数々のカリキュラムを終え、なし崩し的に巻き込まれた事態をも収束させ、ついにパルタクスを卒業した一行。  
だが、ゼイフェアに新たな学校ができたということで、今度はそちらに入学することとなり、結局は今でも学生という立場に  
落ち着くこととなっていた。とはいえ、不平を言うものはフェアリー以外おらず、そのフェアリーも口では色々言いつつ、現状には  
十分満足しているようだった。  
その一行は、ここ最近様々な地下道を巡り歩いていた。というのも、ディモレアとの死闘以来、各地下道に強大なモンスターが出現した  
ためである。生半可な腕で立ち向かえる相手ではなく、その出現のタイミングから、どうも自分達が無関係という気がしないので、  
各地のモンスターを撃破して回っているのである。  
この日は、ザスキア地下道で森林の支配者と戦っていた。ランツレートに近いこの地下道は、よくそこの学生が探検に来る。こんな相手を  
放っておいては、どんな被害が出るか想像もつかない。  
戦いそのものは、危なげない勝利に終わった。しかし、氷に覆われたこの地下道の気温のせいで、フェルパーの動きが非常に悪い。  
「フェルパー、大丈夫か?」  
「ああぁぁ……ななな何とかぁぁ……なぁぁぁ…。」  
「思いっきりダメそうだな、あんた…。」  
「フェルパーさん辛そうですし、早めに戻りましょうか。」  
フェアリーとクラッズは、倒した森林の支配者の死体を漁り、フェアリーカードを見つけてハイタッチを交わしている。  
「次はハウラー地下道だよな?バックドアルだと、ランツレートに戻っちゃうからダメか。」  
「すみません、僕もさっきの戦いで、魔力が尽きています。」  
「歩けっていうのかぁぁ……ま、まあしょうがないぃぃ……かぁぁ…。」  
「宿屋までの我慢ですから、頑張ってくださいね。」  
セレスティアが優しく声をかけると、フェルパーは何とか笑顔を返した。ただ、その顔色は非常に悪い。  
このままだとフェルパーが凍死しかねない雰囲気だったので、一行は寄り道することなく出口目指して歩き始めた。  
 
地下道から出れば、あとは宿屋に歩くだけである。その道のりは地下道に比べ、ずっと楽なはずだった。  
だが、今このザスキア氷河では凄まじい猛吹雪が荒れ狂い、数メートル先も見えないほどであった。これでは地下道にいた方が、よほど  
暮らしやすいとすら思えるほどである。  
「さーむーいー!宿屋、まだ着かないのー!?」  
フェアリーはクラッズの背中に掴まり、声を張り上げる。  
「まだだよ〜。ていうか、ボク達ちゃんと着けるかな〜?」  
不安そうなクラッズの声。実際、今まで何度か来たことのある中継地点ではあるが、この吹雪では方向感覚すら狂ってしまい、まともに  
宿屋へ歩けているか、ひどく不安なものがある。  
「方向自体は、こっちで合ってるはずですが……皆さん、大丈夫ですか?」  
そう声をかけるセレスティアも、翼で体を覆い、それでもがたがた震えている。隣を歩くノームが、その肩にそっと自分の制服を掛ける。  
「おいノーム、服は着とけ。」  
「僕は、寒くても問題ありませんので。それに、体温自体がないので、服を着る意味もあまりないのです。」  
「いや、そりゃそうかもしれないけど……見てる私が寒いってば。」  
ドワーフは額にかけていたゴーグルを、珍しくきちんと使っている。一行が知る限り、ゴーグルをまともに活用してるのを見るのは  
初めてだった。  
「いいなあ、あんたは。暖かそうで。」  
「いや、私だって寒いよ。まだ冬毛になりきってないし、なってたって寒いものは寒いし…。」  
「フェルパーさん、大丈夫ですか!?」  
いきなりのセレスティアの声に、前を歩いていた三人は足を止めた。見ると、フェルパーは完全に参ってしまったらしく、体を抱くように  
してその場にうずくまってしまっていた。  
「おいおい!フェルパー、大丈夫!?」  
「……ふ…………も…!」  
まともに喋ることすらできないらしく、出てくる音は言葉にならない。その姿を見て、ドワーフは大きなため息をついた。  
「しょうがないなあ、あんたは…。今度から、ちゃんと上着でも持って来なよ。」  
「は…………わ……り…。」  
 
すっかり固まったフェルパーを担ぎ上げ、再び歩き出すドワーフ。それを見たフェアリーは、クラッズの背中からドワーフの肩へと  
飛び移った。  
「おっと、何だよ!?」  
「何よー。あんたなら、あたしぐらい増えたって変わんないでしょー?」  
「いや、まあな。でも、だからっていきなり乗ってくるなよ!」  
言い合う二人の隣にいたクラッズが、ぼさっと膝をついた。今までは、フェアリーが背中にいたおかげで体温保持できていたのが、  
それがいなくなったせいで限界になったらしい。  
「ちょっとクラッズ、大丈夫!?」  
「ご……ごめん…。ちょっと……寒くて…。」  
「……クラッズ、あんたも私の背中にいていいよ。どうせ大した変わりもないし。」  
「ごめん……ね…。」  
申し訳なさそうに謝りつつも、クラッズはどこか楽しそうにドワーフの背中に登った。  
「ドワーフさん、重くないんですか?」  
「ん?あ〜、別にこのぐらいならね。クラッズとフェアリーは軽いし、フェルパーもそんなには重くないし。」  
とはいえ、フェルパーを肩に担ぎ、フェアリーを肩に乗せ、背中にクラッズをくっつけたその姿は、とても楽そうには見えない。  
しばらくは、それで問題なく歩けていた。だが、やがて更なるトラブルに見舞われた。  
「ドワーフさーん、ちょっと待ってくださーい!」  
「あれ?セレスティア?」  
見ると、だいぶ後ろの方でセレスティアが呼んでいる。その隣に、なぜかノームが立ち尽くしている。  
「おい、どうしたんだよ?」  
「すみません、僕のせいです。」  
ノームが、ほとんど口を動かさずに言う。  
「どうしたの?」  
「全身の間接が凍り付いてしまいました。なので、体を動かすことができません。」  
「じゃあ飛べ!」  
「体がうまく動かせないので、飛ぶに飛べないのです。体を硬直させたまま飛ぶようなことは、今までなかったので。」  
すっかり困り顔のセレスティア。ドワーフも、さすがに頭を抱えていた。  
「どうか、僕のことは気にせず宿屋に向かってください。幸い、僕は凍死するようなことはありませんから。」  
「……だって。どうする?」  
肩からフェアリーが声をかける。ドワーフはうんざりしたような顔で、フェアリーを見上げた。  
「放っておけると思う?」  
「あんたならできるかもしれないけど、セレスティアが無理だろうね。」  
「ボクだって、放っておけないよー。でも……どうしよ?」  
「大丈夫です……わたくし、何とかノームさん引っ張って行きますから、皆さんは先に…。」  
セレスティアの言葉を最後まで聞かず、ドワーフは大きな大きなため息をついた。  
「まったく……あー、もうわかったわかった!クラッズ、肩に移れ!」  
ドワーフはフェルパーを左の脇に抱え直し、クラッズが肩に移るとノームを右の脇に抱えた。  
「すみません、お手数をかけます。」  
「ほんとだよ、まったくー!ほら、セレスティアも来い!」  
「え?いえ、わたくしは…。」  
「あんただって、だいぶ参ってるだろ!?ああもう、よいしょっと!」  
「きゃっ!?」  
セレスティアに足払いをかけると、ドワーフはその体を横向きに抱き上げた。左右に二人抱えている都合上、どうしても体が必要以上に  
密着し、その格好も相まって、セレスティアの顔は一気に真っ赤になってしまう。  
「ドワーフ、すごいなあ…。重くないの?」  
「重いとか言ってらんないだろ!?まったく、あんたら夕飯はおごってもらうからなー!」  
5人の体と6人分の荷物を抱え、ずんずん歩き出すドワーフ。皮肉なことに、そのおかげでドワーフの体は一気に温まり、本来なら  
彼女自身も参ってしまったであろう寒さの中、宿屋まで歩き通すことができたのだった。  
 
宿屋の扉を開け、巨大な雪玉が転がり込んで来た時、モンスターの襲撃かと内部は一時騒然となった。  
が、その正体が5人の仲間を抱えたドワーフだと知ると、その場にいた全員がホッと胸を撫で下ろした。とはいえ、ドワーフは疲れ切って  
おり、他の仲間もそれぞれ危険な状態になりかかっていたため、今度は別の意味で騒然となっていた。  
幸い、6人とも手遅れにはならず、休んでいるうちに少しずつ、それぞれ元気を取り戻していった。  
聞いてみると、ザスキア氷河はここ数日こんな天気が続いているらしく、客が来ることも出ることもほとんどないということだった。  
恐らく、大抵の冒険者は地下道を引き返すか、魔法球で自分の学校に戻ってしまうのだろう。  
「ふ〜、死ぬかと思ったね。」  
びしょ濡れになった髪を拭きながら、クラッズが声をかける。その言葉が大げさに聞こえないのが、外の吹雪の凄まじさを物語っている。  
「どうもすみませんでした。まさか、凍りつくとは思いもしなかったので。」  
「あんたの場合、あたし達とはまた違った悩みがあるよね。てか、あたしも羽が凍りそうで怖かったけど。」  
「ドワーフさん、大丈夫ですか?」  
5人を運んできたドワーフは、さすがに辛かったとみえて、椅子にぐったりとした感じで座っている。  
「一応大丈夫。それにしても、あっついなあ。」  
「外出てくれば?」  
「それもいいかもね、あっはっは。でも、毛乾かすの面倒だから嫌。」  
少し疲れた声で答えると、ドワーフはきょろきょろと辺りを見回し始めた。  
「あれ?そういえば、フェルパーは?」  
「フェルパーなら、あっちで溶けてたよー。」  
「溶けて…?」  
クラッズの指差した方を見ると、広間にあるストーブの前で寛ぐフェルパーの姿があった。  
椅子に逆向きに座り、背もたれに腕と顎を乗せ、ぼへーっとした表情のフェルパー。その表情もさることながら、全身もだらしなく  
緩みきっている。確かに、溶けているという表現がぴったりだった。  
「まったく、あいつは……何やってるんだか。」  
「幸せそうな顔してますよね。なんていうか、ああいうの見ると、フェルパーさん可愛く見えますね。」  
「ふーん……ドワーフ、やばいライバルができたね。」  
「ち、違いますっ!そういう意味じゃありませんっ!」  
真っ赤になって否定するセレスティア。その姿を見て、ドワーフは密かに安堵の息をついた。  
そんな仲間の様子など知る由もなく、フェルパーはただただストーブの暖かさという幸せを噛み締めていた。パチパチと薪の爆ぜる音も、  
今の彼の耳には心地良い音楽のように聞こえている。  
尻尾を気持ちよさそうにパタンパタンと動かしつつ、フェルパーは薄目を開けた。それまで気付かなかったが、近くに自分と同じように  
寛ぐ同種族の男女がいるのが見えた。  
 
女の方は、安楽椅子に深く腰掛け、まさにその椅子の名に違わぬ様子である。男の方は、その足載せを拝借し、自分の膝に肘をついて、  
そこに顎を乗せている。  
フェルパーの視線に気付くと、男の方がフッと笑いかけた。  
「よ〜ぅ。お前さんも、地獄見てきたっぽいね。」  
「あ〜、もう最悪だったよ。ここ、俺嫌いだ。」  
その声に、女の方も薄く目を開けた。どうやら寝ていたわけではないらしい。  
「うふふ。私達も、ここ来てひどい目にあったわ。あなた、パルタクスの生徒ね?」  
「そうだよ。君達はランツレートか。」  
「そ!あのカレーで有名な、ランツレートさ!」  
「もっと他に言い様があるでしょ?厳格な、とか、名門の、とか。」  
「いや、カレーだ。だって、マジうまいだろ?」  
「あはは。俺もたまにお世話になってるから、よくわかるよ。」  
まるで数年来の友人のように話し始める3人。その様子を、一行は信じられない思いで見つめていた。  
「……フェルパーって、あんなに打ち解けるの早かったっけ?」  
「あたし達ん時より、ずっと早いね。」  
「先生にだって、なかなか慣れない奴だったのに……ようやく人見知り解消したか?」  
「いえ、そういうわけではありませんよ。」  
ノームが、間接を拭きながら口を開く。  
「フェルパーは人見知りしやすい種族ですが、面白いことに同種族間ではほとんどそれがないのです。ですから、あのランツレートの  
二人も、クラッズさんやフェアリーさん相手だとかなり人見知りするはずですよ。」  
「へ〜、そうなんだ?じゃ、ボクちょっと行って来よ〜っと。」  
弾んだ声で言うと、クラッズは広間に向かった。その姿を見ると、今まで楽しげに聞こえていた会話がピタッと止まる。  
いくつか言葉を交わす4人。ただ、ランツレートの二人はあまりクラッズの方に顔を向けない。最後に軽く挨拶すると、クラッズは  
ちょこちょこと小走りで仲間の下に戻り、楽しそうな笑顔を浮かべた。  
「ノームの言ったこと、ほんとだねー。二人ともすっごく喋りにくそうだったよー。」  
「へー、やっぱそうなんだ。んじゃ、次あたし行ってみよっと。」  
「おいおい…。」  
ドワーフが止める間もなく、フェアリーはパタパタ飛んで行ってしまった。果たして、フェアリーが近づくと、やはり二人の声は止まった。  
今度は、女子の方はフェアリーにも話しかける。だが男子の方は、フェアリーが何か喋るたび、不快そうに顔をしかめている。どうやら  
いちいち皮肉を言うフェアリーが気に入らないらしい。  
フェアリーもやはり適当に挨拶を残し、実に楽しそうな笑顔で仲間の下に戻ってきた。  
「あー、面白かった。次、誰が行く?」  
「あいつらは玩具じゃないんだから、放っておいてやれよ。」  
ドワーフが言うと、ノームとセレスティアも頷く。だが、フェアリーは意地の悪い笑顔を浮かべる。  
「こ〜んな面白い奴、放って置けるわけないじゃん。ね、次ノーム行ってみてよ。」  
「いえ、僕は…。」  
「いいじゃないのー。どうせこっちだって暇なんだし、それに仲間がお世話になってるんだから、挨拶に行くのが筋ってもんじゃないの?」  
物は言い様である。そう言われると、ノームとセレスティアは非常に断りにくくなってしまう。もちろん、フェアリーはそれを見越した  
上で言っているのだが。  
 
「そうですか。それも確かに、一理ありますね。」  
そう言うと、いきなり別方向に向かうノーム。その背中に、フェアリーが慌てて声をかける。  
「ちょ、ちょっと!?どこ行く気よ!?」  
「いえ、せっかくなのでお茶でも持って行こうかと。すぐに戻ります。」  
何やら宿の主人と話をし、ポットとティーカップをもらうノーム。どうやらハーブはラベンダーを選んだらしい。  
それらをトレイに載せると、フェルパーの方へと歩を進めるノーム。会話が一瞬途切れたのを見計らい、すっと近寄る。  
「お話中、失礼します。お茶でもいかがですか。」  
「お、ノームありがとなー。」  
「どうです、そちらのお二人も。」  
「お、いいの?んじゃ、もらおっかな。」  
「ありがとう。私もいただきますね。」  
フェルパーがノームを紹介しようとすると、周りにぽつぽつといた生徒の一人が声を上げた。  
「そこのノーム君〜。せっかくなら私達にもお茶くれない〜?」  
「ええ、いいですよ。」  
何の疑問もなくそちらに行こうとするノームの腕を、フェルパーは慌てて押さえる。  
「お、おいおい!わざわざそんな手間…!」  
「まだ中身は余っていますし、事のついでですから。」  
さりげなくフェルパーの腕を外し、声をかけてきた生徒のカップにお茶を注ぐ。すると、それを見た生徒があちこちから声をかけ始めた。  
「おーい、そいつらだけじゃなくてこっちもー。」  
「私達もよろしいですか?」  
「構いませんよ。少し待っててください。」  
結局、フェルパー達と話をするでもなく、お茶汲みに奔走を始めるノーム。その光景を、フェルパー三人組は呆気に取られて見つめていた。  
「……何しに来たんだ、あいつ…。」  
「あははは、いい奴じゃん。オイラと気が合いそうだ。」  
「ノームはいい方が多いと言うけれど、本当ね。」  
「あいつはいい様に使われてるだけだよ…。人が良すぎるのも、ちょっと問題だよな〜。」  
フェルパー達と同じく、4人もすっかり呆れてそれを見ていた。  
「……あいつ、絶対人に好き放題使われるタイプだよね。」  
「ノームさん、頼まれたら断れないですからねえ…。」  
「いい人にも程があるぞ、あいつ。」  
「あはは。でも、あれでこそノームだよねー。あそこで『嫌だ!』なんて言ったら、びっくりするよー。」  
呆れ笑いを浮かべる一行。フェルパー三人組も、そのノームをネタに話を再開している。  
 
その様子を見ながら、フェアリーがまた何かを企んでいるような笑顔を浮かべた。  
「ねえ、ドワーフ。あんたも行けば?」  
「え?いや、私はいいよ。やめとく。」  
「ふーん?まあ別にいいけど。でもフェルパー、あの女の子と、ずいぶん仲良く喋ってると思わない〜?」  
フェアリーの言葉に、ドワーフの眉がピクッと動く。  
「……な、何が言いたいんだよ?」  
「いやね〜、フェルパーって同族の相性いいんでしょ?だったら、あの子といい雰囲気になっても、おかしくないんじゃないかってね〜。」  
「そ、そんなわけないだろ!?大体、あのランツレートの二人付き合ってるんだろうし…!」  
「わかんないよ〜?ただの仲のいい仲間って可能性だって大有りだし、だとしたら、ちょっとやばいんじゃないの〜?」  
「フェ、フェアリー、もうやめなってばぁ。ドワーフ、目が怖くなってるよ。」  
確かに、ドワーフの目つきはだいぶ険しくなっていた。フェアリーに言われてみると、確かに自分と話している時より楽しそうだなあと  
思えてしまう。ドワーフの中に、ちょっとした嫉妬心が芽生え始めた。  
「……ま、挨拶だけ行っとこうかな。」  
「行ってらっしゃ〜い。」  
実に楽しそうに送り出すフェアリー。不安そうなクラッズとセレスティア。そして、お茶汲みに忙しくてまったく気付かないノーム。  
ドワーフが近づくと、ランツレートの二人ははっきりと嫌そうな顔をした。  
「フェ、フェルパー。」  
「ん?おう、ドワーフか!なんか、さっきから入れ替わり立ち替わり来るなあ。」  
言いながら、フェルパーはドワーフのために椅子を半分空ける。  
「ま、まあいいだろ?そ、その、よろしく。」  
ドワーフの挨拶にも、二人は返事を返さない。というよりは返せないのだが、ドワーフは少しムッとした。  
「こいつ、俺と一緒にパーティで前衛張ってるんだ。」  
「ふ、ふーん。戦士か?」  
「いや、神女。」  
「私と同じ……か。」  
少し嫌そうな顔で呟く女子に、ドワーフはさらにムッとした。だが、フェルパーの手前怒るわけにもいかず、何とか耐える。  
その様子を、後ろの3人はハラハラしながら見守っていた。  
フェアリーは半分楽しんでいるようだが、それでも若干不安そうな顔をしている。  
「……大丈夫かなあ、ドワーフ。」  
クラッズの不安そうな呟きに、セレスティアも不安げな顔で答える。  
「種族的に、気性が合いませんからねえ…。何事もなければいいんですが…。」  
「いや〜、さすがにちょっと失敗だったかな〜?あはは…。」  
珍しくクラッズに睨まれ、フェアリーは不貞腐れたように横を向いた。  
 
一方の4人は、またさらに状況が悪化しつつあった。  
「えっと……挨拶は済んだよな?」  
「……他の奴みたいに、すぐ消えろって言うのか?」  
ドワーフのイラついた声に、ランツレートの二人は険しい表情を浮かべた。  
「誰も、そんなこと言ってないわ。そう悪く取らないで。」  
「え、え〜とな。」  
何とかその場を丸く収めようと、フェルパーはいきなりドワーフの肩を抱いた。  
「こいつ、俺のいっちばん大事な奴だからさ。いても構わないだろ?」  
「えっ!?」  
「ええ!?」  
ランツレートの二人が同時に声を上げる。それはフェルパーとドワーフという、かなり常識外れなカップルに対する驚きだったのだが、  
タイミングが悪すぎた。  
「何だよ……私がいるのがそんなに不満?」  
ドワーフの声は、既にだいぶ低くなっている。その声に、同じく女であるランツレートのフェルパーが応える。  
「誰もそんな事は言ってないわ。ただ、二人が恋人同士っていうのに驚いたのよ。あなたみたいな種族と、彼が付き合うなんてね。」  
「おい、待てよ。そりゃどういう意味だ?」  
二人とも、尻尾の毛が逆立ってきている。  
「あなたと付き合ってるんじゃ、苦労するわねってことよ。」  
「んだと?あんたこそ、ずいぶん男らしくもねえ男と付き合って、苦労が絶えなそうだよな。」  
どんどん険悪な空気は広がり、つい言ってしまったその言葉でさらに拡大してしまう。  
「は。そりゃ、オイラはあんま男らしくねえかもな。あんたみたいな、粗暴な種族から見りゃあよ。」  
「……この野郎…。」  
「その言動が粗暴っていうのよ。これだからドワーフは…。」  
「ちょっと待てよ、お前等。ずいぶん好き勝手言ってくれてるじゃねえか。」  
ついに、フェルパーまでもが怒りに満ちた声を出す。既に、周囲はその緊張を察知し、誰もが固唾を呑んで成り行きを見守っている。  
しかも、構図でいえばパルタクスとランツレートの喧嘩である。一歩間違えば、大事件にも発展しかねない。  
「確かにな、こいつはがさつなとこもあるよ。けどな、見ず知らずのお前等に、そこまで言われる筋合いはねえ。」  
「はん。間違っちゃいないだろ?なら、それを言って何が悪いんだよ。」  
二人が腰を浮かせる。それを見て、女子二人も相手を睨みつける。  
「……やるか、てめえ?」  
「喧嘩なら買うぜ?」  
4人は拳を握り、立ち上がりかけた。その瞬間、誰かがその近くに歩み寄った。  
 
「失礼します。お茶のお代わりはいかがですか。」  
「え?」  
「は?」  
あまりに場違いな言葉に、4人は一斉にそちらを見た。そこにはノームが、ティーポットを持って立っている。  
しかも、それだけではない。なぜか、ノームの頭には猫耳が燦然と輝いていた。  
4人の視線に気付き、ノームは勝手にお茶を注ぎ足しつつ答える。  
「これですか。さっき、お茶のお礼だということでいただきました。せっかくなので、こうして着けてみています。」  
「………。」  
「………。」  
「似合いますか。」  
「えっ…?」  
その言葉に、誰も答えられない。  
ノームの視線が、フェルパーとドワーフを見つめる。二人は黙って目を伏せる。  
「………。」  
スッと視線を滑らせ、ランツレートの二人に目を向ける。二人は黙って目を逸らす。  
「………。」  
「……ぷっ…!」  
堪えきれず、フェルパーの女子が少し噴き出した。  
「どうやら、これを着けたからといって、仲間入りはできないみたいですね。次は依代の改造も検討してみましょう。」  
その言葉に、4人はさらに噴き出しかけるが、腹筋と顔の筋肉に全力を込めて、辛うじて耐えた。  
ノームが行ってしまうと、4人はホッと息をついた。そして、それぞれ椅子にドサッと座り込む。  
「……いや〜……お前、いい仲間持ってんなあ。」  
「くく……ま、まあな。うちの影のリーダーだから。」  
「なるほどね。ふふ……お腹、疲れちゃった。」  
「ほんと、あいつこういうのうまいよなあ。」  
ノームのおかげで、一気に毒気が抜かれてしまった。爆発寸前だった怒りも、すっかり収まってしまっている。  
「あ〜、それにしても、さっきはオイラが悪かった。」  
「ああ、いや……俺も悪かったよ。」  
「いやいや、オイラが誤解招くようなこと言ったからなあ。オイラだって、こいつが悪く言われたら、そりゃ切れるもんな。」  
そう言い、隣の彼女を抱き寄せる。  
「お前も、彼女さんも、ほんっと、ごめん!オイラが悪かった!」  
「や、やめろよ。私だって、つい、喧嘩腰になっちゃって…。」  
「いえ、私も悪かったわ。本当に、ごめんなさいね。」  
ともかくも、最悪の事態は回避できたことで、周囲の緊張も一気に解れた。少しずつ、それぞれの話に戻っていく。  
一方の3人も、ホッと安堵の息をついていた。  
「よかったぁ……喧嘩になったらどうしようって思ったよぉ。」  
「あたしも怖かったわ〜。学校同士で問題起こしちゃ、さすがにやばいもんね。」  
「フェアリーさん、あんまり問題になりそうないたずらは、しちゃダメですよ。」  
「わかってるよぉ、うるさいなあ。」  
そこに、一仕事終えたノームが戻ってくる。猫耳は相変わらず、頭上に燦然と輝いている。  
「ノーム、お疲れ様〜。」  
「猫耳、外せば?」  
「いえ、せっかくもらった物ですから。」  
「ちょっと待った!あれ、演技じゃなくて天然!?」  
「ノ……ノームさん、さすがにそれで歩き回るのは、ちょっと…。」  
「うんうん。さすがにちょっと、見た目があれだよー。いや、気に入ってるならいいと思うけどね。」  
猫耳について4人が話している間に、ドワーフ達はもうすっかり仲直りしていた。ただ、少しフェルパーの様子がおかしい。  
 
「ところで、お前さん震えてないか?」  
「ああ。だって、寒いからさ〜。」  
「え、寒い?この部屋十分暖かいし、こんなストーブの前なのに?」  
「ちょっと、失礼するぜ……って、おいおい!お前さんすげえ熱じゃねえか!」  
フェルパーの額に手を当てた瞬間、ランツレートの男子は思わずその手を引っ込めた。それぐらい、その額は熱い。  
「え、マジで?」  
「え!?ちょ、ちょっといい!?……うっわ、ほんとだ!フェルパー、あんた寝なきゃダメだよ!」  
「あ、あ〜、道理で体暖まんないなーと…。」  
「きっと、外を歩いてる間に冷え切ってしまったのね。すぐに部屋に行って、暖かくした方がいいわ。」  
「そうするか〜……う、フラッて来た…。」  
「ああもう、無理するなってば!」  
ドワーフはふらつくフェルパーを抱き上げる。だんだん症状が本格的になってきたのか、フェルパーはぐったりと身を任せている。  
すぐさま4人の元に戻り、事情を説明するドワーフ。さすがにみんな手際がよく、ノームが部屋を確認し、セレスティアが濡れタオル  
を用意し、クラッズは部屋の鍵が来る前に勝手に開錠し、フェアリーは荷物の中から薬にできそうなものを探す。  
素早い処置が功を奏したのか、ベッドで横になるとフェルパーの顔色は少し良くなった。  
移るといけないので、フェルパーの看病はノームが受け持つこととなった。以前司祭学科にいたこともあるため、全体的に手馴れている。  
「冷てっ…!にしても、結構ひどそうだな、これ…。」  
「熱はかなり高いですね。40度は越えていないと思いますが、それに近いと思います。」  
「そりゃ、だるいわけだ…。ふ〜〜〜……う、ごほっ!」  
咳もかなり出始めているため、フェルパーはかなり苦しそうである。  
「くそ〜……しかし、寒いな…。」  
「室温はかなり高めました。たぶん、体は汗をかくと思うので、冷やさないように気をつけてください。」  
「おう…。」  
一頻りやる事は済んだので、ノームは他の仲間の元に戻る。ノームの姿を見ると、真っ先にドワーフが口を開いた。  
「なあ、どう?あいつ、ひどい?」  
「楽観はできませんが、あの様子ならこじらせることもないでしょう。暖かくして、二、三日休めば、治ると思います。」  
「そっか〜。」  
全身がしぼむようなため息をつくドワーフ。その顔はいつもの強気な顔ではなく、恋人を心配するただの女の子の顔である。  
「とりあえず、今日は僕が一緒に…。」  
「あ、それなんだけど、私が一緒にいたい。」  
「あまりいい考えとは思えません。あなたにまで移ってしまったら、それこそ大変なことになると思います。」  
「そ、それはそうだけど…!でも、今日は一緒にいてあげたいんだよ…。」  
「ですが…。」  
「ノームさん、きっとそこまで心配しなくても大丈夫ですよ。」  
ドワーフの気持ちを汲んだセレスティアが、後ろから声をかける。  
「ドワーフさんなら、体は丈夫そうですしね。」  
「そうですか。では、あまり気は進みませんが。」  
「悪いね。ありがと、セレスティア。」  
「ドワーフなら、一緒に寝てあげればフェルパーも暖かそうだし、ちょうどいいんじゃない?あはは。」  
クラッズが無邪気に笑う。言われてみると、確かに一番暖かそうな人物ではある。クラッズとフェアリーは小さすぎるし、ノームは体温が  
ないし、あとはセレスティアだが、絶対一緒に寝そうにない。  
「んじゃ、悪いけど私はこの辺で。あ、鑑定するなら私の道具出しとくけど…。」  
「いいよー、フェルパー治ってからで。4人でやっても、あんまやり甲斐ないしね。」  
「そっか。んじゃ、また明日な。」  
早めに仲間と別れ、フェルパーの部屋に向かうドワーフ。中に入ると、凄まじい熱気が満ちていた。部屋自体が暖められているのも  
大きいが、フェルパー自身から出る熱もかなり影響しているらしい。フェルパーはドワーフに気付くと、辛そうな笑顔を浮かべた。  
 
「おう、お前か〜。ごほっ!……ふ〜ぃ、ノームは?」  
「んー、変わってもらった。」  
「あら、そうなのか?大丈夫か?移ったりしない?」  
「平気だろ。私、滅多に風邪引かないしさ。」  
喋りながらタオルを水に浸し、フェルパーの額にあるすっかり温まったタオルと交換する。温まったタオルを水に浸けると、ドワーフは  
フェルパーのすぐ側に座った。  
「……どうした?」  
「んー。」  
顔を伏せ、足をぶらぶら振るドワーフ。何となくいじらしい姿だった。  
「あ、あのさ。」  
「うん?」  
「さっき……私がさ、喧嘩の原因作っただろ…?」  
「ま、一因ではあったな。はは。」  
「でもさ、フェルパー、同種族の方じゃなくって、私のこと庇ってくれた…。」  
「そりゃ…。」  
よく見ると、ドワーフは思った以上に深刻そうな顔をしている。  
「どうしたんだ?」  
「だってさ、初めて会ったのに、あんなに仲良く話してたでしょ?」  
「まあな。同種族だし。」  
「私なんて、あんたと初めて会ったときもそうだけど、絶対喧嘩しちゃうのに…。あの子の方……が、好みだったりとか……しないのか?」  
そこで、ようやくフェルパーも気付いた。  
「何だよ。やきもち焼いてたのか。」  
「………。」  
「ごぉほっ!ごほっ!……けふ!あのな、確かに可愛い子だったし、気も合う奴等だったよ。でもな、ほら、覚えてない?」  
ドワーフは、どことなく不安そうな顔でフェルパーを見る。  
「前に俺、言っただろ?同種族の知らない奴より、お前の方がずっと大切に思えるって。」  
「……覚えてる……けど…。」  
「あの気持ち、ずっと変わってないぞ。」  
恥ずかしそうに言って、照れ笑いを浮かべるフェルパー。それを見てドワーフも、ようやく笑顔を浮かべる。  
「ごほっ!ごぉほっ!……げほっ!がはっ!」  
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」  
「だ、大丈夫…。けど、咳はいいけど、こう寒いのがなぁ〜…。」  
「そんなに寒いんだ…。」  
その時、ドワーフの頭にふと名案が浮かんだ。  
体の向きを変え、フェルパーにそっと擦り寄る。気配の変化に気付いたフェルパーは、少し警戒するように身を引いた。  
「お、おい?」  
「寒いんでしょ?暖めてあげる。」  
そっとフェルパーの服に手を掛けるドワーフ。その手を慌てて押さえるフェルパー。  
「ちょっ、待てよ!お、俺は熱が…!」  
「大丈夫だってば。それに移しちゃえば、早く治るんじゃないか?」  
「どんな理論だ!?」  
 
なおも抵抗するフェルパーの手を押さえ、無理矢理服を脱がせる。フェルパーは熱のせいでろくな抵抗もできず、結局すべて脱がされて  
しまう。ドワーフはそっと、フェルパーの股間に手を伸ばす。  
「うっ…。」  
「今日は、私がしてあげる。」  
フェルパーのそれを優しく握り、そっと扱き始めるドワーフ。普段と違って、少し足りないぐらいの刺激が、フェルパーには何とも  
もどかしく感じてしまう。だが、ドワーフは握る強さも、扱くペースも変えない。  
徐々にモノが大きくなるにつれて、もどかしい気持ちも比例して大きくなる。それでもしばらくはドワーフに任せていたが、やがて  
無意識のうちに、少しずつ自分でも腰を動かしてしまう。すると、ドワーフは少しいじわるな笑みを浮かべた。  
「あは、これじゃ物足りない?」  
「うぐ…。」  
「いいよ。もっと、強くしてあげる。」  
そう言いながら、スッと手を放すドワーフ。だがフェルパーが訝る間もなく、ドワーフは少し体をずらし、フェルパーの股間に顔を埋めた。  
愛おしむようにそれを一撫でし、根元から舌全体を使って舐め上げる。フェルパーの体が、ビクッと震えた。  
根元から裏筋を通り、鈴口まで舐め上げると、今度はそれをかぷっと咥え込む。  
全体を優しく甘噛みしつつ、敏感な部分は強く舐める。時には舌全体を使い、時には裏側で撫でるように刺激する。他種族より舌が長めで  
ある分、その責めは変化に富んでいる。  
「うっく…!ド、ドワーフ…!」  
「んっ!んっ……はぁ、どうフェルパー?気持ちいい?」  
「ああ、すげえいい…。」  
「じゃ、もうちょっとしてあげる。」  
嬉しそうに言うと、ドワーフはフェルパーのモノを喉の奥まで咥え込んだ。さらに、唾液をたっぷり含ませた舌をフェルパーのモノに  
絡みつかせる。その口内は暖かく、気を抜けば即果ててしまいそうな刺激だった。  
「ドワーフ、おい…!」  
「ん……ふぅ。もう、限界?」  
ドワーフは口を離すと、妖艶に微笑んだ。その目は若干潤んでおり、何とも扇情的な表情である。見ると、フェルパーのモノを舐めている  
間に、尻尾で自分の秘所を刺激していたらしく、スパッツには黒い染みが広がっていた。  
フェルパーを焦らすように、ドワーフはゆっくりと制服のボタンを外していく。リボンを外し、シャツを脱ぎ、スカートを下ろす。  
最後に、スパッツとパンツを一緒に掴み、引き下げる。湿ったパンツは一度内股に張り付き、そして透明な糸を引きながら下げられていく。  
熱のせいというのが多分にありそうだが、すっかり火照ったフェルパーの顔。その物欲しそうな目。普段あまり見ることのない表情に、  
ドワーフは少しいじめてみたい気分になった。  
 
「ここ、もうこんなになってるんだよ。」  
「あ、ああ。」  
「……どうしたい?」  
「え…?」  
元々が大の恥ずかしがりである。いつもしていることとはいえ、それを口に出すのは未だに強い抵抗がある。  
「わ……わかるだろ!?」  
「でも、聞きたい。」  
「どうして、わざわざ…!?」  
「何でも言ってくれたら、その通りにしてあげるよ?」  
「く…。」  
ただでさえ真っ赤な顔をさらに赤く染めつつ、フェルパーは顔を伏せた。その姿は、まるで初めて経験する少年のようだ。  
フェルパーはしばらくそうしていたが、やがてぼそっと呟いた。  
「……れ……たい…。」  
「ん?」  
「その……入……れたい…。」  
「どこに?」  
小悪魔的な笑みを浮かべ、さらに追い討ちをかけるドワーフ。フェルパーの尻尾はもどかしげにバタンバタンとベッドを叩き、耳も真横を  
向いてしまっている。  
「だ、だから……お、お前……の……なか…に…。」  
「ん〜、60点ぐらい。ギリギリ合格かな。」  
ドワーフはそう言うと優しい笑顔を浮かべ、フェルパーの首に腕を回した。  
「よくできました。それじゃ、してあげる。」  
フェルパーと向かい合うように座り、ゆっくりと腰を沈めるドワーフ。今度は焦らしたりせず、フェルパーのモノを一気に自分の中へと  
導く。やはり熱のせいだろうが、フェルパーのそれはいつもよりずっと熱い。  
「んあっ!すごい……あっついよぉ…。」  
「そりゃそうだろ…。」  
「あ、動かないでいいよ。疲れちゃうでしょ?」  
「……ん…。」  
肩に掛けられた手をそっとどけると、ドワーフは腰を動かし始めた。時には膣内をぎゅっと締めつけてフェルパーのモノを扱き上げ、  
また時には奥深くに咥え込んだまま、腰を前後に動かして快感を得る。ドワーフが動くたびに、フェルパーは小さな呻き声を上げる。  
「うっ……くっ!」  
「はっ!んっ!フェルパー、どうっ…?もっと、強く……んっ!したい…?」  
「はぁ……はぁ…。う、うん…。」  
「ふふ、わかった。」  
熱気の立ち込める室内に、ギシギシとベッドの軋む音、それに腰のぶつかり合う湿った音が響く。既に二人とも、その体は汗に塗れ、  
その匂いが二人を一段と興奮させる。  
「どう?暖かく……んうっ!なった…?」  
「ああ……暑いぐらい…!」  
「よかった。もっと、暖めてあげる。」  
そう言うと、ドワーフはフェルパーにしっかりと抱きついた。汗で湿った毛が、フェルパーの体に張り付く。同時に、ドワーフの体温が  
直に伝わっていく。少し動きにくいものの、より強く感じられる両者の匂いと体温のおかげで、快感が劣るということはない。  
 
スッとフェルパーの尻尾が動き、ドワーフの腰に巻きついた。そして、自身の方へ引き寄せるように力が入れられる。  
「……えへへ。」  
ドワーフが笑いかけると、フェルパーは恥ずかしそうに視線を逸らした。そんな姿が少しもどかしく、ドワーフはフェルパーの顔を両手で  
挟み込むと、無理矢理自分の方へ向けさせた。  
フェルパーは真っ赤な顔で、少し困ったようにドワーフを見つめる。そんな彼に、ドワーフはそっと口付けをする。  
「ん…。」  
「ふ……ぅ…。」  
ザラついた面で傷つけないように、フェルパーは器用に舌を動かし、その裏側で舐めるように舌を絡める。ドワーフも舌を絡め、時には  
少し舌を引っ込め、舌先でお互いじゃれるように舐めあう。  
ふと、フェルパーが体を押してきた。体勢のおかげで抵抗できず、ドワーフはそのまま押し倒されてしまう。  
「んぅ……ぷは。フェ、フェルパー?」  
「ごめん、我慢できねえ。」  
言うなり、激しく突き上げてくるフェルパー。急に強い刺激を受け、ドワーフの体がビクンと跳ねた。  
「やぁっ!フェルパー、急に強すぎだよぉ!」  
ドワーフの抗議にも、フェルパーは耳を貸さない。だがドワーフの方も、既にその激しい責めを快感と受け取っている。  
「ね、ねえっ!フェル……あんっ!うぁっ!……っうぅ、フェルパー!」  
フェルパーの体にしがみつき、その内股を尻尾で叩く。だが、フェルパーはやはり動きを止めない。  
「フェルパーってばぁ!ねえ、ちょっと待ってってば!」  
思い切り体を突っ張ると、さすがにフェルパーもその動きを止める。その顔には、不満の色がありありと浮かんでいる。が、ドワーフも  
少し不機嫌そうな表情を浮かべる。  
「どうしたんだよ?」  
「その、前からなら……尻尾、絡ませて欲しいのに…。」  
「抱き寄せてるんじゃ、ダメ?」  
「尻尾同士がいいの。」  
「そっか、わかったよ。」  
苦笑いを浮かべ、フェルパーはドワーフの腰から尻尾を外す。尻尾同士が絡まると、ドワーフは嬉しそうな笑顔を浮かべた。その顔に、  
フェルパーもつい笑顔になる。  
「これでいい?」  
「うん。」  
もう一度しっかりと抱き合い、再び激しく突き上げる。フェルパーが突き上げるたび、二人の体から汗が流れ落ち、結合部からは愛液が  
滴り落ちる。呼吸も荒く、二人とももう限界に近いことを物語っている。  
「ドワーフ、もう出そう…!」  
「んあぁっ!私もっ、もうイきそうっ!フェルパー、ぎゅってしてぇ!」  
「ドワーフ……ドワーフっ!」  
「フェルパー!んううぅぅっ!!」  
お互いを呼び、きつく抱き合う二人。それとほぼ同時に、フェルパーは思い切り強くドワーフの中へ突き入れた。  
直後、ドワーフの体内に熱いものが流れ込む。その感覚に、ドワーフもほぼ同時に達していた。  
何度か、フェルパーのモノが体内で跳ねる。その動きが止まった瞬間、フェルパーは力尽きたようにドワーフの体へ覆い被さった。  
「はぁ……はぁ……ドワーフ…。」  
荒い息をつきながら、うわごとのように呟くフェルパー。そして、そのまま気を失うように眠り込んでしまった。  
「はっ……はっ……ふふ、フェルパー、お疲れ様…。」  
優しい声で呟き、その頭を撫でるドワーフ。彼女の方も、何だか頭がポーッとしている。  
彼女にとって最大の誤算だったのは、自身も仲間5人を抱えて吹雪の中を歩いたことである。まして、それ以前には地下道で強大な敵と  
戦っているのである。本人はすっかり忘れていたが、その体は既にこれ以上ないほどまで疲れ切っていた。  
―――布団、掛けなきゃなぁ…。  
そう思ったのを最後に、ドワーフの意識もすうっと遠くなっていった。  
 
翌日。広間では、ノームとフェアリーが軽い朝食を取っている。普段から無表情なノームではあるが、この日はいつにも増してそう見える。  
「んで、あのバカ二人は今回も騒動巻き起こしてくれてるわけだけど?」  
「今回ばかりは、僕も反省しています。」  
「あんたが許可しちゃったからね〜。つっても、それ言ったらセレスティアも同罪か。」  
「いえ、彼女は…。」  
「はいはい。大切な彼女を庇うのはいいけど、しっかり現実見ようね。」  
ハニートーストを頬張り、ノームの淹れたお茶を飲むフェアリー。ノームは無表情にそれを眺めている。  
「にしても、あいつ……ドワーフ、何考えてんだろうね?高熱出してる病人とヤるとかさ。」  
「彼女曰く、体を温めてあげようと思ったそうです。」  
「それ、雪山で遭難したときとかの手段じゃないの?」  
「そうですね。時と場合によっては有効な手段でもありますが、今回のような場合には病気を移される危険性や、体力を激しく消耗する  
ことを考えれば、決して勧められないどころか、絶対にやってはいけないことです。」  
それを聞くと、フェアリーはおかしそうに笑った。  
「しっかしまあ、見事にその全部が当てはまってるんだから、笑っちゃうよね〜。」  
「笑い事では済まない気がしますが。」  
「いや、逆に笑うしかないでしょ。しかも暖めるのはいいけど、その後、裸で、汗だくで、布団も掛けないで寝てたんでしょ?  
そりゃ冷えるよねえ。」  
「まったくです。」  
「ま、ドワーフはともかくとして、フェルパー大丈夫かな?」  
「今夜が峠でしょうね。」  
 
フェルパーは完全に病気をこじらせ、凄まじい高熱と咳に苦しんでいた。その傍らでは、クラッズがすっかり呆れた顔をしている。  
「……バーカ。」  
フェルパーの顔を見つめながら、クラッズは表情と同じく呆れた声を出す。  
「ごほっ!ごほっ!……げほっ!がはぁっ!」  
「バーーーカ。」  
「がはっ!……う、ごほっ!……ハァ……ハァ……うるせぇ…。」  
苦しそうに息をつきながら、何とかそれだけ言い返す。  
「だってさあ、同情のしようもないんだもん。ノームから聞いたけどさあ、ドワーフと…」  
「ごほっ!げほぉっ!……かはっ…!ごめんなさい、すみません。それ以上言うな。」  
「どうせ今日も吹雪だから、外、出られないけどさあ。それにしたってひどいと思わない?」  
「……お前、少しフェアリーに似てきたな…。」  
「誰だってこう思うでしょ!」  
「……ほんとごめんなさい…。」  
確かにその通りなので、フェルパーはすっかり小さくなってしまう。  
「まったくー。ちゃんと断らなきゃダメだよ、次からさ〜。」  
「はい……すみませんでした…。げほっげほっ!ぐっ……がはっ!」  
「あと、死なないでね。さすがに病気より面倒なことになるから。」  
「……前向きに……検討するよ…。」  
 
一方のドワーフの部屋では、クラッズと同じように呆れ顔のセレスティアがドワーフの看病をしていた。  
「まったく…。ドワーフさん、何考えてるんですか…。」  
「……ごめんってば…。」  
ドワーフも見事にフェルパーの病気が移り、咳は出ていないものの、やはり高熱を出し、ひどい寒気を感じるという有様だった。  
「暖かくしなきゃダメって、言ってたじゃないですか。それがなんです、フェルパーさんと……その…。」  
「いやね……そうすれば、体温まるかなってさ…。」  
「時と場合を考えてくださいっ!」  
「……はい。」  
珍しく強い口調で言われ、ドワーフの耳はぺたんと寝てしまう。セレスティアはドワーフの側に立つと、その鼻をそっと撫でた。  
「鼻もすっかり乾いちゃって…。フェルパーさんも、症状ずっとひどくなっちゃったんですよ。」  
「………。」  
「自分も病気移されて、フェルパーさんの症状は悪化させて……もう、あんなことしたら、めっ!ですからね。」  
「……久しぶりに聞いたな、その怒られ方…。」  
高熱にうなされながら、ドワーフは弱々しく笑う。が、セレスティアは本気で怒っている。  
「笑い事じゃありませんっ!」  
「はい…。」  
「またこんなことあったら、次はお尻叩きますよ!」  
「それは勘弁して、ほんと…。ていうか、なんか私のこと子供扱いしてない…?」  
「言われたこともきちんとできないなんて、子供以下ですっ!」  
「……ごめんなさい……くすん…。」  
普段大人しいセレスティアに怒られ、しかも痛いところを突かれ、少し涙ぐむドワーフ。その顔を見ると、セレスティアは少しだけ表情を  
緩めた。そして、その目に少しいたずらな光が宿る。  
「まあ、今回は初めてですから、わたくしの言うこと聞いてくれたら、許してあげます。」  
「……何?」  
「何しても、怒らないでくださいね?」  
聞かないわけにはいかず、しかも有無を言わさぬ口調であったため、ドワーフは仕方なしに頷く。  
すると、セレスティアはスッと人差し指を出し、それを第二間接で曲げる。  
「ちょっと、動かないでくださいね。」  
「……何する気よ…?」  
「いいから、動かないでくださいね。」  
その指を、そっとドワーフの口元に近づける。そして、ドワーフの上唇をふにっと持ち上げた。  
「ああ……やっぱりふにふに…!」  
うっとりした表情で、ふにふにと何度も繰り返すセレスティア。ドワーフは怒るに怒れず、ただ暗いため息をついた。  
「お願い……ゆっくり寝かせて…。」  
「初めて見たときから、ずっと触りたかったんです……ああ、それが今叶うなんて…!」  
「寝かせて…。」  
「あ、寝てていいですよ。ふふ、寝顔もきっと可愛いんでしょうね……ああ、想像したらたまりません!」  
よくよく、迂闊なことをしてしまったと、ドワーフは心の中で激しく後悔した。フェルパーの病気をこじらせ、自分もそれを移され、  
おまけにセレスティアから怒られた上に玩具にされている。  
それに抵抗する元気もなく、抵抗できる道理もなく、今はひたすらこの屈辱に耐えるしかない。  
諦めて目を瞑りながら、もう二度と妙なことは考えないようにしようと心に誓うドワーフだった。  
 

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