錬金術士の夢であり、芸術でもある合成獣。
時には戦闘兵器として、人によっては召使として。
今日も何処かで、産声を上げる。
確かな命を抱え込んで。
「うう・・・軽率でした・・・」
パルタスク学園の教師ライナは、言い知れぬ危機感を感じていた。
彼女には『はらぺこの呪い』なる半ばふざけた名称の魔法が罹っており、常に異様な空腹が襲い来る。
先日、出張先で空腹に耐え切れなかった挙句、小さな食堂を一軒食い潰してしまったのだ。
勘定はどうにかなったが、おかげで金欠のどん底に立たされてしまうのだった。
どうにも困ってしまった彼女は、校長に頼み込んで催眠術を掛けて貰い、空腹を紛わせようとしたのだ。
「食欲の代わりに何か別の欲求が出てくるらしいけど、まさかこれが出てくるなんて・・・」
事実として、彼女の人外な食欲は今や押さえられつつあった。
しかし、もっと厄介な欲望――性欲が出て来てしまったのである。
疼く股間の痺れに耐え、何とか受け持ちの仕事を片付けた。
「おや、ライナ先生。丁度良い所に」
背後からの声に振り返ると、魔術と錬金の教師を務めるドークスの姿が映った。
「あ、あら、ドークス先生。何か御用ですか?」
「ええ。戦闘用のホムンクルスがついさっき出来上がったので、戦闘テストをお願いしようかと」
「生徒達ではダメなのですか?」
「ふっふっふ。私の完璧な合成獣の前に、子供の力では良いデータは採れませんよ」
「はあ・・・」
「ホムンクルスはトレーン中央にいます。是非、戦術教師のライナ先生にお力添えを頂きたい」
ドークスの熱心な要望に、ライナは少し考え込む。
やがて何か思いつくと、僅かに笑顔を浮かべて言った。
「解りました。協力しましょう」
「おお、そうですか。それはありがたい!終わったら感想を頼みますよ!」
嬉しそうにはにかむと、そのままドークスは去って行った。
新しい発明を終えた研究者というものは、どうしてこうも嬉しそうなのか。
さて、一方のライナはと言うと、本当の目的は別の所にあるのであった。
トレーン地下道と言えば、駆け出しの冒険者が最初に足を踏み入れるであろう簡単な迷宮である。
それゆえ、未知数の試作品を隠すのには丁度良いのかも知れない。
普段は弱いモンスターしか現れないこの場所に、今日は太刀のぶつかる音が聞こえる。
「はいっ!」
「!」
ひと際大きい金属音を響かせ、ライナの刀がホムンクルスのそれを弾き飛ばす。
腕がまだ痺れているのか、左の利き腕を抑えつつ、ホムンクルスはライナを睨み上げる。
「ふふ・・・私の勝ちですね」
「・・・・・・」
「大丈夫ですよ。命までは取りません。その代り・・・」
「・・・?」
刀を持ったままホムンクルスに歩み寄るライナ。しかし、すでに敵意は消え失せていた。
「よ〜く熟れた私の身体・・・満足させてもらえますか?」
ホムンクルスの目の前まで迫ると、優しげな口調でそう告げる。
合成獣にも知能があるのか、驚いた様子で立ち尽くしていた。
「・・・!・・・??」
「うずいて仕方無いんです・・・気持ち良くして下さいな」
そのまま刀を落としたライナは、ホムンクルスの唇を奪う。
後頭部と背中に手を回してしっかりと抱き締めて、口をこじ開け舌を差し込む。
困惑したまま動かないホムンクルスは、ただその舌を受け入れた。
「!?・・・ッ・・・ゥ・・・」
「んふっ、んむ、ちゅっ・・・」
唾液の音が耳元に届く。
媚薬を飲んだも同然な今のライナを興奮させるのに、寸分の間違いも無い。
その証拠に、陰部の湿り具合が自分でも相当なものだと解る。
やがて我慢もできなくなり、背中を押さえていた片手をホムンクルスの股に運んだ。
「え?ウソ・・・もしかして・・・」
腰の付け根に伸ばしたライナの手に伝わった感触は、膨らんだ何かだった。
前を隠すホムンクルスの装束をどけると、男性器の形をした肉の棒がそこにあった。
「!!・・・・・・///」
「うわぁ・・・素敵。イイモノを持っていますね」
それは本物にも引けを取らないほどのサイズと形状を誇っていた。
しかし造り物であるせいか、色は素肌と同じく真っ白である。
恥ずかしそうに頬を赤らめるホムンクルス。自然な仕種にとても造作物とは思えない。
「それじゃあ、頂きまぁす・・・」
ようやく欲しかったものにあり付けたライナは、床に膝を着くと立派な分身を口に含む。
咥内に入るだけで敏感に身を震わせるホムンクルスは、人間的な可愛らしさがあった。
「ッ!・・・ァ・・・!」
「むふ、ちゅぷ、じゅぽ、じゅくっ・・・」
ライナの頭に両手を当てて、ホムンクルスは軽い痙攣を起こしている。
経験の無い少年に同じことをやれば、似たような反応をするだろう。
ホムンクルスのそれとは違うが、ライナにもゾクゾクと身震いが襲った。
「んはあっ、あなたの凄いですね・・・舌で舐めるたびにビクンって跳ねて・・・」
「・・・ッ・・・ァ!」
「ああん・・・そんな感じてる顔なんて見せられたら・・・興奮しちゃうじゃないですか」
唾液で滑った状態でしごき上げると、ホムンクルスは一層赤面する。
あまりにも愛らしい表情に、ライナの性欲が燃え上がる。
「・・・ゥ・・・ッ・・・!」
「んぷ、じょく、ちゅぱ、ちょぷ・・・・・・んんっ!?」
口で愛撫している最中、喉元に熱いものが吹き出る。
その正体を知っているライナは、さらに奥まで咥え込むと一気に筋を吸い上げる。
たまらず大げさに身体を反らすと、ホムンクルスは絶頂に達した。
「ァ!ッ・・・ァ・・・」
「んく、はうぅ・・・濃くて、おいしい・・・」
その味と量にも満足したライナは、飲み切れずに顔を汚した白濁を指で舐め取る。
満面の笑みで男の臭いを楽しむ姿は、最早ただのメスにすぎなかった。
「ゥ、ァ!・・・ッ」
「くぷっ、ちゅく・・・あん、元気いっぱい・・・こっちも気持ち良くさせて下さい・・・」
全裸になったライナが横になったホムンクルスに愛液の滴る秘所を向けると、おずおずと舌を這わせて来た。
「んはあっ、そう、そこよ・・・きゃあん!やだ、このコ、上手い・・・」
割れ目をなぞるように舐めていた舌は、あまり間を開けずに中へ入り込む。
ぎこちなさの内面に確かな奉仕の艶めかしさがあり、甘い舌使いにライナの身体が酔う。
「ふぁ、はうぅ、感じちゃいますっ!あ、あなたのモノも、こんなに硬くなって・・・きゃん!」
「ッ、ゥ・・・ィ?」
「あふっ、ひゃあ・・・こっちも、お返しです・・・っ」
うわごとのように呟いて、ライナも咥淫を再開する。
秘裂に顔をうずめたままホムンクルスの身体が振動し、少なからず強い刺激を与える。
合成獣故の生命力か、一度は果てたはずだったが、それは雄々しさを取り戻しつつある。
お互いを貪る淫らな音が、しばらくの間響き渡った。
「ぷはっ!ああん、もう我慢できません!あなたのおっきいのぶち込んで下さい!」
自分でもびっくりするほどのはしたない言葉を撒き散らすと、ホムンクルスに上乗りになる。
驚いて起き上がった時には、もうライナの肉芽が亀頭を捉えていた。
「んん、くっ・・・うああん!」
「!!!」
突然の強烈な快感に、ホムンクルスの表情が強張る。
しかし、ライナの中は溢れるほどの蜜で充分に濡れていたので、すぐに快楽に酔った少年の顔になる。
「ああん・・・こんなの、久しぶり・・・気持ちイイでしょう?私のナカは・・・」
「・・・ッ///」
「せっかくですから、思いっきり楽しみましょう。そのまま突き上げて下さいな」
身を起こしたホムンクルスを甘い言葉で誘惑すると、体制を保ったままライナにしがみ付いて来た。
二人は組み合った時には互いに一切を脱ぎ捨てていたので、人肌の体温が解る。
胡坐を掻くような格好になり、最初の一突きから強気に攻めて来た。
「ッ!ァ!・・・!!」
「あっはあ!凄ぉい、奥まで響くぅ!」
ホムンクルスの突き上げは、力加減もそこそこに狙い所が絶妙だった。
的確に奥深くまで突き抜ける性器の先端。両方から腰を突きだしている事もあってか、凄まじい快楽を及ぼした。
ライナも下腹部の上で激しく腰をピストンさせ、より大きな悦びを求める。
「ひぐっ、ふぁあん!あふっ、んあ、きゃん!」
舌をはみ出し涎を垂れ流す何ともいやらしい顔つきだった。
理性等は完全に吹き飛び、人工の男根によがって身体を上下させる娼婦さながらの様子だったのだ。
「・・・ァ・・・ァ!」
「んあっ、あはぁ!イキそう、なんですねっ!いやらしいアソコにぶっかけて下さいぃ!」
またも欲望に任せた台詞をぶつけて、ひと際強くホムンクルスを抱き締める。
それに呼応するように、下から抉るような一撃が放たれる。
「ァ・・・――――ッ!!!!」
「ひああぁあーん!らめぇええぇ!」
はち切れんばかりに膨張した彼自身から、ドクドクと際限なく打ち出される。
文字通り限界を超えて昇天し、揃って意識が飛んで行った。
「おや、ライナ先生・・・とホムンクルス?何故一緒に帰って来たのです?」
「ん・・・ちょっと、ね?」
「・・・・・・・・・//////」
夕暮れ時も過ぎたころ、不自然に艶の増した肌のライナは、顔を赤くして俯いたホムンクルスを連れて帰って来た。
首をかしげるドークスに、ライナは作品の出来具合を評価する。
「ドークス先生。正直な話、戦闘用としてはまだまだです。でも・・・」
「でも・・・何です?」
「生き物としての彼だったら、最高傑作だと思いますよ?」
ライナが微笑みかけた直後、ドークスはそのまま固ってしまった。
「最高・・・傑作・・・おおお、俺乙キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
『!?』
「わははっ!いいぞ!希望の光だ!合成獣の未来は明るいーーーっ!」
そう叫んだかと思うと、挨拶もせずにドークスは実験室へと一目散。
後には、取り残された二人が、しばし呆然と立っていた。
「ふふ・・・あの先生は面白いですね」
「・・・・・・☆♪」
何気ないライナの問いかけに、ホムンクルスは笑顔で答えた。
自己満足のおまけ
それは、造り物であった。しかし、それはいつしか自己を手に入れた。
「少しだけ、昔話をしようか」
大樹を薙ぎ払う者。女郎蜘蛛を退けし者。
「造られてからしばらくして、強さを求めて旅に出たんだ」
鋏を叩き割りし者。鎧を打ち砕いた者。
「やっぱり戦闘用だからね。喧嘩には強くなくちゃいけない」
霊猿を浄化せし者。悪魔を枯れ逝かせた者。
「ホントは、出来損ないだったんだ。余計な自我を持っちゃったから」
巨人を捻じ伏せし者。支配者を引き裂いた者。
「でも、とても嬉しかった。コトバも覚えて、怒ったり、笑ったり」
口岩を崩壊させた者。獣王を肉塊に還し者。
「造ってくれたヒトが居て、愛してくれるヒトも居たから」
精霊すら手も足も出ず、邪竜さえ歯が立たぬ者。
「13匹の化物も、残り1匹。そう、君で最後だ」
得物に纏いし鋭利な魂は、神をも容易く両断する。
「解き放られた破壊神。僕の刀の、錆になれ!」
彼の者の名は、ホムンクルス。修業中の最高傑作、アイとココロの合成獣。