数々の激戦を潜り抜け、地下迷宮を次々に制覇し、もはや名実共に一流の冒険者となった一行。  
苦しいときも、楽しいときも、常に一緒だった6人。  
また6人それぞれが恋人同士でもあり、その結束の固さは他のどんなパーティにも負けないものだった。  
しかし、その中のクラッズのみ、ここ最近はあまり顔色が良くない。  
その様子に他のメンバーが気付かないわけはない。が、あえて触れることもない。  
その理由は、既に全員予想がついているからだ。  
 
地下道の探索を終え、学食で遅い夕飯を取る一行。その中で、クラッズとフェルパーだけはまったく元気がない。  
「クラッズ、ほんとに平気か?なんか、調子悪そうだぞ?」  
「うん……まあ、疲れてはいるかな〜。でも……うん、気にしないで」  
「そうそう。クラッズはこう見えても、結構丈夫だもんね」  
「そうだね〜……はぁ」  
「くそ〜……ちくしょぉ〜…」  
フェルパーはぶつぶつ言いながら、好物の焼き魚をあまりおいしくなさそうに食べている。  
「何よ〜。鑑定はしたけど、別にあたしのせいじゃないからね」  
「わかってるって…。でもなあ……金の箱だぞ!?金の箱っ!なのにっ……なのに、日本刀…!金箱から日本刀…!」  
相当ショックだったらしく、その目には涙が滲んでいる。悔しそうな声で呟くと、フェルパーは懐からナッツのような物を取り出して  
口の中に放り込んだ。  
「まあまあ。次はきっといい物出ますよ。」  
「金の箱っつったら、普通一番いい物出るはずで……なのに、どうしてあんなのが…!」  
机を叩き、フェルパーはまたナッツを口の中へ放る。  
「まったく、そういじけるなって。男らしくないぞ」  
ドワーフの言葉にも、フェルパーはどんよりした目でそちらを一瞥しただけで、再び大きな溜め息をつく。  
「だぁって……やっと、宗血左文字そつぎょーだとおもったのにぃ……いつまでこれ使えばいいんだよぉ…」  
「うざいなー、あんたは。今度なんか作ってやるから、いい加減愚痴やめてよ」  
「これがっ!ぐちのひろつもぉ!言わずにいられれかぁ!」  
「……おい、フェルパー?なんか、あんた呂律回ってないけど?」  
「むっちゃ、期待しらんらぞぉ!なぁのぉにぃ…!くそぉー!」  
懐から一気に三つほどのナッツを出し、口の中に放り込むフェルパー。  
「ところで気になってたんですけど、フェルパーさんはさっきから何を食べてるんですか?」  
セレスティアの言葉に、全員の視線が彼の食べるナッツに注がれる。そこで、今まで黙っていたノームが口を開いた。  
「形から見るに、恐らく乾燥させたまたたびの実だと思います。現に、フェルパーさんもすっかり酔っているようですしね」  
聞くが早いか、ドワーフはフェルパーの懐に手を突っ込み、彼の持っていたまたたびを全部取り上げた。  
「にゃあぁぁん!おーれーのーまーらーらーびー!」  
「にゃあんじゃねえっ!あんたらにとっては、これ酒と同じだろ!」  
「もっとたぁべぇるぅー!!!」  
「……はぁ〜。みんな、悪いけど私、こいつ部屋に連れてくよ。食器とか頼んでいい?」  
ドワーフは完全に出来上がったフェルパーを肩に担ぎ、その両手足と尻尾をしっかりと掴む。  
「ええ、大丈夫ですよ。こちらのことは心配なさらずに」  
「ドワーフさん、お願いしますね」  
「やぁーだぁー!まだたべるぅー!」  
「黙れ、この馬鹿!……それじゃみんな、また明日な」  
 
にゃあにゃあ騒ぐフェルパーが連れて行かれると、学食の中が妙に静かに感じられる。実際、あまり生徒もいないので静かなのだが、  
多少の喧騒は残っている。その中で、クラッズのつく溜め息が大きく響く。  
「クラッズさんも、疲れてるんじゃないですか?元気、ないですよ?」  
「……ん、大丈夫だよ〜。そんなに心配しないで……はぁ」  
「僕達も、そろそろ戻りましょうか。明日も、朝から探索の予定ですからね」  
「はいはいっと。んじゃ、あいつらのからさっさと片付けちゃお。クラッズー、よろしくね」  
「……はーい」  
ともかくも食事を終え、部屋に向かう一行。クラッズが部屋に入ろうとすると、後ろから聞き慣れた声がかかった。  
「クラッズー、もう寝るつもり?」  
「ああ……フェアリー。」  
後ろでは、フェアリーが意味ありげな笑みを浮かべている。  
「その……今日も?」  
「それ以外に、わざわざあたしがこんなところ来る理由ないでしょ?」  
「……だよねえ。」  
「じゃ、そういうことで!あとでねー!」  
どこかうきうきした口調で言い、自分の部屋へと飛んでいくフェアリー。それに対して、クラッズは深く暗い大きなため息をついた。  
「……今度は、何されるんだろ…」  
 
それからしばらく後、クラッズはフェアリーの部屋にいた。断ってしまえばいいのだろうが、どうもフェアリー相手では  
いつも従ってしまう。そのせいで、最近はフェアリーの要求も何かとエスカレートしてきている。  
「で、これは、どういうことなの……かなぁ〜?」  
ベッドの上で冷や汗と苦笑いを浮かべるクラッズ。その両手足は、それぞれベッドの端に大の字になるように縛り付けられている。  
服は既に全て脱がされ、フェアリーはその姿を満足げに見つめている。  
「うーん、なかなかいい感じ」  
「何が!?」  
「まあまあ。別に悪いようにはしないからさ。」  
悪いようになるのは目に見えている。クラッズの中には諦めと、この後起こる事態を避けたい気持ちが同居している。  
「あのさ……君、絶対ボクのことおもちゃだと思ってるでしょ?」  
「う〜ん、間違ってはいないかなー?」  
「ないんだ…」  
「でもね、ただのおもちゃならいらないの」  
「で、ボクならいいの…?」  
「だってさー、攻めるとすっごく可愛い声出すし、反応いいし、それに……まあ色々ね」  
よくよく、自分はなぜこんな子と付き合ってるんだろうと、クラッズは暗澹たる気持ちになった。  
 
「ほら、この間その根元縛った時なんかさ、もう今思い出してもすっごく…!」  
「わかったからーっ!その話はもうやめてーっ!」  
「ほ〜ら、もう真っ赤。そういうのがいいんだよねー」  
本当に、なぜ好きになったんだろうと、クラッズは暗い気持ちで考えた。  
「そういうの見ると、つい、ね。もっと色々したくなっちゃう」  
言いながら、フェアリーは何やら道具袋の中から取り出し始めた。  
「な……何してるの?」  
折れたスタッフに、切れたパンツ。それに素材少々。少し何か考えてから、それを練成するフェアリー。  
「な、何作ってるのーっ!?」  
「何って、見りゃわかるでしょ?ほんとは女の子同士で遊ぶためのもんだけど」  
「な、な……何するつもり!?」  
「そりゃ、使い道は一つだよね〜?」  
作りたてのペニスバンドを穿き、ベッドに上がってくるフェアリー。クラッズは自分の手を縛る縄を外そうとするが、  
がっちり縛られていて解けない。そんな姿を、フェアリーは獲物を追い詰める狩人のような目で見つめる。  
「無駄無駄。あたしだって盗賊やってたんだから、外せないような縛り方は知ってるって」  
「フェ……フェアリー、やめてよ!ほんとやめて!そんなの無理だってばぁ!」  
「大丈夫だって。たまにいじってあげてるでしょ?」  
「そういう問題じゃなーい!」  
「大丈夫だってば。ちゃんと痛くないように、あたしのお汁使ってあげるから」  
「やーめーてー!!!」  
「そう?じゃ、何もつけないで入れてあげようか?すっごく痛いよー?」  
「い……いや、それはやだ…」  
ついそう答えると、フェアリーはニヤリと笑った。  
「じゃあ入れていいってことね」  
「ち、違っ…!」  
クラッズの小さな穴に、ペニスバンドの先端が押し当てられた。  
「や……やだよ!フェアリーやめてぇ!」  
「怖がる顔も可愛い〜。大丈夫、ちゃんと気持ちよくしてあげるからっ!」  
「だ、だからそういう問題じゃ…!あ……や、やめっ……う、うああぁぁぁぁ!!!」  
 
翌日、クラッズの動きは誰が見ても鈍っていた。戦闘などの激しい動きをする場面ではもちろん、ただ歩くのでさえ妙に遅い。  
「おいクラッズ、本当に大丈夫か?」  
ドワーフが声をかけると、クラッズはビクッと顔を上げた。  
「だ……大丈夫だよー。心配しないで」  
「疲れたんなら、無理するなよ?」  
「ありがと。でも、大丈夫だから。」  
とは言うものの、言うほど大丈夫でもない。一歩でも歩けば激しい痛みがあるし、精神的なダメージも大きい。  
そんな状況を知ってか知らずか、フェアリーがクラッズの隣に並び、囁きかける。  
「なぁに?そんなに大げさに痛がって、同情でも引こうってつもり?」  
その言い方にはカチンときたが、今のクラッズには怒る元気もない。  
「ほんとに痛いんだってば!それより、もうちょっと声抑えてよ。みんなに聞こえちゃう」  
「あたしだって、初めてあんたとヤッた後すっごく痛かったけど、まともに戦ってたんだけど?」  
「君は飛べるからいいでしょー!それに……その……ボクは、あんなに激しくしなかったよぅ…」  
「だってぇ〜、あんまりいい反応するんだもん。ついいじめたくなっちゃう」  
「そんな…!」  
「その気持ち、わからないなんて言わせないよ」  
確かに覚えのあることなので、クラッズは反論できない。  
「おーい、お二人さん。何話してるのか知らないけど、ちょっと中断だ」  
言いながら、フェルパーが二刀を抜く。気がつけば、他のメンバーは既に戦闘態勢を取っている。  
「あっ!ご、ごめん!」  
「はいはい、ちゃっちゃと片付ければいいんでしょ」  
クラッズはチャクラムを構え、フェアリーは愛用の弓を持ち、スッと浮かび上がる。  
「なーんだ、たったの4匹じゃない」  
「確かに、敵の戦力はさほど強いものではありません。しかし、油断は禁物です。」  
「わぁかってるってば!フェルパー、あたしとあんたで、さっさと片付けるよ」  
「そうだな。後ろの奴は頼むぜ!」  
「珍しいな、フェアリー。あんたがそういうこと言うのは」  
ドワーフが言うと、フェアリーは一瞬ドキッとした顔をした。が、すぐにそれも元に戻る。  
「そりゃ、他が頼りないからねー。あんたなんか動き遅いし、斧振り回すしか能ないし」  
「……後ろに気を付けろよ…!」  
「残念、あたしは弓だもん。あんたこそ後ろに気を付けなって、前衛様」  
「絶対……絶対いつか叩き潰してやる…!」  
そう言うドワーフの声は、冗談とは思えない迫力があった。が、フェアリーはどこ吹く風である。  
「一生かかったって無理無理。とにかく、さっさとやるよ!」  
「ははは。ドワーフ、もし討ち漏らしたら頼むぜ。頼りにしてる!」  
「おう、任せろ!」  
 
その日も何とか無事に探索を終え、鑑定を済ませて学食に向かう一行。クラッズはあまり食欲がなかったため、軽めに食べたものの、  
若干物足りない。そんなわけでデザートでも食べようと席を立つと、フェアリーも一緒について来る。  
「ん?君もデザート?」  
「そうだけど、何か悪い?」  
「いや、別に…」  
「やっぱりアイスクリーム辺りかなー。ハニートーストでもいいんだけどね。ほんとは黄金桃がいいんだけど、ここじゃ無いしねー」  
フェアリーは勝手に喋りながら隣を飛んでいる。クラッズは少しうんざりした気分だったが、不意にその声が止まった。  
何だろうと思って見てみると、フェアリーはどこか別の方向を向いている。その視線の先には、ヒューマンの男子がいる。  
「……どしたの?」  
「ん〜?いやね、やっぱヒューマンっていいなあって思ってさ」  
「………」  
「かっこいいし、何でもできるしねー」  
種族柄、ヒューマンに対して憧れに近い感情を持つフェアリー。そしてヒューマンも、大概フェアリーには友好的だ。  
その相性は、様々な種族の中でもかなり上位に位置する。もちろん、クラッズとフェアリーという間柄などは言うに及ばない。  
「あいつ自体、結構かっこいいしね。ちょっと声かけて来ちゃおっかなー」  
もしかしたら、その方がいいかもしれない、とクラッズは思う。  
こんなに、いつもいつも振り回されるばかりで、こっちの事などほとんど考えない。  
自分勝手で、わがままで、本当にどうしようもない相手。こんな形で自然に別れられるのなら、いっそその方がずっといい気がする。  
なのに。  
気がつくと、クラッズは飛んで行こうとするフェアリーの腕を掴んでいた。  
「ちょっと、何よ?」  
「………」  
何、と言われても困る。クラッズ自身、ほとんど無意識にやってしまったのだから。  
「腕、掴まないでよ。ていうか、何か言ってよ」  
クラッズは言うべき言葉を必死に探す。だが、考えれば考えるほどに、その思考は混乱していく。  
それでも、その混乱した頭の中から、何とか言葉を拾い上げる。  
「行っちゃ、やだ」  
「なんでよ?別に声かけるぐらいいいでしょー?」  
「……ダメ」  
「あたしに指図する気?」  
フェアリーの顔が険しくなる。が、クラッズは腕を掴む力を緩めない。  
「絶対、ダメ」  
クラッズとフェアリーは、しばらくそうして睨み合った。が、不意にフェアリーの表情が戻る。  
「ま、あんたに言われたんじゃ、しょうがないか。あーあ、惜しいなあ」  
そう言いながらも、どこか上機嫌のフェアリー。クラッズは何が何だかわからず、狐につままれたような気分でそれを見ている。  
「ほら、早くデザート取りに行こうよ。あいつら待たせるわけにもいかないでしょー?」  
「え……ああ、うん。そうだね」  
結局、何が何だかわからないまま、混乱した頭で機械的にデザートを取り、事務的に食べるクラッズ。フェアリーは妙に上機嫌だが、  
その理由がまったくわからない。味などほとんどわからないまま、彼は首を傾げつつデザートを食べていた。  
 
夕飯を食べ終え、寮に戻るときもフェアリーは笑顔だった。  
「昨日はあれだったからさ。今日はゆっくり休んでね」  
「ああ……うん。そう……するね」  
「それじゃ、おやすみ!クラッズ!」  
そう言い、フェアリーはいきなりキスをする。周りにまだ人がいたこともあり、クラッズは大いに慌てたが、あまりに自然な動きすぎて  
ほとんど反応する人はいない。結局、フェアリーはまたもや一方的にクラッズを振り回し、さっさと部屋に戻る。いつもとはまた違う  
振り回され方だが、結果はほとんど変わらない。  
呆れたようなため息をつくと、不意に後ろからクスッと笑う声が聞こえた。慌てて振り向くと、そこには笑顔を浮かべた  
セレスティアが立っていた。  
「うわっ!?セ、セレスティア!」  
「ああ、ごめんなさい。驚かせてしまいました?」  
「ええっと……その……もしかして、見てた…?」  
「ええ、見てましたよ」  
「う〜、見られてたんだ…」  
「今のもそうですけど、それと学食でも、見てましたよ」  
「あはは〜……それもなんだ…」  
「お二人とも、幸せそうでいいですね」  
この子は一体何を見てたんだろうと、クラッズは心の底から訝しがった。しかし、セレスティアはそれすら見透かしたような  
笑顔を見せる。  
「ここじゃなんですし、わたくしの部屋で話しませんか?よろしければ、ですけど」  
「ああ、そうだね。その方がいいかも」  
ロビーを離れ、部屋に向かうセレスティアとクラッズ。彼女の部屋はきれいに片付いていて、何だか入るのが躊躇われるぐらいだった。  
「それで、さっきの話だけど…」  
「幸せそうって言ったことについてですか?」  
「そうそう、それ。それってどうして?」  
クラッズの言葉に、セレスティアはおかしそうに笑った。  
「うふふ。クラッズさん、意外と鈍いところもあるんですね」  
「いや〜、鈍いって言うか……フェアリーだし…」  
「でも、フェアリーさんだって女の子ですよ」  
「まあ…」  
クラッズが答えに窮したのを見て、セレスティアはまた笑った。とはいえ、それは嘲笑ではなく、かといって可笑しさからと  
いうものでもなく。言うなれば子供を見守る母親といったような、慈愛に満ちた微笑だった。  
「あの、学食のとき。フェアリーさん、半分はわざと言ったんですよ」  
「え?」  
「ほら、クラッズさんってすごく人当たりいいじゃないですか」  
セレスティアやノームほどじゃないけど、と言いそうになったが、クラッズは言葉を飲み込んだ。  
「だから、フェアリーさんのすることは、結構何でも許しちゃうじゃないですか?」  
「う……うん、まあね」  
「だから、逆にちょっと不安だったんですよ、フェアリーさんは」  
「不安?」  
「もしかしたら、自分が他の男の人に惹かれても、許されちゃうんじゃないかって」  
「………」  
「だからこそ、あの時やきもち焼いてもらって、嬉しかったんですよ」  
 
これがなければなあ、と、クラッズは思う。  
「それに、今日の戦闘のとき。フェアリーさん、クラッズさんが動かなくていいように、いっつも先手取ってたんですよ」  
「あ…」  
「ですから、幸せそうだなあって、そう思ったんです」  
フェアリーの胸の内を知ったことで、クラッズの胸には一種暗い気持ちが芽生えていた。セレスティアと別れ、自分の部屋に戻っても、  
その気持ちは消えない。  
ベッドに倒れ、深いため息をついていると、不意にドアがノックされた。  
「あれ?フェアリー?」  
「さっすがクラッズ。そう、あたし」  
ドアを開け、フェアリーを招き入れる。フェアリーはクラッズより先にパタパタと飛んで行き、ベッドに座る。  
「えーっと…」  
「ま、何の用かは大体わかるでしょ?」  
「ゆっくりさせてくれるんじゃなかったっけ…?」  
「んー、そう思ったんだけどね。やっぱりほったらかしってのも悪いじゃない?」  
「いや、別にそんな事は…」  
「何よー。せっかく来たんだから、好意はありがたく受け取るの!」  
言うが早いか、キスをしつつクラッズを押し倒すフェアリー。いつもみたいに強引な、クラッズの舌に無理矢理小さな舌が  
絡んでくる感触。何だかんだ言っても、それだけでクラッズの体はしっかり反応してしまう。  
「ほーら、きたきた。あんたって、いっつもキスだけで勃つよね」  
「だ、だってぇ…!」  
「ま、悪い気はしないからいいけど」  
クラッズのズボンとパンツを、手馴れた動作で剥ぎ取るフェアリー。普段ならそのまま、クラッズのモノに舌を這わせるところだが。  
「ここ、痛かったんでしょ?」  
昨日散々に痛めつけた箇所に、フッと息を吹きかけるフェアリー。  
「ふわ!?ちょ、ちょっとフェアリー!?」  
「ああもう、足閉じないで!頭挟まるでしょ!」  
恥ずかしさに閉じようとする足を左手で押さえつけ、右手はクラッズのモノを扱き始める。  
「んうっ!フェアリー、何を……んんっ!」  
「えっと……その……ご、ごめ……うー、お詫びね」  
右手ではクラッズのそれを扱きつつ、少し腫れた小さな窄まりに舌を這わせるフェアリー。途端に、クラッズの体が跳ね上がった。  
「やぁっ!フェアリー……そ、そんなとこ、汚いっ…!だ、ダメだよぉっ!!んああっ!」  
「ん……ふ……でも、気持ちいいでしょ?んっ!」  
「だ……ダメだって!フェアリっ……ほんとやめ…!うああぁぁ!!!舌入れちゃダメえぇぇ!!!」  
今までにないほどの反応を示すクラッズ。恥ずかしさと快感がない交ぜになり、一瞬にして昇りつめていく。  
「ダメっ!もうダメっ!フェアリー、出ちゃうよぉ!!!」  
「え……ちょ、早…!きゃあっ!?」  
思わずフェアリーが顔を上げた瞬間、達してしまうクラッズ。おかげでその精液すべてが、フェアリーの顔にかかってしまう。  
「も〜、顔射とかやめてよぉ…」  
「だ、だって、君があんな…!」  
「でも、そんな気持ちよかったんだ?」  
「う…」  
「今日はちょっと嬉しいことあったし、もう少しサービスしちゃおっかな」  
フェアリーは顔にかかった精液を指で掬って舐め取ると、初めてのときのように、クラッズに馬乗りになる。  
 
いつものように、まずクラッズのモノの先端に自分の愛液を擦り付けると、それに座るように腰を落とす。  
が、直前でクラッズは気付いた。  
「って、フェアリーちょっと待ったあぁーーー!!!」  
「なっ、何よ!?びっくりしたなあ」  
「それはボクの台詞だってば!入れるとこ、違うって!」  
「ん、バレちゃった」  
フェアリーはなぜか残念そうな顔をする。とりあえずクラッズは体を起こすと、彼女の肩を抱いた。  
「なんでそんな顔するの?」  
「だって……クラッズの、あたしじゃ半分くらいしか入らないんだもん…。でもお尻だったら、奥まで入れられるって…」  
「そ……そんなの誰に聞いたの?」  
「秘密」  
「ま、まあ誰でもいいけどさ。でもさフェアリー、いくらなんでも無茶すぎるよ」  
だが、フェアリーはむくれたような顔のまま、目を合わせようとしない。  
「クラッズにだって我慢できたんだから、あたしだって我慢できるもん…」  
「いや、さすがに無理だってば。体の大きさ違うし、最初は普通にしたってあんなに血が出たんだよ?こっち、もっと狭いもん。  
気持ちは嬉しいけどさ、だからってフェアリーばっかり我慢させるの、ボクやだよ」  
「……いっつも、あたしはあんたにそうしてるのに…」  
「え?」  
「ううん、何でもない。……じゃ、いいよ。普通にする」  
クラッズの肩に手を掛け、改めてクラッズのモノをあてがうと、ゆっくりと腰を沈めるフェアリー。  
「んんっ……!っく!う……うぅ…!」  
だいぶ慣れたとはいえ、体格の違いはそう簡単に埋められない。  
深く入る毎に、フェアリーの体は苦しそうに震え、時折羽もピクンと動く。それでも、フェアリーは少しでも奥まで入れようとする。  
だが、半分ぐらいまで埋まったところで、クラッズがその体を抱き寄せた。  
「もういいってば。無理、しないでいいよ」  
「いいのっ…!あたしが……好きでやってんだから…!あんたに心配される筋合いなんて……ないんだからっ…!」  
クラッズの手を振り解くと、フェアリーはさらに体重をかけた。  
同時に、固く閉じられた肉をグッと押し分ける感触が伝わり、今までよりさらにフェアリーの奥まで入り込む。  
「うあっ!フェアリー……大丈夫…?」  
激しい快感に襲われつつも、クラッズはフェアリーを気遣う。  
「うっく…!かふっ…!ど……どお…?いつもより……深い……よね?」  
「う、うん。すごく、気持ちいいよ…!」  
「えへへ……よかったぁ…」  
激しい痛みと圧迫感に涙をこぼしつつ、フェアリーは嬉しそうな笑顔を見せた。  
 
これさえなければなあ、と、クラッズは再び思う。  
ただ単に、自分勝手でわがままで、人を振り回すだけだったら、どんなに楽だっただろう。  
この、時折見せる可愛げがなかったら、簡単に嫌いになることが出来たのに。  
振り回されるのにはうんざりする。わがままに付き合うのも疲れる。自分勝手で、他人を平気で傷つけるのは、本気で  
怒りたくなるときもある。  
でも、どうしようもない。嫌いになんてなれない。  
一緒にいるとうんざりする。疲れる。怒りたくなる。傷つくこともある。  
だけど、時に可愛くて、放っておけなくて、いじらしい子。  
嫌いになんて、なれるわけがない。  
「フェアリー……動いても、いい?」  
「ダメ、だけど……あたし、動けない…。だから、あんた動いて…」  
「痛かったら、言ってね」  
そっと、気遣うように腰を動かすクラッズ。フェアリーの羽がビクンと動いたが、耐えられない痛みではないらしい。  
いつもより深い膣内はきつく、クラッズが腰を動かすたびにぎゅうっと締め付けてくる。  
最初は小さく、ゆっくりと。やがて少しずつ、大きく速く動き始める。突き上げられる度に、フェアリーは顔を歪め、苦しそうな  
息を吐くが、その顔もまた、たまらなく可愛らしく映る。  
「うっ!くっ!ふっ…くぅっ!クラッ…ズぅ!」  
「ハッ……ハッ……!フェアリー……好きだよ…!」  
思わず口走った言葉。その言葉を聞いた瞬間、フェアリーはクラッズの体をぎゅっと抱き締めた。  
「当たり前……だぁ…!」  
少し余裕ができたのか、いつもの減らず口。しかし、言葉とは裏腹に、その腕は彼の言葉に縋り付くかのように、強く強く抱き締める。  
いつもより深い膣内の感触。泣きながら怒るような表情。自分を抱き締める、小さな体。その全てが、愛しかった。  
クラッズが突き上げるたび、先端にコツコツとフェアリーの子宮を叩く感触が伝わる。引き抜けば愛液に塗れた襞がまとわりつき、  
同時に彼のモノを強く締め付ける。その刺激に、クラッズはあっという間に追い詰められてしまう。  
「フェアリー……もう、ボク…!」  
「いつも……早いってば…。うあっく…!別に、いいけどさ……んっ!中に……出して、いいよ…」  
さらに強く抱き締めてくるフェアリー。その体を、クラッズもしっかりと抱き返す。  
「くぅっ!フェアリー!」  
「んうぅ!」  
フェアリーの体内深くに、クラッズは思い切り精を放つ。普段よりきつく締め上げられている分、精液が勢い良くフェアリーの子宮に  
ぶつかる。やがて、入りきらない精液が、二人の結合部からどろりと溢れ出た。  
「……はぁ……はぁ……いっぱい、出たね…」  
「フェアリー、大丈夫?」  
「うん……ありがと」  
クラッズはフェアリーと一緒に体を横たえ、そっと自分のモノを抜き取る。  
「んあっ…!」  
体の奥深くから抜き出される感覚に、フェアリーの体が強張る。やがて全てが抜けると、力尽きたように全身からガクンと力が抜けた。  
「フェアリー、疲れたでしょ?このまま、寝ていいよ。」  
「ん……そうするね…。ありがとう、クラッズ…」  
幸せそうに言うと、静かに目を閉じるフェアリー。  
クラッズは置いてあるタオルで簡単に自分とフェアリーの全身を拭いてから、再びその隣に寝転ぶ。  
普段の彼女からは想像も出来ない、無邪気な寝顔だった。その寝顔をそっと抱き寄せ、クラッズも目を瞑る。  
「嫌いになれれば、本当は楽なんだろうね…」  
誰にともなく、そう呟く。  
一番苦手で、一番嫌いで、一番可愛くて、一番愛してる人。そんな相手を持ったクラッズは、あるいは誰よりも不幸なのかもしれない。  
しかし、今自分の腕に抱かれ、安らかに眠るフェアリー。  
「でも、しょうがないよね……好きになっちゃったんだから」  
その顔を見る限りでは、あるいはセレスティアの言うとおり、二人とも幸せなのかもしれない。  
少なくとも、今のこの瞬間。クラッズは、他の誰よりも幸せだった。  
 
翌日。一行はいつも通りに地下道探索に出かけていた。今回はフェルパーの強い要望に従い、主に宝箱漁りに励んでいる。  
しかし、フェアリーは調子が悪いらしく、その動きは精彩を欠く。  
「おーい、フェアリー。大丈夫?調子悪いの?」  
ドワーフの声に、フェアリーはうんざりした視線を向ける。  
「う、うるさいな。あたしだって、調子が悪いときぐらいあるよ」  
「今のあんたなら、私の攻撃でも当たりそうだね」  
「やめてよ、ほんとに。調子悪いんだから…」  
「大丈夫だよ、フェアリー。今日はボクが頑張るからさ」  
クラッズが言うと、フェアリーは一瞬恥ずかしそうな表情を見せた。が、すぐに怒ったような顔になる。  
「あんたなんかに頼らなきゃいけないほど、あたしは落ちぶれてないよーだ」  
「あ、ひどいなー。せっかくやる気出したのに」  
「そんなん、いつも出して当然でしょー!?大体あんたはさぁ…!」  
その様子を脇目で見つつ、四人は目配せを交わし、笑った。  
「こいつら、仲いいよなあ」  
「ほんとですよね。見てて羨ましいくらいです」  
「たまに、クラッズさんが疲れているように見えますけどね。フェアリーさんが、もう少し素直な方なら、彼も楽なのでしょうが」  
「ほーんと、クラッズも苦労が絶えないね」  
「……ちょっと、そこの四人。なぁにこそこそ話してんの!?」  
フェアリーの矛先が変わったことで、四人はそれとなく解散する。  
「いやいや、別にー。ただ、あまり喧嘩すんなよ」  
「そうそう。じゃないと、クラッズだっていつか怒るぞ」  
「あんたには関係ないでしょー!?あんたにクラッズの何がわかるってのよー!?」  
「変な奴に好かれて大変だなってことぐらいかな」  
「うっわ、あったま来た!犬っころの癖にー!」  
「何だとこいつー!?」  
「やめろってば、ドワーフ」  
「フェアリーもやめなってばぁ」  
間違いなく、一点の曇りもない、いつもの光景。ただし、クラッズの顔には一種、諦めのような笑顔が浮かんでいる。  
振り回されるのは好きじゃないし、わがままに付き合うのも嫌いではある。  
だけど、それでも男女として付き合えるほどに、大切な存在。  
以前に見えた未来像が、さらに鮮明にクラッズの脳裏に浮かぶ。  
きっと、こうやってずっと付き合っていくのだろう。喧嘩も仲直りも、同じだけ繰り返して。  
そう。この先、恐らくはずっと。例え学校を卒業しようと、続けていくのだろう。  
 

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