生徒会室から見える中庭が水没しそうな勢いで雨が降っている。
私はそれをパイプ椅子を揺さぶりながらボーっと見ている。
「雨、止みそうですか?」
尋ねたのは後ろの長机の向こう側で自分の尻尾に丹念にブラシをかけているフェルパーの少年、
親兄弟を除けば私の浅い人間関係で最も親しい相手だと思う。
「見てのとおり、今外出たら命が危ないレベルだよ。」
「普段から危険地帯に率先して突っ込んでく輩が、
雨風ごときで表にも出られなくなるなんて難儀な話ですね。」
「冒険者ってのは危険地帯を安全に歩く為の準備に全力を尽くすもんだからな。
自分から死にに行く連中は勇者って言うんだよ。」
「なら全力で装備を整えて安全に突破すればいいんじゃないですか?」
「悪天候の時点で安全のために断念すべきだよ。」
普段どおりの何気ない会話の心地好さに尻尾がゆったりと揺れる。
変わらぬ日常というのは、変化を求めて期待と不安を抱え歩き進める冒険の楽しさとはまた違った幸福感がある。
ふと何かが鼻をくすぐる。
しまった!と思い慌てて尻尾を押さえる。が、辺りは抜け始めた夏毛がゆらゆらと宙を舞っている。
この季節は毎年カーペットや風呂場の排水口に毛が絡んで掃除が大変で、自分がドワーフであることを煩わしく思う。
にしてもこの有り様を見ると、私は相当元気よく尻尾を振り回していたらしい。背後の親友には私が上機嫌で毛を撒き散らしてたのがよく見えていただろう。
苦い顔して後ろの彼を見ると、彼は毛繕いに飽きたのかこちらをニヤニヤしながら眺めていた。
「尻尾、梳かしましょうか?」
「頼めるかい?」
パイプ椅子を縦に列べて前に私が座り、後ろで彼が私の尻尾にブラシをかける。
彼は何故かいつも私の身の回りの世話をやいてくれる。
朝登校すれば寝癖や服装の乱れを直し、椅子に座れば温かいお茶が出てきて、くしゃみをすればちり紙を鼻に当てる所までやってくれる。
しかし、同時に過度のボディタッチやセクハラ行為がオマケに付くのでかなり鬱陶しい。
「なぁ、キミは私によく尽くしてくれるが、キミには何かメリットでもあるのか?」
「もちろんありますよ。自己満足的なものですがね。」
「自己満足ねぇ…」
「簡単に言えば貴女の側でいる理由付けです。」
「私のそばにいるのに理由がいるのかい?」
「自己満足っていったでしょ?あまり深く考えないでください。」
「他人の世話して満足出来るなんて幸せな奴だな、何か見返りを求める気はないのかい?」
「そうですね、ではとりあえず全部脱いでそこに寝そべってもらいましょうか?」
彼はいきなり私に全裸になれと言い出した。もちろん彼なりのジョークなのはわかっているのだが、面白そうなので乗ってみることにした。とりあえず胸のリボンをほどいて上着のボタンに手を伸ばした所で彼の静止がかかった。
「じょ、冗談ですよ。本気にしないでください。」
彼は顔を真っ赤にして私の腕を押さえる。普段やたらめったら過激なスキンシップを仕掛けてくるわりに、変に初なところがある。
「わかってるよ、キミにそんな度胸ないの知ってるし。」
「あまり信用されても困るんですがね。僕も一応は男なんですから。」
彼は真っ赤になった顔を膨らませて忠告し、再び私の毛繕いに取りかかる。それが面白かったので私はさらにたたみかけてみる。
「でもキミなら別にいいよ、ちゃんと責任とってくれるだろうし。」
私は真っ赤な顔を隠すように顔を反らし頭から湯気が出てる彼を想像しながら後ろを振り返る、しかし実際の彼は寂しそうな顔をしていた。
「そうゆうのはもっと大事な時にとっておくべきですよ。でなきゃきっと後悔します。」
私の頭はこの雨のせいで相当ふやけてしまったようだ。この話題は触れるべきではないのを完全に失念していた。早くこの空気から脱け出したくて私はおどけた口で言ったつもりだった
「冗談のお返しだよ、むきになるなって。」
しかし口からでたのは今にも泣き出しそうな震えた声だった。
「…尻尾、終りましたよ。」
彼は早く会話を切り上げたいのかそそくさと箒とちり取りを取りに行った。
綺麗に整った尻尾を少し持ち上げてみる。夏毛がとれたぶん軽くなったように感じる。
しかし、力を抜くと私の気分を表すように重力に負けてだらりと垂れ下がった。
雨はさらにひどくなり私達はそのまま学校に泊まることにした。
普段から授業の一環で生徒を深夜徘徊させるような学校なので、今さら親も心配しないだろう。
私は生徒会室の床に体育館から拝借してきたマットを敷いて毛布にくるまり、彼は隣の会議室で寝袋を使っている。
見馴れた生徒会室の天井を眺めながら、今日彼と話したことを思い出した。
私と彼との関係は幼い子供のごっこ遊び似ている。自分の役割を演じ、返ってくる返事を想像しながら話し掛け、
相手のよろびそうなセリフを選んで打ち返し、そのやり取りを繰り返して甘ったるい空気に酔いしれる。
子供のうちしかできないような恥ずかしい遊び。
今は二人でこんなことしてられるが、学校出てからはどうなるだろう?一年ぐらいはちょくちょく会ってできるかもしれないが、
その内疎遠になって、いずれは赤面するような恥ずかしい思ひ出になってるんだろうか。
恐らく今後更に親密になって、家族として一緒に暮らすのはあり得ない。今のママゴトみたいな関係が精一杯だろう。
フェルパーとドワーフの間には遺伝子的に子供が出来ないってのが世間一般の常識だ、
本人同士はそれでも構わないだろうが、両親や親戚連中、周囲の他人は子供の望めない夫婦など認めてくれるだろうか?
『そうゆうのはもっと大事な時にとっておくべきですよ。でなきゃきっと後悔します。』
彼のセリフを頭の中で反芻する。彼も今のママゴトが永遠に続くと思ってないようだ。
彼はママゴトが終わったあとどんな人生を送るんだろうか?
彼はわりと社交的で紳士的だからとてもモテるだろう。
きっとすぐに美人で献身的な嫁をもらって、元気な子供を授かって、
休みの日には家族で近所の公園にお弁当持って遊びにいくようないいお父さんになるんじゃないだろうか
私は彼の幸せな家庭を想像して苦笑いしながら、こんなくだらないことを考えるのは頭が睡眠を求めてるからだと思い込み、毛布を頭まで被って目を閉じた。
ズルズルという粘液の音と息苦しさで目が覚めた。
酸素を求めて肺を広げると鼻からさっきの音が聞こえてきた。風邪でもひいたのかと顔に手を当ててみると
「…濡れてる。」
「目が覚めましたか?」
頭の上から優しい声が聞こえた。声の主は私の頭に手を置いてゆっくりと髪を撫でている。
「どうして君がここにいるんだ?」
「貴女の咽び泣くのが聞こえたので。」
「私が?」
彼の手を払いのけて上体を起こすと眼から涙が溢れて頬を伝うのがわかった。
胸の奥深くで肌寒さも感じる。そうか、私は泣いていたんだ。
「何か不安があれば相談してくださいよ。」
「いや、たいしたことない下らないことだよ。」
「僕はそんなに頼りないですか?」
「本当にたいしたことない、口に出すのも恥ずかしいことなんだ。」
「もう少し僕を信用してくれてもいいんじゃないですか?」
昼間のセリフとの差に、私はムッとする。
「信用するなとか信用しろとかキミは忙しいな。」
「昼間のことでしたら話が違うでしょ?」
「一緒だよ、キミが臆病なだけじゃないか。」
「なら僕が貴女をあのまま押し倒してそうゆうことして、そのあと僕に付き合いきれますか?」
「そのあとって?」
「今は子供だから親や学校に頼るだけで生きていけますが、大人になればもっといろんな人に頼らなければなりません。
昨今は緩くなってますが異種族交際には未だに否定的な考えの方も多いです。
貴女もその辺はわかってるんじゃないですか?」
「キミは真面目だな、学生の恋なんて衝動に任せて燃え上がって、大人になったらいい思い出で済まされるもんだろ?」
「僕はそんな一瞬で燃えてきるような感情で貴女から大切なものを奪いたくありませんよ。」
「そんなこと行ってると一生童貞だよ。」
「なら僕は死ぬまで童貞でかまいませんよ。」
彼はそう言って立ち上がる。
「どこ行くんだよ。」
「戻って寝るんですよ、明日も早いですから。」
私は彼の寝巻きがわりのジャージの裾を掴んで引き留める。
「寂しいじゃないか。私が寝るまででいいから側に居てくれよ。」
狭いマットの上二人背中合わせで毛布にくるまり、雨の音を聞きながら朝を待っている。
背中から伝わる人の暖かさが心地よいが、異性と密接しているせいか妙に落ち着かない。
そわそわと尻尾を動かしてたせいでお互いの尻尾が触れ、びっくりして体が軽く跳ね上がる。
「あの、あまり落ち着かないんじゃありませんか?やっぱり僕は向こうに戻りますよ。」
彼が上擦った声で安眠の為の提案を出すが、私は無言で自分の尻尾を彼の尻尾に絡めて却下する。
今彼を逃がすとこの先彼と添い寝する機会などないだろう。
さっき彼と話をしてて考えた事がある。きっと私は彼が将来私意外の人と幸せになるのが嫌なんだろう。
だから泣きながら咽び泣くなんて痛々しいことをやらかしたんだと思う。しかし私に彼と添い遂げられるだけの覚悟はない。
私が彼に気持ちを伝えたとして彼は最期まで付き合ってくれるのか、私は信じられない。
そこで私は思い付く。全部彼に私の分の覚悟まで押し付けるのだ。
今この状況を利用して彼を追い詰めれば、真面目な彼はきっと責任を取ると言ってくれるだろう。
そうすれば私の覚悟の部分も埋まる。
もし拒絶されたらどうする?その時はその時だ。どうせ望みの薄い賭けなんだ。
「そうだ、隣から寝袋取ってきます。それを隣に敷きますから。」
「なぁ、ちょっとこっち向いてくれないか?」
「何ですか?」
「私の頭を抱えて撫でて欲しい、そうすれば安心して眠れると思う。私が寝たら戻っていいからさ。」
彼はそれを聞いて緊張が解けたのかクスっと笑ってこちらに身体を向ける。
「解りましたよ、今日はなんだか甘えん坊さんで
言い終わる前に私は彼の頭を掴み、唇にむしゃぶりつく。
言葉を発する為に開かれた口に舌を捩じ込み彼の上顎を舐め、彼の舌を掬い取り、ざらざらとした彼の舌表面を私の舌先がなぞる。
逃げようとする彼の頭を押さえつけて、彼の歯に自分の歯を擦り付け、彼の舌を自分の口の中に引きずり混む。
そのあたりで彼に肩を掴まれて無理矢理引き剥がされた。
「いきなり何をするんですか!?」
「信用するなってことは私をそうゆうふうに見られるって事なんだろ?」
「えっ、あぁ…それはまぁ…」
「なら襲ってよ、襲って滅茶苦茶に犯してくれよ、私を君の物にして欲しいんだ。」
今私と彼は身体を密接させて抱き合ってる。
私は彼のジャージをはだけさせ、彼の尻尾の上の辺りを指でなぞりながら、鎖骨に口付し、
内出血するほど吸い付いて彼の身体にマーキングを施そうとしている。
一方彼は私の背中をジャージの上のからゆっくりと撫で回しているだけだ。
「別に遠慮は要らないよ、君が好きな所を好きに触っていいんだ。」
「好きな所をですか?」
「私は蛇の生殺しを見て喜ぶほど性格は歪んじゃいないよ。」
すると彼の手はソロリソロリと背中を下り尻の辺りて停まって指を押しつけてきた。
私が軽く声をあげると、彼はぱっと手を離す。
「すみません。驚かせてしまいましたか?」
「いや、私が好きなように触れっていったんだ。
しかしいきなり尻か、普通こうゆうときは胸からじゃないのか?」
「胸?」
彼はキョトンとした顔で聞き返した。流石に腹が立ったので今舐めていた鎖骨に軽く歯を立ててみる。
「痛っ!」
「私だって自分の胸が平べったいことぐらい知ってるが、
そんな嫌みったらしく聞き返さなくたっていいじゃないか。」
「そうじゃないんです。ただ僕はこんなこと初めてなんで触る順番とかよくわからないんです。」
「私だって経験ないよ。ただ漫画とか雑誌の知識試してるだし。」
「でもさっきのディープキス上手でしたよ?初めてで舌入れるなんてできるんですか?」
「あれが上手いのかどうか知らんが、ちっちゃ頃親に無理矢理されたりしなかったか?私はそれを真似しただけなんだが。」
「僕には覚えはありませんが、親子のスキンシップって普通はそんなものなんですか?」
「私だってまだ2歳だか3歳だかのホントに立ち上がって歩き回り出したばかりの赤ん坊みたいな頃のはなしだし、
世間一般の親御さんが子供にどこまで接してるのかは知らないよ。
ただし子供にはあまりよろしくないみたいだな、虫歯が感染るらしい。実際私も昔から虫歯に悩まされてるし。」
「そういえば僕はあまり虫歯にかかったことはありませんね、甘いものは好きでよく食べてるんですが。
でもこれからかかるようになるかもしれません。」
「何でだ?」
「今僕の口の中には貴女の虫歯菌が要るんでしょ?それが繁殖して根付けば虫歯になるじゃないですか。
でも歯痛を押さえて『妻に感染されちゃったかなぁ』なんて言って惚気るのもいいかもしれませんね。」
「あー虫歯ってのは3歳過ぎると感染りにくくなるらしい、身体に耐性がついてくるからかな。」
「それは残念です。麻疹とかおたふく風邪とかは大人になってからかかると悪化するのに。」
「君はなんか話を反らしてこの場を乗りきろうとしてないか?」
「解りましたか?」
「もういい、話すな。」
私は彼の股座に手を伸ばした。
ジャージのズボンの上から触った感触は弾力がある固めのゴムのような印象を受けた。
しかしそれは人体の一部とは思えないほど熱を持っていたのを布越しに感じることができた。
「あの、あまり触らないでください。」
私は無視して彼の物を揉みしだく。それは脈打ちながら膨らんで重くなる。彼の顔ををみると頬は紅く染まり目を細め眉を歪め息を荒げていた。
私にはそれがとても扇情的に見え、私の心を掻き立てる。私は右手で彼の物を弄りながら彼の顔をおかずに左手で自分の物を慰める。
人差し指と中指で股を性器に沿ってなぞり、ズボンの生地を下着のクロッチと一緒に割れ目に押し込む。
そして割れ目の前端部分を親指で刺激し中指を割れ目の内側の孔にあてがい、周りの布ごとグリグリとねじ込む。
彼の顔を覗きに込んでると彼と目が合う。きっと彼の目に写る私の顔は彼と同じように惚けているのだろう。
さっきから私の背中を泳いいでいた彼の両手が再び私の尻を目指して降りてくる。
今度は両方の尻たぶを掴んで割り開き、指を谷間に這わせてきた。
指は尻の谷間を進み、やがて布の下に抵抗のない場所を見つけると、先行していた右手はさらに先に進み、左手はそこに残って指をねじ込む。
右手は太ももの間をこじ開け割れ目をほじくってる私の左手に触れる。
私はすかさず彼の右手を引きずり込み、湿って色が濃くなってるであろう窪みに彼の中指を押し当てて動かした。
彼の指が自ら動き出したのを確認して、自分の物を彼の右手に任せ、左手を彼の物へ向かわせる。
右手が擦っている膨らみの下の器官を左手で弄ぶと、中に二つ何かが入っていることが解る。私は壊さないように指で転がしてみる。
いつの間にか私の菊門を弄っていた彼の右手が身体の前に回ってきて割れ目の周りの肉を揉み始める。
左手はさらに奥を目指すため人差し指と中指で窪みの底を引っ掻き回す。
彼の顔が鼻同士がくっつくほど近づいいることに気がついた。私は最初にしたように自分の口で彼の口を覆う、すると今度は彼のほうが舌を伸ばしてきた。私も負けじと彼の舌を交わして彼の口の中を舐め回す。
両手でお互いの性器を弄り回し、口の中を舐め合う行為に私は夢中になっていたが、先に私が脱落することになる。
腹の奥の方から込み上げてきた快感が頭の中で弾けた。全身の筋肉が緊張し、身体中の力が抜ける。
私はそのあとに来るであろう心地い倦怠感を待った。
しかし先に次の快感のほうが頭の中で弾ける。達して敏感になった性器を彼の両手はさらに刺激する。
止めどなく襲う快感に、私は声を上げて抗議するがそれも彼の口に塞がれて許されない。
私は彼に投了の意を伝えるために自分の左手にあるもの力をいれて握ると、彼の身体がビクンと跳上がった。
それを見計らって私は彼を一度振りほどき、額を彼の胸に押し付けて深呼吸をする。
呼吸が調い気持ちに余裕ができると、彼の下腹部が内側から押し上げられて山のようになっているのが見えた。
私は彼が自分で処理をするために山のに手を伸ばすのを制止して彼の背に手を回し足を巻き付けて身体を引き寄せる。
少しずつ自分の身体を下にずらすと私の股に山が触れた。
そして腰を動かして私のズボンの色が変わった部分に彼の山の頂点を合わせてくっ付けた。
「んっ。」
布越しに彼の熱い物を感じ、思わず声が漏れる。
突然彼は両腕を私の背中に回し強く締め付け、布地を破りそうな勢いで私を突き上げる。
「あっ、ちょっと待って、イやっ。」
彼のズボンに収まったままのそれは、グリグリと私との接触を遮る物を私の中に押し込む。乱暴に私を押し広げ、先端部を叩きつけ、巻き込まれた布が股間全体を擦る。
服に遮られて深い所まで届かないもどかしさと、服越しとはいえ性器同士をすり付けあってる事実に私は興奮し、彼の胸に顔を押し付けて甲高いあえぎ声を上げる。
快感が胸の辺りまで込み上げ、再び来る絶頂を迎える為に私も腰を彼に押し付ける。
両側から力のかかった彼の物は逃げ場を失い、浅い窪みから弾き出されて、私の割れ目の前端にある突起を勢いよく叩いた。
「きゃっ!」
私は変な声を出して達する。彼の物は私のヘソの辺りでビクビクと脈打ちながら体液を吐き出し、私のジャージを濡らした。
「…暖かい。」
私が口にするや否や私は彼に突き飛ばされて生徒会室の床に仰向けに転がされる。
「痛っ、何するんだ
私は彼に抗議の言葉をぶつける前に彼が私に飛び掛かり素早く私の量腕を掴んで頭の上で左手だけで床に固定し、空いた右手を襟首に挿し込み一気に引き下げる。
無理な力のかかったファスナーがバリバリと悲鳴をあげて壊れ、私のなだらかな丘程度の膨らみしかない胸を覆い隠すスポーツブラもそれに巻き込まれ引きちぎられた。
私は驚いて彼の顔を見ると、二つの穴ががこちらを除き込む。
その穴は彼の瞳であることがわかった。彼の目はカッと見開かれ、虹彩は開ききり、瞳の奥がわずかな光を反射させてギラリと光る。
鼻息は荒く、唇がめくり上がり歯茎が剥き出しになり、鋭い犬歯をつたい涎が私の顔にかかる。
私は怖くなって身を縮めようとするが、彼の両膝が脚を押さえ込んで身動きがとれない。
彼は私の下半身を隠す布を全部毟り取り、自分のズボンを引き下げ完全に勃起した物を解放した。
先端部は粘液でテラテラと光り、粘りのある汁をぽたぽたと落としている。
そして、濡れて身体に貼り付いた毛皮を掻き分け私の割れ目を探しだし、
割り開いて内側をなぞり挿入する孔を確認している。
その孔に直接熱い肉が当たるのがわかった。初めて感じる感覚に心臓が高鳴る。いよいよなんだな。
私はこれから訪れるであろう痛みに耐えるため固く目を瞑り、その瞬間を待った。
手首の拘束が解ける。
「この辺りで止めませんか?」
恐る恐る目を開けると、彼は目を閉じて大きく息を吸って呼吸を整えていた。
「ここで止めるのは優しさじゃないよ。」
「このまま怯える貴女を強引に犯すと多分僕はトラウマになって機能不全になりそうなので。」
「初めてなんだから仕方ないだろ。」
「僕だって初めてなんです。」
「ヘタレ。」
「他人に覚悟全部押し付けて流れに乗って誤魔化そうとする人に言われたくないですよ。」
心の内を見透かされたようで私の顔から血の気が引く。
「…なんのことだよ?」
「一線越えたあとの生活に耐えられるかの答えのつもりだったんでしょ?僕を誘惑して襲わせれば、そのままなし崩し的に覚悟が決まると思ったんじゃないですか?」
どうやら本当に彼は私の考えていたことをわかっているようだ。
「ダメかい?君に付いて行くだけじゃ。」
「僕も『黙って俺に付いてこい』なんてカッコイイ事が言えればいいんですがね、生憎学生の身には貴女を安心させられるだけの財力も人脈も持っていません。」
「なら私はどうすれば君に信じて貰えるんだ?今は将来がどうなるかわからないから簡単に覚悟できるなんて言えないが、…
私は君が好きだ。きっと君となら大概のことなら耐えられるよ。」
「…そうやって好きって言ってくれたの初めてですよね?」
「そうだったか?」
「僕はずっと遊ばれてるんだと思ってました。
思わせ振りな態度で僕の反応みて楽しんでるんだと、勘違いしないように自分を押さえつけるの大変だったんですよ?」
「私はアピールのつもりだったんだがな、こっちだって気を引くの頑張ってたんだ。
でも君はのらりくらりと煙に巻いて交わそうとするし、それなら直接的手段に出るしかないじゃないか。」
「僕も思いは伝えていたつもりだったんですがね。昼間何で僕が貴女に構うか聞いて来たじゃないですか、あれ結構ショックだったんですよ?貴女に会わせていたつもりでしたので。」
「私に?」
「ああゆうキャラクター好きでしょ?」
「君、私の漫画勝手に読んだろ?」
「あの手の漫画は持ち歩かないほうがいいと思います。持ち物検査があったら学校に出て来られなくなりますよ?」
「友達に貸してたんだよ。てか人の荷物勝手に漁るな!」
私は彼の頭を思い切りひっぱたいた。
「あたたたた…しかし、結局お互いの気持ちを一切理解できてなかったんですね。」
「なんか寂しいな。君と会ってから今までが全部無駄だった気がして。」
「仕方ないですよ。神経や血管が繋がってる訳じゃない、皮の袋で外界から完全に隔離された赤の他人なんですから。
知ってますか?お腹の中の胎児と母親って血管が繋がってるわけじゃないんですよ。
ヘソの緒とそれに繋がる胎盤は子供の方の組織だそうです。そこで母親の血管から栄養や酸素を取り出して自分の血液に溶かしてるんですって。
結局血の繋がった親子でも実際に血管が繋がってたわけじゃないんです。
腹の中で種と卵がくっついた時から人は独立した生き物なんですから、何一つ繋がりのない相手のことが分からないのも当然じゃないですか?」
私はなんとなく自由になった腕を彼の背中に回し抱き締めて体温を感じようとする。
「でも僕達は群で生きる生き物ですから、他人に無関心でいられない、ですから相手の事を自分の頭の中で想像して、相手が何をしたいか、相手が何をしてほしいかを考えるんです。
それを相手の気持ちを理解出来てる、心が通じてると勘違いするんでしょうね。」
「私はどう足掻いても君の心に触れることも触れさせることも出来ないんだな。」
「それで別にいいんだと思いますよ。僕は貴女の事を考えて、貴女に好かれるキャラを演じるのも、貴女の演じてるキャラから会まみえる貴女の地の部分を探すのも楽しいです。それに目を背けたいことや知られたくない事だって人間生きてれば沢山あるはずですから。」
「上辺面だけの付き合いか。」
「誰だって同じですよ。みんな自分を演じて見えるものだけを信じて、それで満足してるんです。子供のママゴトと変わりません。」
「そっか、ママゴトか。じゃあ君がお父さん役やってくれよ、私がお母さん役やるからさ。」
私はどさくさに紛れ彼にプロポーズをした。恥ずかしさに言葉が詰まるかと思ったが、案外あっさり口に出すことができた。
「構いませんよ。ただし途中で飽きて投げ出すのは勘弁してくださいね。」
「じゃあ飽きさせないでくれるかい?」
「努力はします。」
よく漫画なんかでプロポーズのあと感極まって泣きながら抱き合うシーンがあったりするが実際は案外あっさりしたもんなんだろう。
普段と変わらない会話と同じようにお互いの気持ちを伝えあって、そのまま普段と変わらない未来がその延長線上にあるんだろうな。
私は安心感に顔が綻ぶ。目の前の彼の顔も、さっきまでの獣のような顔とは別人のような優しい笑顔に変わっていた。しかし、
「ところで、君はいつまで目を閉じてるんだ?」
「いや、きっとまだギラギラしてるので、あまり見られたくないんです。」
「男ならしかたないんじゃないか?むしろこの状況で君が落ち着いてたら私は相当ヘコむよ。」
口のなかがジャリジャリいいそうなぐらい甘ったるい会話をしていたが、
今私は床の上で着てるものをズタズタに引き裂かれて、下半身をむき出しにした彼に組伏せられている。
性器同士が密着した状態でになっていて、恐らく私が少し身を捩れば彼の男性自身が私の中に入ってくるだろう。
多分端から見れば私が彼に強姦されてるようにしか見えない。
「それで、これからどうする?私はこのまま続きをしてくれても構わないよ。ちょっと怖いけど、」
「いえ、今回はここまでにしときましょうよ。」
「まだなんか不安なことがあるのか?こっちだって焦らされて辛いんだ。」
「そういう訳じゃないんですが、初めてが冷たい床の上で無理矢理なんていやじゃないですか?
また近いうちに、今度はベッドの上でお互いのんびり楽しみましょうよ。それに」
彼は私の前髪をかき上げ額に唇をくっつけた。しばらくして唇が離れてゆっくりと瞼を開いた。彼の目は優しく私の目を見つめる。
「今の僕達にはこの程度がお似合いでしょうから。」身体中の血液が集まるののがわかるほど顔が熱くなる。何か反論しようとしたが、酸欠の鯉みたいに口をパクパクさせるだけて喉から音が出てこない。彼が目を細めて笑いかける。
私は恥ずかしくて顔をそらすしか出来なかった。
エピローグ
Dw「しっかし休校になるほど降るなんてな。外がえらいことになってるよ。」
Fe「川が氾濫したり土砂崩れが起きたりして、連絡の取れない生徒や教師も結構いるみたいですよ。」
Dw「でも助かったよ、起きたら昼の11時なんだもんな。」
Fe「あのあと遅くまで起きてましたからね。」
Dw「仕方ないだろ、こっ恥ずかしくて寝られなかったんだよ。」
Fe「まさかオデコにチューがあんなに効くなんて思いませんでしたよ。」
Dw「あーゆう漫画みたいにベッタベタなの苦手なんだ。もう昨日の記憶全部上書きされて思い出せないよ。」
Fe「もっと恥ずかしいこと沢山したはずなんですがね。服来たままなんて相当マニアックでア痛ッ!」
Dw「蒸し返すなバカ!あー思い出しただけて顔が熱くなる。」
Fe「そのようすだと昨日の続きは当分おあずけですかね。」
Dw「なんか私が欲求不満みたいな言い方だな。」
Fe「僕は誘惑されて理性が吹っ飛んだだけですからね。」
Dw「なんか納得いかないな。」
Fe「それに貴女の両親に許可を取ってからのほうがいいでしょう。事後報告だと印象悪くなるし。」
Dw「えっ、親にバラすのか?学費親に出してもらってるから今勘当されると困るだけどなぁ。」
Fe「僕がちゃんと説得しますよ。できれば就職してきちんと収入がある状態でご挨拶したかったんですがね。」
Dw「よく考えてるんだな。私はてっきり置き手紙残して誰にも見つからないところに逃げるもんだと思ってたよ」
Fe「それは最終手段ですかね。式に両親呼べないってのは結構辛いですよ。」
Dw「君の両親は大丈夫なのか?」
Fe「僕の方は大丈夫なはずですよ。姉の旦那がバハムーンですし。」
Dw「…異種族同士の恋がどうのこうのってのは一体なんだったんだよ。」
Fe「いや、結構モメたんですよ。義兄さん親戚全員から縁切られてウチに婿養子として来たんですが、まぁその結婚式が酷く悲惨でしてね、
父が娘の結婚だって張り切ってかなり盛大にやったんですが、新郎側の席ががらっがらなんです。
一応招待状は出したはずなんですが、義兄さんの仕事仲間と友達以外誰も来てないんですよ?まるで公開処刑みたいな状況でしたよ。」
Dw「そりゃ辛いな。」
Fe「式を挙げないって選択肢もありますが、僕は貴女花嫁姿がみたいですから。それに貴女の両親だって貴女の書いた手紙で涙を流したいでしょうから。」
Dw「私は君と居られればそれでいいよ。どうせ誰からも認められないと思ってたからね。」
Fe「そんなに悲観的にならなくてもいいと思いますよ。世の中の流れとしては寛容的になってますし、セレスティアとディアボロスのご夫婦なんてよく見かけますしね。」
Dw「なんか昨日の話を全部ひっくり返してるな。」
Fe「もう覚悟は決まったんです。前向きに考えないとこの先もちませんよ?」
Dw「そうか、まぁ前例があるなら案外険しい道でも無いのかもな。さて、出掛けるか。」
Fe「どこにですか?」
Dw「連絡取れない生徒が居るんだろ?生徒会としちゃほっとけないじゃないか。」
Fe「でも今外出ると命が危ないレベルですよ?」
Dw「雨合羽着て準備整えて強引に突破すればいい。危険を怖がってちゃ冒険者なんて勤まらないよ。それに、ちょっと耳貸せ。」
Fe「?、何ですか?」
チュッ
Fe「!!!!」
Dw「wwww」
Fe「…不意討ちでほっぺにチューはズルくないですか?」
Dw「私達にはこの程度がお似合いだろ?」