「まさかこっちでまた会えるたぁ思わなかったな」  
「同感ですね」  
 ギルガメシュの言葉にセレスティアはクスクス笑った。  
 ブルスケッタ学院であの時あの場にいた全員と再会したギルガメシュは、彼らとクロスティーニに向かう事にした。  
 元々パーティではないが、手練ばかり5人も集まっているのだ。一塊で行動した方が元の世界に戻る方法を探すという面でも楽ではある  
 
「でも、無事で良かったです。瓦礫に巻き込まれて死んでたかも知れないと思うと、怖いですし」  
「まぁな。相当崩落しただろうしよ」  
 ゼイフェア地下道が崩落した時は死ぬかと思っていた。しかし、気がついたらまだ生きていた。  
「…で、やっぱりお前ぇらも記憶ねぇのか? 崩落した直後、どうやってきたか」  
「ええ」  
「…そうか」  
 
 ギルガメシュの問いにセレスティアはやはり首を振る。  
 そう、ここにいる全員の共通点その2が、地下道が崩落した直後の記憶が飛んでいる。  
「ま、構わねーけどよ。別にテメェのせいじゃねぇ」  
 ギルガメシュがそう呟いた時、先頭を歩いていたディアボロスが「ん?」と声をあげる。  
「どしたのー?」  
 
「ヒューマン、エルフ。前に何かいる」  
 二番目を歩くヒューマンがそう声をかけると同時に、ディアボロスの返答。  
「おおっ! ダークドラゴンだねぇ」  
「倒しがいがありそうっすね!」  
 ヒューマンの言葉にエルフが弓を用意する、が。  
「ダークドラゴン?」  
 ギルガメシュが一歩前に進み出ると、そこには確かに―――ドリィがいた。  
 
「なんだ、テメェか。安心しろ、こいつは大人しい」  
 ギルガメシュの言葉に全員が剣を下げると、ドリィは首を軽く動かし、近くの木を示した。その木陰ではアスティが寝息を立てていた。  
 眠るアスティに、ギルガメシュは手を伸ばす。  
「起きろ。こんなところで寝てると、風邪引くぞ」  
「ん…んん…」  
 ギルガメシュがアスティを起こしている間、他の四人はドリィに視線を向けていた。  
 
「…しかしすごいな、このダークドラゴン。傷だらけだ。まさしく歴戦の猛者って感じがする」  
「俺一人じゃ五分かかっても倒せそうに無いです」  
「どうあがいても無理の間違いじゃなーい?」  
「ちょ、先輩酷いっすよ!」  
 ディアボロス、ヒューマン、エルフの下級生組がドリィの前で騒いでもドリィはただ黙ってセレスティアと視線を合わせていた。  
 
「まさかこっちでまた会えるたぁ思わなかったな」  
「同感ですね」  
 ギルガメシュの言葉にセレスティアはクスクス笑った。  
 ブルスケッタ学院であの時あの場にいた全員と再会したギルガメシュは、彼らとクロスティーニに向かう事にした。  
 元々パーティではないが、手練ばかり5人も集まっているのだ。一塊で行動した方が元の世界に戻る方法を探すという面でも楽ではある。  
「でも、無事で良かったです。瓦礫に巻き込まれて死んでたかも知れないと思うと、怖いですし」  
「まぁな。相当崩落しただろうしよ」  
 ゼイフェア地下道が崩落した時は死ぬかと思っていた。しかし、気がついたらまだ生きていた。  
「…で、やっぱりお前ぇらも記憶ねぇのか? 崩落した直後、どうやってきたか」  
「ええ」  
「…そうか」  
 
 ギルガメシュの問いにセレスティアはやはり首を振る。  
 そう、ここにいる全員の共通点その2が、地下道が崩落した直後の記憶が飛んでいる。  
「ま、構わねーけどよ。別にテメェのせいじゃねぇ」  
 ギルガメシュがそう呟いた時、先頭を歩いていたディアボロスが「ん?」と声をあげる。  
「どしたのー?」  
「ヒューマン、エルフ。前に何かいる」  
 二番目を歩くヒューマンがそう声をかけると同時に、ディアボロスの返答。  
「おおっ! ダークドラゴンだねぇ」  
「倒しがいがありそうっすね!」  
 ヒューマンの言葉にエルフが弓を用意する、が。  
「ダークドラゴン?」  
 ギルガメシュが一歩前に進み出ると、そこには確かに―――ドリィがいた。  
「なんだ、テメェか。安心しろ、こいつは大人しい」  
 ギルガメシュの言葉に全員が剣を下げると、ドリィは首を軽く動かし、近くの木を示した。その木陰ではアスティが寝息を立てていた。  
 眠るアスティに、ギルガメシュは手を伸ばす。  
「起きろ。こんなところで寝てると、風邪引くぞ」  
「ん…んん…」  
 ギルガメシュがアスティを起こしている間、他の四人はドリィに視線を向けていた。  
 
「…しかしすごいな、このダークドラゴン。傷だらけだ。まさしく歴戦の猛者って感じがする」  
「俺一人じゃ五分かかっても倒せそうに無いです」  
「どうあがいても無理の間違いじゃなーい?」  
「ちょ、先輩酷いっすよ!」  
 ディアボロス、ヒューマン、エルフの下級生組がドリィの前で騒いでもドリィはただ黙ってセレスティアと視線を合わせていた。  
 セレスティアも、その視線を合わせたまま、無言だった。  
 三人は気づかないし、ギルガメシュも気づかない。  
 
 ドリィは、その瞳で何を見ていたのだろうか。  
 
「…あれ? ああ、ギルギル?」  
「ようやく起きたのかよ。盗賊に襲われても知らねぇぞ?」  
 ようやく目を覚ましたアスティにギルガメシュが呆れつつそう声をかけると、アスティは「ありがとう」といいつつ身体を起こす。  
「あれ? パーティを組んだの?」  
「まぁ似たようなもんだな。同じ学校の奴らだしよ」  
 ギルガメシュが軽く肩をすくめると、ドリィが小さく鳴いた。  
「あ、ドリィが少し疲れちゃったから、巣に帰るって言ってる」  
「…そうかい」  
 まぁ、確かに無防備なアスティを守るには疲れるだろうし。特に、空腹で傷だらけの身では。  
「ドリィの巣ってどの辺なんだ?」  
「ドリィは遺跡の近くに住んでるよ? 私もその近くに住んでるの」  
「そうか」  
 遺跡、というとコッパ達を置いてきたダンジョンの1つ手前ぐらいか。  
「またな」  
「うん、またね」  
 アスティがドリィの背中に乗ると、ドリィは小さく啼いてから空へと舞い上がっていった。  
「…知り合いですか?」  
「まぁな」  
 ギルガメシュはセレスティアにそう答えると、くるりと背を向けて先頭を歩き出した。  
「まだ、道は長ぇぞ。もっと歩かねぇとな」  
 
 永遠とも思えたダンジョンを歩き続けて、どれだけの時間が流れただろうか。  
 遠くの方に見える光を頼りに、何度も倒れながら進み続け、遂に―――――。  
「「「出口だー!」」」  
 コッパ、ビネガー、アンの三人はダンジョンから外に飛び出ながらそう叫んだ。  
 ギルガメシュにダンジョンの奥に置かれてから何時間経ったか分からないが、とにかくダンジョンを1つ出れたのだ。  
「いやー…死ぬかと思ったぁ…」  
 コッパがへなへなとその場に座り込み、ビネガーも「だよなぁ」と呟いて壁にもたれかかる。  
「…と、とにかくまずは宿屋で休もうよ…」  
「おう…あ、すんませーん」  
 コッパは近くで商談をしていた商人にそう声をかけると、商人は驚いた顔をしていた。  
「うわぁっ!? ああ、人か…な、なんだい?」  
「ここ、どこですか?」  
「ここはズッコット遺跡だよ…知らずに来たの?」  
「私達、先輩に転移札で連れてこられて、そこから戻って来いって」  
 商人にアンが説明している間、ビネガーとコッパはズッコット遺跡の場所を思い出そうとしていた。  
「どのあたりだっけ? 遺跡って」  
「剣士の山道の先じゃね?」  
「それはパニーニ学院じゃなかった?」  
「じゃあ、魔女の森の、先?」  
「ブルスケッタより先じゃなかったっけ? 覚えてないけど」  
「ビネガー君、コッパ君。まずはとりあえず休もうよ…場所は後で地図を買えばいいし」  
 三人が宿屋へ向かう間、注目をとりあえず浴びていた。  
 何せ所持品なんて殆ど何もなく、着ている制服はボロボロで血まみれ、ついでに泥やら粘液やらでネトネトとお世辞にも綺麗と呼べる格好ではない。  
 武器はまだ拾えてないし、アイテムもろくにない。無謀もいい所である。  
「えーと、1人1泊いくらー?」  
「1人1泊250Gだよ」  
 宿屋の主人の返事に、コッパはとりあえず巾着袋をひっくり返す。  
「…ビネガー。アン。幾らある?」  
「おまえは幾らだ? 84G」  
「113Gしかないよ…」  
「…49G…」  
 3人合わせても一人の代金にすら満たない。  
「足りねー!!!」  
「なんてこった…。また戻れと!? つーか、コッパ49Gとかなんだよ! ふざけてんのか!」  
「冗談じゃないやい。…こうなったら先に進むしかないな」  
 コッパの言葉にビネガーがそう返し、コッパはため息をついて立ち上がる。  
「いざ、前進前進! ブルスケッタ学院目指して進めー!」  
「はー…また命がけの行進か」  
「ブルスケッタに着けば少しは休めるといいね」  
「それまでに生きてればな」  
「ビネガー、余計なことは言うな! オイラ達自身を信じるんだ!」  
 コッパを戦闘に再び迷宮へと向かう三人の学生達を商人達は「気でも狂ったか?」と噂するほかなかった。  
 ちなみに地図を買い忘れていた。  
 ついでにそのなけなしの金でもアイテムを買うのを忘れていた。  
 
「この森の先だ」  
 ギルガメシュ達はようやく初めの森まで辿り着き、クロスティーニ学園まであと少しになっていた。  
「モンスター、弱すぎない?」  
 術士なのに先陣を切って歩くヒューマンが草陰から出てきたモンスターをファイアで焼き払いつつそうボヤいた。  
 確かに彼女達にとっては弱いはずだろうが、しかし学校近くのダンジョンで強いモンスターが出てきても困る。  
「モンスターが弱くても罠は本物だから、気は抜けないだろう。ダンジョンなんてそんなものさ」  
「ディアボロス君の言う通りですね。前に、ランツレート学院の近くでモンスターが弱いーなんて気を抜いていた子がクレバスに落ちたなんてことも…」  
「うーん、でもつまらん!」  
 ディアボロスとセレスティアの言葉にヒューマンは不満顔でそう叫ぶなり、ふと思い出したように周囲を見渡す。  
「あ、でも構造は本物だね。…何度も曲がらなきゃ前に進めないなんてうんざりだし」  
「森だからな」  
 ギルガメシュがそう答えた直後、ヒューマンは杖を構えた。  
「じゃ、道作るね」  
「「「「…へ?」」」」  
 他の四人が目を点にした直後、ヒューマンは前面に向けて詠唱を始めていた。  
 
「イベリオン!!!」  
 
 ブルスケッタ学院の図書室で読んだばかりの炎の魔法を唱えた。  
 しかも、このヒューマン。3年生という若さでありながら、パルタクス三強の異名を頂戴している。  
 つまり、この炎の一撃は、情け容赦ないほどの威力だった。  
 尋常じゃなく、情け容赦ない威力だった。  
 
 放たれたイベリオンはたくさんのモンスターや草木を高温で次々と焼き払いながら一直線に進む。範囲を絞り、前面だけに限定されたことで射程が大幅に伸びたそれは、凄まじい勢いで進む。  
 モンスターの悲鳴や断末魔が次々に響き渡る。  
「ぐはぁっ!?」  
「ああっ! ロッシ先生!? ロッシせんせー! しっかり!」  
 遠くの方で誰かの悲鳴と共に、慌てるもう一人の声。  
「てへっ♪ 失敗しちゃった」  
「…ヒューマン。テメェは森林の中のモンスターを討伐するのに森林ごと焼き払うのか? 真性のアホかテメェは!」  
 ギルガメシュは即座に怒鳴りつけたがヒューマンは「失敗だよ、失敗」と肩をすくめる。  
「だ、大丈夫ですかー!」  
「い、今行きますから!」  
 そんな二人を尻目にディアボロスとセレスティアは出来た道を進み、慌ててエルフもその後を追う。  
 とりあえずヒューマンを叱り付けても聞いていないのでギルガメシュもその後を追った。  
 
 5人が進んだ先では、サムライのような服装をしたヒューマンの男と、その隣でパニックに陥るエルフの若い女性がいた。  
 手当てをするべきはずなのだろうが、女性は完全にパニックになっており、道具袋から道具を撒き散らしては時折本気で転んでいる。  
「とにかく、落ち着いてください。えーと…先輩! メタヒールを!」  
「ええ!」  
 セレスティアがサムライに駆け寄り、メタヒールを使うと、虫の息だったサムライが少しずつ生気を取り戻した。  
「し、死ぬかと思った…」  
「ああ、良かった! ロッシ先生!」  
「…きゃ、キャンティ先生、失礼。とりあえずあっしの上からどいてくれませんかね?」  
「あ…す、すいません!」  
 どうやら二人は教師だったらしい。サムライの方がロッシ先生で、エルフのほうがキャンティ先生。  
 ふと、ギルガメシュは先日ダンテと手合わせした時、ロッシ先生の道場を借りていた事を思い出した。  
「…アンタら、クロスティーニの教師か?」  
「うむ…おうっと!?」  
 ロッシ先生がそれに答えようとした瞬間、再び崩れ落ちる。どうやらまだ本調子ではないようだ。  
「うちのアホがとんだ迷惑かけちまったな。とりあえず…保健室まで送るわ…ヒューマン。手を貸せ」  
「え〜。女の子に力仕事しろって?」  
「テメェは片手でジャッジメント振り回してる癖によく言うぜ…しかもこれはお前のせいだろ! 少しは反省しやがれ!」  
「そ、そんなに怒らなくても大丈夫ですよ? ほら、ロッシ先生も強いですし…」  
 ヒューマンを再び叱るギルガメシュに慌ててキャンティ先生が助け舟を出した時だった。  
 その矛先はくるりと変わった。  
「それと!」  
「は、はい!」  
「教師が戦闘不能の1つや2つでパニックになんじゃねぇ! 俺達が来なきゃこいつ死んでたぞ!」  
 ギルガメシュの凄まじい剣幕にキャンティは震えながらも頷き、慌ててエルフが二人の間に入る。  
「あの、すいません。先輩も悪気があるわけじゃなくて…」  
「う、うん。いいのよ…私が至らなかったから…」  
 へこむキャンティ先生の背中を優しくなでるエルフ。  
 そしてその前では文字通りロッシ先生を引きずるギルガメシュ。ヒューマンが上半身を持てば運べるのだが持っていないので引きずられている。  
 少なくとも、クロスティーニ学園までの道のりは平和な日常だった。  
 
 …きっと、この頃までは。  
 

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