魔女の森。  
 ブルスケッタ学院に隣接し、クロスティーニ学園からもそう離れていないこの森は下級生パーティにとってある意味での難所で知られていた。  
 気を抜けばとてつもない強敵が出て来る、ワープゾーンが迷路のように配置されている、雷の落ちる岩場へ曲がるように回転する地面の罠、変わりやすいというよりすぐに嵐になる天候…エトセトラ、エトセトラ。  
 それなりに経験を積めば決して怖い場所ではない。だがしかし、それでも上級生だろうと下級生だろうとこの森で気を抜く事は死を意味していた。  
 
 そして、この日も魔女の森では雷が鳴り響き、雨が降り注ぐ嵐の中、6人の少女が奥へと進んでいた。  
 彼女達はクロスティーニ学園の制服を着用しており、彼女達がそこの生徒である事は間違いはない。しかし、森の中に彼女達以外の人影は見当たらない。こんな嵐の中を進む生徒も普通はいない。  
 だが、彼女達は周囲に注意を払いながら、それでも臆する事無く一歩一歩前へと進んでいた。  
 先頭を歩くのはバハムーンで、力強い種族である彼女がこのパーティの最前列での切り込み役である事が解る。  
 その次に続くのはディアボロスで、バハムーンのすぐ真後ろを、同じように注意を払いながら進んでいる。  
 ディアボロスという種族は他種族とは馴れ合わないのだが、先頭を歩くバハムーンには気を許しているのか、少し動けばくっつきそうな程近い距離だった。  
 三番目を歩くのは前を歩く2人と少しだけ距離を置いて進むヒューマンだった。彼女は何も持っていない。だが、その拳と足が彼女の武器である、所謂格闘家に身を置く彼女にはそれだけで充分だった。  
 その次に4番目としてヒューマンの後ろに続くのは、成長してもさほど体格も大きくならないクラッズだった。  
 ヒューマンの後ろを守るかのように周囲に視線を気を配りつつ、足音を忍ばせて歩く彼女はまるで忍者に相応しい。実際彼女は忍者学科に籍を置いている。  
 そしてクラッズが周囲を警戒するのに合わせて周囲に視線を送るのはパチンコを握りしめたフェアリーだった。しかし、彼女の服装だけは他の面々よりも浮いている。  
 それもその筈、彼女は仲間達の支援役であるアイドル学科に身を置いているからだろう。  
 しかしその衣装も雨のせいで少し濡れつつあるし、時折響く雷の音にも彼女は身をすくませる。  
 そんなフェアリーを後ろから優しく後押しするのは背中に生えた純白の翼で浮遊するセレスティアであった。  
 手にした杖が彼女が魔法使いである事の証明であり、尚且つこのパーティの火力である事も示している。  
 彼女達は周囲を警戒しつつ進んでいたが、やがて開けた場所で足を止めた。  
「なぁ、クラッズ」  
 二番目を歩くディアボロスが口を開き、クラッズが少し驚いたように視線を向ける。  
「なに?」  
「この依頼はお前が受けた話だが……その話は本当なのか?」  
「まったくだ。私も疑問に思ってきたぞ。こんな嵐の日だというのに本当に黒いローブの連中が魔女の森をうろついてるなんて本当か? どこを探しても木と岩とモンスターしかいないぞ」  
 ディアボロスの言葉に合わせるように先頭を歩いていたバハムーンも頷く。  
 そう、彼女達がこんな嵐の日にこの森に足を踏み入れたのはクラッズがクロスティーニ学園の姉妹校でもあるブルスケッタ学院で受けてきた依頼にあった。  
 魔女の森で最近うろついている謎の黒いローブの連中について調べて欲しい、という内容である。依頼を受けたクラッズが即座に行動を起こす事に他の面々が賛成した為、ディアボロスとバハムーンはしぶしぶついてきたに過ぎない。  
「……せめて雨が止めばよいのだが」  
「まったくだ。あたしとバハムーンの時間を潰した責任は重いぞ」  
「ディアボロス……」  
 バハムーンの言葉にディアボロスが口を開き、バハムーンはため息をつく。このディアボロスは少し百合の気質でもあるのか、パーティを組んだ当初からバハムーンとだけは仲が良かった。  
 バハムーン個人としてもディアボロスは嫌いではないし、背中をしっかり守ってくれてるのは嬉しいが油断していると襲いかかってきそうなのが怖い。  
 
「まだいないって決まった訳じゃないじゃん」  
 ヒューマンが口を開き、セレスティアが「それもそうですね」と続く。  
「え? でも、雨はどんどん激しくなるし……」  
 フェアリーが気弱そうな声をあげ、バハムーンが「確かにな。お前が風邪を引いたら困る」と続ける。しかし、ヒューマンもクラッズもセレスティアも首を横に振った。  
「大丈夫だって、まだまだ」  
「うん。大丈夫、調べなきゃ戻れないもん」  
「……やれやれ」  
 ヒューマンとクラッズの言葉に、ディアボロスは諦めたようにため息をついてバハムーンに視線を向ける。  
「まだ行くっきゃないのか。解った。行こう」  
 バハムーンが斧を担いで歩きだそうとした時、ディアボロスが「待て」と止める。  
「どうした?」  
「……今、気付いたんだが。何かいないか?」  
「何が?」  
 ディアボロスの言葉にバハムーンが首を傾げる。だが、セレスティアが即座に口を挟んだ。  
「ディアボロスさんの言う通りです。見られてるような感じが、今したんです」  
「気のせいだろう? モンスターでもいるんじゃないか?」  
「いや、違う。これは――――――」  
 ヒューマンが口を開いた時、フェアリーが小さく声をあげ、彼女達は一斉にフェアリーの視線の先を見た。  
 その視線の先、つい先ほど彼女達が入ってきた広場の入り口から、数人の黒いローブの人影が入ってきた。  
 セレスティアが視線を前方に送れば、反対側の通路からも数人、右から、左から、と気が付けば、二十人ほどに囲まれていた。  
「囲まれたな……」  
 バハムーンが斧を構えながら呟き、ディアボロスが反対側へと周り、他の四人を庇うかのように剣を構える。  
「どうする? 相手の数が多すぎるよ」  
 ヒューマンの問いに、ディアボロスとバハムーンが同時に口を開く。  
「相手の数が多い。一旦戻った方がいいかもな」  
「あたしも賛成だ……おい、セレスティア。魔法でも打ち込んで穴を開けてくれ。突破するぞ」  
 ディアボロスの言葉に6人はそれぞれすぐに移動した。バハムーンとディアボロス、そしてヒューマンが片側に行き、その後ろをクラッズ、セレスティア、フェアリーがつく。一つの方向に寄り始めたのに気付いたのか、ローブの人影は少しずつ移動し、囲みを狭め始めてきた。  
「行くぞ!」  
 バハムーンが近くの黒いローブに斬りかかり、ディアボロスが2撃目を叩き込む。他のローブが近づこうとした時、セレスティアは既に詠唱を終えていた。  
 雨の降る中で、雷属性の魔法はかなり有効だった。文字通り雷が直撃し、数人がその一撃で崩れ落ちる。そこへ、穴が開いた。  
 他の黒ローブが追いすがるより先にヒューマンの拳が相手を捉え、そこへクラッズとフェアリー、そしてセレスティアが飛び込んだ。他の三人もそれに続く。  
 囲みを突破された事に気付いた黒ローブは即座に追跡を開始してきた。数人を倒したとはいえ、まだ十人以上が残っている。  
 そして何より、逃げ出したはいいがここは魔女の森。そこら中に罠が仕掛けられており、彼女達は思ったより進めない。  
 特に、順番が真逆になった分、フェアリーやセレスティアのように浮遊していれば進める場所もクラッズやヒューマンには進めない。その度に魔法をかけたりしながら、とにかく急ぐ。  
 
「くそ、もうあんな所にいやがる!」  
 背後を振り向いたディアボロスが悪態をつき、バハムーンも「フェアリー、早くしろ!」と叫ぶ。  
「待って、道がどっちか……!」  
「ヤバい、追い付かれる……くそ!」  
 ディアボロスは剣を抜くと、そのまま迫り来る黒ローブへと駆け出した。  
「時間を稼いでるからさっさと行け! 早く助けを呼んでくれればいいから!」  
「おい、ディアボロス!」  
「早く行け!」  
 バハムーンが声をかけた時にはもう黒ローブの先頭と交戦し始め、バハムーンは前へと向いた。  
「行くっきゃない」  
「ディアボロスさんを置いてく気ですか!?」  
 セレスティアがバハムーンを振り向く。普段あんなに仲が良いのに見捨てるのか、と言わんばかりだ。  
「今は助けを呼んでこいってディアボロスも言ってただろ」  
「でも、1人じゃ長くは持ちません」  
 普段ディアボロスとセレスティアの仲は良くない。だが、それでも仲間である事は認めている。セレスティアは、仲間を見捨てたくはないのだろう。バハムーンはため息をつく。  
 何を言ってもセレスティアは首を縦には振らないだろう。ならば、行くしかないと。  
「…………解ったよ。助けに行く」  
「じゃあ、ヒューマンさん。お願いしますね」  
「……セレスティアも行くの?」  
「ええ」  
「…………そう。じゃあ、行くよ2人とも。急いで助けを呼びに行くよ」  
 ヒューマンはクラッズとフェアリーを先導して走り出し、バハムーンとセレスティアは黒ローブへと向かっていく。クラッズとフェアリーは一瞬だけ呆気に取られたが、すぐにヒューマンの後を追い始めた。  
「ねぇ、クラッズ……ディアボロスちゃん達、大丈夫なの?」  
「わかんない。けど、あたし達が早く助けを呼んでくるしかない」  
 フェアリーとクラッズがそんな会話をしつつヒューマンに追い付いた時、ヒューマンは「遅い」と口を尖らせ、視線を前方に向けてから足を止めた。  
「……嘘。どれだけ数がいるの」  
 ヒューマンの言葉に2人が前方に視線を向けると、十人ほどの黒ローブの集団が待ち構えていた。  
「嘘、やだよもう……!」  
 フェアリーが怯えた声をあげ、浮遊状態からふわふわと地面に落ちて尻餅をつく。  
 クラッズが慌ててフェアリーを立たせるが、フェアリーはとても浮遊状態を保てる状態じゃなかった。  
「フェアリー、クラッズ。ここは私に任せて。ブルスケッタ学院に助けを求めてきて、お願い」  
「ヒューマンちゃん、大丈夫?」  
「大丈夫。何とかなる」  
 ヒューマンは両手をぶんぶん振り回すと、黒ローブへと立ち向かう。クラッズは黒ローブがいない抜け道に視線を送ると、フェアリーの手を引いて走り出した。  
「クラッズちゃん!」  
「大丈夫、ヒューマンちゃんを信じてれば大丈夫だよ!」  
 クラッズがそう叫んだ時、クラッズは咄嗟にフェアリーの手を離し、フェアリーが地面に落ちる。  
 
「痛っ! クラッズちゃん、なに……」  
 フェアリーが顔をあげた時、クラッズの真上に木から飛び降りてきたであろう黒ローブの人影がクラッズともみあっていた。  
「っ!」  
 フェアリーは手にしていたパチンコをぶつける。黒ローブが僅かにひるみ、クラッズが力強く蹴り上げて近くの岩へとぶつける。  
 流石の黒ローブも気絶したのか、動かなくなった。  
「クラッズちゃん大丈夫?」  
「ありがと、危なかったよ―――――危ないっ!」  
「え?」  
 直後、フェアリーは背後から力強く地面に叩き付けられた。脳が揺さぶられ、意識が朦朧とする。  
 そして同じようにクラッズが地面に叩き付けられるのが見える。黒ローブの1人はさっき倒れた1人を介抱し、別の三人がクラッズとフェアリーを地面に押し付けたまま、手にしていた武器を無理矢理奪い取る。  
「やだっ、やめて、離してよ」  
「離して、離してぇっ……」  
 クラッズとフェアリーを立たせた黒ローブの集団の1人が近づき、クラッズとフェアリーをじっと見る。  
「……………」  
「ヒッ……!」  
 黒ローブは短刀を取り出すと、クラッズの胸倉を掴んで引き寄せる。そして、その短刀をクラッズの着衣へと突き立て、ゆっくりと引き裂き始めた。黒ローブは片手で力強く抑え、クラッズが必死に抵抗しても離す事は無かった。  
 やがて、クラッズの幼い肢体が雨の中で露になった時、別の黒ローブが短刀を取り出し、フェアリーの身体も掴んだ。  
 フェアリーは目の前で裸に剥かれたクラッズの二の舞いにはなるまいと必死に羽ばたき、足を蹴飛ばしたりしたがやはり無駄だった。  
 ほんの数分後には2人とも一糸纏わぬ姿にされていた。  
「行くぞ……」  
 黒ローブの1人が口を開き、クラッズとフェアリーを引き摺るようにして元来た道を歩き始める。  
 途中で2人がヒューマンと別れた場所まで来た時、同じように裸に剥かれていたヒューマンが黒ローブに引き摺られ始めた時だった。  
「ヒューマンちゃぁん……」  
「……うそ……2人、とも……」  
 お団子にしてある髪留めの片方が解け、額や腕からも血を流していても強気な顔を見せていたヒューマンも自身と同じ姿にされたクラッズとフェアリーを見て抵抗する意志も失せたのか、視線を伏せる。  
 
 
 黒ローブに引き摺られた三人が元の場所に戻ってきた時、ディアボロス、バハムーン、セレスティアの三人が引き摺られてきた三人を見て小さく声をあげた。  
「お前達もか……」  
「つかまっちゃったよ……どうしよう」  
 バハムーンの言葉に、クラッズが情けない声をあげる。ここまで来て黒ローブはようやく手を離し、6人は即座に駆け寄った。  
「ごめん、本当に」  
 ディアボロスがクラッズにそう口を開いた。  
「え?」  
「皆一緒だったら突破出来たかも知れないのに、単独行動したあたしのせいだ」  
「あなたのせいではありませんわ……せめて私が残っていれば」  
「今さらどうでもいいだろう、そんなこと。誰のせいでもないさ」  
 セレスティアの言葉にバハムーンがそう口を開き、それで6人とも黙り込んだ。  
 
 6人を黒ローブのうちの数人が槍を携えて囲む。裸に剥かれた上に、嵐は更に激しさを増し、6人は冷たさで思わず身震いをする。  
 もっとも、フェアリーとクラッズは冷たさだけではないのか、ヒューマンのすぐ近くまで身を寄せる。そのヒューマンもセレスティアに身を寄せており、バハムーンとディアボロスはそれでも周囲で槍を構えている黒ローブを睨んでいた。  
 結構な人数のいた黒ローブの総計は三十人ほどだった。数人が周囲を警戒し、数人が6人を見張り、残りの二十人は何か準備をしているのか、地面に蝋燭を置いたり長い棒を使って何か書いているようだった。  
「……おい、これから何をする気だ?」  
「……………」  
「答えろ」  
 ディアボロスが黒ローブにそう問いかけるが、黒ローブは無反応のままだ。  
「クラッズ、何か聞いてないか?」  
「………何でも、悪魔を呼び寄せる連中がいるとは聞いたけど、それ以外は特に……」  
「悪魔を?」  
 セレスティアが問いかけた時、黒ローブの1人がクラッズを槍の先で小突く。黙れ、という事なのだろうか。  
「……………」  
 クラッズが黙り込み、フェアリーが更に怯えたように身をすくませる。  
「フェアリーちゃん……」  
 クラッズがフェアリーの身を案じかけた時、作業をしていた黒ローブが近づいてきて、まず最初にディアボロスを無理矢理引っ張りあげ、そのまま地面へと叩き付けた。  
「ぶっ!」  
 地面に頭から突っ込み、泥水でも吸い込んだのが激しくディアボロスは激しく咳込む。同時にディアボロスは再び引き摺られ、先ほど黒ローブが作業をしていた場所まで引っ張られる。  
 三重の円が書かれており、その中心には無数の記号や数式がある。魔法陣か何かだろうか。  
 ディアボロスは三重の円の一番外側、円一つにつき対角線上に二箇所、三重の円全体で六ヶ所ある記号が描かれた小さい円の上まで引き摺られると、そこで暴れないようにとばかりに数人がかりで押さえつけられる。  
「なにする気だ………離せっ……ぅぁぁっ!?」  
 ディアボロスが押さえつけられた時、その背中にメスのように薄い短剣が押し付けられ、まるで何か記号でも描くかのようにゆっくりと動かしていく。だが、短刀で素肌に直接傷をつけられているディアボロスとしては相当な痛みだった。  
 黒ローブは記号を描きおわったのか、背中から短剣を離すと、ディアボロスを引っ繰り返して仰向けにする。  
 押さえつけていた手も離れたが、ディアボロスは痛みで立てないのか動かなかった。そして、バハムーンがその反対側の小さい円へと引きずり出され、まさしく同じように黒ローブが数人がかりで押さえつけた。  
 
 ヒューマンが散々暴れはしたものの、三重の円の六ヶ所に小さな円に6人は背中に記号を彫り付けられて転がされていた。  
 雷こそ止んだものの、雨はまだ振り続けており、冷たさ、痛み、そして恥辱は6人にとってある意味地獄のような時間だった。  
 フェアリーはディアボロスが短剣で無理矢理傷つけられ始めた時から嗚咽を盛らしていて、転がされている今もまだ泣き止もうとはしなかったし、セレスティアはただ虚ろな目で周囲を見ていた。  
 地面に描かれた魔法陣に、六ヶ所に小さな円からしみ込む血。  
 淡く発光したそれを見て、黒ローブ達は全員がその円の周りに集まる。  
 
「始めるぞ」  
 1人が声をあげ、黒ローブが一斉に何かを唱え始める。  
 淡かった魔法陣の光が徐々に強く光り、その光の中から何かの影が飛び出してくるのが6人にも解った。  
 光が徐々に小さくなると同時に、その影の形がはっきりと見えてくる。同時に、ディアボロスが小さな声をあげた。  
「悪魔……?」  
 古の悪魔達は首をコキコキと鳴らすと、地面に横たわる6人へと視線を向けた。  
 悪魔達を呼び出すのに成功したというのに黒ローブ達は無表情のまま変わっていない。だが、悪魔達はそれぞれ狙いを定めたのか、それぞれ6人へと一斉に飛びかかる。  
「!」  
 セレスティアが気付いた時にはもう遅かった。  
 悪魔に馬乗りにされ、地面に強引に押さえつけられる。  
「離しなさい! このっ……!」  
 力強く蹴り上げ、自身に飛びついた悪魔を引き剥がそうとするセレスティア。だが悪魔は蹴られてもビクともせず、セレスティアの腕から翼へと狙いを定め、翼を掴んで強引に捻った。  
「ああっ……!」  
 翼を捻られ、力が抜けたセレスティアを抱え上げるかのように悪魔は立ち上がる。そして、セレスティアの視界の中に、悪魔の股間でそそりたつそれをはっきりと見た。  
「っ……やだ、やめっうああああぁぁァァーッ!!!!」  
 ずぶり、という音と共にセレスティアの悲鳴が響いた。  
 サイズのまるで違うそれを強引に突き入れられ、そしてキツくて動かない筈のそれがゆっくりと腰の動きと共に突き入れられる。  
 セレスティアだけではない。悪魔達は他の5人にも手を伸ばし、バハムーンの形の良い乳房をもみくだし、クラッズの小さい穴に指を突き入れ、ディアボロスの上に跨がり、小さすぎるフェアリーを抱えたりと思い思いの方へと動かしていた。  
 黒ローブ達は悪魔達を眺めた後、1人が小さく口を開いた。  
「ところで……いいのか?」  
「何をだ?」  
「俺はともかく、お前はこの連中について調べるんじゃなかったのか」  
「下手に動くとバレるだろう、マヌケめ」  
 問いかけられた1人が問いかける1人をコツンと叩いた後、口を開いた。  
「催眠にかかった振りをして仲から調べるには多少の犠牲も必要さ」  
「………俺達とは学校違うからか? 非道な奴だな」  
「バカ言え。敵を騙すには味方からというだろう。……ついでに、後で楽しませて貰えればそれでいいし」  
「悪魔の使用済みなのにかよ?」  
 黒ローブの2人がそんな話をしているのを、他の黒ローブ達は気付いているのか気付いていないのか解らないが、恐らく聞こえないまま悪魔達の動向を見ていた。  
「結構な美人だからな。ディアボロスとかバハムーンを犯せる機会なんて普通無いぞ」  
 彼女達の悲鳴が嗚咽へと変わった時、黒ローブはそう言葉を締めくくった。  
 彼女達の悪夢は、まだ止みそうに無い。  
 

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