ランツレート学院の学食は、他のどこの学園よりも大盛況だ。  
もちろん、名物と称されるほどの寮母マートのカレーのおかげでもあるが、何より学生数が非常に多い。  
しかも、最近では他の学園の生徒までがお世話になることもあるため、昼食時ともなれば席を確保するのも一苦労だ。  
なので、特に予定のない余裕のある生徒の場合、少し早めに行って席を確保するか、あるいは遅く行ってゆっくりと食事を取ることが多い。  
この日も、戦争のような昼食時が終わり、学食の中にもちらほらと空席が目立ち始めるようになった。  
その学食の入り口に立ち、何かを物色するように中を眺める男子生徒。  
いや、するように、ではない。実際、彼は物色していた。  
その目つきは異様に鋭く、どこか怪しげな光を湛えている。  
初めに、友人と楽しげに会話するヒューマンの男子生徒に目を留める。  
―――あの下等生物も、悪くはない……か。  
バハムーンらしく、ヒューマンをそう心の中で呼ぶ彼。  
―――が、学科がわからないな。下等生物を無理矢理、というのも悪くはないが、前みたいに魔法を撃たれちゃかなわん。  
すっと視線を滑らせ、その近くにいるクラッズに目を留める。もちろん、こちらも男子生徒だ。  
―――さすがに体格が違いすぎる。これは無理だな。  
それから何人かの生徒に目をつけたが、なかなか目当ての相手が見つからない。  
―――ノームじゃ面白味に欠けるし、ディアボロスのブレスは俺達より強い。セレスティアは……さすがに罪悪感があったしな。  
ふと、お盆に大量の食品を載せて席に着く生徒が見えた。  
薄茶色い体毛に包まれ、小柄な体に大きな耳と尻尾を持つ種族、ドワーフだ。  
特に誰か友人を待つ様子もなく、席に着くなり食事を始める彼を見て、バハムーンの口元が僅かに吊り上がった。  
―――今日の食い物は決まったな。  
そして、彼はようやく入り口から離れ、遅い昼食を取りに向かう。  
 
「よお、ここ空いてるか?」  
「んお?」  
突然の声にドワーフが顔を上げると、自分に負けないぐらい大量の料理を持ったバハムーンがいた。  
「空いてるけど……他にも空いてる席はいっぱいあるだろ?」  
「ははっ。そりゃそうなんだが、一人じゃ味気なくてな。」  
「お前等みたいな種族でも、そういう感情あるのか。」  
つい本音を漏らしてしまい、ドワーフはあっと口元を押さえた。が、彼は気にした様子もなく笑う。  
「そりゃあ偏見だ。性格悪いセレスティアもいりゃ、天使みたいなディアボロスだっているだろう。」  
「……で、寂しがりのバハムーンもか?」  
「寂しがりじゃない。孤独が嫌いなだけだ。」  
「はは、お前面白いな。」  
ようやく警戒が解けてきたらしく、ドワーフは笑顔を見せる。それを受けて、バハムーンはようやく席に着く。  
「ふーん……お前、新しく入った奴か。大体ここにきて二ヶ月ぐらいだろう?」  
「えっ?」  
食事を再開しようとしたドワーフの手が、思わず止まる。彼の言った事は、見事に的中していた。  
「その筋肉のつき方から見るに、戦士じゃないな。その目つき、その目の配り方からすると、僧侶だろう?」  
「……すっげー。それだけでわかっちまうのか?」  
「ま、俺ぐらいになるとな!……と、言いたいところだが。」  
バハムーンはニッと小ずるそうな笑みを浮かべた。  
「学科に関しては、実はお前の武器が見えたからだ。」  
「何だよ!一瞬本気で感心しちまったじゃねえか!」  
「はっはっは!悪かった!でも、最初に言ったのはちゃんと当たってただろう?」  
「ああ、そういやそうだ。やっぱすげえのか。」  
「だろう?すごいだろ?俺の山勘は!」  
「勘かよっ!」  
声を上げて笑う二人。会ってわずか数分だというのに、もうお互いの警戒心はきれいになくなっていた。  
「お前の方は?学科はやっぱ戦士?」  
「いや、残念ながら外れだ。これでも、どちらかといえば優等生なもんでな。」  
「んー、じゃあなんだぁ?後衛ってことはなさそうだから……侍!」  
「残念、それも違う。」  
「えー。んじゃ……狩人、はなさそうだし、君主でもなさそうだし……あ、わかった!修道士だろ!?」  
「ようやく当たりだ。」  
「へえぇ、修道士かあ。すっげーなー。修道士って、上級学科だろ?」  
まだ学院に来て日も浅く、大した経験のないドワーフは純粋に感動している。その純真な瞳に、バハムーンは心の中で舌なめずりする。  
「下等生物とは出来が違うんだ。」  
「あ、やっぱお前バハムーンだなー。何?下等生物ってオレのこと?」  
「そんな奴と、わざわざ飯を食うか。お前達は力も強く、信仰心もある。他の種族の中じゃ、まともな方だ。」  
「うっわー、なんかすっげえ嬉しくねえ褒められ方。」  
「これでも認めているんだ。少しは喜んでもらいたいな。」  
「うっせー、この鈍足野郎。」  
「動きが鈍いのは認めるが、お前に言われるのは心外だ。」  
内容は憎まれ口のようでも、お互いに顔は笑顔だ。ドワーフはもうすっかり、このおかしなバハムーンに気を許していた。  
それが、彼の手口だということも知らずに。  
 
その後、意気投合した二人は一緒に地下道に入り、戦闘に探索にと汗を流した。  
しかし、たった二人の上に狩場はバハムーンの強さに合わせられ、新米であるドワーフの疲労は、わずか数時間でピークに達してしまう。  
無理はしないことにし、二人はそこで探索をやめてランツレートに戻った。  
気がつけば、外は学食も終わりそうなほどに暗くなっており、二人は大急ぎで学食に駆け込んだ。  
その甲斐あって何とか間に合い、辛うじてランツレート名物のカレーにありつくことが出来た。  
「ぶっはー!ほんっっっと疲れたー!」  
勢いよくカレーをかき込みつつ、元気のいい声を出すドワーフ。  
「ここにきて2ヶ月程度で、あそこまで戦えれば上出来だ。将来が楽しみだな。」  
「そ、そうかな?へへっ!」  
褒められるとまんざらでもないらしく、ドワーフは無邪気な笑顔を浮かべる。  
「オレ、あんなとこまで行ったの初めてだしさ。もうついてくのに必死でさー。」  
「俺の方こそ、あそこまで行ったのは久々だ。後ろを安心して任せられる者がいるとつい、な。」  
「な、何だよー。そんな言われると、背中がくすぐったくなるよ。」  
そう言いつつ、尻尾は千切れんばかりにブンブン振られている。と、不意にバハムーンが声を潜めた。  
「……周りには誰もいないな?」  
「どうしたんだよ、いきなり?」  
「なに。あそこまで行ったのは初めてなんだろう?なら、お祝いでもと思ってな。」  
そう言ってバハムーンが取り出したのは、購買で売られているやさぐれ淑女だった。  
「おいおいおいおい、酒かよ!」  
「構いやしないだろう。どうせ誰も見ていない。」  
「……ま、いっかぁ!ありがたくもらうぜ!」  
バハムーンの手から瓶ごと奪い取り、栓を開けると一気に飲み干すドワーフ。些か予想外の事態に、ついバハムーンの動きが止まる。  
「んお?どした?」  
「お前……乾杯しようという気は…。」  
「あっ……あああぁぁぁぁ!!!ごごご、ごめん!つい、そのっ…!」  
「まあいい。喜んでもらえれば何よりだ。それに…。」  
バハムーンは道具袋の中から、さらに新月酒を取り出した。  
「酒はまだある。」  
「……お前…。」  
一瞬呆れたような顔を見せるドワーフだが、その顔がニッと笑う。  
「いい性格してるな!」  
「こいつは、めちゃくちゃ薄いがいいか。」  
「でも酒だろ?あ、今度はちゃんと乾杯するぜー。……そんじゃ、ありがたく!」  
水の入っていたグラスの中身を入れ替え、あまり音が響かないように、控えめにグラスを鳴らす二人。  
「かんぱーい!」  
「ああ、ゆっくり飲…。」  
「……ぷっはぁー!やっぱ酒はいいな!」  
「………。」  
 
疲労困憊の体にアルコールを入れては、どんな酒豪であろうと酔いは早い。まして、一気に飲んでしまえばなおさらだ。  
「ふ〜。頭フラフラするぜ〜。」  
「だろうな。1ガロンぐらい飲み干すかと思ったぞ。」  
「はっはっは〜。ちょーし良けりゃあな〜。」  
やや足元の定まらないドワーフの肩を抱き、寮へと歩を進めるバハムーン。  
その足はドワーフの部屋ではなく、自分の部屋へ向かっているのだが、酔いの回っているドワーフは気付かない。  
やがて部屋の前に着き、バハムーンがドアを開ける。成り行きでついつい部屋に入ってから、ようやくドワーフは気付いた。  
「あっと、ここお前の部屋かー。」  
バハムーンが、後ろ手にそっと鍵をかける。  
「つい入っちゃったけど、オレはここらで…。」  
その言葉は、バハムーンの突進で遮られた。ほとんどタックルのような、凄まじい勢いでドワーフに掴みかかる。  
有無を言わせず、その小さな体を持ち上げると、ベッドに叩きつけるように放り出した。  
「痛ってぇー!お、おい何すんだよ!?」  
「男の部屋に入って、何するもないもんだろう。」  
「はぁ!?」  
バハムーンの言葉に、ドワーフの酔いは一気に醒めていく。  
「お……おいふざけんな!オレは男だぞ!?てめえホモかよ!?」  
「それが何か?」  
「えっ…。」  
一瞬、二人の間の空気が凍った。今まで怒りの表情を浮かべていたドワーフの顔も、呆気に取られたようにポカンとなっている。  
が、やがてその顔が嫌悪感と恐怖感に支配されていく。  
「ふ……ふざけんな!さ、最初っからこのつもりでオレに近づいたのかよ!?」  
「ああ、そうだ。」  
「ぐっ……てめえ、最悪だ…!さ、触んじゃねえ!あっちいけ!」  
「断る。お前も男なら、覚悟を決めろ。」  
「嫌だぁー!!男の相手なんてごめんだぁー!!」  
ドワーフは激しく暴れるが、いくらドワーフとはいえバハムーンの力には敵わない。まして、僧侶学科に所属する彼では修道士相手に  
勝てるわけもなかった。  
暴れる体を無理矢理押さえつけ、どんどん服を剥ぎ取るバハムーン。  
やがて残りはズボンだけとなったが、そこからの抵抗はさらに激しさを増す。  
「やめろぉー!!!これだけは絶対ダメだぁー!!!離せ!!あっち行け!!!やめろぉ!!!」  
「まったく…!お前もいい加減諦めろ!」  
「嫌だ!!お前なんかの相手なんて、絶対嫌だ!!や、やめろ!!引っ張るなぁ!!!」  
「やれやれ…。」  
あまりに頑強な抵抗に、バハムーンは苦笑いを浮かべて体を離した。が、別に諦めたわけではない。  
 
「なら、こうしてやるか。」  
「え?何を……わっ!?うひゃ!あはははは!!!!や、やめろー!くすぐるなぁー!!!ははっ!!や、やめ……あははは!!!」  
わき腹を、首筋を、足の裏をと所構わずくすぐるバハムーン。  
さすがにその攻撃は耐えられず、ドワーフはくすぐったさに笑いながら必死にそれをやめさせようとする。  
くすぐりが激しさを増し、ついズボンから手を離した瞬間。  
「隙あり!」  
「あーっ!!!」  
素早くズボンに手を掛け、サッと剥ぎ取るバハムーン。あまりに勢い良く剥ぎ取ったため、パンツまでが半分以上ずり落ちる。  
「てめっ…!見るな!くそ、返せよ!」  
「暴れるな。蹴るな。ようやくお楽しみの時間だっていうのに…。」  
「くそー!ほんとにぶん殴るぞてめえ!!」  
「おっと。仕方ないな、押さえさせてもらおうか。」  
「痛っててて!くそぉ…!やめろぉ…!」  
「しかし、なかなかいい体をして……ん?」  
全身を舐めるように見つめていたバハムーンの目が、ふと訝しげに歪む。  
もさもさした毛に全身を覆われた体。そのため、全体的なラインはかなり見難いものの、かといってわからないとまではいかない。  
それなりに鍛えられた大胸筋や、恐らく割れて見えるであろう腹筋の形はおぼろげながらわかる。  
なのに、一つだけ見えないものがある。  
下腹部より、さらに下。男であれば、むしろ一番目立つであろうはずのものが、なぜか見つからない。  
「ん〜?」  
バハムーンはドワーフのパンツを片足だけ脱がせると、その足を開かせようとした。が、ドワーフはぴったりと足を閉じてしまう。  
「まったく、手のかかる奴だ。」  
「やめろ…!広げるな…!くそぉ…!」  
「無駄だというのに。よっ!」  
「痛ってー!!」  
右手で両腕を、さらに膝で足を押さえ込み、ようやくその足を開かせる。だがやはり、あるべきものは見えない。  
そっと、胸に手を触れる。  
「うわっ!よせ!触るなぁ!!!」  
ドワーフの声は完全に無視し、そのまま下へと手を滑らせる。腹部を越え、下腹部を通る。そして、問題の箇所に手を触れる。  
「んあっ…!」  
あるべきはずのものは、ない。  
その代わり、下腹部にはないはずの膨らみがあり、何より問題の場所にはぴっちりと閉じられた亀裂が入っている。  
バハムーンの顔が、はっきりと歪んだ。  
「……おいおいおい!お前、女かよ!」  
言うなり、掌を返したようにドワーフから離れるバハムーン。  
当のドワーフは、恥ずかしさと怒りに顔を歪ませたまま、バハムーンを睨みつけている。  
ドワーフは種族柄、顔を見ただけではまず性別の判別がつかない。おまけに体のラインも起伏に乏しく、声も低く、  
その上男女問わずに筋肉質なのでさらにわかりにくい。  
同種族なら判別可能なのかもしれないが、他種族であるバハムーンには無理な話である。  
「まったく、男装とは…。あーあ、せっかくいい相手だと思ったのに。俺は女には興味な…。」  
「う、うるせえ!オ、オレは男だ!」  
「……は?」  
ドワーフの意外な台詞に、つい気の抜けた返事をするバハムーン。  
「男って……お前、それで男とか言い張るのは…。」  
「うるさいうるさい!!オレは男なんだよ!女じゃねえ!!」  
「………?」  
一体何が言いたいのか理解できなかったが、少なくともドワーフの顔は真面目だ。冗談で言っているわけではないらしい。  
 
やがて、バハムーンの頭にある仮説が浮かび上がる。  
「なるほど。お前は、どうあっても女じゃないって言うんだな?」  
「そ、そうだよ!悪りいか!?」  
「体は女だが、心は男だと。そういうことだな?」  
「……そうだよ!それが何か悪りいのかよっ!?」  
「天地天命に誓って男だな?」  
「ああそうだっつってんだよ!耳付いてねえのか!」  
一度は元気をなくしたバハムーンの股間が、再び勢いを取り戻していく。  
「そうか。俺もそういう相手は初めてだが……女は守備範囲外だが、男なら守備範囲だ。」  
「げ…。」  
そこで初めて、ドワーフは墓穴を掘りまくっていたことに気付いた。  
下手なことを言わなければ無事に帰れたものを、自分でそのチャンスをふいにしてしまった。  
ドワーフの脳裏に、自分の墓穴をビッグバムで豪快に掘る姿が浮かぶ。  
「どうした?今更やっぱり女でしたとでも言うつもりか?」  
「ぐ……そ、そんなこと、誰が言うか!」  
「そうか。女だと言うのは俺に犯されるより嫌なんだな。」  
「ど、どっちも同じぐらい嫌なんだよっ!!」  
ドワーフが逃げ出そうとするよりも早く、バハムーンが再びのしかかる。そして強引に足を開かせると、その秘所に指を這わせる。  
「うわぁ!やめろ!そこは触るんじゃねえー!!」  
「ふーん、そんなに女であることを感じるのは嫌か。」  
「くっ…!」  
「安心しろ。俺もこっちには興味はない。だが潤滑剤が欲しいんでな。」  
そう言いつつ、その中には指を入れず、そこにある小さな突起をコリコリと刺激するバハムーン。ドワーフの体がビクッと震える。  
「んっ!……て、てめえ……もう、よせよ…!くそ…!」  
「ここは、男のものとそう変わらないとか聞く。男だってここを触られたら、それに近い反応はするぞ。」  
「だ……だからって、ぐっ!……触っていいってもんじゃねぇ…!うあっ!」  
いくら女であることを否定しても、体の反応までは拒否できない。  
最も敏感な部分を刺激され、ドワーフのそこはじんわりと湿り気を帯び始めた。  
と、それを見るとバハムーンはそれ以上触るのをやめ、そこから滲み出る蜜を指につけた。  
そしてそこよりさらに下の、小さな穴に手を伸ばす。  
「う、うわわわっ!?やめろっ!変なとこ触るなぁ!」  
「ええい!だったらどこを触れと言うんだ!?」  
「どこも触るなぁー!」  
「無理なことは言うな!」  
前の方と同じく、その穴の周囲だけはあまり毛が生えていない。そのため狙いは付けやすい。  
皺をなぞるように、ゆっくりと穴の周囲を撫でる。少し触れただけでも、その穴はピクンと反応する。  
「う、うわあ!気持ち悪りい!」  
「最初はな。我慢しろ。」  
「や、やめろ!もうやめろってば!」  
「やめてもいいが、最初にしっかり慣らしておかないと、苦しむのはお前だぞ。」  
「だ……だから、それ自体やめろって…!うあ!?やめっ…い、入れるなあぁ!!!」  
別にまだ入れる気はなかったのだが、ほんの少し指が中心部に触っただけで、ドワーフの小さな穴はきゅっと縮こまってしまう。  
その初々しい反応に、バハムーンはつい笑みを浮かべる。これほどいい反応をする相手は、そうそういない。  
優しく、じっくりと、周囲からマッサージするようにほぐしていく。  
最初は頑強に抵抗していても、少しずつその穴の周囲は柔らかくなっていく。  
 
慣れない刺激に、ドワーフは顔をしかめながら何とか逃れようともがく。しかし、その反応はただバハムーンを楽しませるだけだ。  
「そろそろ、いいか。」  
「な、何する気だ!?」  
「力を抜いておけ。」  
いよいよ中に入れようと指をあてがうが、ドワーフは必死にそれを閉じて抵抗する。  
「やめろ!ほんとやめろてめえっ!い、いい加減にしねえと、マジでぶっ殺すぞ!!」  
「元気があれば、あとでやってみるといい。ほら、あんまり締めてると本当に痛いぞ?」  
ググッと、指に力を入れる。いくら抵抗しようとしても、バハムーンの指にはドワーフ自身の愛液が塗られており、  
しかも既にある程度はほぐされていたため、じりじりと侵入を許してしまう。  
「い……痛い!痛い!」  
「だから言ってるだろう?力を抜け。」  
「く……くそぉ…!あ、あとで……いっ!?……お、覚えてろぉ…!」  
痛みに耐えかね、ドワーフはとうとう言われたとおりに力を抜く。確かに多少は痛みが和らいだが、  
体内に感じる凄まじい異物感は如何ともしがたい。  
「うぅ…!き、気持ち悪りい…!も、もう抜けよぉ…!」  
「入れたばっかりだぞ?まだまだ、じっくり慣らさないとな。」  
一番奥まで入れると、今度はゆっくりと指を抜きにかかるバハムーン。  
「うあっ!?ま、待てっ!待てぇっ!やめろっ…!な、なんか…!よせ、ダメだ…!」  
突如襲ってきた排泄に似た感覚に、ドワーフは指をぎゅっと締め付ける。  
その反応もやはり、まったく経験がないのだという裏づけとなり、バハムーンの征服感を心地良くくすぐる。  
ある程度引き抜いてから、また奥まで突き入れる。そして時に指を曲げ、あるいはこねるように回し、じっくりと慣らしていく。  
「やめっ…!い、痛っ!指曲げるなっ…!痛てえ!」  
「だいぶ解れてきたな。そろそろ次に移るか。」  
「くっそぉ…!てめえ、いい加減に…!」  
バハムーンが指を引き抜いた瞬間、ドワーフは素早く足を引いた。  
「しろおっ!!!」  
「うおっ!?」  
渾身の蹴りが、バハムーンの股間を襲う。一瞬早く身を引いたため、辛うじて金的の直撃は免れたものの、油断しきっていた下腹部に  
思い切りその直撃をもらってしまう。  
「ぐっ…!痛っててて…!」  
「ハァ、ハァ…!悪りいな!」  
脱がされた制服を掴み、バハムーンの脇をするりとすり抜けるドワーフ。が、バハムーンの目に怒りの色が浮かんだ。  
「待て、この下等生物が!」  
ドアの鍵を開けようとしていたドワーフを追いかけ、その首根っこを掴むと、思い切り後ろに投げ捨てた。  
「うわあっ!?」  
片手で掴んでいたにもかかわらず、ドワーフの体は勢い良く吹っ飛び、壁に激突してベッドに落ちる。  
「い……痛てぇ…!」  
痛みに顔をしかめるドワーフ。前に立った気配にふと目を開けると、怒りに満ちた目で自分を見下ろすバハムーンがいた。  
「う……うぅ…!」  
最初、バハムーンはこのまま慣らしていない穴に無理矢理入れてやろうかと思っていた。  
が、自分を見て耳を垂らし、尻尾を内股に巻き込んで震え、怯えきった目で見上げるドワーフの姿を見ると、  
それだけで溜飲が下がってしまった。元々傲慢な種族だが、案外単純なところもあるため、恐れられると気分はいいのだ。  
 
とはいえ、何かしらのお仕置きは必要だと考え、バハムーンはドワーフの体を掴み上げた。  
「う、うわあぁ!!やめろ!!助けてくれ!!」  
「ふん、別に殺しはしない。安心しろ。」  
ドワーフを小脇に抱えたまま、椅子を引き出す。そして制服を勝手に拝借すると、ドワーフの体を椅子の上へうつ伏せに押し付けた。  
そのまま動く間もなく、両手両足を制服でそれぞれの椅子の脚に括りつける。  
「な、何するんだよぉ!?」  
「いきなり蹴飛ばしやがって。そのお仕置きだ。」  
「だ、だって、それは…!や、やめろ!そこは触るなぁ!」  
「何もつけずに突っ込めば、痛いだけだぞ。」  
今度は中指と人差し指でドワーフの秘所を撫で、再び愛液をつける。  
そして指によく伸ばすと、二本そろえて、主人と同じように縮こまる菊門に押し当てた。  
「やめろ!な、なんか増えてねえか!?」  
「ああ、次は二本だ。」  
「む、無理だぁーっ!!そんなの、入るわけねえよぉー!!」  
ドワーフが怯えた声で叫ぶ。  
「そうかもな。指二本揃えたときの太さが、大体そいつの男根の太さと同じらしいしな。まあ厚みはないが。」  
「そんな無駄知識いらねえよぉ!やめろってば!うあ……あっあっ!?」  
二本の指が、ずぶずぶと入り込んでいく。が、第二間接辺りまで入ったところで、ドワーフが暴れだす。  
「痛い痛い痛い!!!もうよせ!!やめろ!!それ以上は無理だぁー!!!」  
「俺を蹴っておいて、やめろとはよく言えたもんだな。」  
「わ、わかった!!!わかったよぉ!!!やめてくれ!!頼むよぉ!!!」  
「断る。」  
冷たく言い放ち、さらに奥へと指を突き入れる。  
「そんなっ…!い、痛いぃー!!!切れる!!裂けちまうよぉ!!!!」  
どんなにもがいたところで、椅子に括りつけられた手足は動かない。まして、その椅子は自分の体重で固定されているため、  
動かしようもない。  
「そう言っている割には、結構奥まですんなり入ったぞ。」  
「ううぅぅ…!痛いぃ…!お願いだから、やめてくれ…!オレが悪かったよぉ…!」  
「だいぶ素直になってきたな。結構なことだ。」  
そう言いつつも、指をグリグリと回すバハムーン。その度に、ドワーフが悲鳴を上げる。  
最初は低かった声も、だんだん余裕がなくなってきたのか、地声らしい高い声になってきている。  
「声だけ聞くと、クラッズ辺りを相手にしてる気分になるな。やはり女、か。」  
「ふ、ふざけるなぁ…!オレは、女じゃねえ…!」  
「体は、という意味だ。まあ無理することもないだろう。ただでさえ余裕がなさそうだしな。」  
多少強引な感はあったが、もうドワーフの菊門はだいぶほぐれ、既に指二本は楽に動かせるようになっている。  
腸壁越しに伝わるトクントクンという鼓動も、バハムーンの劣情を激しく刺激する。  
「さて、そろそろ準備もできたようだし、俺も限界だ。」  
「や、やめろぉ…。これ以上は無理だぁ…。」  
泣きそうな声で言うドワーフ。その声もなかなかに可愛らしい。  
指を引き抜くと、ドワーフの体がビクンと震える。  
ズボンを下ろし、自分のモノに愛液を塗りつけてからドワーフに押し入ろうとしたところで、バハムーンはふと動きを止めた。  
「……やはり、初物をもらったときの顔は見えなければ面白くないな。」  
今のままだと入れるのは楽だが、せっかくの顔が見えない。それがなければ楽しみが半減どころか9割がた減ってしまうため、  
バハムーンはドワーフの拘束を解くとベッドの上に寝かせた。  
「や……やめろぉ!頼むからそれだけはやめてくれぇ!」  
「生殺しになれというのか?お前も男なら、その辛さぐらいはわかると思うがな?」  
「い、嫌なものは嫌だぁ!!オレだって男なんだぞぉ!!」  
「ああ、わかっている。お前も男なら、覚悟を決めろ!」  
「嫌だぁー!!!」  
 
掴みかかるバハムーン。その手を押し返そうとするドワーフ。何とかその両手を封じるが、今度は足をぴっちりと閉じられてしまう。  
無理矢理膝を割り込ませ、足の上に正座するような形で押さえ込む。が、ようやく入れられると思った瞬間、尻尾がそこをガードする。  
「……面倒くさい奴だな。」  
「ぜ、絶対やらせるもんか!」  
「だが、残念ながら尻尾は俺にもある。」  
普段は使わない尻尾を、ドワーフの尻尾に引っ掛ける。  
ドワーフのそれと違い、バハムーンの尻尾はかなり強靭で、ドワーフの尻尾は簡単に押さえられてしまった。  
ついに防衛の手段を全て封じられたドワーフは、怯えきった目でバハムーンを見上げる。  
「や……やめてくれぇ…!頼むよぉ…!」  
「安心しろ。優しくしてやる。」  
「優しくしなくていいから、やめてくれってばぁ!」  
そんな訴えには耳も貸さず、バハムーンはドワーフの縮こまった菊門にモノをあてがう。  
「ゆっくり息を吐いていろ。」  
「やめろ!やめろ!やめ……いっ!?うあぁ!!痛てぇよぉ!!」  
わずかに侵入するだけで、ドワーフは激しい痛みを訴える。だが裂けるなどはしていないらしいので、バハムーンは構わず侵入していく。  
「やめろ!ほんとやめてくれぇ!!痛てえってばぁ!!裂けちまうよぉ!!」  
「まだ亀頭部分も入っていないぞ。」  
「そ、そんなぁ…!いっ!?こ、こんな痛てえのにぃ…!」  
「もうちょっとで一番太いところだ。我慢しろ。」  
かなり入れられたと思っていたのに、まだ全然入っていないと言う。おまけに、さらに痛みが強くなると言われ、ドワーフは恐怖した。  
「や、やだぁ!!もう入れるな!抜け!抜いてくれよぉ!!」  
「息を吐いて、力を抜くか、あるいは排泄するように力を入れろ。そうすれば痛みは和らぐ。」  
「痛い痛い痛いっ!!!待て!!待ってくれぇ!!!お願いだからちょっとだけ待てよぉ!!!」  
あまりの痛みに涙を滲ませるドワーフ。そんな顔で言われては無視するわけにも行かず、バハムーンは腰の動きを止めた。  
「ハァー…!ハァー…!うぅぅ……ち、力抜けばいいんだよな…?」  
完全に痛みに屈してしまったらしく、とうとうそんなことを聞き始めるドワーフ。  
「つい力が入ってしまうなら、逆に入れた方がいい。ただ、締めようとはするな。裂けるぞ。」  
「そ、そんなの嫌だ…。あの……その……ほ、ほんとに裂けない……よなあ…?」  
「安心しろ。なるべく努力してやる。」  
「………。」  
ドワーフは少し困った顔をしていたが、やがておずおずと力を入れてみる。確かに、痛みが少し和らいだ。  
「さて、一つ質問がある。」  
「な、何だよぉ…?」  
「激しい痛みが一瞬がいいか。そこそこ強い痛みが長くがいいか。どっちだ。」  
「い、嫌な質問だな……い、一瞬の方が、いい…。」  
「よし。じゃあそのまま力を入れていろ。」  
不安そうなドワーフの頭を撫でつつ、バハムーンはタイミングを計る。  
ドワーフは時折、思い出したように締め付けてくるが、少しずつきつさがなくなっていく。ドワーフも少しは痛みがなくなってきたのか、  
その表情には少しずつ余裕が見られるようになってきた。  
やがて、ふっと中が緩んだ瞬間、バハムーンは思い切り腰を突き出した。  
「い゛っっ!!!!?」  
さすがに声を聞かれるとまずいので、ドワーフが悲鳴を上げる直前、バハムーンはその口を塞いだ。  
「ん゙ん゙ーーーーっっ!!!!ん゙ううぅぅーーーーーっっ!!!!!」  
バハムーンに口を塞がれたまま絶叫し、痛みにボロボロと涙をこぼすドワーフ。  
その口を押さえつつ、バハムーンは今までにないほどの胸の高鳴りを感じた。  
 
―――おかしいな。  
やがて痛みが少し落ち着いてきたのか、ドワーフの絶叫は嗚咽へと変わっていった。  
「い……痛てぇよぉ…。絶対裂けたぁ…。」  
「大丈夫だ。血は出ていない。」  
「嘘だぁ…。こんな……痛いのにぃ…。」  
「嘘なんか言ってどうする。」  
まるで、子供のような仕草で涙を拭うドワーフ。その姿に、再びバハムーンの胸が高鳴る。  
―――こいつは、女のはずなのに。  
「ひっく…!ひっく…!も……もう、痛てえの、おしまいだよな?な?」  
「まだ、入れたばっかりなんだが。」  
「ううぅ……もう、痛てえの嫌だよぉ…。」  
「今のが一番痛いところだ。なかなかいい顔だったぞ。」  
「うるせえ、ホモ野郎…!」  
そんな悪態など気にも留めず、バハムーンはドワーフの頭を優しく撫でる。  
「よく、頑張ったな。」  
「う……うるせえ…!そんな褒められ方……嬉しくねえよっ…!」  
涙に濡れた顔を振り、その手を振り落とそうとするドワーフ。こんな状況でも強がるその姿は、何とも愛らしい。  
「ゆっくり動く。耐えられなかったら俺の腕を掴め。」  
そう言ってわずかに腰を動かすと、いきなりドワーフが腕を掴む。  
「お前、少しは耐えろ。」  
「もう十分耐えただろぉ…。」  
「仕方ないな。お前は嫌かもしれないが。」  
再び、ドワーフの小さな突起を刺激する。途端に、ドワーフの体がピクンと跳ねる。  
「や、やめろぉ…!そこは…!」  
「痛いよりはマシだろう?」  
「う……い、痛い方が……マシだぁ…!」  
「そうか。だが、俺の気が済まん。」  
―――痛がる顔を見るのが、楽しみのはずなのに。  
さらに、女らしさとはほぼ無縁の胸に手を伸ばす。ドワーフの体が、さらにビクッと震えた。  
「よ、よせぇ…!女扱いするなぁ…!」  
「男でも、ここで感じる者はいる。あまり気にするな。」  
指での刺激を強めつつ、少しずつ腰を動かしていく。多少は気が反れたらしく、ドワーフがひどい痛みを訴えることはない。  
だが、体の中の凄まじい異物感。そればかりは消しようもない。  
引き抜かれるときは、内臓ごと引き抜かれそうな感覚が。突き入れられると、普段は出ることしかない場所に何かが逆流する違和感、  
そして疼痛。そしていずれにしろ、まだ慣れきってはいない場所を限界まで押し広げられた痛みがある。  
「うぐぅ……腹の中、気持ち悪りいよ…!」  
「慣れれば良くなる。あと入れるときは力抜け。」  
「な、慣れるもんか…!んうぅ……うあぁ!」  
そうは言いつつ、胸と秘所の突起を刺激されているドワーフの声は、既に違う響きが含まれつつある。  
そのせいか、声はもう男の声など出せてはおらず、完全に女声になっている。  
 
―――どうしてだろうな。  
初々しい反応を示す腸内を蹂躙しつつ、バハムーンは頭のどこかで冷静に考える。  
―――こいつだけは、今までの誰よりも、大切にしたくなる。  
足での拘束を解き、ドワーフの体を抱きかかえる。さすがにもう抵抗はせず、また何かされるのかと不安な目で見てくる。  
「可愛いな、お前。」  
「うっ……お、お前に言われても嬉しくねえ…!つうか、そんな褒められ方……あうっ!ま、待てぇ!奥……深いぃ!」  
不意に、今までより長く深いストロークで攻め始めるバハムーン。  
あまり乱暴にすると裂けてしまうので、動きを速くせずに最後までもっていこうという、彼なりの気遣いだった。  
「そろそろ……出すぞ!」  
「え?嘘だろ!?や、やめろ!中で出すなぁ!」  
「お前の場合、外で出した方が大変なことになると思うんだが。」  
「体ん中に出されたくないんだよ!頼むよ、ほんとやめてくれぇ!」  
「断る。」  
最後に思い切り突き入れ、ドワーフの中に射精するバハムーン。急に動きが止まり、ドワーフは一瞬ホッとした顔をしたが、すぐに  
その理由に気付き、ギョッとした顔になる。  
「お、おい!?まさか、今出してる!?オレの中に出してるの!?」  
「……ふぅ。ああ、思いっきり出させてもらった。」  
「うわぁー!てめえ最悪だぁ!ホモ野郎!変態!」  
本気で嫌だったらしく、涙を滲ませながら罵倒するドワーフ。その姿も、バハムーンにとっては何とも微笑ましいものに見える。  
ともかくも一度は終えたので、バハムーンはドワーフの中から自分のモノを抜き始める。その瞬間、ドワーフの体が震えた。  
「うあっ!?あ、あ、あ!!ま、待て!なんかっ……ダメ!オレ、こんなっ…!」  
体内の奥深くから何かが抜き出される感覚。それが、密かに限界まで高まりつつあった快感に止めを刺した。  
「あああぁぁぁ!!!!!」  
全て抜き取られるのと同時に、甲高い叫び声を上げて弓なりになるドワーフの体。それは明らかに達してしまった時の反応だった。  
「お?なんだ、初めてでイッたのか?なかなか素質あるじゃないか。」  
「ハァー……ハァー…。う……うるせぇ…。」  
ぼうっとした頭で、何とかそれだけ言い返す。だが、次に襲ってきた感覚に、その頭は一気に覚醒していく。  
 
「って、てめえ何してやがるんだあ!?」  
「なに。まだ収まりがつかないんでな。」  
そう言って、ドワーフの秘所を広げるバハムーン。  
「だ、だからって、なんでそっちなんだよぉ!?そっちには興味ねえんだろぉ!?」  
「ああ、興味自体はない。だがせっかくだ、こっちの初物ももらおうかと思ってな。」  
「やめろ!やめろ!やめろ!!!それだけは絶対やめろぉ!」  
涙を浮かべて嫌がるドワーフ。それを見て、バハムーンがずるそうに笑う。  
「そんなに嫌がるなら、やめてやってもいい。が、条件がある。」  
「な、何だよ?」  
「俺の彼女……いや、彼氏になれ。」  
「は……はぁ!?」  
予想だにしなかった条件に、ドワーフは激しく狼狽する。  
「ずっととは言わん。お前に他の友人が出来るまで出構わん。」  
「……こ、断ったらどうするんだよ?」  
「それならしょうがない。このままここを犯す。」  
「てめっ…!そんなん脅しじゃねえか!しかも最低最悪な脅し方だぞそれ!」  
「で、どうする?」  
ドワーフの顔が、苦虫を噛み潰したように歪む。  
「くっ……そ、そもそもオレじゃ、好みじゃねえんじゃねえのかよ!?オレは男だけど、体の方は…!」  
「ほう、都合のいいときだけ女であることを使うのか。」  
「う…!」  
「まったく、女らしい小狡さ…」  
「うるせーっ!!!てめえにずるいとか言われたくねえっ!!!」  
「それで、どうするんだ?返事がないならこのまま…」  
バハムーンが腰を突き出し、わずかにドワーフの中に侵入する。途端に、ドワーフは叫んだ。  
「あーっ!!わかった、わかった!!!彼氏にでも何でもなってやるからやめろちくしょーっ!!」  
「よし、いいだろう!」  
苦虫80匹ぐらい噛み潰した顔のドワーフとは対照的に、バハムーンは改心の笑みを浮かべた。  
「じゃあこっちにしておいてやる。」  
「って、ちょっと待てぇ!!結局やるにはやるのかよっ!?」  
「だから、収まりがつかないと言っただろうが。」  
「ふざけるなっ!もうやめろっ!もう痛いのも気持ち悪いのもやだよっ!」  
「気持ちよくしてやればいいんだろう?」  
「そういう問題じゃねええぇぇっ!!!」  
 
一ヵ月後、バハムーンは寮の部屋に一人座っていた。  
あの日以来、ドワーフはバハムーンの彼氏という立場に納まり、どちらかというとバハムーンの一方的な意思の元、  
遊びや探検に連れ回された。最初はバハムーンを見るのも嫌といった感じだったが、時間が経つにつれ、それも多少は軽減された。  
だが、元々が誰か友人が出来るまでという約束。その別れの日が来るのは、そう遠い話でもなかった。  
はずだった。  
「ただいまぁ。」  
どことなく暗い声と共に、部屋に入ってくるドワーフ。今では部屋までもが相部屋にされている。もちろんバハムーンの仕業だ。  
「おう、遅かったな。で、友人はできたか?」  
ニヤニヤしながら尋ねると、ドワーフの顔が、憎々しげに引きつった。  
「んなわけねえだろ、くそ野郎…!」  
「ほーう。それは意外だな。」  
「嘘つけぇ!!てめえすっげえ有名人だったんじゃねえかっ!!てめえと一緒にいるってだけで、男も女も寄ってこねえんだよっ!  
しかもここのだけじゃなくて、パルタクスの奴等まで寄ってきやしねえっ!!畜生がっ!!!」  
叫びながら思い切り机を叩くが、バハムーンは平然としている。むしろその様子を微笑ましげに見ており、それが余計に神経を逆なでする。  
「いいじゃないか。その程度で近づくのを辞める奴なんて、最初から友人になどしない方が賢明だ。」  
「ふざけんな!一瞬納得しかけたぞ!でも元凶はてめえだっ!」  
「だが悪い相手じゃなかろう?この一ヶ月で、どれだけ経験を積んで、どれだけの資産を手に入れたと思ってる?」  
「う……そ、そりゃそうだけど…。で、でも、だからっててめえの公認の彼氏にされるなんて最悪なんだよっ!そ、それに…!」  
それまでの勢いが急になくなり、ドワーフは恥ずかしそうに声を落とした。  
「て、てめえのせいで、変な体にされて…!」  
「変?どう変になったと?」  
「言わせる気かよっ!?」  
「当たり前だ。俺に非があれば謝らねばならんしな。」  
ドワーフは顔を恥ずかしさに歪めつつ、何とか声を絞り出した。  
「ぐ……その……てめえのせい……で、し……尻の方で感じるようになっちまったんだよっ!」  
「別に俺のせいじゃないだろう。ダメな奴はいくら慣らしても、そっちでは気持ち良くなれないものだ。」  
相変わらず気にする素振りもないバハムーンに、ドワーフは怒りのあまり全身の毛を膨らませる。  
「ふざけんなっ!責任逃れしてんじゃねえよっ!ああもう、ほんとどう責任取ってくれんだよっ!?この絶倫変態ホモ野郎!」  
そう言われると、バハムーンは何やら不穏な笑みを浮かべてドワーフを見つめた。  
「そうか。責任を取って欲しいのか。」  
「あ、やべ…。い、今のなし…。」  
「いいだろう、責任ならいくらでも取ってやる。本当にお前は俺のこと大好きだな。」  
「ちっ、ちげーよっ!!今のは言葉の綾だっ!……くそ、ほんとに気にしてんだぞ、オレ…。」  
急にシュンとしてしまうドワーフ。耳も尻尾も力なく垂らす様に、バハムーンも罪悪感を覚えたのか、そっと席を立つ。  
「ドワーフ。」  
優しい声で呼びかけ、そっとその肩に手を掛けるバハムーン。  
「……何だよぉ…。」  
「やらないか。」  
「………。」  
返事はないまでも、その全身の毛がゾワゾワと逆立っていく。そして、腹の底から叫んだ。  
「真昼間から何考えてやがるてめえええぇぇっ!!!!!」  
「時間など関係ない!やりたいからやるんだ!」  
「無駄にかっこよく宣言してんじゃねえ!!ふざけるなっ!よせっ!やめろっ!やめてくださいっ!」  
「いいじゃないか。お前だって最近はちゃんと気持ちよくなっているんだろう?ならどこに不都合がある!?」  
「オレの意思はどうなるんだよっ!?よせっ!やめっ……あーーーーーっ!!!!」  
 
本人達は大真面目。しかし周りから見れば、それもただのじゃれあいにしか見えない。  
さらに悪いことに、そうやってじゃれあいを繰り広げる二人は非常に仲が良く見え、なおかつお似合いに見られてしまう。  
そしてそれが、他者の近寄りがたい雰囲気を醸し出してしまう悪循環。  
少なくともまだしばらく、二人の関係は強制的に続きそうだった。  
 

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