うーむ。  
いや、なんていうか?  
どうしてこうなった……?  
 
クロスティーニ学園に入学して早三週間、課題もこなし、  
順風満帆な学園生活を送る俺の目の前で二人の少女が言い争っている。  
 
 
「彼の隣を歩くのは私です、いつも後ろにいて目立たない貴女が隣に立てば彼の栄光が陰ってしまいます」  
 
こちらがその豊富な魔力と明確な魔法で、  
俺のパーティー最大の火力を誇る魔法使いのセレスティア。  
 
「……我がままで傲慢な女を連れている方がよっぽど品位を下げるような気がするけど?」  
 
そしてこっちが引っ込み思案であんまり前に出ることはないが、  
常にパーティー全体が有利に戦えるように補助魔法を扱う人形遣いのディアボロス。  
 
「言いますね……」  
「……ふん」  
 
どちらも俺のパーティーにとっては要である。  
で、なぜ言い争っているかというと、  
ここのところずっと課題ばかりで、迷宮はもとよりモンスターがわらわらといるような場所に行きっぱなしだった。  
学園に戻ってくるのは精神力が重要な魔法を扱うための休息を取るため程度。  
格闘家の俺や、剣士のフェルパー、そして忍者のグラッツ、レンジャーのヒュム子は唯一関係ないのだが……。  
高くて買えない回復アイテムの代わりにセレスティアのヒールに依存しっぱなしな俺達としては重要なことだった。  
 
「それならば、今一度勝負と行きましょう。まぁ魔法を使える私に貴女が勝てる道理はありませんけれど」  
「……それはお互い様。それに私は貴女の目をだませることを忘れないほうがいい」  
 
二人のまわりに魔力以外の何かが渦巻き始める。  
つーか場所を考えろ、こんな校門の前で大声で喧嘩されてる方が俺に対する影響がひどいだろうが。  
しかし彼女らは喧嘩をやめる様子はない。  
さて……どうしたものか?  
考える俺のそばに、嬉しそうに笑顔を浮かべたフェルパーがやってきた。  
 
「うむ、我が主は今日ももてているようでなによりじゃ」  
「同じ状況になったらお前にも言ってやるよ、その台詞」  
「ははは、そいつは残念。我はハッキリしておる方でな。それにお主以外の男なんぞあり得んて」  
「はいはい」  
 
こいつはいつもこんな感じだ。  
俺がパーティーを組んでくれる奴を募集していると、隣のクラスだというのにわざわざ入ってきた。  
後衛は同じクラスだったあの二人のおかげで間に合っていたため、前衛を担ってくれる彼女は確かにありがたかったが……。  
だがしかし、こいつはいつも俺のことを主と呼び俺のことを好きなようなそぶりを見せてくる。  
しかしそいつはどう見てもポーズだ。だから俺はいつも軽くあしらっているのだが。  
 
「しかし、このままではいつまでたっても街へはゆけぬぞ?」  
「あー、そうだな」  
「どれ、ここは我と行かぬか?」  
「お前と?」  
「あぁ。今あの二人は目の前の敵しか見えておらん。抜けだしても分かるはずもないしな」  
「なるほど。まぁせっかくの休みだ、無駄にするのもなんだし行くか」  
「相変わらず話が分かるの。では行こうか」  
 
どうしてか、ひときわ嬉しそうに笑ったフェルパーは俺の前に立って歩き始めた。  
特徴的なしっぽはヒラヒラと揺れ、良い感じに感情表現している。  
 
そしてしばらく歩いているとフェルパーが俺の隣を歩きだした。  
 
「のぅ……お主は、あの二人のことをどう思っておるのじゃ?」  
「あの二人って、セレスティアとディアボロスか?」  
「うむ」  
「そうだな……まぁいい奴らだと思う。セレスティアのほうはまじめすぎるけどな。この間俺がケーキ買って時のこと覚えてるか?」  
「覚えておる。あの娘、ワンホールを均等に等分せんと気が済まんタイプだったとはな」  
「全くだ。おかげでついでに買ってきたジュースもぬるくなったし散々だったぜ」  
「そうじゃの。で、ディアボロスはどうなんじゃ?」  
「うーん、あいつは……あぁ腹話術ウマすぎて怖い」  
「ああれは怖いのぅ……。技術としては天下逸品なのだが、彼女がしゃべりながら人形もしゃべっているのはどうやっておるのか……」  
「謎だよなあれ」  
「うむ」  
 
と、ここで会話が途切れた。  
今まで相槌を打っていたフェルパーがなぜか急に黙ってしまったからだ。  
俺はもともと話し上手な方じゃない。聞かれたからこうやってそれなりに返せただけだ。  
なによりも年頃の女の子に振る話題なんて持っちゃいないしなぁ……。  
しばらく気まずい沈黙。  
それに俺が耐えかねて何とか話を振ろうとした時だった。  
 
「その……」  
「ん?」  
「我のことは……どう思っておるのじゃ?」  
 
そう言った彼女はどこか様子がおかしかった。  
さっきまであれだけ元気で嬉しそうだった彼女は顔を伏せ、  
いつもピンとしている耳も垂れ下がっていた。  
まぁ、この状態が分からないほど俺は鈍くはない。  
が……。  
分かるがゆえにどうこたえるべきかとても悩む。  
 
「えっと……まぁそうだな。頼りにしてる」  
「……?」  
「俺のパーティー、正直お前と俺以外前線を支えきれる奴はいないだろ?クラッズは奇襲と横からの襲撃が主だしさ」  
「そうじゃのう……」  
「だから……たぶん一番パーティーの中で信頼してるかも知れないな。背中を預けられるというかさ」  
「そうか……。うん……」  
 
そして俺の言葉に頷いたフェルパーは唐突に俺の手をつかんで走り出した。  
 
「ちょっ!?」  
「黙ってついてくるのじゃ!」  
 
彼女は俺の手を引っ張って人気のない、道から見えないような草むらの中に連れ込んだ。  
と、同時に俺を押し倒し馬乗りになる。  
 
「ふぅ……さて、我は主に一つはっきりさせておきたいことがあるのじゃが」  
「な、なんだよ」  
「好きじゃ」  
「……は?」  
「だから好きじゃと言っておるのじゃ。ライクでもないラブで」  
「えーと……状況が飲み込めないんだが。とりあえず……今までのはフリじゃなかったと?」  
「うむ。初めて見た瞬間、お主のその真っ直ぐな目に惚れてな。そしてさっきの答えで満足した」  
「満足って……」  
「嘘を言っておらんかった。我は嘘をつく輩が大っ嫌いなんじゃ。その点主の仲間は誰一人として嘘はつかん気持ちの良い仲間たちだからな」  
「で……?抜け駆けか?」  
「悪いの、据え膳食わねばなんとやらじゃ。それ以前にセレスティアとディアボロスは二人とも主に思いは伝えとらんしのう。すなわち言った者勝ちだったのじゃよ」  
 
尻尾がうれしそうに揺れている。  
……意外に大胆というか、  
いや、ずっと大胆だったんだがいつもの性格からして本気に見えなかっただけか……。  
でも……。  
 
「いいのか?俺で。こう見えてもできの悪い男だぜ?」  
「ふむ、そうじゃの。女子二人がアピールしておるというのにそれを無視するようなの」  
 
皮肉たっぷりに言う彼女の頬に手を添える。  
 
「……正直あの二人は俺には無理だ。お前みたいな……静かにしていてくれる奴のほうが好きなんだよ」  
「……っ!」  
 
真っ赤になるフェルパー。  
それに俺はたたみかけるように言葉を紡いだ。  
 
「実はな、最初お前を見た瞬間俺は神様にすげー感謝したもんさ。だって俺の好みどんぴしゃりの女が俺のそばに来てくれたんだぜ?」  
「あぅ……」  
「綺麗な銀色の髪で、清楚でおとなしい。でもおとなしいだけじゃなく大胆な面もある。そうそう、料理上手っていうのもすげぇポイント高いぞ?」  
「……うぅ……」  
「だからさ……本当は好きだったんだよお前のこと」  
 
そして俺は彼女の後頭部に手をまわして顔を引き寄せる。  
ふわりと、女の子特有のいい香りが俺の鼻をくすぐった。  
それと同時に、やわらかい淡いピンク色をしているその柔らかそうな唇へキスをした。  
 
あ、すげぇ柔らかい。  
 
そしてフェルパーのほうはすでに許容限界を超えたようでそれこそトマトのように顔は赤くなり、  
全くと言っていいほど状況を飲み込めていないようだった。  
 
可愛いやつめ。  
そのまま俺は彼女を抱えたまま横に転がって態勢を入れ替えた。  
 
「さて、誘ったのはお前だぞ?」  
 
ようやく色々と呑み込めたらしいフェルパーは小さくうなずいた。  
普段あんな口調だが……体つきは割と小柄なほうな彼女。  
こうして改めてまじまじと見てみるとギャップがものすごいな。  
声だけ聞いてれば大人の女性のそれなのだが……。  
 
ちょっとだけ攻めあぐねいているとフェルパーがモジモジと俺の下で動く。  
 
「主よ……その……」  
「ん、リクエストか?」  
「違うっ!……えっと……その初めてなのじゃ……」  
 
その言葉に俺はキスをして答える。  
答えはこれで十分だ。  
そしてその意味はしっかりと伝わったらしく、彼女は微笑んだ。  
とりあえず服の上から胸を責めてみる。  
 
「……っ」  
 
僅かに声が漏れるが、その体はまだ震えたままだ。  
この先の行為が怖いのだろう。  
とはいうものの俺自身それほど経験があるわけじゃない。  
優しくできるかは……正直微妙だった。  
制服のボタンをはずし、肌を空気にさらさせる。  
 
「……大きいほうが好きじゃろう?」  
「いんや、これぐらいが一番。つくづく俺の好みだよお前は」  
 
フォローを入れつつブラのはずして直接胸に触れる。  
柔らかく温かい。  
言ったとおり小ぶりだが、かなり柔らかい。  
僅かに力を入ると揉めば指はすぐに埋まり、綺麗に形を変えていった。  
 
「ん……はぁ……」  
 
彼女の吐息にわずかに甘い調子が含まれてくる。  
そのタイミングを見計らってスカートの中へと手を滑り込ませた。  
驚いた顔を浮かべた彼女に問答無用でキスでそれを防ぐ。  
閉じられかけた膝から力が抜けた時を見計らい、  
するりと彼女の一番大事な部分を防ぐ布を脱がすことに成功した。  
しかしそこを攻める前にじっくりとキスを楽しむ。  
唇を重ねるだけでなく舌を差し入れようとした。  
 
「うむっ……!?……あぅ……」  
 
驚いた彼女だったが舌を噛むようなことはせず、恐る恐るだが俺を受け入れてくれた。  
それに調子を付けた俺は少しきつめに彼女の口を犯しす。  
彼女の口のありとあらゆる場所に俺の痕跡を残すように。  
けれど、いきなりそれはまずかった。  
 
「むぁ……!むーー!!…………あむっ!」  
「……!!」  
 
噛まれた。  
そう、見事に舌を。  
とはいうものいわゆる甘噛みだ。けれどフェルパー特有の鋭い八重歯が食い込んでいる。  
もう少し力を入れて噛まれると穴があく、絶対に。  
そして当の本人は俺を睨みつけていた。  
俺はとにかく頷いて答える。  
もうしないという意味をこめて。  
そうしたら彼女は舌を開放してくれた。  
 
「冷や汗かいたぞ……」  
「調子に乗るからじゃ。まぁ……悪くはないがのう……」  
 
怒った顔から一変して微笑んだ彼女は眼を閉じ、体から力を抜いた。  
いつの間にか彼女の体の震えは止まっていた。  
 
「後は……好きに」  
「……あぁ」  
 
その言葉に従って俺はようやく彼女の一番大事な場所に手をかける。  
キスをしながら脱がせたそこは、すでに若干濡れていた。  
初めてだというのに、まぁいわゆる本能なんだろうなぁ。  
とかいう俺もすでになかなかやばいが。  
そして、そのまま丁寧に彼女の中をほぐしていく。  
一度も男を受け入れたことのないそこは狭く、どうもきつそうだった。  
けれどもここまで来て後に引いたら男として最低だろう。  
自分を思ってくれている女が目の前にいて、いろいろと了承済みだというのに。  
 
「ま、覚悟かな?」  
「ふぇ……?」  
 
愛撫ですっかり夢心地になってしまっていたフェルパーに再びキスをする。  
 
「たぶんめちゃくちゃ痛いと思うから先にことわっとくぞ」  
「……望んでおるのだから、平気じゃ」  
 
そして俺達は笑いあった。  
彼女のあらゆる痛みは俺が抱え込もう。  
そして彼女は俺の支えとなってくれるだろう。  
戦いはもとより、俺の心の支えとして。  
 
 
所変わってクロスティーニ学園校門前。  
 
セレスティアとディアボロスはいまだに闘っていた。  
ただ両者魔力は付き、赤い豚の最後の戦いさながらの殴り合いになっていた。  
そして、両者の拳がぶつかり合ったとき、セレスティアがあることに気が付く。  
 
「はっ!?バハムートさんがいない!?」  
 
その言葉にディアボロスも辺りを見回す。  
見慣れたパーティーの残りのメンバーが辛抱強く二人を待ってくれているが  
そこにセレスティアが言ったようにバハムートの姿はなく、そしてもう一人、  
フェルパーの姿がないことに気がついた。  
 
「……フェルパーもいない」  
 
そしてたっぷり30秒。  
 
「……もしかして先越された!?」  
 
はい、その通りです。  
 
 
 
 
そしてバハムートは地面に大の字になってねっ転がっていた。  
その隣で身なりを整えているフェルパーが見下ろしながら笑みを浮かべる。  
 
「あ〜………もーむり」  
「盛りのついた動物のようにやりおってからに。我より経験豊富なんじゃなかったのかえ?」  
「だから言ったろ……お前は俺の好み全部持ってるって。そんな女、味わいつくさなきゃ勿体ねぇだろ。それに最後の一回以外痛かったろ?それもさ」  
「……そうじゃな。……ふふ、ありがとう主よ。これで堂々とそばに居させてもらえるの」  
「……まぁな、そう言うわけだ、これからも頼むぜ?」  
「任せておけ。背中といわず共に行こう」  
 
愛し合う男女にしてはいささか無骨な挨拶だが、二人は拳を突き合わせ、そして立ち上がった。  
彼らの冒険はまだ始まったばかりだ。  
 
 

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