ、そして俺の彼女になれ」
きっぱりと言い切ったバハムーンの言葉にフェルパーの顔が朱に染まる。
「はぁ!?お前頭わいてんのか!?俺は“狂犬”とか呼ばれてるんだぞ?口調もこんなんだし、そんな奴に抱かせろとか…」
「だが、良い女だ、それも特別上等な女だ」
真っ赤な顔をしたフェルパーをバハムーンは楽しげな眼で見つめ、視線を合わせるように立ち上がる。
パクパクと口を開くフェルパーにとどめを刺すようにバハムーンはその言葉を告げる。
「好きだ、フェルパー」
「…良し分かった、その条件飲んでやる…」
顔を真っ赤に染めたまま、フェルパーがそう言って笑った。
「俺が負けたら、好きにしろ…条件どおりお前の女になってやる」
尻尾を振りながらフェルパーが楽しそうに笑う。
「ただし…俺が勝ったら、今後一切俺に声をかけんなよ?」
「ふむ…それは負けられんな…ぜひともお前の恥じらう姿を見てみたい」
にやりと笑うバハムーンに、フェルパーが煙草に火をつけ笑う。
「ぬかせ、その笑い顔止めてやんぜ…」
くるりと回って距離をとり、フェルパーが拳を握って構える。
それに合わせてバハムーンも拳を握って構えた。
「今夜が実に楽しみだ!」
「夢は眠ってから見るんだなバハムーン…!」
ジャリ…と床を踏みしめながらフェルパーが煙草を吐き捨てる。
そして二人は同時に駆けだした。
「はっ!」
「せいっ!」
体全身のばねを使って放たれたフェルパーの突きをバハムーンは円を描くような動作で受け流す。
あっさり初撃を受け流されたフェルパーは楽しそうに唇を舐めながら腹を狙って蹴りを放つ。
「むっ!」
だがバハムーンはそれにすぐに気づいて腕を使って腹をかばった。
丸太を蹴るような感触にビリビリとフェルパーの脚がしびれる。
「いってぇー!お前の体何で出来てんだ!」
ぴょんぴょんと跳ねて距離をとりながらフェルパーが笑う。
「体の頑丈さには自信があってな、それにしても…白とは意外だな…」
なぜか鼻を抑えながら呟いたバハムーンの言葉にフェルパーはきょとんと首をかしげる。
そして何かに気付いたようにその顔が真っ赤に染まった。
「あ!テメェ!!何俺の下着みてやがんだ!まだ勝負の最中だろ!!」
粗暴な口調で話しながらまるで乙女のように恥じらうフェルパーの姿にバハムーンが顔を赤らめる。
「…いや…なんだ、見るつもりはなかったんだが…見えてしまったのだからしょうがない」
恥ずかしそうにそう言うバハムーンにフェルパーの顔が更に赤くなる。
「記憶を失え!!」
そう叫びながら距離を詰め、頭を狙って拳を放つ。
だが、バハムーンはそれを横に避けてたやすく回避し、拳を放った腕をつかみ投げた。
「きゃん!!」
たたきつけられた衝撃に珍しく可愛い悲鳴をフェルパーがあげる。
そんな彼女をバハムーンの視線が見つめていた。
「っ〜見んじゃねえ!この!」
「そうだな、見つめるのは今夜ベッドの上でじっくりさせてもらおう」
くすくすと笑うバハムーンに攻撃を繰り返すがバハムーンはそれをたやすくよけてしまう。
「このっ!このっ…!!」
「ところでフェルパー…」
不意に呟いたバハムーンにフェルパーが彼を睨む。
「なんだよ?」
「そろそろ俺も攻撃していいか?」
首をかしげるバハムーンにフェルパーが不意にあることに気づく、そう言えば、バハムーンは未だに自分からの攻撃をほとんどしてきていなかった。
「…いいぜ、俺を自分の女にするとかのたまわったんだからな、お前の力見せてみろよ…」
挑発するようにフェルパーが手招きする。
「なるほど…」
そう呟き、バハムーンが目を細める。
「では…行くぞ」
ドン…!と地面を震わせてバハムーンが攻撃を開始した。
「うおっ!」
予想外のスピードにあわててフェルパーは回避する。
「ふっ!」
「くぁ!」
背中からぶつかるような攻撃に回避が魔に合わずフェルパーの体が宙に舞う。
ストンと何とか着地をしながら、フェルパーはバハムーンを見た。
「…オイ、なんだその予想外の強さは…これでも俺はビーストと格闘家の単位マスターしてんだぞ?」
それゆえに彼女は今まで狂犬と呼ばれながら闘いに明け暮れ、一度も負けたことがなかった、それなのに、今目の前に立つバハムーンは明らかに自分の腕を凌駕している。
「何、単純なことだ…」
バハムーンは構えを解かずフェルパーを見つめながらさらりと答えを言い放った。
「俺は基礎およびこのドラッケンで受けられる戦士系学科、その全てをマスターしている」
なんとでも無いことのように言い放ったバハムーンにフェルパーがぽかんとした表情をし、爆笑した。
「お前…馬鹿か?全部マスターとか…勝てるわけねぇだろ…」
ひぃひぃと腹を押さえて笑いながらフェルパーが呆れたように座り込む。
「負けだ負け…降参だ…」
赤らんだ顔をそむけながらフェルパーがそう言って屋上にそのまま横になる。
そのまま煙草に火をつけて、笑う。
「ずいぶんあっさり負けを認めるんだな」
「だって別に俺お前のこと嫌いじゃねぇし、むしろ好きだし、俺よりも強いのも分かったし、別に抱かれてやってもいいぜ、それと喜べこれでもまだバージンだ膜もちゃんと残ってる」
開き直ったようにそう告げるフェルパーに、楽しそうに笑いながらバハムーンがその横に座った。
「なるほど…では、改めて言おう、フェルパー…俺の女になってくれ…」
少し恥ずかしそうにそう告げたバハムーンにフェルパーは体を起して口づける。
「…初めてだからよ…なるべく優しくしてくれや…」
恥ずかしそうに顔を染め、静かに彼から離れながらフェルパーはそう言って笑った。
「ああ…」
バハムーンが笑って、彼女のことを抱き上げる。
「お…おい!!」
お姫様だっこの体勢で抱きあげられたフェルパーはあわてたようにバハムーンを見る。
「ちょっと待て!お前まさか…」
「…すまんこのまま夜を待つのは待ち遠しいんでそのまま俺の部屋に連れていく、我慢できそうにない、ついたらすぐにしよう」
「おまっ!せめて風呂ぐらい入らせろ!こっちにも心の準備があるんだっつーの!!」
「大丈夫だ!風呂なら俺の部屋にある、なんなら俺が洗ってやろうか」
「っ〜!自分で洗う!!」
恥ずかしそうに顔を染め、ぽこぽこと彼の胸を殴るフェルパー
その彼女に狂犬などと呼ばれる恐ろしさは無い、ただ、恥じらう乙女のようなただの年相応の少女だった。
二人の去った屋上で倒れ伏した9人はようやく体を起こす。
「…いったか?ボコられ一号?」
「…いったな、ボコられ2号、つか狂犬、キャラ違いすぎね?俺、あいつの口から抱かれてやって良いなんて言葉が出るとはおもわなかったぞ?」
「まぁ狂犬っていっても女だしな、恋する女は素直なもんさ」
「オイなんだその発言」
「いやだって俺、彼女いるし」
「オイ、ここに裏切り者のリア充がいるぞ皆ボコろうぜ」
「やめろ、既にリーダー役なんかやったせいで狂犬に思いっきりボコられたわ、つか額割れてるし」
ボロボロの体を起こしながら9人は思い思いに口を開く。
「それより…これで明日から突然、狂犬が女っぽい口調になってたらどうするよ?」
「私、フェルパー、お菓子と彼が大好きな女の子ですとかか?」
一人が漏らした言葉に全員の動きが止まる。
「いや、むしろそれはもう一種のホラーだろ、なにされたらそうなるのか恐ろしくて俺、二度とあのバハムーンに逆らいたくなくなるわ」
彼らはそう言って大きな声で笑うのだった。
ごしごしと自分の体を丹念に磨きながらフェルパーは何度も確認するように自分の体の匂いを嗅いだ。
―ん、大丈夫そうだな…―
邪魔だからいつもさらしで覆っていた無駄にデカイ二つの膨らみを一応もう一度洗い自分の女の場所を何度目だかわからないほど洗う。
―つか、俺何やってんだ…思いっきり期待してんじゃねか…―
初めて入るあいつの部屋の風呂でシャワーを浴びながらドキドキと高鳴る心臓を必死で抑える。
―アイツに…抱かれるんだよな…―
初めては死ぬほど痛いと小憎らしい保険医が言っていた言葉を思い出し、少しだけ怖くなる。
「まだか?フェルパー」
「うっせぇ、だまってろ!テメェのために体洗ってんだから少しぐらい待て!!」
「俺のためか…よし存分に待っておこう」
頬を真っ赤に染めながらフェルパーは再び体の泡を洗い流す。
―良し…―
顔を軽くはたいて、風呂からでて下着をはいてバスタオルを体に巻く。
どうせ脱がされるぐらいなら、制服はわざわざ着る必要もないと判断し、そのまま籠に入れたままそっと部屋をのぞく。
制服姿のアイツがベットに座って俺を待っていた。
どこかそわそわしているあいつの姿に俺は思わず笑いを洩らす。
―緊張してやがんの…―
自分もどきどきと緊張していたが意を決して、姿を見せる。
「…あ、上がったぞ」
俺の言葉にバハムーンが俺の姿を見つめる。
―う…―
下着をつけてバスタオルを巻いただけの姿なので、どこか頼り無く感じてしまう。
―やっぱ制服ぐらい着るべきだったかもしれねぇ…―
「…お前…普段と胸の大きさちがわないか?」
アイツが俺を上から下に見下ろしてふと気付いたように呟く。
「いつもは…さらし巻いてんだよ、デカイと動くのに邪魔でな…」
恥ずかしさを何とかこらえながらあいつの隣に腰を下ろす。
心臓は破裂しそうなほど高まっていた。
そっと、アイツが俺の肩に手を載せ抱き寄せる。
「良い匂いだ…」
「っ〜!!いいからさっさと抱きやがれ!こっちはおもいっきりハズいんだよ!!」
うらみがましく睨むとバハムーンがガチガチに緊張した体をそっとベッドに押し倒す。
「あまり緊張するな、こっちだって初めてなんだから…あまり緊張されると…その困る」
「無茶言うな…こっちは…これからお前に女にされるんだぞ…お前のモノ突っ込まれるんだぞ…恥ずかしくて…死にそうなんだ」
目を腕で覆いながら俺が言うと、そっと唇に温かい感触が触れる。
ピチャピチャと俺の唇をなめていたかと思うとバハムーンの舌はまるでこじ開けるように俺の口の中に入ってきて舌を絡め取った。
「むぅ…!」
どうして良いのか分からずパニックになる俺の手を抑えながらバハムーンの舌が俺の口の中を蹂躙していく。
次第に体から力が抜け、何も考えられなくなっていく…。
―なんだかんだいって俺は女なんだな…―
バハムーンの舌に自分の舌が絡め取られて激しく深い口づけをされると頭の中が溶けていく。
「タオル…外すぞ…」
そっと唇を離しながら…バハムーンが呟く。
「ああ…」
コクンと首を縦に振るとバハムーンの手がタオルにかかり、それをはずしていく。
いつもさらしで隠していた胸が何も隠すものなくそのままあいつの目に触れる、自分の女の部分を申し訳程度に下着で覆ったほぼ生まれたままの姿の俺がバハムーンの目にさらされる。
「…きれいだな」
「…あほ…何言ってんだよ、傷だらけだろうが」
「真実を言ったまでだ、多少切り傷とかもあるが…実にきれいだと思う」
バハムーンの言葉に胸が高鳴ってバハムーンが俺に触れるのを待つ。
「触るぞ…」
「いちいち確認すんじゃねぇ…恥ずかしいだろうが…馬鹿」
「だが…」
何かを言おうとしたバハムーンの肩をつかみ俺はその言葉を告げる。
「今更、拒絶なんかするわけねぇだろ!俺は…俺はもうお前の女になるって言ってんだろ!俺がなんの考えなしにバージンだと膜がのこってるとか言うとおもうのか?テメェにやるっていってんだよ!!…テメェに…破ってほしいんだ…女に…してほしいんだ…俺だって…」
あいつの目を見て俺は告げる。
「俺だって…お前が…好きなんだ」
ひとしきり叫ぶと、恥ずかしそうに頬を染めながらフェルパーがそう言って再びベッドに体を投げ出した。
「ほら、さっさとやれよ…」
挑発するかのようにフェルパーが笑う。
「それでは…楽しませてもらうとするか」
つんと上を向いたボリュームのある胸に軽く手を触れる。
「ふっ…!」
俺の手が胸に触れるとピクリとフェルパーの体が震えた。
「痛かったか?」
「いや…なんつーか…ちょっとばかし、むずむずするっつーか…うんまぁ…」
少し言い淀むようにフェルパーははにかんで笑った。
「…気持ち良い、そのまま続けてくれ…バハムーン…俺を…お前の女にしてくれよ…」
そういってフェルパーは普通の少女のように笑った。
「心配しなくても…お前は十分に良い女だ…」
そう言って胸を揉むと弾力のある感触が伝わり俺の手の形にそってフェルパーの胸が形を変える。
「ん…」
くすぐったそうに身をよじらせ恥じらうフェルパーの姿に興奮は否応なしに高まっていく。
いつも男のようにふるまっているフェルパーが俺の手の中で少女のように震えている。
そのギャップがたまらなく愛おしい。
思わず俺は天を向くその胸の中心にかぶりついた。
「うはぁ…!」
舌先でピンと立った桜色の突起を転がすと目に涙をためながら可愛らしくフェルパーが声をあげる。
「良い…すごくいいぜ…バハムーン、俺…初めて女で良かったと思ってる」
「そうか…」
「見下されるのは嫌いなんだがな…こうやって…お前に組み敷かれるのは…悪くない…」
へへっ、とフェルパーが舌を出して笑う。
「そう言えばなぜ見下されるのがそんなに嫌いなんだ?」
ふと気になってそう言うとフェルパーが言いにくそうに言い淀む。
「いや、なんつーかよ…俺は、他人に自分を見透かされてる感じがが嫌いなんだ、もっともお前には全部さらけ出しちまってるし…このまま処女散らされるってかんがえると…はずかしいけど、ちょっとうれしい」
頬を染めながらフェルパーがはにかむ。
なかなかぐっとくる仕草だった。
「…ん、どうしたバハムーン股間押さえて」
「いや…なんでもない、それより…下着を脱がす腰を少し浮かせてくれ」
「ん…はいよ」
俺の言葉に従って、フェルパーが軽く腰を浮かす、そっと手をかけそれを下ろす。
生まれたままの姿となったフェルパーがそこにいた。
「…なんだよ…恥ずかしいじゃねぇか…なんか言えよ」
ごくりと思わず唾を飲み込む。
「…うむ…これは…なかなか…」
すべすべとしたフェルパーの脚を撫でるとそれに反応して尻尾が震える。
ひっそりと湿り気を帯びたそこに手をあてる。
「うぁ…指…指がぁ…」
壊れものを扱うかのように繊細にそこをなであげるとプルプルとフェルパーの体がふるえる。
「うぁぁ…気持ち良い…こんなのしらねぇ…」
「自分で慰めたことは無いのか?」
俺の言葉にフェルパーが首をかしげる。
「自分で慰めるって…どうやるんだよ…」
「知らないなら…別にそれで良い」
そう言って俺はフェルパーのそこに口をつけた。
「ふぁぁ!ちょっ!どこなめて…!」
軽く濡れたそこをなめるとあたふたとフェルパーがあわて始める。
「きちんと濡らさないと痛いらしいからな、じっとしてろ」
「うう…わかった」
俺がそういうと顔を恥ずかしそうに真っ赤に染めながらフェルパーはそれを受け入れる。
「う…ひっ!うぁぁ…あ!馬鹿やめろ…そんな中なんか舐めるな!音たてるなぁ…気持ちよく…なっちゃうだろ……」
俺の頭を押さえつけるようにフェルパーが頭を掴む、だが俺はそのか弱い抵抗を無視し、目的のものを見つけ、敏感なそこを舌で思いっきりなめあげた。
「うはぁぁぁ!!」
びくびくとフェルパーが震え足で俺の頭を挟む、動けないことへのせめてもの抵抗で俺はそこへの愛撫をひたすら続ける。
「まて!やめろバハムーン…変だ…気持ち良くて…なんか頭が…俺が…壊れ…」
「良いんだフェルパーそのままそれを受け入れろ」
そう告げて充血して膨らんだそこを軽く噛んだ。
「うきゅぅぅぅぅ!!」
今まで聞いたことの無い可愛らしい悲鳴を上げながらフェルパーの体がピンとはって背中をそらせる。
次第にその体が力を失ったように倒れ、ぐったりとした表情で荒い呼吸を繰り返す。
「イッたかフェルパー…」
そう言って頭を撫でると恥ずかしそうにフェルパーが笑った。
「アレが…イクってやつなんだな…なんかふわふわして…頭の中が真っ白になって…すごく…気持ちよかった…」
不意に笑っていたフェルパーが何かに気付いたように俺を見る。
「なぁ…バハムーン、なんかふとももにカタイものが当たるんだが…」
「ああ、俺のモノだ」
「…見せてくれ」
ああ、とフェルパーの言葉にうなずき俺は痛いぐらいに張りつめたそれを解放するためにズボンを脱いで下着も脱ぐ、バネがはねるようにそれが飛び出ると真っ赤な顔を手で覆いながらフェルパーがそれをじっと見つめていた。
「で…デカ…こ、これ…これを俺の中に突っ込むのか?」
恐る恐る手を伸ばし、フェルパーが俺自身に触れる。
「うわ…カタ…つか…ほ、ホントに入るのか?これ俺に入るのか?」
「多分な、多少痛むかもしれん…」
「そ…そうだよな…よし…こ、こっちは準備出来てる…いいぜ」
少しおびえた様子のフェルパーが気丈にもそう言って笑う。
「ああ…それじゃあ…なるべく優しくする…」
俺がそう言ってフェルパーそのそこにあてがうと彼女は目を固く閉じて手を胸の前で組んでその衝撃に備える。
「緊張しすぎだ…あんまり緊張して体に力を入れると、余計痛いぞ」
「そんなの無理だ…そこまで言うなら…バハムーンが何も考えられなくしてくれ…」
思わずドキリとさせるフェルパーの物言いに俺は今すぐつき込んでしまいたい衝動を必死で抑える。
「分かった…それじゃあ、もう一度愛撫をするぞ…」
「あの気持ち良いのしてくれるのか…?…うれしい…してくれ…何にも考えられないようにしてくれ」
俺の言葉にフェルパーが何度も首を振る。
ボリュームのある胸を揉み、指で彼女の中をほぐすように浅くかき回す。
なんどもなんどもそれを繰り返すうちに自然と彼女の体から力が抜けている。
「バハムーン、ヘンだ…変なんだ…気持ち良いのに…だんだんなんか切なくて…お腹の中が熱くて…頭が変になりそうなんだ…」
ぽろぽろと目から涙をこぼしながらフェルパーが腰をくねらせる。
「これ…俺がお前を欲しがってるんだろ?俺の女がお前を欲しがってるんだろ?」
初めての感覚に戸惑いながらフェルパーが俺を見つめる。
「ああ…俺もお前が欲しい」
そう言って唇を重ねると今度はフェルパーの方から俺のことを求めてくる。
「バハムーン…来てくれ…俺を…いや…私を…女に…お前の女に…」
「ああ…いくぞ…フェルパー」
たび重なる愛撫で完全にほぐれたそこに自分をあてがう、俺のモノは今にも破裂してしまいそうなほど高ぶっている。
「はやく…はやく…」
待ち望む彼女の腰を掴んでゆっくり腰をつきいれる。
ギチギチと痛いほどのそれが俺を締め付け侵入を拒むかのように押し返してくる。
「か…はっ!」
苦しそうにフェルパーが眉をひそめた。
―あまり長引かせない方がよさそうだな―
「すまん!フェルパー!」
「へ?う…いったぁぁぁぁ!裂ける!裂けちゃう!!」
彼女に一言謝って、彼女を抱き上げるようにしながら彼女の処女を一気に引き裂いた。
苦痛に彼女の肩が震え、ボロボロと涙がこぼれ落ちる。
少し罪悪感を覚えながら俺は彼女の頭を撫でた。
「バハムーン…ばかやろぉ…死ぬかとおもったじゃねぇか…」
涙を手で拭いながらフェルパーが笑う。
「すまんな…あんまり苦しませても悪いかと思って一気に突き破ってしまったんだ」
「…私…お前を受け入れられたんだよな?」
心配そうにそう告げる彼女に笑いかけ、繋がった場所を見せてやる。
俺と彼女の腰はぴったりと合わさり、彼女の中に埋まった俺を伝って、彼女が初めてを失った証が流れていた。
「う…ふ…」
それを見た彼女の眼に涙があふれる。
「私…ずっと…私みたいな女を好きになってくれる奴なんて…ぜったい…絶対いないって、そんな奴いるはず無いって…」
口調こそ男のようであったがうれしそうにそう泣き続ける彼女はただの少女だった。
「待たせて…すまなかった」
俺の言葉に彼女が笑う。
「いいんだ…私…今すごいうれしい…お前の女に…お前に初めてを捧げられて…」
感極まったようにフェルパーが泣く。
「大好き…大好きだバハムーン…私、こんな口調でガサツで…それでも…」
「それでも…お前と一緒にいたい」
彼に貫かれて、ついに自分の中の女を真に俺は理解した。
「俺もだ、俺と共に、来てくれ…フェルパー」
彼の言葉に何度もうなづく。
痛いはずなのに彼に貫かれたその痛みがどこか心地いい。
「動いて良いぜ…バハムーン…私の中を…私をお前で染めてほしい」
彼の体を抱きしめて耳元で彼に囁く。
「分かった…痛かったら言えよ」
そう言ってバハムーンが動き出す。
内臓が引きずりだされるような感覚と自分の中が隙間なく埋まる感触に“私”は震える。
「うぁぁ…」
「痛いかフェルパー?」
心配そうに私を見た彼に首をブンブン横に振ってこたえる。
「気持ち良いんだ…バハムーン、お前が私の中を掻き混ぜるのが…お前に自分が蹂躙されるのが…」
ゾクゾクと背中を快感が駆けあがって脳を焼いていく。
今まで感じた事の無い体を貫かれるような感覚に体がしびれていく。
熱くて固くて太い串のようなものが私を事を串刺しにする。
入口まで引き抜かれたそれが今度は私を貫くように深く埋まる。
一番深い場所がたたかれるたびに快感で体が打ち震える。
満たされたと思うとぽっかりと穴があいたように彼が引き抜かれまたその空白を埋めるように彼のモノが私を蹂躙する。
―うぁぁ…これが…抱かれるってことなのか…ヤバい…これは…クセになる…―
今まで一番好きだった戦いなんか比べモノにならない脳が焼けそうな感覚と腰が溶けてしまうような感覚が気持ち良い。
自分が女であること彼が男であることを感じさせられる。
今までの自分が壊れてしまいそうな不安と壊されてしまいたい期待がぶつかり合う。
「今までの私を…壊してくれ…バハムーン」
ついに不安が壊れ、期待がただ一つそこに残った。
壊されたい…彼に壊されて彼のモノにされてしまいたい。
「わかった…かなり激しくいくぞ…」
言葉と共に彼の腰が加速する。
まるで私を貫こうとするような激しい突き上げに体の感覚は勝手に暴走し始めた。
頭の中で極彩色の火花が散る。
「ふぅぅ…壊れる…壊れちゃう…」
自分の体の感覚があいまいになって彼と混ざり合うように溶けていく。
何かが集まって私の中で破裂しそうに膨れ上がっていく。
「うぁぁ…バハムーン激しい…イク…私…このまま…」
ゴリゴリと彼のモノが私の中を削っていく。
「俺も…このまま…」
ぶるぶると彼も何かをこらえながら私の中を掻き混ぜる。
「出して…私を…私の中を…バハムーンで…」
最後まで私がその言葉を告げる事は無かった。
こつんと彼のモノが一番深い場所、子宮をたたいた瞬間に、いままで溜まっていたその感覚がはじける。
「きゃぁぁぁぁ!!」
体がバラバラになってしまいそうな激しい快感で私は女らしい悲鳴を上げ背中をそりかえらせた。
「くぅぅ!」
強し眼あげた彼のモノが私の中で震え、温かい何かが私の中で放たれる。
「くはぁぁ…でてる…バハムーンが…お腹の中に…」
火傷しそうなその熱さを敏感になった感覚で受け止めながら、自分を抱いた男の胸に倒れ込むと、すぐに心地よい睡魔が襲ってくる。
―セックスって…結構疲れるんだな…―
お腹の中で彼の熱がまだのこっているのを感じながら私はそのまま睡魔に身をゆだね眠りへと落ちていった。
目を覚ますと俺の目の前に彼女の顔があった。
「…ん?」
無防備な寝顔と一糸まとわぬ彼女の姿に昨日何があったかを思い出す。
―ふむ…あのまま眠ってしまったのか―
いくら思い続けたからと言って、初めての彼女に少し激しくし過ぎてしまったかもしれない。
ベッドのシーツには俺が彼女の初めての男になった証が点々と散っている。
「…喉が渇いたな」
ベッドから体を起こし脱ぎ棄てた下着を拾い上げ、それだけを身につけ冷蔵庫から取り出した飲み物を口にする。
「ん…どこだここ?」
不意に彼女が起き上がり辺りをきょろきょろと見回し俺を見つける。
豊満な胸が朝日に当たってキラキラ輝いている。
「おはようフェルパー」
「おう…おはようバハムーン何で私ここにいんだ?」
「…いや、昨日何があったか覚えてないのか」
「…昨日?」
その瞬間、全てを思い出したように顔を真っ赤に染め、彼女はあわてて布団で自分の体を覆った。
「あ…私…昨日…バハムーンに抱かれて…あんな…」
いつの間にか、一人称が“俺”から“私”に変っていた。
「その…なんだ…どうだ体の調子は?」
飲み物をもう一つ持ち、ベッドに座って彼女にそれを手渡す。
「…まだ…バハムーンが中に入ってる感じがある…しかもちょっと痛い…」
恥ずかしそうに頬を染めながらフェルパーは俺の渡した飲み物を口にする。
「ん…悪いバハムーン煙草取ってくれ、多分制服のポケットの中だ」
「ああ、分かった」
そう言って風呂場の籠にまとめてあった彼女の制服のポケットから煙草とライターを探し出し彼女に渡す。
「ん、ありがとな…」
小さくそう言ってフェルパーは煙草に火をつけた。
何とも言えない沈黙が辺りに満ちる。
「…昨日は…気持ちよかった、ありがとうフェルパー」
何かを言おうと考え続け、俺は取り合えずそれを口にする。
その瞬間フェルパーが激しくむせた。
「だ、大丈夫か?」
彼女の背中を撫でてやると彼女が少し目に涙を浮かべながら笑う。
「わ、わりぃ…なんか恥ずかしくってよ…」
フェルパーが煙草の煙を吐き出しながら笑う。
「す、すまない…」
思わず彼女に謝ると、彼女が楽しそうにわらった。
「謝んな…それに…」
ポリポリと恥ずかしそうに頬を掻きながらフェルパーが笑う。
「私も…その…気持ちよかった…ありがとうバハムーン、見下されるのは嫌いだが…お前に組み敷かれんのは好きになった、またしようぜ、もっとお前に染め上げられたい」
「そうか…喜んでもらえてよかった…そう言えば、一人称変わったな」
照れ隠しにそう笑うと彼女がああ、と呟いた。
「お前の女になったからな、口調はすぐには変えられねぇが、とりあえず、少しくらい女らしくしてみたくなった、にあわねぇか?」
くすくすと自重気味に笑う彼女を俺はそっと抱きしめる。
「いや?俺のために変ろうとしてくれているんだ…俺がそれを否定するわけない…」
俺の言葉に嬉しそうにフェルパーが目をつぶる。
「お、私は…お前と一緒に冒険者を続けたい…お前のそばで共に冒険者として成長していきたい…」
彼女のその告白を俺は彼女を抱きしめ、うなづく。
「私を…お前のチームに入れてくれ…バハムーン、でもって私をもっと女にしてくれ」
「当然だ…」
俺の言葉にフェルパーは恥ずかしそうに笑う。
「ああ…よろしく頼むぜバハムーン、彼氏らしくリードしてくれや、もし子供ができてもお前の子供なら産んでみたい」
そう言うと彼女はホントにうれしそうに頬を緩ませ笑う。
可愛らしい彼女の姿に股間がイケナイことになった。
「…オイ…バハムーン…ケツに何か固いのが当たるんだが…」
ポリポリと頬を掻きながらフェルパーが笑う。
「…うむ、その…なんだ、お前がずいぶん可愛らしいことを言うもんだからな…」
「…いいぜ」
「何?」
俺の言葉にフェルパーが恥ずかしそうに頬を染めていう。
「…こんな朝っぱらからすんのはおかしいかもしれないがな…お前がしたいんなら…そのデカイの…私の体で処理して良い…辛いだろ?」
上目づかいで見つめるフェルパーに理性が吹き飛ぶ。
「すまんフェルパー…」
彼女の腰を掴んで一気に突き入れる。
「にゃぁぁぁ!?ばか!濡らす前に突っ込むな!!裂ける裂ける!!…へ?うにゃぁ!?ちが!そうじゃない!にゃぁぁ!!」
あまり濡れていない彼女の膣に自分でかきまぜながら同時に秘所への愛撫を開始する。
すぐにソコが湿り気を帯び腰の動きがスムーズになる。
「にゃぁぁ…やめろぉ…きもちよくなるぅ…」
「ずいぶんと敏感なんだなフェルパー…」
胸を揉み、腰を振りながら彼女の耳元で囁く。
「お前が…お前がぁ…太いのが…カタイのがぁ…私ん中がぐちゃぐちゃに…くはぁぁ…」
ぶるぶると肩を震わせながら彼女が呟く。
「バハムーン…ちょうだい…もっと…もっと私を…」
彼女の首筋に何度もキスをし、赤い痕を刻んでいく、白い肌に赤い花が咲いたみたいで面白い。
「ああフェルパー…最高だ…お前の中は最高に気持ち良い…」
「うれっ…しい…お前も…お前のも…おっきくて…固くて…気持ち良い…気持ち良いよバハムーン…」
不意に思いついて彼女の体を抱き起こす。
体重が一点に集中して俺のモノが更に深く沈んだ。
「ひぃ!?うあぁぁ…!バハムーンやめろ…これ!…気持ち良すぎて変になる…!」
自分の奥深くを抉られる感触にフェルパーが震えた。
「フェルパーは奥の方が感じるみたいだな…ならばもっと深くいってみるか」
彼女を貫いたまま俺はそっと立ち上がる。
「待って!待ってバハムーン…そんな奥…奥されたら…」
あわてて俺の首に手をまわしてフェルパーが俺を引き抜こうとする。
抜ける寸前まで引き抜かれたその腰を掴むと、それを引き寄せ同時に一気に腰を突き込んだ。
パンとくっついた腰が大きな音を立てた。
「くひぃぃ!!破れる…私の中破れちゃう…」
「気持ちよくないか?」
耳元で囁くとフェルパーは顔を真っ赤にしながら俺にしっかり抱きつく。
「…すごくいい…こんなの初めて…こんな気持ち良いの…耐えられないよ…バハムーンなしじゃ生きられなくなっちゃうよ…」
目に涙を浮かべ、歯をカタカタ震わせながらフェルパーが囁く。
「バハムーン…今さっきのもっとして…私が破れちゃうぐらい…壊れちゃうぐらい激しく…」
「分かった…」
言われるままに再び彼女の体を強く突き上げる。
「うはぁぁ!これ…すご…無理…むりぃ…すぐ…すぐイッちゃ…」
俺の目の前で彼女の豊満な胸が震える。
それにかぶりつきながら彼女の中を激しく責め立てる。
パンパンと腰がぶつかり合う音と彼女の嬌声が部屋に響く。
「ふはっ…壊れる…私が壊れる…壊れちゃうくらい気持ち良い…気持ち良くて頭…馬鹿になる…」
「俺も…無理だ…」
強い締め付けに耐えきれず、俺は彼女の中にそのまま欲望を放出する。
「にゃぁぁぁ…!」
同時に彼女の体もびくびく震え、背中をそらせた。
はぁはぁと荒い呼吸をしながら彼女にキスをすると照れくさそうに彼女が笑った。
「大好き…バハムーン」
「俺もだフェルパー」
繋がった場所からは入りきらなかった俺の精液がコポリと溢れてきていた。
行為のあとの気だるい感覚に包まれながら私は煙草に火をつけた。
―なんか、一日で思いっきり女にされたな…―
肺を満たす煙草の煙を静かに吐き出す。
バハムーンに抱かれて女になっても煙草の味は変わらない。
―ま、変わるのは私だからな―
シーツに残った赤い染みをみながらそう思う。
ロストバージンは確かに痛かったが、今朝はほとんど濡れていない状態で突っ込まれたのに、それほど痛みを感じなかった、それどころか、立ちあがって思いっきり貫かれた時はあまりの快感に頭が狂うかと思ってしまった。
―実は私ってマゾなのか?いや違うよな…別段痛いのは気持ちよくもなんともないし―
にしても…貫かれるのがあんなに気持ち良いとは思わなかった。
―次は私が上になってみたらもっと良いのかもしれない…―
軽く想像してみただけで体がゾクゾクと震えてしまう。
「どうしたフェルパー?」
バハムーンがそんな私に気づいて首をかしげる。
「…なんでもない、ただ女で良かったなって思ってただけだ」
自分を突きあげるたくましい彼の体の感触を思い出す。
「俺のモノが気に入ったか?」
ふざけるように笑う彼に煙草の煙を吹きかける。
「バカ野郎…あんだけされて…気にいらないわけ無いだろ…忘れられるか…」
昨日までウザいやつ程度にしか思っていなかったはずの彼が自分の心をたった一日で多くしめてしまっている。
―完全に惚れちまった…―
きっともう自分は彼なしでは生きられないのだとそう思う。
狂犬はどこかに行ってしまった。
狂犬は自分のことしか考えない、戦うこと以外は考えない。
自分の生きたいように生き、死にたいように死ぬのだから、ゆえに彼のことを考えている私、彼の女となって彼と添い遂げたいと思う私はもはや狂犬とは言えない。
狂犬で無くなったのなら自分は一体何なのだろう。
「なぁバハムーン…私って…なんなんだ?」
ふと気になって彼にそう言うと彼は何を馬鹿なことを言っているのかというような目で私を見た。
「決まっている、俺の彼女だ」
当然のように笑うバハムーンを見ながら、私はこいつに惚れてよかったと、そう思う。
―あばよ…狂犬、私はこいつの女としてこれからずっと生きてくわ…―
古い今までの自分に、私は心の中で別れを告げた。
食堂に集まったチームのメンバーを見渡して俺は彼女を呼ぶ。
「というわけで、彼女が我々のチームの6人目だ、皆よろしく頼む」
俺の言葉に皆が拍手をして彼女を迎えた。
「あ〜、なんて自己紹介すればいいかわかんねぇな…まぁいいや、俺…じゃなかった私はフェルパー、学科はビーストと格闘家、んで恥ずかしながらこいつの彼女だ…狂犬って呼ばれてたこともあるからもしかしたら迷惑かけるかもしれないが…これからよろしく頼む」
少し恥ずかしそうにそう言ったフェルパーを他のメンバーが祝福する。
「よろしく…フェルパー、伝説はいろいろ聞いている、敬意を込めて君のことは獣殿と呼ばせていただくとしよう、私はフェアリー、学科は賢者とトリックスターだ、主に参謀を担当している何かあったら気軽に命じてくれたまえ、配役と脚本はお手の物だ」
おとぎ話の魔術師のようなローブを纏ったフェアリーがそう言って恭しく彼女に礼をする。
「よろしくお願いしますフェルパーさん、私はセレスティア…学科はシスターと堕天使です、パーティの癒しキャラを狙っております、ちなみにバイですよろしくお願いしますね?」
ちょっとした問題発言を交えながらくすくすと笑ってセレスティアも優雅に礼をする。
「んじゃ、次はボクだね、ボクはクラッズ、学科は盗賊と海賊、魔法はからっきしだけどその分剣や銃には自信がある、君とリーダーと同じ前衛だからよろしく頼むよフェルパー」
クラッズは彼女にそう言って笑う。
「で、私はディアボロス、学科は人形遣いと闇術士、主に担当は魔法、貴方の狂犬としての伝説はいろいろ聞いてる、チームに入ってくれてうれしい、よろしくねフェルパー」
ディアボロスがそう言って締めくくると最後にバハムーンがフェルパーの前に立って笑う。
「そしてフェルパー、俺がチームのリーダーのバハムーンだ、学科はセイントと竜騎士、もっとも申請が通れば今度はヒーロー学科に転科するがとりあえず今はそんな感じだ、ん…?」
何かに気付いたようにバハムーンが頬を掻く、視線はフェルパーに向いていた。
「ん?どうした?バハムーン私になんかついてるか?これでも朝シャワーを浴びたんだがな、朝いろいろあって汗かいてたし」
きょろきょろとフェルパーは自分の服を見渡す。
「ついてはいるが、獣殿、それが付いているのは君の首筋だよ…やれやれ、リーダー殿、せめて彼女のことを思うなら服に隠れる場所につけるべきだね」
「…オイ、セレスティア、悪いが鏡もってねぇか?」
フェアリーの言葉にフェルパーはあることに気づきセレスティアにそう告げる。
「はい、ありますよ、どうぞフェルパーさん、なんならファンデーションお貸ししますけどいります?」
くすくすと笑う少女を見ながらフェルパーは受け取った鏡で自分の首筋を確認する。
「あーあ、言わなければ分かんないのに…何でフェアリーは言っちゃうかね」
「まぁ、言わないでこのまま皆にひそひそ言われるのは、フェルパーもちょっと嫌でしょ?」
クラッズとディアボロスの言葉にフェルパーは答えない、ふるふると恥ずかしそうに顔を染め、バハムーンを睨みつけた。
「オイ、彼氏様、これはどういうことだ」
鏡に映った自分の首筋にまるで刺青のように無数に刻まれた赤い痕に気づいてフェルパーは体を震わせる。
「うむ、すまんフェルパー今まですっかり忘れていたんだ、今朝した時そう言えば夢中になってかなりの量つけたことをな」
「てめぇバハムーン!私の首筋キスマークだらけじゃねぇか!!何してくれてんだ馬鹿野郎!!どおりで朝ここに来る前にあったカーチャやシュピールに笑われたわけだ!!!」
セレスティアに鏡を返しながらフェルパーが拳を握る。
「悪気はない!ただあまりにも今朝のお前が可愛らしくて夢中になったらつけすぎただけだ!!」
「でっけぇ声でさけぶんじゃねぇ!私がお前に抱かれたこと全員にバレるだろうが、つか今朝とか言うな思い出すだろ、実はまだいてぇんだからな!!」
彼女の言葉に食堂がシンと静まり返る。
「ん?あれ…どうした?」
フェルパーが突然静かになった食堂を見渡す。
「あ〜獣殿、君は今、公然と“食堂全てに響く声”で昨夜と今朝、何があったか叫んだのだが…」
フェアリーの言葉にフェルパーの顔が朱に染まる。
「う…あ…私今…抱かれたって…今朝を思い出すって…」
そんな彼女にとどめを刺すようにセレスティアが彼女の肩をたたく。
「昨夜と今朝はお楽しみでしたね…なんちゃって」
きゃっ、と頬を染めてセレスティアが笑う、笑われた当人はバハムーンを睨み叫んだ。
「バハムーンの馬鹿!デカチン!おっぱい星人!!」
「いや、フェルパー、俺のサイズはお前も喜んでたじゃないか!!」
「うるせぇ!それとこれとは話が別だ!デカすぎてまだ痛ぇんだよ!!」
吐き捨てるようにそう言って泣きながら走り去るフェルパーをバハムーンがあわてて追いかける。
「楽しくなりそうですね、私の癒し系キャラの座は奪われそうですが」
「ああ、本当にね…それとセレスティア…君の癒し系キャラの座は変わらんよ…なぜなら私の中のその座には君が常に君臨している、君こそが私にとっての癒しそのものだ…」
諸悪の根源とも言うべき二人はくすくすと笑いながらその二人の去ったドアを見つめる。
「いや〜狂犬って呼ばれるくらいだからとんでも無い子を想像してたけど以外に普通の恥ずかしがり屋だね、うまくやっていけそう」
「…そうだね、なんか保護欲をかきたてる、多分、彼に求められたらなんでもしちゃって開発されて余計に夢中になるタイプ、リーダーと相性は良いかもね、彼、なんでも極めるタイプだし」
クラッズとディアボロスは走り去った二人を見ながら笑う。
そんな彼らのもとにもう二人の共犯者たるシュピールとカーチャがやってきて座った。
「いやぁ…みなさんみました?なんて言うか、フェルパーちゃんものすごく目に毒でしたよ、首のあたりびっしり…」
「首筋、キスマークだらけだもんね、しかも一人称俺から私になってるし、あの子、きっとコスプレとか求められたら恥ずかしながらついついするタイプよ」
「あ〜、確かにフェルパーさんメイド服とか着物であ〜れ〜とか求められたらするタイプですね」
「何はともあれリーダー殿と獣殿がうまくいったようで私は満足だよ、今回は実に満足のいく出来だった。」
クスクスと笑う教師2人と悪そのものな2人が笑う。
やれやれと肩をすくめながら残りの2人は新たなるメンバーの増えたチームがどうなるかちょっとした期待に胸を躍らせるのだった。