その2.お〜きくなった〜らなんに〜な〜る?  
 
 「──とりあえず、クロスティーニ学園まで来ることができたワケですが……」  
 ディアナとグノーに出会った翌日の午後、俺達3人は無事に学園にたどり着いていた。  
 「──私たちがパーティを組む以上、入学手続きに際してひとつ注意することがあります」  
 学食のすぐ外のカフェテリアみたいになった場所で、俺とディアナを前にして、グノーがちょっとしたレクチャーをしてくれている。  
 ……つーか、わざわざ眼鏡(たぶん伊達)まで、どこからともなく取り出してかけてるあたり、何気にノリノリだな、ヲイ。  
 「それって、前衛と後衛のバランスのこと?」  
 ちょこんと首を傾げるディアナ。あいかわらず抱きしめてお持ち帰りしたいほどの可愛らしさだ。  
 「──その通り。では、ヒューイくん、前衛として主に活躍する学科を4つ挙げてください」  
 いきなり指示されたものの、このノリなら多分来るだろうと思っていた俺は慌てない。  
 「ハイハイ、えーと……戦士、格闘家、剣士。それと……忍者かな」  
 「──正解です。それ以外に種族固有の狂戦士や竜騎士などもありますが、当面は考えなくてよいでしょう。それで、ヒューイくんはどの学科を選択するつもりなのですか?」  
 うーん、俺の場合、力と素早さは人よりかなり秀でてるんだけど、逆に生命力と幸運がり低めなんだよなぁ。  
 個人的な好みで言うなら、魔法使い系より武器で戦うほうが性にあってるとは思うんだけど、戦士にしてもレンジャーにしても不安材料があるし。  
 「──ふむ。意外に自分のことを把握してるのですね。ちょっと感心しました。それでは、当面は普通科を選択してみてはどうでしょう?」  
 グノーの俺に対する評価の低さは(深く考えると悲しくなってくるので)さておき、普通科というのは、実は俺も考えていたところだ。  
 自分で言うのも何だけど、器用貧乏な俺にはそれが一番無難な選択だと思うし。装備次第で前衛にもなれるというのも悪くない。  
 「うっし。ねーちゃん、俺、普通科の星になるよ!」  
 「──それでは、次にディアナの学科なのですが……」  
 ……はいはい、スルーですか、そうですか。  
 いぢける俺を尻目にゴソゴソと傍らのカバンを探って何やらスケッチブックを取り出すグノー。  
 「──すべての能力が中の上以上ですから、この学園でディアボロスが選択できる学科は、忍者以外どれを選択することも可能です」  
 ペラリとスケッチブックをめくると、そこには玄人はだしの達筆な絵柄で学園の制服を着たディアナのスケッチ画が描かれていた。  
 なになに……"ディアナ・普通科(想像図)"……って、ちょっと待て。  
 「い、いつの間にそんなもの描いてたんですか、グノー?」  
 温厚なディアナもさすがに、ちょっと引いている。  
 「──まぁ、隙を見て」  
 隙!?  
 「──間違いました。暇を見つけてはコツコツと」  
 ジーーーーーーッ。  
 俺達ふたりの疑惑の視線を受けて、流石に少し気まずくなったのか、コホンと空咳をするグノー。  
 「──私個人としては、この"ディアナ・人形遣い"も捨てがたいのですが、人形遣いはどちらかと言うとある程度中級以上になってからの方が役立つクラスです。  
 そこで! 私がオススメしたいのはこの"ディアナ・アイドル"ですね」  
 何枚かパラパラとめくったところにあるのは、いかにもそれ風なファッションに身を包んだディアナの姿を描いたスケッチだ。  
 ゴスロリ風のミニワンピースを着て、手には長手袋、足にはハイソックスを着用。そのいずれも黒を基調に白いレースがふんだんに使われている。  
 髪型は細いリボンでツーサイドテイル……俗に"ツインテール"とも呼ばれる形にまとめられ、その上にメイドさんでおなじみの白いヘッドドレスを着けている。  
 兎のぬいぐるみを抱きしめて、恥ずかしそうにしている様は、ディアナの個性をうまく表していると言えるだろう。  
 
 ハッキリ言って、滅茶苦茶似合っていた。  
 「グノーさん」  
 「──はい」  
 「同じく、賛成!」  
 「──はい。では本件は賛成2、保留1で可決されました」  
 「え? え? コレって多数決で決まるの!?」  
 可愛らしくうろたえるディアナの肩をポンと叩くグノー。  
 「……もう、決まったことなんです」  
 「い、いや、でも本人の希望もきいてほしいって言うか……」  
 「──ディアナ。私たちはパーティ、すなわちチームとして戦うことを誓いました。最初に言ったでしょう? チーム全体のことを考えて学科を選択しましょう、と。"One for All"の精神ですよ」  
 「その言葉の後ろには、"All for One"と続くんじゃないかしら!?」  
 美少女ふたりのじゃれ合いと言うのは心和む風景だったが、このままではラチがあかないよなぁ。  
 「ディアナちゃん、そんなにアイドルになるの嫌か? 可愛いし絶対似合うと思うんだけど」  
 「え? あ、あの嫌というワケではなく、恥ずかしいって言うかですね……」  
 真っ赤になってうつむきながら、両手の人差し指をツンツンと合わせているディアナ。  
 あ〜、もぅ、どうして素でこんなに萌える仕草をしてくるかなぁ、この娘は!  
 「──つけ加えますと、ディアナは特に、生命力と幸運の能力が高い。それはまさにアイドル向けと言えるでしょう。また、アイドルはMP、いわゆる魔力の伸びも早いので、のちのち魔法を使う学科に転科する際に有利とも言えます」  
 「だってさ。どうする、ディアナちゃん?」  
 しばし躊躇していたものの、キッと顔を上げて俺の方を見返してきた。  
 「ヒューイさんは、本当にわたしにあんな可愛らしい格好なんかが似合うと思いますか?」  
 「ああ、もちろん。少なくとも俺なら、惚れ直すこと請け合いだな」  
 その言葉にポッと顔を赤らめたディアナは、やがて蚊の鳴くような声で「じゃあ、やってみます」とつぶやいた。  
 
 * * *   
 
 さて、そんな風に騒いでいるところを、オリーブとかいうヒューマンの女の子に聞きつけられて、俺達は入学式の行われる講堂に連れて行かれた。  
 式と名前のつくものでの校長先生のお話とゆーやつは長いと相場が決まってるんだが、この学校の校長は意外とお茶目な人柄らしく、アバウトに切り上げてくれたんで助かったな。  
 まぁ、クラス担任がいかにも厳しそうな男の先生だってのは確かにあまり嬉しくはないが……オリーブみたく暴れるほどじゃないだろう。  
 コッパは隣りのクラス担任のパーネ先生に憧れてるみたいだけど、俺はどうも上品なセレスティアの女性は苦手だしなぁ。まぁ、あくまで個人的な経験上だけど。  
 
 職員室で学科を選んで入学手続きを済ませ、制服を受け取って寮の部屋で着替えてみる。  
 「ふむ、これはなかなか」  
 まぁ、ありふれたブレザーとスラックスなわけだが、やっぱ新しい制服ってヤツは、こー身が引き締まるってゆーか。  
 「そぉかぁ? ワイはどぅも、こういう堅っ苦しいカッコは苦手やのぅ」  
 と、いきなり上着の前を全開にして肘まで袖をまくり、ベッドの上でグテーーッとしてるのは、俺と同室のルーフェス。  
 ピンと頭から突き出た耳を見ればフェルプールなのは一目瞭然だが、野生味のカケラも感じさせないダラケたヤツだ。  
 これで格闘家志望ってんだから、世の中をナメてるとしか思えんなぁ。  
 「いやいや、生命力と運が9で冒険者を目指す物好きな人間もおるご時世やからのぅ」  
 「フッフッフッ……言うじゃねーか」  
 と、凄んでは見せたものの、こいつがそう悪いヤツじゃないことは、何となくわかる。  
 そーいや、俺達のパーティ前衛が足りてないよな……と思いだした俺は、ダメ元で誘ってみたところ、アッサリOKをもらうことができた。  
 「そや! ワイの連れに魔法使い科のモンがおるんやけど、そいつも誘ぅてエエか?」  
 ああ、そうしてもらったほうが助かるしな。  
 「ほな、早速声かけてくるワ」  
 じゃあ、俺もディアナ達にそのことを報告してくるか。  
 
 * * *   
 
 で。  
 女子寮の部屋を訪ねてノックしたところ、「どうぞ」と返事があったんで、ドアを開けたんだが……。  
 目の前には、制服を半脱ぎ(いや、着てる途中だから"半着"というべきなのか?)状態の、肌もあらわな女性の姿が。  
 「──きゃー、ひゅーいさんのえっちー」  
 いや、そんな風に棒読みで悲鳴(?)をあげられても。  
 「……何やってるんスか、グノーさん?」  
 目の前の女性がディアナではなかったのは、幸運と見るべきか不運と言うべきか。  
 もっとも、意中の少女でなかったとは言え、相手も知り合いの妙齢?の美女。  
 本当なら慌てて目をそむけるべき局面なんだろうけど、照れるでもなくモゾモゾ着替えを続けられてては、意識する方がバカらしくなってくる。  
 「──それでは、しばしお待ちを」  
 いやいや、だからって、ワザワザ俺の方向いてスカートの中見せながらストッキング履かなくていいですから!  
 「──黒ストはお嫌いですか?」  
 いえ、どっちかっつーと好きですけどね。で、改めて聞きますけど、何してるんです?  
 「──着替えです。それとも、貴方を誘惑してディアナと私と貴方の泥沼の三角関係を構築しようとしているように見えますか?」  
 ちょ……シャレにならんこと言わないでください!  
 「……冗談です(チッ)」  
 チッつった! 今この人「チッ」って言ったよ!?  
 「──空耳です。それで、何か御用があったのではないですか?」  
 「ええ、まぁ。ひとつは、パーティの仲間のアテがふたりほどできましたよ」  
 「──学科と種族は?」  
 「格闘家と魔法使いですね。ひとりはフェルパーの男で……もうひとりは何だろ?」  
 しまった。ルーフェスに聞いときゃよかったか。  
 「──ふむ。フェルパーですか。最悪ではありませんが、良くもないというところですか」  
 「ああ、ディアナちゃんとの相性ですか……」  
 確かにディアボロスと相性がいい種族って限られるからなぁ。……つーか、そもそも相性が「良い」と言い切れる種族っていないんじゃなかったっけ。  
 「──貴方があの娘を愛妾にしてくださるなら、問題の大半が片付くのですが」  
 「わはは、そーいうオヤジギャグは勘弁してください」  
 大体俺としてはお妾さんなんかじゃなくて、ディアナちゃんとはキチンと交際して結婚し、暖かな家庭を築くのが目標なんスからね。  
 「──本気ですか?」  
 さすがに、ディアナのお姉さん代わり……だよね? まさか母親代わりじ(ギロリ)……いえ、何でもないです。と、ともかく、姉代わりな貴女にまで、冗談でそんなことを言いませんよ。  
 「ま、とりあえずはお友達から始めて、しばらくしたらデートにでも誘ってみるつもりですけどね」  
 
 「──なるほど。……だ、そうですよ、ディアナ」  
 へ?  
 あ、壁際に置かれたタンスがガタガタ揺れたかと思ったら、中からディアナが転げ落ちて来た!  
 「な、なんでバラしちゃうんです、グノー!?」  
 例のスケッチ同様、ゴスロリなミニのワンピースに着替えている。ああ、こりゃ、眼福眼福。  
 「──いえ、男女間の恋愛の機微で、こういう盗み聞きのような真似はフェアではないと思いましたので」  
 と、澄ました顔でのたまうグノー。  
 何でも、俺がノックしたときはふたりとも着替えの最中だったのに、グノーが「どうぞ」と返事したので、ディアナは慌ててタンスに隠れたらしい。  
 ……そーいや、ドレスの背中のボタンがいくつかはまってないよーな。  
 「ですが、よかったではないですか。彼は、私の見たところ、誠実さA、誘惑耐性A、家庭志向度A、将来性B+といったなかなかの優良物件です。まぁ、ヘタレ度もBと決して低くはありませんが、そのへんはこれから女の側が教育していけばすむことです。  
 それに第一、貴女の方も彼のことを憎からず思っているのでは?」  
 「そ、それは…「それは本当っスか、グノーさん?」 ヒャッ!」  
 割り込んで尋ねる俺の勢いに、ディアナが小さく悲鳴をあげる。  
 「あ、ごめん、ディアナちゃん」  
 「いえ、わたしこそ、結果的に盗み聞きする形になってしまって……」  
 申し訳なさそうに頭を下げる彼女の顔を見ていると、ついさっきまでのテンパった脳ミソが、一気にクリアーになっていくのを感じる。  
 そーだよなぁ。こういうコトは他人の口からじゃなく俺本人がディアナ本人に直接聞くべきことだよな。  
 うし、覚悟を決めろ、ヒューイ。分の悪い賭けは嫌いだけど、状況はそれほど絶望的ではなさそうだし。  
 「じゃあ、俺からひとつ質問。俺は、前にも言ったとおり、ディアナちゃんのことが好きだ。今すぐでなくてもいいから、恋人になってくれたらいいな、と思ってる。  
 で、現時点でのディアナちゃんの正直な気持ちを聞かせてくれないか?」  
 ふぅ〜、言いきったぞ。よくやった、デカした俺! さて、彼女の答えは?  
 「え、えーと……その……」  
 俺の告白に真っ赤になったディアナだが、それでも何とか答えを返そうとしているのは、彼女の誠実さの表れだろう。  
 「わたし、も……ヒューイさんのことは嫌いじゃありません。いえ、たぶん好きだとは思います。でも、まだ会って2日しかたってませんから、恋人になれるかと言われると、ちょっと自信がないです」  
 や、まぁ、確かに妥当な結論だろう。出会った瞬間に運命を感じる俺のほうが、むしろ「どんだけ少女漫画なんだよw」って感じだし。  
 「そっか。うん、今はそれで十分だよ」  
 ポンポンとディアナの頭を軽く撫でて部屋を出ようとした俺の上着の裾を、ギュッとつかむディアナ。  
 「で、ですから、ちょっと卑怯な言い方かもしれませんけど、友達以上恋人未満の、その、"ボーイフレンドとガールフレンド"から始めませんか? わたし、今まで"ボーイフレンド"と言える人がいたことないですから、うまくやれるかわかりませんけど……」  
 !   
 「うん、ありがとう。ディアナちゃんの初めてのボーイフレンドになれるなんて光栄だよ」  
 小躍りしたい衝動を押えて、極力優しく微笑んでみせると、ディアナはパアッと花が開くような笑顔を浮かべてくれた。  
 「あ、あのっ、では、ふつつかものですが、よろしくおねらいしましゅ」  
 あ、また噛んだ。どうやら、ディアナは緊張が極限に達すると口調が乱れるらしいな。……なんか可愛い♪  
 「いえいえ、こちらこそ。それとその挨拶、2回目だから。あんまり頻繁にやると有難みが薄れるから、3回目は俺ん家に嫁ぐ時までとっとこーな」  
 「ハイッ! ……あ」  
 肯定すると言うことがどういう意味なのか気づいたのだろう。先ほどにも増して茹で上がったように赤くなるディアナ。  
 グハッ……萌え尽きたぜ、真白によぅ。  
 
 ……アレ? どうしたんです、グノーさん。いそいそとドアの外に出てこっちを覗き込んで。  
 「──いえ、話が弾んでいるようですので、あとは若い者同士でしっぽりと」  
 いや、「しっぽりと」じゃなくて!  
 「──ぬっぷりと、ですか? それともぬぷぬぷと?」  
 いやいやいや、その擬音の意味、わかるよーな気もするけど、わかんないから!  
 外から鍵かけないで! ふたりにしないでーーーーーッ!  
 
 * * *   
 
 「ふぅ、あのままでは、危うく取り返しのつかない過ちをおかすところだった……」  
 「──いえ、責任とっていただければ過ちにはなりませんよ? それに和姦なら"犯す"とは言わないのでは」  
 「わ、わか……」キュウ〜〜。  
 「こらこら、ウブで可憐な乙女がいるんだから、滅多な発言はやめなさいって」  
 ディアナが目を回してるじゃねーか。ほんっと、今どき珍しいくらいの純情可憐な娘さんだなぁ。いや、もちろん「むしろ、ソコがイイ!」んだけど。  
 「──まるで、私が百戦錬磨で酸いも甘いも噛み分けた年増女のような言い草ですね。これでも殿方を知らぬ生娘ですのに」  
 ええっ!? ゴメン、正直意外。グノーさんって……え〜と、ホラ、大人っぽいから。  
 「──失敬な。これでも開発度0%の無垢なる処女ですよ  
……ボディは」  
 「そーゆーオチかいっ!」  
 あ〜、これって相手がノーム族だからこそ成り立つギャグだよなぁ。  
 「──それはさておき。ヒューイさんは、先ほど「ひとつは」とおっしゃってましたが、それなら他にも用事があったのではないのですか?」  
 ああ、そういやそだっけ。  
 「ん〜、いやね。俺、グノーさんがどけの学科選択したか聞いてなかったからさ」  
 俺達3人にルーフェスたちふたりを加えて5人。パーティメンバーはあとひとり余裕があるけど、どういう学科の人間を勧誘するべきか考えないといけないし。  
 「──なるほど。一理ありますね。私の職業はご覧のとおりです」  
 いや、ご覧のとおりったって、アイドルのディアナみたくドレス着てるわけでもないし、忍者みたくマフラーしてたり、人形遣いみたく人形背負ってるわけでもねーし……もっとも、ノームは後のふたつにはなれないけどさ。  
 ……と言うか、大概の学科は学園の制服の上に防具付けてるだけなんだから、今の段階じゃわかんねーって。  
 「──ふむ。言われてみれば確かに。私は、今回はレンジャーを選びました」  
 その「今回は」って台詞が気になるけど……ま、いいや。レンジャーってことは、後衛か? 確かに盗賊技能持ちは必須だよな。  
 でも、確か女子のレンジャーってスカートじゃなくてショートパンツを履いてたような気がするんだけど?  
 「──あれは邪道です。そもそも、前衛に立ちもっとも激しい動きをするはずの戦士系の各学科が皆制服のスカートを履いていると言うのに、なぜにレンジャー科の女性だけがショートパンツを履くのでしょう?  
 後衛だって同じです。魔法使いが魔法をバックファイアしたり、人形遣いが人形の操作を誤ったり、アイドルが触手系のモンスターに襲われたりと、常にスカートの中を外部にさらされる危険はあるのです!」  
 「いや、最後のは、ねぇって! エロエロな漫画か小説の読み過ぎだ」  
 「わ、わたし、エッチなモンスターに襲われちゃうんですか!?」  
 「──そうです。ですから、初めてくらいは好きな殿方に捧げておく方が……」  
 や、頼むから、ディアナにヘンなコト吹き込むのはやめてください。  
 「ヒュ、ヒューイさん、魔物に貞操奪われるくらいなら、いっそ……」  
 「だーかーらー! 嬉しいけど、ほんっとうれしいけど! ディアナちゃん、軽率な発言は自重しなさいって。俺が自制心を保てるうちに!!」  
 「──ふむ。誘惑耐性A+と。なかなかの精神力ですね。見直しました」  
 あ〜、もうグダグダだよ。  
 「──故に。私は抗議の意味も込めて、レンジャー科に在籍中も、制服のスカートで通そうかと思う次第です」  
 はぁ、そうスか。ま、一男子としては、ミニスカの方が目の保養になってうれしーですけどね。  
 「──見つめ過ぎです。このフェチ!」  
 言いがかりだぁ!!  
 ディアナちゃんも、対抗心燃やしてパンチラしようと葛藤しなくていいから! だいたい、グノーさんは、俺達のこと真顔でからかってるだけなんだし。  
 「(──あながちそれだけでもないのですけどね)」ボソリ  
 
 <つづく>  

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