ディアボロスの少年は頭を抱えて泣き出したいのを必死に堪えていた。
つい先ほどまで、彼は学生寮の自室で手淫に耽っていた。それに関しては責められるべきではあるまい。年頃の少年にあっては、健全な在り方であろう。
だが問題は、旅を共にする天使の少女との淫行を夢想し、彼女の名を呼び達したところに、運悪く本人がやってきてしまったことである。
何という最悪のタイミング。穴があったら入れ……もとい、入りたいとは、まさにこのこと。
しかし彼女……己の名を呼び手淫に耽る仲間の姿を見たセレスティアは今、彼の陰茎を口にくわえている。それこそが何よりも理解不能で、いわば最大の不幸であった。
「はむっ…んっ、……あむ…ちゅ…っ」
少年のあられもない姿を目撃した少女は、部屋に入り鍵をかけ彼に近付くと、精を吐き出しだらしなく萎えていたそれを何の躊躇いもなく口に含んだ。この時点で何かがおかしい。
そして慣れたような、それこそ高級娼婦にも負けず劣らずの絶妙な舌使いで少年の粗末なものを扱うのだ。純真無垢の化身のようなセレスティアが、そんなことする訳がない。
「……そうだ、夢だ……これは、何か悪い夢なんだ…」
途方もない快感と底の見えない混乱に歯をガチガチ鳴らして耐えながら、ディアボロスがうわ言のように繰り返す。少年の着ている制服は、冷や汗とも脂汗ともつかぬ汗でぐっしょりと濡れていた。
そんな少年の態度に気を悪くしたのか、少女が顔をあげ不満そうに言う。
「まあ、何て失礼なことを仰るの」
「だ、だってこんな……おかしいですよ。お願いだから、もうやめ…」
セレスティアの白く細い指が、ディアボロスの陰嚢に触れた。それだけのことで、本能的な恐怖に体を震わせ押し黙るには十分だった。
「貴方だってこうされることを望んでいらしたのでしょう。いくらお粗末なモノとはいえ、ご自分で擦り上げるよりわたくしがやる方がずっと具合が良いのではなくて?」
あのディモレアよりも妖艶に微笑む麗しの天使。おかしいなぁ、彼女は善の僧侶だったはずなのに、その澄んだ瞳は誰よりも邪悪な色をしていた。
それとも、と少年の恥ずかしがり屋なイチモツを指で軽く弾く。些細な刺激にも限界を迎えてしまいそうになり、少年は苦しそうにうめく。
「わたくしに見られながらご自分でなさるのがお好みなのかしら」
「……なっ、何を」
彼女の言葉で先ほどの恥態を思い出し、動揺を見せる。その隙を見逃すはずもなく、獲物に喰らいつく猛禽のように少女が詰め寄った。
「ねぇ、貴方はいつもどんな妄想でシていたんですの? 何なら、その通りにして差し上げてもよろしいのよ」
セレスティアはディアボロスの汗に張り付いた制服をはだけ、薄い胸板に指を這わせる。首筋をねちっこく舐め上げて、耳元で熱く囁く。
「お願い。わたくしを貴方のお好きになさって」
「…ぅ、……っうぅ、…ごめん、なさいっ……」
羞恥と興奮と混乱に耐え兼ねたのか、とうとう少年の瞳から涙が溢れた。みっともなく涙と鼻水を垂らしながら、くぐもった声でただ謝ることしかできない。
少女は少年の濡れた頬に唇を寄せ、零れる涙を舐めとった。
「ああ、どうか泣かないで。わたくしは貴方を傷付けるつもりではなかったのに…」
「ごめん、っなさい……俺、おれ…っ」
続く言葉も見付からず、訳も分からず泣きじゃくる少年を、少女はごく自然な動きでそっと横たえる。そして普段はスカートに隠れているあぶないパンツをするりと脱ぎ捨てると、少年の上に跨がった。
ディアボロスの陰茎がセレスティアの花弁に押し当てられたところで、ようやくディアボロスは我にかえり、顔を青くして暴れ始めた。
「…だ、駄目だっ……それは、それだけは駄目ですって!」
「あら、この期に及んでどうしてそんなことを言いますの?」
「俺たちは、まだ学生だし、それに……こういうことは、軽々しくやるものじゃありませんよ!」
畏縮しきった心の奥底に僅かに残った理性と勇気とを総動員して、なんとか彼女を思い止まらせようとする。
だが少女はひどく傷付いた顔をして、まあ、と小さくもらした。
「軽々しくなんて……ありませんわ」
ふてくされたように頬を膨らませ、不満そうに唇を尖らせる。
「わたくしだってうら若き乙女ですわ。好きでもなんでもない相手に、こんなことをすると思いまして?」
「……え…」
ディアボロスが呆けた隙に、セレスティアは腰を落とし無理矢理挿入を果たした。突然の強い刺激に少年が仰け反る。
少女は破瓜の痛みに顔をしかめ、耐えるように動きを止める。
「痛っ! …うぅ、この際だからはっきり申し上げます。わたくしは貴方のことが好きですの。ずっと、こうしたいと思っていましたわ」
セレスティアは疼く痛みを誤魔化すように、腰を揺らし始める。ディアボロスは必死に射精を堪え、歯を食いしばる。
少女はそんな少年を見下ろし、柔らかく微笑んだ。それは少年が良く知る、恋い焦がれた優しい微笑だった。
「貴方がわたくしを想ってシていたの、ちょっと嬉しかったですわ。わたくしも時々……その、貴方を想ってシますので」
はにかんだように笑う少女が愛しくて、ディアボロスは限界を迎え彼女の中で精を吐き出してしまった。
「あ……あああ…ごめん…」
「ふふっ、よろしくてよ。もっとたくさん下さいな…」
少女は上下の腰の動きを止め、自身の陰核を擦り付けるように前後に揺らした。変化を見せた刺激に少年の陰茎は再びかたくなる。
次第にディアボロスも余裕が出てきたのか、セレスティアを突き上げるように腰を動かす。セレスティアは艶っぽい声をあげ、熱に溶けた瞳でディアボロスを見ていた。
「お願い……貴方の気持ちをきかせて…」
ただきつく狭かった少女の胎内は少年に馴染み、熱くほどけ絡み付くようにディアボロスを締め上げる。
少年は続けざまに三度目の限界が近いのを感じ、掠れた声で叫ぶ。
「…ずっと、ずっと好きだった……初めて見たときから、初めて話をしたときから、……っうああああぁ!」
がくがくと腰が跳ね、全身を痙攣させて、少女に大量の精を注ぐ。セレスティアはうっとりと目を細め、胎内を跳ね回るディアボロスの熱を感じていた。
体力も限界に達し、肩で荒い息を繰り返す少年の頬に、天使がキスをひとつした。くすぐったそうにはにかむ少年の耳元で、少女は悪魔のように残酷な言葉を囁く。
「……あの、はしたないとお思いにならないで下さいましね。わたくし、まだ満足していませんの…。愛しい人、どうかもう少し頑張って下さいな」
とたんに柔らかい光が少年を包み、失われた体力が回復していく。それは彼も良く知った感覚……どう見てもメタヒールです。本当にありがとうございました。
可憐な天使との拷問のような交わりは、少年が白目を剥いて気を失うまで続けられたという。