頭を撫でる大きな手。大きな背中。少し大きすぎる声。  
何でも知っている。何でも答えてくれる。知らない世界をたくさん教えてくれる。  
「おかえり、父さん!ねえ、今度はどんなとこ行ったの!?」  
「よーう、半年ででかくなったなあ坊主!話の前にほら、土産だ!」  
見たこともない物。見たこともない生き物。子供の冒険心を大いにくすぐる、たくさんの話。  
「何これ?剣……持つとこない?」  
「そいつはパタっつってな、ほれ、根元がガントレットみたいだろ!?その中に握れるとこあるから、持ってみな!」  
「すごいこれ!どこで見付けたの!?」  
「あ〜……ちぃっと、よそ様の船に食糧分けてもらいに行ったときにな!」  
決して他人に誇れる職じゃない。それでも、親父は俺の誇りだ。  
「ねえねえ、父さん。他の国の女の人って……きれいだった?」  
「ん?そうだな、今回のとこはきれいだったぜ!こう、肌の色が日焼けしたみたいに黒っぽくてな、胸もこう、しっかりした張りが…!」  
後ろから聞こえる咳払い。引きつる顔。俺は多分笑顔だっただろう。  
「ほぉ〜う。その話、もうちょっと詳しく聞きたいねぇ?」  
「……お、お前……計ったな、坊主ー!」  
「へへへー。父さんいつも言ってるでしょ?女の人には優しくしなきゃダメって」  
「教えを守ってることは感心だけどよぉー、男なら男の事情もわかってくれよなー!」  
まるで友達のようで、それでもやっぱり尊敬できて、ちょっと困った人。  
数少ない、家族での記憶。そこにはいつも、あの人がいた。  
 
 
「おお、クファンジャルだ!こいつは見ての通り、極端に曲がった刃が特徴でな、普通に振るだけで突き刺し、引き裂くって動きになる。  
小型ながら殺傷能力は十分、頼りになる武器だな!」  
「ほんと、君武器には詳しいよね」  
とある教室の一室で、エルフとバハムーンが話している。二人の前には二冊の本が置かれ、ページを繰る音が静かに響く。  
「こんな特徴的な刃がついてんだから、余裕でわかるだろ?」  
「だったら、こんな特徴的なんだからこれもわかるだろ?」  
そう言ってエルフが本のページを叩くと、たちまちバハムーンの眉間に皺が寄った。  
「えっ……と……火属性は、水に弱くて……み、水が土に…」  
「違うって。火に水、水に風、風に土、土に火だってば」  
「わぁーかってるって!火に水!水に風!風に……か、風に……火!じゃなくて土!土に火!ほれ言えた!」  
「じゃ、問題。あるダンジョンでは火、風、光、闇属性を使うモンスターがいます。この場合、防具の属性はどうするとよいでしょうか」  
エルフが言うと、バハムーンの顔がどんどん歪んでいく。  
「え……ええっと……み、水だ!」  
「ぶー」  
「じゃ、火か!?」  
「外れ」  
「じゃあ何だよ!?」  
「正解は無属性」  
「何だよそれ!?引っかけ問題かよ!?」  
「常識問題だよ」  
 
心底疲れたような溜め息をつくと、エルフはうんざりした視線を向ける。  
「ほんと、なんで武器防具そのものには詳しいのに、こんな簡単なのがわからないんだよ…?」  
「くっ……こ、こんな問題わからなくたって、海賊には…!」  
「ここ卒業できなきゃ、夢も何もないだろ」  
「……ごもっとも」  
「さ、少なくとも属性基礎くらいは覚えられるように、しっかり復習しようか」  
そうして、ほぼ白紙だったバハムーンの属性学のノートに、この時期にしては異常なほど基礎的な知識が書き込まれていくのだった。  
 
「まったく、バハムーンには参るよ。夢があって、それに対する努力してるのはいいけどさ、苦手を克服しようとしないからなあ」  
「へー、そんな弱点あったんだー。今度いじってみよっと、ひひ!」  
「フェアリー、水」  
「はーい」  
昼過ぎの学食に、珍しく授業の予定などがなかった女子三人が集まっていた。エルフとフェアリーはケーキを食べており、ドワーフは  
常人が昼食と呼ぶものを、おやつと称して食べている。その間、エルフのペットは足元に行儀よく座っている。  
「あれ、ドワーフどこ行くんだい?」  
「おしっこ」  
「またか。水飲みすぎって感じもしないけどねえ」  
エルフの言葉には答えず、ドワーフはさっさとトイレに向かって行った。  
「ただいまーって、ドワはー?」  
「トイレだって」  
「ふーん……パン、一口齧ったら怒られるかなあ?」  
「殺されるんじゃないかな」  
「だよねー。やめとこっと」  
今日のフェアリーは悪戯癖が落ち着いているようで、エルフとも普通に会話を交わしている。  
「次の探索場所、どこになるのかなー?フェア、楽なとこがいいなー」  
「そんなんじゃ本戦にならないだろうし、そうはいかないだろうね。もっとも、その意見にはぼくも賛成だよ」  
そこに、ドワーフが戻ってきた。彼女はフェアリーの持ってきた水を一息で飲み干すと、空になったグラスを再びフェアリーに突き付けた。  
「また?よく飲むねー」  
「飲んじゃ悪いの?」  
「ううんー、全然。じゃ、行ってくるねー」  
「飲むのもそうだけど、君ほんとよく食べるよね。それで太らないのが不思議だよ」  
「太るほど怠けてない。あと……ちょっと身長伸びてたし」  
少し気にしていたのか、そう言うドワーフの顔はほのかに嬉しそうだった。  
「えー、いくついくつー?」  
水を持ってきたフェアリーが、実に興味深げに尋ねると、ドワーフは少し誇らしげな顔をした。  
「131。大台乗った」  
「ええーっ!?フェア、まだ120いってないのにーっ!ずーるーいーっ!」  
小さいとは思っていたが、改めて具体的な身長を聞くと本当に小さいんだなと、エルフは二人の会話を聞きながら思っていた。  
 
「……ま、いいやー。フェア、これでもBカップあるもんねーだ!」  
「ふーん、私はぎりぎり足りなかった。別に胸なんかどうでもいいけど」  
「………」  
どちらともなく、二人は黙ったままのエルフへと視線を移した。そのエルフは、視線が合わないようにゆっくりと目を背ける。  
「……エルー、エルはどうだったー?ひひひ!」  
「……し、身長は170超えてたよ」  
「身長じゃなくって、バースートー。ねー、いくつだったのー?ねーってばー」  
「………」  
エルフは顔を真っ赤にしつつ、視線を逸らし続ける。すると、不意にドワーフが席を立った。またトイレにでも行くのかと思っていると、  
彼女はエルフの後ろに回り込み、突然その胸を鷲掴みにした。  
「ひやぁ!?なな、何するんだよ!?」  
「………」  
ドワーフは何も言わず、再び席に着くと食事の続きを始めた。そして、ぽつりと呟く。  
「……トリプルA」  
「なっ…!」  
「ぶっ!あっはははは!!あはっ、あはははは!!!ト、トリプルっ……あはははははは!!!」  
「ひ、人の胸いきなり鷲掴みにして、おまけにそんなこと言うとかっ…!」  
「掴める胸もなかったくせに、大袈裟な言い方しないで」  
「っ〜〜〜!!!」  
「ひひっ、ひゃははははは!!!ド、ドワさいこー!!お、お腹痛いー!!!」  
顔を真っ赤に染め、涙目になってドワーフを睨むエルフに、笑い転げて椅子から落ちそうになっているフェアリー。そんな中、  
ドワーフだけは面白くも何ともなさそうな顔で食事を続けている。その姿を、エルフのペットは憎らしげに睨んでいたが、さすがに相手が  
悪すぎるため、手が出せないようだった。  
「あはっ……はぁ、はぁ……あ〜ぁ、顎痛い……でも、エル170以上あったんだー。じゃあセレとかフェルって、相当でっかいねー」  
「ん、え、ああ……セレスティアはぼくと同じくらいだけど、フェルパーはぼくより少し大きいね。バハムーンなんか190近いだろ」  
「ねー。エルってフェルのどこがいいのー?」  
唐突な質問に、エルフの顔が再び赤くなる。  
「なっ……そ、それはほら……同じ、ペット連れだし、色々と、まあ…」  
「ふーん?でもそれなら、セレの方がよくなーい?ペット連れてるし、優しいし、ドワ止めれるのってセレぐらいだしー」  
「なら、そのままドワーフと仲良くしててほしいと思うな、ぼくは」  
微かに殺気の篭った視線を感じつつ、エルフはそう言って流すことにした。さらに言うなら、セレスティアの潜在的な狂気が少し  
怖いという理由もあるのだが、あえてそこまでは言わなかった。  
「ねー、ドワはセレと仲いいよねー。どの辺が好きー?」  
色々と行動と思考の幼いフェアリーだが、人並みに恋愛話などは好きなようで、ドワーフにも臆さず尋ねている。  
「……別に、好きって思ったことはない。ただ、セレスティアさんはそんなにイラつかない」  
「あれ、そうなのー?でも、優しいし強いし、完璧じゃないー?」  
「たまに夜中に泣きながら起きたりしてるし、変なとこもある」  
「なんだそれ?ホームシックか何かかな?」  
「フェアは全然わかんないなーそれ。ここ楽しいもんねー」  
やはり彼はよくわからない奴だと、エルフは改めて思った。  
 
「そう言う君こそ、最近はバハムーンと仲良くないかい」  
「えっ!?フェ、フェアが!?そ、そんなことないよ!そんなことないってばー!」  
顔を真っ赤にし、手をぶんぶん振って必死に否定するフェアリーの姿に、エルフは若干呆れていた。これではむしろ、全力で  
肯定しているようなものである。  
「まあいいけどね。ただ、バハムーンの相手してくれるんだと助かるよ。あいつ、装備の話になると止まらないからさぁ」  
「あー、そこはフェアも嫌ーい。セレに任しとけばいいんじゃなーい?」  
「私も関わりたくない。セレスティアさんが適任だと思う」  
かくして、女子連中の間ではバハムーンの話し相手はセレスティアということに、全員一致で決まったのだった。  
 
翌日、一行はドラッケンの職員室の大掃除という課題を受け、各地を回っていた。その最後に、カーチャ先生の机周りのゴミを  
処理するため、彼等はタカチホ方面へと向かっていた。  
「にしてもさー、これ中身何なんだろうねー?」  
「さあ……しかし、ゴミだというのであれば、あえて中身を確認するまでもないでしょう?」  
セレスティアの意見はもっともではあるが、この『ゴミ』を詰めている最中のカーチャ先生の態度は、決して普通のものではなかった。  
そのため全員が中身に興味を持っていたが、もしも中身を見たことがバレれば、何かしらの形で単位に響くかもしれない。  
そんな考えのおかげで、彼等は辛うじて中身を覗こうという衝動に勝てていた。  
「それよか、さっきの戦利品!い〜いもんが手に入ったよなあ!」  
全員が即座に『始まった』と思い、セレスティア以外の仲間がバハムーンから距離を取った。  
「見ろこれ!フランベルジュ!波打った刀身にヒルトの装飾……俺、こういうの一番好きなんだよなあ……芸術的な美しさと、その裏に  
潜んだ狂気じみた破壊力!それを両立させたこいつは、ある意味全ての剣の最上級だと思うぜ!ま、波打った刀身ってだけならクリスも  
そうなんだけどよ、このでかさで、この形…!レイピアタイプのフランベルジュも捨て難いけどなあ、いいよなあ、これ…」  
「は、はぁ…」  
「こいつはな、元々の意味はフランボワヤン……っつったかな?まあ平たく言やあ炎の形を表す言葉が、そのまま名前になったんだよ。  
ほれ、刀身の揺らめき具合が炎に似てるだろ?この刃はな、芸術的な美しさを持っちゃあいるが、その実態は敵の肉を抉り、飛び散らせ、  
傷を広げて治りにくくする役目もあるんだ。だからこそ、こいつは最高に美しい。役目を果たせねえ道具ってのは、悲しいもんだからな。  
陸にある船とか、倉庫に眠ってる宝石とか、間抜けなもんだろう?」  
「そ、それにしてもバハムーンさんは本当に何でも知ってますね。一体、その知識はどこから得たのですか?」  
さすがにセレスティアも毎回相手にはしたくないようで、話題を別の方向へと変えた。すると、バハムーンの表情が少し神妙なものに  
変わった。  
「あ〜、元は親父の影響だな。俺の親父、海賊でよ。こういう武器とか好きで集めてたんだ。子供の憧れだぜ、ああいうのはよ」  
「そうだったんですか。しかし、海賊…」  
「言いたいことはわかるぜ。親父は紛れもねえ犯罪者だ」  
しかしそれに関しては何の負い目も感じていないようで、バハムーンの口調はあくまで変わらなかった。  
「それでも、親父は俺の誇りだ。最後に、半年後に帰るって言って家出てから、もう十年以上帰らねえけどな」  
「………」  
フェルパーはその話を知っていたらしいが、それ以外の仲間は初耳であり、エルフとセレスティアは言葉に詰まった。すると、すぐに  
重い空気を察したらしく、バハムーンはニカッと笑った。  
 
「んな重っ苦しく考えんな!海で死んだなら海賊としちゃ本望だろうし、生きてりゃ会うこともあらぁな。そん時は、お袋に  
ちょっと寂しい思いさせた分、俺が代わりに一発ぶん殴るって決めてるんだ」  
「ドがつくほどに、強い方ですね」  
セレスティアの言葉は、何の飾り気もない本心からの言葉のようだった。それに笑顔を返してから、バハムーンは後ろを振り返った。  
「ん?おい嬢ちゃん、どうした?顔赤いぞ?」  
「えっ!?あっ、えっと……べ、別に、何でも……何でも、ないよ…」  
慌ててゴミ袋から離れ、なぜか途切れ途切れに言うフェアリー。それに対し、バハムーンはそっけなく答えた。  
「そうかい、暑さには気をつけろよ」  
どう見ても何でもないわけはないのだが、一度こうと言うと他は絶対に認めない性格なのはわかっている。なので、バハムーンはそれ以上  
追及しなかった。  
一行は炎熱の穴ぐらに着くと、休む間もなくその中を進み出した。内部はさすがに暑く、全員ひっきりなしに汗を拭っている。  
特にドワーフは全身の毛が汗で張り付いて普段よりほっそりした見た目になっており、フェアリーに至ってはレオタードが透けて  
しまっている。とはいえ、フェアリーは普段から服装を意識しないようにしているため気付いておらず、男連中もそれを楽しめるほどの  
余裕などまったくなかったが。  
少し奥へと進み、溶岩が特に激しく燃え盛るところまで来ると、バハムーンがゴミ袋を持ち上げた。しかしすぐには捨てず、それを  
じっくりと眺める。  
「……やっぱり、中身気になるよなあ」  
「それはそうだけどね、捨てないってわけには…」  
「いやいや、もちろん捨てるつもりだぜ。けどよお」  
そこまで言って、バハムーンはニッと笑った。  
「捨てる前に、中身を見るなとは言われて…」  
「キャーッ!ダメーぇ!」  
突然、フェアリーが悲鳴を上げ、袋を思い切り突き飛ばした。しかし不幸だったのは、フェアリーの位置からだと袋を挟んだ反対側に  
バハムーンがいたことである。  
「うおっ!?」  
いくら体格が違うとはいえ、不意打ちで、しかも全力で突き飛ばされたバハムーンは、大きく体勢を崩した。  
「わあああああ!!」  
「うわっ、バハムーンさん!」  
間一髪、セレスティアが飛び付き、辛うじて落下するバハムーンの尻尾を掴んだ。しかしバハムーンの巨体に引っ張られ、セレスティアも  
足場を踏み外した。  
「うわっ、ちょっ……だ、誰かぁ!」  
「バハムーン!セレスティア!」  
フェルパーが駆け寄り、セレスティアの腕を掴む。だが、男二人の体重を支えられるほどの力はなく、フェルパーもずるずると  
引きずられていく。  
「ま、まずい!エルフ!」  
「み、みんな大丈夫かい!?」  
即座にエルフが駆け寄り、落下寸前のフェルパーの腕を掴んだ。辛うじて落下は止まったものの、ひ弱な術師の力では引き上げることも  
できず、また支えきれなくなるのも時間の問題だった。  
 
「ぐっ……ううぅぅ!ぼ、ぼくじゃこれは……ドワーフぅ…!」  
「私の体重じゃ無理。死にたくないし。それより、こっちやる」  
「ひ、ひぃっ!」  
ドワーフに睨まれ、フェアリーがビクリと体を震わせた。一方の男子連中は、そんな上の状況など知る由もない。  
「うあっちちち!!あ、頭が焼ける!脳が溶ける!尻尾がちぎれるー!!」  
「ぐぅぅ……あ、上がってこられるか…!?」  
「無理ですっ……こ、これ以上は支えるのもっ…!ドがつくほどに、やばい状況ですねえっ…!」  
宙吊りにされたバハムーンに、その彼を片手で掴んでいるセレスティアの限界は近い。引き上げようにも、エルフは力が足りず、  
フェルパーも半分落ちかかっているため、力が出せない。  
ゴミ袋はとっくの昔に溶岩に落ち、派手に炎を上げている。中身は一瞬にして炭化し、もはや何であったかは理解できない。  
彼等も一度落ちてしまえば、そうなるのは目に見えている。もし灰も残らず焼かれてしまえば、もはや蘇生魔法ですら復活は無理だろう。  
セレスティアもその状況は理解しており、生き延びるため必死に思考を巡らせる。そしてようやく、一筋の光明を見出した。  
「バ、バハムーンさん!わたくしの背中のっ……鎌を、取れますか!?」  
「か、鎌!?手ぇ伸ばせば、何とか……痛ぃってえぇ!!ゆ、揺らすなぁー!」  
「では、それを掴んで下さい!早く!」  
「何を……ああ、そういうことか!」  
バハムーンもセレスティアの考えを理解し、尻尾の痛みを必死に堪え、セレスティアの持つデスサイズヘルを掴んだ。  
「フェルパーさん、いいですか!?『せーの』で手を放してください!」  
「馬鹿言うな!死ぬ気か!?」  
「死にたくないからこその提案です!返事は待ってられません!バハムーンさん、いいですか!?」  
「早めに頼む!」  
「お、おいちょっと待って!僕は放す気はっ…!」  
「いきますよ!せぇ、のっ!」  
フェルパーの言葉を無視し、セレスティアは大きく羽ばたき、同時に彼の手を全力で振り払った。それに一瞬遅れてバハムーンが  
上体を起こし、岩に向かって鎌を突き刺した。尋常ならざる切れ味とバハムーンの力により、鎌の刃は岩を突き通し、溶岩に落ちる直前で  
バハムーンの落下は止まった。その前に、セレスティアはバハムーンからも手を放し、飛行して足場へと戻っていた。  
「ふぅ……危なかったですね、フォルティ先生なら死んでましたよ」  
「俺は今も軽く死にそうだけどな!つうかお前、『せーの』でって、普通『の』から一拍置くだろ!?」  
「あ、すみません。わたくしは置かないのが普通だと思っていたもので……ドワーフさん、ストップ!ストップ!!」  
フェアリーの羽を毟ろうとしているのを見つけ、セレスティアは慌ててドワーフを止めた。  
「なんで?これあると溶岩に放り込めないでしょ」  
「いえ、放り込まないでください。フェアリーさんにはわたくしの鎌を回収してもらうという任務がありますので」  
「セレスティアさんがやれば済むでしょ」  
「わたくしの翼では、滞空や微調整はしにくいんですよ。なので、フェアリーさんに頼ませてください」  
何とか話を付け、バハムーンはエルフの武器であるオロチをロープ代わりに、全員で引っ張り上げて救助した。それが終わると、  
フェアリーは岩に刺さった鎌を何とか引き抜き、それをセレスティアへと返した。  
「し、死ぬかと……怖え……溶岩怖え…」  
「で、セレスティアさん?もうそいつ放り込んでもいい?」  
「いえ、それはその、わたくしも他の方も無事ですし、鎌も回収してもらいましたし、大目に見てあげてください」  
やはり、ドワーフはセレスティアの言うことだけは大人しく聞く。おかげでようやく死の危機から解放され、フェアリーがホッと  
息をついた瞬間、後ろから低い声が響いた。  
 
「よかったなあ、お咎めなしでよお」  
「ひっ!?」  
ビクッと体を震わせ、フェアリーは慌てて振り向いた。視線の先では、バハムーンがじっとこちらを睨んでいる。その目は完全に  
据わっており、そこからも深い怒りが感じられた。  
「あ、あ、あのっ……フェ、フェアわざとしたわけじゃ……わざとじゃないもん、わざとじゃないもん…!」  
「そうだなあ、わざとじゃなきゃあ許されるんなら、何でも解決すらぁな」  
「ですが、神はフェアリーさんの行動を…」  
「ああいや、お前の神はいい。人の世界の話だ」  
そうセレスティアに返す時だけはいつも通りの口調で、バハムーンはさらっと言った。  
「わ、わざと、じゃ…」  
「……もういい。仕事は済んだし、帰るか。こんなとこ、長居はしたくねえしな」  
返事を待たず、バハムーンは歩き出した。他の仲間も一瞬遅れて、その後に続く。フェアリーはドワーフとバハムーンにビクビクしつつも、  
いつも通り後ろからついて行った。  
洞窟を抜け、中継点を通り、ドラッケンへと戻る。その間、バハムーンは一言もフェアリーと口を利かず、またフェアリーも声を  
掛けあぐねていた。その雰囲気に、一行の間には少しばかり不穏な空気が漂っていたものの、バハムーンならばそう悪いことにも  
なるまいという信用があるため、それほど重く考えている者はいなかった。  
課題を終え、夕食になっても、バハムーンはフェアリーを無視し続ける。さすがに罪悪感があるのか、フェアリーは料理を取りに行く  
バハムーンの背後に、おずおずと近づいた。  
「ね、ねえバハ……あの…」  
言いかけたフェアリーを、バハムーンは冷たい目で睨みつけた。その眼光に委縮し、フェアリーが言葉に詰まると、バハムーンは  
何事もなかったかのように行ってしまった。  
食事の間も話しかけられず、通信魔法で会話を試みるも無視され、部屋に戻るという段になって、フェアリーは彼の後ろをおずおずと  
ついて行った。そして部屋に入ろうとした瞬間、全身の勇気を振り絞って再び声を掛けた。  
「あ、あのっ、バハ!」  
「………」  
やはり冷たい目で睨まれ、フェアリーはビクッと首をすくめた。しかしそれではダメだと思ったのか、若干震えながらもバハムーンに  
近づいていく。  
「その、えと……ど、洞窟、のは……ごめ……きゃあっ!?」  
フェアリーが手の届く範囲に来た瞬間、バハムーンは突然フェアリーの首根っこを掴み、部屋の中へと放り込んだ。そして自身も素早く  
部屋に入ると、しっかりと鍵を掛ける。  
「てめえは毎度毎度、謝るのが遅えんだよ」  
「う……な、何よー!フェアのこと、無視しまくったのはそっちでしょー!?私は別に、わ、悪く……悪く、ない……もん…」  
声は後半からどんどん力を失くし、最後はよく聞き取れないほどだった。また、必死に反抗的な態度を取ろうとはしているらしいのだが、  
その目は今にも泣きそうなほどになっている。およそ、不安九割、期待一割と言ったところだろう。  
一方のバハムーンは、実はそれほど怒っているわけではなかった。これまでの態度も、彼なりに考えがあってのことである。  
「自分が悪いと思ってんなら、それでも謝るぐらいはできるんじゃねえのかよ?ああ?」  
「う……う、うるさいなー!聞こうともしなかったくせにー!馬鹿!バハの馬鹿ぁー!」  
フェアリーが言い終えるか終えないかというところで、バハムーンは彼女をひょいっと抱え上げてベッドに座ると、いつものように  
膝の上に横たえた。  
 
「あっ、やっ……もうやだ!痛いのやだぁ!」  
「悪いのはてめえだろ?」  
教師の鞭を手に取り、ゆっくりと振り上げる。それを見て取ると、フェアリーの顔がサッと引きつった。  
「ま、待って!フェア、まだこれ着たまんまっ…!」  
パンッと、乾いた音が部屋に響く。  
「あっ……ぎっ…!」  
それほど強く叩いたわけではないが、全ての感覚を増幅させるレオタードは必要以上の痛みを彼女に伝え、たちまちフェアリーの目には  
涙が浮かんだ。  
「い、痛いっ!痛いぃ!やめてぇ!お願い、せめてこれ脱がせてぇ!」  
それには答えず、再び鞭を振るう。フェアリーは悲鳴を上げ、何とか逃げようともがくが、バハムーンの力に抵抗できるわけもない。  
「痛いよ!痛いよぉ!もうやめて!許してぇ!」  
必死の哀願を無視し、バハムーンは何度も何度も鞭を振るう。彼女の小さな臀部はたちまち真っ赤に染まり、熱を持ち始めた。  
「痛い……痛い、痛い、痛いぃ…!きゃあっ!!お、お願い許してぇ!!もうやめてくださいぃ!!」  
乾いた音が響く度、フェアリーの悲鳴が上がる。その声は叫び声から哀願に変わり、泣き声になり、そして嬌声へと変わっていく。  
「痛いよ……痛いよぉ……あうっ!?お、お尻……痛いぃ…!んんっ!!……ゆる……し、てぇ…!」  
内容こそ哀願であっても、その声には艶が混じり、抵抗もほとんどない。全身には玉のような汗が浮かび、ただでさえ限りなく薄い  
レオタードは、ところどころ完全に透けていた。特に股間部分はぐっしょりと濡れており、鞭で叩かれる度にその染みは広がっていく。  
恐らくは無意識に太股を擦り合わせるフェアリーを見ながら、バハムーンはさらに強く鞭を振り下ろす。  
「ひぎゃあっ!?いた、いっ……やめて……許してぇ…!」  
普段であれば、そろそろ頃合いといったところだが、バハムーンは鞭を振り上げ、二度三度と続けざまにフェアリーの尻を打ち据えた。  
「やぁぁ!!な、なんでぇ!?もう、いっ……うあああ!!痛いよ、やめてよぉ!!」  
つい口走ったらしい一言に苦笑いを浮かべ、しかしすぐ無表情に戻すと、バハムーンは努めて感情のこもらない声で言った。  
「なんでって言ったか?」  
「えっ!?あっ、あっ、あの、あのねっ!それは、別に、あのっ…!」  
「何度も何度も似たようなこと言われて、何度も何度もこんなこと繰り返して、いい加減こっちだって腹も立つんだよ」  
一瞬、フェアリーはホッとしたような表情になり、慌てたように反抗的な目つきをした。  
「う、うるさいなー!今回はわざとやったわけじゃないし、もういいでしょー!?フェ、フェアだって焦ったんだからー!」  
「わざとじゃなきゃ、人を殺しかけてもいいってのか?」  
「う……う、うるさいうるさいうるさぁーい!!バハなんか一回死んじゃえばよかったんだぁー!」  
バハムーンがフェアリーの気質を理解しているように、フェアリーも何となくではあるが、バハムーンの意図を理解し始めている。  
普段よりも激しいお仕置きの気配を感じ、普段ならばさすがの彼女ですら言わない言葉を吐き捨てた。  
その言葉を待っていたかのように、バハムーンは僅かに目を細めた。  
「……謝りもしねえで、そんな減らず口を叩くか。てめえな、今日という今日はいつもみてえに軽く許してもらえると思うなよ」  
言うなり、バハムーンはレオタードに手を掛け、乱暴に剥ぎ取った。  
「きゃああ!?や、やだっ!バハのエッチぃ!か、返してぇ!!」  
慌てて奪い返そうとしたフェアリーを押さえつけ、バハムーンはベルトを外し、ズボンを下ろした。そしてやおらフェアリーを  
持ち上げると、その足を開かせ、自身のモノの上に座らせるように置いた。  
「ひっ!?う、うそっ……うそ、だよね…!?や、やだ、やだぁ…!」  
途端に、フェアリーの顔が恐怖に歪み、ガタガタと震えだした。  
 
「やだっ……な、何でもするよぉ…!ちゃ、ちゃんと舐めるし、全部飲むよぉ…!だから……だ、だから、それだけはやめてぇ…!」  
目には涙が浮かび、顔色は真っ青になっている。声音からも、フェアリーが本気で怯えているのは感じ取れる。それだけに、バハムーンは  
判断を迷っていた。  
これまで、フェアリーとするときは口や手でされるだけで、最後までしたことはなかった。というのも、あまりに体格が違うこともあり、  
またフェアリーがそれに対して恐怖を覚えていたからだ。しかし、いくらバハムーンといえど若い男子であり、一度くらいは最後まで  
してみたいという気持ちもある。また、フェアリーも気分が昂れば受け入れる可能性があるのではないかという考えもあった。  
「悪いことをしたら、なんて言うんだ?」  
「え…?」  
しかし、やはりあまりにも怯えているように見えるため、バハムーンは確認するように尋ねた。  
「ちゃんと言えりゃあ、これは勘弁してやる。悪いことをしたら、なんて言うんだ?」  
再び尋ねると、フェアリーはガタガタ震えながらバハムーンの顔をじっと見つめていた。が、不意に反抗的な目つきをしたかと思うと、  
体を押さえる彼の腕に思いっきり噛みついた。  
「痛って!?」  
「い、いいからさっさと放せ馬鹿ぁー!!この変態!!セクハラ野郎ー!!」  
呼吸と体を震わせ、怯えの色を必死に隠そうとしているフェアリー。その目を正面から見つめ、バハムーンは彼女の肩に手を掛けた。  
「そうかい、それが答えだな」  
フェアリーが何か言おうと口を開けたが、バハムーンはそれを無視して彼女の肩を思い切り押した。  
みぢっと小さな音が鳴り、先端部分がフェアリーの中に入り込んだ。同時に、フェアリーが悲鳴を上げる。  
「あっ、ぎぃっ!!!ぐ、がっ…!!!」  
あまりの痛みに目を見開き、食いしばった歯の隙間から悲痛な声が漏れる。フェアリーの小さな秘裂は既に限界以上に広げられ、  
結合部分には早くも血が滲んでいた。  
一方のバハムーンは、初めて感じる快感に、ついそのまま根元まで押し込んでやりたい衝動に駆られていた。しかし悲痛なフェアリーの  
表情が、辛うじてその衝動を押し留めていた。  
「あ、ぐっ……うぅあああぁぁ…!」  
ぽろぽろと大粒の涙をこぼし、ただただ痛みに震えているフェアリー。さすがに声をかけようかと思ったとき、一瞬早くフェアリーが  
口を開いた。  
「ご……ごめんなさいいぃぃ…!」  
極めて僅かながらも、その声から苦痛以外の感情を読み取り、バハムーンは内心ホッと息をついた。  
「あ、謝りますぅ…!だからっ……だから、これ以上は入れないでくださいぃ…!し、死ぬ……死んじゃいますからぁ…!」  
「………」  
一瞬迷って、バハムーンは彼女の肩にかけている手に力を込めた。  
「これまで謝りもしなかったてめえの、そんなわがままを俺が聞くと思うのか?」  
「ひ、ひぃぃ…!!やだ、やだぁ…!!」  
だが、フェアリーが本気で泣きそうになった瞬間、バハムーンは不意に力を緩めてやった。  
「まあ、今回は特別に聞いてやる。その代わり、きっちり俺を満足させろ」  
その言葉に、フェアリーは涙と鼻水を垂らしつつも、何とか笑顔を浮かべた。  
「あ、ありがとうございますぅ…!グスッ……頑張り……ますぅ…!」  
バハムーンの肩に手を掛け、フェアリーはほんの少し腰を動かした。途端に激痛が走り、思わず呻いて動きを止めてしまう。  
 
「うあっ……い、いたいぃ……ひっく…!」  
痛みに体を震わせ、溢れる涙を必死に拭うフェアリー。それでも必死に要求に応えようとする彼女の姿は可愛らしくもあり、また震えが  
伝わることもあって、バハムーンとしてはそれだけでも意外と気持ちいいのだが、あえて冷たく声を掛ける。  
「それで何かしてるつもりか?自分でできねえってんなら…」  
「や、やめてぇ!ちゃんとしますっ、ちゃんとしますからぁ!うぅ……んぐぅ〜っ…!」  
唇をぎゅっと噛み締め、フェアリーは再び腰を動かす。やはり痛みが強いらしく、その動きはないに等しいようなものだったが、  
時間が経つにつれて、少しずつ動きが大きくなっていく。  
「んん……はぁ…!くっ……い、たい……あう…!裂け……ちゃう、よぉ……くぅ…!」  
それに伴い、声にも少しずつ変化が現れる。純粋な泣き声だったものが、微かな熱を帯び始め、苦痛を訴える言葉は、苦痛を自身に  
言い聞かせるようなものになってきている。  
貞操を無理矢理奪われ、破瓜の痛みを耐えながら奉仕を強要されるこの状況に、フェアリーは明らかに快感を覚えていた。  
バハムーンは彼女のきつすぎる膣内の感触を楽しみつつ、ならばもう少し無茶をしても大丈夫かと考える。  
右手を振り上げ、やおらフェアリーの小さな尻を打ち据える。途端にフェアリーは悲鳴を上げ、同時に動きが止まった。  
「あああっ!!い、いたいよぉ!!あ、あそこに響くから叩かないでぇ!!」  
「だったら、もう少ししっかり動け」  
そう言い、尻を強く打つ。フェアリーは再び悲鳴を上げ、何とか深く入れようと体重を掛けた。しかし、元々の体格差とひどい痛みにより、  
ほとんど入れることはできなかった。  
「あうぅ……ご、ごめんなさいぃ…!む、無理ですぅ……お、おっきすぎて……入らないよぉ…!」  
また痛みが強くなったのか、フェアリーの目には再び涙が浮かんでいた。バハムーン自身、これ以上深く入れるのは無理だと思って  
いたため、彼女が無理をする前に声を掛けてやることにした。  
「だったら、もっと締めてみろ。それぐらいできんだろ?」  
「や、やりますぅ……やりますから、無理矢理入れたりしないでぇ…!」  
実際にやられれば地獄でも、妄想としてはそれなりに興奮するらしく、フェアリーの表情は再び陶然としたものに戻りつつあった。  
同時に、バハムーンのモノがきゅうっと締めつけられる。体格差のおかげで結構な締め付けではあるが、元々が非力な種族のため、  
締めつける力自体はさほど強いものでもない。刺激としては十分であり、実のところバハムーンは出してしまわないよう耐えるのに  
それなりの努力を要していたのだが、その締め付けの弱さを口実にさらなる責めをしてやろうと考え付く。  
中指を舐めて唾液を絡ませると、バハムーンはフェアリーの尻たぶを掴んだ。そして軽く開かせると、無防備な後ろの穴に指を突き入れた。  
「きゃああぁぁ!?なっ!?ちょっ……うあっ!なんっ、やっ、そんなっ……うああっ!!」  
途端にフェアリーは悲鳴を上げ、予想外の刺激と恥ずかしさに混乱しているようだった。思った以上の反応に、バハムーンは思わず  
ニヤリと笑みを浮かべた。  
「少しは締まるじゃねえか。ほら、もっと強く締め付けてみろ」  
「ちょっ、だっ、そこお尻っ……うあああぅ!?ゆ、指曲げないでぇ!!!」  
フェアリーはバハムーンの上体に縋りつくような体勢になり、指の動きを押さえようとしているのか、必死にそこを締めつける。  
それに連動してバハムーンのモノも強く締め付けられ、快感も跳ね上がる。  
「だ、ダメダメダメぇ!!お、おしり出したり入れたりダメぇ!!ひあああっ!!」  
締めつけもさることながら、結合部から溢れる愛液は明らかに量を増し、今やバハムーンの太股を伝うほどにまでなっている。おまけに  
刺激から逃れようと腰を動かすため、不規則な刺激が与えられ、もはやバハムーンの我慢も限界だった。  
 
「くっ……そろそろ出すぞ…!このまま、中に出すからな…!」  
「な、中って!?それよりゆびっ……お、おしりやめてぇ!そ、そんなおしりの中からひろげたりっ…!」  
「ぐっ……出すぞ!」  
ビクンとバハムーンのモノが跳ね、結合部からはたちまち入りきらなかった精液が溢れだした。  
「えっ!?や、あ、熱いぃー!!中痛いっ…!だ、出さないでぇぇぇ!!!」  
それが沁みたらしく、フェアリーは全身を強張らせ、悲鳴を上げる。しかし、やはり苦痛のみというわけでもないらしく、むしろその悲鳴は  
自身をさらに酔わせるためのものに近かった。  
時間を掛けて、じっくりとフェアリーの中へ注ぎ込む。その大半が溢れ出てしまったものの、膣内に射精したという充足感は非常に  
大きく、バハムーンはしばらくその余韻に浸っていた。  
「ああ……あ……おなか……い、いっぱいぃ……もう、はいらない……よぉ…」  
苦しげでありつつうっとりした独特な声に、バハムーンはフッと我に返った。まず後ろに入れている指を抜こうとしたが、直前でふと  
思い直し、そこで吊り下げるような形で彼女の体を持ち上げた。  
「ひやあああっ!?そ、それダメぇ!!!広がっ……お、おろしてぇぇぇ!!!」  
栓になっていたモノが抜け、痛々しく広がった秘裂からどろりと精液が溢れ出る。だが、当のフェアリーはそれどころではないようで、  
涎を垂らしつつ必死にバハムーンの体にしがみついている。  
太股の上にフェアリーを下ろすと、ようやく指を引き抜く。同時に、フェアリーの体がガクガクと震えた。  
「んあああっ!!抜けちゃっ……んあう!!」  
全てが彼女の中から抜け出ると、フェアリーは力尽きたようにうなだれ、バハムーンに体を預けてきた。それを抱き止めてやると、  
ようやく気持ちが落ち着いてきたのか、荒い息をつきながらバハムーンの顔を見上げる。  
「はぁ……はぁ…………あ、あの…」  
「ん?」  
「洞窟……はぁ……危ない目に、あわせて……はぁ……ごめん、なさい…」  
相当気にしてたんだなと、バハムーンは何となく微笑ましい気分で思った。  
「遅くなっても謝ることにしたか。えらいな」  
「……えへへ」  
頭を撫でてやると、フェアリーは嬉しげに目を細めた。  
「それにしてもお前、後ろの方の反応が随分良くなかったか?もしかして、そっちの方が好きなのか?」  
「ええっ!?」  
途端に、フェアリーの顔がボッと音が出そうな勢いで赤く染まり、目は真ん丸に見開かれた。  
「そそそそんなことないよーっ!!お、お尻の方が気持ちいいとかっ……あるわけないもんー!!フェ、フェア変態じゃないもんーっ!!」  
どの口が、と喉元まで出かかった言葉を、バハムーンは辛うじて飲み込んだ。  
「そうか、違うのか」  
「へ、変態はバハの方でしょー!?い、いきなりっ……お、おし、り……に、指入れるとかーっ!!ほんと信じれないんだけどー!!」  
「まあ、別にいいけどよ。その、体は大丈夫か?少しきつかったかと思ったんだが」  
「平気なわけないでしょー!?い、いきなり入れられるしっ、指曲げてグネグネするしっ、引っ張って持ち上げっ…!」  
「尻の方じゃなくて、前の方な」  
「っ!?えと、だ、だ、大丈夫っ!!ち、血もあんまり出てないしっ!!痛いけどっ!!」  
「ならいいんだ」  
そっと抱き寄せてやると、フェアリーはようやく落ち着きを取り戻し、ふーっと大きく息をついた。どうやら相当に消耗していたらしく、  
そのまま目を瞑ったかと思うと、一分と経たないうちに寝息を立て始めてしまった。  
 
仕方ないので体を拭いてやり、起こさないようにそっとベッドに寝かせ、その隣に寝転がる。  
何の気なしにフェアリーの体を見てみると、身長こそ小さいものの、それなりに整った体型をしていることに気付く。胸は大きいわけでは  
ないが、少なくとも膨らみがあるのは見てとれるため、他二人の女子連中に比べればある方と言えるだろう。  
せっかくのそれに一切触れることなく、それどころかどこにも愛撫すらしたことがないことに思い当り、バハムーンは苦笑いを浮かべた。  
「……ほんっと、めんどくせえ関係だよなあ」  
誰にともなく呟き、バハムーンも目を瞑る。そうしてフェアリーの寝息を聞いているうち、いつしかバハムーンも眠りに落ちていた。  
 
昼休みを終え、空席の目立つようになった学食に、ドワーフとセレスティアを除く一行の姿があった。二人がいない理由は、久しぶりに  
ドワーフが他の生徒と諍いを起こし、仲裁に入ったセレスティアに怪我を負わせたためである。ギロチンアックスの腹の一撃で失神した  
セレスティアは保健室に運ばれ、ドワーフは罪の意識を感じている様子はないものの、何となくついていることにしたらしい。  
「ん〜、フェア達、次の本戦出れるかなー?」  
前屈みでテーブルに肘をつくフェアリーが、実に不安げな声で尋ねる。  
「被害は幸い……というより、不幸中の幸いでうちのセレスティアだけだし、どっちもうちのパーティの仲間だし、大丈夫だとは思う」  
肩のペットに餌をやりつつ、フェルパーが答えた。  
「でも、なんでセレスティアが殴られたんだい?」  
「あー、やばそうな気配感じて庇ったみてえだな。あのお嬢ちゃん曰く『止められなかったから腹で殴った』らしいぜ」  
「それでも、フェアだったら死んじゃいそー。ドワの攻撃って、力任せだから刃じゃなくっても……いたたた」  
体を起こしかけたフェアリーが不意に顔をしかめ、再び前かがみの姿勢に戻る。それを見ていたエルフは、不思議そうに首を傾げた。  
「……どうしたんだい、フェアリー?腰でも痛いのかい?」  
途端に、フェアリーの顔が真っ赤に染まった。  
「ふえ!?こここ腰痛いってそんなっ……あっ、やっ、じゃなくって!腰じゃなくってお尻っ……じゃなくってぇぇ!!!そう、腰!!  
腰痛いのっ、朝からっ!」  
「な、何だよ大声出したり……まあ腰にしてもお尻にしても…」  
「だからっ、痛いのは腰だってばーっ!!!」  
「う、うるっさいなあ!!そんな大声出さなくたって聞こえるって!!」  
フェアリーは顔を赤くしながらぜえぜえと荒い息をついていたが、やがて心を落ち着けるように大きく息をついた。  
「ふぅ〜〜〜……ひりひり……じんじん…………んふふ…」  
「な、何この子……なんか気味悪いんだけど…」  
そんな二人の様子を見つめながら、フェルパーは肘でバハムーンを小突いた。  
「バハムーン……君、また何したんだ?フェアリーをドMにでも調教してるのか?」  
その言葉に、バハムーンは首を振った。  
「いいや、逆だ。俺がドSに調教されてるんだ」  
「なんだそれ…?ま、フェアリーの相手してくれるんだったら、僕もエルフも助かるけど」  
「ああ、そうさせてもらうぜ。むしろ、こんな面白い相手、手放してたまるかってな」  
面倒ではあっても、不快な関係ではない。むしろ、口にも態度にも決して出さないものの、お互いに大切な存在だと思っている。  
求める者を与え合う、そしてお互い以外ではそれを望めない関係。そういった面もひっくるめて、この上もない貴重で大切な存在である。  
しかし少しずつ、お互いにエスカレートしてきているな、とは二人とも内心思っている。ならばどこかで止めるかと言えば、答えは  
否定以外に存在しない。むしろ大歓迎だとすら、二人は思っている。  
深いところで実は似た者同士の二人は、まさにお似合いのカップルなのだった。  
 

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