眠りから徐々に覚醒していく感覚。もう少し寝ていたいという気持ちと、もう起きなきゃいけないという気持ちが交錯する。  
今日は二度寝してやろうと思った瞬間、隣の気配がもそりと動く。  
「……目、覚めたか?」  
返事はない。まあいつものことだ。  
大きな欠伸。脳に酸素が行き渡り、ありとあらゆる感覚が覚醒していく。俺の欠伸が移ったのか、隣の彼女も大きな大きな欠伸をする。  
続けて、上半身を伏せてグーッと伸び。そのまま流れるように下半身を伏せ、これまたググーッと伸び。  
可愛らしい耳がピコピコと動き、尻尾もそれ自体が生き物であるかのように、ゆっくりとのたくっている。  
「飯、食うか?」  
質問には答えず、まるで俺にキスを迫るように、顔を近づけてくる彼女。  
いつものことだ。俺は軽く顔を傾けてやる。  
俺の口元の匂いをふんふんと嗅ぎ、それが済むと気持ちよさそうに目を瞑り、頭をするっと摺り寄せる。  
別段、変わったことじゃない。ただの朝の挨拶だ。  
といっても、こんな地下道の中では、いつが朝でいつが夜かなんて、まったくわからないのだが。  
その頭を撫でつつ、俺は道具袋を引き寄せる。  
「おにぎりでいいか?」  
俺が食料を取り出すと、これまた俺に媚びるように頭を摺り寄せ、さらには尻尾までもまとわりついてくる。  
毛がくすぐったいが、まあこれもいつものこと。  
物を食べるときだけ、以前のように手を使う彼女。この時だけは、彼女がれっきとしたフェルパーであることを確認できる。  
俺もおにぎりを取り出し、一緒に食べる。彼女は先に食べ終えてしまい、俺のおにぎりに顔を近づけてくる。  
「ダメだ、これは俺のだ。」  
分けてくれる気配がないと悟ると、彼女は俺から離れ、つまらなそうに丸くなった。ただし、場所がちょっと問題だ。  
「おい、それは棺桶だ。降りろ。」  
俺の言葉がわかっているのかいないのか。彼女は片目だけ開けて俺を一瞥すると、再び目を瞑ってしまった。  
 
ここで彼女と二人きりになって、もうどれぐらい経つだろう。結構経った気もするし、そんなに経ってない気もする。  
あの時は、彼女だってこんなではなかった。様々な超能力で俺達を助けてくれる、れっきとした超術士だった。  
でも、故あって仲間はみんな死亡。そしてここからは脱出不能。  
そんな状況になって、最初は俺も彼女も必死に脱出しようとあがいた。  
しかし帰還札もなく、瞬間移動する魔力も残っておらず、俺はただの戦士だ。どうあがいても、絶望だった。  
彼女はあがき、怒り、泣き、そしていつしか精神が耐え切れず、壊れてしまった。  
幼児退行、というよりは先祖返りとでも言えばいいのだろうか。人間らしさなどほとんど残っておらず、その動きは猫そのものだ。  
最初、俺は戸惑った。しかし、慣れてしまえばなんて事はない。やたらに大きい、ちょっと外見の違う猫と一緒の生活になっただけだ。  
それに、彼女自身は言葉を失ったが、俺の言葉はそれなりに理解できているらしい。そんなわけで、普通の猫よりは手もかからない。  
ま、わかっているからといって、言ったとおりにしてくれるとも限らないのだが。  
「……おい、だからそう虚空を見つめるのはやめてくれ。気味が悪い。」  
そう言ったところで、彼女はそれをやめない。俺には何も見えないのだが……まあ、きっと何か見えているのだろう。  
あ、何かにじゃれかかった。やばい、何がいるんだ。  
もしかしたら、棺桶の中の誰かかもしれない。ノーム辺りなら、元々が霊体みたいなものだし、ありえそうだ。  
やがて俺に見えない何かへの興味をなくしたのか、不意に爪とぎを始める。もちろん、何で研ぐのかといえば棺桶だ。  
「だから、棺桶を爪とぎにするのは、や・め・ろ。」  
一瞬、俺の顔を『心外だ』とでも言いたげな表情で見つめる彼女。そして、再開される爪とぎ。すまん、セレスティア。  
もし帰れたら、真っ先に君を生き返らせてあげるよ。そしてギタギタの棺桶は、見られないうちに処分させてもらうよ。  
それにしても、退屈だ。それも当然だ。何しろ、俺達はここを動けないのだから。食料品だけバカみたいに持ってきたおかげで、  
とりあえず食うには困らない。寝るのにも困らない。しかし、この退屈を紛らわすのは……まあ、実は困らない。  
「……フェルパー。」  
俺の呼びかけに、ピクッと耳を動かす彼女。微妙な気配の変化を感じてくれるのが、今の彼女のいいところだ。  
すぐさま俺の隣に来て、グイッと頭を摺り寄せてくる。そして、尻尾が艶かしく俺に絡みつく。  
 
別に発情期というわけではないのだろう。これもまた、彼女が元々は俺達と変わらない知能を持っていた名残だろうか。  
あるいは、これも現実から逃げるための手段の一つかもしれない。  
俺はヒューマンで、彼女はフェルパー。俺は別に何とも思っていなかったのだが、彼女は俺のことを憎からず思ってくれていたらしい。  
だからだろう。俺の求めにも、嫌な顔一つせずに応えてくれるのは。その好意を利用することに、若干の罪悪感はある。  
しかし、それぐらいするのは当然といえば当然とも言える理由もあったりするが。  
ともあれ、彼女自身は嫌がらない。機嫌さえ損ねていなければ、むしろ積極的に応じてくれる。  
「……いいか?」  
「なうー。」  
猫の鳴き声そのものの返事。俺の首元に頭をグイッと擦り付けてくる。  
ただの猫なら単に可愛い動きなんだろうが、彼女がやると頭突きに近い。実際、これのせいで口の中を切った事もある。  
ひたすらに親愛の情を示す彼女を何とか押し止め、そっと尻尾に手を伸ばす、その付け根に俺の手が触れると、尻尾がピクンと震えた。  
付け根をグリグリと刺激してやると、彼女は腰を高く上げ、恍惚とした顔で尻尾をブルブル震わせる。  
「にゃっ……にゃっ…!」  
声が出始めた瞬間、俺は手を止める。じゃないと、妙に興奮して手を引っ掻かれたり噛みつかれたりする。  
俺が手を止めたことで、彼女は不満そうな顔を向けてくる。だが俺がスカートに手を伸ばすと、また嬉しそうな鳴き声を出す。  
パンツは既に穿いていない。というか穿かせていない。お互いそんなものを気にする事はなくなっているし、邪魔なだけだ。  
とはいえ、いつも丸見えでも困る。むしろ、こう半端に隠れていた方がこう、何というか、こう、グッと来るものがあるしな。  
そのスカートを脱がせ、肉付きのいい尻に手を這わせる。再び、ピクンピクンと震える尻尾。  
さらに手を伸ばし、割れ目をすっと撫でる。  
尻尾のみならず、彼女の腰全体がビクッと震えた。しばらくそうやって焦らしてやるのが、彼女のお気に入りだ。  
「んる!にぅ〜…!」  
荒い息をつき、可愛らしい鳴き声を上げて腰を震わせる彼女。頃合を見て、俺は彼女の中に指を入れる。  
「にっ!……ふるる…!」  
刺激への反応と、恐らくは俺に構ってもらえることの喜び。その両方が入り混じった鳴き声は、何とも可愛らしい。  
既に中はじっとりと濡れていて、火傷するかと思うほどに熱い。そして、俺の指を離すまいとするかのように、強く締め付けてくる。  
「いくぞ。」  
指を抜くと、俺もズボンを脱いで彼女の後ろに回る。彼女の尻尾が待ちきれないというように、艶かしく揺らめいている。  
 
掴むと怒るので、腰を抱きかかえるように手を回す。それと同時に、尻尾の動きがぴたっと止まり、期待に満ちた目が俺を見る。  
ゆっくりと、彼女の中に押し入る。尻尾がピクンピクンと震え、彼女は気持ちよさそうな鳴き声をあげる。  
膣内は熱く、俺のモノをさらに奥までくわえ込もうというように収縮する。時にはそれに従い、時に抗い、その感触を楽しむ。  
一番奥まで入れると、彼女は可愛らしく鼻を鳴らす。それを受けて俺も、少しずつ腰を動かし始める。  
パン、パン、と俺の腰が彼女の尻を打つ音が響く。それに時折、彼女の切れ切れの鳴き声。  
「どうだ、フェルパー。気持ちいいか?」  
聞いても返事はない。だがまあ、表情を見る限りは気持ちいいのだろう。  
彼女の中は熱くぬめっているが、意外にきつく、コリコリと固い感触もある。  
初めて交わったときから処女ではなかったが、だからといって経験豊富というわけでもないらしい。  
その彼女を、俺が好きなように弄んでいる。それが、俺の征服感を心地よく刺激する。  
最初こそ反応を見る余裕もあるが、やがては俺も彼女も、欲望のままに腰を動かすだけになっていく。  
そうなると、俺もヒューマンではなく、ただの獣になったように感じる。それもまた、心地のいいものではある。  
腰をしっかりと掴み、今までよりさらに強く腰を打ち付ける。あまりに強すぎて、彼女の顔は若干苦しそうに歪み、  
その呼吸は切れ切れとなる。しかしその顔もまた、可愛らしく感じてしまう。  
何度も突き入れるうち、やがてコリコリした感触は消えていき、俺のモノ全体を包み込むような感触に変わっていく。  
そこまで馴染んでしまうと、もう長くはもたない。あとはただただ、欲望のままに腰を打ち付ける。  
熱くねっとりとした粘液が俺のモノに絡みつき、彼女の襞がさらにそれを擦りあげる。  
俺が突き入れれば柔らかく受け止め、引き抜けば引きとめるように締め付ける。  
時折あげる鳴き声は鼻にかかり、何とも艶っぽい。いつしか尻尾も、俺に絡み付いてきている。  
「フェルパー、そろそろ限界だ…!」  
「ふにゃあ…!」  
今日は律儀に返事を返してくれた。可愛い奴だ。  
さらにペースをあげる。やがて、腰の辺りにぞくぞくとした感触が湧き上がってくる。  
「ダメだ、出るっ…!」  
最後に思い切り奥に突き入れ、彼女の体内の一番奥に射精する。  
彼女はその感覚が気持ちいいのか、尻尾を震わせて鼻にかかった鳴き声を上げた。  
最後の一滴まで彼女の中に出してから、俺はモノを引き抜いた。彼女は尻尾をプルンと震わせてから、また俺に頭を摺り寄せてきた。  
「んなぁー。」  
「はいはい。いい子だ。」  
まともな状態であれば、終わった後の余韻を楽しむこともあるだろう。だが、今の彼女にそんなものは望めない。  
気持ちよかった行為のお礼のつもりか、とにかくひたすら俺に親愛の情を示す。悪い気はしないんだがな。  
「顔舐めるな。痛いって。」  
何だか、いつも行為の後は非常に背徳的な事をしたように感じる。が、まあ猫化してはいるが、フェルパーだしな。問題はないだろう。  
彼女の頭を撫でながら、そんなことを考える。  
 
一戦終わって、俺達は昼飯に取り掛かる。俺は豪華な弁当。彼女はステーキ。疲れたし、まあこのくらいの贅沢はいいだろう。  
「だから、棺桶からは降りろって。」  
そう言っても、彼女は無視を決め込んでいる。どころか、いかにも退屈そうな大欠伸をして見せる始末。  
「まったく……誰のせいでこうなったと思ってるんだよ。」  
決まっている。この大馬鹿野郎のせいだ。  
まさか、こんな場所に敵がいるとは誰も思わなかった。おかげで、俺達は敵の先制を許してしまった。  
そして出会い頭の恐怖の雄たけびのせいで、司祭と魔術師の両方が恐怖状態に陥った。  
不意打ちというだけでも驚いたのに、その上であんな声を聞かされては仕方ないことではある。  
そして追撃のように続く、いくつもの弱化魔法。それで、彼女はすっかり慌ててしまった。  
ミアプオフェや絶対壁召喚、あるいはいっそ瞬間離脱など、もっとマシな手はいっぱいあったはずだ。  
それが、彼女が使ってくれやがったのは、よりにもよってサイコオフ。  
弱化魔法にサイコオフ。  
補助魔法にもサイコオフ。  
司祭と魔術師の恐怖よりも、数々の弱化魔法よりも、これが一番効いた。  
その後の阿鼻叫喚の地獄絵図は思い出したくもない。  
結果、パーティの魔術師・司祭・君主・盗賊が死亡。生き残りは魔力のほとんど尽きた超術士に、何の役にも立たない戦士。  
「ほんと、お前無責任だよなあ。頭おかしくなりそうなのは、俺だっての。」  
俺の声に、耳を別の方向に向ける彼女。なんか腹立つ。  
それにしても、もしも俺達が助かったとして。彼女は元に戻ってくれるんだろうか?  
そして元に戻ったとして、俺との思い出はどうなるのだろう?俺との関係も、どうなるのだろうか?  
ともかくも、それは助かってみなければ知りようもない。だけど、この彼女との関係が続けられるなら、  
そして助かることでこの関係が崩れてしまうなら、この状態も悪くない気はする。  
とはいえ、食料が尽きて餓死なんてのは嫌なので、やっぱり誰か来て欲しいかな。  
「はぁ。誰か、通りがかってくれないもんかなあ?」  
「……にゃん。」  
ここはトハス地下道中央。マップナンバー9番。座標はX軸5のY軸10。  
目下、爛れた生活を送りつつ、救助をのんびりと待っている。  
 

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