ランツレート学生寮にて…
「ン、もう朝か…」
窓から入る朝日が彼の目を刺激する。
脳を起動し、体を起こそうとするがうまく動かせない。
「?」
不思議に思い首を右へ振るとそこにクラ子が寝ていた。
「んなっ!」
思わず声を上げてしまう。口を押さえようにも体が動かせないので真一文字に口を結ぶが、クラ子が目を覚ましてしまう。
「んう?」
寝ぼけ眼のクラ子が起きあがる。
「!?」
起きあがったクラ子の姿を見てヒュム男が目を丸くする。クラ子はYシャツ(ヒュム男の)とパンツ姿だったからだ。
「えへへ…おはよ、ヒュム男」
クラ子は赤い顔を隠しながら挨拶をする。
「ん、ああ、おはよう」
とりあえずそれに答えるヒュム男。
ヒュム男は混乱していた。
クラ子とは付き合いが長く(あくまで仲間としてだが)、お互いに軽口を叩きあうほどなのだが、こんな関係ではないはずだ。
「…フフッ、どうしたの?」
クラ子が聞いてくる。
おかしい。いつものクラ子とは思えないほどの優しい目だ。
恥じらう姿を見る度に胸が苦しい。もしかして知らぬ間に一線を越えてしまったのか。
…勇気を持って聞くしかなさそうだ。
「…なあ、クラ子」
「なあに?」
「昨日、何かあったか?」
「…え」
とたんにクラ子の表情が曇る。
…ヤバい。凄くヤバい。何故忘れているのだ自分よ。
脳内出力120%稼働させるが全く思い出せない。
「ヒドいよ、昨日はあんなに優しくしてくれたのに…忘れちゃったの?」
「え、えーと」
「ヒュム男の命をちゃんとココにくれたのに」
そう言ってお腹に両手を当てるクラ子。
「エエッ!?」
ヒュム男は理解した。が、やはりその時の記憶がない。
「責任、取ってくれるんだよね?」
「ちょ、待って」
寄りかかるクラ子を押しとどめていると、バーン!と勢いよくドアが開いて数人の女性が入ってくる。
「だめーーーっ!」
あけた勢いのままにフェア子がこちらに突進して、クラ子を巻き込んだ。
「ヒュム男のお嫁さんはわたしなのぉ!」
「違う!私なの!」
二人は転がり落ちた床の上で喧嘩を始めてしまった。
現状が理解できないヒュム男の背中にフェル子が抱きつく。
「とうとう始まったね」
「…始まったって?」
「ヒュム男さん争奪戦ですわ」
右腕に抱きついて笑顔で答えるセレ子。
「…俺の争奪戦?」
「そうだよ、あたし達の戦いさ」
左腕に抱きつくバハ子。
「「ああーーーっ!」」
クラ子とフェア子がこちらを見て喧嘩をやめる。
「みんなずるいよーあたしも!」
フェア子が正面に抱きつく。
「ちょっと、私の場所は!」
目をそらす女性陣。
「むー…じゃあ私はココ!」
そう言ってヒュム男の下着に手を掛けるクラ子。
「わー!まてまてクラ子!」
下着を押さえようにも身動きがとれないので必死に叫んでやめさせようとするが聞いてくれない。
「みんな、クラ子を止めてくれ!」
ヒュム男が皆に頼むが反応がない。どころかヒュム男の下半身に視線があつまる。
すでにテントを張っていた下着がクラ子の手で剥がされる。
ブルン!とヒュム男そのものが姿を現す。「「「「「………」」」」」
女性陣の顔は真っ赤だ。その中でいち早く立ち直ったクラ子が行動にでる。
「へへ…覚悟〜」
あ〜ん。と口を開けて近づいてくる。
「だ、だめだってクラ子!だれか、たすけ、アッー!」
その日の晩飯時、満足げな五人の女に囲まれたやつれた男の姿があったとか…。
「元気が無さそうだったから特性スタミナ料理を振る舞っといたよ!」
と、後に寮母は語ったと言う…。